2019年8月31日土曜日

安倍首相の出口戦略は文政権打倒/リベラル派の「どっちもどっち」論

 韓国が訪日観光を抑制した影響は大きく、九州方面は深刻な事態に陥っています。抜き差しならぬ経済戦争に発展した日韓問題について、テレビは昼だけでなく、毎晩スタジオに右翼論客を揃えて韓国批判の番組を放送しており、その結果日本の国内世論は「韓国叩き、経済制裁支持」の一色に染まっているかに見えます。
 そんな中、「世に倦む日々」氏が、ブログ「マガジン9条」に鈴木耕氏が28日に載せた記事で、文在寅が支持率を回復させるために愛国心を煽っていると決めつけ、4月の選挙のためにGSOMIAを破棄するという禁じ手」を使ったと非難したことを取り上げました。いわゆる「どっちもどっち」という論法が、リベラリストにも浸透しているということです。
 
 日本と韓国は歴史的に加害国と被害国という関係にあります。加害国である日本が韓国における徴用工問題の扱いが「我慢できない」からとして、いわば半導体立国の韓国にとって死活的に重要な3品目の輸出規制という韓国叩きに奔ったのがそもそもの発端で、それに窮した韓国が対抗措置を講じた結果いまの事態に至ったのでした。
 その現状を見て「どっちもどっち」というのは、これまでの歴史やことの始まりの部分を捨象して喧嘩両成敗的な観点に立とうとするもので、正しい見方とは言えません。
 
「世に倦む日々」氏は、安倍首相が目指しているのは「文在寅を失脚させて左派政権を崩壊させること」であり、そのため国内の資源を総動員して韓国の保守マスコミおよび保守野党と連携工作し、日本マスコミの文在寅叩きを韓国内で宣伝させ、文の支持率を引き下げようとしていると述べています。
 そしてそれを知ってか知らずにか、日本の国内世論の8割が経済制裁を支持するというファシズム的状況に陥っていると指摘しています。
 
 このところ同氏のブログを頻繁に紹介していますが、日韓問題での安倍政権批判の論調が量的に劣勢の中で貴重な論文です。
お知らせ
都合により9月1日は記事の更新ができませんのでご了承ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
出口戦略は文政権打倒 - 鈴木耕の韓国叩きと「どっちもどっち」論 
世に倦む日々 2019-08-30
日韓の間で経済戦争が始まっていて、日本国内でも各地で交戦の被害が出ている。西日本新聞の報道によれば、7月に九州に入国した外国人の数が急減、前年同月比6.1%減となって観光産業に打撃を与えている。九州の訪日観光客の半分を韓国人が占めていて、対馬や大分の業者が悲鳴を上げる事態となっている。年間40万人の韓国人が訪れ、離島の経済を支えている対馬の損失は深刻だ。人口4万人の離島に毎日1000人を超える外国人観光客がお金を落としに来ていた。長崎県知事が憂慮の声を発しているけれど、東京のマスコミはそれを報道しない。東京のテレビは、毎晩毎晩、スタジオに右翼論者を揃えて韓国叩きの気炎を上げている。文在寅に対する「数時間憎悪」を飽くことなく放送している。『1984年』のゴールドスタインだ。戦時の報道は大本営報道であり、敵である韓国が劣勢にあるという情報しか語らず、世論調査で文在寅の支持率が下がったとか、そういう「戦果」のみを前面に出す報道に徹している。
 
日中戦争が始まったときとそっくり同じで、あのときの「暴支膺懲」の空気と同じだ。戦争は一度始めたら終わらせるのが難しい。相手があることだから、一方の側のコントロールだけで万事が進行して完結するわけではない。この戦争は、徴用工問題への報復として安倍政権が始めた侵略戦争であり、半導体生産材料を禁輸する奇襲攻撃から始まり、ホワイト国除外という作戦に展開して現在にある。根本に歴史問題があり、徴用工問題で安倍日本側に妥協の交渉をする気配がないから、応酬が続いて戦争はエスカレートせざるを得ない。安倍晋三の出口戦略すなわち終戦構想は、文在寅を失脚させて左派政権を崩壊させることであり、その目標達成に向けて日本国内の資源を総動員している。韓国の保守マスコミおよび保守野党と連携工作し、日本マスコミの文在寅叩きを韓国内で宣伝させ、文在寅の支持率を引き下げ、反文在寅デモを扇動する謀略に余念がない。安倍晋三はこの戦略が可能だと考えていて、両者の間に妥協はない。
 
問題なのは、日本の左翼が「どっちもどっち」論の立場に即き、文在寅叩きに加担していることである。例えば、マガジン9条の鈴木耕の言動がそうだ。8月28日に上げた記事の中で、文在寅が支持率を回復させるために愛国心を煽っていると決めつけ、4月の選挙のために「GSOMIAを破棄するという禁じ手」を使ったと非難している。この見方は、まさに現在、NHKや民放のニュースで流されている韓国報道の基調であり、プロパガンダの柱となっている言説だ。文在寅を「反日」として敵認定し、日本人の不信と憎悪を掻き立て、攻撃を集中させるプロパガンダの刷り込みに他ならない。こうした誹謗で文在寅を悪者化することで、安倍晋三の韓国への経済制裁を正当化し、韓国側の徴用工問題の要求を不当視する世論に導いている。日本の左翼リベラルが「どっちもどっち」論でお茶濁しするために、安倍晋三の報復措置の不当性が浮かび上がらず、日本の国内世論の8割が経済制裁を支持するというファシズム的状況に陥ってしまう。
 
