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2020年9月10日木曜日

安倍政権 生活保護を10月から減額 コロナで困窮者増のなか

 政府は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活困窮する人が増加しているにもかかわらず、食費や光熱費など「生活扶助」の支給額をこの10月に予定通り減額します。

 安倍政権は12年末の総選挙で政権に返り咲くと早速13年に平均6・5%、最大10%という過去最大の給付水準引き下げを強行しました。
 それなのに18年10にもまた生活保護の基準額引き下げました。それは食費や光熱費など「生活扶助」の支給額3年間かけて段階的に引き下げるもので、その削減額は210億円、削減される対象者は生活保護利用者の7割に及びます
 全く役に立たないアベノマスクには466億円を投じたのに、ギリギリ以下の生活扶助費を更に削るのは許されないことです。

 13年の切り下げに当たっては自民党の一部の議員らが、生活保護を不正に受給している人がいるとか、それでパチンコに耽っているなどの悪宣伝を行いました。仮にそうした人たちが居たとしてもそれはごく一部の例外であって決して主要な問題ではありません。
 それよりも問題なのは日本の「生活保護の捕捉率」(⇒ 生活保護を利用する資格がある人のうち、実際に利用している人の割合)が異常に低いことで、厚労省の発表(18年5月)でも229%に過ぎず、英国87%、ドイツ85%などに比べても圧倒的に低くて話になりません。
 これは政府が生活保護を受給するのは不名誉なこととする風潮を誘導(スティグマ作戦)し、厚労省が「水際作戦」と称して生活保護の申請を窓口が受け付けないように自治体を指導しているためです。

 厚労省がそれまでは贅沢品としていた生活保護世帯のエアコンの設置をようやく認めたのは、夜間の熱中症による死亡事故が問題になってきた18年6月でした。それ以前にエアコンを撤去させられた老婦人が、夏場の暑さを避けるためにいつもスーパーの隅にしゃがんでいたという話を、担当部署はどう受け止めたのでしょうか。
 また母一人子一人の家庭で、母親が認知症になって2時間ごとにトイレの世話をする必要が生じたため、息子は介護のため退職して生活保護を申請したものの、役所は息子に「働くように」の一点張りだったために親子心中するしかなった例など、生活保護行政の冷酷さを示す例は限りなくあります。政府も自治体も憲法25条の精神を改めて学ぶべきです。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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自公政権 生活保護来月から減額 コロナで困窮者増なのに
強行は47施策に悪影響
しんぶん赤旗 2020年9月9日

 安倍自公政権は2018年10月から段階的に減額してきた生活保護費のうち食費や光熱費など「生活扶助」の支給額について、来月に予定通り減額を実施します。新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活困窮する人が増える中、「なぜいま減額するのか」と関係団体は批判の声を上げています。(岩井亜紀)

 厚生労働省は生活扶助の基準額を5年に1度見直しており、生活保護水準未満の世帯を多く含む低所得世帯の消費支出とバランスを取るとして、支給額の削減を決めました。同省はこの削減によって保護利用世帯の67%が減額となり、国と地方が負担する生活保護費計約210億円の削減につながると17年に、試算。18年10月から段階的に減額を実施してきました。
 新型コロナ感染拡大の影響で、8月末に解雇者が5万人超となるなど雇用情勢の先行きは厳しくなるいっぽうです。そうした中、生活保護の申請件数は3月、対前月比で約5000件増加し、4月は、同460件増となりました。1人当たり10万円の特別定額給付金の支給決定後の5月は、同約3500件減に転じ、6月も同約900件減小しました。
 申請件数は減少したものの、保護利用世帯数は4月から6月にかけて微増傾向で、生活困窮が解消されていません。
 12年末に発足した安倍自公政権は、生活保護削減を強行してきました。13年8月から15年4月にかけて段階的に保護費減額を実施。これに対して全国の保護利用者が、生存権を規定する憲法25条違反だとして減額処分取り消しを求める「いのちのとりで裁判」を展開しています。安倍自公政権はそのさなかの18年10月から、新たに段階的な減額を行い、今年が最後の年となります。
 生活扶助基準はナショナルミニマム(最低生活水準)で、国民生活の土台となるもの。厚労省自身、医療・福祉、年金など47施策で悪影響が出ることを、18年1月に明らかにしています

1万人の不服審査請求を
 全国生活と健康を守る会連合会の前田美津恵副会長の話 
 第2次安倍政権は発足後、生活保護費の減額を強行してきました。利用者は、夏場は電気代がかさむためクーラーをつけない、下着など衣類の買い物ができない、友人との付き合いを控えるなど基本的な人間らしい暮らしを制約されてきました。
 利用者だれもが厳しい生活を余儀なくされているうえ、新型コロナウイルス感染症予防で消毒や衛生関係の出費がかさんでいます。にもかかわらず、さらに減額を強行することに憤りを感じます。
 2013年8月からの保護費減額に対しては、全都道府県で1万人超の利用者が不服だとして、審査請求をしました。今年10月からの減額に対して、全生連は1万人の審査請求を呼びかけます。
 「いのちのとりで裁判」をめぐり、名古屋地裁が6月に出した判決は、安倍政権に忖度(そんたく)するような判断でした。保護費改定にあたっては「国民の感情、政権与党の公約、他の政策等を広く考慮する必要」があるとして、原告の訴えを棄却したのです。
 安倍政治を終わらせるためにも、名古屋地裁判決をはね返すうえでも、今回の審査請求運動を盛り上げていきたい。

