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2020年1月10日金曜日

10- 安部首相「(ゴーン問題は)日産内で片付けてもらいたかった」と

 安倍首相は8日夜、御手洗冨士夫氏らと会食した際に「本来、日産のなかで片付けてもらいたかった」と語ったということです
「そうすれば検察の手を煩わさないで済んだのに(今回のゴーン氏逃亡という失態もなかった・・・)」という気持ちが込められていると解されます。

 これについて元文科次官の前川喜平氏は、「~ アベ首相の発言は聞き捨てにできない。日産に頼まれたからゴーンを捕まえたと言っているに等しい。政治権力が検察を思うがままに動かし民間企業の内部抗争に介入したのなら、由々しき問題だ」とツイートしました
 常々官邸ポリスを殊の外重用している安倍首相の不用意な発言です。

 LITERAの記事「ゴーンが会見で『逮捕を仕掛けた政府関係者の実名』告発を取りやめた理由! 日本政府がレバノン政府に圧力を依頼か」を併せて紹介します。
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安倍首相、ゴーン被告逃亡に「日産内で片付けてもらいたかった」
毎日新聞2020年1月8日
 安倍晋三首相は8日夜、キヤノンの御手洗冨士夫会長らと東京・銀座の日本料理店で会食した。金融商品取引法違反の罪などで起訴され、レバノンに逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告についても話題になった。
 同席した自民党の河村建夫・元官房長官によると、ゴーン被告の記者会見も話題になり、首相は「本来、日産のなかで片付けてもらいたかった」と語ったという。【竹地広憲】

(前川喜平氏 ツイート)
 前川喜平 (右傾化を深く憂慮する一市民) @brahmslover 
「本来日産の中で片付けてもらいたかった」というアベ首相の発言は聞き捨てにできない。「日産に頼まれたからゴーンを捕まえた」と言っているに等しい。政治権力が検察を思うがままに動かし民間企業の内部抗争に介入したのなら、由々しき問題だ。
18:15 - 2020年1月8日


ゴーンが会見で「逮捕を仕掛けた政府関係者の実名」告発を取りやめた理由! 
日本政府がレバノン政府に圧力を依頼か
LITERA 2020.01.09
 昨日8日夜、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏がレバノンのベイルートで会見をおこなった。ゴーン氏は自身の逮捕は「でっちあげ」であり、「ルノーとの経営統合を阻止するため、日産内部や日本政府が企てた陰謀」だと主張。逮捕や拘束時に自分が置かれた状況がいかに非人権的であるかを告発ながら、日本の司法と検察の後進性、非民主性を繰り返し批判した。
 これについては別稿で論じたいが、もうひとつ、ゴーン元会長が自分の逮捕・起訴の背後に日本政府の関係者がいたとして、「実名で告発する」と予告していた件はどうだったのか。本サイトは、ゴーン元会長が菅義偉官房長官と今井尚哉首相補佐官の名前を出すのではないかと予測していたが……。
 ゴーン氏は昨夜の会見でまず、「自分を排除しようとした主要な人物」として、日産の前社長・西川廣人氏、前副社長の川口均氏、副社長などを歴任し昨年まで監査役を務めた今津英敏氏、専務執行役員のハリ・ナダ氏、元秘書室長の大沼敏明氏、そして社外取締役の豊田正和氏という6名の日産幹部の名前を挙げた。
 こうした人物の名前が出てくるのは予測されていたことだ。ハリ・ナダ氏と今津氏、そして川口氏は、ゴーン氏の不正を調査していた日産内部の極秘調査チームの中心人物だったといわれる。大沼氏は長らくゴーン氏の秘書室長を務め、不正を内部告発した人物だが、一部メディアからは、有価証券報告書の過少記載をめぐって特捜部との司法取引に応じたと取り沙汰された社外取締役の豊田氏も反ゴーン勢力と連携しており、ゴーン逮捕以降、マスコミに情報をリーク。〈「夜の広報担当」といった存在〉(ダイヤモンド・オンライン2018年12月11日付)になっていたといわれる。
 しかも、このうち、川口副社長と豊田社外取締役は、まさに安倍政権とのパイプ役といわれていた。たとえば、川口前副社長は、菅官房長官と非常に親しい関係にあった。川口氏は、特捜部がゴーン氏を逮捕した直後も菅官房長官を訪ねて、逮捕の報告と謝罪をおこなっている。菅官房長官には川口氏から逐一、情報を受け取り、相談をしていたとの見方が有力だ。
 また、ゴーン氏が「日本の当局との橋渡し役」という表現で名前を挙げた社外取締役の豊田氏は経産省から天下りした元高級官僚で、まさにゴーン下ろしのために経産省が送り込んだといわれていた人物だ。
 経産省は日産がゴーン体制になってから、経産省OBの天下りを受け入れなくなったうえ、ゴーン氏は途中からルノーとの吸収合併に積極的になった。そこで、日産の海外移転を防ぎ、自分たちの影響力を復活させたい経産省がゴーン下ろしのために送り込んだのが、豊田氏だったのである。
 実際、2018年6月に豊田氏が突如、非常勤取締役に就任し、その約半年後に、ゴーン会長が逮捕。そして、豊田氏は後任社長を選考する指名委員会の委員長に就任している。これは、クーデターを前提にした人事としか考えられないだろう。
 しかも、豊田氏の背後には、安倍首相の側近中の側近で、やはり経産省出身の今井尚哉首相補佐官がいるのではないかともささやかれていた。経産省時代は大きな接点はないが、今井氏が資源エネルギー庁次長を務めていたとき、豊田氏はシンクタンクの日本エネルギー経済研究所理事長として、今井氏の原発再稼働路線を全面バックアップしていた。
「今回のゴーン逮捕も、この今井=豊田ラインの連携プレーが大きな役割を果たしたということじゃないでしょうか。直接、検察を動かしたというのはないと思いますが、経産省の意向を受けて、日産のクーデター組を焚きつけた可能性はおおいにある。そして、こうした経産省や官邸の動きを察知した検察が、強引に捜査に及んだということじゃないでしょうか」(前出・全国紙政治部記者)
 しかも、経産省の関与は陰謀論でもなんでもなく、フランスメディアで経産省が日産・ルノー経営統合問題へ介入していたことを示す証拠メールが報道されている。