文在寅を叩き、「どっちもどっち」論で処理する鈴木耕の愚論は、「日韓関係悪化の責任は100%安倍政権にある」と言い、「韓国に100%の理があり、日本に100%の非がある」と断言する浅井基文の議論と雲泥だ。実に対照的だ。鈴木耕の知的不精を示している。特に、鈴木耕の次の一節には呆れ果てる。「文大統領はGSOMIAについては、完全に読み違えた。後ろ盾になってくれるはずのアメリカからも『大いに失望した』と言われ、孤立感を深めているのが現状だ」。これは、NHKの高野洋や岩田明子と全く同じ口上ではないか。反町理や辛坊治郎と同じではないか。鈴木耕は、韓国がGSOMIAを維持させた方がいいという認識なのだろうか。米国の機嫌をとり、米国の言いなりになって、米日韓軍事情報協定を存続させることが正しい政策決定だと言いたいのだろうか。この鈴木耕の見解には、明らかにGSOMIAを積極評価し、韓国と日本にとっての国益になるものだとする観念がある。この立場は、私や浅井基文からは属米右翼のものだ。
 
文在寅を「反日」規定して叩き、韓国側の対応に「感情的」のレッテルを貼る日本の左翼の一部に共通しているのは、日韓の根本問題についての認識不足であり、知識の欠如に由来するところの、バイアス補正のインテリジェンス知性の不全だろう。正しい知識が十分にないから、マスコミの韓国叩きの波に流されるのであり、文在寅を悪者に仕立てて貶す論調に影響され、簡単に納得してしまうのである。村山談話の原則と信念が内面にあり、浅井基文の国際政治学に膝を打つ知性があれば、文在寅を叩いて「どっちもどっち」論で平衡させる安易な態度には決してならない。今回の鈴木耕の文在寅叩きと「どっちもどっち」論を見て想起するのは、4年前にマガ9で想田和弘を使って仕掛けた9条改憲論の工作であり、SEALDsや伊勢崎賢治・今井一・中島岳志らと歩調を合わせて推進したところの、左から切り崩しを図る9条改憲の策動である。マガジン9条というのは、9条護憲の媒体ではなく、護憲派の左翼を改憲派に思想改造させるための巧妙で悪質な洗脳装置だった。パターン反復がされている。
 
パターン反復といえば、2008年頃から熱を帯びた動きとなり、2012年の尖閣問題と中国の反日デモを経て、今ではもう手の施しようがなくなった日本の病的な反中言説の高揚と定着があり、極端な反中親米の右翼国家日本の構図があるだろう。最早、誰もその問題に自覚的に対峙できる者はいない。しばき隊左翼も完全にその隊列に加わっていて、むしろ前衛の位置を担い、共産中国に対する敵意と攻撃性を剥き出しにしている。香港の民主化デモを大陸に移植させ、邪悪な共産独裁のPRCを崩壊させようと鼻息を荒くしている。しばき隊にとって、代々木の共産党と北京の共産党は何やら別物の存在らしい。その奇妙な問題系に道草するのは控えるが、今の日本の左翼が反中親米一色の無思考状態に収斂している現実は否めず、そのことと、日本の左翼が今回の日韓問題に逢着して浮薄な「どっちもどっち」論でフロートする面妖を演じ、マスコミの文在寅叩きに加勢している事実とは無関係ではないように思われる。シンプルに言えば、政治の右傾化現象が左翼をも包摂していて、日本は世界でも並外れた右翼大国と化している
 
マイク・ホンダと日本のマスコミ世論との関係の時系列の変化が、その真実を客観的に示している。

日米貿易合意の内容は自民党内でも発表できない

 第3回目の米朝首脳会談が行われた際、文在寅韓国大統領がトランプ氏に南北融和へのとりなしを頼んだ時、トランプ氏が「その依頼は高くつく」という趣旨のことを述べたと日本のメディアは伝えました。
 メディアは決して報じませんが、同じように安倍首相がトランプ氏に「日朝首脳会談実現への取り成し」などを依頼する際にも、そのつど見返りに当たるものを差し出している筈です。安倍首相はいつも拉致被害者家族に対してトランプ大統領に頼んであるからと護摩化しますが、元経産官僚の古賀茂明氏はそうした依頼は全て「高くついている」と述べています。
 
