2022年10月31日月曜日

徹底検証 大軍拡 平和と暮らし破壊 異次元の膨張路線(しんぶん赤旗)

 岸田政権はこの先の円安とそれに伴う財政破綻の危機など、全く先が見通せない中でも5年後の軍事費11兆円超という対米約束に忠実であろうとして、その第1年度の予算を組もうとしています。今後毎年軍事費としてほぼ1兆円ずつを増額し、行く行くは現在よりも5兆円超も軍事予算を拡大させれば、日本の軍事費は世界第3位に躍り出ることになります。
 どこにそんなことをする必要があるというのでしょうか。貿易相手国第1位の中国となぜ戦争することを目指さなくてはならないのでしょうか。狂気の沙汰です。
 安倍政権時に、憲法違反の集団的自衛権の行使を無理やり可能にしたことが、いまこういう形で及んできました。しかし憲法違反の閣議決定などに何ほどの権威があるというのでしょうか。
 それは兎も角として、政府が目指している大軍拡が日本の内政にどのような影響を及ぼすのかについてしんぶん赤旗が徹底検証しました。
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徹底検証 大軍拡 平和と暮らし破壊 異次元の膨張路線
5兆円超に60年以上→岸田政権5年
                      しんぶん赤旗 2022年10月30日
 「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を抜本的に強化する」―。岸田文雄首相は歴代政権で初めて違憲の敵基地攻撃能力の保有検討を表明し、そのための大軍拡の検討を指示しました。既に政府内の有識者会議や与党協議がスタート。年末には、新たな国家安全保障戦略など「安保3文書」の決定にあわせ、5年以内に軍事費2倍化を狙っています。「軍事最優先」だった戦前の反省を踏まえた国家財政の構造を大きく変える危険があります。
 戦後、初めて計上された軍事費は1310億円。1950年度、自衛隊の前身である警察予備隊の編成に伴うものです。憲法9条で「戦力不保持」を掲げているにもかかわらず、日本は60年の日米安保条約改定以降、右肩上がりの軍拡を続けてきました。第2次安倍政権期の2016年度、ついに当初予算で5兆円を突破。22年度は約5・4兆円を計上しています。さらに、12年度以降、補正予算への軍事費計上も常態化。事実上、「準軍事費」になっています。

「GNP比1%」
 最初の「防衛計画の大綱」を決定した1976年、当時の三木政権は軍事費の上限を定める「GNP(国民総生産)比1%」枠を決定。87年に中曽根政権が同枠を廃止しますが、その後も「GDP(国内総生産)比1%」が一定の目安になってきました。
 ところが今年に入り、ロシアのウクライナ侵略に乗じた大軍拡論が噴出。岸田首相は、「5年以内の防衛力の抜本的強化」をバイデン米大統領などに相次いで対外公約し、「GDP比2%の国防費」という「NATO(北大西洋条約機構)基準」採用の検討に入りました。
 具体的には、23年度から毎年度、1兆円ずつ積み増して、27年度に10兆~11兆円程度にする案を検討。23年度から27年度まで、6・5兆円以上→7・5兆円以上→8・5兆円以上→9・5兆円以上→10・5兆円以上―と段階的に引き上げ、5年間で合計42兆~43兆円となります。

国民生活に影響
 年間11兆円規模になれば、日本の軍事費は米中に次ぐ世界第3位になり、「専守防衛」や「軍事大国にならない」ことを掲げた防衛政策の基本を完全に逸脱します。
 しかも、軍事費が5兆円を超えるまで60年以上かかったのに対して、岸田政権はわずか5年間で5兆円を積み増そうとしています。戦後、これだけ急激な軍拡は例がありません。少子高齢化や世界的な物価高の中、こうした異次元の軍拡を強行すれば、国民生活に深刻な影響を与えるのは必至です。政府・与党内では既に、国民負担を求める声が出ています。

暮らし切り捨て財政
軍事費増のしわ寄せさらに
 図1:防衛関係費と他の非社会保障関係費の対前年度増減額の累積額




 軍事優先・暮らし切り捨て財政は既に始まっています。2013年度以降、軍事費は10年連続で前年度を上回り、8年連続で過去最大を計上。財務省の財政制度等審議会は5月25日付の建議で、こうした一貫した増加は「他の経費の削減・効率化によって実現できたものである」と指摘しています。

 建議によれば、15年度~22年度で軍事費は約4千億円増えましたが、文教科学費は約640億円増にとどまっています(図1)。また、『東アジア戦略概観2022』(防衛省防衛研究所)によれば、2000年度~19年度の主要費目の増加率(決算ベース)では、軍事費123・9%に対し、文教科学費は97・3%にとどまっています。
 日本の教育予算は、いわゆる先進国の中で最低水準にあります。経済協力開発機構(OECD)が3日に発表したデータによれば、日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合(19年時点)はOECD平均4・1%を大きく下回る2・8%で、データのある加盟37カ国中36位です。
 仮に軍事費2倍化相当のお金を教育予算に回せば、小中学校の給食費無償化、高校・大学の学費無償化など、ほぼすべての教育無償化が実現できます。(図2)