ゴーンはなぜ「政府関係者の実名」を明かさなかった? 会見前日、日本の大使がレバノン大統領に…
 もっとも8日夜の会見で、ゴーン氏が口にしたのは、6人の元日産幹部の名前だけで、菅官房長官や今井首相補佐官などの名前は結局、出てこなかった。菅や今井だけではない、政権幹部や経産省官僚についても一切口にしなかった
 前述したように、米テレビ「FOXビジネス」が6日までに取材した際、ゴーン氏は自身の逮捕・起訴の背後には日本政府の関係者もいたとして、8日に予定される記者会見で数人の実名を明らかにする方針を語っていた。それを突然とりやめてしまったのだ。ゴーン氏は昨夜の会見でその理由についてこう語っていた。
「日本政府関係者の名前を挙げることもできる。だが、私はいまレバノンにいて、レバノンを尊重している。レバノン当局が自分にしてくれたことに感謝している。レバノン当局の仕事を難しくすることを望まない。なので、この部分については沈黙を保ちたい。何かを言って、レバノンの人々やレバノン政府の利益を損なうことはしたくないからだ」(会見でのゴーン氏)
 ゴーン氏はレバノン政府の利益を損なわないよう「日本政府関係者」の実名暴露を控えたと説明したのだが、なぜ、日本政府関係者の名前を出すことがレバノン政府の利益を損なうことになるのか。
 実は、ゴーン氏が会見を開いた前日、在レバノン日本大使館の大久保武大使が、レバノンのアウン大統領と会談をしている
 朝日新聞によると、大久保大使はゴーン氏の逃亡について「誠に遺憾で、我が国として到底看過できるものではない」と伝え、〈事実関係の究明を含め必要な協力をするよう求めた〉というが、実はこのとき、レバノン政府からゴーン氏に対して「日本政府関係者」の名前を会見で公にしないよう、密かに釘を刺したのではないかといわれている。
 あるいは、日本政府が別の外交ルートを使って、レバノン政府に圧力をかけていたことも考えられる。周知のように、菅官房長官はゴーン氏の身柄引き渡しについて「様々な外交的手段を行使したい」と述べるなど、プレッシャーを強めているが、実は、日本はレバノンに対して巨額の経済支援をおこなっている。外務省HPによれば、2017年末までの有償資金協力が約130億円、無償資金協力が約69億円、そのほか約18億円の技術資金協力もしており、こうした実績を“カード”にして交渉していたとしても不思議ではない。
 いずれにしても、レバノン政府が日本政府の圧力に屈し、ゴーン氏へ「日本政府関係者」の名前を出さないように要請していたとすれば、あれだけ実名暴露に鼻息を荒くしていたゴーン氏が、突然、口をつぐんでしまったことも説明がつくだろう。
 ゴーン氏は会見の質疑応答のなかで日本政府の関与について訊かれ、わざわざ「安倍総理が関わっていたかという質問であればそうではないとお答えしたい。自分自身の言葉に気をつけなければならないので、沈黙する」と強調していた。本サイトでも伝えたように、ゴーン氏が経産省関係者も含めて実名公表を一切封印したのに、ことさら安倍首相だけを挙げて関与を否定したことは、暗に、それ以外の政権幹部の関与、そして日本・レバノン両政府間の政治的な取引を示しているのではないか。
 昨夜、安倍首相は、河村建夫元官房長官や御手洗冨士夫キヤノン会長らとの会食の席で、ゴーン氏の件について「本来、日産の中で片付けてもらいたかった」と述べたという。この発言も、裏を返せば「日産の外側」、つまり日本政府が日産・ルノーの経営統合問題に介入してきたことを、内輪の会合で思わずこぼしてしまったとも受け取れる。
 日本のマスコミのほとんどは「陰謀論で自分の罪をすり替えている」などとゴーン氏を批判しているが、ゴーン氏の主張を単なる陰謀論と斬って捨てることはできない。この事件の黒幕を徹底追及せねば、今後もグロテスクな“国策捜査”が繰り返されることになるだろう。(編集部)

2020年1月9日木曜日

「桜を見る会」は「憲法違反」「平等、知る権利阻害」 木村草太氏指摘

 安倍首相の「桜を見る会」問題について、毎日新聞が憲法学者の木村草太・首都大学東京教授に、憲法の観点からどのような問題があるのかを聞きました。
 いつもながら明快に極めて分かりやすく説明されています。
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「桜を見る会」考
「桜を見る会」は「憲法違反」 木村草太氏指摘 「平等、知る権利阻害」
毎日新聞 2020年1月5日
 安倍晋三首相の「桜を見る会」には「公的行事の私物化」「公選法違反ではないか」など、多岐にわたる批判が相次いでいる。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「法の下の平等や、国民の知る権利を阻害しており、憲法違反の疑いがあります」と訴える。その真意を尋ねた。【江畑佳明/統合デジタル取材センター】

