2022年1月31日月曜日

佐渡金山の世界文化遺産申請 政府は戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべき 

 23年の世界文化遺産登録を目指す国内候補として、新潟県が「佐渡島の金山」を申請した際に政府ははじめ消極的な姿勢を示していましたが、28日、一転して岸田首相「本年申請をおこなうという結論に至った」と公表しました。

 「佐渡島の金山」は、1603年に徳川幕府直轄の天領として佐渡奉行所が置かれ、小判の製造も行われ、江戸幕府の財政を支えたもので世界文化遺産に値するものです。同時に太平洋戦争の末期に、当時日本の植民地支配下にあった朝鮮人の強制労働が行われたという歴史的事実があり、それは新潟県が編さんした『新潟県史 通史編8 近代3』佐渡の旧相川町が編さんした『相川の歴史 通史編 近・現代』にも、「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行は、戦時産金国策にはじまって、敗戦でようやく終るのである」等と明記されています。
 政府が「佐渡島の金山」を世界文化遺産の候補として推薦する方針を決めたことについて、共産党の志位和夫委員長は29日、佐渡の金山が世界文化遺産として推薦に値するものだと認めると一方で、「日本政府は、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべきである」とする談話を発表しました。
 ユネスコの世界文化遺産登録の原則は、「より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならない」とされていて、歴史的価値を強調する一方で、朝鮮人強制労働という負の側面を除外することは許されていません。当然、関係国の合意も必要です。
 これに関しては日本には前科があり、15年に当時の安倍首相の肝いりによって世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」には韓国が反発したため、日本側は朝鮮人徴用工意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた事実を認め、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じると約束していたのですが、17年、19年の「保全状況報告書」で、それらが履行されていないことが明らかになりました。
 また日本政府は15年に中国が世界記憶遺産に申請した「南京大虐殺の文書」が登録されたことや16年に日中韓などの民間団体が旧日本軍「従軍慰安婦」に関する資料を申請したことに対して猛反発し、ユネスコに審査方法の見直しを要求し、それによって17年には慰安婦関係資料の登録判断が延期され、登録申請の受付も中断されました。
 またを受けてユネスコの執行委員会は21年4月、加盟国による異議申し立てを認め、関係国が無期限で対話するなど「加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」という制度改革案を承認したでした
 この度韓国の反対を押し切って佐渡金山を推薦するのは、そうした日本の過去の猛抗議とも相容れないものです。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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日本政府は、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべきである
   佐渡金山の世界遺産推薦について 志位和夫委員長が談話
                       しんぶん赤旗 2022年1月30日
 政府が「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)を世界文化遺産の候補として推薦する方針を決めたことについて、日本共産党の志位和夫委員長は29日、次の談話を発表しました。

 一、岸田文雄首相は28日、「佐渡島の金山」(佐渡金山)を世界文化遺産の候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦すると表明した。わが党は、佐渡金山は世界文化遺産として推薦に値するものだと考えるが、日本政府が、登録推薦を行うならば、戦時中の朝鮮人強制労働の歴史を認める必要がある

 一、世界遺産とは「人類の知的・精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくる」というユネスコの理念に基づくもので、登録推薦物について調査・勧告を行う国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は「より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならない」(「文化遺産の解説及び展示に関するICOMOS憲章」)との原則を示している。
 佐渡金山についても、戦国時代末から江戸時代にかけてだけでなく、明治以降、戦時の朝鮮人強制労働などを含む歴史全体が示されることが必要である。戦時中の歴史を「時代が違う。まったく別物」とする政府・自民党の中にある主張は、世界遺産の趣旨に反する。ユネスコやICOMOSが掲げる原則をふまえるならば、世界文化遺産の登録推薦にあたっては、負の歴史を含めて、歴史全体が示されなければならない。

 一、アジア・太平洋戦争の末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことは、否定することのできない歴史的事実である。新潟県が編さんした『新潟県史 通史編8 近代3』は「朝鮮人を強制的に連行した事実」を指摘し、佐渡の旧相川町が編さんした『相川の歴史 通史編 近・現代』は、金山での朝鮮人労働者らの状況を詳述したうえで、「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行は、戦時産金国策にはじまって、敗戦でようやく終るのである」と書いている。この歴史を否定することも、無視することも許されない。

 一、日本政府自身、長崎の端島(通称・軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録(2015年)の際、戦時の朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と、ユネスコ世界遺産委員会で表明している。にもかかわらず、日本政府は今もその国際約束の実行を怠っており、昨年の世界遺産委員会では、日本に対し「強い遺憾の意」を示し、犠牲者を記憶する適切な措置などを重ねて求める決定が採択されている

 日本政府は、佐渡金山の世界文化遺産への登録推薦をするならば、これまでの態度をあらため、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認め、自らの国際約束を果たすべきである。

安倍氏のゴリ押しで「佐渡金山」世界遺産申請 認定は将来とも絶望的に

 「佐渡金山」の世界文化遺産申請は安倍元首相のゴリ押しで実現したものですが、LITERAが、それはあらゆる点から無理筋であって、今回の申請(推薦)が却下されると今後登録されるのはより困難になるとする記事を出しました。

