中沢寅一「赤旗」政治部長による「政治考」(不定期掲載)を紹介します。
高市政権は発足してからあまり時間が経たない1月下旬に突如国会を解散し、2月上旬に投開票した総選挙で大勝し、それ以後驚くほどの高支持率を維持して来ました。
しかし高市政権がしたことは、インフレ・高物価の下で逼迫した生活を強いられている国民の救済ではなく、スパイ防止法案や国旗損壊処罰法案、維新のための『副首都』法案などの成立で「国民目線の政治」は皆無でした。
それでメッキが剥げて7月に入ると急速に支持率が下落しました(8月度の支持率調査はNHK以外は中旬以降に実施)。何よりも国民の80%以上が期待している愛子天皇の可能性を潰した、『男系男子』限定を謳った時代遅れの皇室典範改定が決定的でした。
その後、来年4月から2年間限定の食品消費税の1%への減税案を成立させましたが、大きく下落した支持率は全く回復しませんでした。
中沢氏は、「国民生活の立て直しをよそに、軍事産業を成長戦略の中心に位置づけ、軍事強国・戦争国家をめざす方針自体が、自民党・高市政治の末期的行き詰まりを示す」ものにほかならないと見ます。
高市政権は今後再び高支持率を回復することはあり得ないとされています。
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【政治考】「強い期待」は「期待外れ」に 足許揺らぐ高市政権
しんぶん赤旗 2026年8月14日
2月の総選挙から半年(8日)を過ぎました。高支持率を誇ってきた高市内閣に急変が襲っています。10日のNHK調査では7月から5ポイント減の53%でした。「読売」世論調査(7月24~26日)では6月の69%から12ポイント下落の57%に。「日経」(同前)では6月の68%から10ポイント下落の58%になり、無党派層の不支持が5割を超えています。その前週の「毎日」では51%から10ポイント下落の41%となり、不支持が上回りました。
自民党の閣僚経験者の1人は「予想されたが早い展開だ。円安インフレ(物価高)とこれを加速させるイラン戦争の中で、国民は爪に火をともすような逼迫した生活を強いられている。それに丁寧に寄り添うより、『男系男子』に固執する皇室典範改正や国旗損壊処罰法案、維新のための『副首都』法案に熱を上げた」と語ります。
国民の「マグマ」
「読売」調査では、物価高対策を「評価しない」が前回6月調査から15ポイント増えて71%に。帝国データバンクの調べでは8月の飲食料品の値上げは2311品目に。1~11月の判明分で1万8347品目に達しています。今年上半期の倒産件数は、5346件で東日本大震災後の2014年以来12年ぶりの水準です。
この閣僚経験者は総選挙結果のときは「国民の中に不満のマグマがたまっていた。高市首相は、消費税減税や『責任ある積極財政』のスローガンで、マグマを期待に変えた」と語っていました。それがいま、変わりつつあります。
自民党議員の1人は「強い『期待』は『期待はずれ』へと急速に変わりつつある。物価上昇が支持率を削っている。政府は『賃金の上昇』をいうが大手が中心だ。中小零細に実感は乏しい」と分析。高市内閣は最低賃金1500円の達成期限を、石破内閣の20年代から30年代前半に先送りし、労働法制の規制緩和推進を打ち出しています。
成果見えず悪化
30年にわたり経済成長が止まり、国民の実質賃金が上がらず、そこに異常円安による物価高が襲うなか国民には重税と社会保障削減、大企業には法人税減税という逆立ち税財政で、巨大企業の内部留保は650兆円超に拡大してきました。「不満のマグマ」とは、「失われた30年」といわれる貧困と格差の拡大、長期の経済停滞をもたらした失政への国民の深い失望です。それが24年の総選挙、25年の参院選挙で自民・公明両党を過半数割れに追い込みました。
「赤旗」の裏金連続スクープが怒りに火をつけたことも影響しました。
元閣僚は「2月の総選挙で高市首相は大勝したが、それで24~25年に自公が追い込まれた要因が消えたわけじゃない。政権発足からまもなく1年、選挙から半年、成果が見えないどころか状況は悪化している」と指摘します。
足元揺らぐ高市政権
軍事で「成長」行き詰まり鮮明
高市早苗首相は、「初の女性首相」という人気に加え、目民党初の消費税減税公約に踏み込み、積極財政論で「期待」をつかんだ - しかし、もともと減税財源は不明確な上、論議を「社会保障国民会議」に丸投げし国会論戦を回避。当初6月のとりまとめをめざしましたが、結局8月にずれ込みました。減税は「給付つき税額控除」の実現までの「つなぎ」とされ、実施は来年の4月。2年後には大増税が待ち受けます。
