2021年9月30日木曜日

新総裁・岸田文雄は安倍前首相の完全な操り人形に!(LITERA)

 安倍晋三氏は総裁選の最中に高市氏を「日本の主権は守り抜くとの確固たる決意と、国家観を力強く示した」と持ち上げ、29日には高市氏の陣営会合で、論戦を通じて保守派の支持を固め直すことができたとの認識を示し、「離れかかっていた多くの支持者が自民党の元に戻ってきてくれたのではないか」と述べたということです。

 高市氏は安倍氏に勝るとも劣らない極右なので安倍氏が激賞するのは当然ですが、アメリカに完全に従属しながら「主権は守り抜く確固たる決意」といわれても、呆気にとられるばかりです。
 その高市氏が議員票で思いがけなく高い数字を取ったのは偏に安倍氏の奮闘の賜物と思われますが、安倍氏に強要されるままに投票した議員も議員です。ただ安倍氏は27日には岸田氏に勝てないと踏み、岸田氏の選挙参謀である甘利氏と会談し、総裁選の決選投票で高市陣営が岸田氏を推すことを約束することでキングメーカーの地位を維持しました。さすがにあざといものです。
 その一方で岸田氏が勝つことは当初から安倍氏の予想の中にあったようで、自分の側近というべき “影の総理” の今井尚哉氏、“元内調” の北村滋氏、自分の代弁者であるNHK記者の岩田明子氏を、岸田氏が総裁選出馬を表明する少し前から岸田陣営に送り込んでいました。分かりにくい話ですが、キングメーカーの地位を維持するための方策と考えれば納得できます。
 LITERAが「新総裁・岸田文雄は安倍前首相の完全な操り人形に! ~ 」とする記事を出しました。
 キングメーカー気取りの安倍氏がいては岸田氏もやりにくいことでしょうが、国民はもう安倍・菅政権にはつくづく愛想をつかしているので出来るだけ距離を置くべきです。
 小泉進次郎氏が、安倍氏が “高市支持” を押しつける姿勢を正面から批判したことに、安倍氏激怒したと伝え聞い『だからなんだっていうの』と譲らなかった(週刊FLASH)という気概を、できれば岸田氏も持って欲しいものです。
 ⇒9月29日)「安倍-高市-麻生」:「小泉-石破-河野-菅」の対立が残す総裁選後の禍根
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新総裁・岸田文雄は安倍前首相の完全な操り人形に! 今井尚哉、北村滋、岩田明子を監視役に送り込み「高市早苗の国家観」を強制
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 本日、自民党総裁選がおこなわれ、決選投票で河野太郎氏を引き離し、岸田文雄氏が新総裁に選ばれた。だが、これは「岸田自民党、岸田政権の誕生」ではなく、「安倍自民党、安倍傀儡政権の誕生」と呼ぶべきものだ。
 今回の総裁選で安倍晋三・前首相は、同じ極右思想を持つ高市早苗氏を支持。2ショットポスターを作成させたり、高市氏以外を支持する若手議員に直接電話をかけまくる「アベノフォン」に勤しむほど入れ込んでいた。
 読売新聞によると、安倍前首相は「(他の候補を入れると)衆院選の応援は難しくなるよ」などと、露骨な恫喝までしていたという。
 今回、1回目の投票で、高市氏の国会議員票が河野氏を上回るという驚きの結果が出たが、これはこうした安倍前首相の圧力の結果と言っていいだろう。
 だが、安倍氏が躍起になり、ネトウヨが熱狂したのと裏腹に、高市氏は「支持急増」と言われていた党員票で伸び悩み、26〜27日には、決選投票に残れる可能性がゼロに近いことが判明していた。
 すると、安倍前首相は一転、「アベノフォン」をやめ、岸田氏に恩を売る動きを見せる。それが、27日の甘利明・税調会長との会談だった。甘利氏は安倍前首相の最側近ながら、早くから岸田氏支持を打ち出し、岸田氏の選挙対策の要の役割を担っていた。安倍氏はこの会談で、高市陣営が決選投票で岸田氏を推すことを甘利氏に約束したと言われている。
「報道では、逆に岸田陣営が高市氏を支持することも確認する『2位、3位連合』の話し合いということになっているが、これは安倍氏のメンツも考えた表向きの名目。実際は、高市氏が決選投票に残れないことを悟った安倍氏が甘利氏に決選投票で『岸田支持』に動くことを表明し、改めて、自分への忠誠を要求したのではないかと言われている」(全国紙自民党担当記者)
 結果、国会議員票が大半を占める決選投票では、岸田氏が河野氏を圧倒した。これで、岸田氏はますます安倍前首相に逆らえなくなるだろう。