 15年に安倍氏の肝いりによって「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されて以降、日本がユネスコとの約束を破り続けて来たことや、15年に中国が世界記憶遺産に申請した「南京大虐殺の文書」が登録されたことや16年に日中韓などの民間団体が旧日本軍「従軍慰安婦」に関する資料を申請したことに対して日本が猛反発し、ユネスコに審査方法の見直しを要求し、17年に慰安婦関係資料の登録判断が延期され、登録申請の受付も中断させるなどした経過が具体的に語られています
 安倍氏ら極右の策動によって日本が如何に国際的に権威を失墜して来たかが良く分かります。
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安倍のせいで「佐渡金山」世界遺産は逆に絶望的に! 歴史修正主義宣伝と影響力誇示のためだけに“安倍フォン”かけまくり関係者に圧力
                            LITERA 2022.01.30
 2023年の世界文化遺産登録を目指す国内候補に選ばれた「佐渡島の金山」(新潟県佐渡市)について、政府がユネスコへの推薦を「見送る」とした報道から一転、28日、岸田文雄首相は「本年申請をおこない、早期に議論を開始することが登録実現への近道であるという結論に至った」と公表、ユネスコへ推薦すると表明した。
 岸田首相は「変わったとか(方針を)転換したとの指摘は当たらない」と述べたが、安倍晋三・元首相からのゴリ押しに屈したことは一目瞭然だ。
 佐渡金山は昨年末の2021年12月28日に文化庁が文化審議会においてが国内候補に選定されたと発表したのだが、この決定に対し、佐渡金山は戦時中に朝鮮人の強制労働がおこなわれた歴史があることから韓国政府が反発。外務省も「登録が見込めない」という理由からユネスコへの推薦に消極的な姿勢を示していた。
 ところが、急に安倍元首相がしゃしゃり出るようになり、「(韓国に)ファクトベースでしっかり反論すべきだ」「論戦を避けた形で申請しないのは間違っている」などと主張。自民党政調会長である高市早苗氏やネトウヨ論客たちも一斉に岸田バッシングを開始し、ついに岸田首相は見送りの方針を一転させたのだ。
 だが、暗澹とさせられるのは、今回のユネスコ推薦決定に対し、ネトウヨたちだけではなく、マスコミや世論からも「安倍元首相や高市氏の主張は当然」「韓国が政治問題化させているだけ」という声があがり、「岸田首相が弱腰すぎた」などと安倍元首相のゴリ押しを評価する向きがあることだ。
 まったく何を言っているんだか、という話だろう。まず、そもそも岸田首相や外務省がユネスコへの推薦に消極的だったのは、戦時中の朝鮮人強制労働の歴史を重く見たとか、そういう理由ではまったくなく、自分たちの「二枚舌」が国際的に問題となることを見越した上での判断だった。
 というのも、日本政府は2015年に中国が世界記憶遺産(現・世界の記憶)に申請した「南京大虐殺の文書」が登録されたことや2016年に日中韓などの民間団体が旧日本軍「従軍慰安婦」にかんする資料を申請したことに対して「政治利用されている」などと猛反発し、ユネスコに審査方法の見直しを要求。2017年には日本政府の強い反対によって慰安婦関係資料の登録判断が延期され、登録申請の受付も中断させていた。そうしたことを受けて、ユネスコの執行委員会は2021年4月、加盟国による異議申し立てを認め、関係国が無期限で対話するなど「加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」という制度改革案を承認したのだ。
 つまり、日本政府が南京大虐殺や従軍慰安婦にかんする文書・資料の登録・申請に猛反発し、加盟国の反対があれば遺産登録を見合わせられるという制度をユネスコに導入させたというのに、今回は韓国から反対の声があがっていることも無視して推薦しようというのだ。
 今回は世界文化遺産への登録をめざすもので「世界の記憶」とは制度が異なるが、無論、「言っていることとやっていることが違う」とユネスコや国際社会から反感を買うのは火を見るより明らか。だからこそ、外務省は佐渡金山のユネスコ推薦に消極的だったのだ。現に、〈外務省内では、「今回は日本が逆の立場になり、韓国の反発がある中で推薦すれば国際社会の信用を失いかねない」との判断も働いた〉(読売新聞20日付)といい、今回の推薦決定を受けて、〈韓国が反発する中で推薦することで「日本のこれまでの主張と整合性がとれなくなる」(外務省幹部)との懸念が出ている〉(毎日新聞29日付)という。

