2018年6月25日月曜日

沖縄慰霊の日 平和の詩「生きる」 感動の全文

 23日に行われた沖縄全戦没者追悼式で、沖縄中学3年の相良倫子さんが、自作の平和の詩「生きる」を朗読(実際は全文を暗唱)ました。
 その詩は沖縄県平和祈念資料館が募った「平和の詩」971点の中から選ばれたもので、
 沖縄戦を生き抜いた曽祖母からその体験を聞いて
平和とは、あたり前に生きること。その命を精一杯輝かせて生きることと考えた。生まれ育ったこの美しい島から伝えたい。鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。命よ響け。生きゆく未来に。私は今を、生きていく
と謳って(共同通信)います。
 心に染み入る反戦の詩は多くの人々に感動を与え、インターネットでは賛辞のツイートが溢れました。
 
 澤藤統一郎氏は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」(6月23日)の中で
「沖縄県平和祈念資料館が募集した「児童・生徒の平和メッセージ」の最優秀賞受賞作品。審査委員が「悲惨な戦争によって奪われた『生きる』ことへの思いは、過去から現在、そして未来・世界へと時間と国境を超えて発信された平和へのメッセージであり、その重厚さが審査員をうならせた」と評価された(沖縄タイムス)という。
審査員だけでなく、本日は、全国の人々に感動を与えたものと思う。私も、心打たれた。とりわけ、次のフレーズ。これはすごい。たいしたものだ。
 
だから、きっとわかるはずなんだ。
戦争の無意味さを。本当の平和を。
頭じゃなくて、その心で。
戦力という愚かな力を持つことで、
得られる平和など、本当は無いことを。
平和とは、あたり前に生きること。
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。
 
摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。」
 
と称賛しています。
 
 毎日新聞が 平和の詩「生きる」の全文を載せましたので紹介します。
 なお、相良さんが式で詩を暗唱したシーンの動画は下記でご覧になれます。
   朗読シーンの動画:⇒ https://youtu.be/cNVS7ctD1Gs 
 
 先ず相良さんの肉声の「訴え」を聞いて、それから全文に目を通すのが順序かも知れません。
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沖縄慰霊の日  平和の詩「生きる」全文
毎日新聞 2018年6月23日
 
「生きる」 
沖縄県浦添市立港川中学校 3年 相良倫子 
私は、生きている。 
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、 
心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、 
草の匂いを鼻孔に感じ、 
遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。 
  
私は今、生きている。 
  
私の生きるこの島は、 
何と美しい島だろう。 
青く輝く海、 
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、 
山羊の嘶き、 
小川のせせらぎ、 
畑に続く小道、 
萌え出づる山の緑、 
優しい三線の響き、 
照りつける太陽の光。 
  
私はなんと美しい島に、 
生まれ育ったのだろう。 
  
ありったけの私の感覚器で、感受性で、 
島を感じる。心がじわりと熱くなる。 
  
私はこの瞬間を、生きている。 
  
この瞬間の素晴らしさが 
この瞬間の愛おしさが 
今と言う安らぎとなり 
私の中に広がりゆく。 
  
たまらなく込み上げるこの気持ちを 
どう表現しよう。 
大切な今よ 
かけがえのない今よ 
 
私の生きる、この今よ。 
  
七十三年前、 
私の愛する島が、死の島と化したあの日。 
小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。 
優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。 
青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。 
草の匂いは死臭で濁り、 
光り輝いていた海の水面は、 
戦艦で埋め尽くされた。 
火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、 
燃えつくされた民家、火薬の匂い。 
着弾に揺れる大地。血に染まった海。 
魑魅魍魎の如く、姿を変えた人々。 
阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。 
  
みんな、生きていたのだ。 
私と何も変わらない、 
懸命に生きる命だったのだ。 
彼らの人生を、それぞれの未来を。 
疑うことなく、思い描いていたんだ。 
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。 
仕事があった。生きがいがあった。 
日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。 
それなのに。 
壊されて、奪われた。 
生きた時代が違う。ただ、それだけで。 
無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。 
  
摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。 
悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。 
私は手を強く握り、誓う。 
奪われた命に想いを馳せて、 
心から、誓う。 
  
私が生きている限り、 
こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。 
もう二度と過去を未来にしないこと。 
全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、あらゆる利害を越えて、平和である世界を目指すこと。 
生きる事、命を大切にできることを、 
誰からも侵されない世界を創ること。 
平和を創造する努力を、厭わないことを。 
  
あなたも、感じるだろう。 
この島の美しさを。 
あなたも、知っているだろう。 
この島の悲しみを。 
そして、あなたも、 
私と同じこの瞬間(とき)を 
一緒に生きているのだ。 
  
今を一緒に、生きているのだ。 
  
だから、きっとわかるはずなんだ。 
戦争の無意味さを。本当の平和を。 
頭じゃなくて、その心で。 
戦力という愚かな力を持つことで、 
得られる平和など、本当は無いことを。 
平和とは、あたり前に生きること。 
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。 
  
私は、今を生きている。 
みんなと一緒に。 
そして、これからも生きていく。 
一日一日を大切に。 
平和を想って。平和を祈って。 
なぜなら、未来は、 
この瞬間の延長線上にあるからだ。 
つまり、未来は、今なんだ。 
  
大好きな、私の島。 
誇り高き、みんなの島。 
そして、この島に生きる、すべての命。 
私と共に今を生きる、私の友。私の家族。 
  
これからも、共に生きてゆこう。 
この青に囲まれた美しい故郷から。 
真の平和を発進しよう。 
一人一人が立ち上がって、 
みんなで未来を歩んでいこう。 
  
摩文仁の丘の風に吹かれ、 
私の命が鳴っている。 
過去と現在、未来の共鳴。 
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。 
命よ響け。生きゆく未来に。 
私は今を、生きていく。