世に倦む日日氏の掲題の記事を紹介します。
記事は第1節において、トランプが習近平との首脳会談の中で「第二次大戦では中国はアメリカの同盟国だった」と発言し、第二次大戦に勝利した連合国同士であるという歴史認識が確認され、世界中を騒然とさせたと記述し、これは予め準備した原稿を読み上げたものであり、トランプのアドリブではないと説明します。
そして11月の深圳APECと12月のマイアミG20でも米中首脳会談が持たれることが明確にされた中で、その機会に中国は今回果たせなかった「米中両国は台湾の独立に反対する」という文言の文書化を達成するべく、外交攻勢をかけて行くだろうと見ています。
トランプのこの発言と認識の下、今後台湾問題を協議し結論を出す上での前提が敷かれたと言えると述べました。
このことは「台湾有事」で米中が一触即発の状態に陥ると見られていたことが、そうではなくなるという点で極めて大きな出来事です。
世に倦む日々氏は、トランプ自身は元々台湾に対して関心が薄く、米国が台湾に軍事関与する必要性を感じておらず、台湾防衛に消極的だという見方をしています。
ところで日本では米国が対日抗戦で同盟を結んだ相手は中華民国だったと強調する人たちがいますがそれは間違いで、国民党と共産党は国共合作で一つの勢力として抗日戦争を戦っていたのであり、後半の1940年以降は、むしろ八路軍(⇒共産軍)との戦いが日中戦争の主舞台と言ってよく、戦後の国共内戦を経て中華人民共和国が成立したというのが正しい歴史であると述べます。
いずれにしても「台湾有事」で米中が戦火を交える可能性が小さくなったことは日本のために喜ばしいことです。
記事の最後のところでは米国の対中世論に変化が表れていることに触れ、シカゴ・グローバル評議会が9月に発表した調査報告によると、米国人の57%が中国との友好的な協力や接触を支持すると回答し、「中国の領土拡大の野心を米国への重大な脅威と見なす」と答えた割合が、22年の52%から今回の41%へと減少したことを紹介し、「台湾有事」への対応についても、「米軍を投入することに賛成」と答えた割合が、22年の52%から今回の38%に下がるなど、米国人の中国に対する意識が変化していて、前向きな関係構築を望む声が多くなっていると述べています。これも喜ばしいことです。
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G2時代を予感させたトランプの歓待劇 ー DC米中首脳会談で歴史認識を一致
世に倦む日日 2026年9月29日
9/24(現地時間)、DCで米中首脳会談が行われた。予想した以上に中国側が主導権を発揮して終始した会談となり、その経過と結果に驚かされる。G2時代の到来を予感させる内容であり、世界中の人々がその感想を持ったに相違ない。トランプはひたすら習近平の機嫌をとることに注力し、手厚くもてなす場面作りに徹していた。アメリカとトランプ政権にとって中国がどれほど重要な存在かを内外に印象づける外交が展開された。まず、国賓待遇で到着した習近平を、トランプは空港(アンドルーズ空軍基地)まで直接出迎えに行き、タラップの下で握手するという異例の演出が行われ、その歴史的歓待に仰天させられた。続いて、ホワイトハウスで米中首脳会談が開催されたが、その席でのトランプのスピーチで、「第二次大戦では中国はアメリカの同盟国だった」という発言が飛び出し、世界中を騒然とさせた。米中関係の歴史的基礎が確認され、第二次大戦に勝利した連合国同士であるという歴史認識が明らかにされた。
日本のマスコミとネットは灰神楽を立てたような喧騒となり、その意義の打ち消しや相対化に大わらわとなった。それは歴史認識に疎いトランプのリップサービスであり、失言のアクシデントだという〝解説″がテレビの全局で流された。だが、遠藤誉も指摘しているとおり、この発言は準備した原稿を読み上げたものであり、トランプのアドリブの口上ではない。そして 9/26 にホワイトハウスから発表された合意内容(ファクトシート)でも、「第二次大戦時に米国と中国は同盟国で、勝利のために肩を並べて戦った」という文言が明記された。今回のDCでの会談は、まさに米中の歴史認識がテーマになった外交であり、AIや通商・関税ではなく、そうした個別政策以前の、両国関係の歴史的定義づけを align (⇒一致)させた会談だった。会談では台湾問題については具体的な合意はなかったが、この決定的な歴史認識が示されたことで、台湾問題を協議し結論を出す上での前提が敷かれたと言える。
