2021年4月30日金曜日

都が東京五輪の観戦に小中学生ら81万人を動員する計画

 「しんぶん赤旗 日曜版」5月2日・9日合併号)に、東京都20年12月都内の各学校に対し、東京オリパラの「観戦の日程案」を送付していたというスクープ記事が載りました。

 それは「スタジアムの最寄駅の利用は禁止で、一駅離れたところで降りてみんな揃って徒歩で向かわなければいけないらしく、熱中症の危険があるとして問題視されましたが、その後の感染拡大で白紙になっていたと見られていました。
 ところがまだ生きているうえに、教師には「具体的な感染対策は何も伝えられていない」ということで、父兄は「わが子が観戦させられると知りがくぜんとしました」と語っています。
 都は「都立学校においては、学校連携観戦当日が授業日である場合は欠席扱いにすることなどは決めたのに、感染対策の方はまだに何も考えていないということです。
 日本ではワクチン接種進まず感染拡大の一途を辿り、インドでは悲惨な感染爆発に陥っているなど、とても五輪を開催できるような状況ではありません。それなのに開催中止の動きはまだないし、五輪会場に国内の観客を入れる予定も変えていないようで、小中学生が五輪至上主義に巻き込まれたのでした。LITERAが取り上げました。

 また日刊ゲンダイは、23日の首相会見に際し書面の質問を送ったところ、28日に出された首相回答で、新型コロナから子どもを守る「決意ゼロ」の姿勢が鮮明になったとして、「菅首相はコロナから子どもを守る決意ゼロ ~ 」という記事を出しました。
 併せて紹介します。
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正気か? 東京都が東京五輪の観戦に小中学生ら81万人を動員計画! 感染拡大最中に各学校に通達、観戦拒否すると「欠席扱い」
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 いよいよ五輪が日本を殺しにかかってきた。昨日28日、東京五輪の5者協議がおこなわれ、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が「へこたれない精神を日本国民が持っていることは、歴史を通して証明されています」「厳しい状況下にあってもそれを乗り越える日本人の力が五輪を可能にする」などと発言したからだ。
 これまでも安倍晋三や菅義偉をはじめとした政治家たちが科学的根拠ゼロの精神論を振りかざして五輪を強行開催しようとしてきたが、ついにIOC会長まで同じような精神論を口にして開催を正当化しようとは……。だが、ワクチン接種も進まず感染が拡大の一途を辿っている日本国内だけではなく、インドの感染爆発を見ても、とてもじゃないが五輪を開催できるような状況にないのは明々白々だ。
 にもかかわらず、5者協議では中止の判断を検討するでもなく「開催」を大前提としたまま。観客数の上限については「6月に判断することで合意」とし、またも判断を先送りにする始末だった。
 その上、メディアは大会組織委員会の橋本聖子会長が5者協議後の記者会見で「無観客という覚悟は持っている」と述べたことを大々的に報じているが、橋本会長はつづけて「状況が許せば、より多くの観客のみなさんに見ていただきたい希望も持っている」と発言。ようするに、実際にはいまだに国内の観客を入れることを諦めていないのだ。
 この状況下で開催を強行しようというだけでなく、観客を入れることに執着する──。いや、そればかりか、さらに絶句するような言語道断の計画が進んでいることまで新たに判明した。
 なんと、東京五輪の競技観戦に、都内の幼稚園児や小・中・高校生など約81万人を動員しよう、というのだ。
 じつは2019年にも、Twitter上で「都からのお達しで、都内の小中学校に通う生徒はオリンピックを盛り上げるために教員の引率でオリンピックの観戦に行くらしい」「夏休み中だけど生徒の参加は義務で、来ないと欠席扱い」「スタジアムの最寄駅の利用は禁止で、一駅離れたところで降りてみんな揃って徒歩で向かわなければいけないらしい」という投稿がなされて大きな話題に。猛暑対策も不十分ななかで熱中症の危険があるとして問題視されていた。
 しかし、ご存知のとおり、昨年3月に新型コロナによって東京五輪の開催延期が決定。感染対策の問題もあり、子どもたちを動員するなどという計画は当然ながら白紙になったに違いない……と思われていた。ところが、そうではなかった。
 この問題をスクープした「しんぶん赤旗 日曜版」5月2日・9日合併号によると、昨年末の2020年12月、東京都から都内の各学校に対し、東京オリパラの「観戦の日程案」が送付されたというのだ。

動員を通達しながら感染対策なし、「競技場への移動は電車やバスを使え」
 昨年の12月といえば、東京都では新規感染者が右肩上がりで増加、年明け早々に緊急事態宣言が発令されたように「第3波」の真っ只中にあった。だが、驚くべきことに、そんななかで東京都は子どもたちの「オリパラ観戦」を決めていた、というわけだ。
 そして、この計画をもとに学校では年間スケジュールを作成。都内のある小学校では、今年4月の入学式に配布された年間予定表の9月の欄に「パラリンピック観戦日」が書き込まれているという。この観戦計画の事実を知った母親は取材に対し、「新型コロナウイルスの感染拡大がこれだけ深刻になっているなか、わが子が観戦させられると知りがくぜんとしました」と語っている。
 だが、もっと愕然とするのは、コロナ禍にあるというのに、東京都から学校に対する通知では、感染対策についてまったく書かれてなかった、ということ。なんと「コロナ対策のコの字もなかった」(小学校教諭)といい、「具体的な感染対策は何も伝えられていない」(中学校教諭)というのである。
 いや、それどころか、この子どもたちの観戦計画は「競技場への移動は電車やバスなど公共交通機関を使え」といった指示まであり、むしろ感染拡大の危険が高まるような内容なのだ。しかも、観戦を拒否した場合は、「都立学校においては、学校連携観戦当日が授業日である場合は、欠席扱い」というから、開いた口が塞がらない。
 こうしたコロナ対策なき子どもたちの動員計画について、組織委は「観客に係る対策などはコロナ調整会議において議論された内容を踏まえて検討する」と回答しているが、これはようするに“いまだに何も考えていない”ということだ。