国民負担増 当然視の声
 また、前出の財政審建議によれば、軍事費が4千億円増える一方、中小企業予算を含む「その他」が3千億円以上減っています。20年度以降、中小企業は新型コロナウイルスの感染拡大で危機的状況に陥りました。しかし、政府は持続化給付金などの拡充どころか、22年度に同予算を減額。一般歳出全体に占める中小企業予算の割合は11年連続で減っています。
 ここ数年、中小企業予算は1700億円台で推移していますが、これは最新鋭のイージス艦「はぐろ」の建造費(約1730億円)程度でしかありません。防衛省は今後、さらに建造費だけで2500億円以上かかるイージス・システム搭載艦2隻の導入を狙っています。このお金があれば、どれだけの人が救われるのか…。
 年間数百億円ずつの軍事費積み増しでさえ、国民の暮らしにこれだけの影響が出ています。毎年、1兆円ずつの積み増しになれば破滅的な影響は避けられません
 仮に消費税の増税で賄う場合、おおむね2%分、つまり現在の10%から12%以上への引き上げが必要になります。法人税・所得税増税の声も出ています。
 社会保障費を削減した場合、たとえば公的年金の国庫支出分は半分近くが失われ、結果として約4千万人の年金受給者(公的年金の実受給権者)は1人あたり年間12万円以上削られます医療費の場合、現役世代の3割自己負担が6割まで拡大します。
 政府内では「自分の国は自分で守るのだから、国民全体で負担することが必要」「(国民に)当事者意識を持ち、幅広く負担してもらう」(9月30日の政府有識者会議)、「国民全体で幅広く負担するのが基本」(28日の財政審分科会)などと、国民の負担増を当然視する議論が相次いでいます。

「2倍でも足りない」
 衝撃の“緩和”措置として、財務省などが強調しているのは、他国への軍事援助や恩給費なども軍事費に含める、NATO基準に基づく算出です。防衛省によれば、これを21年度予算に当てはめた場合、同省予算(補正を含む)に海上保安庁予算などを合わせて総額約6・9兆円(=内訳別項)で、GDP比1・24%になります。(図3)














 ただ、すべてのNATO加盟国がこの基準を採用しているわけではなく、国際的にも軍事費の明確な定義は存在しません。仮にNATO基準で“見た目”の額を増やしても、なお「GDP2%」と開きがあります。

 しかも、自民党内にはNATO基準でさえ不満の声が出ています。萩生田光一政調会長は9月23日配信のインターネット番組で、「海保の船を造ったから2%から引いてほしいという話を聞く用意はない」と発言。「本当に必要なものを積み上げたら2%では足りない」と述べ、軍事費2倍化をさらに超える金額を要求しました。
 前出の「東アジア戦略概観」は、過去20年間、軍事費が優遇されてきた事実を認めつつ、「中国が日本を上回るペースで国防費を増加させている」と指摘。「日本の財政事情が厳しいことは周知の事実」だとしながら、「仮に中国との関係で抑止が破綻した場合のコストは…(軍事費増額分では)とどまらないだろう」と述べ、大軍拡の受け入れを要求しています。「中国脅威」を利用した、悪質などう喝です。
 周辺国との緊張をいたずらに高め、国民がみずからの生活を犠牲にして「国防」に協力するのではなく、憲法9条に基づく外交を通じて国際環境の改善に力をつくし、国民生活も向上させる―これが日本の歩む道です。

財務省主導岸田内閣の利権財政(植草一秀氏)

 経済学者の植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 岸田内閣は今回29・1兆円大型補正予算を組みましたが、それは官僚機構・利権政治屋・癒着企業の利益だけ追求したもので、その一方で、年金給付の開始年齢引き上げ、年金保険料引上げや消費税増税を検討しているということです。
 補正予算の場合 予算規模が注目され、大規模なら積極財政、規模が小さければ緊縮財政とされますが、財政政策で一番大切なことは財政資金の配分で、「利権の支出」をゼロにして「権利の支出」だけにするのがよいと述べています。
 「権利の支出」の中核は社会保障支出で、これの特徴は制度が確定しルールによって支出が行われるので「プログラム支出」と呼ばれます。それに対して「利権の支出」は特定の事業者、団体に財政資金を配分するので「裁量支出」と呼ばれ、利権の巣窟ります。
 「プログラム支出」は「票とカネ」にならないのに対して「裁量支出」は「票とカネ」になるので、財務省は「権利の支出」=「プログラム支出」を極限まで削減し、「利権の支出」=「裁量支出」を極限まで拡大する方針を取ります。そしてそのことで政治を動かし、自らの天下り先などの利権を確保して来ました。
 このところの旅行業・旅館業支援政策などはまさにそれに当たりますが、こうした例は無数にあり、すべての財政活動が利権化していると見ることが出来ます
 植草氏は、岸田内閣の財政政策はほぼすべてが利権予算でありここに最大の問題があるとして、逆に今回29兆円があれば 消費税減税を実施できる(1年間税率を5%にするのに10兆円あればよい)として、巨大な国費を投下するなら消費税減税や国民全員に対する一律給付などが最も透明で公正だと述べています。
 実に明快な論理で、政府・財務省の財政政策の本質が理解できます。
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財務省主導岸田内閣の利権財政
              植草一秀の「知られざる真実」 2022年10月28日
岸田内閣が総合経済対策を閣議決定した。
補正予算の一般会計歳出規模は291兆円。大型補正予算編成だ。
その一方で岸田内閣は年金給付の開始年齢引き上げ、年金保険料引上げや消費税増税を検討している。国民の利益ではなく官僚機構・利権政治屋・癒着企業の利益だけが追求される。
「利権の予算」は拡大する一方で、「権利の予算」は縮小する一方なのだ。