招待のあり方は「国民を二分し不平等」

 ――憲法の観点からは何が問題でしょうか。
 ◆まず、桜を見る会に誰をどう招待したか、について考えたいと思います。憲法14条1項はこう定めています。
 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」
 桜を見る会に招待されるのは「功績、功労があった人」だというのが政府のこれまでの説明です。しかし、実際にはこの説明にそぐわないような、安倍事務所の後援会の人たちを数多く招待したとみられています。もし、それが事実なら、政府が国民を「功績と関係なく招待された人」と「招待されない人」に二分したことになります。これは、政府が合理的な理由がないままに、国民を不平等に扱い、差別した事案です。平等権侵害の典型例でしょう。仮に、招待されなかった人が「平等権の侵害だ」と訴訟を提起したら、政府は、どのような根拠で「平等だった」と反論すればよいのか。訴訟の担当者は、困ってしまうでしょう。

 ――政府が訴えられたら、勝訴できますか?
 ◆政府が負けてしまうと、(差別を受けた)被害者数も被害額も膨大になるので、裁判所は、なんとか政府が勝訴するような知恵をひねり出すでしょう。例えば、「招待されなかったからといって、賠償を求めることができるほどの損害は受けていない」などと言うのではないでしょうか。ただ、これは、政府の招待者の選抜が妥当だったという内容ではありません。そもそも、招待者の名簿や選抜の具体的基準や議事録がないわけで、裁判所としても「招待客の選抜に何ら問題はなかった」という判決は書きようがないでしょう。

参加者氏名「公開しても違憲・違法ではない」

 ――政府は招待者の氏名について、「個人情報だから非公開」という説明をしていますが、違和感を覚えます。
 ◆招待はされたけれども当日出席しなかった人まで氏名を公表するのは問題です。というのは、時々、叙勲を受章しない人がいるように、一般には名誉だと思われることでも、本人が不名誉に感じる場合があります。出席しなかった人は招待されたことを快く思っていないかもしれない。招待された事実を公にしたくない人の氏名は、公開すべきではありません。

 これに対し、当日出席した人は、政府に称賛されたことを受け入れた人ですよね。だから氏名はプライバシー権で保護される情報には当たらないと考えるのが一般です。当日出席した人たちの氏名は、公開しても違憲・違法ではないでしょう。そもそも、当日の様子は報道機関のカメラが入って、官邸のホームページでも様子を公開しています。もし政府の主張通り、出席者が誰かということが、プライバシー権で守らなければならない個人情報であるならば、カメラなど入れてはいけないわけです。例えば、DV被害者を守るためのシェルターに報道機関がカメラを使って取材をしようと思ったら、利用者が誰かわからないように顔が見えないようにするなどの配慮をしますよね。政府は桜を見る会の出席者の情報を、シェルターの利用者と同じように扱っていることになります。これは明らかにおかしい。桜を見る会の会場は、報道のカメラが入るなど半ば公の場となっているため、参加者の氏名は当然公開されていい情報です。参加者は会場に来た時点で氏名の公開に同意した、とみなしていいと思います。

名簿の廃棄で「政府の信用が詐欺に使われても事実確認できない」

 ――「プライバシー権」と「個人情報」はよく似ているように思いますが、違いはあるのでしょうか。
 ◆はい。プライバシー権は、「個人情報コントロール権」であり、これには自らの個人情報をみだりに公表されない権利が含まれているとされます。ただし、①公共の利害に関する真実である場合と、②本人が同意した場合には、個人情報の公開も許されるとされます。
 政府が誰の功績・功労を認めたのかは、公共利害に関連する事実です。また、桜を見る会への出席は、出席の事実を公に知られてもよいという同意だと理解できるでしょう。ですから、桜を見る会の出席者名簿は、①②いずれにも当たります。

 ――内閣府は招待者名簿を「保存期間1年未満の文書」として廃棄したと説明しています。
 ◆これも大きな問題だと考えます。マルチ商法などで多くの被害が出た「ジャパンライフ」の元会長が招待されていたのではと報道されていますが、なにもこれは「ジャパンライフ」に限った話ではないはずです。他にも「ウチの社長は桜を見る会に招待されたんですよ」と宣伝する会社があってもおかしくありません。その会社と商談を進めたり契約を検討したりしている場合、この情報の正誤を確認する必要が出てきます。ですが政府が名簿を廃棄したとなると、事実確認のしようがない。政府の信用が詐欺に使われる可能性があり、名簿の廃棄はこの点でも大きな問題点をはらんでいます。

「当然公開されるべき事実を隠したことは国民への裏切り」

 ――政府は2020年の「桜を見る会」の中止を決めましたが、名簿などが廃棄されてしまえば検証や改善のしようがないですね。
 ◆その通りです。この見る会の最大の問題は、国民の政府を評価する権利と、その前提になる「知る権利」が侵害されている点です。当然公開されるべき事実を隠したことは、国民への裏切りです。今回、私たち国民は「主権者は国民であり、政府を評価するのは自分たちだ」という考えをもっと強く持つべきだと思うのです。

 ――菅義偉官房長官は記者会見でよく「適切に処理しています」と言っています。
 ◆政府の行為が「適切かどうか」を判断するのは国民です。しかし、国民の評価を受ける立場の政府が、勝手に自己評価して「適切だ」と言っているわけです。これは、国民主権の原理の否定です。私たちの憲法の根幹にある価値を否定しているのです。国民をバカにしているといってもいい。

 例えば、試験の際に答案用紙を提出しなかったら、自動的に「0点」で不合格になりますよね。提出すれば、むちゃくちゃな内容でも、10点とか20点はつくかもしれない。答案を提出しないことは、むちゃくちゃな答案を出すよりもひどいことなのです。今の政府もこれと同じです。招待者の情報を出したくない事情があるのかもしれませんが、全く出さなければ国民は0点と評価すべきです。「実はこういう中身でした」と公開(答案を提出)すれば、国民の評価(試験の点数)は、不合格かもしれないけど、もしかしたらぎりぎりセーフの評価をしてもらえる可能性も残されています。とにかく、きちんと公開して、国民の審判を仰がねばなりません。だから政府は「データの復元などの手を尽くしました。内容や結果を判断するのは国民のみなさんです」というメッセージを出すべきです。