“影の総理”今井尚哉、“元内調”北村滋、代弁者NHK岩田明子…岸田陣営に送り込まれていた3人の安倍側近
 もっとも、岸田氏は最初から安倍氏の支配下にあった。高市支持を表明した後も、「高市支持は河野氏の票を削るためで、安倍氏の本命は岸田氏」との解説も流されていた。
 実際、安倍前首相は、岸田氏が総裁選出馬を表明する少し前から、岸田陣営に自身の代理人を送り込んでいる。
 そのひとりが、安倍政権時代、安倍氏の側近中の側近だった今井尚哉・元首相補佐官。今井氏は安倍政権時代、「影の総理」と言われるほどの存在だったが、菅首相になってからは外され、政界から遠ざかっていた。ところが岸田氏が総裁選に名乗りをあげる少し前から、その今井氏が岸田事務所に出入りするところが頻繁に目撃されてきた。
 また、安倍政権時代は内閣情報官としてさまざまな政敵潰しの謀略を仕掛け、「官邸のアイヒマン」とも言われた北村滋・元国家安全保障局長も、やはり岸田氏が総裁選に立候補を表明する少し前から岸田陣営と接触。岸田氏と北村氏は開成高校の同窓で、北村氏は安倍氏と岸田氏をつなぐパイプ役にもなってきたが、今回、今井・北村は岸田陣営で自民党議員や党員の情勢をあげてきたほか、公安ネットワークを使って石破氏や河野氏のスキャンダルを必死で探していると囁かれていた。
 さらに、安倍政権下では「安倍首相にもっとも食い込んでいるジャーナリスト」と呼ばれ、安倍首相辞任の際もその一報をスクープしたNHKの岩田明子氏までもが、岸田陣営に出入り。岩田氏も菅政権になったことで政治部からネットワーク報道部という地方部に異動となっていたが、この総裁選では「もはや岸田選対の一員ではないか」と言わるほどの目撃情報があったという(「週刊新潮」9月21日号/新潮社)。
 つまり、安倍前首相は「高市支持」で極右・ネトウヨ層を盛り上げる一方、ちゃっかり岸田氏の戦力を強化すべく、自身にとって最強の最側近や記者を送り込んでコントロールしていたのである。
 実際、岸田氏は、総裁選を控えてのテレビ出演や討論の場で、あからさまに安倍前首相の顔色を伺う姿勢を見せていた。
 まず、岸田氏の安倍前首相への秋波があらわになったのが、憲法改正をめぐるスタンスだった。岸田氏は憲法9条の改憲に消極的だと言われてきたが、この総裁選で、岸田氏は安倍氏が乗り移ったように、「憲法改正は絶対に必要」「自衛隊の明記は違憲論争に終止符を打つために重要」「国民の憲法を取り戻したい」などと前のめりな発言を連発
 また、安倍前首相の疑惑追及にも終始、消極的で、森友問題については「さらなる説明をしないといけない」と述べたものの、安倍前首相がこの発言に激高したと伝えられると、大慌て。「再調査するとは言っていない」などと前言を撤回した。
 さらに、岸田氏は選択的夫婦別姓を実現する議員連盟の呼びかけ人のひとりでありながら、総裁選討論では一気にトーンダウン。また、9日に『バイキングMORE』(フジテレビ)に出演したときは、出馬表明会見ではつけていなかったブルーリボンバッジを着用。こうした言動はあきらかに安倍前首相を意識したものだった。

安倍前首相は、岸田新総裁決定を受けて「高市氏が確固たる国家観を示した」と強調
 直接の支持も取り付けられなかったというのに、一貫して安倍前首相に尻尾を振りつづけた岸田氏。しかも、決選投票での密約や、高市氏が国会議員票をとったことで、この安倍氏の支配はさらに強化されるだろう。
 当然、党役員人事や組閣では安倍前首相の意向を汲んだ人事がなされることは必至。敗れた高市氏を幹事長や官房長官、重要閣僚で登用せざるをえなくなっていると言われている。
 いや、人事だけではない。安倍前首相は岸田新総裁決定後、高市陣営の会合で「高市氏を通じ、自民党がどうあるべきかを訴えることができた」「(高市氏が)確固たる国家観を示した」とした上で、「次の衆議院選挙、今度は岸田新総裁のもとに、共に勝ち抜いていこうではありませんか」と力を込めて呼びかけた。この発言からも、今回、高市陣営が打ち出した「国家観」とやらを岸田氏が政策に落とし込まざるを得なくなるはずだ。
 選択的夫婦別姓、女系天皇の否定はもちろん、岸田氏が「任期中にめどをつけたい」と言っている改憲をめぐっても、高市氏は私権制限の明確化にまで踏み込んでおり、その方針がさらにエスカレートする可能性がある。
 ようするに、岸田新首相の誕生は、菅政権以上に安倍前首相の存在感が増した「安倍政権の復活」でしかなく、自民党の刷新どころか、安倍・菅政権の総括もなく膿を溜め込んでいくだけになるのは間違いない。
 だが、忘れてはいけないのは、これはしょせん自民党総裁を決める党内の選挙に過ぎないことだ。きたるべき衆院選で国民がNOを突きつければ、この「安倍政権の復活」は止めることができる。次の選挙は、安倍政治に終止符を打つための選挙であることを野党は徹底して訴えていく必要があるだろう。 (編集部)

20年間のアフガン戦争で市民4万6000人が死亡 今後も犠牲拡大の懸念

 米ブラウン大のまとめによると、20年にわたったアフガニスタン戦争では、アフガン市民4万6000人が犠牲となったということです。これは米軍の約20倍、タリバンの約5万3000人に迫るものです。米軍など空爆強化したため巻き添えや誤爆が増えたことも一因です。
 しかしバイデン米大統領はテロ勢力に対し無人攻撃機による空爆の継続を表明しており、現実に8月29日に、首都カブールでドローンによりアフガン市民の一家10人を爆殺しました。米国は当初、過激派組織「I S」系のテロリストを殺害したと主張しましたが、現地のメディアが米国に協力していたメンバーの1人が車で帰宅し、子どもたちが車に駆け寄ったところを爆撃したと明らかにしたためようやく認めたのでした。
 米軍がアフガンで空爆を強化したのはオバマ政権が発足した2009年ごろからで、オバマは特に無人攻撃機に注力しました無人機による爆撃は、軍人ではないCIA職員が米国本土にいながら、無人機が送ってくる画像を見ながらミサイルの発射ボタンを押しているのですから誤爆が多発するのは当然で、後にオバマ氏自身「米国の空爆で民間人が犠牲になったことは厳然たる事実」と述懐したようですが、そんなのは何の言い訳にもなっていません。
 当然ながら国連は早く(2013年以前)から米軍が実施している無人機攻撃について「相手国の主権を侵害している」とする声明を出し、「攻撃の透明性や法的根拠が欠如している」とその違法性を指摘しています。
        ⇒(13.8.16) 国連事務総長 米無人機攻撃は違法
 最近も米国内外の113団体が米大統領に無人機攻撃の停止を訴えています。
        ⇒(7月6日) 無人機攻撃の停止を 米大統領に書簡 米内外113団体
 東京新聞が報じました。
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20年間のアフガン戦争で市民4万6000人が死亡…米軍の空爆強化で巻き添えや誤爆増加、今後も犠牲拡大の懸念
                          東京新聞 2021年9月29日
 20年にわたったアフガニスタン戦争では、アフガン市民4万6000人が犠牲となった。この数は米ブラウン大のまとめによると、米軍の約20倍、イスラム主義勢力タリバンの約5万3000人に迫る規模だ。米軍などの空爆強化で、巻き添えや誤爆が増えたことも一因。だが、バイデン米大統領はテロ勢力に対し無人攻撃機(軍事ドローン)による空爆の継続を表明しており、空爆による犠牲拡大への懸念が高まっている。(ワシントン・吉田通夫)