看護師約500人動員でも「看護師本人に報酬は払わない」とする五輪組織委にTwitterデモが
 子どもたちの安全性の確保を検討することもなく、「動員」ありきで突っ走る組織委と東京都──。この事実ひとつをとっても東京五輪を開催することがいかに危険なことかがよくわかるというものだ。
 実際、昨日の5者協議でバッハ会長は「必要な措置を講じることで日本国民に対するリスクも最小化し、安心してもらえると思っている」などと語ったが、その「必要な措置」の実態は、感染した選手らを受け入れる病院を約30カ所確保するなど、選手らに対する医療提供体制や検査体制などが強化されただけ。むしろ、そうした選手らに対する手厚い体制の構築によって、国民の医療・検査体制が逼迫する可能性が高まってさえいる。
 しかも、だ。組織委は日本看護協会に対して看護師約500人の確保を要請する文書を送っていたことが判明しているが、なんと派遣された看護師に対しては交通費と宿泊費などが支給されるだけで、「看護師本人には報酬は払わない」という。つまり、タダ働きのボランティアだというのだ。
 この看護師約500人確保要請の問題を受け、愛知県医労連などの団体はTwitterデモを展開。「#看護師の五輪派遣は困ります」というハッシュタグがトレンド入りするなど、東京五輪開催に対する反発はどんどん高まっている。国民、いや世界の人々の命と安全を完全無視して東京五輪開催を強行しようとする日本政府や組織委、IOCの暴走は、なんとしてでも止めなくてはならない。(編集部)


菅首相はコロナから子どもを守る決意ゼロ 本紙質問に回答
                          日刊ゲンダイ 2021/04/30
 3度目の緊急事態宣言の決定後に開かれた4月23日の首相会見には、抽選で当たった日刊ゲンダイ記者も参加した。例によって挙手しても当ててもらえなかったが、当日、書面の質問を送ったところ、同28日に首相から回答があった回答からは新型コロナから子どもを守る「決意ゼロ」の姿勢が鮮明になったため、解説する
                      (取材・文=生田修平/日刊ゲンダイ)
【本紙(日刊ゲンダイ)質問】
 変異株の登場で子どもの感染割合が増えています。例えば、変異株が流行の8割を占める大阪府では、第3波(昨年10月10日~今年2月28日)では、10代未満が2.7%、10代が7.3%でしたが、府で確認された変異株陽性者に限ると、それぞれ6.0%、12.9%に跳ね上がっています(14日公表の府の資料)。変異株の登場で子どもの感染割合が増えているとの認識はありますか。
 今月、大阪府豊中市の新田小学校では教職員の陽性判明後、濃厚接触者でない1人の児童の感染が確認され、濃厚接触者に限らず全児童875人を対象にPCR検査を実施したところ、12人の児童の陽性が確認されました。もし、全児童の検査をしていなければ、12人の医療的なケアも遅れ、また12人から感染が拡大していた可能性が十分あります。
 新田小学校のクラスターを教訓に、陽性者が出た学校の全員PCR検査、および、陽性者が出てない場合でも、定期的なPCR検査を行い、「予防」していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 また、感染を警戒し、自主休校を余儀なくされている児童も少なくありません。対面授業とオンライン授業を選択できる環境を整え、推進していく考えはありますか。12歳未満のコロナワクチンはありません。コロナから子どもを守るのは大人の大きな責任だと思います。コロナから子どもを守る菅首相の決意を教えてください。

【首相回答】
 N501Yに変異のある変異株については、感染力が従来株よりも高いことが指摘されていますが、英国で行われた調査では、子供が大人よりも感染しやすいというエビデンスはないとされています。
【解説】首相は英国の事例を出していますが、英国は強いロックダウンと休校を行い、積極的なワクチン接種を実現しています。ドイツやスウェーデンなど子どもの感染率が高い国もあります。

〇なお、変異株に係る報告数が相対的に限られる中で、当初、10歳未満の集団でクラスターが確認されたことから、変異株の年齢別感染者割合が、特に10代未満で従来の傾向と比較して高い値(3月16日時点で15%)となっていましたが、現在は減少してきています(4月26日時点で5%)。
【解説】日刊ゲンダイは、変異株が8割を占める大阪の最新データを示していますが、スルーしています。子ども対策をしない理由になる事例や数値だけを取り出すのはいかがなものか。

〇検査については、感染が疑われる方など検査が必要と判断される方がより迅速に受けられれるようにするとともに、必要に応じてより広く検査が実施されることが重要と考えており、例えば、集団活動が行われる場などにおけるクラスター発生時の検査については、濃厚接触者に限らず、幅広い接触者を対象に検査を行っていただくようお願いしております。
【解説】日刊ゲンダイは、新田小学校の事例を挙げ、学校検査の必要性を問うています。既知の一般論を言われても困ります。