「赤旗」日曜版がJCJ大賞受賞 「桜」疑惑 連続スクープ

「しんぶん赤旗」日曜版の「安倍晋三首相の『桜を見る会』私物化スクープと一連の報道」が、今年の「JCJ日本ジャーナリスト会議賞」の第63回大賞に輝きました。
 日曜版191013日号を皮切りに「首相主催の桜を見る会で、地元山口県から数百人の後援会員を大量招待していた事実をスクープ・告発した一連の記事」が対象で、この記事を契機に共産党の田村智子参院議員が国会で追及し、大反響を呼びました。

桜を見る会前夜祭での政治資金規正法・公職選挙法違反疑惑については、全国の法律家たち941人が安倍首相を刑事告発しましたが、まだ司法の動きが見えないのは残念なことです。
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「赤旗」日曜版にJCJ大賞 「桜」疑惑 連続スクープ
しんぶん赤旗 2020年9月9日
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は8日、優れたジャーナリズム活動を表彰する今年度の第63回「JCJ賞」の大賞に「しんぶん赤旗」日曜版の「安倍晋三首相の『桜を見る会』私物化スクープと一連の報道」を選び、発表しました。
 日曜版2019年10月13日号を皮切りに、各界の功労者などを税金で招待する首相主催の「桜を見る会」で、安倍首相の地元山口県から数百人の後援会員を大量招待していた事実をスクープ。参加者の証言をもとに、安倍事務所が取り仕切り、高級ホテルで開いた前夜祭に山口県の参加者を招待し、税金でもてなした疑惑を告発しました。

 大賞の授賞理由としてJCJは「この記事を契機に(日本共産党の)田村智子参院議員が国会で追及し、『桜』疑惑が一気に国政の重大課題に浮上。地道な調査報道を重ね、安倍政権の本性を明るみにしたスクープは国政、メディアに大きなインパクトを与えた」と評価しました。
「赤旗」が大賞を受賞したのは、今回が初めてです。近年では14年に「『ブラック企業』を社会問題化させた一連の追及キャンペーン報道」(日曜版)、18年に「米の核削減、日本が反対 核弾頭の最新鋭化も促す」(政治部、外信部)がJCJ賞を受賞しています。

 今回のJCJ賞受賞作は、三上智恵「沖縄スパイ戦史」、吉田千亜『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』、赤木雅子・相澤冬樹「森友問題で自殺した財務省職員の遺書の公開」、北海道放送「ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~」の4点です。

写真
「桜を見る会」疑惑を初めてスクープした「しんぶん赤旗」日曜版2019年10月13日号


「赤旗」日曜版「桜」報道にJCJ大賞 私物化追及 政権の本性明るみに
しんぶん赤旗 2020年9月9日
 安倍政権の本性を明るみに出したスクープは国政、メディアに大きなインパクトを与えた―。日本ジャーナリスト会議(JCJ)が安倍晋三首相の「桜を見る会」私物化疑惑報道をJCJ大賞に選んだ理由です。「しんぶん赤旗」日曜版はなぜスクープできたのか。国政の大問題に押し上げ、首相を追い詰めた力は…。(日曜版編集部取材班)

 「私は政権を私物化したつもりはまったくない」。辞任表明会見(8月28日)での安倍首相の発言です。桜を見る会などの「私物化」疑惑について記者から聞かれ、開き直りました。
 首相の辞任表明を受けた自民党総裁選でも、自民党内は「安倍政治」礼賛一色です。
 そのような中だけに、「桜を見る会」私物化疑惑の日曜版スクープがJCJ大賞に選ばれたことには、大きな意義があります。

権力の監視
 各界で功績、功労があった方々を招待するとして毎春、開かれていた桜を見る会。多額の税金を使った首相主催の公的行事です。
 主催者である安倍首相は、地元・山口県から約800人もの後援会関係者らを招待していました。国民の血税を使って自らの後援会員に飲ませ食わせするという、まぎれもない国政の私物化血税で地元有権者を“買収”していた構図です。安倍首相に直結する重大疑惑です。
 日曜版は昨年10月13日号で「桜を見る会」私物化疑惑をスクープ。「首相主催『桜を見る会』 安倍後援会御一行様ご招待」「税金でおもてなし」「地元山口から数百人規模」と報じました。
 その後も、総裁選対策としての自民党地方議員大量招待や、悪質マルチ商法幹部が安倍後援会バスで桜を見る会に参加するなどの疑惑を十数回にわたって追及を続けています。
 大手メディアなどは桜を見る会の会場にも入り、取材していました。「首相の地元・山口から後援会関係者が大量に来ていたことは誰でも知っていた」(自民党幹部)はずです。それなのになぜ「赤旗」だけがスクープできたのか―。
 「朝日」(1月8日付夕刊)は記しています。「『桜を見る会』は、それまでも予算や出席者の増加が報道でたびたび話題になっていた(中略)私も違和感を抱いていたが、公的行事の『私物化』というところまで思いが至らなかった