財政政策運営で一番大切なことは国費を何に使うかということ。
財政資金の配分こそ最重要のテーマ。ところが、現実には予算規模だけが論じられる。
規模が大きければ積極予算、規模が小さければ緊縮予算と批判を浴びる。
規模よりも重要なことは予算の使い道。財政資金配分が重要なのだ。
結論を示せば、「利権の支出」をゼロにして「権利の支出」だけにするのがよい。
「権利の支出」の中核は社会保障支出。社会保障支出の特徴は制度が確定し、ルールによって支出が行われること。これを「プログラム支出」と呼ぶ。

「利権の支出」は特定の事業者、団体に財政資金を配分するもの。利権の巣窟になる。
これを「裁量支出」と呼ぶ。
財務省は「権利の支出」=「プログラム支出」を極限まで削減し、「利権の支出」=「裁量支出」を極限まで拡大する方針を示す。
「プログラム支出」は「票とカネ」にならない。「裁量支出」は「票とカネ」になるから好まれる。

大型補正予算が編成されるとき、圧倒的シェアを占めるのは「裁量支出」。
一番透明な財政支出は国庫から国民にお金を直接手渡すこと。
一人10万円の給付金などは、もっとも透明公正な財政支出だった。
しかし、この方式は「票とカネ」になりにくい。
権利として給付を受ける国民は給付があったからといって自民党に投票しない。
特定の人、特定の事業者、特定の団体を選んで財政支出を実施すると、財政支出の恩恵を受ける者は恩義を感じて資金をキックバックしたり、選挙での協力を実行したりする。

旅行支援で自治体が特産品プレゼントを実施するとき、単純にくじ引きで商品を渡さない。
無意味なアンケートを実施して、アンケートを実施する外郭団体がプレゼント付与事業を受け持つ。この外郭団体は役所の天下り団体。この天下り団体に財政資金が流れ込む
無駄なアンケートをやめれば事務手続き費をプレゼント代に回せる。
どの事業者の特産品をプレゼント商品にするのかも大きな利権。
ふるさと納税も同じ。ふるさと納税の対象品に選定されれば事業者は利得を得る。
事業者は選定された見返りに献金を実行したり、選挙で応援したりする。

ふるさと納税は自分が居住していない地方公共団体に自分が居住する地方公共団体に支払うはずの地方税を振り替えるもので、そうすると返礼品をもらえる制度。
返礼品の分が節税になるからふるさと納税が行われる。ふるさと納税を実行する人だけが減税の恩恵に浴す。その金額を税金から差し引けばいいだけのこと。
しかし、特定の財、サービスが選定される。これも利権。

すべての財政活動が利権化している。2020年度は補正予算で70兆円も政府支出が追加された。
今回は29兆円。これだけのお金があれば消費税減税を実施できる。1年間、税率を5%にするのに10兆円あればよい。
巨大な国費を投下するなら消費税減税や国民全員に対する一律給付などが最も透明で公正だ。
一律給付の場合、給付金を課税対象にすれば高額所得者は給付金の多くを税で国庫に返納することになる。
岸田内閣の財政政策は、ほぼすべてが利権予算であり、ここに最大の問題がある。

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31- 小池知事人権行政の「歴史修正主義、レイシズム、そして検閲」(澤藤統一郎氏)

 関東大震災直後に朝鮮人グループに不穏な動きがあるというデマが流され、市民ら(自警団など)によって数千人の朝鮮人虐殺されました。朝鮮人犠牲者を追悼する式典が毎年9月1日に墨田区・横網町公園で行われ、そこには極右で知られた石原慎太郎都知事も式典に追悼文を出してきましたが、小池都知事に変わってからは追悼文を送らなくなりました。