〇また、今般実施する定期的・集中な検査は、重症化しやすい方を対象に、重点的に検査を実施するものであり、重症化リスクが高い高齢者施設等を対象とし、地域の感染状況等に応じて実施を要請しております。なお、子どもについては、変異株であっても、高齢者のように重症化しやすいというエビデンスは現時点ではありません。
【解説】エビデンスが出てからでは手遅れです。熊本市の10歳未満の男性児童は27日から重症治療を受けています。また、子どもがかかれば、同居の高齢者も感染します。PCR検査の1日あたりの能力は20万件なのに、実施は8万件程度。1月に行政検査として認めたプール方式を活用するなど、やる気になれば高齢者施設に加え、学校検査もできるはずです。

〇さらに、学校においては、最大限児童生徒の健やかな学びを保障するため、感染症対策を徹底しつつ対面指導を行うとともに、状況に応じて、オンラインでの学習も活用することが重要であり、国としても必要な支援をしっかり行ってまいりたいと思います。
【解説】オンライン学習の積極的な環境整備の通達が出ているのに、進まないから質問しています。通達の内容を答えられても困ります。

〇子どもたちは「国の宝」であり、また、政府としては、国民の命と暮らしを守ることを最優先として、新型コロナ対策を最重要課題として取り組んでおります。引き続き、感染対策に全力で取り組むとともに、変異株や小児に関するものも含め、新型コロナに関する必要な知見を集積してまいります。
【解説】感染対策全般ではなく、12歳未満のワクチンがないことも踏まえ、子どもの感染問題への決意を聞いています。知見を集積し、「国の宝」に対して、具体的に何をするのかがさっぱりわかりません。「知見が固まらないと動きません」とのメッセージにしか見えません。

五輪で変異株の流入阻止は「不可能」(AERA)

 国内で新型コロナに感染して亡くなった人は、第3波の昨年11月以降で8400人を超え、死者全体の83%を占めます(死者数は29日で10182人)
 高齢者施設での集団感染が第2波までの5倍に増え、医療機関では3倍に増えました。
 これが、「1年経って新型コロナのことは大体分かってきた」と豪語し、「Go Toが新型コロナ感染の原因になっているエビデンスはない」と繰り返し強調した菅政権におけるコロナ対策の実態です。
 この惨状は、政権の無為無策に変異株の優勢化が加わったためで、死者や重症者・感染者が今後さらに拡大することはあっても、とても沈静に向かいそうにはありません。逆に東京五輪がそれを加速すると思われます。
 AERAが、「五輪で変異株の流入阻止は不可能 検疫官が断言陰性証明あっても…』」とする記事を出しました。まさかとは思いますが、政府は「1億火の玉」になれば打ち勝てるとでも思っているのでしょうか。
 冷静に科学的知見に立って対処すべきです。
 併せて日刊ゲンダイの記事「変異株蔓延で重症者数 “第3波超え” 必至 コロナ死も激増へ」を紹介します。
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五輪で変異株の流入阻止は「不可能」 検疫官が断言「陰性証明あっても…」
                        中原一歩 AERA dot. 2021.4.27
 五輪開催の雲行きが怪しくなってきた。4都府県に発令された3度目の緊急事態宣言をはじめ、ワクチン接種の遅れや東京の感染拡大といった課題や懸念も残る。開催できたとしても、変異株の流入の不安が募る。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号から。
      【図を見る】日本のワクチン普及率の想定はコチラ
                *  *  *
 コロナウイルス感染状況が「ステージ4」の日本で、本当にオリンピック、パラリンピックが開催できるのだろうか──
 政府が設置する「新型コロナウイルス感染症対策分科会」が4月15日に導入方針を決めた新指標によると、ステージ4とは「感染爆発段階。爆発的な感染拡大が起き、医療体制の機能不全を避けるための対応が必要な状態」なのだという。
 4月21日現在、ステージ4を示す新指標の「入院率(すべての療養者に占める入院者の割合)25%以下」が、「大阪12%」「兵庫17%」と深刻になっている。同じくステージ4の指標の一つ「1週間の人口10万人あたりの新規感染者数25人以上」を上回っている「大阪」「兵庫」に加え、「東京」も日を追うごとに深刻度を増している。ゴールデンウィーク明けには東京の新規感染者数が2千人を超えるという試算もある。
 4月25日、この状況を受け政府は「東京」「大阪」「兵庫」「京都」に3回目の緊急事態宣言を発令する。期間は5月11日までだという。2回目の緊急事態宣言全面解除から約1カ月。その間、唐突に登場した感が否めないのが「まん延防止等重点措置」。これが変異株のまん延などの感染抑制にどれだけ効果を発揮したのかは全くの未知数。むしろ中途半端な措置が感染拡大を助長したと臆測する声が与党内からも上がる。