 問われているのは、権力の監視というジャーナリズムの立脚点です。
 日本共産党や「赤旗」は、「森友・加計」疑惑を安倍政権による行政の私物化としてとらえ、国政をゆがめる重大問題として追及してきました。
 憲法解釈の乱暴な改ざんがおこなわれた15年9月の安保法制=戦争法の強行。これによりあらゆる面での政治モラルの崩壊をもたらし、国政私物化という暴走につながりました
 法政大学の上西充子教授は「国会パブリックビューイング」(1月6日)で日曜版編集長と対談した際、桜を見る会報道について「安倍政権の本質のひとつである『私物化』の問題としてとらえた点が興味深い」と語っています。
  【写真説明】桜を見る会に招待された安倍首相の後援者らは毎年、前夜から都内ホテルに集まって首相や妻、昭恵氏らを囲みます=2013年4月(昭恵氏のフェイスブックから)

広がる共闘
 桜を見る会疑惑を国政の大問題に押し上げたのは、「赤旗」と日本共産党国会議員団、市民と野党の共闘の力です。
 そもそも安倍政権のもとで桜を見る会の参加者や経費が急増している問題を追及したのは日本共産党の宮本徹議員でした。(昨年5月13日、衆院決算行政監視委員会)
 日曜版が私物化をスクープしても当初、大手メディアは一切、後追いしませんでした。日曜版報道をもとに日本共産党の田村智子副委員長が参院予算委員会(昨年11月8日)で追及。ネットでその動画が拡散しました。
 それでも大手メディアは大きく報じませんでした。
 田村質問から3日後の同11日、野党による「『桜を見る会』追及チーム」が発足。これを契機にテレビのワイドショーがいっせいに取り上げ、新聞も大きく報じ始めました

 日本共産党の大門実紀史参院議員も悪徳マルチ会社「ジャパンライフ」元会長の招待の問題を暴露。国会内での野党共闘が広がる中、安倍首相は二重三重に「詰み」の状態に追い込まれました。その結果、辞任表明をしたのです。
 安倍首相が辞めたとしても、桜を見る会の追及をやめるわけにはいきません。国政がゆがめられたという大問題だからです。日曜版編集部は最後まで追及します。

市民の怒りに火をつけた
国会で「桜を見る会」問題を追及 田村智子参院議員
 桜を見る会については、2019年5月に日本共産党の宮本徹衆院議員が決算行政監視委員会で、費用が安倍晋三政権下で3倍に膨れ上がっていることを指摘した時から気になっていました。
 その後、入試改革の撤回や自民党の菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相の辞任など、政権のモラルハザードぶりが相次いで表面化した時期に、日曜版の報道が飛び出しました。
 他の誰でもない首相自身による、絵にかいたような行政の私物化を暴いたスクープでした。「これしかない」と思い、急きょ開かれた参院予算委員会(19年11月)で取り上げることにしました
 質問準備のため日曜版の担当者に国会に来てもらいました。取材は自民党の後援会関係者にも及んでいました。質問は内容が伝わりやすいように組み立てるのですが、そのすべてを裏付ける証拠がそろっていました。
 反響は大きかった。他の野党議員が次から次へとネットで質問を拡散してくれました。市民の関心も高く、ツイッターのトレンド入りしたことには私も驚きました。
 しかし、直後の大手メディアの反応は弱く、数えるほどしか報じられませんでした。この落差はなんだろうと考えていました。
 週が明け、野党合同の追及チームが動き出すころからステージが変わったと思います。それぞれの党が入手した資料を共有しながら、作戦会議から首相の地元の現地調査といった実際の行動まで…。これほど野党が一丸となって取り組んだのは初めてだと思います。
 作戦会議での、最大の資料となったのが日曜版でした。さまざまな会合で、机に日曜版のコピーが置かれていることも当たり前でした。
 多くの市民も国会審議をチェックし、SNS上で拡散して政府を追及しました。野党と市民、日曜版が一緒になって問題を深めていったと思います。
 森友・加計問題などで、「何をやっても許される」と言わんばかりの安倍政権への怒りが、政治的な立場を超えて広がっていた。そこに日曜版が桜問題を暴いたことで「やっぱりこうだったよ」という市民の怒りに火をつけたのでしょう。
 安倍首相が辞任しても、問題は終わりません。次期首相とみなされる菅義偉官房長官は、首相と共に問題の幕引きを図った張本人です。安倍政権を守り続けてきた自公政権が続く限り、すべての事実を明らかにはできないでしょう。政権交代を実現してこそ、出すべき資料をすべて出させ、真の責任を追及することができると思います。

