2018年5月31日木曜日

改憲の手続き 運動の公平性確保見直しを

 自民党は3、憲法9条への自衛隊明記など4項目の改正に関する条文案をまとめましたが、安倍政権の相次ぐ不祥事条文案を提示できない状態が続いています
 5月17日、今国会で初めて開催された衆院憲法審査会では、国民民主党結成に伴う新幹事を選んだだけで、質疑など実質審議は行いませんでした。
 
 自公はそれに先立つ同幹事会で国民投票法の改正条文案を野党に示し、早期の審議入りと今国会中の成立を要請しました。
 与党の国民投票法改正案は、投票人名簿の縦覧制度廃止、共通投票所の設置のほか、郵便投票の対象者を「要介護5」から「要介護3、4」に拡大するなどで、郵便投票を除く改正は現行の公選法に整合させるものです。
 
 宮崎日日新聞は、30日、「改憲の手続き 運動の公平性確保見直しを」とする社説を出しました。
 現行の国民投票法には、使える資金やテレビCMの規制など、運動の公平性を確保する観点からの問題があるとして、
資金の多い側が有利になるのを是正するため運動に使える資金に上限を設け、収支報告を義務付け、事後にチェックできる仕組みにすべきこと 
テレビCM現行法では投票日の14日前からCM原則禁止となるだけで、それ以前は自由になっているため、CMを多く出せる資金を持つ側が有利になるという不公平の是正
③成立に一定の投票率以上を条件とする
などの改正をおこなうべきだとしています。いずれも是非とも改正されるべき重要な事項です。
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(社説)改憲の手続き 運動の公平性確保見直しを
宮崎日日新聞 2018年5月30日
 今の通常国会で初めてとなる衆院憲法審査会が開かれ、自民、公明両党は憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案を幹事会で提示した。自民党は3月にまとめた9条など4項目の改憲案の提示も目指すが、他党は了承せず、審査会では国民民主党の結成に伴う審査会幹事の選任にとどめ、質疑など実質審議は行わなかった。与党は月内の国会提出と審議入りを目指す。
 
資金力多い側が有利
 森友・加計学園問題などを巡って与野党の対立が続く中で改憲案の議論に入れないのは当然だろう。自民党はまず与野党が話し合える環境づくりに努めるべきだ。
 自公両党の国民投票法改正案は、先行して改正された公選法の規定に合わせ、投票する人の利便性を高める内容であり、基本的に合意できるものだろう。ただ国民投票法には、使える資金やテレビCMの規制など、運動の公平性を確保する観点からの問題点が残っている。
 提示された改正案は8項目。7項目は2014年の国民投票法の改正以降に改正された公選法に盛り込まれたものだ。投票日当日に駅や商業施設に設置できる「共通投票所」の導入、洋上投票の対象拡大などの内容で異論は無い。もう一つは、郵便投票ができる要介護認定者の対象を広げる案で、公選法と併せた改正を提案した。
 
 しかし重要なのは今回の提案に含まれていない点だ。一つは運動に使える資金の制限である。国民投票法は国民の活発な議論を促すため「運動は原則自由」という理念に基づいている。このため現行法では使える資金に規制はなく、どんな人や団体が巨額の資金を投入して投票での賛否を呼び掛けても許される。「原則自由」の理念は大切だが、資金の多い側が有利になることが想定される。その懸念を放置していいのか。
 
最低投票率も課題に
 欧州連合(EU)離脱の是非を問うた16年の英国の国民投票は賛成、反対の意見を代表する団体を認定し、使える資金に上限を設けた。日本の場合も運動団体を登録制にするなどした上で、資金の上限を設定し、収支報告を義務付け、事後にチェックできる仕組みにすべきではないか。
 
 二つ目はテレビCMの問題だ。現行法では投票日の14日前からCMは原則禁止となるが、それ以前は自由になっている。このためCMを多く出せる資金を持つ側が有利になると指摘される。
 
 投票率の問題もある。国民投票法には、成立に一定の投票率を条件とする「最低投票率制度」は盛り込まれなかった。しかし投票率がどんなに低くても「1票」でも多ければ改憲の可否が決まるという仕組みで国民の理解が得られるだろうか。当面は改憲案の国会発議の日程が想定される状況ではない。しかし重要な手続きの問題点だけに、見直しの議論は早期に始めておきたい。 
 