〝骨太ショック″
メディア関係者は「物価高が進めば減税効果は相殺、帳消しだ。国民は来年4月まで待てるのか。財源が不明確で、財政への信頼を低下させ円安を加速し、金利の上昇を招いている。スピード感はなく、政策のちぐはぐさが目立ち失望感を増幅させた。政治は潮目に来た」と語ります。
このなかで高市政権は「成長戦略」として、さらなる異次元のバラマキに踏み出します。7月21日に閣議決定した「骨太方針」では2040年までの15年間で官民合わせて370兆円超の大企業支援投資を行うとしました。半分を政府が支出するとしても毎年10兆円の支出増加です。破綻したトリクルダウンの異次元の規模での継続です。
これに大軍拡計画が加わる-米国が要求する国内総生産(GDP)比3・5%への軍事費増を実行しようとすれば、5年後には年24兆円を超えます。
これらの財源を増税で賄うといえば国民の反発は必至。そこで当面、国債増発で乗り切るとしています。国債増発の方向を示した「骨太方針」原案が示されると、途端に金利は3%に迫る30年ぶりの水準に上昇する一方、円は売られ1ドル=162円という40年ぶりの円安に。まさに「骨太ショック」です。自民党関係者からも「円安インフレは人災だ。高市さんは金のなる木でも持っているのか」との声が漏れます。「責任ある積極財政」の看板は色あせ「無責任な放漫財政」の本質が鮮明に。物価高対策が問われるもとで、円安を強める逆噴射です。
その一方、円安による貿易収支の赤字拡大を嫌う米国には無条件追随し、為替市場ヘの協調介入を実施。支離滅裂の経済対策に、メディア関係者は「ひどい迷走だ。円安推進と円高を同時にやっている」と冷ややかです。
危険な右派連携
経済運営の行き詰まりのなか、高市政権は年末に予定する安保3文書改定や秋の臨時国会での改憲論議の加速を狙います。新たに設置した国家情報会議の「権限」を定める「スパイ防止法」の制定も狙っています。衆院での自民党の圧倒的多数に加え、連立する日本維新の会だけでなく国民民主党や参政党などとの右翼的連携が強まっており、危険な状況は続きます。維新との連携で比例定数削減も引き続き狙っています。
高市首相は6日の広島市内での会見で、「政府としては非核三原則を政策上の方針として堅持している」と述べるにとどめ、「将来も堅持する」との明言を避けました。国会の決議であり「国是」である非核三原則を、政府の判断で変更可能な「政策」におとしめる重大な発言を被爆の日に、しかも被爆地で行ったのです。
重大なことは、高市政権が「骨太方針」の17分野の成長戦略の中で、軍事(防衛)産業をその柱に位置づけ「防衛と経済の好循環」を打ち出していることです。4月に強行した武器輸出の全面解禁と一体に、経済の軍事化にかじを切り、武器の輸出で稼ぐ国になる「成長戦略」です。世界に戦争と軍事的緊張が存在することで稼ぐ「戦争待望国家」というべき堕落の道です。
自民党議員の一人は「(武器輸出は)ごく限られた領域の利益にしかならない。経済成長が行き詰まった挙げ句、防衛に活路を求めるのはどうなのか。財界には、朝鮮特需、ベトナム特需という戦争で稼いだ記憶がある」と述べます。
正面対決を貫く
国民生活の立て直しをよそに、軍事産業を成長戦略の中心に位置づけ、軍事強国・戦争国家をめざす方針自体が、自民党・高市政治の末期的行き詰まりを示すものにほかなりません。求められているのは賃上げ、減税、社会保険充実で国民の購買力を回復することです。
反核・平和・反戦・反改憲のペンライト集会は全国に広がり、9条改憲反対の署名も各地で創意をもって取り組まれています。日本共産党はその行動にともに取り組みながら、党を強く大きくする取り組みの飛躍にも全力をあげいます。10日のNHK調査は支持率で野党第1党となり、高市政権に正面対決を貫く姿勢に注目が集まっています。
(中祖寅一)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
2026年8月15日土曜日
【政治考】「強い期待」は「期待外れ」に 足許揺らぐ高市政権
ー連の平和式典に独裁志向・極右首相/自己PRか引きこもり「孤独の首相」
高市首相は6日と9日の原爆忌の式典では、白々しい挨拶と被爆者への冷酷な対応に終始しました。
そして今後は、これまで守られてきた「非核三原則」の打ち壊しにまっしぐらに進もうとしています。その危険性はブレーキのない2輪車と称されます。
日刊ゲンダイの掲題の2つの記事を紹介します。
題記は略称で正確な記事のタイトルは下記の通りです。