 以前トランプ氏との首脳会談で米国産の農産物を大量に購入する約束をしたとき、安倍首相がその発表を参院選後にするよう頼み込んだ話は「公然の秘密」でした。
 先般 茂木担当相らが渡米して行った日米閣僚交渉は、当然その線に沿って進められた訳ですが、そこで決められた内容は帰国後も自民党内でもまだ公表されていないということです。
「偽造・捏造・安倍シンゾー」と呼ばれる安倍政権が党内にもまだ発表できないというのですから、余程酷い内容なのでしょう。
 天木直人氏のブログを紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
密約だった日米貿易合意に文句の一つも言わない自民党
天木直人のブログ 2019-08-30
 私は、日米貿易合意の裏には間違いなく密約があるとにらんでいる。
 なぜならば、トランプ大統領に頼みこんで先延ばしてもらった日米貿易交渉であるから、参院選が終われば、安倍首相はトランプ大統領に倍返しのお礼をしなければいけないからだ。
 そうでなければトランプ大統領が満足するはずがない。しかし、そんな譲歩を公表すれば国民の反発を受ける。だから本当の合意は隠すしかないのだ。
 
 そして、その私の推測が正しい事が、自民党の会合で見事に証明された。
 すなわち、茂木担当大臣は、きのう8月29日の自民党の会合で日米首脳が基本合意した日米貿易交渉について報告したと、きょうの各紙が報じている。
 しかし、おどろいたことに、「貿易、経済関係の強化が可能になる。バランスの取れたとりまとめが出来た」としか報告せず、合意した具体的な内容は一切明かさなかったというのだ(共同)。
 
 メディアや野党に明かさないのならまだわかる。しかし、政権政党であり、仲間の自民党の会合ですら、明かさなかったのだ。まさしく密約である。
 ところが、もっと驚いたのは、誰一人として中身を教えろと文句を言わなかったというのだ。
 かつて、1951年、吉田茂が日米安保条約という密約を米軍兵舎の中でひとりで署名して帰国し、それが国会で審議された時、国会議員の誰ひとりとして、その内容を知らなかったことが、歴史的事実として語り継がれている。
 まさしく戦後の日米関係は密約で始まり、今日まで密約が繰り返されて来たのだ。
 
 しかし、日米安保条約の時は、国会議員は皆、知らされなかった事に激怒した。
 知らされなかったものを、署名して帰ってきた後で、どうして審議しろというのかと。
 若かりし頃の中曽根大勲位などは、吉田茂首相を批判する急先鋒だった。
 それから60年近くたって、いまでは自民党の会合で中身を知らされなくても、誰も文句を言わないのだ。日本は骨抜きにされたということだ。
 米国の日本支配は見事に完成したということである(了)

31- インドもロシアから防空システムS-400を購入

 インドは4世紀前後に「ゼロ(の概念)」を発見した国として知られています(従来の説より500年ほど早まりました)
 工業はまだそれほど発展していませんが、IT(情報工学)などのソフト技術の分野では傑出していて、米航空宇宙局(NASA)で勤務する科学者40近くがインド出身で、グーグルマイクロソフトなどの上層部にもインド人出身の理系の企業人が進出しているということです。
 そうした優秀な人たちが政権を運営すれば、日本のように役に立たないイージスアショアを高額で購入するような愚行はしない筈です。(^○^)
 
 やや余談めきましたが、インドも米国からの強い圧力に抗して、ロシアから防空システムのS-400を購入することを決めました。5システムを54億ドルで購入2023年までに引き渡される予定で、インド政府は購入代金を支払い始めたということです。
 
 シリア政府の依頼を受けてロシアが登場してから、その武器の優秀さが知られるようになり、それがここまで及んできました。
 ロシアの兵器の方が米国製よりも優れているうえに価格も安いし変な紐も付けられていないからでしょう。
 櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
インドも米国の圧力をはねのけてロシアから防空システムS-400を購入
櫻井ジャーナル 2019.08.30
 インドのナレンドラ・モディ政権がロシアから防空システムのS-400を購入すると決めて以来、アメリカから取り引きを破棄するように圧力が加えられてきた。その圧力を跳ね返し、インド政府は購入代金を支払い始めたと伝えられている。5システムを54億ドルで購入、2023年までに引き渡される予定だ。
 
 両国ともSCO(上海協力機構、上海合作組織)のメンバー国であり、この取り引きが成立するのは必然のように見えるのだが、モディ首相がイスラエルと緊密な関係にあり、アメリカにとって戦略上、重要な国でもある。
 アメリカはイギリスと同じようにユーラシア大陸の沿岸部を支配して内陸部にプレッシャーをかけ、中国やロシアを支配するという長期戦略を採用、2018年5月にはアメリカ太平洋軍をインド・太平洋軍へ名称変更した。勿論、名称を変更しただけでないだろう。
 太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うという構図を描いているようだが、ディエゴ・ガルシア島も重要な役割を果たすことになるはず。
 ディエゴ・ガルシア島はイギリスが不法占拠、それをアメリカが使っている。ICJ(国際司法裁判所)はディエゴ・ガルシアを含むチャゴス諸島をイギリスはモーリシャスへ返還するようにと勧告しているが、無視されている。アメリカやイギリスに国際ルールを守るという意思はない。
 
 こうした米英の戦略をインドのロシア接近は危うくする。こうした動きはインド以外の国でも見られる。NATO加盟国であるトルコではすでにS-400の搬入が始まり、新たにロシア製戦闘機のSu-35やSu-57を購入する可能性が出てきた
 アメリカとしては対立を煽り、そのターゲットをコントロールしようとするだろう。インドの場合は中国やパキスタンを利用しようとするだろうが、ロシアと中国は戦略的な同盟国。アメリカの思惑通りに進まない可能性は小さくない