政権中枢の不正に切り込む
神戸学院大学教授・政治資金オンブズマン共同代表 上脇博之さん
 おめでとうございます。「赤旗」日曜版の「桜を見る会」連続スクープは、強大な権力の不正を追及するというジャーナリズムの精神に基づく報道でした。安倍晋三首相の地元の政界関係者の証言や安倍事務所が後援会員に配った案内状など、客観的証拠に基づいて切り込んだことが評価されたのだろうと思います。
 桜を見る会は、安倍政権になってから参加者数が増え続け、予算も3倍に膨張していました。高級ホテルで飲食を提供した前夜祭とセットにして参加者を募集することは、首相の権限がなければできなかったことです。安倍首相による「行政の私物化」を象徴するもので、その一端を暴いた日曜版の報道には大きな意義があったと思います。
 格安で飲食を提供したという前夜祭での政治資金規正法・公職選挙法違反疑惑については、全国の弁護士や法学者ら計941人が安倍首相を刑事告発しました。私も告発人の一人です。国会議員としての資格が問われる違法行為疑惑です。
 安倍首相は「桜を見る会」と前夜祭の疑惑について何ら責任をとっていません。国会は真相解明と追及を続けるべきです。政府の責任は次の政権にも引き継がれます。
 メディアには「誰のために報道するのか」という基本姿勢が問われます。「赤旗」には、今後も国民のために政権中枢の不正に切り込む報道を続けてほしいです。
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「桜」疑惑報道が本に
  【写真説明】『「桜を見る会」疑惑 赤旗スクープは、こうして生まれた!』(しんぶん赤旗日曜版編集部著、新日本出版社、定価本体1300円=税別=)が15日、出版されます。
 桜を見る会スクープの舞台裏を初めて、書き下ろしで明らかにしました。大手メディアにはない、日本共産党の機関紙「赤旗」ならではのスクープ力の秘密とは…。
 安倍事務所の関与を示す決定的証拠文書もすべて初公開。「私物化したつもりはない」とする安倍首相の“ウソ”を事実で暴きます。

10- 菅義偉 コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ(世に倦む日々)

 日刊ゲンダイは「自民総裁本命菅官房長官 共同会見で露呈した力量不足」と題した短い記事(9日付)で以下のように述べています。

 次期総理候補の本命と言われる男の正体みたりだ。8日午後に自民党本部で行われた総裁選の所見発表演説会と共同記者会見。NHKなどで生中継された会見には、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)、石破茂元幹事長(63)の3人が揃って出席したが、そこで明らかになったのは国会議員票の約7割を押さえて盤石とみられる菅氏の政治家としての力量不足ではないか。
 偶然かどうかはともかく、菅氏にとって誤算だったのは、質問に答える順番が石破氏の次だったことだ。「説明責任」や「安全保障」に至るまで、記者の質問に対してそつなく論理的に答える石破氏とは対照的に、しきりに時計をチラチラ見つつ官房長官のような答弁を繰り返していた菅氏。
 これに対し、石破氏は記者の質問に答えるという形をとってはいたものの、「(政治は)すべての人々に公平でなければならない」などと、これまでの安倍政権の対応をやんわりと批判しながら、隣の菅氏をけん制していたのは明らかだった。
 すでに「勝負あり」の消化試合とはいえ、共同会見を見る限り、誰が総裁にふさわしいのかは、国民の目にもわかったに違いない。

「世に倦む日々」は菅氏のことをもっと辛らつに批判しています。
 菅首相が誕生すれば、自己責任の酷薄な政治と説明にもならない説明に何時まで堪えなくてはならないのでしょうか。
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ディベートが無能な菅義偉
 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ
 世に倦む日々 2020-09-09
自民党総裁選がマスコミ報道の主役になり、テレビの関心を埋めている。石破茂が候補で登場して、長く続いた安倍政権の路線を止揚する「グレートリセット」を標榜しているため、テレビでの論戦が活発で面白い。告示当日の昨夜(8日)は報ステとNEWS23で生討論会が行われたが、前者では (1)アベノミクスの成否と (2)負の遺産(森友・加計・桜)の二つに焦点が当てられ、非常に興味深いコンテンツとなった。週末12日に記者クラブ主催の公開討論会が予定されていて、延長戦が演じられるので注目される。討論の次第によっては、14日に開票される地方党員票に影響が出るだろう。討論会で明らかになったのは、菅義偉にはディベートの才能がないという決定的な事実だ。語る言葉が貧相で、反論が巧みにできず、印象に劣り、説得力のポイントを稼ぐことができない。厳しい質問に対して逃げてばかりいる。勉強家で政策通で、語りたい中身と論点が山ほどあり、テレビ出演を重ねて場慣れしている石破茂とはコントラストが著しい。指導者の器量に欠ける。