◆ドローン爆撃は「米軍犠牲者を減らし、他国領土でも攻撃」


 国連のまとめによると、戦争で死亡した市民は、年間2800〜3800人。イスラム主義勢力タリバンが仕掛けたIED(即席爆破装置)と呼ばれる手製爆弾の犠牲になったり、銃撃戦に巻き込まれたりするケースが多い。一方、米軍などによる空爆の犠牲は10%前後だが、投下した爆弾が多いほど、爆発に巻き込まれたり誤爆されたりして死亡する市民も増える。
 米軍がアフガンで空爆を強化したのは、オバマ政権が発足した2009年ごろから。米軍の犠牲者を減らしつつ、他国領土でも攻撃できる新技術として、ブッシュ(子)政権が導入したドローンによる爆撃を増やした。オバマ氏は13年5月の演説で「国際テロ組織アルカイダの指揮官や工作員らを何人も排除し、テロ計画を破壊した。国内法、国際法上も合法だ」と効果や正当性を主張した。
 一方、同年に情報分析官としてアフガンに赴任した元兵士(29)は「ドローンには大型ミサイルを積むことができないので巻き添え被害を小さくできると言われているが、それでも多くの市民を巻き添えにしてしまった」と述懐する。オバマ氏自身も「米国の空爆で民間人が犠牲になったことは厳然たる事実」と認めており、爆撃の規制を強化するなどして投下爆弾数を減らし、巻き添え死も減少傾向に転じた

◆トランプ政権下で交戦規定を緩和…犠牲者急増
 しかし、17年1月に発足したトランプ政権下で再び投下爆弾数が増え、市民の犠牲者も急増。背景には交戦規定の緩和があり、トランプ氏は同年8月に「制限を撤廃した」と明かし現地の裁量を拡大したと説明した。
 当時のマティス国防長官は議会で、空爆については、民間人の巻き添えを減らすため米軍や友軍が敵対勢力に一定程度近づかなければならないという要件が「もはやなくなった」と述べた。
 バイデン政権は交戦規定の変更について公表していないが、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ドローン爆撃にホワイトハウスの許可を必要とするなど規制を強めたという。

◆アフガン戦争終結宣言後も続く攻撃
 それでも、今年8月29日に、米軍は撤退間際のアフガニスタンの首都カブールで、過激派組織「IS」(イスラム国)系勢力のテロリストと誤認し、アフガン市民を支援していた団体職員を乗用車ごとドローンで爆撃。子供7人を含む一家10人が死亡した。
 バイデン氏は、アフガン戦争の終結を宣言した際に、同時にISなどテロ勢力にはドローン攻撃を続ける方針を表明している。
 これに対し、市民の巻き添え死などを調べてきたボストン大のネタ・クロフォード教授(政治学)は「米軍は、意図的に市民を殺害した第2次世界大戦などに比べれば巻き添えを防ぐ努力はしているが、依然として、期せずして市民を巻き込むケースがあり、中立的な一般人の信用を失い逆効果になる」と説明する。

30- シリーズ 検証 安倍・菅政権の9年 (5)(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗の「シリーズ検証 安倍・菅政権の9年」第5弾のタイトルは「原発汚染水 データ隠し 約束ほご」です。

 福島原発のトリチウム汚染水(アルプス処理水については、政府「関係者の理解なしにはいかなる処分も行いません」と、15年8月24日福島県漁連に書類で約束していました。
 それを菅首相は、就任してからまださほど経っていない昨年10月に、その約束を無視して一方的に政府の方針として海洋放出を決めたのでした。
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シリーズ検証 安倍・菅政権の9年
原発汚染水 データ隠し 約束ほご 
                        しんぶん赤旗 2021年9月29日
 政府と東京電力は、福島第1原発事故の汚染水問題をめぐって、データ隠しや後手の対応など、無責任で不誠実な対応を続けてきました。今年4月、菅義偉首相は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という漁業者との約束を覆し、地元をはじめ国民の心配の声を踏みにじって、高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)を薄めて海洋放出する方針を決定。この問題でも安倍・菅政権は露骨な強権政治を進めてきました。   (「原発」取材班)