 公式には「都慰霊協会が営む大法要で全ての震災犠牲者を追悼している」からを理由にしていますが、その陰にはヘイト団体「日本女性の会 そよ風」の影響があると言われています。しかし震災による犠牲者と市民によって虐殺された多数の朝鮮人犠牲者を同列に扱えないのは明らかなことです。
 毎日新聞が10月28日「朝鮮人虐殺に触れた映像作品の上映、都が不許可に ~ 」とする記事を出しました。
 「東京都人権プラザ」で開催中の企画展(8月末~11月末の予定)で、関東大震災で起きた朝鮮人虐殺に触れた映像作品の上映会をしようとしたところ、都が不許可にしました。映像は「In-Mates」、21年の制作で26分程度。戦前の精神科病院に入院していた朝鮮人患者の境遇や苦しみを描き、関東大震災時の朝鮮人の虐殺にも触れています。
 人権プラザは東京都人権啓発センターが運営し、都の人権部から承認を得て企画展を行っていますが、入手したメールによると、関東大震災の朝鮮人犠牲者への追悼式典に、小池都知事が毎年追悼文を送っていないことを挙げ、「都知事がこうした立場をとっているにもかかわらず、朝鮮人虐殺を事実と発言する動画を使用することに懸念がある」と指摘しているということです。
 さすがに小池都知事も朝鮮人虐殺は事実でないとまでは言っていない筈ですが、関係者が知事の意向を忖度した結果こういうことになったのは事実です。
 弁護士の澤藤統一郎氏が、「小池百合子人権行政の『歴史修正主義、レイシズム、そして検閲』」という痛烈な批判記事を出しました。(レイシズム=人種差別)
 関連記事
       21.9.2小池百合子が関東大震災の朝鮮人追悼式典に5年連続で追悼文拒否
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小池百合子人権行政の「歴史修正主義、レイシズム、そして検閲」
                   澤藤統一郎の憲法日記 2022年10月29日
 東京都総務局に人権部がある。結構なことだ。この人権部が、東京都人権プラザという施設を開設している。運営主体は公益財団法人東京都人権啓発センター。常勤役員1人、常勤職員数18人(うち都派遣7人)という構成。
 このセンターのホームページを開くと、立派な理事長挨拶が飛び込んでくる。

「21世紀は、「人権の世紀」といわれています。1948年の国連総会において「すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と謳われた「世界人権宣言」が採択されて以来、わが国も、人権が尊重される社会の実現を目指して、さまざまな取組を行ってきました。
 一方、私たちが暮らす社会を見渡すと、残念ながら、今なお様々な人権侵害が生じています。…差別やいじめ、インターネットを介した匿名型の誹謗中傷など、これまで経験したことのない新たな問題も生じており、差別や偏見を解消する取組が、ますます重要になってきています。…「人権尊重都市・東京」の実現が喫緊、かつ、重要な課題となっています。
 弊財団は、東京都の公益法人として、「個人の尊重」と「法の下の平等」の保障という観点に立脚し、人権に関する様々な課題を看過することなくしっかりと見据え、差別や偏見のない明るい社会の実現に向けて、役職員一丸となって取り組んで参ります。」 

 この立派な理念にもとずく東京都の人権行政が、いま大きな批判を浴びている。「歴史修正主義・レイシズム・検閲」と並べたてられた批判。市民からのこんな怒りのメールが目に痛い。
 「よりによって都の人権部が検閲を行ない、朝鮮人虐殺の隠蔽に加担するなんて言語道断です。「人権」を理解しない「人権部」って何ですか? 関係者は処分されるべきです」

各紙がこう報じている。
「朝鮮人虐殺に触れた映像作品の上映、都が不許可に 関係者『検閲だ』」(毎日)
「朝鮮人虐殺言及映像、都職員『懸念』メール 都『稚拙だった』と釈明」(朝日)
「東京都が朝鮮人虐殺題材の映像作品を上映禁止…作者『検閲だ』と批判 都職員が小池知事に忖度?」(東京新聞)

 東京都設置の「東京都人権プラザ」での事件である。開催中の企画展で、関東大震災で起きた朝鮮人虐殺に触れた映像作品の上映が不許可とされた。この作品を作った美術家の飯山由貴が昨日(10月28日)記者会見を開いて明らかにし、「都による検閲が行われた。悪質で重大な問題だ」と批判した。
 この企画展は「あなたの本当の家を探しにいく」というタイトルで、8月末~11月末の予定で開催。上映中止となった映像は2021年の制作の「In-Mates」という表題。26分程度のフィルム。1930〜40年に都内の精神科病院に入院していた朝鮮人2人の診療記録を基に、ラッパーで詩人の在日韓国人FUNIさんが当時の彼らと今の在日韓国人が抱える葛藤や苦難を表現。在日朝鮮人の歴史を専門とする外村大・東京大教授から「日本人が朝鮮人を殺したのは事実」と説明を受ける場面があるという。
 都内で会見した飯山さんによると、11月末までの会期中に映像の上映とトークイベントを計画。だが6月、都人権部からプラザを運営する都人権啓発センターに、上映とイベントを禁じる通知があった
 人権プラザの運営は、都人権部からの指導で行われているが、飯山さんは、入手した人権部からセンターに送られた内部メールの内容を記者会見で公表した。当該メールは、《関東大震災の朝鮮人犠牲者への追悼式典に、小池百合子都知事が毎年追悼文を送っていないことを挙げ、「都知事がこうした立場をとっているにもかかわらず、朝鮮人虐殺を『事実』と発言する動画を使用することに懸念がある」と指摘していた》という。都は、このメールの存在と内容の真実性は認めている。
 飯山さんは「在日コリアンへの差別に基づく検閲があったと思う。判断には小池都知事の姿勢が大きく影響しているのでは」と語った。今後、こうした事態が繰り返されないように署名活動を行い、知事宛てに要望書を提出するという。
 都人権部の担当者はこのメールの存在と内容を事実と認めたうえで、「取りやめの理由は『障害者と人権』という企画の趣旨から外れているため。企画展はセンターが主催しており、スペースを貸し出して表現者が自由に表現する場ではない」と説明した。