「明治日本の産業革命遺産」では、「徴用の実施」をきちんと説明すると言いながら約束を反故に
 しかも、問題はこれだけではない。世界遺産登録をめぐっては、日本側はユネスコの世界遺産委員会との約束を堂々と破り、昨年には世界遺産委員会が「強い遺憾を示す」とする決議を採択しているからだ。
 問題となっているのは、2015年に当時の安倍首相の肝いりによって世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。この世界遺産登録には韓国が反発していたが、日本側は朝鮮人徴用工について〈意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと〉を認め、〈第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる〉(内閣官房「産業遺産情報センターの在り方等について(第一報告書))」)と約束していた。
 ところが、世界遺産登録後の2017年に日本側がユネスコへ提出した「保全状況報告書」では、朝鮮人徴用工について「戦前、戦中、戦後にかけて日本の産業を支えた多くの朝鮮半島出身者がいた」という記述で強制連行や過酷労働の実態を矮小化2019年に出された「保全状況報告書」では朝鮮人徴用工について一切触れないという下劣な手に出た。
 さらに、「徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる」という約束から設置された「産業遺産情報センター」の一般公開では、徴用工の置かれた過酷な状況を説明するどころか、父親が軍艦島炭鉱で働いていたという人の「いじめられたとか、指さされて『あれは朝鮮人ぞ』とは全く聞いたことがない」という証言を紹介、給与やボーナスが支払われていた物証などを展示したのだ。
 あらためて言っておくが、戦時中の朝鮮人強制連行は、当事者の証言だけでなく、公文書を含んだ史料がいくつも残っている歴史的事実だ。また周知のように、徴用工は企業によって、一部、日本人と変わらない待遇を受けているケースもあったが、大半が日本人とまったく違う劣悪な環境で働かされ、虐待や暴力を受けていた。そのことは、戦時中の日本政府の文書など公文書にも記録されている客観的事実だ。
 ところが、同センターはそうした事実をほとんど無視して、逆にごく一部のケースを強調して強制労働の否定を宣伝したのだ。
 当然、こうした展示実態をユネスコの世界遺産委員会も問題視。2021年7月の報告書では、「産業遺産情報センター」への専門家の現地視察を踏まえて、「朝鮮半島出身者らが意思に反して連れてこられ労働を強いられたと認識するのは難しそうだという強い印象が残った」と指摘。そして、2021年7月22日に世界遺産委員会は朝鮮半島出身者らが強いられた労働についての説明が不十分なままだと判断し、「強い遺憾を示す」とする決議を全会一致で採択。「意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいたことや、日本政府の徴用政策について理解できるような措置」を考慮することを迫ったのだ。
 だが、このユネスコの決議に対しても、当時の加藤勝信官房長官は「約束した措置を含め誠実に実行し、履行してきた」と反論。まるで反省がないという絶句するような態度をとったのである。

安倍は自らネトウヨ用語の「歴史戦」を宣言! おかげで佐渡金山の世界遺産登録は絶望的に
 ユネスコとの約束を反故にして、突きつけられた決議に真摯に向き合うこともないのに、平然と次の世界文化遺産候補を推薦することは、怒りを買う行為にほかならない。しかも、前述したように加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」という制度変更を要求してきたくせに、今度は加盟国から反発が起こっている案件を推薦しようというのだ。こんな不誠実な態度、下劣な二枚舌を使えば、国際社会は呆れ返り、すでにガタ落ちしている信頼はさらに失墜し、相手にされないのは目に見えている。外務省が消極的だったのは当たり前の話だろう。
 ところが、安倍元首相はこうした国際的な常識もおかまいなし。ここぞとばかりに佐渡金山のユネスコ推薦をゴリ押ししたのである。
 言っておくが、安倍首相の目的は、「世界遺産登録によって佐渡金山の価値を広めたい」というようなものではまったくない。なぜなら、安倍首相がやろうとしているのはまったく逆の結果を生むものだからだ。
 もし、日本が本気で佐渡金山の登録をめざすのであれば、まずは「明治日本の産業革命遺産」に対して出された決議に基づいて「産業遺産情報センター」の展示を見直し、国際社会にその姿勢を示すのが先決だし、さらに今回の佐渡金山の推薦も「江戸時代の手掘りの伝統手工業遺産に対するものだ」(高市早苗政調会長の発言)などとただ反発するのではなく、佐渡金山における戦時中の強制労働の実態についてもしっかりと認めた上で韓国と対話することが必要だ。
 そうした努力もしないまま、強引に佐渡金山の世界遺産登録を主張しても、ユネスコがそれに応じることは、まずありえないだろう。それだけではない。一度世界遺産への登録が不可能と判断された推薦候補がその後、登録された例はない。
 つまり、安倍元首相のこのゴリ押しによって、佐渡金山は今回だけでなく、将来にわたっても世界遺産登録が難しくなる可能性が高いのだ。
 しかし、安倍元首相は、そんなことはどうでもいいのだろう。なぜなら、安倍元首相やネトウヨの目的は、佐渡金山の世界遺産登録ではなく、今回の問題を朝鮮人強制労働の事実を否定する「歴史修正」に利用しようというものにすぎないからだ。
 事実、安倍元首相が勢いづいたのは、佐渡金山が国内候補に決定して韓国から反発を受けて以降のこと。しかも、27日には自身のFacebookでこう主張していた。
「(韓国側に)歴史戦を挑まれている以上、避けることはできない」
 周知のように、「歴史戦」という言葉は先の戦争を肯定する歴史修正主義者の言論拠点である産経新聞が生み出したネトウヨ用語。そんな言葉を堂々と使ったことからも、「徴用工問題は絶対に認めない」という、歴史的事実を捻じ曲げるためだけにユネスコへの推薦をゴリ押ししたのは明らかだ。