 ――ツイッターなどでは「もっとほかに議論すべきことがある」という批判もあります。
 ◆今、政府が出している情報だけでは、これが大問題なのか、取るに足らない問題なのかも判断できません。そういう批判をする人は、「名簿の中身がどんな内容でも安倍政権を支持する」という方々なのでしょう。それはそれで一つの政治的立場ですが、であるなら、「どんな内容でも支持する。だから公開すべきだ」と主張するのが筋ではないでしょうか。

 それから、招待者は「功績、功労のあった人」ということですが、じゃあどんな功績を判断するために何を基準にしているのか、さらにどういう選定手続きを踏んだのか、の公開も必要です。もし内閣府が「安倍後援会の希望者全員」という基準で選んだのなら、そういう基準でしたと、明らかにすべきだと思います。それをどう評価するか。判断するのは国民です。

きむら・そうた 首都大東京教授
 1980年生まれ。東京大法卒。同大助手、首都大東京准教授を経て、現職。専門は憲法。著書は「憲法の条件」(NHK出版新書)、「自衛隊と憲法」(晶文社)など多数。毎日小学生新聞にコラム「ほとんど憲法」を連載中。趣味は将棋観戦。

09- 天皇制と男女平等は(東京新聞 年のはじめに考える)

 日本の世論は、女性天皇、女系天皇支持が圧倒的ですが、一部には男系、男性天皇を熱烈に支持ずる勢力もいます。
 女王の例はそもそも西欧にはいくらでもあります。
 男女平等を謳う日本国憲法の第二条は「皇位は、世襲」とのみ記し、明治憲法にあった「皇男子孫」の文字は消えましたが、新皇室典範には男系・男子主義のまま残ってしまいました。
 しかし男系・男子主義は、天皇の側室制度を前提にしないと維持できないのも事実です。また皇族の婚姻の自由が事実上認められなくなるという問題もあります。

 東京新聞は「年のはじめに考える」として、女性・女系天皇論を扱ううえで「個人の尊重」の点からも男女平等の点からも、人権と民主主義という憲法の根幹にある思想が必要と考えると述べています
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【社説】年のはじめに考える 天皇制と男女平等は
東京新聞 2020年1月8日
 「女性天皇は認めるべきだ」
 「確かに推古天皇から八人で十代の例があるが、男系が皇位に就くまでの暫定的な存在だった」
 「政治的野心を持った者が女性天皇の婿(むこ)になったら、困ることになるではないか」
 こんな議論があったのは何と一八八二(明治十五)年。当時の有力紙・東京横浜毎日新聞に載りました。九回連載のテーマは、ずばり「女帝を立(たつ)るの可否」。
 一流の論客たちが侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を繰り広げました。中には「立憲主義国では平凡な君主で構わないから女性でも務まろう」などと、現在なら女性蔑視と眉をひそめる意見も載っています。

西欧は女王の歴史が
 憲法学者・故奥平康弘氏の「『萬世一系』の研究」(岩波書店)に記された興味深いエピソードです。こんな議論が起きたのも、明治国家が憲法を定めつつある時期で、模範にする西欧では女帝が存在したからです。
 英国ではビクトリア女王が在位中。歴史的にも十六世紀に有名なエリザベス一世がいたし、十八世紀にはオーストリアのマリア・テレジア、ロシアのエカテリーナ二世ら女帝が君臨しました。
 でも、一八八九年に公布された大日本帝国憲法の第二条には「皇位ハ(中略)皇男子孫之ヲ継承ス」と定められました。男系・男子主義です。どんな経緯だったのでしょうか。
 早くは元老院の「日本国憲按(あん)」という文書の一次案に、女性天皇を容認する記述があります。皇位継承の順位として「同族ニ於(おい)テハ男ハ女ニ先(さきだ)チ」などと。でも、二次案では女帝容認案は消えてしまいました。明治憲法制定にあたり、伊藤博文の右腕になった井上毅が西欧を軽率に模倣する愚を説いたのです。
 論の中核が、もし女性天皇が子どもを産めば、その子は父親の姓を名乗ることになる-という当時の家父長制の論理でした。男系が崩れ、女系天皇になるわけです。

「法の下の平等」では
 ただ女帝を封じれば困った事態も予想されます。男系・男子だけだと天皇を継ぐ者がいなくなりはしないか? でも井上には「正妻の子でない天皇」が念頭にあったようです。当時は慣習として天皇にも側室がいたのです。
 実は明治天皇も正妻の子ではありません。遡(さかのぼ)れば江戸時代の桜町天皇から、桃園、後桜町、後桃園、光格、仁孝、孝明、明治と側室の子が続きます。大正天皇も、です。これらの事柄も奥平氏の前掲書に記されています。
 こうして引き継がれてきた天皇制は、昭和の敗戦で新局面を迎えます。新憲法は第一四条の「法の下の平等」で性別により差別されないことを定めたからです。
 男女平等ですから、日本国憲法の第二条は「皇位は、世襲」とのみ記し、明治憲法にあった「皇男子孫」の文字が消えました。しかし、一般の法となった新皇室典範は男系・男子主義のまま残ってしまいました
 もっとも典範改正にあたり、一九四六年に当時の宮内省は「皇統を男系に限ることは憲法違反となるか」という文書を臨時法制調査会に出しています。宮内省の立場としては、むろん「否」なのですが、当時の空気には意外なほど女帝肯定論がありました
 同調査会でも、東京帝大教授の宮沢俊義氏や杉村章三郎氏らは肯定論の立場でした。帝国議会でも「男女平等」の原則から女性天皇論が説かれたりしています。ただ、現実には多数派は男系・男子主義で、新皇室典範ができたのですが…。
 さて、大嘗(だいじょう)祭を終えた今、皇位継承の在り方は政府の宿題になっています。女性・女系天皇、また女性宮家の創設のテーマです。皇位継承者は秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さまに限られてしまったためです。もはや側室制度はありえません。
 だから男系・男子主義者は旧皇族の復活などを主張します。でも、象徴天皇制は国民の意識変化も考える必要があるでしょう。共同通信の世論調査では女性天皇に賛成が82%、女系天皇の賛成が70%。国民の多くは「容認」です。
 昭和天皇の弟である故・三笠宮崇仁さまはかつて皇族の結婚について嘆きを記しています。

