2019年7月31日水曜日

れいわリベラリズムVSリバータリアニズム

 参院選で「れいわ新選組」山本太郎氏が訴え聴衆を感動させた政策
1.消費税廃止へ
2.最低賃金全国一律1500円政府補償
3.奨学金徳政令
4.一次産業戸別所得補償
5.最低保障年金確立
は、植草一秀氏が代表を務める「オールジャパン平和と共生」が昨年4月に提示した日本の経済政策刷新の提案をそのまま受け入れたもので、この政策が、参院選が終わったいま日本で大きな広がりを見せています(植草氏は「れいわリベラリズム」と呼んでいます)。それは政策の正しさに山本太郎氏の弁舌の熱さ(熱情)が重なってもたらされたものといえます。
 
 国家の最大の役割は、すべての主権者の最低生活を保障することであり、「最低賃金全国一律1500」、「最低補償年金の確立」がその具体的施策です。「担税能力に応じた課税」の原則に反し、「所得がゼロの人からも税金を巻き上げ生存権を破壊する税制を止める「消費税廃止」も勿論その発想に基いています。
 その意味でも、基本的に消費税制度を肯定し、税率のアップを肯定するマスコミ人や「学識」者たちが多少のことを言ったとしても、それは「リベラルを騙るもの」の誹りを免れません。
 
 2001年に登場した小泉・竹中(平蔵)政権が行った新自由主義、市場原理主義政策は、経済的弱者は自己責任であるとして所得の再分配で救済することを否定するもので、「リバータリアニズム」と呼ばれるものです。それは経済活動が必然的にもたらす弱肉強食を是認するものです。
 
 政治経済学者の植草一秀氏が30日、「れいわリベラリズムVSリバータリアニズム」と題する記事を発表しました。
 29日に発表した記事「『れいわ』政策土台としての『平和と共生』政策提言」を併せて紹介します。
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れいわリベラリズムVSリバータリアニズム
植草一秀の「知られざる真実」 2019年7月30日
「オールジャパン平和と共生」が昨年4月に提示した日本の経済政策刷新の提案。
私たちは
1.消費税廃止へ
2.最低賃金全国一律1500円政府補償
3.奨学金徳政令
4.一次産業戸別所得補償
5.最低保障年金確立
この五つの政策を提言した。
 ⇒ 2018年4月20日付ブログ記事「さようなら!アベノミクスさようなら!安倍政権」  https://bit.ly/2OdrDYW 
 ⇒ メルマガ記事「「分かち合う経済政策」=「シェアノミクス」提唱」
     https://foomii.com/00050 
 
この政策が、いま日本で大きな広がりを示している。
課税の基本に「能力に応じた課税」を置くべきである。これが財政の所得再分配機能を発揮させる税制になる
国家の最大の役割は、すべての主権者の最低生活を保障することである。その最低保障ラインを拡充する施策が最低賃金全国一律1500円の提案だ。
全国一律にすると、地方における最低賃金が輝きを放つ。地方経済の発展を実現できる。
 
拙著『25%の人が政治を私物化する国-消費税ゼロと最低賃金1500円で日本が変わる-』(詩想社新書)https://amzn.to/2WUhbEK に政治哲学について記述した。
「オールジャパン平和と共生」の提案は「リベラリズム」の政治哲学に基づく。
人が生まれながらにして、どのような境遇を得るのかは定かでない。
誰しも厳しい境遇に生を受ける可能性はある。その厳しい境遇のために不幸を背負わされることは理不尽である。
これを国家の責任において是正しようとするのがリベラリズムの発想だ。
これを国家が実現するには資金が必要だ。その資金は、社会のなかにおける、相対的に経済力の強い者に負担してもらうしかない。
それ以外に、すべての主権者に最低生活を保障する方法はない。
ここから発生するのが「能力に応じた課税」の考え方だ。
 
基本的人権には歴史的な発展の系譜がある。
18世紀的基本権と呼ばれる自由権、19世紀的基本権と呼ばれる参政権、そして、20世紀的基本権と呼ばれる生存権である。
リベラリズムは生存権を保障することを重視し、これを実現することを目指す政治哲学である
 