・安倍よりはるかにあからさま ー連の平和式典に独裁志向・極右首相のおぞましさ
・自己PRか引きこもり…これまた不気味な「孤独の首相」の“夏休み”
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安倍よりはるかにあからさま ー連の平和式典に独裁志向・極右首相のおぞましさ
日刊ゲンダイ 2026/08/10
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
戦後81年で、時代はすでに暗転したのか。平和憲法を踏みにじり、「戦争する国」準備に突き進む高市首相の広島、長崎、終戦記念日での言動の空々しさとおぞましさ。「持ち込ませず」の撤回で、日本は事実上の核保有国。
◇ ◇ ◇
戦後81年の夏──。今年も広島、長崎、そして、東京の日本武道館で戦没者の慰霊と平和を願う式典が開かれるが、無力感、徒労感に打ちひしがれている遺族、関係者も多いのではないか。
世界を見渡せば、大国が国際法を無視し、平然と戦争を仕掛け、核の脅しもいとわない。核拡散防止条約(NPT)の国際会議は3年連続で空中分解。唯一の被爆国、日本くらいは……と期待したいが、広島で被爆者団体と面会した高市首相は氷のように冷酷だった。
高市は広島でも長崎でも非核三原則について、「わが国は堅持しており」という客観的な表現で挨拶した。核廃絶を訴える被爆者にしてみれば、非核三原則を「堅持する」という主体的な意思表明を期待したのに裏切られた。少なくとも歴代首相は自身の意思を表明したのに高市はしなかった。だからこそ、被爆者団体は面談で改めて問いただした。それに対し高市は「堅持している」と繰り返すだけだったのである。
広島県原爆被害者団体協議会理事長の原田浩さんは「当たり障りのない回答で、広島の思いが十分伝わっていない気がした」(東京新聞7日付)と語っていたが、落胆がひしひしと伝わってくる。
なぜ、高市は「堅持する」と言えないのか。他人事のような言い方をするのか。答えは言うまでもなく「三原則を見直す」気だからだ。
もともと、高市は「持ち込ませず」の見直しが持論だし、編著書でも「持ち込ませず」に疑問を呈している。そうしたら、維新が年末に予定されている安保3文書改定において「持ち込ませず」の部分について「現実的検討」を要請。安保担当の政府高官が「日本も核兵器を保有すべきだ」などと言いだし、小泉防衛相に至っては「触れざるを得ないのは核だ。議論すら認められないことは変えていかなければならない」などと踏み込んだ。
そこに高市の「堅持しており」発言が重なってくるのであって、この政権の魂胆はミエミエではないか。よりによって平和を祈る8月に悪夢のようなニュースだが、これは到底、見過ごせない。それなのに大メディアは、この危険性をてんで報じないのだから、絶望的になってくる。
非核三原則を見直せば日本は核保有国
防衛ジャーナリストの半田滋氏は「“持ち込ませず”を撤回したら、中国や周辺国は日本が核武装したと捉えるでしょうね」と言い、こう続けた。
「日本は米国の核の傘に入っていますが、それは米国本土から飛んでくるICBMや潜水艦から発射されるSLBMによる核の抑止力のことを指しています。しかし、日本に寄航する駆逐艦や攻撃型原子力潜水艦に核が搭載され、持ち込まれることになれば、実質的に日本列島周辺に核が存在することになってしまう。日本の核武装と同義となり、中国が見過ごすわけがありません」
折も折、米NBCは米国防総省が新たな核戦略を進めていることを報じた。その肝はICBMやSLBMとは違う、「射程の短い戦術核の使用」だそうだ。
さらに米陸軍はこのほど、海上自衛隊の鹿屋航空基地に中距離ミサイルシステム「タイフォン」を一時展開した。10月には在日米軍基地に“配備”される予定で、ここにも核ミサイルが搭載可能だというのである。こんなものを自国の周辺で突きつけられたら、中国だってたまったもんじゃない。それでなくても、高市政権の日本を「新軍国主義」と批判しているのだ。
「非核三原則を見直せば、日中関係は修復不可能なレベルにまで悪化するでしょう」(半田滋氏=前出)
一政権が政策の見直しのような感覚でやる話ではないのである。
それなのに、なぜ、高市や維新は「三原則の見直し」にシャカリキなのか。
先のNBC報道の通り、米国は新たな戦術核の配備の準備を進めている。2032年9月にも海上発射型の核ミサイルを駆逐艦や原潜に搭載、配備する計画だという。
その時に「非核三原則」があると、日本に寄港できないのでオペレーションに支障をきたす。「米軍はそうした障害を取り除いておきたいのだろう」というのが半田滋氏の見立てだ。