 さて、問題は元兇小池百合子の姿勢である。「28日の定例記者会見で、この問題について問われ、『(企画展は)精神障害者の人権がテーマだった。その趣旨に合わないということで(都人権部が)上映しない判断に至ったと聞いている』と説明した。」と報じられている。が、これはおかしい。メチャメチャにおかしい。
 なによりも、他人事のごとき語り口がおかしい。「と聞いている」ではなく、自分の判断を語らねばならない。本来であれば、「あたかも、担当者が知事の意向を忖度して上映不許可の判断に至ったごとくに誤解を与えたことをお詫びします。全ての人の人権尊重の立場から、上映になんの問題もありません」と言えば、私も少しは見直したのに。
 小池発言の内容もおかしい。「精神障害者の人権がテーマだったから、この映像はふさわしくない」と言うのはおかしい。どの精神障害者も、その属性・その環境にそれぞれの固有の問題を抱えている。女性の精神障害者には、女性特有の精神的な悩みがある。女性の社会的地位の問題を捨象しての「精神障害者の人権」を語ることはできない。労働者の精神障害罹患者には特有の労働環境問題がある。労働環境を捨象しては「精神障害者の人権」を論じがたい。当たり前のことだ。本件の映像は、「戦前の精神科病院に入院していた朝鮮人患者の境遇や苦しみを描き、関東大震災時の朝鮮人の虐殺にも触れた」ものである「精神障害者の人権」を語るために、これ以上ないテーマではないか

 上映不許可は、小池に深く根差している、歴史修正主義とレイシズム、そして表現の自由に対する尊重の姿勢の欠如がもたらしたものと考えざるを得ない
 歴史修正主義とは、日本の広範な民衆が恥ずべき残虐行為を繰り広げた歴史的事実を認めたくないということである。関東大震災直後に、軍や在郷軍人や警察の煽動に乗せられて、自警団を組織した普通の日本人が、多数の朝鮮人や中国人を残酷になぶり殺したのが史実である。他の右翼と同様、小池もこの史実を認めたくないのだ。
 その歴史修正主義の根底には、いわれなき他民族に対する差別意識と、何の根拠もない自民族についての優越意識がある。このレイシズムが、関東大震災後の朝鮮人虐殺犠牲者に対する追悼式への追悼文拒否となっている。知事の追悼文は、1974年の第1回追悼式以来の慣例となっていた。あの極右政治家・石原慎太郎ですら、毎回の追悼文を欠かさなかったのだ。それを、取りやめたのが小池百合子である。
 もう一点、小池は、「関東大震災後の朝鮮人虐殺の認識については「東京で起こった大きな災害と、それに続くさまざまな事情で不幸にも亡くなられた方の例がある。全ての方々に対して哀悼の意を表するということで私自身は対応してきた」と述べている。これもおかしい。
 自然災害の犠牲者と虐殺による犠牲者とを意図的に同列に置くことで、虐殺の史実を目立たぬようにし、何とか忘れさせよう、歴史から葬ろうというのが、小池の魂胆なのだ。これを受け容れてはならない、だまされてはならない。

2022年10月30日日曜日

日本経済をシャブ漬けにした異次元緩和 庶民に塗炭の苦しみが

 現下の日本の惨状は挙げてアベノミクスのしからしめるものです。アベノミクスは止まれば爆発するバスのようなもの(止まることができない)と譬えた人がいましたが、異次元の金融緩和を正次元に戻す方法論がないことは当初から言われていたことでした。