この対極にある考え方が、「リバータリアニズム」である。「リバータリアニズム」は経済活動への政府の介入を非とする考え方だ。「リベラリズム」は国家の責任において、すべての主権者に最低保障を行う。これに対して「リバータリアニズム」は、経済活動の結果について、国家は介入するべきではないとの立場を取る
相対的に経済力の強い経済主体に高率課税を行い、その課税によって獲得した資金で相対的な経済弱者に給付を行う施策を否定する。
自然界の基本法則は「弱肉強食」であり、その自然の摂理に対して国家が介入して資源配分を変えることを非とする。
 
2001年に日本で小泉純一郎政権が誕生した。これ以降、日本においても政府の所得再分配政策、最低保障引き上げ政策を否定する風潮が強まってきた
新自由主義、市場原理主義などの言葉が用いられてきたが、これを政治哲学の言葉に置き換えるなら「リバータリアニズム」ということになる。
「オールジャパン平和と共生」は「リベラリズム」の哲学に基づいて五つの政策を提示した。国家がすべての主権者に保障する最低ラインを引き上げることを提唱したのである。
この提案を良い意味で丸呑みしたのが「れいわ新選組」である。
 
その一方で、日本においても、政府による最低保障ラインの引き上げに反対する「リバータリアニズム」の主張が強まってきた。
最終的には、日本の主権者がどちらの思想、哲学を選択するのかという問題になる。
私たちは主権者が連帯して「リベラリズム」経済政策を選択するべきであると考えている。
(以下は有料ブログのため非公開)
 
 
「れいわ」政策土台としての「平和と共生」政策提言
植草一秀の「知られざる真実」 2019年7月29日
「オールジャパン平和と共生」が昨年4月に開いた学習会で、私は新しい経済政策の提案を発表した。「分かち合う経済政策」の提案だ。
  ⇒ 2018年4月20日付ブログ記事「さようなら!アベノミクスさようなら!安倍政権」  https://bit.ly/2OdrDYW
  ⇒ メルマガ記事「「分かち合う経済政策」=「シェアノミクス」提唱」
        https://foomii.com/00050
消費税廃止へ
最低賃金全国一律1500円政府補償
奨学金徳政令
一次産業戸別所得補償
最低保障年金確立
 
この五つの政策を提言した。次の国政選挙に向けて、この政策の旗の下に主権者が結集することを呼びかけた。しかし、既存の政党で、日本政治刷新を牽引する存在が見当たらない。
主権者が主導する新党の結成が必要不可欠であるとの判断を示した。
私たちのこの声に呼応して創設されたのが「れいわ新選組」である。私たちの提案を、ほぼそのまま丸呑みしてくれた
 
安倍内閣は本年10月に消費税率を現行の8%から10%に引き上げる。
その影響が深刻に広がることは間違いない。
増税規模は一部品目の据え置き税率、たばこ増税などの影響を含めて、平年度ベース5.2兆円である。
日本では単年度の増税規模を数値として用いるが適正でない。10年単位の影響で考察するべきだ。10年単位では52兆円増税ということになる。巨大増税なのだ。
安倍内閣は景気対策を講じるとしているが、その規模はわずかに2兆円強である。
10年単位で考えれば、景気対策分を差し引いても50兆円規模の増税になる。
この増税が日本経済に深刻な影響を与えぬわけがない。
 
さらに重大な問題がある。分配の格差が益々拡大することだ。
2013年度から2018年度までの6年間に、企業収益はほぼ倍増した。大企業は史上空前の利益を計上している。内部留保は450兆円規模に膨れ上がっている
その一方で、労働者一人当たりの実質賃金は、同じ期間に、約5%も減った
 
大資本だけが栄えて、労働者は下流へ下流へと押し流されている。
民間給与実態調査を見ると、労働者の半分以上が年収400万円以下の階層に含まれる。
所得税の場合、夫婦子二人で片働きの場合、年収約350万円までは所得税負担が生じない。
収入から生存に必要な経費を差し引いた金額が課税対象の所得になるが、上記ケースでは、年収350万円が課税所得ゼロの水準になるからだ。
 
日本国憲法は「生存権」を基本的人権として保障しており、このために、所得税制度においては、一定水準の収入までを所得税非課税の対象としている。
ところが、消費税はまったく違う。所得の少ない人だけでなく、所得がゼロの人からも税金を巻き上げる。収入金額に対する税額の負担率は、所得の少ない人ほど大きくなる
所得の少ない人は収入のすべてを消費に回さざるを得ない。
そうなると、収入金額全体に消費税率10%の負担がかかることになる。まさに、生存権を破壊する税制なのだ。その負担は、給料1ヵ月分を超える。
 