■対外アピールで解除
 コロナ対策を所管する厚生労働省のある担当者は頭を抱える。
「結局、分科会に出席の医療専門家は、3月初旬の段階で変異株による第4波の到来に備え、2回目の緊急事態宣言をゴールデンウィーク明けまで継続できないかと主張した。感染症対策の基本である、まん延してから宣言を出すのではなく、まん延させないために宣言という措置を講じる、という認識は西村康稔経済再生相以下、政府関係者全員にあったと思います」
 なのになぜ、緊急事態宣言の継続を検討しなかったのか。2度目の緊急事態宣言が解除されたのが3月21日。その4日後、福島県楢葉町と広野町にある「Jヴィレッジ」のグラウンドから聖火リレーがスタート。しかし、本来であれば記念すべきスタートを祝うセレモニーに菅義偉首相の姿はなかった。当日の首相動静によると、菅首相は参議院予算委員会に出席していた。
 ある政府関係者は、2度目の緊急事態宣言解除の最大の目的は、日本で五輪・パラリンピックが開催できるという対外的アピールだったとこう証言する。
「聖火リレー開始のニュースは世界を駆け巡ります。その時に日本は緊急事態宣言下である、という事実は、五輪・パラリンピックの開催にマイナスにしかならない。何しろ、まだ国際オリンピック委員会(IOC)は、開会式を予定通りの2021年7月23日に行うとは断言していない。首相が現地に行かなかったのも、行けば必ず緊急事態宣言のこと、第4波のことを聞かれる。五輪のシンボルである聖火を前に、そのことに答える画(え)を全世界に配信されるのを、どうしても避けたかったのでは」

■選手団を東京に送るか
 もし、五輪開催時、東京の病床使用率が50%を超えるなど「ステージ4」の状況で、200以上の国と地域から、総勢1万2千人。関係者を含めると5万人とも10万人とも言われる人びとを受け入れることが果たしてできるのか
 3月1日の衆院予算委員会。立憲民主党・辻元清美議員から「東京がステージ4になったら五輪はできるのか?」と問われた菅首相は「IOCや組織委員会、東京都と連携し、安心安全の大会を実現する」と述べた。
 菅政権の最大の誤算は「ワクチン接種の遅れ」だ。そもそも、菅首相は今年1月の段階で「オリパラへの参加は、ワクチン接種を前提としない」と、IOCに伝えた。というのも、この時点では五輪・パラリンピック参加者はおろか、日本国民へのワクチン供給のメドが全く立っていなかったのだ。その後、ようやく2月17日から医療従事者、4月12日になって高齢者への接種が始まったが、16歳以上の全ての国民への接種終了のメドは全く立っていない。この事実がオリンピック開催に、今も暗い影を落とす。
 日本オリンピック委員会(JOC)の職員の一人は、五輪の日本開催ができるか以前に、そもそも海外選手団を日本に送れる状況か否かをIOCは見定めていると話す。
「五輪開催は、国内の感染状況によって決まると思われていますが、実際はワクチン接種もままならない日本に、そもそも選手団を送るか、という参加国側の意思決定の問題もある」

■変異の流入阻止は無理
 一方、海外からの変異ウイルスの流入を防ぐ最前線に立つ検疫官の一人は、政府は欧州や南米など29カ国・地域を変異株流行国に指定している状況で、仮に五輪関係者が入国の前提となる陰性証明を持っていたとしても、それで海外からの変異株の流入を阻止できるかと言えば、それは不可能だと断言する。
「現在、コロナウイルスまん延による入国拒否対象国からも人はやってきます。陰性証明があるから大丈夫と言いますが、その信憑性を担保できない国だってあるでしょう。政府要人は、検疫はノーチェックが慣例です。要人付きのマスコミなど関係者にも、どこまで徹底できるのか疑問です」
         ※AERA 2021年5月3日-10日合併号より抜粋
                  (編集部・中原一歩)

変異株蔓延で重症者数“第3波超え”必至 コロナ死も激増へ
                          日刊ゲンダイ 2021/04/27
 とうとう26日、新型コロナウイルスの死者数が累計1万人を超えてしまった。変異株が猛威を振るい、感染者数のピークアウトが見通せない中、重症者数や死者数は、第3波以上に深刻な事態になりかねない。
                ◇  ◇  ◇
 26日の全国の重症者数は、前日から34人増え、898人と900人に迫る。4月以降、約5日間で100人のペースで増えている。来月早々にも過去最多の1043人を上回る勢いだ。
 第3波の新規感染者数は1月8日の7957人をピークに減少に転じ、重症者数も1月27日の1043人から減っていった。重症者のピークアウトは少し後になる。第1波では20日後、第2波では16日後だった。
 足元の第4波も、重症者を減らすためには早く感染者数をピークアウトさせる必要があるが、前途多難だ。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。

夏まで感染増加傾向
4都府県に発令された17日間の緊急事態宣言は焼け石に水です。感染力の強い英国型の変異株は5月中に全国で主流になると言われています。対策の強弱にもよりますが、感染者数がピークアウトするのは、早くて6月、最悪、8月まで増え続けることもあり得ます」
 感染者数が増えれば、当然、重症者数も増え続ける。今と同じペースで重症者数が増えれば、6月に2000人、8月に3000人を突破。第3波の2~3倍になる計算だ。
 それでなくても、英国型は重症化しやすい。大阪府の資料によると、陽性者に占める重症者の割合(13日時点)は、第3波(昨年10月10日~今年2月28日)では3.2%だったが、変異株陽性者に限ると4.9%に跳ね上がる。また、発症から重症化するまでの日数は、第3波では8日だったが、変異株陽性者では6.5日と短くなる。大阪で重症者数が激増しているのは、流行の8割以上が変異株であることが大きい