アメリカにとって第二次大戦の同盟国は台湾ではなく中国(PRC)である。アメリカの大統領がそう宣告した。中国(PRC)は第二次大戦に勝利した同盟国であり、当時の中華民国(ROC)の正統な継承国家であると、その認識が提示され、外交実績のファクトシートに記録された。中国は、かかる歴史認識の問題を事前協議でギリギリ詰めていたのであり、成果として確定させ、次のステップに繋げたのだ。11月の深圳APECと12月のマイアミG20でも首脳会談の予定が明確にされた。その機会に、中国は、今回果たせなかった「米中両国は台湾の独立に反対する」という文言の文書化を達成するべく外交攻勢をかけて行くだろう。その文言が年内の首脳会談の合意文書に載った場合は、アメリカが台湾への武器売却を凍結するという政策決定と同義である。今回それが合意に盛り込まれなかったのは、中間選挙という事情があり、トランプ政権に不利にならないように中国側が配慮したからだ。
客観的に見て、米中外交の力関係は中国が押している。中国にとって台湾問題は国家主権(核心的利益)の問題であり、妥協できない。必ず台湾への武器売却を止め、アメリカによる台湾への安保外交上の関与と支援を断ち切る意思と覚悟で動いている。トランプ自身は、台湾に対して関心が薄く、アメリカが台湾に軍事関与する必要性を感じておらず、台湾防衛に消極的だ。そして、台湾がアメリカに発注した最新鋭兵器群は、欧州諸国も、中東諸国も、どの国も喉から手が出るほど欲しい現物であり、米国メーカーに受注が殺到し、需要が多すぎて供給が間に合わない製品群である。PAC-3も欲しいしハイマースも欲しい。小谷哲男がコメントしているとおり、「そもそも米側には在庫も生産能力も不足している」のだ。小谷哲男のXの投稿は、アメリカ側の実態の吐露であり、米中外交の今後の展開を示唆するものとして考察できる。台湾と高市が受けた衝撃は大きく、想定以上の不意打ちと挫折だろう。トランプがここまで中国に譲歩するとは思わず、困惑しているはずだ。
この事態の出現を受けて、日本のマスコミは、狂ったように歴史歪曲のプロパガンダをシャワーし、トランプの〝過失”を責め、習近平中国を叩きまくっている。その論法は、第二次大戦でアメリカと同盟して戦ったのは中華民国であり、中華人民共和国ではないという愚にもつかないナンセンスな主張だ。反共右翼の、馬鹿の一つ覚えのナラティブである。篠田英朗が正しく指摘しているとおり、国民党と共産党は国共合作で一つの勢力として抗日戦争を戦っていたわけで、戦後の国共内戦を経て中華人民共和国が成立した歴史がある。中国大陸で日本軍が戦った相手は蒋介石軍だけではない。ゲリラ戦で抵抗した八路軍の奇襲に日本軍は苦しめられ、そのため三光作戦で対抗した。盧溝橋事件から終戦まで8年あるが、後半の1940年以降は、むしろ八路軍との戦いが日中戦争の主舞台と言っていい。日本軍の華北占領は、占領地を広げれば広げるほど都市後背の農村地帯が共産党統治の解放区となって広がる趨勢となり、農村から八路軍が襲来して日本軍の薄い兵站補給線を攻撃した。
1972年の田中角栄訪中で、日本は中華人民共和国を正統な中国国家として認め、嘗ての侵略戦争の加害責任の痛感を言い、深い反省を明記した日中共同声明を発表した。日本が戦争責任を言い反省を述べた相手は中国人民であり、中華人民共和国に対してある。台湾(ROC)相手ではない。日本は台湾と断交し、日本にとっての中国(China)も中華人民共和国(PRC)となった。「一つの中国」の原則である。世界中の国々も、現在まで10か国ほどの例外的諸小国を別にして、中華人民共和国を中華民国を継承する正統な中国国家として認め、すなわち現代の国際政治の世界から「中華民国」は消えた状態にある。国連もその認識と体制下にある。今の日本政府や日本のマスコミの言説が、どれほど佞悪な反共主義に基づいた異常な中国認識であり、非常識な歴史歪曲であることか。本当に呆れる。その歪み誤った言説を吐きまくり、テレビの視聴者を洗脳し、高市を援護している御用学者の大学教授たちに満腔の怒りを覚える。日本国内がとんでもないオウム真理教のサティアン空間になっている。