人権と民主主義でも
 <種馬か種牛を交配する様に本人同士の情愛には全く無関心で(中略)人を無理に押しつけたものである。之(これ)が為(ため)どんなに若い純情な皇族が人知れず血の涙を流し(中略)たことであらうか>
 天皇家は人権が及びにくい「身分制の飛び地」と学問的にいわれています。ですが、婚姻の自由はあってしかるべきです。
 「個人の尊重」の点からも。むろん平等の点からも…。女性・女系天皇論を扱ううえでは、今や人権と民主主義という憲法の根幹にある思想が必要と考えます。

2020年1月8日水曜日

新年特別企画 嫌韓ヘイト・歴史修正事件簿(前編)

 LITERAが新年特別企画として、「嫌韓ヘイト・歴史修正事件簿(前・後編」を発表しました。
 まず、その前篇を紹介します。約8000文字の長文なので文字10ポイント、行ピッチ15ポイントの縮刷版で紹介します。
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新年特別企画 嫌韓ヘイト・歴史修正事件簿(前編)
嫌韓ヘイトを生み出したのは誰か! 安倍政権と極右勢力に乗っかり韓国叩きに明け暮れたワイドショー、コメンテーターの罪
LITERA 2020.01.06
 IR汚職にイラン自衛隊の中東派遣と、2020年は安倍政権のヤバイ正体が完全にはっきりする年になりそうだが、新たな問題の前にいま一度総括しておかねばならないのは、「戦後最悪」と呼ばれた日韓関係の背景と、韓国や在日コリアンに対するヘイト=差別の問題だろう。そもそも日韓対立のもとになった、慰安婦や徴用工、輸出規制、GSOMIAをめぐる問題などはすべて、安倍政権の歴史修正主義、そして不祥事ごまかしや選挙のための意図的なキャンペーンがもとになっている。そこに、御用メディアや極右言論人が乗っかるかたちで、差別感情丸出しの嫌韓・ヘイトの空気を作り出してしまったのだ。2020年もおそらくこの嫌韓ヘイト、歴史修正主義は続くだろうし、別の問題にも同じやり口が使われる可能性もある。
 それを止めるためにも、この1年に起きた嫌韓ヘイト事件を振り返り、政権主導の歴史修正主義と“嫌韓キャンペーン”に乗っかったメディアや言論人の罪を総括しておきたい。「嫌韓ヘイト・歴史修正事件簿」、まずは前編からお届けしよう。

●事件簿その1
安倍政権の不正をスルーして韓国バッシングしたワイドショー、「週刊ポスト」は誌面でヘイト垂れ流し
 やはり最初にあげなくてはならないのは、「戦後最悪の日韓関係」を作り上げたマスコミの問題だろう。「「嫌韓」ではなく「断韓」だ 厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」なる特集を組んだ「週刊ポスト」の版元・小学館こそ、作家たちから絶縁宣言されるなど大きな批判を浴びたが、これは氷山の一角にすぎない。とりわけテレビのワイドショーでは、韓国への強硬姿勢を見せる安倍政権の詭弁を無批判に垂れ流しながら、毎日のように「韓国けしからん!」の大合唱を繰り広げることで、視聴者の“嫌韓感情”を煽りに煽っていた。
 たとえば、韓国への半導体材料等の輸出規制は、明らかに徴用工問題に対する安倍政権の報復だった。戦中の日本が朝鮮人たちを強制労働させたのは公的史料も残る歴史的な事実だ。そして、その劣悪な環境や賃金未払いをめぐる戦後保障は人権問題であり、日本政府もこれまで「個人の請求権は消滅していない」という見解をとっていた。ところが、安倍政権は日韓対立を政治利用し、多くのマスコミがそれにまる乗っかりしたのである。
 参院選を控えた7月に政府が対韓輸出規制を発表すると、FNNなどを中心に、マスコミは「韓国は軍事転用できる輸出品を北朝鮮に横流ししていた可能性がある。だから日本は輸出規制に踏みきった」という趣旨の報道を一斉に展開。だが、これは明らかに印象操作としか言いようがない“フェイク”だった。
 FNNは〈韓国から兵器に転用できる戦略物資が不正輸出された案件が、4年間で156件にのぼることが明らかになった〉として、〈北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏暗殺の際に使用された神経剤「VX」の原料がマレーシアなどに不正輸出されたほか、今回の日本の輸出優遇撤廃措置に含まれるフッ化水素も、UAE(アラブ首長国連邦)などに不正輸出されていた〉などと報じた。
 しかし、この「4年間で156件」というのは、実際には、2015年から2019年3月までに韓国政府が「摘発」した件数。つまり、未然に防いだり、不正を正したりした数字という解釈もできる数字なのだ。これがなぜ、不正輸出の証拠になるのか。しかも、FNNが報道したのはあくまで摘発した不正輸出の相手国のなかに、北朝鮮と関係している国があったというだけ。その先はまったくわからない。それを、「北朝鮮への横流し」の証拠のように報じるのは、印象操作以外の何物でもないだろう。実際、こうした報道から約半年が経とうとしているが、「韓国が北朝鮮へ不正に横流しをしていた」という証拠は何一つ出てきていない。
 しかし、その後もマスコミは懲りずに、無茶苦茶なフェイクをやめなかった。8月、安倍政権が韓国の「ホワイト国除外」を閣議決定し、文在寅大統領が日本政府を批判すると、マスコミは一斉に「文大統領が日本を『盗人猛々しい』と批判」と報道。だが実際には、文大統領が使った「賊反荷杖」という四字熟語は日本語では直訳できない表現で、ニュアンスとしては「悪いのはあなたでしょ」程度の語感だという。事実、韓国報道の日本語訳では「『加害者の日本が居直り、大口をたたく状況を座視しない』と強い口調で語った」(聯合ニュース)などと訳されている。つまり、「最悪日韓関係」を煽りたい国内メディアは、恣意的に角度をつけて“意訳”していたのだ。
 さらに、“有権者買収疑惑”で辞任した菅原一秀・前経産相など、相次いだ政権の閣僚スキャンダルはほとんどスルーする一方、韓国の曺国(チョ・グク)前法相の話題は数カ月にわたってフェイクまがいの小ネタまで延々と報じ続けたのだ。そして、そんな“嫌韓キャンペーン”のなか、テレビでは安倍応援団のコメンテーターたちが、韓国や北朝鮮、在日コリアンの人々の排斥を煽るようなヘイトをどんどん垂れ流していったのである。