2019年8月30日金曜日

65年日韓協定後に行われた対韓経済援助8億ドルの行方

 日本政府は1965年の日韓基本条約と共に結んだ「経済協力協定」に基づいて、無償協力基金3億ドル、有償借款2億ドル、産業借款3億ドルの合計8億ドルの経済援助を行いました(当時1ドル360円ベース)8月上旬、韓国の衛星放送JTBCが、日本からの経済援助が、ソウル首都圏地下鉄事業と浦項製鉄所建設事業でどのように使われたのかを検証した特集番組を数日にわたって放送し、韓国内で大反響を呼びました。
 長州新聞がその概要を紹介する記事を出しました。
 
 それによると、韓国が購入する地下鉄の日本製の車両(客車)は当初約84億円(186両)でしたが、1年後には物価上昇を理由に40もアップし、約118億円(1台あたり6500万円)に膨れあがりました。当時日本国内では1台あたり3500万円だったのでその2に設定された訳です。
 有償借款2ドルの利子は4.12%で、米国の利子2%の2倍以上でした。
 
 援8ドルの使途については、政財界関係者による日韓協力委員会が置かれ、そこで決められました。初代会長には戦時中満州軍だった朴正煕大統領(当時)と格別の親交があった岸信介(旧A級戦犯)就き、以下日本側の委員は満州国関係者を軸にした21の戦犯企業の役員で占められました。
 そして「借款は日本の物資と用役のために使う」とか、「韓国は重化学のような日本と競合する産業を育成してはならない」など、様々に日本が有利になるような足かせを付け、韓国の安い労働力を使って日本企業の下請化を進めるなどしました。
 そして地下鉄の車輌で不当に大儲けをした日本企業は、その一部を韓国の軍事独裁政権に賄賂として使いました。
 番組を見た韓国民が大いに怒ったのは言うまでもありません。
 
 関連の動画は下記などがあります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
韓国への経済援助8億㌦の使途に迫る 韓国衛星放送JTBCの報道から
 長周新聞 2019年8月29日
 日韓関係の悪化をめぐり、韓国の衛星放送JTBCが、日本からの経済援助8億㌦の使途について検証した特集番組を連日放送して反響を呼んでいる。8億㌦の経済援助は、1965年に「日韓条約」とともに結んだ「請求権・経済協力協定」によって韓国側に与えられたもので、安倍政府はこれをもって戦時中の徴用工をめぐる請求権も「完全に解決している」としている。番組では、その内実が、現在のODAと重なる途上国政府を迂回させた日本の財閥の利権事業であったことを暴露している。
 
 番組では、日本が1965年の韓日請求権協定の後に韓国に与えた無償協力基金3億㌦、有償借款2億㌦、産業借款3億㌦の合計8億㌦が、どこで、どのように使われたのかを具体的に追跡。とくに日本の外務省が「日本の援助による繁栄」の象徴的事業としているソウル首都圏地下鉄事業と浦項製鉄所(現在のPOSCO)の建設事業を中心にとりあげた。
 
 1971年に着工したソウル地下鉄の建設資金は、日本から借りた8000万㌦を充てたが、年率4%もの高金利のうえ「日本企業が作った車両と部品のみを使用する」という条件付きであった。受注したのは、三菱と丸紅が主導する合弁企業。当時、韓国の経済政策を統括していた経済企画院の内部資料によると、当初、国務会議での報告で約84億円だった客車(186両)の値段は、約1年後には物価上昇を理由に40%上乗せされ、約118億円(1台あたり6500万円)に膨れあがった。同時期に東京の地下鉄に納品した客車は1台あたり3500万円であり、韓国への納品額はその2倍であった。
 
 同じ頃、米国議会に使われた韓国政府のロビー資金が、三菱の口座などを通じて流れていたことが暴露され、米国で問題になる。さらに1977年の国会聴聞会(日本)で、ソウル地下鉄の納品代金を日本企業が横領し、一部を韓国の軍事独裁政権に賄賂として使ったことが明らかになる。三菱が横領した金額だけで22億円にのぼり、高額な客車予算の4分の1にあたる金額だった。
 
 また、1972年に日韓政府が交わしたソウル地下鉄建設のための借款契約書には、「借款は日本の物資と用役のために使う」と記された。当初は公開競争入札としたが、鉄鋼財等は三菱との随意契約となった。「技術用役に韓国企業が参加できる」とした技術移転に関する契約も、後に言葉を変え、韓国企業の参加は基礎的な下請事業に限定された。借款の金利は4・125%で、2年後の米国の借款(金利2%)よりも高く、化学材料とプラスチックなど16件の核心品目は日本から買うことを条件付けた。化学材料、鉱物、プラスチック、非金属などは、いまだに日本への輸入依存度が90%をこえている
 
 無償協力基金の3億㌦が最も多く投入されたのが、韓国最大の鉄鋼メーカーである浦項総合製鉄(POSCO)であった。1969年、それまで無償協力基金の使途を農業分野に限定していた日本政府が、突然、浦項製鉄建設に合意し、1億1948万㌦を投入する協約を結ぶ。この建設事業も、新日本製鐵と三菱商社などが受注した。日本企業から購入した設備金額だけで1億7765万㌦であり、支援資金を48%上回った
 