普通の感覚で判断して、リーダーに相応しいのは石破茂の方だろう。石破茂は、厳しい批判をされても逃げるということがない。菅義偉の方は、質問に答えず別の話をして、その場をかわす胡乱な態度に終始していた。いつもの官房長官会見の手法と同じだ。だが、選挙の討論会ではそれは通用しないのである。官房長官会見では、司会が官邸官僚だし、その場の記者たちも身内で昵懇の安倍軍団ばかりなので、菅義偉のペースで仕切って進行させることができる。「当たらない」とか、「政府として問題とは考えない」とか、「個別の問題については回答を差し控える」とか言って切り捨て、応答をせず、「時間がないので次」と言えばそれで済んだ。論破される前に強権的に遮った。選挙の討論会では、菅義偉も一候補者であり、そのような態度と方式は通用しないのだが、菅義偉にとってマスコミとのやりとりは官房長官会見のスタイルしか覚えがなく、冷静な応酬ができず、粗雑な方法で押し通してしまうのである。討論を演出する才能がなく、弁が立たず見劣りする

菅義偉が「自助・共助・公序」をスローガンとして掲げたのも、政治家としての行動としてあまりに無神経で非常識に思われる。この点は報ステの徳永有美が生討論の席で衝いていて、やはりそう思う人間が多いのだろう。この標語は、小泉政権の後に竹中平蔵が何度も口にするようになって耳に付いた言葉だ。竹中平蔵が自助論を喧伝し、意味は社会保障の切り捨てであり、公共政策の削減であり、それを受け入れろという地均しだった。新自由主義のスローガンであり、リベラリズムの社会原理である。この標語と言説には、今までの戦後の政府があまりに弱者を含めた国民全員に手厚く施しをしすぎたという批判の含意がある。国民が政府に頼って甘えるようになり、怠惰なフリーライダーになり、自助努力をしなくなったという決めつけがある。2000年代以降、こうした邪悪なプロパガンダを竹中平蔵がシャワーし、竹中平蔵の子分たちがマスコミでリフレインし、維新の台頭や第2次安倍政権へ繋がる環境的基礎を作っていく。下野して野党になった自民党の綱領にまで文言が収まった。

もともと、「自助」を強調するリベラリズムは、90年代の民主党の立ち上げの際にも吹聴された政治哲学であり、90年代の日本の政治の流行思想で、小沢一郎の自由党もこのイデオロギーを前面に打ち出した政党だ。当時は、ネオリベラリズム⇒新自由主義がこれほど凶悪な弊害と厄災に至るという認識がなく、皆が軽口を叩くように戦後日本の一億総中流社会を貶下し、護送船団方式を侮蔑し、民営化と規制緩和を無条件に賛美していた。91年のソ連崩壊が背景にあり、労働運動の右翼的再編と小選挙区制導入の「政治改革」の流れが前提としてあったこと、あらためて確認するまでもない。長い時間をかけ、第2次安倍政権の年月を経て、この言説なり標語は、政府は何もしないのだという無策行政主義を当然視する過激な意味になり、国民一般のために政府のリソース⇒資源は使わないのだという開き直りを正当化する政治用語になった。菅義偉の自助主義が典型的に現れているのがコロナ対策で、PCR検査もしないし、隔離など対策はすべて自治体に任せている。

自助主義のイデオロギー性、すなわち、その言説の正体が国民一般を幸福に導くものではなく逆であること、中間層を解体し、社会に格差をもたらし、国民多数を貧困に落とし込む政策の騙しの宣伝文句であり、新自由主義を美化するトリックであることの真実が、20年かけて一般にも常識になっている。この標語を聞けば、誰もが想起するのは竹中平蔵の顔だろう。もう、今の日本国民には自助などできる余地はない。資産を失い、健康年齢を失い、コロナ禍で働き口を失った多くの国民がテレビの前で佇んでいる。地域の経済発展どころか、持続可能性の展望すら失っている。そんな中で「自助・共助・公助」を平然と言い、それを総裁選のスローガンに立てる菅義偉の無神経に鼻白む思いがする。まさか「自助・共助・公助」を衆院選でもスローガンにするのだろうか。こんな効果としてリスクの高い標語を選ぶということが、菅義偉の頭の悪さとセンスの無さを証明していると断言できよう。そして、菅義偉の周辺にライターがおらず、演出戦略に長けた参謀がいないことを物語っている。

おそらく、菅義偉自身が「自助・共助・公助」のイデオロギーの徒であり、この信念にコミットする狂気の確信犯なのだろう。この時勢、叩き上げで這い上がってきた経歴の成功者には、グッドウィルの折口雅博のようにこの類の思想の持ち主が多い。ただ、菅義偉の場合、自己責任主義(=レッセフェールの政府無責任主義)の経済思想がお気に入りというより、それ以上に動機として強烈な反共主義があり、反共右翼としての必然で新自由主義を選び取っているという核心的契機がありそうだ。通常、菅義偉的な類型と世代の自民党政治家というのは、ネオリベとは本来的に相反する関係性のイメージがある。80年代以前の自民党議員の属性はそうだった。新自由主義はまさに社会主義の否定であり、社会の中に制度化されて定着したあらゆるソシアルな要素を根絶・撤廃しようとする。公共政策を否定し、水道を民営化し、生産者組合と労働組合を潰し、労働基準法を潰す。菅義偉がどのように右翼青年として出発し、冷血で冷酷な反共闘士となったのか、ジャーナリズムの調査と報告が待ち遠しい