 
自公 国民投票法改正案を了承
毎日新聞 2018年5月18日
 自民党は18日の憲法改正推進本部と選挙制度調査会の合同会議で、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案と郵便投票の対象を広げる公職選挙法改正案を了承した。公明党も関係会議で、両案について北側一雄党憲法調査会長に一任することを了承した。自民党は月内の国会提出を目指している。 
 
 国民投票法改正案は、投票人名簿の縦覧制度廃止、共通投票所の設置のほか、郵便投票の対象者を「要介護5」から「要介護3、4」に拡大する。新たに約160万人が対象となる。公選法改正案は同様に郵便投票の対象を広げる内容だ。 
 国民投票法の郵便投票を除く改正は、現行の公選法に整合させるもので、施行日は「公布から3カ月後」と規定する。郵便投票拡大は、1年程度の周知期間が必要として、2019年6月施行を目指す。【田中裕之】 .

加計理事長の安倍氏接待に年間1億円の報道も

 28日の予算委集中審議で、立憲民主党の長妻昭議員から“利害関係者である加計理事長が、安倍首相や首相秘書官と会食したり食事代を支払うのは問題ではないのか”と指摘されると、安倍首相は「食事の見返りに特区に入れたかのごとくの言い方だ」「みんなそういう印象をもっているんですよ!」などと逆ギレし、「私が  たとえば焼肉をごちそうしてもらいたいからそんなことするって、これ、考えられないですよ!」と、得意の「はぐらかし戦法」でかわそうとしました。
 
 しかし利害関係者とのそうした付き合いは「大臣規範」にも反するもので、当然慎むべきものです。
 この件で、安倍首相は焼肉のご馳走のレベルの問題にしようと「印象操作」しましたが、実は安倍首相と加計理事長との関係はそんな生やさしいものではありません。
 
 週刊新潮や週刊文春によると、加計理事長は次のように悲鳴を上げています。
「彼とゴルフに行くのは楽しいけど、おカネがかかるんだよな。年間いくら使って面倒を見ていると思う?」(「週刊新潮」2017年3月16日号)
「(安倍氏に)年間億くらい出しているんだよ。あっち遊びに行こう、飯を食べに行こうってさ」(「週刊文春」2017年4月27日号)
 
 また、かつて安倍氏は「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」と話していたという、安倍氏に近い関係者の証言もあります。
 
 こうした実態を隠しておいて国会で逆切れするとは、もしもそれが演技であるのなら、なかなか「堂に入った」ものです。
 LITERAの記事を紹介します。
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安倍首相「焼肉くらいで」発言のまやかし! 
加計理事長の接待は焼肉だけじゃない、年間1億円の報道、昭恵夫人支援も
LITERA 2018年5月30日
「(2015年2月25日に)お会いしたことはない」。一昨日おこなわれた集中審議で、安倍首相は「獣医大学いいね」と言ったという加計孝太郎理事長との面談を、加計学園から出された仰天コメントを使って否定した。
 加計学園のコメントはいわば“安倍首相の名前を使って愛媛県と今治市を騙した”という詐欺行為を告白した内容だ。普通に考えれば、「加計は詐欺師だ!」と激昂しても不思議はないのに、しかし安倍首相は「抗議する理由がない」と知らん顔……。これまでも佐川&柳瀬の総理護衛コンビによる茶番劇が国会で繰り広げられてきたが、そのなかでも今回の“加計コメントを受けた安倍首相の一人芝居”は群を抜いて酷いシナリオとしか言いようがない。一体こんな穴だらけの下手な嘘を、どうやって信じろというのだろう。
 