 番組では、1970年の日韓協力委員会総会で、日本側が鉄鋼、アルミ工業等の土地使用に関して「公害対策に協力できるか」と韓国側に問うていることをあげ、50~60年代に日本では重金属汚染病であるイタイイタイ病や水俣病が社会問題化したことを背景に、公害を生む工場を韓国に移転する意図があったことを指摘した。
 
 これら8億㌦の支援金の使途をめぐっては、日韓政府による閣僚会議とは別に、政財界関係者による日韓協力委員会(韓日協力委員会)が置かれた。日韓協力委員会には、満州国総務庁次長でありA級戦犯だった岸信介が初代会長に就き、満州軍(元日本軍将校)だった朴正煕大統領との格別の親交のもとで取引が進行した。同委員には椎名悦三郎元外相(元満州国鉱物公社社長)、事務総長には田中龍夫元通産大臣(満鉄出身)、常任委員には三菱商事社長、三井物産社長、三菱電機代表理事など21の戦犯企業が含まれた
 
 このとき岸信介の右腕である矢次一夫が出した長期経済協力案(矢次試案)は「韓国は重化学のような日本と競合する産業を育成してはならない」とし、日本との協力経済圏を作るため、韓国で関税を免除する保税地域と自由港を増やし、日本製品を加工する合弁会社をつくるという計画だった。「日本の技術力と韓国の労働力を統合させるべき」と強調し、アジア版欧州経済共同体がつくれるというバラ色の展望を示しながら、1970年代から韓国の安い労働力を使って日本企業の下請化を進めていった
 
 安倍政府が「賠償問題の解決」の根拠と主張する経済援助金は、このような満州人脈で構成された日韓協力委員会によって一方的に使途が決定され、朴軍事政権を迂回して日本企業の手に渡り、実際の被害者への賠償はおろか、韓国経済を日本の大企業の下請に組み込み搾取する体制づくりのために浪費されたことが広く明らかになっている。
 
 これは日韓関係悪化を契機にして、日本の植民地支配と絡んだ自国の歴史について掘り下げて再検討する韓国の国民的論議を反映したものであり、安倍政府が植民地意識をムキ出しにして恫喝すればするほど、その論議はさらに深いものとなる趨勢にある。日本国内の報道が嫌韓を丸出しにした趣に終始しているなかで、韓国では植民地支配とその後も引き続いた新植民地主義の欺瞞に光を当て、誰が「戦後賠償」で潤ったのかまで解明する動きが広がっている。
 
 なお、安倍首相の実兄は、それこそ8億㌦の経済援助をむさぼった三菱財閥・三菱商事の重役である。

日韓問題でも政府御用放送に徹しているNHK(植草一秀氏)

 徴用工問題で韓国大法院(最高裁)が、日韓請求権協定について安倍政権と異なる解釈をした上で、日本企業に賠償を命じる判断を示したことについて、安倍首相や関係閣僚は一貫して「国際法違反」だとして、「その状態を早急に是正するよう求める」と繰り返しています。
 しかし日韓請求権協定が被害者個人の請求権を消滅させるものでないことは、歴代の日本政府も認めていることで、それを安倍首相が突然「国際法違反(の状態)」と言い出したのは極めて異様なことです。到底、国際的に通用するものではありません。
  (関係記事 下記他多数)
 
 ところが日本のメディアはひたすら安倍首相の主張を垂れ流し韓国を非難するのみで、これでは「公平な観点で見よう」とする世論が形成される余地がありません。日本の世論が韓国非難一色に染まっているかのように見える所以です。
 この徴用工問題に関して日本政府の主張しか報じていない点NHKも一貫しています。公共放送がこれでは政府の御用メディアでしかありません。
 放送法第4条は放送番組の編集に当たつて「意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を義務付けています
 徴用工問題について日本と韓国の主張が対立しているのですから、ニュース報道において、日本政府の主張を示すとともに韓国側の主張も紹介し両国の主張が対立していることを明らかにすることが必要不可欠なのにそうなっていません。
 
 植草一秀氏のブログを紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
放送受信契約強制根拠を失う御用放送のNHK
植草一秀の「知られざる真実」 2019年8月29日
NHKは8月2日午後7時の定時ニュースで日韓問題について次の報道をした。
 
あす日韓外務局長協議 日本側の立場説明へ
「日韓関係が悪化する中、外務省は、金杉アジア大洋州局長が29日に韓国を訪問し、韓国外務省の局長と協議することを発表しました。太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題について、韓国側が国際法違反の状態を早急に是正するよう改めて求めるとともに、北朝鮮への対応についても協議するものとみられます。
 (中 略)
協議では、韓国を輸出管理の優遇対象国から外す政令が28日施行されたことに韓国側が反発していることから、金杉局長は安全保障上の観点から、わが国の輸出管理制度を適切に実施するうえで、必要な運用の見直しだとする日本側の立場を説明するものとみられます。
また、太平洋戦争中の徴用をめぐる問題について、韓国側に対し国際法違反の状態を早急に是正するよう改めて求めるとともに、北朝鮮が弾道ミサイルなどの発射を繰り返していることを受けて、日韓にアメリカを加えた安全保障面の連携についても協議するものとみられます。」
 