安倍の頭の中は「ネトウヨ趣味」と「政治力維持」だけ、関係者に「安倍フォン」かけまくり
 そもそも、佐渡金山の世界遺産登録の大きな阻害要因となっている「明治日本の産業革命遺産」をめぐる国際公約破りや、「産業遺産情報センター」での歴史修正主義宣伝も、安倍元首相の意向に基づくものといわれている。
 実際、安倍元首相は2020年、「産業遺産情報センター」を視察した際、Twitterで展示パネルの「戦時中の長崎造船所 徴用工に支払われていた給与+ボーナス」写真を貼り付けた上で〈当時の彼らの労働に対する待遇が本当はどうであったかを物語る貴重な資料〉〈いわれなき中傷への反撃はファクトを示す事が一番〉などと主張していた。
 当時、本サイトでは、安倍元首相が挙げた資料が徴用工の差別的待遇や強制労働を否定する「ファクト」ではけっしてなく、元徴用工の人びとが証言している強制動員・強制労働や差別的な扱いを「いわれなき中傷」などと決めつけている主張こそがフェイクであることを歴史的資料・証言に基づいて検証したが(既報参照→https://lite-ra.com/2020/10/post-5682.html )、安倍元首相は今回の佐渡金山をめぐっても、同じようなフェイク宣伝をやろうとしているのだろう。
 佐渡鉱山では長崎の端島をはじめとする地域と同様、朝鮮人が強制的に連行された上で危険な労働を強いられていたことが指摘されており、それは新潟県が編纂した通史でも記述されている事実だが、安倍元首相は佐渡金山の世界遺産登録働きかけ運動によって、同じように徴用工の強制労働、虐待否定を展開するはずだ。
 しかも、安倍元首相には、今回のユネスコへの推薦問題を歴史修正に利用しているだけではなく、自身の政治的影響力を誇示する目的もある。
 実際、外務省が今回のユネスコへの推薦に消極的な姿勢を見せると、安倍元首相は安倍派の会合で「論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」「しっかりとファクトベースで反論していくことが最も大切だ」と発言。これは〈推薦を見送れば、党内の安倍氏に近い議員らが首相を見放しかねないとのメッセージ〉(朝日新聞29日付)だったが、じつは安倍元首相は裏でも策動。息のかかった関係官僚やメディア関係者に次々と「安倍フォン」をかけまくり、「世論を盛り上げろ」と指示していたという。
 安倍元首相は最近、自分と距離を置こうとする岸田首相に対して焦っていたというが、そんななかで持ち上がった今回の問題は、自分の政治力を岸田首相に見せつける絶好のチャンスだった。安倍元首相は昨年の総裁選でも自分の影響力を誇示して岸田氏を服従させるべく、高市支持を呼びかける「安倍フォン」を発動させたが、今回も同じように岸田首相を揺さぶろうと必死になっていたのだ。
 そして、安倍元首相の目論見どおり事は運び、岸田首相は完全に屈服。NHKや読売新聞までもついに産経用語の「歴史戦」という文言まで用いて推薦することを後押しし、世間も「弱腰の岸田」「安倍元首相の主張はもっとも」などと評価しているのだ。つまり、すべては安倍元首相の思うツボとなったわけだ。

 だが、繰り返すが、今回の決定は「約束破りな上、二枚舌を使う」という国際社会からの信頼を失墜させる自殺行為にほかならず、日本が歴史修正主義による“ならず者国家”だと印象づけるだけの、愚行以外の何ものでもない。世界遺産登録をめぐって「歴史戦」などというネトウヨ用語が飛び交う状況こそが異常なのだと強く言っておきたい。 (編集部) 

31- NHK「歴史戦チーム」が「政権の歴史認識に基づき 検証」まんま政権の僕

  まるこ姫も「佐渡金山、ユネスコ申請」問題を取り上げました。

 彼女の記事は、この件について、NHKがよりによって「政権の歴史認識に基づき」と断ってNHKがまた政府に肩入れする」番組を作ったことを批判しています。そしてそれに同調する人たちのことも。
 NHKの堕落は留まるところを知らず、なにか国を挙げて「歴史の修正」に進もうとしているかのようです。
 併せてまるこ姫の記事:「大阪が悲惨『みなし陽性』導入へ、話題にさせない為の菅攻撃だったのか」を紹介します。維新が岸田政権の「棄民政策」に早速応じたことへの批判です。
 追記 文中の太字・青字強調部分は原文に拠っています。
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MHK「歴史戦チーム」が「政権の歴史認識に基づき 検証」まんま政権の僕
                     まるこ姫の独り言 2022.01.30
NHKはもうすっかり政権の意向を尊重する自称「公共放送」になってしまった。

初めツイッターでNHKの「歴史戦」が話題になっていて、何のことなのかと思っていたら、政府が「佐渡金山、ユネスコに推薦へ」に対してNHKがまた政府に肩入れするような姿勢を示したことで批判を浴びていたという事だ。