 だが、安倍首相は一昨日、もうひとつ噴飯モノの話をはじめた。それは、加計理事長と繰り返し会食やゴルフに興じてきた“接待疑惑”を指摘されたときのことだ。
 安倍首相は、「(加計氏は)私が国会議員になる前からのずっとの付き合い」だと主張すると、「こちら側も相当ごちそうしている」「ゴルフは費用がかかるから、それはこちら側ですべてもっている」「焼肉屋の場合はこちらが払ってる場合もありますし」と、いつもの通り証拠も何もないままざっくりした記憶を並べ立て、「贈収賄になるとはとても考えられない」と強弁。何をトチ狂ったのか、ついには「(会食の)その後も、家でもう1回食べるってことも(ある)」などと言い出した。
 接待を受けたあとに家でシメのお茶漬けをかき込めば贈収賄にならないって、それはどんな理屈なのだろうか。もうさっぱり意味がわからないが、さらに安倍首相は、“利害関係者である加計理事長が、安倍首相や首相秘書官と会食したり食事代を支払うのは問題ではないのか”と追及した立憲民主党の長妻昭議員に対して、「食事の見返りに特区に入れたかのごとくの言い方だ」「みんなそういう印象をもっているんですよ!」などと逆ギレ。そして、こうまくし立てたのだ。
「私が食事をごちそうしてもらいたいから国家戦略特区で特別にやるって、たとえば焼肉をごちそうしてもらいたいからそんなことするって、これ、考えられないですよ!」
 
新潮、文春が報じた加計理事長の「カネがかかる」「年間一億出してる」発言
 いやいや、「焼肉をゴチになったから、そのお返しに」というかたちで特区が決まったなんて誰も言っていないし、思うわけがない。むしろ、「加計さんは長年の友人だ」と強調し、あたかも学生同士のカジュアルな付き合いのなかでおごってもらったかのように「印象操作」しているのは、安倍首相のほうではないか。
 そして、安倍首相と加計理事長の仲は、そんな「焼肉をおごる・おごられる」というような庶民的なものではけっしてない。「腹心の友」という言葉がもつ清いイメージとは裏腹な、「ズブズブの関係」と表現すべき間柄だ。
 
 そもそも、安倍首相より3歳年上の加計理事長が出会ったのは、留学先である南カリフォルニア大学のキャンパスだったことは周知の通りだが、当時はそれほど仲が良かったわけではないという。
 加計問題を追いかけるジャーナリスト・森功氏の『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)によれば、ふたりが接近したのは帰国後、安倍が神戸製鋼に就職して以降。昭恵夫人がFacebookに投稿した、2015年のクリスマスイブに撮られた“男たちの悪だくみ”写真にも写っている三井住友銀行・元副頭取で現在、金融庁参与である高橋精一郎氏と週末に大阪で遊ぶようになった際、そこに加計氏も加わるようになってからだという。当時、すでに学園の副理事長という立場にあった加計氏は、羽振りも良かったらしい。
いきおい彼らの遊びは、もっぱら時間と資金力のある加計任せだ。加計が安倍に声をかけ、それに応じるかっこうで、盟友関係がのちのちまで続く〉(『悪だくみ』より引用)
 
 実際、その後のふたりの関係を赤裸々に物語るかのような報道がなされたこともある。「週刊新潮」(新潮社)や「週刊文春」(文藝春秋)では、加計理事長が口にしていたという、こんな発言が紹介されている。
「彼とゴルフに行くのは楽しいけど、おカネがかかるんだよな。年間いくら使って面倒を見ていると思う?」(「週刊新潮」2017年3月16日号)
(安倍氏に)年間億くらい出しているんだよ。あっち遊びに行こう、飯を食べに行こうってさ」(「週刊文春」2017年4月27日号)
 さらに、「安倍に近い関係者」もまた、かつて安倍がこのように話していたと証言しているのだ。
加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」
 
 これらの発言が事実ならば、安倍首相が強調する“長年の友人関係なのだからおごられることもある”という関係とはまったく違い、加計理事長は意識的に「年間一億」もかけて安倍首相の「面倒を見て」おり、一方の安倍首相も加計理事長のことを「スポンサー」として認識していることになるだろう。「焼肉をおごられた」なんて次元の話ではまったくないのだ。
 