高市や小泉はというと、米国のポチよろしく、全面協力すべく尻尾を振っているのである。
二枚舌とゴマカシが高市の正体
それにしても、戦後81年、かくもおぞましい姿が露見するなんて想像を超えた話だ。安倍政権が憲法9条を踏みにじり、集団的自衛権行使を容認したのが12年前。以後、先制攻撃が可能になり、殺人兵器の武器輸出も解禁、国旗損壊罪の名の下、思想信条にまで踏み込まれ、政治・平和教育の自由もどんどん侵食されている。
高市は長崎の祈念式典で「核兵器のない世界と恒久平和の実現に向けて尽力することをお誓い申し上げます」などという美辞麗句を並べていたが、その裏で事実上の「核武装国家」への準備を着々と進めているのだから、二枚舌もいいところだ。そのくせ、突っ込まれると「私が(三原則の見直しについて)予断することは差し控える」などと逃げてしまう。こんな政治家に戦後、築き上げてきた平和の礎を木っ端みじんに崩されてもいいのか。答えは言うまでもないだろう。
2度のクーデターで首相と維新に乗っ取られた
法大名誉教授で政治学者の五十嵐仁氏は「今の日本は2度のクーデターによって乗っ取られた」という言い方をする。
「第1のクーデターは、誹謗中傷動画といった違法な手段も使われた可能性のある総裁選で、高市氏が自民党を乗っ取ったことです。そして第2のクーデターが、その高市自民党が維新と手を組み、議論もなく、問題だらけの連立合意を決めたうえに、アレヨアレヨの総選挙で、日本という国そのものを乗っ取ったことです。これにより、日本はそれ以前とは全く違う国になってしまいました」
「違う国」になった象徴として、五十嵐仁氏が挙げるのが、安保3文書改定で出てきた「日本は継戦能力を高めていかなければならない」という高市発言だ。「継戦能力」とは弾薬、燃料、装備品などを備蓄し、長期の戦闘を続ける能力を指す。高市はナント、ウクライナとロシアの戦闘の例を出し、「安全保障環境が相当変わっており、日本の主体的判断によって(継戦能力を)強化する必要がある」などと言いだした。
「つまり、これまでの“戦争を起こさないための抑止力”としての軍事力という概念から大きく逸脱しているのです。もはや戦争を防ぐための軍備ではなく、抑止が破綻し、戦争が起きてしまった場合に“どう戦い、勝利するか”という議論になっている。その延長線上に原子力潜水艦を持つべきだとか、ドローンの強化などという話が出てくる。つまり、高市政権は戦争をしない、させない平和国家のあり方を根底から覆してしまったのです。安倍政権からの流れといえば、それまでですが安倍元首相はまだ、ためらいや後ろめたさがあった。高市首相にはそれがまったくなく、安倍元首相よりも独善的であり、確信的です。そこに右にアクセルを吹かす維新がくっつき、公明党というブレーキが離れた。アクセル2つの右旋回という最悪の状況だと思います」(五十嵐仁氏=前出)
せめてもの救いは安保文書の改定を巡る自民党の提言の中に、非核三原則の見直しや原子力潜水艦の導入が入らなかったことだ。自民党内にも若干、良心があるのかもしれないが、とはいえ、消費減税同様、高市が独断で押し切る可能性はかなりある。広島、長崎はもとより、全国から「高市おろし」の狼煙を上げなければダメだ。
自己PRか引きこもり…これまた不気味な「孤独の首相」の“夏休み”
日刊ゲンダイ 2026/08/12
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
忙しさを自慢しているくせに、歯医者に3時間、休日は引きこもり。熊本はとんぼ返り、広島、長崎は冷たい面談。
和田秀樹氏は「反社会性パーソナリティー障害」と表現し、炎上したが、孤独な首相の独善が、いよいよ国を歪めているのだから問題だ。
◇ ◇ ◇
今度は「ガンつけ動画」が大炎上だ。9日の「長崎原爆の日」。高市首相は長崎市の平和祈念式典に参列後、市内のホテルで被爆者団体の代表者らと面会したが、この時の態度がひどすぎた。
長崎の被爆者団体の会長が代表して要望書の趣旨を読み上げる際、高市は手元の資料をチラチラ見て「聞く耳」持たずの態度。「非核三原則」の法制化や、国連の「核兵器禁止条約」への参加など、政府方針に反する要望が含まれていたからか、表情にはうっとうしい気分がにじみ出ていた。
会長は結びの言葉としてこの日、長崎の原爆資料館を訪れた高市に対し「いま国会議員の中で、戦争体験者や戦争を知らない人たちが大部分を占めています。ぜひお帰りになったら、広島・長崎の原爆資料館を見学されることをお勧めください」と呼びかけた。