 世界中の中央銀行が一斉に「インフレ抑制」=金利上げ に動いている中で、日本だけがそうできない状態はその異常性の一端と言えます。確かに金利を上げれば国も立ち行かなくなるし、その前に中小企業の多くが倒産してしまうでしょう。
 日本銀行は世界の中でただ一人現行の「異次元緩和」を続けていくことを決めました。黒田総裁は言うに事欠いて「日本経済は新型コロナウイルス禍からの回復途上にあり、これをしっかり支えていくことが必要だ」と発言しました。そこまで荒唐無稽な言い方をしないことには体面が保てないとはまた惨めな話です。ただただこのまま出来るだけ穏便に経過させて来年4月の任期満了を迎えたいという一心なのでしょう。
 日刊ゲンダイは「異次元緩和の最大の罪は10年かけて日本経済を“シャブ漬け”にし、ゆっくり確実に衰退させたこと」と述べました。異次元緩和によ“円安”と“低金利”によって何の努力をしなくとも企業が大儲けできる環境なり、本来の設備投資も、人材投資も、研究投資も怠ったため、金は大いに溜まったものの企業の体力は減退の一途を辿ったという意味です。
 一体円安は何処で収まるのか・・・1ドル200円を超すと予想する人もいます。日本はまだ円安による原価の上昇を売価に転嫁すると、売り上げが急減するからと最大限の努力をして抑えているため見掛けのインフレ率は低く収まっていますが、それもアベノミクスと同様に無限には続けられません。どこかで破裂すれば猛烈なインフレが始まることになり、庶民はより一層 塗炭の苦しみを味わうことになります。
 自民税調は政府が総合経済対策に29兆円の大判振る舞いをしたのを機に消費税率のアップを言い出したようですが、財務省の意を受けてそんな非常識なことを言い出すのも世界で日本だけです。岸田政権はどこまで亡国政策を続けるのでしょうか。
 日刊ゲンダイが、「日本経済をシャブ漬けにしたのは誰だ 庶民に押し付け 黒田バズーカの尻拭い」とする記事を出しました。
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日本経済をシャブ漬けにしたのは誰だ 庶民に押し付け 黒田バズーカの尻拭い
                         日刊ゲンダイ 2022/10/29
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 世界中の中央銀行が、一斉に「インフレ抑制」に動いているのに、またしても黒田日銀はノーアクションだった。
 予想通り、日本銀行は、28日に開いた金融政策決定会合で、現行の「異次元緩和」を続けていくことを決定した。異次元緩和を続ける理由として、黒田総裁は「日本経済は新型コロナウイルス禍からの回復途上にあり、これをしっかり支えていくことが必要だ」と発言してみせた。
 要するに、日本経済は脆弱だから金融緩和を継続するしかない、ということらしい。たしかに、黒田が指摘するように、いま欧米各国と同じように金利を上げたら、住宅ローンを払えなくなる人が続出し、中小企業の破綻が相次ぐ恐れがある。
 しかし、よくも平然と「日本経済は回復途上にあり……」などと口にできたものだ。金利を上げられないほど日本経済を弱体化させたのは、いったいどこの誰なのか。この10年間、アベノミクスを推し進めてきた黒田なのではないか。日本経済を弱らせた張本人のくせに他人事のような態度は無責任にもほどがある。ふざけるのもいい加減にしろ、という話だ。10年続けた異次元緩和が、日本経済を弱体化させたのは紛れもない事実だ。
年初からの通貨の下落率を見れば、日本経済の弱体ぶりは一目瞭然です。下落しているのは日本円だけではありませんが、日本円の対ドルの下落率は突出している。9月末でユーロは14%、韓国ウォンも17.5%なのに、日本円は20%を超えている。日本円はバーツやルピアに対しても1~2割下げています」(経済評論家・斎藤満氏)
 過去10年、アメリカのGDPは16兆ドルから26兆ドルに増え、ドイツも28兆ドルから38兆ドル、中国は96兆ドルから20兆ドルに拡大しているのに、日本だけは52兆ドルから43兆ドルに低下している。とうとう平均賃金も韓国に抜かれてしまった。

競争力を失った日本企業
 異次元緩和の最大の罪は、10年かけて日本経済を“シャブ漬け”にし、ゆっくりだが、確実に衰退させたことだ。
 もともと日本の強みは高い技術力であり、国際競争力だった。ところが、いまや輸出大国には程遠い状況だ。2022年度上半期の貿易赤字は、過去最大の11兆円に達してしまった。年間20兆円に膨らむのは確実だろう。日本の得意分野だった半導体まで大量に輸入しているありさまである。かつて工業製品を輸出して稼いでいた日本の姿は見る影もない。
 深刻なのは、円安が進んでも輸出が増えないことだ。以前なら円安が進めば価格競争力が強まり輸出が増えたのに、数量ベースでも輸出が増えていない。
「戦後、日本企業は、ニクソンショック、プラザ合意……と危機に陥るたびに技術革新を進め、力をつけてきました。デフレ不況と呼ばれた1998~2012年でも企業は収益をあげていた。日本企業は高い技術力をバックに自力で稼いできたのです。ところが、異次元緩和によって“円安”と“低金利”という黙っていても儲かる環境となり、企業は努力をしなくなってしまった。設備投資も、人材投資も、研究投資も怠った。その結果、アメリカで生まれたGAFAといった新興企業も育たなかった。EV(電気自動車)の開発も大きく遅れています。黒田日銀の最大の失敗は、金融緩和すれば日本経済は成長すると勘違いしたことです。クルマに例えると、金融政策は“ブレーキ”であって“エンジン”ではない。ブレーキは速度を落としたり停止させることはできても、走らせることはできない。あくまでもエンジンは企業の稼ぐ力です。恐らく黒田総裁も、途中で勘違いに気づいたはず。でも、異次元緩和の失敗を認めることになるので継続するしかなかったのでしょう」(斎藤満氏=前出)
 なぜ、公約通り2年で異次元緩和を終わらせなかったのか。
 10年間もシャブ漬けにしたために、日本経済は自力では立てなくなっている

物価高で国民生活は限界
 異次元緩和が失敗に終わったため、日本は利上げもできず、その結果「円安」が続き、インフレも止まらない状態だ。黒田バズーカのツケを庶民が負わされている状況である。給料がほとんど上がらないのに、狂乱物価で生活はもう限界だ。
 FNNの世論調査では、物価高で生活が「苦しくなった」と答えた人が671%に上っている。
 なにしろ、10月は食品の値上げが6700品目に上り、年内の値上げは2万品目を超える。マヨネーズは昨年7月から3回も値上げされ、食用油に至っては6回も価格が上がっている。
 今後は、さらに上昇幅が拡大する恐れがある。総務省が28日に発表した東京都区部の10月の消費者物価指数(中旬速報値)は、前年同月比34%も上昇。この都区部の指数は全国消費者物価指数の「先行指標」とされている。
「異次元緩和を始めてから10年になるが、庶民への恩恵はほとんどありませんでした。トリクルダウンは起きず、実質賃金も上がらなかった。その挙げ句、円安物価高なのだから、庶民は踏んだり蹴ったりです。黒田総裁は過去、国会で『スーパーに行ったことはあるが、買い物は妻に任せている』と言い放っていました。庶民の生活実態が分からないのでしょう」(経済アナリスト)
 経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「黒田総裁にはもはや打つ手がないのだと思います。国民生活より、とにかく来春の任期まで波風立てずにやり過ごすことを考えているのではないか。ただ、黒田総裁が退き、誰が後任になっても金利を正常な状態に戻すのは難しいでしょう。長く異次元緩和を続けてきた結果、日本経済はゆがみ、簡単に手を付けられる状態ではなくなっています」