所得が少ないから、所得税負担が免除されているのに、消費税の場合には、1ヵ月分の給料全額以上のお金が税金で巻き上げられる。この消費税の残酷さを認識しなければならない
日本財政の抜本的な改革を進めて、消費税減税、消費税廃止を実現しなければならない。
そのための、主権者主導の運動が本格始動することになる。
(以下は有料ブログのため非公開)

日韓関係悪化を識者が憂慮 輸出規制撤回に向けて声明と署名活動

 日韓関係の悪化を憂慮する学者、弁護士、市民運動代表ら80人がこのほど、安倍政権に韓国への輸出規制の撤回などを求める声明「韓国は『敵』なのか」を発表し、28日までに1627人が署名しました。
 
 声明は本文だけで3600語を超える長文ですが、しんぶん赤旗の記事はその内容を要約して伝えています。
 隣国をやみくもに敵視し蔑視することは本来あってはならないことですが、安倍首相とその応援団は何故か長くそれに徹して来ました。その挙句が今回の輸出規制です。
 
「日韓パートナーシップ宣言」(98年)が開いた「日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開」していることにも鑑み、日本政府は韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始すべきです。
 
 しんぶん赤旗の記事と声明文を紹介します。
 ネット署名は下記のURLで行われています。
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日韓関係悪化 識者が憂慮 規制撤回へ署名行動
 しんぶん赤旗 2019年7月30日
 最近の日韓関係の悪化を憂慮する元政府代表や学者、弁護士、市民運動代表ら77人はこのほど、安倍政権に韓国への輸出規制の撤回などを求める声明「韓国は『敵』なのか」を発表し28日までに1627人が署名していることがわかりました。第1次の締め切りは8月15日です。呼びかけ人は美根慶樹・元日朝国交正常化交渉日本政府代表、内海愛子・恵泉女学園大学名誉教授らです。
 
 声明は最近の日韓関係について「日韓政府の双方に問題がある」とした上で「私たちに責任のある日本政府の問題を指摘」すると表明。日本がかつて韓国を「侵略し、植民地支配をした歴史」があり、「特別慎重な配慮が必要」なのにもかかわらず、G20などで韓国を「相手にせず」という姿勢を示した安倍晋三首相の今回の輸出規制は「まるで韓国を『敵』のように扱う措置」だと批判しました。
 また、日本の措置の出発点には元徴用工問題があるが、日本政府は一貫して個人による補償請求の権利を否定しておらず、日韓請求権協定(1965年締結)をたてに「安倍政権が常套(じょうとう)句のように繰り返す『解決済み』では決してない」と指摘。「日韓パートナーシップ宣言」(98年)が開いた「日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開」しているとして、日本政府に対し「韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始すること」を求めました
 
 
     <声明> 韓国は「敵」なのか
はじめに  
 私たちは、7月初め、日本政府が表明した、韓国に対する輸出規制に反対し、即時撤回を求めるものです。半導体製造が韓国経済にとってもつ重要な意義を思えば、この措置が韓国経済に致命的な打撃をあたえかねない、敵対的な行為であることは明らかです。 
 日本政府の措置が出された当初は、昨年の「徴用工」判決とその後の韓国政府の対応に対する報復であると受けとめられましたが、自由貿易の原則に反するとの批判が高まると、日本政府は安全保障上の信頼性が失われたためにとられた措置であると説明しはじめました。これに対して文在寅大統領は7月15日に、「南北関係の発展と朝鮮半島の平和のために力を尽くす韓国政府に対する重大な挑戦だ」とはげしく反論するにいたりました。 
 
1、韓国は「敵」なのか 
 国と国のあいだには衝突もおこるし、不利益措置がとられることがあります。しかし、相手国のとった措置が気にいらないからといって、対抗措置をとれば、相手を刺激して、逆効果になる場合があります。 
 特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです。日本の圧力に「屈した」と見られれば、いかなる政権も、国民から見放されます。日本の報復が韓国の報復を招けば、その連鎖反応の結果は、泥沼です。両国のナショナリズムは、しばらくの間、収拾がつかなくなる可能性があります。このような事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません。 
 