それにしてもNHKの「政権の歴史認識に基づき事実を集めて」は酷い。

政権の歴史認識に基づいて検証したって、政権の都合の良いような歴史認識になるに決まっている。

視野が狭く、過去の日本を美化しているような人達の集団に語らせたら、負の歴史を改ざんして自画自賛するだけだ。 

NHKは安倍政権以降、放送法で定められている、不偏不党や公共放送と言う立場を逸脱して、政府寄りの見方しかしなくなった。

この佐渡金山に対しての扱いも、「政権の歴史認識に基づき」と明らかに偏った立ち位置にいる。

それを指摘する識者が減り、何事もなく時間が進む。
ツイッターでも分かるが、下手に正論を言えば左翼扱いで総攻撃を仕掛けられる。

そして最近、維新の台頭により、NHKの違法に対してハッパをかける人間が続出してきて嫌になる。

なんでこんな言ったもん勝ちの知性の無い勢力が幅を利かせるようになったのか。。

昔から歴史修正主義者はいたが、安倍なんか「ポツダム宣言」もデタラメな内容で国会論戦をしていた。

菅は「私は戦後生まれなものですから、歴史を持ち出されたら困ります」これには絶句した。

一般人ならともかく、国を率いていかなければならない人間が、ポツダム宣言も知らず、自分は戦後生まれだからと逃げる。
総理がこれでは歴史修正もさもありなん。

しかし、日本政府は過去、日本が他国の国民に対して非道な行為をしてきたにもかかわらず、無かったことにしようとしている。
これも安倍政権以降の流れだ。

日本国内では「日本スゴイ!」で国民を煽って他国を下に見る人達が続出しているが、国際的に「強制労働」が無かったとして認められるだろうか。


大阪が悲惨「みなし陽性」導入へ、話題にさせない為の菅攻撃だったのか
                     まるこ姫の独り言 2022.01.29
大阪はもうコロナに対して打つ手なし。

大阪「みなし陽性」導入へ 保健所の負担軽減 
                       1/27(木) 18:18配信 産経新聞
>大阪府の吉村洋文知事は27日、新型コロナウイルス感染について、重症化リスクが低くワクチンを2回接種した若者らを対象に、自主検査の結果に基づいて医師が感染者と診断する「みなし陽性」の仕組みを一両日中に導入する方針を表明した。

自主検査確かに保健所は保健所の負担は少なくなるかもしれないが、それと同時にデータも取れなくなる。
これだけ感染者が増えて行政はパンク状態で、これからコロナに対して野放しになるならますます陽性者が増える。
しかも、データが取れていないから大阪府の発表する陽性者数は信用性が無くなる。

もう神奈川県と同じになって来た。

大阪は維新が行政を牛耳っていることから早晩、神奈川同様、食料調達は自己責任でお願いしますと発表するのではないか?

そうやって陽性者が仕方なく街で食料調達で、ますます感染拡大になる。
どうも、これだけ感染拡大・医療崩壊が顕著になれば、吉村はなすすべもなく「集団免疫」を狙っているようにも見える。
優性思想の維新・吉村ならさもありなん。

しかし自主検査確かに保健所は保健所の負担は少なくなるかもしれないが、それと同時にデータも取れなくなる。
これだけ感染者が増えて行政はパンク状態で、これからコロナに対して野放しになるならますます陽性者が増える。
しかも、データが取れていないのに真の陽性者数も信用性が無くなる。


吉村も松井も菅の「ヒトラーを思い起こさせる」ツイートに躍起になっている場合じゃなかった。

どんなに反論しようと、維新のやって来た「強い者には媚びへつらい、弱い者には徹底して貶める」思考は「あの人間」を思い起こさせる一因になっているのは事実だから。

吉村・松井は首長としての業務に専念すべきだった。

菅が「ヒトラーを思い起こさせる」とツイートしたことで、これで立憲を貶めるネタが出来たとばかりに、橋下が菅にいちゃもんをつけ、それを維新が党の問題だと大騒ぎしているうちにも、もうコロナの感染拡大は取り返しのつかないことになってきている。

それでも、吉村知事大好きな大阪の人は、「吉村知事は大阪のスーパースター」とか「大阪の希望の星」と思っていそう。

吉村や松井がテレビに出続けるうちは「有能知事」の呪縛は解かれないのと違うか?

2022年1月30日日曜日

コロナ「みなし陽性」 責任放棄の岸田政権に医師から次々と悲鳴が

 第6波の急拡大に当たり岸田政権が打ち出した「検査なしで陽性診断を確定できるとする方針は、検査体制の不十分さや検査キット等の品切れという不手際のしわ寄せを、医療現場に持って行き全責任を押し付けるもので、医師から見てもあり得ないものです。

 精神科香山リカ医師は、「医者が問診だけなどから コロナ/コロナではない と判断し、その後診断が違ってたとなった場合、どこに責めが帰されるのか」と述べています。
 もしも「責任は問わない」などというのであれば、患者の人権はどうなるのでしょうか。
 政府が、検査の渋滞や検査キット等の品切れの責任を回避しようとしたとしか思えないこの方針は、医療崩壊そのものであり棄民政策です。
 日刊ゲンダイが、「新型コロナ『みなし陽性』は棄民政策の極み! 全責任放棄の岸田政権に医師から次々と悲鳴が」とする記事を出しました。
 併せて同紙の記事「小池都政2月初旬ピークアウトの希望打ち砕く 重症リスク患者“自宅放置の棄民政策”」を紹介します。
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新型コロナ「みなし陽性」は棄民政策の極み! 
      全責任放棄の岸田政権に医師から次々と悲鳴が
                          日刊ゲンダイ 2022/01/29
 新型コロナウイルス第6波の急拡大になす術ナシの岸田政権が打ち出した「検査なしで陽性診断」が波紋を広げまくっている。検査キット不足を棚上げし、ただでさえ混乱を極めている医療現場に全責任を押し付けているからだ。医師らは「そんなことできない!」と非難ゴウゴウ。国民の不安も高まる一方だが、大阪府は早速、「みなし陽性」の導入を発表。棄民政策が加速している。
                ◇   ◇   ◇
〈私は 検査せずに症状だけで、診断する技術も能力も超能力も持ち合わせていません。私の仲間 友人 同門の医師たちも同じ意見です。とりあえず十分な検査体制拡充を 繰り返し、政府にお願いする
 医師を名乗る人物がこうツイートすると、半日で5000超の「いいね」がついた
 厚労省は自治体に「新型コロナウイルス感染症の感染急拡大時の外来診療の対応について」(24日付)を事務連絡。外来や検査が混雑している場合は、「40歳未満」「基礎疾患なし」「ワクチン2回接種済み」の低リスクの人は抗原定性キットなどで自主検査し、陽性確認してからの受診を呼びかけるよう求めた。
 医療機関で再検査なしに医師の判断で陽性を確定診断できるともしている。同居家族の感染による濃厚接触者についても、検査なしで陽性診断は可能だ。