安倍首相のため選挙活動に協力、昭恵夫人が取り組む活動をバックアップ
 だいたい、安倍首相と加計理事長は、わかっているだけで年に数十回、会食したりゴルフをする「お友だち」以上の関係であることは間違いない。現にこれまでにも、2009年の総選挙では安倍のために加計学園が職員に“出張命令”を出して選挙活動に動員していたことが発覚。また、加計理事長は「自由民主党岡山県自治振興支部」の代表者として政治資金収支報告書に名を連ね、同支部の所在地も加計学園グループの予備校である英数学館岡山校の住所が記載されていた。
 しかも、その関係は安倍本人だけにとどまらない。安倍が結婚してからは、加計理事長は昭恵夫人とも仲を深め、昭恵夫人が取り組むミャンマーの教育支援を加計学園が協力している。つまり、安倍の政治活動や妻である昭恵氏の活動まで、加計理事長はバックアップしてきたのだ。
 会食やゴルフというのは、それこそ首相動静にも出ている「オフィシャル」の情報にすぎない。実際には、このように加計理事長は安倍夫妻にとって公私ともに多大な「面倒」を見てくれている相手なのだ。その「見返り」として国家戦略特区での獣医学部新設を動かしたのではないか。そういう疑いの目を、いま安倍首相は向けられているのだ
 
 そもそも、会食やゴルフにしても、けっして見逃がせない問題だ。大臣規範には〈関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない〉とある。だからこそ安倍首相は、加計学園の獣医学部新設計画をはじめて知った時期を、当初は「構造改革特区で申請されたことは承知をしていた」「私は議長だから国家戦略特区に申請をすれば私の知り得るところになる」と答弁していたのに、「2017年1月20日の特区諮問会議」だと前言撤回したのだ。
 
 野党はずっと加計理事長の証人喚問を要求しており、一昨日の集中審議で要求が出されたが、与党はこれを拒否した。いくら安倍首相が潔白を叫んでも、これでは「やましい関係」であることを証明づけているようなものである。 (編集部)

31- <もうひとつの沖縄戦>(1)、(2)(東京新聞)

 太平洋戦争末期本土防衛の捨て石とされた沖縄の地上戦では18万8千人の日本人がなくなり、そのうち民間人は9万4千人に上ります。沖縄の悲劇はそれにとどまらず、3千人以上の兵士が45年6月に捕虜としてハワイに移送され、劣悪な環境の施設に終戦後も収容され続けました。
 同じ収容所には米国在住の日系一世や二世ら数百人も収容されていました。宗教者や教師、経済人ら影響力のある人たちで、米国政府から日本に忠誠を誓う者たちとみなされて隔離されたのでした。
 
 東京新聞がこの体験者たちからの聞き取りなどに基づいて、「シリーズ <もうひとつの沖縄戦>」の連載を始めました。
※ 原記事にアクセスすれば当時の写真もご覧になれます。
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<もうひとつの沖縄戦>(1)
18歳の捕虜 ハワイへ 猛暑の船底 裸で移送
東京新聞 2018年5月29日
 太平洋戦争末期に日米合わせて約二十万人が死亡した沖縄戦から七十三年。沖縄の人々は本土防衛の捨て石とされただけでなく、三千人以上の男たちが捕虜として米国ハワイに移送され、終戦後も収容されつづけた。少なくなった元捕虜たちは、もうひとつの「沖縄戦」を語り継ごうとしている。 (編集委員・佐藤直子)
 
 捕虜を乗せた米軍の上陸用舟艇は、嘉手納(かでな)沖に停泊した大型輸送船の脇腹につけるように止まった。二十メートルほど上方の甲板から縄ばしごが下ろされる。「カモン(上がれ)」。船上から米兵が手招きした。捕虜たちは戦闘で弱った体にむち打って上った。
 一九四五年六月下旬。米軍との戦いで焦土となった沖縄本島から、戦場で捕虜となった沖縄の兵士らを乗せた船が出航した。
 当時十八歳だった元嘉手納町議の渡口彦信(とぐちひこしん)さん(91)は船内で全裸にされ、米兵に海水のシャワーを浴びせられた。あとは下着一枚配られない。閉じ込められたのは、荷を積む船底だった。「殺される」と恐怖に震えた。
 
 旧制県立農林学校の卒業を目前にした四五年二月、渡口さんは徴兵検査に二年繰り上げて合格。那覇市内に駐屯していた球二一七二野戦高射砲隊に入隊し、初年兵教育もないまま戦場に出た。
 四月一日に米軍が沖縄本島に上陸し地上戦が始まると弾薬運びなどをしたが、米軍に制空権を握られて昼間は高射砲を撃てない。砲台に草木をかぶせて壕(ごう)に隠れ、夜になると敵の陣地を攻撃した。弾も食料も睡眠も足りない。「大和魂だけで踏ん張っていた」と渡口さん。百五十人余いた中隊はやがて三十人ほどに。那覇から南へ撤退し、糸満市摩文仁(まぶに)の海岸に隠れていたところを捕まった。
 