すると、会長に対し高市はにらみ返すような目線を送ったのだ。理解に苦しむが、高市は今から31年前の国会質疑で日本の戦争責任についてニヤケながら、こう言ってのけたことがある。
「少なくとも私自身は、(戦争の)当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもない」
このトンデモ発言に、「戦争を知る世代」である当時の河野洋平外相は「過去の反省について全く反省もしない、謝罪をする意味がないという議員のご発言には私は見解を異にする」と答弁。かすかに怒りや呆れの感情が見て取れた。
折しも、この時の動画がSNSで猛拡散している最中だ。まさか「戦争を知らない人たち」という言葉に、高市は「ワタクシのこと? なんか意地悪やなぁ」と過剰に反応したのだろうか。被爆者団体の会長にケンカを吹っ掛けられたと感じたとしたら、一国の首相として相当イカれている。
非道な振る舞いは「ガンつけ」だけじゃない
この様子を生中継したニコニコニュースの映像をもとに、高市がガンを飛ばすような部分が約30秒の動画に切り取られ、SNS上で瞬く間に拡散。「人の話を聞く態度ではない」「目は口ほどに物を言う」「被爆国の総理にあるまじき態度」などと批判の声が相次いでいるが、高市の「非道」はこれにとどまらない。
長崎には原爆の「黒い雨」「死の灰」を浴びたにもかかわらず、国が線引きした「援護区域」の外で被害に遭ったとして被爆者認定されていない人々がいる。被爆者と区別して「被爆体験者」と呼ばれる。医療費の助成は受けられるが、放射線による健康被害とは認められず、あくまで「被爆体験に起因するトラウマが原因で病気になった可能性のある精神疾患者」扱い──。
広島原爆でも似た境遇の人々が「被爆者」として認めるよう国を提訴。いわゆる「黒い雨訴訟」で、2021年に菅政権が上告を断念。国の敗訴が確定し、新たな「被爆者」が次々と認められている。長崎の「被爆体験者」の人たちも広島並みの救済基準を求め、この日の要望にも盛り込まれたが、国はゼロ回答だ。
しかも県内「被爆体験者」3団体の面談出席は許されたものの、発言の機会は与えられなかった。その理由を長崎市は「首相のスケジュールがタイトで、発言できる人数や時間が限られているため」と説明している。
被爆者の平均年齢は87歳に迫り、「被爆体験者」も準じているに違いない。「時間がない」のは高市じゃない。80年以上も置き去りにされてきた「被爆体験者」の人々ではないか。
原爆慰霊より歯医者優先の反社的「平和嫌い」
時間を気にする高市には「広島原爆の日」の前科がある。この日は午前8時からの平和祈念式に参列後、午後2時には東京・羽田空港にとんぼ返り。向かった先はナント、杉並区内の歯科医院で約3時間も滞在した。
「何もこの国にとって大事な一日に歯科医院の予約を入れなくてもいいでしょう。〈八月や六日九日十五日〉という句があるほどで、戦後の平和を尊び、あの戦争を忘れないという気持ちがあれば絶対にあり得ません。高市首相の“平和嫌い”が如実に表れた選択です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
加えて高市は歯の治療のため、スケジュールを“巻いた”疑いすらある。当日の首相動静を見ると、約1時間で祈念式の会場を後にし原爆資料館に足を運んだが、たった約25分の滞在で切り上げた。市内のホテルに向かって被爆者らと55分ほどの面会後、記者会見を行ったが、質問は地元と同行メディアの代表2社で打ち切り。司会は「次なる公務」を理由に追加質問を求める記者を遮った。
その後は市内の原爆養護ホームに。入園者への慰問はわずか20分足らずでこの日の公務は終了。昼休憩を挟み、午後0時44分には広島空港に着いていた。昨年の石破前首相の広島訪問時と比べると、帰京のため同空港の到着は午後3時28分。高市は3時間近くも早い。
高市は自身のXに「首相就任後は0~3時間睡眠が常態化」と投稿。寝てない自慢で忙しさをアピールしていたはずだが、11日の「山の日」もご多分に漏れず、休日はほぼ官邸に引きこもり。広島の大事な一日をテキトーにやり過ごし、歯医者にたっぷり3時間とは、どういう了見なのか。前出の金子勝氏はこう言った。
「かような人物が広島でも長崎でも非核三原則を『わが国は堅持しており』と他人事のように語り、被爆者らの要望を一切無視する。ましてや長崎の『被爆体験者』への“差別”を放置したまま、『核を持ち込ませず』の撤廃に邁進。戦後日本の平和主義をひっくり返し、この国を大きく歪めようとしています」
なぜ被災者と同じ目線に立てないのか