大阪府は前のめり
 精神科医の香山リカ氏も〈私にはムリ〉とツイートし、〈これ、医者が問診だけなどから「コロナ/コロナではない」と判断し、その後、診断が違ってたとなった場合、どこに責めが帰されるのでしょうかね……〉と疑問を投げかけている。
 一方、大阪の吉村知事は「みなし陽性」に前のめり。発熱などの症状が出た濃厚接触者については、医師が検査なしで感染を判断できるようにするという。現実にそんなことが可能なのか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏(内科医)はこう言う。
「無理ですよ。オミクロン株による症状は風邪と区別をつけるのが難しい。この時期は花粉症などのアレルギー性鼻炎に悩む患者さんも多いですから、なおさらです。今週診察した患者の中に検査で陽性が判明した方がいたのですが、同居する高齢の父親の身を非常に案じていました」
 濃厚接触者となった父親の検査は、翌日にならないと実施できなかった。患者が帰宅して一晩過ごすことで感染してしまう可能性がある。そこで、上氏は父親をホテルなどに隔離するよう助言。翌日の検査で父親も陽性が確認されれば自宅に連れ戻し、陰性の場合は当面隔離することになった。
診断はステップを踏んでするもので、検査なしで確定診断するのは乱暴です。経口薬投与の判断にも影響が出てしまう。そもそも、問題の根底にあるのは検査キットの逼迫です。薬剤師の指導が必要な薬局でのキット販売をやめ、厚労省が承認したキットのネット販売に切り替え、判定結果を確定と認めたほうがいい」(上昌広氏)
 ちなみに、「みなし陽性」でもいわゆるコロナ保険の給付金は受けられるのか。「コロナminiサポほけん」を展開する第一生命は、「従来通り、医師の診断で陽性が確定した場合は支払い対象になります」(広報課)とのこと。
 自分の身は自分で守るしかない。2年間、この繰り返しだ。 


小池都政「2月初旬ピークアウト」の希望打ち砕く 
         重症リスク患者“自宅放置の棄民政策”
                          日刊ゲンダイ 2022/01/29
〈究極の放置策〉〈自己責任ってことか〉──。小池都政が打ち出した「感染拡大緊急体制」を巡り、ネット上は大荒れだ。都は27日のモニタリング会議で、40代以下の自宅療養者について自分で健康観察する仕組みを公表。“棄民政策”まっしぐらの姿勢では、2月初めのピークアウトも絶望的である。
                ◇  ◇  ◇
 都内の病床使用率は28日時点で46.1%と国に「緊急事態宣言」を要請する目安となる「50%」の目前だが、小池知事は宣言要請について「総合的に検討する」と繰り返すばかり。手をこまねいている間に、更なる感染拡大は必至だ。問題は「いつピークアウトするのか」である。
 AERAdot.(28日付)によると、政策研究大学院大の土谷隆教授(統計学)は都内の第6波ピークを2月4日と予測。また、FNNプライムオンライン(27日付)は「2月の初旬にピークアウトしてくれればいいという予想がある」(広島大学大学院の坂口剛正教授=ウイルス学)とのコメントを紹介した。
 果たして「2月初旬ピークアウト」に期待してもいいのか。昭和大医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)がこう言う。
「海外の事例を見ると、だいたい感染拡大から3~4週間でピークアウトしています。日本も特別な防止策を講じているわけではなく自然に身を任せているような状況なので、遅くとも、これから2週間でピークアウトするのではないか。ただ、都内の陽性率は30%を超えており、現在の検査能力で判明している以上の感染者が市中に存在すると思います」

なし崩し的な「医療放棄」
 あと2週間で感染のヤマを越えられるなら、とりあえず希望は持てる。だが、そんな楽観を打ち砕くのが小池都政の“棄民政策”だ。
 ただでさえ、オミクロン株の亜種である「ステルスオミクロン」の出現によって「第6波はなかなか収束しないのでは」と指摘する専門家もいるのに、都は医療支援を縮小。週明け31日から40代以下の自宅療養者に自分で健康観察をさせる体制へと転換する。重症化リスクの高い患者を優先するとの名目だが、観察の目が行き届かなくなれば、患者は野放し。市中感染がさらに悪化しかねない。
 その上、オミクロン株より強毒のデルタ株患者を見捨てる気なのか。都内の変異株スクリーニング検査(今月18~24日)のうち「オミクロン株疑い」は99.1%を占める。残る約1%は、より重症化リスクの高いデルタ株患者だ。単純計算で、28日の新規感染者約18万人のうち約180人はオミクロン株患者よりも急変する可能性が高いと言える。
「体調が急変した場合、患者自らがサポートセンターに電話しなければなりませんが、都は適切な医療につなげられるのでしょうか。28日時点で都内の自宅療養者は6万人を超え、入院・療養等調整中の人も含めると約10万人。これから自宅療養者が積み上がると予想される中、最大300回線のサポートセンターが対応できるのか大いに不安です。感染急拡大を前に、なし崩し的に『医療放棄』せざるを得なくなったのでしょう」(二木芳人氏)
 約10万人のうちデルタ株患者が約1000人いても、おかしくない。感染爆発になす術なく、揚げ句に「重症予備群」を見捨てるとは……。女帝君臨の都政には、ただただ絶望するしかない。