 米軍トラックに詰め込まれ、捕虜を集めた屋嘉(やか)収容所に向かった。数日後には故郷の嘉手納に移動。そこでは集められた捕虜が列をつくり輸送船に乗せられていた。渡口さんも家族の安否も分からぬまま乗せられた。同じ船に当時十五歳の古堅実吉(ふるげんさねよし)さん(88)がいた。鉄血勤皇隊と呼ばれる学生部隊の一人だった。
 何十人もの捕虜が押し込まれた暗い船底は窓もない。明かりは裸電球が一つ。猛烈な暑さで人いきれが激しかった。「食事のときも皿一枚配られない。手のひらに飯を盛り、おかずをのせる。顔をうずめて獣のように食べるんです」。そんな扱いが古堅さんには耐えがたかった。誰もが疲れ切って無口だった。一日二回の食事で日にちを数えた。
 用便も人目のある所でバケツにした。汚物処理のため、輪番でバケツを甲板に上げる一瞬だけ、新鮮な空気に触れることができた。
 
 行き先も分からぬまま、ある日、甲板に出た渡口さんは遠くに島をみた。「あそこは」と監視の日系米兵に尋ねた。「こちらサイパン。あちらはテニアン」。指さす方に日米の激戦地となった島が見えた。
 捕虜を乗せた船は南東へと進んでいた。三週間ほど過ぎたころ、米兵が「上陸だ」と知らせに来た。到着したのはハワイだった。
 
 
<もうひとつの沖縄戦>(2)
「地獄谷」と呼ぶ収容所
東京新聞 2018年5月30日 
 一九四五年七月、沖縄戦での日本人捕虜を乗せた輸送船は、米国ハワイのパールハーバー(真珠湾)に入った。州都ホノルルを擁するオアフ島の南側に位置するこの軍港は、四一年十二月八日未明に日本海軍が奇襲攻撃を仕掛けた因縁の地だ。船から下ろされた捕虜がトラックで連れて行かれたのは、島の中西部にあるホノウリウリ収容所だった。
 山中の約六十五ヘクタールの荒れ地を切り開き、四三年に建設されたハワイ最大規模の強制収容所。鉄条網に囲まれてバラックやテントが並ぶ。雨が降ると赤土がぬかるみ、猛烈な暑さと大量の蚊が捕虜たちを悩ませた。「地獄谷」と呼ばれていた
 収容所では大きな袋が一人ずつに配られた。中には靴や靴下、せっけん、歯磨き粉、食器、コップなどの生活用品が入っていた。
 
 ハワイに上陸する直前、捕虜たちに配られた上着とズボンを脱ぎ、胸や背中、ズボンの太もも部分に「PW」とペンキで書かれた服に着替えた。「Prisoner of War(戦争捕虜)」を意味する屈辱的な印だった。
 捕虜たちはホノウリウリで、ただ食べて寝て、衰弱した体を休めた。十八歳の渡口彦信(とぐちひこしん)さん(91)が労働を命じられたのは、ハワイに来て一カ月が過ぎたころ、ホノルル湾入り口のサンド島の収容所に移されてからだ。
 
 軍の洗濯工場での軍服の整理や、米軍将校宅の庭の草刈り、ごみ集めなどが割り当てられた。労働は一日八時間。監視の米兵が捕虜に暴力を振るうことはなかったが、銃を手に「ジャップ」と呼び、敵意をむき出しにする監視兵もいて怖かった。
 「生きて虜囚の辱めを受けず」と教え込まれた皇軍兵士が敵国のために働かされる。渡口さんはその悔しさを忘れない。「故郷や家族のことばかり考えてね。働いても米国のためだと思うと苦しかった…」
 
 真珠湾攻撃はハワイの日系人社会にも暗い影を落としていた。ホノウリウリ収容所には沖縄からの捕虜だけでなく、米国籍の日系一世や二世らが数百人も収容されていた。生活の活路を求めてハワイに移住した日系人の人口は、四〇年に全州の37%を占めていた。
 このうち、宗教者や教師、経済人ら影響力のある人たちは米国政府より日本に忠誠を誓う者たちとみなされて隔離を強いられた。有力者を失った日系社会は弱体化していった。 (編集委員・佐藤直子)