●事件簿その2
武田邦彦、東国原英夫、黒鉄ヒロシ、小松靖、八代英輝、元韓国大使の武藤正敏…ヘイト、嫌韓を垂れ流したコメンテーター
 象徴的だったのが8月、『ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜』(CBCテレビ)でヘイトクライムを扇動したコメンテーターの武田邦彦・中部大学特任教授だ。武田氏は番組のなかで、ソウルを旅行中の日本人女性が韓国人男性から罵声と暴行を受けた事件をダシにして、「明らかに反日の教科書をつくり、反日の教育をし、路上で日本人の女性観光客を、その国のね、訪れた国の男が襲うなんつうのはね、これはもう世界で韓国しかありませんよ」と話した。
 観光客を襲う犯罪は日本を含むさまざまな国で発覚しているのに、決めつけと偏見で「韓国の男」をひとくくりにし、「女性観光客を襲う」とレッテルを貼って差別を煽る典型的なヘイトスピーチだが、さらに番組が“大阪で韓国人観光客が激減”という話題を扱うと、武田氏は「そりゃあ日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しにゃいかない」と発言。「韓国人女性」という属性で「暴行」を肯定するというヘイトクラムを、地上波のテレビで垂れ流したのである。
 しかも『ゴゴスマ』は、この武田氏によるヘイトクライム扇動発言の翌々日にも、東国原英夫が、ゲストである韓国人女性の金慶珠・東海大学教授に対して「黙って、お前は! 黙っとけ!この野郎。喋りすぎだよ、お前!」と面罵している。さらに東国原は、金教授を「韓国では、親日家の右派なんですよ。でも日本に来ると、左派・反日系を装うじゃないですか。これ『ビジネス反日』と僕は言ってるんですけど」などと攻撃。「反日」などという言葉でもって“攻撃すべき相手”なのだと開き直る態度は、ヘイト煽動にほかならない。
 こうしたヘイトクライムや侮辱が地上波の生放送で飛び出すのは、「最悪の日韓関係」をテコにすれば「韓国(人)相手ならどんなことを言ってもいい」という空気がメディアを支配しているからだ。
 事実、武田氏ほど直接的ではないにせよ、他のワイドショーでも右派・安倍応援団たちが毎日のように歴史修正主義を振りかざしながら“嫌韓コメント”を繰り出していた。
 『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)では、コメンテーターの漫画家・黒鉄ヒロシ氏がフリップに「断韓」 と書き、「脱亜ではもう収まらない」「1回切っちゃう」などと、ヘイト丸出し発言。また「従軍慰安婦の像ってあるでしょ。あれ、アメリカ兵がジープで女の子を轢いちゃったそのときにできた像なんですよね」などとネトウヨ界隈で定番のデマをばら撒いた(本サイトの解説参照https://lite-ra.com/2017/12/post-3635.html)。MCの小松靖アナウンサーも徴用工・慰安婦問題は「解決済み」などと強弁し、「(文大統領には支持率以外に)北と繋がる別の理由があるのではないか」なるネトウヨそっくりの陰謀論をまくし立てた。
 また『ひるおび』(TBS)では、安倍応援団筆頭の八代英輝弁護士が「慰安婦問題っていうものが史実に基づかないものである」と堂々とフェイクをぶったり、ハンギョレ新聞と中央日報と朝日新聞。反日三羽烏みたいなもん」などと言いたい放題。
 『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)でも、『韓国人に生まれなくてよかった』(悟空出版)なるヘイトスピーチ同然のタイトルの本を出している元韓国大使の武藤正敏氏が「文大統領の支持層はみんな過激派」「韓国は裁判官でも相当左がかった人が多い」などとまくしたて、“文大統領が検察改革の世論を喚起するためにプロパガンダ映画をつくらせた”という趣旨のフェイクまで語っていた(本サイトの解説参照https://lite-ra.com/2019/09/post-4980.html)。だがこの武藤氏、韓国司法の徴用工判決を厳しく指弾して「文在寅大統領がやらせた判決である」と攻撃を行っているが、実は、自身は2013年1月から2017年末まで徴用工訴訟の被告である三菱重工業の「顧問」に就いていたというバリバリの“利害関係者”である。
 あたかも客観的な報道人や専門家のような顔をしているテレビのコメンテーターたちだが、その“嫌韓コメント”の数々は、確実にヘイトスピーチやヘイトクライムの扇動につながっている。そして、彼らがヘイトを吐き出す裏には、確実に安倍政権を援護射撃したり文大統領を批判する政治的目論見があるのだ。