亡国政策を続ける岸田政権
 これ以上、日本経済を蝕む異次元緩和を続けたら、この国は本当に終わってしまう。即刻やめないとダメだ。一刻も早く、日本企業をドーピングなしで戦える体に戻す必要がある。
 ところが、岸田首相は異次元緩和アベノミクスを継続しているのだから、どうしようもない。やめる気がまったくない。
 28日「総合経済対策」を閣議決定した後の会見で、海外メディアから「物価高が続く中、緩和政策を続けることに国民の理解を得られると思うか」と問われた時も、「過度の変動に適切に対応する」と トンチンカンな見解を繰り返し、質問に正面から答えようともしなかった。
 肝心の「総合経済対策」も、バラマキのオンパレードでアベノミクスとほとんど同じだ。まず「規模ありき」で、しかも、財政支出39兆円の大半を赤字国債で賄うという。中身は電気やガス代などの支援と効果が不明な弥縫策ばかりだ。
 この10年間、景気が悪化するたびに赤字国債を発行し、効果の薄いバラマキを繰り返してきた愚策を、またやろうとしている。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「岸田首相は支持率下落を挽回するために、巨額のバラマキ策を打ち出したのでしょう。しかし、本気でこの国の経済を立て直す気があるなら、アベノミクスと決別し、産業構造を根本から変えるような政策が不可欠です。黒田総裁に引導を渡すくらいの決意が必要なのに、岸田首相からはそんな覚悟は感じられません」
 亡国政策への追及が手ぬるい大マスコミも問題だ。岸田、黒田の退場を求めなければダメだ。

首相最側近の木原官房副長官にも「推薦状」 統一協会側とズブズブの自民

 自民党と統一協会のズブズブの関係はどこまで広がっているのでしょうか。

 岸田首相の最側近と見られる木原誠二官房副長官28日の衆院内閣委で、統一協会ダミー団体「世界平和連合」から昨年の総選挙時に「推薦状」を受け取っていたことを共産党の塩川鉄也議員への答弁明らかにしました。木原氏は同じくダミー団体「平和大使協議会」のメンバーが16年夏に設立した同氏の支援団体「誠世会」7回程度講師として参加しています。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「官房副長官は首相の外遊にも同行する官邸の要職。安倍・菅政権以降も統一教会が官邸にまで入り込んでいた衝撃は大きい。また霊感商法などの被害防止策を練っている消費者庁担当の大串正樹副大臣山田賢司外務副大臣が、昨年の総選挙時に「推薦確認書」署名していたのもヒドい話です(日刊ゲンダイ)」と述べています。
 岸田首相は先般ようやく山際前経済再生相を更迭しましたが、とてもそんなことで収まりそうもありません。如何に茂木幹事長が行った調査がデタラメであったのか、そしてこの先どこまで尾を引くのか測り知れません。
 しんぶん赤旗(2本)と日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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木原官房副長官に「推薦状」 統一協会側、昨年の総選挙
              衆院内閣委 塩川氏追及
                      しんぶん赤旗 2022年10月29日
 木原誠二官房副長官は28日の衆院内閣委員会で、統一協会(世界平和統一家庭連合)のダミー団体「世界平和連合」から昨年の総選挙時に「推薦状」を受け取っていたと明らかにしました。日本共産党の塩川鉄也議員への答弁
 塩川氏は、統一協会と推薦確認書は交わしたかと質問。木原氏は過去4回の選挙での約1000通の推薦状を調べ、「昨年の総選挙の際、世界平和連合からの推薦状を受領していることが確認された」と認めました。同協会が国政選挙で自民党候補に署名を求めてきた「推薦確認書」について同氏は「交わした事実は確認されなかった」と述べました。
 木原氏をめぐっては、統一協会のダミー団体「平和大使協議会」のメンバーが2016年夏に支援団体「誠世会」を設立しています。木原氏は「何人かの方がそうした団体に関連している」ほか、7回程度講師として参加し、「ご支援、ご理解いただいていた」と答弁しました。
 塩川氏は、同協議会は統一協会の中核的組織だと指摘し、協会関係者から選挙支援を受けたかと追及。木原氏は電話かけなどで「他の組織の応援を受けることはない」と否定しました。
 塩川氏は「推薦確認書」などでの政策への賛同や、質疑で明らかになった「推薦状」も自民党の調査には含まれていないと指摘し、政府として政務三役の推薦状受領や確認書への署名、入会について調査・報告するよう要求。「各議員が調査し説明責任を果たす」と繰り返す松野博一内閣官房長官に、「説明責任が果たされていない。岸田政権の姿勢が問われている」と批判し、重ねて調査、報告を求めました