例の「働いて×5」発言で昨年の流行語大賞を受賞しながら、先の特別国会における衆参予算委員会の集中審議への出席時間は、前任者の3分の1程度。「国会嫌い」でちっとも「働いて」いない高市に対し、1カ月ほど前、精神科医の和田秀樹氏は自身の動画サイトで「国民に嘘をついても胸が痛まないとしたら『反社会性パーソナリティー障害』」と分析した。
この表現が主に高市支持層の反感を買って炎上したが、広島・長崎での振る舞いを目にすると、孤独な首相への「反社」の2文字の説得力は増すばかり。今月3日の熊本地震の視察も同様だ。
被災地をロケ地扱いした「主演・高市」の過剰演出動画が「まるでプロモーションビデオ(PV)」と大炎上。被災地まで政治利用の自己PRを誰も止められなかったのか。高市の独善ぶりは呆れるが、改めて和田秀樹氏に聞くと「驚くのは例の動画のほか、当日のニュース映像でも首相には一滴も汗をかいた様子がないことです」と指摘した。
当日の熊本市の最高気温は40度超。観測史上初の酷暑日を記録したが、この日の首相動静を見ると、高市の外での活動はゼロ。上空視察の陸自ヘリ内や移動中の車内もクーラーで冷え冷え。知事と意見交換した県庁内はもちろん、視察に向かった中学校の避難所にも冷房が設置されていた。
つまり高市は冷房の効いた場所から場所へと移動してPV撮影を済ませ、東京にとんぼ返りしただけ。まるで大御所俳優気取りである。
「なぜ、危険な酷暑の中でも絶望を押し殺し、がれきを片づける被災者と同じ目線に立とうとしないのか。被災地の過酷な環境を知るつもりがあれば、せめて冷房のない避難所に行けばいい。被災者の苦しみに胸が痛まないのだとしたら、決定的に『情』が欠落しています。やはり精神医学的に『反社会性パーソナリティー障害』の可能性を論評せざるを得ません」(和田秀樹氏=前出)
高市はお盆期間にまとまった休みは取らないらしいが、暇さえあれば自己PRか引きこもり。不気味な首相が続く限り、この国の平和は危うい。
露国の現大統領と前大統領が反露政策を続ける日本政府に警告(櫻井ジャーナル)
ロシアのプーチン大統領はサハリン島沖の軍事演習視察のついでに13日、択捉島を訪問しました。高市首相はこれに強く抗議する発言をし、茂木外相はロシアの駐日大使を呼んで抗議しました。
それに対してロシアの駐日大使は、「北方4島はポツダム宣言に基づいて正式にロシア領になったもので、大統領が国内の何処に行こうとも何の制約も受けるものではない(要旨)」との声明を出しました。
そのこと自体は事実ですが、交渉の余地がないということではなく 事実これまでの交渉の中で「2島返還」が現実する寸前まで行きましたが、「返還後そこに米軍基地を置かない」ということを日本側が確約できなかったので、実現に至らなかったという経過もありました。
なお別掲の植草一秀氏の記事には別の理由「ダレスの恫喝」が記載されています。上記の事態はその後の数次にわたる「日ソ交渉」の中でのことと思われます。
櫻井ジャーナルの掲題の記事を紹介します。
併せてしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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露国の現大統領と前大統領が反露政策を続ける日本政府に警告
櫻井ジャーナル 2026.08.14
ロシアのウラジミル・プーチン大統領はロシア太平洋艦隊が軍事演習を行っていたサハリン島に続いて8月13日に択捉島を訪問した。日本の反ロシア政策に対する警告だと言えるだろう。
それに対し、高市早苗首相は「断じて容認できない」と発言、茂木敏充外務大臣は「歴史的にも国際法上も日本の固有の領土の一部である」と主張しているが、これには説得力がない。
戦後日本は「ポツダム宣言」の受諾から始まるが、その宣言には「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」とある。確定している日本の領土は本州、北海道、九州、四国だけであり、残りの領土は連合国が決めることになっているわけで、択捉島の領有を日本が一方的に主張することはできない。
択捉島の南にあり、連合国から日本の領土だと認められた北海道もアイヌが住むアイヌモシリだった。つまり日本領ではない。イギリスの私的権力を後ろ盾とする明治維新で成立した明治政権が併合したというべきだろう。イスラエル人が入植し、パレスチナ人から土地を奪っているヨルダン川西岸と似ている。択捉島について「歴史的にも国際法上も日本の固有の領土の一部である」と言うことはできないのだ。