軍事的な緊張を高めてきた米国が欧州で孤立し始めた(櫻井ジャーナル)

 26日付「マスコミに載らない海外記事」に載った「ヨーロッパにおけるアメリカのプレゼンスに対するロシア要求で決定的瞬間に直面するヨーロッパ」とする記事は

最近ドイツ政府は、兵器を積載した飛行機をウクライナに送るイギリス空軍の領空通過権を拒否した。最終的にフランス政府も領空通過権を拒否し、目的地に到達するのにイギリス飛行機に長い迂回を強いた。この状況で注目すべき更なる進展は、イタリア政府もフランスとドイツの同僚たちに習って、アメリカが鼓舞する対ロシア制裁の一部になるのを拒否することに加わったのだ。~」
と書き出されています。
 米国が煽っているウクライナ危機は、14年に米国が引き起こした血塗られたクーデターに起因するものであり、これについてはロシアが米国に対して文書で要求した
NATOをこれ以上東へ拡大させないこと、
モスクワをターゲットにできる攻撃システムをロシアの隣国に配備しないこと
ロシアとの国境近くで軍事演習を行わないこと
ヨーロッパへ中距離核ミサイルを配備しないこと
などを米国が保証すれば、それで解決することです。
 米国はそれを全面的に拒否したようなので問題は何も解決していませんが、冒頭に紹介した記事のように、もはやNATOの主要国は対米従属の一枚岩の組織ではなくなっています。他方、米国が黒幕と思われるカザフスタンでのクーデターも失敗しました。
 史上空前の戦争国家である米国の横暴に世界は同調すべきではありません。
 櫻井ジャーナルが「軍事的な緊張を高めてきた米国が欧州で孤立し始めた」とする記事を出しました。  
 もう一つ、櫻井ジャーナルは「ウクライナに火をつけ損なったアメリカが台湾にターゲットを変更する可能性」とする記事を出しましたので、併せて紹介します。
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軍事的な緊張を高めてきた米国が欧州で孤立し始めた
                         櫻井ジャーナル 2022.01.29
 今にもロシアがウクライナへ軍事侵攻するかのような話をアメリカの政府や有力メディアは流し、軍事物資を運び込み、軍事訓練も行なっているが、ヨーロッパでは事態の沈静化を図る動きが進んでいる。
 1月26日にはパリでロシア、ウクライナ、フランス、ドイツが軍事的な緊張が高まっている問題について協議、事態を平和的に解決することで合意した。ウクライナの現体制は2014年のクーデターで誕生したのだが、その際に結ばれた停戦合意を尊重するということだ。
 ロシア軍の軍事侵攻が迫っているという話をウクライナの国防省は否定していたが、ドミトロ・クレバ外相も軍事侵攻するために十分な兵力は集結していないと語っている。ウクライナのNATO加盟問題にロシアは口を出すなとしていたEUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表でさえ、対話を継続するべきだと語っていた。反ロシア感情が強いはずのクロアチア大統領も全面戦争へ向かって動き出したならNATO軍へ派遣している自国軍を撤退させるとしている。
 パリで会議が開かれる4日前、ドイツ海軍の海軍総監だったケイ-アヒム・シェーンバッハ中将が辞任を申し出た。ロシア軍がウクライナへ軍事侵攻しようとしているとする話は「ナンセンス」であり、ウクライナがクリミアを取り戻すことなど不可能だと21日にニューデリーのシンクタンクで語ったことが問題にされたのだが、問題にしたのはアメリカ政府だろう。
 ウクライナで軍事的な緊張を高めてきたのはアメリカ/NATOにほかならない。そこでロシアはアメリカの軍事的支配地の拡大をこれ以上容認できないとしている。そこで、NATOをこれ以上東へ拡大させないこと、モスクワをターゲットにできる攻撃システムをロシアの隣国に配備しないこと、ロシアとの国境近くで軍事演習を行わないこと、NATOの艦船や航空機をロシアへ近づけないこと、定期的に軍同士の話し合いを実施すること、ヨーロッパへ中距離核ミサイルを配備しないことなどを文書で保証することを求めている。アメリカ政府はロシア政府へ「回答文書」を渡したが、肝心の問題には触れていないと言われている。
 ウクライナでの問題に限らず、軍事的な緊張を高める上で西側の有力メディアが果たしてきた役割は小さくない。2003年3月にイラクを先制攻撃する前、アメリカの政府や有力メディアはイラクが「大量破壊兵器」を保有し、すぐにでも使うかのように宣伝していた。
 そうした宣伝に熱心だったひとりがウォールストリート・ジャーナル紙のマイケル・ゴードン。2002年に彼はニューヨーク・タイムズ紙でジュディス・ミラーと一緒に偽情報を広めていた。
 2020年に入ってから世界はCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で麻痺している。その感染症の実態はいまだに明確でないが、その病気を引き起こしているとされているSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は武漢病毒研究所から漏れ出たとする話をゴードンは盛んに伝えていた。
 また、ミラーは2005年にニューヨーク・タイムズ紙を離れ、07年にウィリアム・ケーシーの政策研究マンハッタン研究所へ入り、08年にはFOXニュースへ移動、2010年にはニューズマックスへ移った。ここはケイシーやCIAと関係の深い富豪、リチャード・メロン・スケイフから支援を受けていた。またCFR(外交問題評議会)のメンバーにもなっている。
 アメリカに抑え込まれていたヨーロッパが独自の動きを見せ始めたように見えるが、そのタイミングでCOVID-19騒動も沈静化の動きがヨーロッパでは出てきた。その時期にCOVID-19騒動を煽っている日本は軍事的にも前のめりになっている。この国の「親米派」は自分たちのボスに忠誠を誓うことしかできないようだ。