推理を入れるとすれば、60年代末の大学紛争の激動の過程があるだろう。4歳年上の町村信孝が類似の範疇に入る(菅義偉よりアッパーなクラスの住人だが)。当時の若者のエネルギッシュな革新運動に対してカウンター(保守反動)の側に立った異端者たち。その人生の目的と使命感。

安倍政権の番頭であり、話下手で、ゴリゴリの新自由主義者の菅義偉が、自民党諸派閥を密室で纏めて次期総裁確実となった途端に、なぜ急に、あれほどの人気が出たのか。その点は謎である。末期安倍政権に対する異常に高い評価というのも、俄に信じられない政治現象だ。愚衆の付和雷同というほかなく、日本人の政治意識の終末的な劣化に途方に暮れるしかない。総裁選レースを報じるマスコミの世論調査では、今年に入って石破茂がリードし、コロナ禍の中で安倍政権を批判する石破茂に国民の期待が集まっている状況が顕著だった。リセットを求めている国民の気分は明確だった。それが、わずか一週間弱の多数派工作の政治報道とプロパガンダで、あのように簡単に急変し逆転してしまうものなのかと、軽薄さと空疎さに驚き脱力してしまう。安倍辞任以降、テレビとネットの報道は石破茂を叩きまくってきた。自民党内で評判が悪いだの、仲間外れだの、政治生命の終わりだの。マスコミは官邸と直結しているから、石破茂の悪宣伝に徹したのだろうが、それに簡単に釣られる国民世論もどうかしている。

信じられないのは、マスコミの世論調査ではなく、付和雷同の国民の方なのだ。スマイルズの法則が示す国民の政治能力の実態なのだ。絶望はそこにある。

2020年9月9日水曜日

安倍政権追い詰めた7年8カ月(6)陸上イージス 配備撤回(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗の連載記事「安倍政権追い詰めた7年8カ月」の第6弾は陸上イージス 配備撤回」です。
 安倍政権歴代政権の中でも突出して対米従属を貫き、「アメリカいいなり政治」を行いました。その最たる例が安保法制=戦争法をめぐる動きで多くの憲法学者や元内閣法制局長官、防衛官僚などが公然と異を唱え10万人を超える人々が国会前を埋めつくしました。
 また「バイ・アメリカン(アメリカ製品を買え)」を掲げるトランプ大統領に迎合し、F35ステルス戦闘機などの米国製武器の爆買いを続けたうえに、総額1兆円とされる「イージス・アショア」の導入を決めましたが、配備反対の声を上げ続けた地元住民や全国での連帯した運動、野党の批判により最終的に配備断念に追い込まれました。
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安倍政権追い詰めた7年8カ月(6)陸上イージス 配備撤回
しんぶん赤旗 2020年9月8日
 「日米同盟を強化していくことに変わりはないので安心してほしい」。安倍晋三首相は辞任表明から3日後の8月31日、トランプ米大統領との電話会談で「日米同盟強化は不変だ」と誓いました。

共闘の流れ
 日米安保体制のもと、対米従属を基調としてきた歴代政権の中でも突出していたのが安倍政権です。行き過ぎた「アメリカいいなり政治」への疑問の声がかつてなく高まっています。

 最たる例が、圧倒的な国民の反対世論を踏みにじって強行した安保法制=戦争法をめぐる動きです。安倍首相は辞任表明の会見で、レガシー(政治的遺産)として戦争法制定をあげ、「助け合うことができる同盟は強固なものになった」と誇りました。首相は持論である「血の同盟」=日本が海外で米軍と肩を並べて戦争できる国をつくるため、歴代政権が憲法上できないとしてきた集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定を強行。これに基づき安保法制がつくられました。

 自民、公明両党の数の力で成立が強行されましたが、多くの憲法学者や元内閣法制局長官、防衛官僚などが公然と異を唱えました。何より10万人を超える人々が国会前を埋めつくし、市民と野党の共闘という戦後かつてなかった流れを生み出す原動力になりました

爆買い続け
 もう一つの表れが、「バイ・アメリカン(アメリカ製品を買え)」を掲げるトランプ大統領に迎合し、F35Bステルス戦闘機などの米国製武器の爆買いを続けたことです。その結果、2020年度予算では軍事費が過去最大の5兆3000億円を突破し、6年連続で過去最高を更新。既に発注済みの兵器のローン残高(後年度負担)も膨らみ、将来の財政の圧迫を招いています。
 しかし、総額1兆円とされる超高額兵器・陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は配備断念に追い込まれました。配備反対の声を上げ続けた地元住民や全国での連帯した運動、野党の論戦が破綻に追い込みました。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動阿武・萩実行委員会」の米津高明共同代表は「地元では当初からブースターの住宅地落下や水源汚染などの問題が懸念され、宣伝や署名集め、ビラ配布など多くの人たちが頑張りました。署名は3万~4万人に上り、住民の結束した運動が撤回への大きな推進力になりました」と振り返ります。 (つづく)