●事件簿その3
韓国で出版された『反日種族主義』は日本の安倍応援団・極右勢力が協力! 韓国人著者は韓国ニューライトの中心人物
 2019年年秋に出版された『反日種族主義』(李栄薫・編著/文藝春秋)も、まさに“政治的目論見”が見え隠れしている。韓国人研究者たちが「韓国の“反日”はウソと捏造だらけ」と糾弾する書籍で、右派メディアと極右文化人、そしてネトウヨたちが絶賛の声を上げているが、それもそのはず。本サイトでも詳しくお伝えしたように、その中身は〈韓国の嘘つき文化は国際的に広く知れ渡っています〉などとヘイトまがいの言葉が並び、慰安婦問題や徴用工問題などの歴史認識でも日本の歴史修正主義や政府の言い分を“トレース”するような内容になっているからだ。
 実は、同書はある意味、“日韓右派の合作”と言えるシロモノだ。ハンギョレ新聞によると、『反日種族主義』は〈韓国での出版前から日本語版の出版が計画されていた〉というが、そもそも、『反日種族主義』には、明らかに学術的研究を超えた特定の政治的意図が込められている。編著者の李栄薫(イ・ヨンフン)氏は韓国経済史を専門とする元ソウル大学教授で、いわゆる韓国の「ニューライト」の中心的人物。「ニューライト」というのは、革新系政治に反対し、「日本による植民地時代が韓国近代化の礎を築いた」なる「植民地近代化論」の論陣を張ることが多い韓国の保守系グループだ。その政治思想的傾向から日本の右派と極めて相性がよい。事実、以前から韓国のニューライト運動については、産経新聞らが繰り返し好意的に取り上げてきた。
 そして、『反日種族主義』日本語版の巻末には「編集協力」として、産経の久保田るり子編集委員とともに、慰安婦否定派の急先鋒で“安倍首相のブレーン”のひとりと言われる西岡力・麗澤大学客員教授の名前がクレジットされている。西岡氏によれば、同書の著者のひとりで李栄薫氏の弟子ある李宇衍(イ・ウヨン)氏は「自分の友人」らしい。
 なお、李宇衍氏は2019年7月、国連欧州本部で開かれたシンポジウムに出席し、徴用工問題に関して「強制性はなく、賃金差別もなく、奴隷労働というのは嘘である」という趣旨の発表をおこなったが、実は、李宇衍氏を国連に連れて行ったのは、あのテキサス親父日本事務局長・藤木俊一氏。ハンギョレ新聞によると、藤木氏は李宇衍氏のジュネーブへの往復航空運賃と5泊6日の滞在費用も負担したという。
 つまるところ、安倍首相周辺の日本の極右界隈にとって、「ニューライト」は “最適のパートナー”なのだろう。前述した元駐韓大使の武藤正敏氏も、明らかに自民党政権に近い韓国保守派の主張を日本のマスコミで垂れ流している節がある。こうした政治的策略に満ちたグロテスクな手法を見極めなければならない。

●事件簿その4
韓国でも商売するDHCの“嫌韓ヘイト”が韓国内で発覚、批判が殺到! DHC韓国は謝罪したが、DHCテレビは開き直り
 安倍首相をはじめとする政権幹部、そしてマスコミが嫌韓を煽ることで、SNSでは極右文化人やネトウヨたちは水を得た魚だ。その合わせ鏡として、韓国メディアや欧米メディアも百田尚樹や竹田恒泰など日本の極右嫌韓文化人たちを取り上げて、その発言を報じるようになっている。2019年は、まさに“日本の恥部”がどんどん国際社会に広がった年でもあった。
 その“恥部”のひとつが、『真相深入り!虎ノ門ニュース』や『ニュース女子』などネトウヨ番組をてがけるDHCだろう。8月、韓国の放送局・JTBCのニュース番組が「韓国で稼ぎ、自国では嫌韓放送…DHC“2つの顔”」と題し、DHC子会社のDHCテレビジョンが嫌韓放送をおこなっていると伝えた。
 周知のように、DHCの吉田嘉明会長はゴリゴリの歴史修正主義者で、2016年には「DHC会長メッセージ」のなかで在日コリアンにかんするデマを書き立てた上で〈似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう〉などとヘイトスピーチを堂々と掲載したこともある。その一方でDHCは、2002年にDHCコリアを設立。韓国の現地法人として化粧品やサプリメントの販売をおこなってきた。その売上は年間100億ウォン(約9億円)を超えるとされる。つまり、DHCは吉田会長の思想そのままに、日本国内では自社メディアを使って歴史修正主義に基づいたフェイクニュースを連発、韓国に対するヘイトを煽動しながら、その韓国では何食わぬ顔でビジネスを展開してきたのだ。
 そして、前述のJTBCがこの問題を追及すると、韓国のネットユーザーも黙っておらず、「#さよならDHC」というハッシュタグによる不買運動が拡大。DHCコリアが謝罪文を発表し、DHCテレビの番組出演者の発言には同意せず、異なる反対の立場で問題に対処することを表明する事態に発展した。
 ところが、DHCテレビは、現地法人の声明とは真反対の見解を公表。あらゆる圧力に屈することなく、自由な言論の空間をつくり守って参りたく存じます〉などと開き直ったのである。呆れざるをえない。
 言っておくが、いま韓国メディアが、こうした日本の極右・ネトウヨ界隈の実態が伝えているのは、日本のマスコミが騒ぎ立てる「反日」ではなく、安倍政権の極右思想の背景に注目が集まっているからだろう。多くの韓国人が、日本という国や日本人全体に敵愾心を燃やすのではなく「日本政府の問題」として捉え、さらにはどうして歴史修正主義と極右思想に染まっているのか、その背景を探ろうとしているのだ。
 一方で、日本ではヘイトデマや歴史修正主義が野放しにされ、DHCのように一切反省せず逆ギレするような態度ばかりだ。いったい「感情的」なのはどっちだという話だが、いずれにしても、このグロテスクな“嫌韓キャンペーン”を放置してしまえば、かならず“国辱”として跳ね返ってくることは間違いない。