 すでに多くの指摘があるように、このたびの措置自身、日本が多大な恩恵を受けてきた自由貿易の原則に反するものですし、日本経済にも大きなマイナスになるものです。しかも来年は「東京オリンピック・パラリンピック」の年です。普通なら、周辺でごたごたが起きてほしくないと考えるのが主催国でしょう。それが、主催国自身が周辺と摩擦を引き起こしてどうするのでしょうか。 
 今回の措置で、両国関係はこじれるだけで、日本にとって得るものはまったくないという結果に終わるでしょう。問題の解決には、感情的でなく、冷静で合理的な対話以外にありえないのです。 
 
 思い出されるのは、安倍晋三総理が、本年初めの国会での施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善について述べ、北朝鮮についてさえ「相互不信の殻を破り」、「私自身が金正恩委員長と直接向き合い」、「あらゆるチャンスを逃すことなく」、交渉をしたいと述べた一方で、日韓関係については一言もふれなかったことです。まるで韓国を「相手にせず」という姿勢を誇示したようにみえました。そして、六月末の大阪でのG20の会議のさいには、出席した各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかったのです。その上でのこのたびの措置なのです。 
 これでは、まるで韓国を「敵」のように扱う措置になっていますが、とんでもない誤りです。韓国は、自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄をともに築いていく大切な隣人です。 
 
2、日韓は未来志向のパートナー 
 1998年10月、金大中韓国大統領が来日しました。金大中大統領は、日本の国会で演説し、戦後の日本は議会制民主主義のもと、経済成長を遂げ、アジアへの援助国となると同時に、平和主義を守ってきた、と評価しました。そして日本国民には過去を直視し、歴史をおそれる勇気を、また韓国国民には、戦後大きく変わった日本の姿を評価し、ともに未来に向けて歩もうと呼びかけたのです。日本の国会議員たちも、大きく拍手してこの呼びかけに答えました。軍事政権に何度も殺されそうになった金大中氏を、戦後民主主義の中で育った日本の政治家や市民たちが支援し、救ったということもありました。また日本の多くの人々も、金大中氏が軍事政権の弾圧の中で信念を守り、民主主義のために戦ったことを知っていました。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領の「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となったのです。 
 金大中大統領は、なお韓国の国民には日本に対する疑念と不信が強いけれど、日本が戦前の歴史を直視し、また戦後の憲法と民主主義を守って進むならば、ともに未来に向かうことは出来るだろうと大いなる希望を述べたのでした。そして、それまで韓国で禁じられていた日本の大衆文化の開放に踏み切ったのです。 
 
3、日韓条約、請求権協定で問題は解決していない 
 元徴用工問題について、安倍政権は国際法、国際約束に違反していると繰り返し、述べています。それは1965年に締結された「日韓基本条約」とそれに基づいた「日韓請求権協定」のことを指しています。 
 日韓基本条約の第2条は、1910年の韓国併合条約の無効を宣言していますが、韓国と日本ではこの第2条の解釈が対立したままです。というのは、韓国側の解釈では、併合条約は本来無効であり、日本の植民地支配は韓国の同意に基づくものでなく、韓国民に強制されたものであったとなりますが、日本側の解釈では、併合条約は1948年の大韓民国の建国時までは有効であり、両国の合意により日本は韓国を併合したので、植民地支配に対する反省も、謝罪もおこなうつもりがない、ということになっているのです。 
 
 しかし、それから半世紀以上が経ち、日本政府も国民も、変わっていきました。植民地支配が韓国人に損害と苦痛をあたえたことを認め、それは謝罪し、反省すべきことだというのが、大方の日本国民の共通認識になりました。1995年の村山富市首相談話の歴史認識は、1998年の「日韓パートナーシップ宣言」、そして2002年の「日朝平壌宣言」の基礎になっています。この認識を基礎にして、2010年、韓国併合100年の菅直人首相談話をもとりいれて、日本政府が韓国と向き合うならば、現れてくる問題を協力して解決していくことができるはずです。 
 
 問題になっている元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業です。まずは被告企業が判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまいました。元徴用工問題と同様な中国人強制連行・強制労働問題では1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年花岡(鹿島建設和解)、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解がなされていますが、その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟みませんでした。 
 