原発汚染水
「なんとも割り切れないのがある・・・」。福島県業協同組合連合会の野崎哲会長は5月に開かれた政府の会合で、約束をほごにしたことを認めようとさえしない政府の態度に苦言を呈しました。
「関係者の理解」ぬきの方針決定について江島潔経済産業副大臣が「政府の考えは(約束した)当時と変わっていない。放出が始まるまで2年ある。多くのみなさまに理解を深めていただくよう取り組む」と強弁したからです。野崎会長は「基本方針そのものへの信頼性が疑われる」と批判しました。
 約束は201年8月、原子炉建屋周辺でくみ上げた地下水を浄化して海に流す「サプドレン計画」を漁業者たちが受け入れた際のものです。

苦渋の決断
 事故発生以来、相次ぐタンクの汚染水漏れや汚染水の海洋流出などに漁業復興を妨げられてきた漁業者たち。データ隠しや後手の対策で政府・東電に不信が募るなか、汚染水対策の前進のために苦渋の決断″として計画を受け入れたのです。
 同時に県漁連は、浄化処理をするとはいえ元は高濃度汚染水だったアルプス処理水についてはタンクで厳重保管し、「漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない」よう要望。これに政府と東電が回答した、特別に誠実な履行が求められる約束です。
 そうしたなか、18年には、浄化処理を終えた汚染水の8割にトリチウム以外の放射性物質が某準を超えて残存していることが発覚。これを事実上隠してきたことに、漁業者や地元だけでなく世界の不信が高まりました。
 安倍・菅政権は、タンク増設による陸上保管の継続、処理水のモルタル固化といった代替案の検討を求める国民の声にも背を向けてきました。
 専門家の懸念や指摘にも向き合わず、菅政権は発足直後の昨年10月に海洋放出方針を固めました。ただ、このときは国民的な反対の前にいったん断念しました。しかし今年4月、事故後10年の苦難の末、ようやく福島の漁業が試験操業から本格操業に移行しようというときに、灘業者が「絶対反対」を表明するなか決定を強行しました。

信用できぬ
「生業(なりわいを返せ、地域返せ!」福島原発訴訟の原告団長を務め、福島県相馬市でスパーを営む中島孝さん(65)は、複雑な気持ちで魚を売ってきました。今回の方針決定について「地元の意見をいっさい聞かず、代替案も考慮しない態度は強麹菌で、不信感をあおるばかりだ」と話します。
 当事者の声を聞かずに政府が一方的に決めた帰還方針、業者への原発事故の補償の問題でも「命を軽く見る態度がはっきり表れた」と中島さんは感じています。「この10年、被害に向き合わない安倍・菅政権の冷酷な面をみてきた。賠償するといっても到底信用できない」。隠ぺい・ねつ進・改ざん体質が「日本社会が前に進めない根本原因だ」と指摘し、「国民の側も厳しくチェックする努力が必要だ」と強調します。

写真説明(写真は省略)
アルプス処理水について「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と、政府が福島県漁連に約束した2015年8月24日付の回答書(日本共産党岩渕友参院議員事務所提供)

2021年9月29日水曜日

入院できない状況は異常 第6波に備え医療体制の準備が必要(東京新聞)

 今年に入ってから特に首都圏や大阪府においては、緊急事態宣言が出されていなかった日数は数えるほどしかありません。政府は、緊急事態を新に出したり延長したりするたびに、今度こそ期限までにコロナを鎮静させると繰り返しましたが一度も実現しませんでした。一向にPCR検査を普及させない(保健所を通さないと受けられず、個人で受ければ有料)ためひたすら感染拡大のリバウンドを繰り返してきました。

 そんな風に漫然と時間を空費し、しかも海外からの流入を阻止する水際対策もロクに採らなかった結果、真夏にデルタ株による第5波の大惨状を呈しました。8月1日~9月27日までの約2か月間に2319人が死亡し(昨年来の死者の総数は17504人)、そのうち入院できずに自宅などで亡くなった人は8月だけで250人7月の8倍達しまし50代までの比較的若い世代がおよそ半数)。
 幸いなことに第5波が鎮静に向かった結果、30日には全国的に緊急事態宣言等が解除される見通しになりました。しかし第5波がなぜ鎮静に向かったのかが明確でないため、今後もこれまでのように安易に過ごすなら、この先寒気に向かって新型株のコロナが大感染する可能性は大です。
 通常の生活スタイルに戻れればその経済効果は6000億円/月と言われます。そうであればそれに見合う費用をPCR検査の拡大や、病床の拡大、臨時入院施設の建設等に回すべきであり、それが最も緊要な対策の筈です。間違っても入院できないまま亡くなる人を二度と出すことがないように政府は最大の努力を払うべきです。
 東京新聞の記事「 ~ 第6波に備え医療体制の準備が必要」を紹介します。
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「入院できない状況は異常」自宅療養者を診る医師
            第6波に備え医療体制の準備が必要
                          東京新聞 2021年9月28日
 新型コロナウイルス感染拡大の第5波では一時、自宅療養者が全国で10万人を超え、東京都内では8月以降、みとりを含めて自宅療養中に48人が亡くなった。往診に奔走した英はなぶさ裕雄ひろお医師は「入院すべき人が入院できない状況は、あってはならない。異常だった」と指摘する。第6波が到来しても、医療逼迫ひっぱくは「二度と繰り返すべきではない」と語った。(池田悌一)
 「コロナには裏をかかれっぱなし。これだけ急激な感染爆発は想定していなかった。いやが応でも地域の医療機関も関与せざるを得なくなった」。新宿区の住宅街にある新宿ヒロクリニック。英院長の表情には疲労の色がにじむ。
 クリニックはこれまで、高齢者や糖尿病患者らの訪問診療を担ってきた。新型コロナの流行で、保健所から自宅療養者の往診を頼まれることもあったが、今春の第4波までは「月に数件程度」だった
 ところが、7月下旬から依頼が増え、8月に入ると急増した。常に感染者70〜80人を担当する状況となり、同月の患者は273人に上った。このうち都が入院対象とする中等症は5割超の144人。実際に入院できたのは全体の3割の83人だった。
 基礎疾患のない軽症の女性(53)は8月中旬、酸素飽和度が中等症レベルに低下した。クリニックはステロイド薬と酸素吸入で対応したものの状態は悪化。しかし入院先は見つからず、9月上旬に回復するまで往診や電話診療でしのいだ。
 英院長は「入院治療が必要なら全員入院できるようにすべきだ。高齢者や基礎疾患がある人などリスクの高い患者は特に、あっという間に重症化して死に至る恐れがある」と強調する。実際、クリニックで診ていた80代の2人が8月、自宅療養中に命を落とした。
 感染が収まってきた現在、担当する自宅療養者は一桁に落ち着いた。英院長は第5波を教訓に、「今のうちから臨時の医療施設を確保するなど、第6波が来ても慌てないよう準備する必要がある」と考える。
 第5波では図らずも、地域の医療機関が感染者対応に関わる流れが生まれた。英院長は今後について、こう語る。
 「保健所に任せきりにせず、福祉を含む地域の関係機関が連携していかなければいけない。自宅療養者も必要なときは速やかに入院してもらい、緊急時には臨時の医療施設を機能させる。状況に応じた医療提供体制をつくることが、市民の不安払拭ふっしょくにつながる」