2018年5月30日水曜日

高い道徳性と倫理観を持たない人間は無敵

 28日午前の参院予算委で、安倍首相が、加計学園問題について「一点の曇りもない」と答弁すると、共産党の小池晃書記局長は「これが今話題のご飯論法ですよ。全くのすり替えだ」と断じました。
「ご飯論法」とは、「朝ご飯を食べましたか」と質問された場合、パンを食べていても、あたかも「ご飯(白米)」について問われたかのように論点をずらし、「食べていない」と強弁する論法です。労働問題に詳しい法政大の上西充子教授がツイッター上で紹介すると、「秀逸な表現」などと一気に拡散しました。  29日・東京新聞:「野党追及 論点すり替える首相答弁は…『ご飯論法』」)
 
 また同じ日、安倍首相は、妻昭恵氏付きの政府職員が森友側からの要請で財務省に問い合わせたことは認めたものの、森友学園との土地取引に関し「例えば金品を授受して『政策を変えろ』というようなことでは全くない(要旨)」と述べました。
 これは、これまでは「私や妻、事務所がかかわっていれば、首相も国会議員も辞める」と主張していたのを、関与の度合いを贈収賄に当たるような行為と「狭く解釈」する答弁に転じたということです。(  29日・東京新聞:「首相『贈収賄当たらない』 『辞任答弁』狭義に解釈」)
 
 要するに、妻の関与が濃厚になってきたので「辞任する」とした当初の言明を修正する必要が生じたということで、まことに「変幻自在な対応」を見せたのでした。
「くろねこの短語」氏は、「いま問われているのは、政治家としての倫理感』『道徳感であって、陸山会事件の時にメディアがさんざん小沢一郎氏をいじめぬいた道義的責任ってやつこそが問題なのだ」と指摘しています。
 しかしそうしたものが一切欠如した人間の確信犯的な振る舞いには、もはや対応のしようがありません。安倍首相が強引に導入した「道徳教育」が最も必要な人間は実は彼自身でした。
 
 日本人にはもともと安倍首相が目指しているものとは別の高い道徳性と倫理観があり、それは江戸時代などに日本を訪れた心ある外国人が等しく認めたものでした。営々として築かれてきたそうした日本人の美徳が、安倍氏の登場でいま根底から崩されようとしています。まさに彼こそが日本に危機を齎す元凶に他なりません。
 
くろねこの短語」を紹介します。
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 安倍晋三は日大危機管理学部の名誉会長だった。
くろねこの短語 2018年5月29日
 いやはや、国会は「ご飯論法」がフルスロットルで、ペテン総理の断末魔が永田町に響きわたっております。なんてったって、注目すべきは、「私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」って言ってたくせに、いつのまにか「贈収賄はまったくない、という文脈で一切関わっていないと申し上げた」って妄想が始まったことだ。
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 これって、「関与」が濃厚になってきたから「贈収賄」を持ち出してきたってことで、ようするに絶体絶命ってことを自ら認めちゃったようなもんなんだね。橋龍命の江田君が「実際の裁判だったらもう詰んでいる。証拠固めは終わって、自白を待つだけだ」って語気鋭く迫っていたのは正しい。
 
 そもそも、贈収賄だったら有無を言わさず逮捕なんだから、言わずもがなのことなんだね。いま問われているのは、政治家としての「倫理感」「道徳感」であって、陸山会事件の時にさんざんオザワンをいじめぬいた「道義的責任」ってやつこそが問題なのだ
 たかが期ズレで極悪人かのごとく報道した新聞・TVは、ペテン総理の嘘や誤魔化しにはとことん寛容で、あまつさえ野党の立証責任だの決め手に欠けるだのてことに話を歪曲化するんだから始末に終えない。これじゃあ、国会は裁判所みたいなもので、司法の領域まで担っていることになっちまう。それは違うだろー!
 