●事件簿その5
日韓友好を訴えただけのぱるる・大島麻衣や、若者の韓国ブームを伝えた「あさイチ」、ワイドナ女子高生が炎上攻撃にさらされる異常
 あらためて強調しておきたいのは、2019年を象徴する「戦後最悪の日韓関係」という言葉は、あくまで安倍政権と御用メディアがつくりあげた“政治主導”の話だということだ。マスコミは口々に「韓国の反日はここまできた!」と煽り立て、あたかも「韓国人全員が日本人を憎んでいる」かのようにミスリードするが、実際は「日本人全員が嫌い」と公言したり、あるいは「日本人へのヘイトスピーチ」を行う韓国の人はほとんどいない。
 たとえば日経新聞が「反日集会」と報じた7月27日のソウル「ろうそく集会」の参加者が掲げたプラカードにあったのは、ハングルで「NO安倍」の文字。つまり、デモは“日本を攻撃する”=「反日」ではなく、人権問題を経済で封殺しようとする安倍首相を糾弾するものだったのだ。日本のマスコミは日本の安倍政権の政策に対する韓国市民の運動やデモ、抗議の動きを、なにからなにまで「反日」という言葉で表現するが、それは大きな間違いなのである。
 事実、安倍政権の官製ヘイトに踊らされてしまっている日本の人々とは違い、韓国の人々のほうが何倍も「民主主義」が根付いている。8月には、ソウル市中区が日本製品の不買運動を呼びかける旗を繁華街に掲げたところ、市民から猛批判を受けて撤去するということがあった。区のホームページや区長のFacebookなどに、「韓国が好きで来ている日本人に不快感を与える」「嫌韓感情を植え付けかねない」「不買運動は市民の自発的行為として行うべきで、行政が強要してはならない」「日本人観光客は敵ではない」といった韓国市民のコメントが噴出、“不買運動旗”の掲揚に反対するネット署名が何万も集まったからだ。
 一方の日本でも、Twitterでは日本のユーザーが「#好きです韓国」のタグをつけて韓国旅行中に親切にしてもらったエピソードなどを投稿するという動きがムーブメントになった。そして、これに呼応するように、韓国のユーザーからも「#好きです日本」のタグが生まれ、分断を煽る安倍政治やマスコミを批判し、市民レベルでの友好と平和を希求する声がSNSで広がりをみせた
 芸能人の中にも、そう言った声を上げる人がいた。たとえば、元AKB48の大島麻衣は韓国旅行の感想をこのようにTwitterで報告していた。
〈とりあえずお伝えしたいことがあります。韓国の皆さんは普通に親切で、タクシーの運転手さんも降りるとき、「楽しんでねー!」と声をかけてくださいます日本の方も外国人には優しくしませんか? 韓国だって一緒ですよ!
いろんなことあったけど、ニュースだけ見て、韓国人怖いというのは違うかなと。韓国に来て私は感じてます。〉
 ほかにも、元AKB48の「ぱるる」こと島崎遥香はこのようなツイートをした。
〈お爺ちゃんが子供に席を譲ってあげてるのに優先席に座ってる会社員の人たちは何で平気で座ってられるんだろう〉
〈韓国は素敵だったな~ 健康な若者はみんな立ってた 優先席はガラガラでした 色んな国へ旅して素敵なところを沢山吸収したいな〉
 ところが、ぱるると大島のSNSには日本のネトウヨからの攻撃が殺到し、炎上状態になってしまった
 この2人のケースに限らず、いまの日本では、芸能人やメディアが韓国のカルチャーをちょっとでも紹介したり、日韓友好を呼びかけるだけで、ネトウヨがすぐさま飛んできて炎上攻撃をしかける。実際、『あさイチ』(NHK)が“中高生の韓国ブーム”を特集しただけで炎上したり、『ワイドナショー』(フジテレビ)に出演した女子高生が「女子高生はいま韓国で生きていると言っても過言じゃないぐらい」と発言しただけでネトウヨからの攻撃が殺到してしまうぐらい、異常な社会だ。
 しかし、そうした劣化したネトウヨ連中に屈してはならない。実際、前述の元AKB・大島麻衣の場合、ネトウヨの炎上攻撃にも臆することなく、日本の嫌韓を煽り、日韓対立をエスカレートさせているメディアの問題にもきちんと踏み込んで、しっかりと反論していた。
「戦後最悪の日韓関係」を解消するために必要なのは、空想上の「反日の韓国人」をバッシングすることでは決してない。むしろ、わたしたちが立ち向かうべきは自国にはびこる人種差別と歴史修正主義のほうだろう。(後編に続く) (編集部)