部落、ネット公開は違法 「プライバシー侵害」東京地裁

 ひと頃、「同和問題(部落差別)」が新聞紙上等で取り上げられ、行政や学校等に対する部落解放同盟による過大な権利要求が批判された時期がありました。その結果そうした行き過ぎは是正され、同時に同和問題の解決のために立法行政を中心とした取り組みが進められてその分野ではある程度改善されました。しかし社会の中にある部落差別意識は依然として根絶されていないのが厳然たる事実です。
 全国の被差別部落地名リストのネット公開や書籍化は「差別を助長する」として、被差別部落出身者ら234人が川崎市の出版社「示現舎」と代表の男性らにリスト削除や出版差し止めなどを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であり、「出身者が差別や誹謗中傷を受ける恐れがあり、プライバシーを違法に侵害する」として、被告側に該当部分の削除や出版禁止計約488万円の損害賠償を命じました。
 損害賠償額の適否を別にして、該当部分の削除や出版禁止を命じたのは極めて当然のことですが、その一方 地名リストに掲載された41都府県のうち、関連する原告がいないことなどから佐賀、長崎を含む16県については削除や出版禁止を認めなかったのは何とも不可解です。
 結婚や就職など人生の節目で、被差別部落の出身者が差別に直面するケースは今も後を絶いなかで、当事者であることが明らかになる惧れを克服してそうした訴訟の原告に躊躇せずになれる人などいません。判事が「原告がいないのだからその地区には問題はない」と考えたのであればあまりにも想像力も常識も欠如しています。また判決が、原告が強く訴えてきた「差別されない権利」の侵害を一切認めなかったのも不可解です。
 西日本新聞が取り上げました。
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【解説付き】部落、ネット公開は違法 「プライバシー侵害」東京地裁
                            西日本新聞 2021/9/28
 全国の被差別部落地名リストのネット公開や書籍化は「差別を助長する」として、被差別部落出身者ら234人が川崎市の出版社「示現舎(じげんしゃ)」と代表の男性らにリスト削除や出版差し止めなどを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。成田晋司裁判長は「出身者が差別や誹謗(ひぼう)中傷を受ける恐れがあり、プライバシーを違法に侵害する」として、被告側に該当部分の削除や出版禁止、計約488万円の損害賠償を命じた。 
 一方自ら個人情報を公にしている場合などはプライバシーの侵害を認めず、一部原告は敗訴。地名リストに掲載された41都府県のうち、関連する原告がいないことなどから佐賀、長崎を含む16県については削除や出版禁止を認めなかった。原告、被告双方が控訴する方針。
 判決理由で成田裁判長は、今なお部落差別は解消されたとは言い難く「住所や本籍が地名リストの地域内にあると知られると差別を受ける恐れがあると推認できる」とし、身元調査などを容易にする影響があると指摘。リスト公開による損失は「結婚、就職で差別的な取り扱いを受けるなど深刻で重大であり、回復を事後に図ることは著しく困難」とした。
 被告側のサイトに掲載された、全国の被差別部落出身者らでつくる「部落解放同盟」幹部の氏名、住所などのリストについても「通常他人にみだりに知られたくない私的な事柄だ」として違法性を認めた。
 原告側が、法の下の平等を定めた憲法14条に基づいて主張した「差別されない権利」については「内実は不明確」として退けた。
 判決によると、地名リストの出典は、戦前に政府の外郭団体がまとめた「全国部落調査」。5360以上の被差別部落の地名などが掲載され、被告の男性が2016年、現在地を加えた全国部落調査の画像ファイルを公開し、復刻版として出版を計画した。
 男性は「地名がプライバシーに当たるなら学問の自由を著しく制限する」と主張したが、判決は「研究の自由が制限されるとはいえず、公益目的ではないことは明らか」と退けた。男性は「詳細は書面が届かないと分からない。控訴はすると思う」と話している。
 男性がネットに掲載したリストを巡っては16年、横浜地裁などが削除や出版差し止めを認める仮処分決定を出した。原告側弁護団は「判決確定まで仮処分の効力は維持されるはずだ」としている。 (山口新太郎)