 政治家ってのは疑惑を持たれただけでアウトなんだね。国民の負託に応えるってことは、それほど重い責任があるってことだ。それは官僚だって同じこと。虚偽答弁を43回も繰り返したシュレッダー佐川君が逮捕もされずにノホホンとしていられる社会ってのは、やっぱり歪んでいる
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 ペテン総理が権力の座にある限り、その歪みはひどくなりこそすれ、正されることはけっしてないだろう。
 
 ところで、危機管理学部は日大と加計学園系列の大学にしかないって26日のエントリーに書いたんだが、なんと日大の危機管理学部の名誉会長はペテン総理なんだとさ。顧問には自民党の議員の名前もチラホラあって、なんだみんな同類だったとさ・・・てなわけで、お後がよろしいようで。
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喜劇の国会 嘘しか言わない登場人物

 このところの安倍首相と閣僚それに官僚たちの国会対応は、まさに「喜劇の国会 登場人物は嘘しか言わない」に尽きます。安倍首相にまつわる話題において、「嘘」という要素が除外されることはあり得ないので、どうしても似た話の繰り返しになるのはご容赦ください。
 
 日刊ゲンダイは、
“犯人”とその周辺がどれだけ取り繕っても、誰が嘘を言っているのか、国民は先刻承知。嘘でゴマカせると思っているのは本人たちだけだ。とっくにネタバレしているのに、必死で嘘のストーリーを続けようとする。まるで三文推理小説の様相である
と断じました。
 
 これ以上何の説明も要りません。日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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まるで三文推理小説 登場人がみんな嘘をつく喜劇の国会
日刊ゲンダイ 2018年5月28日  
(阿修羅 文字起こしより転載)
 “犯人”とその周辺がどれだけ取り繕っても、誰が嘘を言っているのか、国民は先刻承知。嘘でゴマカせると思っているのは本人たちだけだ。とっくにネタバレしているのに、必死で嘘のストーリーを続けようとする。まるで三文推理小説の様相である。
 
 加計学園が26日、愛媛県が発表した文書について、驚くべきコメントを報道各社にファクスで送り付けてきた。愛媛県の文書には、加計学園の獣医学部新設をめぐり、2015年2月25日に加計孝太郎理事長と安倍首相が15分程度、面談した際、安倍から「そういう新しい獣医大学はいいね」という発言があったと記載されている。この「加計学園からの報告」は嘘だったと自ら発表したのだ。
 
<当時の関係者に記憶の範囲で確認>したところ、〈獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請にきりかえれば、活路を見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思うとの事でした>という。
 
 こういうのは「誤った情報」ではなく、一般社会では「嘘」と言う。しかも、ここでもまた「記憶の範囲」だ。新しい資料や記録が出てくるたびに、安倍や周辺が「記憶」で内容を否定する。モリカケ問題は、ずっとこの繰り返しだ。
 
「さすがに今回の弁明は筋が悪い。加計学園のコメントが本当ならば、事業者が嘘を言って、獣医学部新設に協力させ、愛媛県と今治市から100億円近い補助金を騙し取ったことになる。詐欺行為ですよ。愛媛県の中村知事も会見で怒りを爆発させていましたが、発表コメントが事実ならば、まずは県や市に謝罪をし、加計理事長が記者会見するのが筋でしょう。紙一枚で済ませていい話ではない。安倍首相を守ることだけにベクトルが向いて、ドツボにはまっているように感じます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
 
■安倍の名前を騙った「詐欺を働く学園」
 森友学園の籠池前理事長が「安倍から100万円をもらった」と暴露した際、自民党は「総理を侮辱した」と憤り、籠池氏を証人喚問した。さらに安倍自身も、まだ公判も始まっていないのに、「籠池氏は詐欺を働く人物」と断罪。加計学園が安倍の名を騙って獣医学部新設を優位に進めたと自白した以上、学園の責任者や担当者を証人喚問しなければおかしい。果たして安倍は「加計は詐欺を働く学園」と糾弾するのだろうか。 
 
「愛媛県が文書を公表して以来、知事の説明は一貫して説得力があった。それで情報公開をかたくなに拒んでいた今治市も追い詰められ、ついには安倍官邸べったりの菅良二市長も、安倍首相と加計理事長の面談について加計学園側から伝えられていたことを認めざるを得なくなった。愛媛県の文書が正しいことがハッキリしたのです。
 