そうした説得力のない主張を最近の日本政府が主張するのは、アメリカが日本とソ連/ロシアの接近を嫌っているからだ。アメリカは千島列島から南西諸島までの島々を中国やソ連/ロシアに対する軍事的な拠点と考えている。
中曽根康弘は首相に就任して間もない1983年1月にアメリカを訪問、その際にワシントン・ポスト紙のインタビューを受けたのだが、その中で「日本列島をソ連の爆撃機の侵入を防ぐ巨大な防衛のとりでを備えた不沈空母とすべきだ」と発言、さらに「日本列島にある4つの海峡を全面的かつ完全に支配する」とし、「これによってソ連の潜水艦および海軍艦艇に海峡を通過させない」と語ったと報道された。
当然のことながらこの発言は問題になり、中曽根は「不沈空母」発言を否定しようとするのだが、インタビューが録音されていたことを知ると「巨大空母」と言ったのだと主張して誤魔化した。その前からイスラエルは自国のことをアメリカの中東における不沈空母だと表現していたので、それを記者は使ったのかもしれない。
ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいたが、日本軍も中国を空爆するための空母として利用していたが、アメリカは千島列島から南西諸島までの島々を自分たちの航空母艦群と考えてきた。ウクライナと似た位置づけだとも言える。
それに対し、ロシアのドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長は千島列島について永遠にロシアの領土だと主張、日本がその領有権を主張し続けることは「火種を求める」行為だと述べた。事実、日本政府の主張は「火種を求める」行為だが、それはアメリカ支配層が願っていることにほかならない。アメリカは日本をウクライナのようにしたいのだ。
ロシアや中国は北極海航路を切り開きつつあるが、この航路は千島列島を通過する。その航路を成立させるためには千島列島の領有が重要になる。西ヨーロッパ諸国はロシアの輸送船を「影の船団」と称し、攻撃しているが、それについてもメドベージェフは発言している。
ロシア以外の国旗を掲げてロシアの商船が航行することはあるが、それは「便宜置籍船」である。税金や規制にかかる費用を節約するために船主の国とは異なる国に船舶を登録しているのであり、一般的に行われていること。そうした船を西ヨーロッパ諸国が勝手に拿捕する権利はない。
もし、船主がロシアの便宜置籍船を西ヨーロッパ諸国が攻撃したならば、どの海域であろうと、敵の利益となる貨物を運んでいると疑うに足る十分な根拠があれば攻撃できるということだと警告している。アメリカ軍の命令に従い、自衛隊がロシアの商船を攻撃すれば、日本の商船が報復されるということだ。
高市首相「許容できず」
しんぶん赤旗 2026年8月14日
高市早苗首相は13日、ロシアのプーチン大統領が択捉島を訪問したことについて「日本の一貫した立場と相いれず、断じて許容できない」と非難し、「強く抗議する」と表明しました。
「北方領土は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土だ」と強調しました。首相公邸で記者団の取材に応じました。
首相は記者団に対し、プーチン氏訪問を自身が把握したのは「きょうの午後」だったと明らかにしました。日本政府関係者は「プーチン氏の訪問は驚いた」と述べ、想定外だったことを認めました。
首相は「今回の訪問は日本国内の対ロ感情を一層厳しくし、中長期的な関係回復を困難にした」と指摘。「ロシア側にはこのことの重大さを深刻に受け止めてほしい」と述べました。
ロシア大統領の千島訪問に断固抗議する 日本共産党議長 志位和夫
しんぶん赤旗 2026年8月14日
日本共産党の志位和夫議長は13日、以下の談話を発表しました。
一、ロシアのプーチン大統領は13日、自身としては初めて日本の領土である千島列島の択捉島を訪問した。ロシアが不当に併合した千島列島の占領の固定化を図ろうとするもので、日ロ領土問題の公正な解決に反する行動であり、断固として抗議する。
一、同大統領は、千島列島が第2次世界大戦の結果としてロシア領となったなどと述べているが、日ロの領土問題は、第2次世界大戦の終結時に、ソ連が「領土不拡大」という戦後処理の大原則を踏みにじって、日本の歴史的領土である千島列島を自国領土に一方的に編入し、北海道の一部である歯舞群島、色丹島までも編入したことによって起こったものであり、最悪の覇権主義の現れの一つであったことを厳しく指摘したい。