立法による差別救済を
【解説】インターネット上に掲載された被差別部落の地名リストを巡り、リストの削除を一部にとどめた27日の東京地裁判決は、各地の出身者が裁判を起こさない限り、地名がさらされ続ける可能性も浮き彫りにした。今も根強く残る差別を恐れ、苦渋の決断で裁判に加わらなかった被害者は数多い。識者は立法による救済の必要性を指摘する。
 結婚や就職など人生の節目で、被差別部落の出身者が差別に直面するケースは後を絶たない。その現状でルーツを明かして提訴するハードルは極めて高い。弁護団が原告として想定した人数のうち、実際に提訴したのは半分ほどにすぎなかった事実がそれを物語る。
 判決は「立法および行政を中心とした取り組みが進められてきた現在でもなお部落問題が解消されたとは言い難い」と認め、部落出身者が地名リストの公開で差別を受ける恐れがあることを「容易に推認される」とした。ネット掲載については「差別しようとする者が個人情報の調査を容易にする」と言及。当事者の差別を受けるリスクが飛躍的に高まる現状を示した。
 被差別部落問題に詳しい内田博文・九州大名誉教授は、原告側の主張を一部認めた判決を「一歩前進」と評価した上で、「提訴して名乗り出ることのリスクや、差別被害の立証の難しさは現体制では解決できない」と指摘。行政や司法から独立した人権救済のための機関の設置と、「包括的な差別禁止法」の整備が必要だと訴える。
 差別をなくす活動は「重荷を背負って坂道を上るようなもの」と内田氏は例える。少しでも油断すれば、差別は繰り返されるからだ。判決を機に、当事者を孤立させずに社会全体で「重荷」を受け止める取り組みが求められる。 (河野潤一郎、一瀬圭司)


「一部地域名の容認」憤り 原告側「差別実態分かっていない」
                           西日本新聞 2021/9/28
 被差別部落の地名リストの公開を「違法」と断じた27日の東京地裁判決に対し、原告、弁護団の間では評価と落胆の声が入り交じった。「被告の行為に鉄ついが下された」。ある原告は「一歩前進」と受け止めた。ただ判決は原告が強く訴えてきた「差別されない権利」の侵害は一切認めず、一部地域では原告がいないことなどを理由に事実上、公開を容認した。原告側弁護士は「裁判所は差別の実態を認識しているのか」と憤った。 
 判決の言い渡しから約40分後、東京地裁前。原告側弁護団が「勝訴」の旗を掲げると、集まった数十人の関係者から拍手が湧き起こった。だが「少し説明が必要です。一部の県のリストは差し止めを認めない判断になっています」。弁護団が続けると、高揚した雰囲気は一気にしぼんだ。
 都内で開かれた原告側の報告集会と記者会見で、弁護団は「地名リストの公表は違法としており、基本的には勝利だ」としつつ、指宿昭一主任弁護士は「煮え切らない、大勝利とは言えない判決」と悔しさをにじませた。
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 「なんで…」。佐賀県の被差別部落にルーツを持つ支援者の50代男性は集会の会場で絶句した。
 佐賀県は原告が部落出身者だという「証拠がない」として、事実上公開を禁止しなかったからだ。「差別をしてはいけない」と地名リストの存在を全否定するような明確な司法判断が出ると期待していた男性は「判決には納得できない」とうつむいた。
 弁護団がプライバシー権や名誉権に加え、強く主張していたのが、法の下の平等を定めた憲法14条に基づく「差別されない権利」の侵害だ。判決は差別されない権利について「内実が不明確」と歯牙にもかけなかった。
 出身者であることを公表し、広く知られている人に対するプライバシー権の侵害を認めなかったことに関し、山本志都弁護士は「差別というものをどう考えるのか、裁判所にはその基本がない」。全国の被差別部落出身者らでつくる「部落解放同盟」の片岡明幸副委員長も「リスト自体が差別を助長し、生むということを裁判所は認めていないと感じた。絶対におかしい」と強調した。
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 リストの削除や出版差し止めを認めたこれまでの仮処分決定では、実質的に差別されない権利を認めるような判断も出ている。
 横浜地裁相模原支部は2017年7月の決定で、リストにより出身者であることを示されるのは「差別的取り扱いを受けるかもしれないという懸念を増大させ、平穏な生活を脅かすものとなる」と指摘。その上で「差別行為を受けることなく円滑な社会生活を営む権利を侵害する」とした。
 差別されない権利を訴える原告側の思いは、壮絶な差別の歴史と社会に根深く残る差別意識を抜きには語れない。
 1970年代、今回のリストと同種の書籍「部落地名総鑑」がひそかに多数の企業に販売、購入され、被差別部落の出身者の身元調査に利用されていたことが発覚した。「交際や結婚相手が出身者かどうか気になる」。法務省の国民意識調査(19年度)では、部落差別を知っている人の15・8%が差別意識をにじませた。
 「被差別部落に住んでいるのは原告だけではないのに、個人の評価で一部の地域を差し止めの対象外とするのは理解できない。リストは原告がいてもいなくても差別を助長するのに」。解放同盟の西島藤彦書記長は会見で語気を強めた。

 指宿弁護士は「部落差別の実態を認識しているならば、もう一歩踏み込んだ判決になったはずだ。差別されない権利を認めないとまずいという認識が社会に浸透していない」と語り、判決を機に議論を活発化させるよう促した。 (森亮輔、山口新太郎) 