この困難の時勢で「まず自助」という菅義偉氏の正体(日刊ゲンダイ)

 菅義偉氏が2日の総裁選出馬会見で「自助・共助・公助」を掲げたことに対して、SNS上「責任逃れ」「自己責任の押し付け」などと批判噴出しました。
 それで慌ててそして絆」をつけ足したということですが、正に付け焼刃というものです。
 自己責任論が強調された小泉政権時代に、その根幹思想である新自由主義を主導したのが竹中(平蔵)総務相でした。そしてその副大臣を務めた人こそが菅氏でした。

 弱肉強食の世界を是認する新自由主義はその後当然批判されましたが、もしも菅氏がそうした修正を加えないまま現在に至っているのであれば、その本質は「酷薄、冷淡、冷酷」であるとするそしりを免れません。
 菅氏が「自分は秋田の農家の出身」で、「上京後 苦労をし(て今日の地位を築い)た」と強調するのは、自分は苦労人だから人に対して暖かく、国民の苦しみがよくわかると印象付けたいのでしょう。
 しかし苦労して成功した人の中には、そうでない人たちを「苦労が足りない」からだと見る人もいます。菅氏がまさにその例で、彼が困窮している中小零細企業や、安倍政権のゼロ金利・マイナス金利政策によって苦境に陥っている地方銀行等に対して冷たいのはそれを示しています。

 日刊ゲンダイが「『地方の叩き上げ』という欺瞞 この格差下でまず『自助』という菅義偉の正体」とする記事を出しました。菅氏の本質を捉えています。
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<「地方の叩き上げ」という欺瞞> 
この格差下でまず「自助」という菅義偉の正体
日刊ゲンダイ 2020年9月7日
記事集約サイト「阿修羅」より転載
 万人受けしそうなフレーズを取ってつけた印象だ。自民党総裁選で優勢に立つ菅官房長官の政策集。そのスローガンには、菅が「国の基本理念」に掲げた「自助・共助・公助」に「そして絆」が付け加えられた。
 2日の出馬会見での「自助・共助・公助」発言に、SNS上は「責任逃れ」「自己責任の押し付け」などと批判噴出。評判の悪さに「絆」を足したのだろうが、こんな空疎な付け焼き刃では菅の「地金」は隠せない。
 菅は「まず自分でやってみて、地域や自治体が助け合う。その上で政府が責任を持って対応する」と語ったが、このコロナ禍で「まず自分で」と最初に「自助」を持ち出すセンスに驚愕する。
「自助・共助・公助」は1995年の阪神・淡路大震災以降、災害対応の文脈で広く使われる言葉だ。九州・沖縄を襲った台風10号を例に挙げるまでもなく、災害発生時は、まず自分や家族の命を守る準備を進め、地域コミュニティーで助け合う。その上で、行政の公的支援を受ける。3つの「助」の適切なバランスも大事だ。
 しかし、国の基本理念として語られる場合は真逆の意味を持つ。自分のことは自分で。それでもダメなら他人を頼れ。国は基本的に手を差し伸べない――。要は自分のことを自分で守れない弱者は国に見捨てられても仕方ない。新自由主義的な冷酷な論理である

 大体、自助・共助ともそれを可能にする環境を整えるのが公助=政治の務めではないのか。ところが、公助としての社会保障政策をズタズタにし、社会的弱者にも自己責任を押し付け、格差社会を放置・蔓延させたのが、アベ政治の7年8カ月だ。その中枢メンバーが反省のそぶりも見せず、次期総理の有力候補として平然と自己責任論を言い放つ。この冷淡さには改めて背筋が凍る思いだ。
 菅は「秋田の農家の長男」「高卒で上京して段ボール工場勤務」と、やたらに「地方から出て来た苦労人」をアピールしているが、“浪花節”にだまされてはいけない。メディアへの露出増で見えてきたのは、冷酷、冷淡、冷徹な本性。弱肉強食志向のバリバリの新自由主義者の顔である。

本当は努力自慢の公助に甘えるなおじさん
 例えば、6日の日経新聞の単独インタビューだ。菅はアベノミクスの異次元緩和をゴリ押しした日銀の黒田総裁を「手腕を大変、評価している」と絶賛。一方、「利ざやの低下」という緩和の激しい副作用で経営苦に喘ぐ地域金融機関には情け容赦ない。
「将来的には数が多すぎるのではないか」「再編も一つの選択肢だ」と合併・再編を促す方針で、地銀の経営統合を独占禁止法の適用除外とする特例法を活用。これまで困難だった同一県内の合併も認めたいようだ。
「リフレ派の黒田総裁を評価し、富裕層がさらに潤えば、その富が低所得者に滴り落ちるトリクルダウンなる強者の論理を継承すること自体、菅氏の政策は錯誤している」と言うのは、経済アナリストの菊池英博氏だ。こう続けた。
異次元緩和のマイナス金利は地銀に“金を吐き出せ”と迫るペナルティー政策です。しかし、アベノミクスは大失敗。地方経済は疲弊し、資金需要も細くなるばかり。無理に貸し出し増を求めた結果がスルガ銀などの不正融資です。故意に地銀を弱体化させた上、自助努力が足りないとばかりに数まで減らせば、地方経済の衰退は加速します。金融機関のリスクテークの力も弱まり、生き延びられるはずの企業も潰れ、雇用はますます奪われてしまう。行き着く先は、菅氏が掲げる『活力ある地方の再生』とは真逆の地方の破壊です」