旧統一教会“癒着”で岸田政権またも大揺れ…最側近の木原官房副長官もズブズブだった
                         日刊ゲンダイ 2022/10/29
 一難去ってまた一難、いやいや身から出たサビだ。
 自民党と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との癒着の解明がちっとも進まない中、瀬戸際大臣(山際大志郎前経済再生相)の更迭で局面打開を図った岸田政権が早くも大揺れしている。教団の関連団体「世界平和連合」や「平和大使協議会」から事実上の「政策協定」である推薦確認書を提示され、署名していた副大臣が次々に判明。首相最側近の木原誠二官房副長官も推薦状を受け取ったことが明るみに出たからだ。言うまでもなく、すべて自民党の議員だ。
 旧統一教会サイドと推薦確認書を交わしていたのは、消費者担当副大臣を兼務する大串正樹デジタル副大臣と、山田賢司外務副大臣。いずれも、昨年10月の衆院解散前に署名していた。憲法改正実現や安全保障体制の強化、同性婚合法化への慎重な対応など、教団が関連団体と一体化して掲げる政策の推進を約束したということだ。井出庸生文科副大臣は提示されたものの、署名は断ったという。
 政権にとって、瀬戸際大臣を上回るインパクトなのが木原氏だ。28日の衆院内閣委員会で共産党の塩川鉄也議員から追及され、推薦状の受け取りについて「私、スタッフ、事務所を含めて当時の認識が不足していた。正しくなかった。深く反省し、おわびしたい」と認めた。直近4回の衆院選で受け取った約1000枚の推薦状のリストをチェックし、確認したという。推薦確認書への署名は否定し、「具体的に政策要望などを受けたことはない」などと釈明したが、推薦状をもらったのは、すでに官邸の要である官房副長官の任に就いていた昨秋の衆院選のタイミング。脇が甘かった、じゃ済まされない。

安倍・菅政権以降も旧統一教会は官邸に入り込んでいた
 2016年12月に関連団体主催の会合に参加していたことも、報道を受けて「記憶が呼び覚まされた」とか言って渋々認めたくらいだから、濃厚な接点が後から後から出てくる可能性がある。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
官房副長官は首相の外遊にも同行する官邸の要職。安倍・菅政権以降も統一教会が官邸にまで入り込んでいた衝撃は大きい霊感商法などの被害防止策を練っている消費者庁担当の副大臣が利害関係者と近しかったのもヒドい話です。岸田首相は〈国民の声を受け止め、一つ一つ結果を出す〉なんて言っていますが、世間から見れば言っていることとやっていることは真逆。茂木幹事長に押し返され、党内の膿を出し切らなかったツケが回っている」
 中川貴元総務政務官は昨秋の衆院選で教団関係者に電話かけを手伝ってもらい、井野俊郎防衛副大臣は16年11月に後援会メンバーだった教団関係者を法務省内を見学させた可能性を認めている。
 木原氏は今や懐かしい小泉チルドレンの1人。野党から寝返った井出氏と当選1回の中川氏を除く3人は安倍チルドレンだ。地盤が弱い連中が教団票にすがった構図が浮かび上がる。


徹底追及 統一協会 発覚次々 癒着底無し 宮内文科委員長 演壇に 19年の集会 宗教所管 “点検”報告せず
                       しんぶん赤旗 2022年10月28日
 統一協会(世界平和統一家庭連合)が2019年に福岡県内で開いた集会で、自民党衆院議員の宮内秀樹・文部科学委員長(福岡4区)が演壇に立っている写真を、同協会がネットニュースに掲載していることが27日、本紙の調べで分かりました。宮内氏は集会参加を自民党の自主点検で報告していません宗教を所管する文部科学委員会の委員長としての資格が問われています。(統一協会取材班)
 問題の集会は、19年4月7日に福岡県宗像市で青年信者向けに開いた「ファミリーパワーフェスティバル青年3000名大会」。統一協会関連メディアによると主催は同協会の日本第5地区です。
 統一協会のネットニュース「HJグローバルニュース」(19年4月13日)は、ひとりで壇上に立つ宮内議員の写真を複数、掲載しています。これによると、宮内議員は統一協会のマークを飾り付けた演台に立って話をしていました。
 このニュースでは、話の内容は紹介されていません。ただアナウンサーは、参加した地域の指導者たちが「現代社会の危機を真の家庭運動を通じて解決している家庭連合のビジョンを強く支持しました」と紹介しています。来賓参加者が統一協会の活動を支持した“広告塔”として扱われた形です。
 自民党が9月に公表した自主点検には、宮内議員が統一協会関連団体であいさつしたと記載されています。他方で、同協会主催の会合への出席については報告がありません。
 関連団体でのあいさつについては、「朝日」(9月10日付)が統一協会のダミー団体「九州平和大使協議会」の会合(19年7月)に出席したことを報じています。宮内議員は報じられた会合のみを自民党に報告した疑いがあります。
 自民党の自主点検を巡っては、閣僚を辞任した山際大志郎・前経済再生担当相のように、報告していなかった統一協会との関係が相次いで発覚するなど、ずさんさが問題になっています。
 集会参加などについて宮内議員に文書で質問しましたが、回答はありませんでした。