29- 「安倍-高市-麻生」:「小泉-石破-河野-菅」の対立が残す総裁選後の禍根

 29日は自民党総裁選の投票日です。総合的に見て岸田氏が当選する可能性が大きいようですが、なぜか本人は「今回はなりたくない」とぼやいているということです。総裁を目指したのに当選しても喜べないというのは尋常ではありません。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏「これだけ混戦となったのは、党を掌握できる人間がいないということで、今後自民党の力が弱まっていくことは間違いありません。総裁選後、党内では遺恨が残るでしょう」と述べました。
 安倍氏はいずれ清話会(現細田派)に戻りリーダーとなり、高市氏も同派に復帰する筈ですが、清和会の内部には高市氏に対して複雑な思いがあるので、それはそのまま安倍氏の求心力の減殺につながります。安倍氏が敢えて高市氏という「火中のクリ」を拾ったのが多くの人たちから理解されるのかは大いに疑問です。
 実際、今度の総裁選では自民党の中に大きな軋轢と亀裂を生みました。鮮明になった「安倍-高市-麻生」と「小泉-石破-河野(-菅)」の対立は総裁選後に禍根を残し、一体感を欠いた次期政権は短命に終わると予想されています。岸田氏が「今回はなりたくない」とぼやく所以です。
 安倍・菅政権が、小選挙区制という特性が作用したとはいえ9年近くも続いたのは余りにも異常でした。角谷浩一氏が言う通り、自民党は今後弱まっていって欲しいものです。
 FLASH編集部が報じました。
 日刊ゲンダイの記事を併せて紹介します。
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最有力の岸田文雄氏も「勝ちたくない」とボヤキ……
 「安倍・高市・麻生」と「小泉・石破・河野」対立が残す総裁選後の禍根
                          FLASH編集部 2021.09.28
                      週刊FLASH 2021年10月12日号
「こんなに苦戦するとは考えていなかった。やはり9月2日の “あの発言” で、局面が大きく変わってしまった
 岸田文雄前政調会長(64)の選対関係者がうなだれる。
 あの発言とは、森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざん問題で、「国民が納得するまで説明を続ける」としたBS-TBSの番組内での一件だ。6日になって軌道修正したものの、安倍晋三前首相(67)の癇に障った結果、安倍氏は高市早苗前総務相(60)の支持を明確にしたのだった。
 自民党総裁選は、岸田氏、高市氏、河野太郎行政改革担当相(58)、野田聖子幹事長代行(61)の4人が立候補した。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が語る。
「これだけ混戦となったのは、党を掌握できる人間がいないということ。今後、自民党の力が弱まっていくことは間違いありません。総裁選後、党内では遺恨が残るでしょう」
 ある若手議員はあきらめ顔でこう明かす。
「安倍さんは、衆院選後に自民党の最大派閥である清和会(細田派)の会長職に就任するとみられている。安倍さんにうまく取り入っている高市さんは、そのタイミングで同派に復帰するらしい。『派閥を割るな』という安倍さんの意向で、下村博文政調会長(67)が出馬を見送った清和会の内部には、高市さんに対して複雑な思いがある」
 角谷氏が解説する。
「総裁選後には、これまで清和会の次代を担うといわれてきた下村氏や萩生田光一文科相(58)、その後に続く稲田朋美元防衛相(62)、西村康稔経済再生相(58)らの影響力も大きく低下するでしょう。その代わりに台頭するのが、当選3回以下の若手議員約90人からなるグループ『党風一新の会』を立ち上げた福田達夫衆院議員(54)です」
 福田氏は当選3回で、祖父の赳夫氏、父の康夫氏は首相経験者だ。今まで派閥内でも発言力の弱い “眠れる獅子” だったが、若手議員の支持で一躍、同派のホープとなった。
 自民党関係者が語る。
「じつは安倍さんから “高市支持” を強要されて、反発している若手議員は多い。今は、親分がカネをくれることもほとんどなく、派閥の意味は薄れてきている。もう命令だけしてカネをくれない安倍さんの時代ではないということだ」
 だが、“キングメーカー” の座を狙う安倍氏は暗躍中だ。二階派の幹部議員が語る。
「そもそも、今回の総裁選は菅義偉首相(72)の無投票再選となるはずで、安倍さんとも “握って” いたはず。ところが、菅さんの支持率の低下に焦った安倍さんらが、二階俊博幹事長(82)を降ろそうと画策した。その機に乗じて高市さんが立候補表明した際には、その裏に安倍さんの存在を感じた菅さんは『(立候補など)させるか!』と、呟いたそうだ」
 こうして、高市氏の立候補をめぐって菅氏と安倍氏には禍根が残ったが、より深刻なのが、菅氏と麻生氏の確執だという。政治部デスクが語る。
「最後に菅氏が党役員人事と解散でなんとか窮状を打開しようとしたとき、麻生氏は菅氏が狙った、麻生派の子分である河野氏の重要ポストへの起用を頑なに拒み、結果的に菅政権が瓦解に至ったとの見方がもっぱらです」
 安倍氏は高市氏を担ぎ上げ、結果的にそれを援護する形になった麻生氏。この“ATA(安倍・高市・麻生)”ともいうべき連合結成に、菅氏は黙っていなかった
「麻生氏に怒りを募らせた菅氏は、麻生氏と “水と油” である石破茂元幹事長(64)に連絡し、河野陣営に引っ張り込んだと聞いています」(同前)
 そして、菅氏は河野氏を支持することを表明した。現職の首相としては異例のことだ。麻生派は、河野氏、高市氏、岸田氏の支持者に分かれた。前出の自民党関係者が語る。
「所属する麻生派のなかでも、河野さんを心底支持している議員はそう多くない。河野さんが総裁になっても、党内基盤は相変わらず弱いままなので、政権運営にはかなり苦労するだろうというのが党内の一致した見方だね」
 小泉進次郎環境相(40)も、河野氏の支持者だ。党員人気の高い小泉氏、石破氏と河野氏による “小石河” 連合である。
「河野氏支持を表明した会見の際、進次郎氏は “高市支持” を押しつける安倍氏を念頭に、ほかの選択肢を封じる姿勢を正面から批判しました。安倍氏はその発言に激怒していますが、それを伝え聞いた進次郎氏は『だからなんだっていうの』と譲らない姿勢だそうです」(政治部デスク)
 一方、野田候補は現在のところ、候補者4人のなかで、最下位となるだろうとみられている。政治部記者が語る。
「野田氏を候補者に擁立したのは二階氏で、目的は “岸田潰し” です」
 二階氏は、野田氏を立てれば、岸田氏の票を少しでも食えると判断したのだ。
「岸田氏は、総裁選出馬会見で、党役員任期を連続3期・3年にする考えを示し、幹事長職に就いて5年を超える二階氏の続投にNOを突きつけました。このことに二階氏は激怒したのです」(同前)
 一方の野田氏は、過去3度の総裁選では推薦人が集まらず、立候補すらできなかった。
「今回は、二階氏の後押しで出馬にこぎつけられたわけです。本人は『かませ犬でも、もう十分だ』と思っているのではないでしょうか。二階氏の目論見どおり岸田氏が負ければ、党人事で岸田氏は徹底的に干されるでしょう」(同前)
 総裁選の投開票が、いよいよおこなわれる。政治アナリストの伊藤惇夫氏が、総裁選後を見通す。
「仮に岸田政権になった場合、党員票を考えれば、河野氏や進次郎氏を重要なポストに就けないと衆院選に悪影響を及ぼすでしょう。一方で、安倍氏や麻生氏の意向を汲み、高市氏の処遇を考える必要もあります。閣僚人事は非常に難しいものになるでしょう」
 “ATA” と “小石河” の泥沼戦争は収束を見通せず、一体感を欠いた次期政権は短命に終わるという予測がある。
「俺は今回、勝ちたくない」
 総裁選が迫るにつれ、岸田氏は周囲にそうこぼすことがあるという。
            (週刊FLASH 2021年10月12日号)