 日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在していますから、尊重されるべきです。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」では決してないのです。日本政府自身、一貫して個人による補償請求の権利を否定していません。この半世紀の間、サハリンの残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、植民地支配に起因する個人の被害に対して、日本政府は、工夫しながら補償に代わる措置も行ってきましたし、安倍政権が朴槿恵政権と2015年末に合意した「日韓慰安婦合意」(この評価は様々であり、また、すでに財団は解散していますが)も、韓国側の財団を通じて、日本政府が被害者個人に国費10億円を差し出した事例に他なりません。一方、韓国も、盧武鉉政権時代、植民地被害者に対し法律を制定して個人への補償を行っています。こうした事例を踏まえるならば、議論し、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だと思います。 
 現在、仲裁委員会の設置をめぐって「対立」していますが、日韓請求権協定第3条にいう仲裁委員会による解決に最初に着目したのは、2011年8月の「慰安婦問題」に関する韓国憲法裁判所の決定でした。その時は、日本側は仲裁委員会の設置に応じていません。こうした経緯を踏まえて、解決のための誠実な対応が求められています。 
 
おわりに 
 私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです。 
 いまや1998年の「日韓パートナーシップ宣言」がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。BTS(防弾少年団)など、K-POPの人気は圧倒的です。テレビの取材にこたえて、「(日本の)女子高生は韓国で生きている」と公然と語っています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。 
 安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか。 
 2019年7月25日 
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呼びかけ人 和田春樹(東京大学名誉教授)他 2019年7月29日現在78名
(氏名肩書省略)

31- ホルムズ海峡「有志連合」をどう考えるか(小林節・教授)

 日本の「有志連合」参加の問題を法体系的にどう考えるべきかについて、小林節教授が日刊ゲンダイ紙上で述べていますので紹介します。
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ここがおかしい 小林節が斬る!
米国が参加要請 ホルムズ海峡「有志連合」をどう考えるか
日刊ゲンダイ 2019/07/30
 参院選挙前にトランプ米大統領が「自国のタンカーは自国で防衛すべきだ」と発言し、米国は、中東ホルムズ海峡等の「航行の自由と安全」を確保するための「有志連合(軍)」に日本も参加することを求めている。
 確かに、日本の会社が運航し日本向けの原油を運んでいる船舶が公海上で攻撃を受けた場合に日本がそれを防御すべきは当然で、それを他国に頼るようでは独立主権国家とは言えない。
 しかし、日本には周知のように主権者国民の歴史的な最高意思としての憲法上の制約があり、その結果、国家機関としてできることと、できないことがある
 
 まず、第2次世界大戦の反省として、9条2項が「軍隊」の保持と「交戦権」の行使を禁じており、その結果として、わが国は海外へ国際法上の「戦争」をしに行くことはできない
 しかし、わが国にも、独立主権国家が当然に保有している「行政権」(65条)の一環としての「警察権」があり、わが国の領域(領土、領海、領空)とそれに接続する公海と公空において、国民の生命と財産に対する危険を除去する責任がある。
 その手続きを定めた規定が自衛隊法82条の「海上警備行動」である。
 これは、相手方の武装が海上保安庁(海の警察)の武器を著しく超えており、性質上、海上保安庁では対応が困難で、自衛隊(重装備の第二警察)が行くしかない場合である。
 もちろん、それにも憲法に由来する制約があり、それは、「法の支配」を尊重する「法治国家」として、順守するしかない。
 
 まず、自衛隊は、日本に関係する船舶しか護衛できない。また、他国の領域内で武力行使はできない。もちろん、他に手段がない場合に限り、その事態に対応して合理的に必要と判断される限度内でしか武器を使用できない
 
 だから、米国が期待するように同盟軍として無条件に参戦することはできない。しかし、この非常に困難な作業は、文明国日本の優秀な自衛隊だからこそできる任務で、それを守ってあげることが政治の任務であろう。
 
 小林節   慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 

2019年7月30日火曜日

米軍 限定核使用の新指針 放射線下の地上戦も言及

 人類はついに原子爆弾・水素爆弾という究極の兵器を開発しましたが、その破壊力や放射能汚染は余りにも甚大なので、実際に使用することはあり得ず、保持すること自体が「核抑止力」になるという位置づけに留まりました。あまりにも当然のことです。
 
 しかし米国はその後も一貫して「戦術核兵器」と称する広島型原爆の数分の1程度の核爆弾の開発を続けてきました。それが通常兵器の延長線上にあるものとして、戦争で実際に使うことを意図したものであることは言うまでもありません。
 東京新聞によれば米軍は先月、戦闘中の限定的な核兵器使用を想定した新指針をまとめていたということです。
 