 そうなると、『面談はなかった』と言っているのは安倍首相だけということになって、政権は窮地に陥る。それで、“腹心の友”で共犯者の加計理事長に言い含め、学園の担当者が嘘をついたということにしたのでしょう。こんなミエミエの隠蔽工作で国民が簡単に騙されると考えているとすれば、度し難い。あまりに醜悪で、論評にも値しません」(政治評論家・本澤二郎氏) 
 
ひとつゴマカすとつじつま合わせの嘘が重なっていく 
 ひとつ嘘をつくと、つじつま合わせのために嘘の上塗りを続けることになる。安倍政権の場合、あまりに嘘を重ね過ぎて、つじつまも合わなくなってきた感がある。
 野党から、安倍が「加計理事長と15年2月25日に会っていない」と断言する根拠をただされ、内閣官房が出した回答書には、こう書かれていた。
〈ご指摘の点については、総理より「ご指摘の平成27年2月25日に加計理事長とお会いしたことはありません。」と申し上げているところに尽きるものと存じます〉
 安倍がそう言っているから正しい――。どうなっているのだ、この国は。自民党幹部も「総理の発言を信じる」と言うばかり。安倍の発言を裏付ける証拠は何ひとつ出てこない
 
「2月25日の加計理事長との会談について、安倍首相は『記録がない』ことを免罪符にしていますが、本来は会っていない記録を出すべきなのです。身の潔白を示す記録が残っていないことに怒るなら分かりますが、『記録はなかった』とドヤ顔で言うのはおかしい。森友問題もそうですが、やましいことがないのなら、官僚に『資料をすべて出せ』『備忘録でもいいから探し出せ』と指示すればいいだけの話です。
 都合の悪いことは“なかったこと”にしようとするから、隠蔽や廃棄、改ざんという国民への背任行為の連鎖になる。日大アメフト部の問題を見ても分かるように、危機管理の要諦は、まず自分たちの非を認めて、そこまでしなくてもというまで謝ることですが、安倍政権の対応は危機管理以前の問題です」(山田厚俊氏=前出)
 
 危機管理は初動が大事だ。事実を認めてゴマカさないこと。森友問題も加計問題も、安倍が最初に「慎重さが足りなかった」と非を認めて謝っていれば、ここまで長引かなかっただろう。
「私や妻が関係していたとすれば、これはまさに私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということはハッキリと申し上げておきたい」と最初に大見えを切ってしまったから、次から次へと嘘で上書きする羽目に陥った。主犯は「官僚が勝手にやったこと」と責任転嫁。官僚は天下りや昇進の見返りがあるから黙って罪をかぶる。その被害者は国民だということに気づかなけばならない。
 
■すべての嘘の起点は首相を守るため
 佐川前理財局長に虚偽答弁させ、柳瀬元首相秘書官を記憶喪失にし、加計学園の担当者を詐欺師に仕立て上げる。すべての起点は安倍の保身だ。安倍を守るために、モリカケ疑惑の主要な登場人物は嘘しか言わない。これでは国会審議も成り立たない。国会を空転させたのは、審議拒否した野党ではなく、嘘つき政府の方なのだ。
 前出の本澤二郎氏が言う。
政府が見苦しい嘘で急場をしのぐような場当たりを続けていたら、国が滅びる。嘘はいけないと安倍首相に進言する側近もいないことが致命的です。自民党議員もいい加減、安倍降ろしの声を上げるべきですよ。安倍首相を守るか、民主主義と政治への信頼を守るかの瀬戸際に来ているということが分かっているのでしょうか。安倍首相は今や裸の王様なのです。皆が勇気を出して『王様は裸だ』と言わなければいけません。安倍首相は部下や親友に嘘をつかせ、外交をやってるフリでロシアに逃げたものの、何の成果もなかった。北朝鮮問題で、トランプ政権がどんな方針を打ち出しても盲目的に支持する場当たり外交にも唖然とします」
 米国の北朝鮮に対する圧力を支持する。交渉を支持する。首脳会談を支持する。会談中止を支持する。交渉再開を支持する……。日本国としての一貫性はどこにもない。国際社会は冷笑だろう。
 
 こんな政府で国民は恥ずかしくないのか? 国民からも国際社会からも信用されない日本の首相。この期に及んで、嘘で逃げ切り、総裁3選なんて話がまことしやかに語られるようじゃ、日本は再起不能だ。