総裁選は“2番手”岸田文雄氏が決選投票で逆転勝利濃厚…自民の墓穴に野党はシメシメ
                          日刊ゲンダイ 2021/09/28
「やはり疫病神なのか」――。29日投開票の自民党総裁選で、河野ワクチン担当相が伸び悩んでいる。それは何より本人の資質の問題なのだが、菅首相が支持を明言したことが「不吉なジンクス」になったと嘆く声まで出始めた
                ◇  ◇  ◇
 河野陣営のひとりは「小此木さんの悪夢を思い出す」と言う。8月の横浜市長選で菅首相が全面支持を表明した途端、それまで圧勝とみられていた小此木八郎前国家公安委員長が苦戦し始めた一件。議員バッジを投げうって立候補した小此木氏は落選し、政界引退に追い込まれた。
 今回の総裁選も、当初は国民人気が高い河野氏が党員・党友票で圧倒し、1回目の投票で過半数を制して当選する可能性が囁かれていた。
 ところが、終盤情勢は河野氏がトップに立つものの過半数には及ばず、国会議員票を固めて2位につける岸田前政調会長との決選投票にもつれ込むのは確実だ。
「議員票は27日時点で岸田氏が130票超、河野氏は110票台を固め、90票台まで追い上げた高市氏が100票をうかがう勢い。議員票の比重が大きい決選投票になれば、2位・3位連合で高市氏の票が乗る岸田氏が断然、優位です」(キー局政治部記者)

岸田氏が勝てば笑うのは「2A」だけ
 決選投票では、安倍前首相の出身派閥である細田派はともかく、第2派閥の麻生派もまとまって岸田氏に入れる可能性があるという。河野氏は麻生派所属なのに、総裁派閥になるチャンスを捨てて相手候補を勝たせるなんて、もうメチャクチャだ。まったく派閥の体をなしていない。
 2位・3位連合で岸田氏が勝てば、安倍前首相と麻生財務相の「2A」がキングメーカーとしてデカイ顔をし、派閥はますます弱体化。2Aが党内を牛耳るだけのことだ。
岸田総裁なら幹事長は麻生派の甘利税調会長、官房長官には岸田派の小野寺(五典)防衛相という人事案も流れている。失礼ながら、あまりに華がない布陣なので、これで直後の衆院選で勝てるのかという不安はあります」(自民党若手議員)
 菅首相と変わらないくらい地味な新総裁なら、衆院選に向けて表紙を替える意味も薄れてしまう。当然、野党側は岸田総裁誕生の可能性が高まったことを歓迎している。
「野党にとっては、安倍支配を打破して河野総裁が選ばれるのが最悪シナリオ。人気者の小泉進次郎氏や石破茂氏が幹事長などの要職について選挙応援に駆け回ることになったら、野党は壊滅しかねません。その点、安倍傀儡の岸田政権なら戦いやすい。自民党政権では何も変わらないことの象徴ですから。野党共闘で掲げる脱原発も対立軸になるし、いい勝負ができると思います」(立憲民主党関係者)

■公明、維新との関係も微妙に…
 数の力で総裁選も押し切るつもりの「2A」は、党内で自分たちが影響力を保てればそれでいいのかもしれないが、一般有権者はしらけるだけ。衆院選で投票するのは自民党員だけではないのだ。
2Aの影がチラつく岸田政権では、自民党が新しく生まれ変わった印象にならず、衆院選の負け幅をどれだけ減らせるか疑問です。公明党との太いパイプを持つ菅首相や二階幹事長が表舞台から去れば、自公の選挙協力も微妙になるかもしれない。岸田氏が新総裁に選ばれた場合、自民党は50議席くらい減らす可能性があります」(政治評論家・野上忠興氏)

 菅首相と友好関係にある日本維新の会も、“岸田首相”には協力できないだろう。衆院選で議席を減らした岸田自民は、その後の国会運営でも苦労しそうだ。