日本が戦争で戦って負けた相手は中華民国であって中華人民共和国ではない、という毒性の言説が、巷間現れ始めたのは、記憶では1990年代後半からだ。小林よしのりが漫画で宣伝し、2chで右翼が拡散していた。2000年代まではマスコミでこんな右翼言説を吐く者はいなかった。2010年代から論者のレベルで登場し、今ではキャスターが堂々と言い放っている。NHKが真顔で言っている。和久田麻由子がNHKの9時のニュースで、終戦の日の靖国参拝はお正月の初詣と同じ毎年の風物詩だと言いのけるぐらいだから、この歴史歪曲の不当言説の「常識化」もむべなるかなかもしれない。そのNHKの45年前の女性キャスターは、帰還した中国残留孤児の号泣と絶叫に嗚咽を漏らし、涙が止まらなくなり、国民の心が日中戦争への反省で一つになる感動的な場面を作っていたものだ。私は、年齢的に、72年の角栄訪中以前の日本の中国認識を知らないのだが、おそらく50年代の冷戦期は、こんな感じでマスコミを挙げて中華人民共和国を敵視し否定していたのだろう。反共イデオロギー全開の国論だったのだろう。
日本のマスコミと右翼は、トランプの今回の外交を媚中だと非難し、中間選挙の材料が欲しくて焦ったトランプの失態だと詰責しているが、必ずしもそうとは決めつけられない。アメリカの対中世論に変化が表れている。シカゴ・グローバル評議会が9月に発表した調査報告によると、アメリカ人の57%が中国との友好的な協力や接触を支持すると回答している。調査結果では、アメリカ人の対中世論の軟化傾向が顕著で、「中国の領土拡大の野心を米国への重大な脅威と見なす」と答えた割合が、2022年の52%から今回の41%へと減少した。また台湾有事への対応についても、「米軍を投入することに賛成」と答えた割合が、2022年の52%から今回の38%に下がった。アメリカ人の中国に対する意識が変化を遂げていて、不信と反感と敵意一色だった数年前とは異なり、前向きな関係構築を望む声が多くなっている。この傾向は、Xのタイムラインを見ているとよく了解でき、中国に旅行したアメリカ人が中国の都市景観や公共インフラを絶賛するポストが頻繁に上がっている。中国への積極的関心が強まっている状況が分かる。
安全保障の分野でも、これまでなかった変化が見られ、ディフェンス・プライオリティーズなるシンクタンクが提言を発表し、アメリカは台湾有事への関与をやめ、第一列島線に展開している米軍を撤収させ、第二列島線まで後退させるべきだと論じた。提言の執筆者は軍事アナリストで政治学者のJ.カバナ。アメリカの従来の台湾政策である「戦略的曖昧性」を止揚し、台湾有事には介入しない立場を明確にすべしと主張している。中国と大規模な戦争をするリスクを負ってまで、無理にアメリカが台湾を防衛する必要はないという理由からだ。朝鮮半島についても、北朝鮮と対抗する上で韓国の軍事力はすでに十分だから、米韓同盟を解消して在韓米軍を撤収せよと勧告している。いちいち尤もで頷ける。リーズナブルな分析と判断だ。私と全く同意見だ。ディフェンス・プライオリティーズは保守系のシンクタンクらしく、MAGA系だという評判も聞く。バンス的な、アメリカ国内優先主義の発想に基づく安保外交論と捉えれば、その位置と出番をよく納得できる論理と提言だろう。トランプ政権にはぜひこの政策を採用してもらいたいと強く思う。
J.カバナの画期的な提言がこの時期に登場し、日本のマスコミに浮上したのは、それなりに背景があり、アメリカ内部の意向と布石があるのだろう。有り体に言えば、J.カバナの提言はアドバルーンであり、この観測気球へのアメリカと日本と中国・台湾での反応を窺い、世論の感触を探り、この方向性を選んで進む場合の地均しにする思惑なのだろう。あるいは、逆の方向性(台湾有事決行)を選んだ場合の目眩まし(囮機能の認知戦タクティックス⇒(戦術・行動計画))にする底意だろう。政治的な意図や背景なしに、突然この提言が世に出たとは思えない。そして何より、この提言が出た経緯を裏読みしたとき、最も大きな要因はイラン戦争での失敗と挫折だろう。総力を挙げて戦ったはずのイランにも勝てない。膨大な戦費を使い、挙句、中東の湾岸諸国を守れず、基地を失った。空母に補給不能の醜態を演じた。イランに勝てないアメリカが中国と戦争したらどうなるか。台湾有事介入を無意味だと断じるJ.カバナの視線には、イラン戦争の不首尾が見えているのに違いない。ベッセント的な財政の論理と動機からも、J.カバナの提言は合理的で説得的な地平だろう。
いまアメリカは、2018年のペンス発言を起点とする右旋回 ー すなわち新冷戦突入とデカップリング ー 以来、8年ぶりの転換点を迎えつつあるように見える。巨大なタンカーが取り舵を取って徐々に船首を動かすように。無論、それに対する反共反中側による反動の動きも予想されるだろうが。