一、ロシアがウクライナへの無法な侵略戦争など覇権主義的な行動を強めている今、領土問題の解決のためには、国際的道理にたった行動がいよいよ大切である。日本政府がサンフランシスコ講和条約にある「千島放棄」条項を不動の前提とせず、第2次世界大戦の戦後処理の不公正を正すという立場に確固として立ち、全千島列島と歯舞群島、色丹島の返還を求めることが必要である。わが党はその立場で政府が領土交渉の立て直しを図ることを強く求める。
15- 二島返還を喪失した大失策(植草一秀氏)
別掲の記事で紹介した通り、ロシアのプーチン大統領が13日、択捉島を訪問しました。
それに対して高市首相は抗議の意を表明し、茂木外相は駐日ロシア大使に抗議しました。
植草氏は掲題の記事で、日本とロシアとの間には北方領土をめぐる領土問題が存在し、韓国とは竹島、中国とは尖閣諸島の領有権をめぐる対立が存在するとして、それぞれ、日米戦争終結時の米国の構想に基づいていると説明します。いつもながら明解です。
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二島返還を喪失した大失策
植草一秀の「知られざる真実」 2026年8月14日
ロシアのプーチン大統領が択捉島を訪問した。プーチン大統領の択捉島訪問は初めてのこと。高市首相は抗議の意を表明した。
日本とロシアとの間には北方領土をめぐる領土問題が存在する。
韓国とは竹島、中国とは尖閣諸島の領有権をめぐる対立が存在する。
日本と周辺諸国との間の三つの領土問題。
歴史的経緯を踏まえると三つの問題の裏側に米国の工作があったことが分かる。
韓国は李承晩政権が竹島の韓国帰属を宣言した。1952年1月18日、韓国の李承晩大統領が「隣接海洋に対する主権に関する宣言(海洋主権宣言)」を行い、公海上に「李承晩ライン(平和線)」を設定した。このラインの内側に竹島を取り込み、竹島の韓国帰属を宣言した。
敗戦後の日本が国家主権を回復したのは1952年4月。同年1月は日本が主権を回復していない時期。この時期の竹島韓国帰属宣言を容認したのは米国である。
1972年5月、米国は沖縄を日本に返還した。その際に尖閣諸島の「施政権」を日本に引き渡した。だが、米国は日本の尖閣諸島「領有権」を認めていない。
「施政権」とは管理する権限。「施政権」が日本に引き渡されたから、日本は尖閣諸島の管轄権を保持して現在に至る。
しかし、「領有権」について米国は日本の主張を認めなかった。
尖閣諸島の領有権を中国も主張していた。そこで、米国は尖閣諸島の「領有権」については、日本の立場も中国の立場も取らない「中立」のスタンスを示して現在に至る。
1972年9月に日本は中国との国交を正常化した。日中共同声明で国交を回復した。
その際、尖閣諸島の領有権問題が討議されたが、結論を将来に先送りすることで合意した。
いわゆる「棚上げ合意」である。
「棚上げ合意」が存在したことは1979年5月31日付読売新聞が社説で明記している。
尖閣諸島の領有権問題で日中が対立し、直ちに決着をつけることができないから、その解決を将来に先送りすることで合意した。
ロシアとの国交を回復したのは1956年。これをやり遂げたのは鳩山一郎内閣だ。
「日ロ共同宣言」が発表されて日ロ(当時はソ連)は国交を回復した。
このときに領土問題を解決して平和条約を締結する動きがあった。
北方四島のうち、北海道に近い小島である歯舞、色丹二島をソ連が日本に返還し、これをもって平和条約を締結する動きがあった。
ところが、米国が妨害したと伝えられている。米国は日本に四島返還を要求しろと命令。
二島返還で日ソ平和条約を締結するなら、沖縄は永遠に返還しないと「恫喝」してきたと伝えられている。当時の米国務長官はジョン・フォスター・ダレス。
ダレス国務長官が横やりを入れて平和条約締結が流れたとされる。
ダレスの横やりは「ダレスの恫喝」と呼ばれている。
これらの歴史事実を俯瞰すると、要するに、米国は日本の隣国との間に紛争の種を埋め込んだと言える。中国とは尖閣諸島でもめ、韓国とは竹島でもめ、ロシアとは北方領土でもめる。日本が近隣諸国と本格的な友好関係を結ばないように、米国が紛争の種を埋め込んだ。この解釈が成り立つ。
日本はロシアとの間に平和条約を締結していない。領土問題が未決着であることが最大の背景。
この状態を打破しようとの動きがなかったわけではないが、現在は冷え切った関係にある。
日ロ関係が激しく悪化した原因はウクライナ戦争に対する日本政府の対応に原因がある。
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