ウクライナに火をつけ損なったアメリカが台湾にターゲットを変更する可能性
                          櫻井ジャーナル 2022.01.30
 ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツは1月26日にパリでウクライナ情勢について討議、事態を平和的に解決することで合意した。軍事的な緊張を高めているアメリカは参加していない。アメリカの好戦派が得意とする「偽旗作戦」も実行しにくいだろう。生物戦争も見え見えだ。
 アメリカ軍はシリアやイラクを含む中東に軍隊を送り込み、軍事作戦を展開しているものの、影響力は低下している。おそらくアメリカが黒幕だったであろうカザフスタンでのクーデターも失敗した。そこで注目されているのが台湾だ。独立を望む勢力を焚き付け、軍事的な緊張を高めている。ロシアより中国の方が組みやすいと考えているのかもしれないが、現在、ロシアと中国は戦略的な同盟関係にある。
 日本は明治維新以来、基本的にアメリカやイギリスの巨大金融資本の影響下にある。日本に支配されていた時代の台湾は間接的にアングロ・サクソンの影響下にあったと言えるが、一時期、中国との関係を優先していた。それが変化したのは蔡英文が総統に就任にした2016年以降。アメリカに従属しのだが、アメリカはフィリピンにも強い圧力を加えている。橋頭堡と位置づけられているであろう韓国でもアメリカの圧力は強いようだ。
 ハルフォード・マッキンダーがまとめた長期戦略では、ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、最終的にロシアを制圧して世界の覇権の握ることになっていた。この長期戦略その後も放棄されていない。その戦略にとって日本列島から琉球、台湾、フィリピンへ連なる島々は重要な意味を持つ。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」につながった。
 明治政府がアメリカやイギリスの外交官に煽られて台湾へ派兵したのは1874年。その翌年に李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦派遣して挑発し、大陸侵略が始まる。その日本をアヘン戦争で大儲けしたアメリカやイギリスが支援した理由は言うまでもないだろう。
 ハワイの真珠湾を攻撃して日本はアメリカやイギリスと戦争を始めたが、大戦後に主従関係は復活する。ウォール街に天皇制官僚システムが従属するという関係だ。
 GHQ/SCAPに保護された旧日本軍の将校は少なくないが、そのひとり、岡村寧次大将の下へ蒋介石のグループは接近する。1949年4月に岡村の下へ曹士徴を密使として派遣する。当時、岡村はGHQ/SCAPの保護下に入っていた。岡本たちの行動の背後にアメリカがいたのだろう。
 曹は岡村や富田直亮少将と東京の高輪で会談して台湾義勇軍を編成することで合意、富田少将が「白鴻亮」の名前で義勇軍を指揮することになった。そこで義勇軍は「白(パイ)団」と呼ばれている。
 白団は1950年の正月頃に台湾へ渡り、日本軍の戦術や軍事情報を台湾軍に教育して国家総動員体制を伝授しはじめたが、その工作には陸軍士官学校34期の服部卓四郎、西浦進、堀場一雄、あるいは海軍の及川古四郎、大前敏一らが協力していた。翌年の夏までに83名の旧日本軍参謀が台湾へ渡り、1969年のこまで顧問団として活動を続けたが、途中で工作の主導権はアメリカが握る
 その一方、CIAの顧問団に率いられた約2000名の国民党軍は1951年4月に中国領内へ軍事侵攻、一時は片馬を占領したが、反撃にあって追い出された。翌年の8月にも国民党軍は中国へ侵攻しているが、この時も人民解放軍の反撃で失敗に終わっている。
 1958年8月から9月にかけて台湾海峡で軍事的な緊張が高まるが、ダニエル・エルズバーグによると、その際、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は金門島と馬祖に核兵器を投下する準備をしていた。ジョー・バイデン政権は同じことが国防総省で議論されているという。現在、アメリカの特殊部隊と海兵隊の隊員約20名が昨年から台湾で兵士を訓練しているという。

 アングロ・サクソンが19世紀から続く長期戦略を放棄せず、日本が現在もその戦略に従っている以上、似たことが起こるのは必然だろう。「戦争ごっこ」に興奮していると、取り返しのつかないことになる。