このNHK報道のどこに問題があるのか。それは、徴用工問題に対する日本政府の主張しか報じていない点にある。
NHKは「日本側の立場説明へ」というタイトルに逃げ道を用意している。日本政府の主張だけを報じているが、タイトルに「日本側の立場説明」としているから問題がないと弁明できる余地を確保したつもりかも知れないが、完全なる偏向報道である。
 
ニュース原稿のなかで
「韓国側が国際法違反の状態を早急に是正するよう改めて求める」
「韓国側に対し国際法違反の状態を早急に是正するよう改めて求める」
の、ほぼ同一の表現を2度繰り返した
 
これはあくまでも「日本側の立場」からの主張に過ぎないが、これだけを2度繰り返すことによって、「韓国の対応が国際法違反である」との主張が真実であるとの「印象」が視聴者に刷り込まれる。その効果を狙ってこの原稿が書かれている。
「サブリミナル効果」である。安倍内閣が愛好する「印象操作」だ。
 
韓国大法院は日韓請求権協定について別の解釈をした上で、日本企業に賠償を命じる判断を示した。
この司法判断に日本政府が異論を唱えることはできる。しかし、韓国司法当局は、それとは異なる判断を示しているのであり、この段階で日本政府の主張だけが唯一の正しい主張と断定することはできない
放送法第4条は国内放送の放送番組の編集に当たつて、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を義務付けている。
徴用工問題についての判断において、日本と韓国の主張が対立している。したがって、NHKがニュース報道する際には、日本政府の主張を示すとともに、必ず韓国側の主張も紹介し、両国の主張が対立していることを明らかにすることが必要不可欠である。
 
NHKが「公共放送」であることを主張するなら、このような重大問題について、放送法に準拠した公平、公正な放送を行う必要がある。
日本政府の主張だけを一方的に報じるなら、その行動は「公共放送」のものでなく「国営放送」、「御用放送」と言うべきもので、受信契約強制、受信料支払い強制の正当な根拠を失うことになる。
 
「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」http://justice.skr.jp/statement.html 
は次の指摘を示している。
本件のような重大な人権侵害に起因する被害者個人の損害賠償請求権について、国家間の合意により被害者の同意なく一方的に消滅させることはできないという考え方を示した例は国際的に他にもある(例えば、イタリアのチビテッラ村におけるナチス・ドイツの住民虐殺事件に関するイタリア最高裁判所(破棄院)など)。
このように、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではなく、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らしてあり得ない判断」であるということもできない。」
 
日本の最高裁判所は、日本と韓国との間の賠償関係等について外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」(最高裁判所2007 年4 月27 日判決)とした。
これに対して、韓国大法院は、元徴用工の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象に含まれていないとして、その権利に関しては、韓国政府の外交保護権も被害者個人の賠償請求権もいずれも消滅していないとした。(2018年10月30日)。
 
国際法違反というのはあくまでも日本政府の主張であって、客観的に異論を差し挟む余地のない程度に立証されている主張ではない。
しかし、NHKは意図して政府の御用放送に徹している。
このNHKに公共放送を名乗る資格はなく、私たち主権者は適正な公共放送を確立する必要がある。
(以下は有料ブログのため非公開)

30- 9・11ビル崩壊は旅客機燃料の燃焼で起きたとの見解を変えようとしない米国

 2001年9月11日、米国起きた同時多発テロ事件では死者は2996人、負傷者は6000人以上に及びました。
 世界貿易センタービル(WTC2棟にハイジャックされた旅客機が激突し、最終的に2棟が完全に崩落した様子は世界に報道され大きな衝撃を与えました。
 
 高層ビルの崩壊は、激突した旅客機から漏れた燃料が燃焼しその高熱によってビルの鉄骨・鉄筋が溶けたために起きたとされました。それがいわばこの事件に関する米国の公式見解ですが、それに対しては当初から強い疑義が出されていました。
 それはジェット燃料の火力(燃焼温度)では鉄が溶ける温度に達しないというもので、あらかじめビル内に仕掛けられた高層ビル解体工事用の高性能爆薬の爆発によって倒壊したとしか考えられず、その証拠はいくつもあるというものです。
 この主張は強い説得力を持っていますが、事件から18年以上が経つのに何故か米国は当初の見解を変えようとはしません。
 
 2000年を境に米国はそれまでの国家間戦争という戦略を止め、今後は「対テロ戦争」を中心戦略にすると決めたといわれていますが、911事件はそれに向けて絶好のタイミングで起きました。
 不思議なことに世界貿易センタービルに勤務していたイスラエル人は、全員が当日不在で死傷した人はいませんでした。そしてそのことを番組の中で指摘した日本人(NHK職員・管理職)はその後職場内で変死しました。
 これらのことは「9・11」が謀略事件であることを示唆しています。
 