万単位の死者が出てもおかしくない
 重症者数が増え、病床が逼迫すれば死者も増える。1日の死者数は1~2月は1日平均70人を超えていたが、その後、減少に転じ、今月上旬には20~30人に減っていた。ところが、特に大阪で急増し、直近では50人を超える日が増えている。
「変異株が大流行している大阪では、重症者も死者も深刻な事態になっています。今後、変異株が全国に蔓延すれば、大阪のような事態が各地で発生しかねません。関西以外はまだ変異株が主流になっていません。直ちに、全国規模の緊急宣言を発令し、変異株の拡散を食い止めるべきでしょう。自然の流れに任せていると、重症者、死者が増え続けることになります」(中原英臣氏)
 第3波の感染が拡大した昨年12月以降の死者は7825人。コロナ死1万人のうち80%近くが、昨年末以降、亡くなっているのだ。この先、万単位の死者が出てもおかしくない。死者があふれてからでは手遅れだ。

30- 自民 国民投票法の修正に応じる方向 CM規制など

 参院憲法審査会は28日、約3年2カ月ぶりとなる実質的な審議を行いました。自民党と維新の会は、大規模災害時などに国会議員の任期延長や内閣の権限強化を可能にする緊急事態条項を新設する改憲についての議論を求めたのに対して、立民の打越さく良氏は条項の創設について「為政者は緊急時と称して権限を最大に振り回す恐れがあり、国民の権利や自由が脅威にさらされる」共産の山添拓氏は「コロナ危機に便乗して改憲論議をあおるのは、究極の火事場泥棒だ」社民党の福島瑞穂氏は「コロナ禍はすさまじい状況で国民は誰も改憲を望んでいない」と、それぞれ反対しました。

 それとは別に、衆院憲法審査会の与野党筆頭幹事28日、国会内で会談し5月6日の採決を訴えたのに対して、立民は政党のスポットCM規制インターネット広告、運動資金に関する規制について「施行後3年をめどに法制上の措置を講じる」との文言を付則に加える修正を要求し、全面的に受け入れない限り採決は認められないと伝えました。
 この問題はいい加減なところで妥協できるものではありません。
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3年ぶり参院憲法審査会、緊急事態条項を巡り論戦 「コロナ便乗」立民・共産など批判
                          東京新聞 2021年4月28日
 参院憲法審査会は28日、約3年2カ月ぶりとなる実質的な審議を行った。自民党と日本維新の会は新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、大規模災害時などに国会議員の任期延長や内閣の権限強化を可能にする緊急事態条項を新設する改憲についての議論を求めた。立憲民主、共産両党などは「緊急事態宣言下の現状を利用した主張だ」と反対した。
 自民の石井正弘氏は、緊急事態条項の創設を盛り込んだ4項目の党改憲案を踏まえ「コロナ禍や今後発生し得る未知の感染症など緊急事態への対応は、憲法に新たな問題を提起している」と述べ、条項に関する議論を呼び掛けた。維新の松沢成文氏も「喫緊の課題として緊急事態での人権制約のあり方を議論する必要がある」と同調した。
 これに対し、立民の打越さく良氏は条項の創設について「為政者は緊急時と称して権限を最大に振り回す恐れがあり、国民の権利や自由が脅威にさらされる」と懸念を示した。共産の山添拓氏は「コロナ危機に便乗して改憲論議をあおるのは、究極の火事場泥棒だ」と断じた。
 社民党の福島瑞穂氏は、コロナ禍で憲法が保障する生存権を脅かされる生活困窮者が多いと説明。「すさまじい状況で国民は誰も改憲を望んでいない」と強調した。(山口哲人)


自民、国民投票法修正応じる方向 CM規制、立民が導入要求
                          東京新聞 2021年4月28日
 憲法改正手続きに関する国民投票法改正案の採決を巡り、衆院憲法審査会の与野党筆頭幹事は28日、国会内で会談した。5月6日の採決を訴える与党に対し、立憲民主党は政党のスポットCM規制について「施行後3年をめどに法制上の措置を講じる」との文言を付則に加える修正を要求。全面的に受け入れない限り、採決は認められないと伝えた。自民党は6日の採決を譲らない構えで、修正を視野に協議に応じる方向で調整に入った。
 立民がまとめた修正案は、CMのほかインターネット広告、運動資金に関する規制に関し、それぞれ検討と立法措置を義務付ける内容。(共同通信)


国民投票法改正案 採決めぐり来月6日にかけて与野党が調整へ
                      NHK NEWS WEB 2021年4月29日
国民投票法の改正案をめぐり立憲民主党は、今後3年をめどに広告規制などの措置を講じるとした修正案が受け入れられれば法案に賛成する方針を示し、与党側が採決を求めている来月6日にかけて与野党の調整が行われる見通しです。
憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案をめぐり、立憲民主党は28日、今後3年をめどに国民投票に伴う広告規制などの措置を講じることを付則に盛り込んだ修正案を与党側に提示しました。
そして、審査会の野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の山花憲法調査会長は、修正案が受け入れられれば法案の採決に応じ、賛成する方針を示しました。

一方、与党側は唐突な修正案の提示であり、内容を精査する必要があるとしていて、自民党幹部は28日夜、記者団に対し「それほど極端な案ではない。まずは党内に諮ってからだ」と述べました。
自民・公明両党はそれぞれ党内で議論し、改正案に賛同している日本維新の会などの意向も確認したうえで、修正案への対応を決める方針で、与党側が採決を求めている来月6日にかけて与野党の調整が行われる見通しです。