 都市と地方の格差拡大だけでなく、菅はコロナ禍の経済喚起策としての消費減税にも無関心だ。貧しい人ほど逆進性が直撃する「悪魔の税制」を放置すれば、経済格差もますます広がる。生活弱者には塗炭の苦しみが待ち受ける。
 さらに菅は小規模事業者を含め企業全体の99・7%、雇用の約7割を担う中小企業にまで牙をむこうとしている。前出の日経インタビューで「中小企業基本法で定める人数や資本金の定義などは見直した方がいい」と明言した。
 同法は製造業なら「資本金3億円以下、または従業員300人以下」を中小と定め、大企業と比べ税制や補助金など手厚い措置が受けやすくなる。これが中小の再編・統合を妨げているとの指摘もある。そのため、菅は「中小企業の再編を必要ならできる形にしたい。足腰を強くする仕組みをつくる」とし、基本法見直しという猛烈な規制緩和を促進。中小の再編・淘汰が進めば余剰人員はこぼれ落ちる。つまり、菅は弱肉強食の大リストラに動く方向なのだ。

地方は「切り捨て」の対象でしかない
 経済ジャーナリストの井上学氏はこう言う。
菅氏は効率最優先で、中小企業の『労働生産性』の低さを目の敵にし、再編・淘汰したいようですが、低生産性は必ずしも企業規模の問題ではない。スケールメリットによるコスト削減を求めるのは途上国的発想で、高級車のドイツやGAFAの米国など先進国のように高付加価値の製品を生み、売り上げを伸ばす道もある。むしろ、この国では半導体のエルピーダ、液晶のジャパンディスプレイなど政府主導の“弱者統合”が失敗したケースも目立ちます。しかも政府が基本法を見直し、優遇措置や補助金を撤廃させ、企業を合併せざるを得ないような苦境に追い込むなんて、もってのほかです。“上の言うことは黙って聞け”と言わんばかりで、カネは出さずに口だけは出す。そんなイビツな『小さな政府』の発想が垣間見え、今から危ぶまれます」

 そんな菅の「知恵袋」と言われるのが、小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長だ。彼は「プレジデント」(5月29日号)のインタビューにこう答えている。
〈赤字企業はただの寄生虫ですから、退場してもらったほうがいい〉〈中小企業は、小さいこと自体が問題。(注=成長や規模拡大が)できない中小企業は、どうすべきか。誤解を恐れずに言うと、消えてもらうしかない〉――菅は過激な淘汰論にかぶれたのか
 日経のインタビューで菅は「デジタル庁」の創設にも言及した。現在、内閣府や経産省、総務省などに分かれるIT行政の担当を一本化。総背番号制による国民監視と、ビッグデータを活用した大企業向けのデータマーケティングに道を開く狙いもあるのだろう。菅には、デジタル監視社会信奉者という危険な側面もうかがえるのだ。

 まさに本当は怖い「令和おじさん」。「地方重視の叩き上げ」なんて印象操作は欺瞞でしかない。いや、逆に裸一貫から努力を積み重ね、総理寸前までのし上がってきた経歴が、「自助」強調の自己責任論に走らせているのではないか。その自負心こそが「弱者は公助に甘えている」という誤った認識の根本にあるようにも思えるのだ。
 いずれにせよ、沖縄の人々に寄り添うことなく、常に上から「辺野古移設が唯一の選択肢」と強制する菅に、「地方出身の苦労人」の姿勢はみじんも感じられない。
「2012年に当時の民主、自民、公明の賛成多数で成立した『郵政民営化見直し法』に党の方針に背いて反対したのが、菅氏です。郵便・貯金・保険の基本業務を全国の郵便局で一体提供するユニバーサルサービスの責務を課す内容にあらがったわけです。菅氏は小泉構造改革の継承者。小泉政権の総務相で郵政民営化の旗振り役だった竹中平蔵氏を、副大臣として支えた“竹中チルドレン”でもある。新自由主義的な世界観にどっぷり漬かった彼にとって、地方は切り捨ての対象でしかないのです」(菊池英博氏=前出)
 党員投票見送りの批判封じと、民主的投票の演出のため、菅陣営は「完勝」狙いで地方票の切り崩しに躍起だ。その地方こそが、冷血「自助」首相の誕生で真っ先に犠牲となる。