 田中宇(さかい)氏が無料版のブログでこの問題を取り上げましたので紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
崩れない911公式論
田中 宇 2019年8月23日
2018年(昨年)4月、911事件に関する米政府の判断に疑問を持つ米国の弁護士たちで作る「911調査弁護士会(Lawyers' Committee for 9/11 Inquiry)」が、911事件現場であるニューヨーク市の検察に対し、「911事件で倒壊した世界貿易センタービル(WTC)は、米政府の公式論のような、ハイジャックされた飛行機の衝突で倒壊したのでなく(ジェット燃料の燃焼温度ではビルの鉄骨が溶けない)、あらかじめビル内に仕掛けられた、ビル制御崩壊(高層ビル解体工事)用の高性能爆弾の爆発によって倒壊したと考えられるいくつもの証拠がある。倒壊現場から高性能爆弾に特有の物質が見つかっているし、当日の消防士らの証言や、WTCの倒壊を撮影した動画の分析などが証拠だ。誰が何のために高性能爆弾をWTC内部に仕掛けて爆発させて多くの人々を殺したのか、米政府がなぜ間違った結論に固執しているのか、米検察は再捜査すべきだ」という趣旨の請求書を出した。 Lawyers' Committee for 9/11 Inquiry) (9/11: Finally the Truth Comes Out? Jan 4, 2019 
 
これまで何度か書いてきたように、2001年9月11日に起きた911「テロ」事件に対する米政府の公式な結論は、いくつもの点で不合理で、その不合理さの一つが、911調査弁護士会が指摘した「WTCの倒壊はどう見ても爆弾による制御崩壊」ということだ。この指摘はすでに911事件の当日、米軍系の研究所の制御崩壊の専門家であるバン・ロメロ(Van Romero。当時ニューメキシコ鉱業技術研究所副所長)がメディアに対して語っている。ロメロ氏はその後、公式論の方向に発言の訂正を余儀なくされた。911事件の多くの不合理さは、マスコミや権威ある人々(軍産傀儡)にとってタブーであり、うっかり不合理さを正直に指摘した人はロメロ氏のように上の方から強い圧力を受けて態度を変えさせられる。指摘した人が一般人の場合は「頭のおかしい陰謀論者」のレッテルを貼られる(私はこちら)。 (テロ戦争の終わり) (仕組まれた9・11【5】オクラホマ爆破事件と911
 
米国の上層部(軍産エスタブ)は、911に関する不合理な公式論を、不合理だと人々に指摘させない「タブー化」によって維持してきた。米上層部は、公式論が不合理であると知りながら、力づくで公式論を維持してきた。911調査弁護士会の請求も「陰謀論に毒された頭のおかしな異端の弁護士たちの奇行」とみなされて米当局から無視されて当然だった。だが意外なことに、請求書を受け取ったNY市南部地区の検察は約半年後の18年11月、「911に関する再捜査が必要かどうか、大陪審を招集して審議してもらうことにした」という趣旨の返答を、911調査弁護士会に対して出してきた。これは、米当局(の一部)が初めて911公式論に対する不合理さの指摘に対して無視の一点張りによるタブー化の維持から脱却し、公式論の不合理さについて審議することを手続き上認めたものとして画期的だった。 7 NOV 2018 — U.S. Attorney Geoffrey Berman Will Comply with 18 USC Section 3332) ("Breakthrough": U.S. Attorney Agrees to Present Evidence of WTC Demolition to Federal Grand Jury
 
だが結局、その後さらに9カ月が過ぎたが、911再捜査の是非を審議する大陪審は召集されていない。昨年11月の検察側からの返答は、形式を取り繕うための「だまし」だった可能性が増している。WTCのビル崩壊原因をめぐる公式論の不合理さを感じている人々の中には、911当日、現場に駆けつけてWTC内部に取り残された人々の救出作業中にWTCが崩壊して死亡したNY市の消防士たちの関係者がいる。彼らの一部であるNY市の自治的な消防団の一つである「フランクリン広場・ムンソン地区消防団(FSMFD)」の運営委員会は7月24日に委員会を開き、委員5人が全会一致で、911事件の再捜査を求める決議を可決した。New York Area Fire Commissioners Make History, Call for New 9/11 Investigation) (NY Fire Commissioners Demand New 9/11 Probe, Citing "Overwhelming Evidence of Pre-Planted Explosives"
 
この決議は、NY市南部地区の検察に対し「911調査弁護士会に対して昨年約束した大陪審の招集を早く進めてくれ」と促す意味がある。米国の公的な機関が911再捜査を求めたのはこれが初めてだ。FSMFDは、WTCから約20キロ離れたNY市内のクイーンズの方にある消防団で、911当日に消防車で駆けつけて救出活動をしている間にWTCが崩壊し、24人の消防士が死亡している。Do firefighters believe 9/11 conspiracy theories?
 
911事件は間もなく事件から18年が過ぎる(この記事は気の早い「18周年記事」だ)。記憶は風化し、多くの人にとって真相などどうでも良い「昔の話」になっている。公式論の不合理さを指摘する人を陰謀論者扱いする体制は固定され、ほとんど揺らがない。だが同時に、近年トランプが米大統領になって、911後に米国が展開してきたテロ戦争や単独覇権主義のインチキさが露呈するような戦略を展開し、米国と世界の人々が911とその後の米国の戦略の不合理さをより強く感じる流れになっているのも事実だ。911公式論は、表層的(報道されている仮想現実的)には、まだ鉄壁の強さだが、実質的には、以前より多くの人がおかしい、怪しいと思うようになっている。 Majority Of Americans Do Not Believe The Official 9/11 Story) (How is London’s Grenfell Tower Still Standing? 
 