2021年4月29日木曜日

つれづれ語り(エネルギー政策の抜本的転換を)(田中弁護士のつれづれ語り)

 28日付『上越よみうり』掲載された田中弁護士のつれづれ語り(エネルギー政策の抜本的転換を)を紹介します。
 10月26日の所信表明演説で菅首相はいきなり「2050年までに脱案素社会を実現する」と格調高く打ち出して驚かせました。
 曰く 「わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現を目指すことをここに宣言する。もはや温暖化への対応は経済成長の制約ではない。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要(要旨)」という具合です。
 官僚が書いた文章なので首相がどれだけ理解して話したのかは疑問です。しかしまだ大いに先のこととだからと気楽に話したのであればそれこそ大間違いです(原発を再稼働する上で好都合だからというのもそうです)。
 しかし喫緊の課題である新型コロナ対策では、いつも「確実に収束させる」かのように実行すべき対策を羅列しながら、その実何もしないことの繰り返しで現在に至っている実態を見るとその疑問は拭えません。

 今回のつれづれ語りの記事でも、限られた紙面の中でエネルギー政策の抜本的転換」の必要性が、広い視野から簡潔に分かりやすく論じられています。
 安倍首相が敢えて2013年を基準にして46%」削減すると謳った理由も明らかにされています。(^^)
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つれづれ語り(エネルギー政策の抜本的転換を)
                   田中弁護士のつれづれ語り 2021年4月28日
         『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」
 2021年4月28日付に掲載された第108回は、「エネルギー政策の抜本的転換を」です。先日開催された気候変動サミットを受け、地球温暖化問題の現状と今後求められる対応策について書きました。

エネルギー政策の抜本的転換を

気候変動サミットの成果
バイデン米政権が主催する気候変動サミットが、先日閉幕した。「二大排出国」である中国とアメリカがこの問題についての危機感を共有し、ともに積極姿勢を示したことは大きな成果と言えるだろう。
また、参加した各国が温室効果ガスの排出削減目標について引き上げを表明するなか、日本も従来のものから大幅に引き上げた目標数値を掲げている。

温暖化による影響
地球温暖化による影響は多岐にわたるが、現時点でもっとも身近にあるのは「気候危機」だろう。フランスで46.1度(2019年)、シベリアで38度(2020年)など、異常な高温が各地で度々計測されている。ドイツのシンクタンク「ジャーマンウオッチ」は、2018年の気象災害でもっとも深刻な被害を受けた国は日本であるとの報告書を発表している。相次ぐ豪雨や台風によって重大な被害がもたらされたことは記憶に新しいが、熱中症による死者数も年間で1000人を超えている。
温暖化がさらに進めば、陸や海の生態系が損なわれ、農業・漁業に深刻な影響が出て、世界的な食糧危機が到来することが懸念されている。また、永久凍土の融解により、人類にとって未知の細菌やウイルスが放出されるおそれもある。感染症を媒介する蚊などの生息域が広がることと相まって、新たなパンデミックが起こる危険も高まる

なぜ1.5度なのか
2015年に採択された「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて「2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をすること」が目標とされた。
気温上昇がこの目標値を超えると、永久凍土の融解により温室効果ガスの一種であるメタンガスが放出されたり、大規模森林火災の頻発により熱帯雨林が焼失するなど、地球温暖化が進展する方向で複合的な連鎖反応が加速度的に発生して、制御不可能な状態に陥るおそれがあると指摘されている。

近づく臨界点
現在の世界の平均気温は、産業革命前との比較で既に1度上昇している。気温上昇を抑えるためには、過去分も含めた累積排出量を一定以下に抑えることが必要である。しかし、気温の上昇幅を「1.5度」以内に留めるための上限累積量を100とした場合、そのうちの92%は既に排出されてしまっている。「臨界点」はすぐそこまで近づいている
目標を達成するためには、温室効果ガスの排出量を削減し続け、2030年までに2010年比で45%減らすとともに、2050年までに実質ゼロにすることがどうしても必要だ。

        ↑ 朝日新聞デジタル2021年3月29日から

主力電源の切り替えが不可欠
実は、日本が新たに掲げた「46%」という削減目標には、ちょっとしたからくりが潜んでいる。基準とされた2013年度は、ここ30年でもっとも温室効果ガスの排出量が多かった年度なのだ。EUのように1990年比で計算すると「39%」程度となり、2010年比で計算すると「41~42%」程度となる。


    全国地球温暖化防止活動推進センターのサイトから

しかし、このように「水増し」した目標ですら、達成することは容易ではない。報道によれば、政府関係者は「(46%というのは個別の対策による効果を)積み上げた数値ではない」と述べているとのことであり、対策の具体化が急務だ。
「電気・熱配分」を経ない純粋なCO2排出量でカウントすると、発電事業者等が行う「エネルギー転換」による排出が全体の約4割を占める。目標達成のためには、主力電源を石炭火力等から再生可能エネルギーへと切り替えることが不可欠だ。政府は今夏にも新たなエネルギー基本計画を策定する方針を表明している。そこで抜本的な見直しがなされることを期待したい。

入管法改定案 人権侵害の拡大は許されない

 日本の人権状況については国連人権委員会や人権理事会などから絶えず是正勧告が出されています。しかし国連で「中世の司法」と揶揄された検察制度の在り方がいい例ですが、10年来そうした勧告が繰り返されてきたにもかかわらず、一向に改善されていません。