 米国は南北戦争以後一度も自国内に戦火が及んだことがなく、国民の多くは他国への戦火や空爆には概して冷淡(敵国を空爆をするたびに大統領の支持率が跳ね上がる)で、いまでも広島・長崎原爆投下が正当であるとする国民が過半数を占めています。そのこととの関係は分かりませんが「悪魔的な発想」です。
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米軍、限定核使用の新指針 放射線下の地上戦も言及
東京新聞 2019年7月29日
 米軍が先月、戦闘中の限定的な核兵器使用を想定した新指針をまとめていたことが分かった。核爆発後の放射線環境下で地上戦をどう継続するかなどの課題にも言及している。オバマ前政権は核の先制不使用も一時検討するなど「核の役割低減」を目指したが、逆行する内容。核弾頭の小型化を進めるトランプ政権下で、通常戦力の延長線上に核戦力を位置付ける傾向もうかがえる。
 
 米シンクタンク全米科学者連盟の核専門家ハンス・クリステンセン氏は、広島型原爆の三分の一程度となる爆発力数キロトンの「小型核」開発の動きを念頭に「『より使いやすい核』の導入に合わせて限定的な核戦闘の議論を活発化させており、心配な動きだ」と指摘。核使用のハードル低下を懸念する声が複数の米専門家から上がっている。
 
 新指針は米統合参謀本部が六月十一日付でまとめた内部文書「核作戦」。
 ホームページで一度公開した後、非公開にした。公開されたものを全米科学者連盟が保存し開示している。
 
 文書は「敵対者は自身の利益を守るため核への依存を深めている」とし、ロシアや中国の核戦力増強に注意を促した上で「米核戦力は『力による平和』という米国の国家目標に資する」と指摘
 さらに「核使用やその脅しは地上作戦に重大な影響を与え得る。核使用は戦闘領域を根本から変え、司令官が紛争でどう勝利するかを左右する状況をつくり出す」とし、限定核使用の効用を力説している。
 また核戦力を通常兵力と共同運用する重要性に触れ「陸上部隊や特殊作戦部隊は核爆発後の放射線環境下でも、全ての作戦を遂行する能力を保持しなければならない」とし、核戦争下での部隊能力の強化を訴えている。
 
 統合参謀本部は取材に「文書作成は定期的な指針策定の一環で政策変更ではない。あいまいな点がないよう見直し、再公表したい」としている。
 米国は冷戦後、抑止力を核の主要な役割とみなし、オバマ前大統領は三年前の広島訪問後、相手の核攻撃まで核を使わない先制不使用を検討した。

玉城デニー知事がフジロックに出演 辺野古反対を歌に乗せ

 新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催された野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」の最終日の28日、主催者側に招かれ玉城デニー沖縄県知事が出演し、名護市辺野古への米軍基地移転を巡る問題を訴えたほか、自身の演奏も披露しました。
 
 知事は歌に先立つトークコーナーで日米地位協定に関して「沖縄と米国の協定ではない。みなさん全員に関わっている問題だ」と訴えました。
 そして、社会問題を扱う企画「アトミック・カフェ」に出演し、ギターを弾きながら、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「雨を見たかい」とボブ・ディランの「見張り塔からずっと」を熱唱しまし
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辺野古反対 歌に乗せ 玉城知事、フジロックで
東京新聞 2019年7月29日
 沖縄県の玉城デニー知事は二十八日、新潟県湯沢町で開かれた国内最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」に出演し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を、歌に乗せて約千五百人の聴衆に訴えた。
 
 玉城氏は主催者側に招かれ、社会問題を扱う企画「アトミック・カフェ」に出演。ギターを弾きながら、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「雨を見たかい」とボブ・ディランの「見張り塔からずっと」を歌い上げた。
 
 歌に先立つトークコーナーでは、ジャーナリストの津田大介氏、沖縄の人気バンド「ORANGE RANGE」のベースYOHさんらとステージに登り、米軍専用施設が沖縄に集中する現状を紹介。「辺野古は絶対に認められない。これ以上、子どもたちに米軍基地を押し付けることはできない」と強調。日米地位協定改定の必要性にも言及した。
 
 一方で「政府と対立しているとは思っていない。県民の暮らしを考えれば、安倍晋三首相に頭を下げ、菅義偉官房長官ともにこにこ握手をし、普通の政治をすればいいと思う」とも述べた。

 写真
「フジロックフェスティバル」に出演し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を
訴えた沖縄県の玉城デニー知事=28日、新潟県湯沢町で