WTCは内部に仕掛けられた爆弾で崩壊したのに米国の政府や上層部(軍産マスコミ)がそれを隠している、という話が陰謀説でなく事実だとしたら、爆弾を仕掛けたのは当局筋自身だ。93年に起きたWTC爆破未遂事件が、まさにFBIがエージェントにやらせたことだったが、その手法が01年にも繰り返されたことになる。911は米諜報界の自作自演だったことになる。米国は、自作自演で911事件を起こし、それをイスラム組織のせいにして恒久的な「テロ戦争」を開始し、アフガニスタンやイラクなどに侵攻して何十万人もの無実の市民を殺した。アルカイダやISといった「敵」も、米諜報界の支援を受けてきた。米国は、史上最悪の国家犯罪組織だったことになる。 (FBIに雇われていた1993年のテロ実行犯) 
 
911事件が米諜報界の自作自演であるなら、なぜあの事件が起こされたのか。これについても私は何度か書いている。冷戦後、米上層部では諜報界の黒幕だった英国と組んで「金融覇権体制」を強化する動きになり、軍事覇権が軽視されたが、これに不満な軍産系は、米軍を中東に引っ張り込みたいイスラエルと組んで、米国を軍事覇権に引き戻す911事件を引き起こし、米国がイスラム世界を恒久敵視するテロ戦争の体制が作られた、というのが私の読みだ。911後、軍産系の好戦派が米政府を牛耳ったが、その中には親イスラエルのふりをした反イスラエル・隠れ多極主義のネオコンが入り込み、テロ戦争を過激に稚拙に展開して自滅的に失敗させ、米国の覇権を意図的に浪費し、恒久的なはずのテロ戦争を短めの約20年で終わらせた。この過程で米国は史上最悪の犯罪国家になった。トランプは、ネオコンが途中までやった米国覇権の自滅策を完遂する覇権放棄・多極化策を展開している。 (覇権転換の起点911事件を再考する) (911十周年で再考するテロ戦争の意味) 
 
トランプ政権下でも911の公式論は崩れず、公式論が維持されたまま米国覇権が先に崩れていくかもしれない。だが、そうならずに911公式論が破壊されていく可能性もある。それは、911事件の犯人扱いされたサウジアラビアが、米国の同盟国から敵に転換させられ、米国に敵視されたサウジが犯人扱いの濡れ衣を晴らそうと911事件をめぐる秘密を暴露していき、公式論が崩れる可能性だ。左傾化する米民主党は、米国の同盟国だったサウジやイスラエルを敵視する傾向になっている。トランプは、サウジやイスラエルとの同盟関係を是が非でも維持する姿勢(演技)をしているが、これがまた利権優先の腐敗した構図を意図的に露呈しており、全体としてトランプの抵抗を乗り越えて米国がサウジやイスラエルと疎遠にしていく流れになっている。サウジとイスラエルは、911事件の表と裏の「容疑者」であり、米国がサウジ・イスラエルと疎遠になるほど、911の公式論を破壊しようとする動きが横から出てくる。 (911サウジ犯人説の茶番劇) (国家と戦争、軍産イスラエル
 
911の公式論は、健全な洞察力や情報分析の努力があれば、不合理なものだと見抜けるような存在だ。そして911公式論の不合理が見破れれば、QEや地球温暖化人為説、イラン露中への濡れ衣敵視など、他の歪曲的なプロパガンダの不合理さも見えてくる。911以後の米国の世界戦略は不合理なものが多く、米国を知るほど米国に対する疑いやが増すという「知米は疑米」の構造になっている。911事件は「疑米」の原点である。私はそのように実感しつつ、911以来の18年間、いろんな分野の「疑米」を記事にしてきた。 (プーチンを怒らせ大胆にする) (米国が中国を怒らせるほどドルが危なくなる) 
 
だが残念なことに、対米従属しか眼中にない日本では「疑米」の姿勢が「良くないもの」「反米」「陰謀論」としか見なされず、日本人のほとんどは米国の本質や覇権構造について何も知らないまま無為に過ごしており、これは今後日本の「弱さ」となってはねかえってくる。日本以外の同盟諸国の多くも「疑米」の姿勢を持ちたがらない反面、米国に敵視された諸国は逆に「疑米」の精神を持ち、その分だけ、米国覇権が自滅した後の多極型の世界において優勢を得る。 (理不尽な敵視策で覇権放棄を狙うトランプ
 
米国がトランプになって「疑米」よりさらに取り組みやすい「呆米」(トランプの米国の無茶苦茶さに呆れること)の姿勢が登場してきた。独仏や豪加といった同盟諸国が「呆米」の姿勢を強めている。しかし、この段階になってもまだ日本は疑米も呆米もやっておらず、世界有数の間抜けな国になっている。