 現在衆院に上程されている入管法改定案は、国連人権理事会の作業部会(WG)が、去年、不法滞在者などを長期に拘束する日本の入国管理収容制度が「国際人権法に違反している」ので速やか入管法見直すべきである、との意見書日本政府に送付したことを受けたものです。しかし入管法改定案の実態は決して改正などではなく改悪そのものです。
 しんぶん赤旗が「入管法改定案 人権侵害の拡大は許されない」とする主張を掲げました。
 短い文書ですが入管法改正案の問題点が分かりやすくまとめられています。
 またネット番組「共産党ユーチューバー小池晃」で「少年法改定案・入管法改定案考える」をテーマにして行われた「小池書記局長と山添議員対談 上・中・下」の記事がしんぶん赤旗に載りましたので、そのうち入管法改定案に関する部分を併せて紹介します。
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      (4月22日)入管難民法改正案 人権基準に達していない
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主張 入管法改定案 人権侵害の拡大は許されない
                        しんぶん赤旗 2021年4月28日
 菅義偉政権が「出入国管理及び難民認定法」改定案を今国会で成立させようとしています。同案は、非人道的と批判される入管行政を改めるのでなく、送還拒否への刑事罰の新設難民申請者を強制送還する仕組みの創設など、在留資格がない外国人に早期帰国を迫るものです。国際社会の要請にこたえず、逆に人権侵害を拡大する改定案は撤回しかありません。

国内外の批判にこたえず
 日本政府は、技能実習、留学生アルバイト、特定技能などの資格を設け、外国人労働者を「安価な労働力」として受け入れる政策を拡大してきました。それは人材ビジネスと搾取の構造が結びつき、人権侵害の温床となってきました。奴隷的労働や暴力、暴言に耐えかねてやむを得ず逃げ出した外国人は、「失踪者」として扱われ、在留資格を取り消されます。
 日本の入管行政は、在留資格のない外国人は全て収容し送還するという「全件収容主義」をとっています。裁判所の審査を経ず、無期限で長期収容する非人道的な扱いです。国際法に反するとして、国連人権理事会などから繰り返し指摘されてきました。
 ところが、改定案が収容に代わる仕組みとして新設する監理措置制度は、長期収容を解消するものではありません。必要性は入管庁が判断し、裁判所の審査はありません。長期収容は温存されます。
 監理措置は、親族や支援者のもとで暮らすものですが、就労は認められません。入管庁が選定する「監理人」に、「許可条件」の順守状況を報告させます。本来外国人の生活を支援する人々や弁護士に監視役をさせ、告発を義務付けることは、外国人保護と根本的に矛盾します
 送還拒否、仮放免中の逃亡、監理措置違反などに刑事罰を科すことは、罰による威嚇で送還を促進する、不条理極まりないものです。
 日本の難民行政は、審査に長期間を要する上、「難民」定義を「民主化運動のリーダー格」などと狭く捉えすぎることが問題になっています。2019年の認定率は0・4%です。難民に準じて外国人を保護する「補完的保護対象者」を新設するとしますが、そのガイドライン策定は入管の裁量任せです。根本解決につながりません。
 さらに改定案は、難民認定手続き中は一律に送還が停止される現在の制度に例外を設け、「難民認定を2度却下された者」などは、難民申請中であっても送還を可能とします。迫害を受けるおそれのある国への追放・送還を禁じる国際法上の原則にも反し、国際水準とかけ離れたものです。

死亡事件の真相究明を
 改定案の問題が明らかになる中、名古屋入国管理局でのスリランカ人女性死亡事件(3月)が起こりました。借金して留学生として来日し、学費が払えず退学し在留資格を失いました。恋人のDVから逃れるため警察に保護を求めたところ、入管法違反で逮捕、入管施設に収容されました。食事が満足にとれず、点滴も受けられず死亡しました。病状悪化を放置し、死に至らしめた疑いが濃厚です。
 人権保障の立場にたたず、外国人個人の問題に責任転嫁し強権的に排斥する日本の入管難民行政のゆがみをあらわにした事件です。この事件の真相解明なくして、改定案の審議など許されません


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小池書記局長と山添議員対談(中)
少年法改定案・入管法改定案考える 人間が見捨てられている
                        しんぶん赤旗 2021年4月27日
 もう一つの重要法案が入管法改定案です。同法案について、ネット番組「ユーチューバー小池晃」で日本共産党の小池晃書記局長と山添拓参院議員が詳しく解説し、反響を呼んでいます。

非人道的扱い
 外国人が日本に滞在するには「在留資格」が必要ですが、迫害から逃れてきたり、日本にすでに家族がいるなど在留資格を持たずに日本にとどまっている外国人がいます。山添氏は、日本の出入国管理庁が在留資格のないすべての外国人を入管収容施設に収容する「全件収容主義」をとっている問題を指摘しました。
 山添 入管収容施設は本来、在留資格がない外国人を本国に送還するまでの待機施設。一時的な滞在施設の位置づけでしたが、今では長期間、半年や1年、長い人では10年を超えて収容される状況があります。
 小池 退去強制が出た人の9割は帰国しているんですね。だから、いま収容されている方は、本国に帰れば命の危険にさらされてしまう。あるいは、日本に家族がいるなど、本当に帰るに帰れない人たちが残っているということなんですね。
 とりわけ、入管施設での被収容者への非人道的な取り扱いが問題となっています。東京入管では今年2月、新型コロナウイルスのクラスターが発生。3月には、名古屋の入管施設で、スリランカ人女性が体調不良を訴えても満足な治療を受けられず死亡する事件も発生しています。
 山添 名古屋入管で亡くなられた女性は英語教師の夢をもって来日したんですが、親からの仕送りがなくなって学費が払えなくなってオーバーステイとなったんですね。しかも交際男性からDV被害を受けており、その被害を警察に訴えたら、在留資格がないことが発覚し、収容された。本来保護すべき対象でした。
 小池 この女性は、点滴をしてほしいと何度も言っていたのに、しなかった。本当に、日本の入管行政の人権蹂躙(じゅうりん)ですよね。外国人だというだけで、人間が見捨てられているんですよ。

刑事罰で威嚇
 では、今国会で審議されている入管法改定案では、現行の入管行政の問題点を改善するものになっているでしょうか―。番組では、改定案に盛り込まれた四つの問題点が焦点となりました。
 一つは、退去強制手続きの罰則を強化し、刑事罰で威嚇して送還を強制しようとする点です。
 山添 本国に帰れない事情がある人に、さらに施設で収容されるか、それを拒めば刑事罰だという制度にしようとしている。
 小池 そうすると、収容を拒めば刑事罰で刑務所に入れられる。刑務所を出ると収容される、また拒むと刑務所と、無限に入管施設と刑務所を繰り返し入れられ続ける。ひどい話ですね。

申請の権利制限
 二つ目は、難民認定申請の権利を大幅に制限しようとしていることです。日本の難民認定率は0・4%と異常に低いにもかかわらず、その問題には何ら手をつけていません。
 山添 日本の難民認定の在り方が根本的に問われているのに、そこは改めずに、難民申請を2回やってダメだったら、3回目はもう難民として審査しないという仕組みを入れようとしている
 小池 なぜ3回なんですか。まったく根拠ないですよね。
 山添 1回できちんと審査しているなら、まだいいですよ。でも、その人の本国の事情やどういう迫害を受ける可能性があるか十分な調査をしていない。
 小池 現地で、反政府運動のリーダーをやっていた人でないと、日本の難民認定は受けられないと聞いたけれど実態はどうなのですか。
 山添 実態としてはリーダー格でなければ、認められません。だいたい、難民申請をしている人の送還を止めることはノン・ルフールマン原則という国際ルールです。迫害を受ける恐れのある地域へ難民を送り返すのは禁じられています。(改定案は)それをかなぐり捨てるかのようなひどい話です。  (つづく)

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小池書記局長と山添議員対談(下)
少年法改定案・入管法改定案考える 難民行政解決へ提案 厳しい要件に
                        しんぶん赤旗 2021年4月28日
 三つ目は、現在も厳しく運用されている在留特別許可にさらに、厳しい要件が課されている点です。
 山添 かつては、オーバーステイになったからといって、拘束するのではなく黙認してきた。ところが、テロ対策の名目で「不法滞在」は犯罪と位置付けてしまった。しかし、米国などでは「不法滞在」という言葉は使わなくなった。代わりに「アン・ドキュメント(書類がない)」と位置づけを変えています。
 小池 子ども権利条約とのかかわりでも問題ですよね。
 山添 収容する際に、親子を引き離す。あるいは子どもだけ日本に残して親だけ送還する。家族を引き離すということを平気でやるというのはおかしいですよ。
 小池 そのこと自体、在留資格のない外国人を人間としてみていないということになりますよね。

弁護士を監視役
 最後に、改定案に盛り込まれた監理措置制度の問題です。
 山添 今は、収容されている人が一時的に収容を解かれる仮放免という仕組みがあります。それを監理措置にして、新たに監理人を置いて、身元保証の役割を担わせる
 小池 監理人は、弁護士や支援団体の人が想定されていると思いますが、政府に報告義務を課される。ある意味、監視役を支援団体の人や弁護士にやらせるというのはどうなのか。

政府案廃案に
 では、入管・難民行政の問題をどう解決するのか―。日本共産党が立憲民主党などと共同で参院に提出した野党案の中身が議論になりました。
 山添 2月18日、政府案が閣議決定される前に(野党案を)参院に出しました。例えば、難民について今入管がやっているものを、独立の機関を設けて行う。そもそも、在留資格を取り締まる入管と難民認定をする入管が同じことが変なんですよ。
 小池 警察と裁判所が一体になっているようなものですよね。
 山添 在留特別許可は、子どもの権利条約を積極的に考慮するというものも盛り込んでいます。家族がともに生活する自由というものを在留資格の考慮要素として明記しています。
 小池 収容するかどうかは裁判官がするというのもありますね。
 山添 ふつうは、逮捕・勾留は裁判所が判断するわけですね。身体拘束は最も強い私権制限ですから。いろいろな事情も考慮せず、とにかく拘束・収容するのは人権侵害だと国際社会からも指摘されていますので、当然、いれようと。
 小池 そして収容期間にも上限を設けようと
 山添 今は無期限ですが、それを最大6カ月としています。そもそも収容しないというのが前提ですよね。
 小池 世界のスタンダードの仕組みを日本につくろうというのが野党の提案ですね。今の入管行政の問題、野党の提案、国会で徹底的に議論する機会にしたいですね。
 山添 政府の改定案は断固廃案に追い込むためにがんばります。 (おわり)