2017年11月30日木曜日

総理夫妻の関与を疑わない方がどうかしている

 国有地が異常な安値で森友学園に売却された疑惑で、国側の職員と同学園関係者が値引きを正当化するために「口裏合わせ」をしていたことを示す新たな音声データの存在を国が認める(28日の衆院予算委)など、森友学園問題の闇は留まるところを知りません。

 29日、各紙は一様に疑惑が更に深くなったと述べるとともにその解明を進めるようにとして、次のような社説を打ちました。(NPJより抜粋)
森友、加計論戦 第三者調査委で解明を」(佐賀新聞)、「森友疑惑再燃 洗いざらい経緯の説明を」(西日本新聞)、「予算委質疑 首相答弁は無責任過ぎる」(高知新聞)、森友問題で質疑/異例ずくめ取引浮き彫りに」(河北新報)、森友問題の政府側答弁 ほころびが明白になった」(毎日新聞)、「森友・加計 解明は首相にかかる」(朝日新聞

 河北新報の社説とブログ「くろねこの短語」の記事を紹介します。
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【社説】森友問題で質疑/異例ずくめ取引浮き彫りに
河北新報 2017年11月29日水曜日
 聞けば聞くほど、「特例」扱いが次々と明らかになり、異例ずくめの土地取引だったことが浮き彫りになったのではないか。
 学校法人「森友学園」への国有地売却額問題を巡って、きのうまで2日間行われた衆院予算委員会の質疑である。
 財務省の太田充理財局長は、2013~16年度の同様の土地取引計972件のうち、売却額を非公表としたのは森友学園の契約1件だけだったことを明らかにした。
 将来の売却を約束にした定期借地契約や分割払いを認めたのも、森友学園だけだったという。あまりにも厚遇ぶりが目立ち、特別な事情があったとしか思えない。

 野党によって新たな音声データも明らかにされ、太田局長は存在を認めた。近畿財務局の担当者が売買契約を結ぶ前の昨年春、学園側を訪問した際のものだという。
 「ごみは国が知らなかった事実なので、そこはきっちりやる必要があるというストーリーをイメージしている」という担当者の発言があるとされ、値引きの「口裏合わせ」が疑われる経緯が語られているという。
 太田局長は「新たな地下埋設物の撤去費用を見積もるために必要な資料の提出をお願いしただけだ」などと反論、疑惑を否定した。
 さらに近畿財務局の担当者と森友学園側が昨年5月、価格交渉をしていたとうかがわせる音声データの存在も認めた。
 学園側が「ゼロ円に近い形で払い下げを」と要求。財務局が「ゼロに近い金額まで努力する作業をしている」と答える生々しい内容だった。

 どう考えても国が具体的な金額を挙げて、国有地の値引きを巡ってやりとりするのは不自然ではないか。
 約8億円値引きされた売却額をずさんとした会計検査院の報告も取り上げられた。
 ごみ撤去費用の算定根拠が不十分なことに加え、値引きの経緯を記録した評価調書が作成されなかったことや、残された文書では学園側とのやりとりが全く検証できない、と指摘している。
 これだけの落ち度を問題視されながら、政府関係者は「仮定によって幾つかの推計値がある」などとして、従来の政府対応が不適切と認めなかった。不誠実な対応と言わざるを得ない。
 安倍晋三首相に至っては「財務省を信じて『適切』と申し上げた」と言い逃れのような答弁もした。専ら強調したのは国有財産の処分手続きの見直しといった制度改革。問題の本質をずらそうとしているようにも映った。
 こうした不可解な土地売買がなぜまかり通ったのか。森友学園が開設を目指した小学校の名誉校長に、安倍首相夫人の昭恵氏が一時就いたことと関係があるのか。本人を含め関係者の国会招致は不可避だろう。


これで総理夫妻の関与を疑わない方がどうかしている!
くろねこの短語 2017年11月29日
 笑っちゃうほどの絶妙のタイミングで北朝鮮がミサイル発射。しかも、昨日の夜、ペテン総理は何ヶ月ぶりかで公邸に宿泊というから、分かりやすいったらありゃあしない。
 分かりやすいとくれば、森友学園への異常な低価格による国有地売却についての財務省の答弁だ。シュレッダー佐川君の後継の理財局長が、踏み絵ほ踏まなかった立憲民主の川内君の質問に答えて、

公共随契すべてが1194件。そのうち売り払い前提の定期借地とする特例処理を行った事例は本件のみ」(財務省 太田充理財局長)
「ご指摘の延納の特約を付して売却した事例、これは本件のみでございます」(財務省 太田充理財局長)
「平成25年度から28年度までの間、公共随契によって売却した件数は972件。そのうち非公表にしたものというのは本件のみ」(財務省 太田充理財局長)

 だとさ。スゲーなあ! 「1194分の1」そして「972分の1」の「特別措置」なんだよ。ようするに、森友学園に異例中の異例の「特約」付けて国有地を売却したってことなんだね。これだけの「特約」付けるからにはそれなりの理由が必要なわけで、そりゃあペテン総理とその私人の嫁の影がチラホラするのは疑いようがない。なんてったって、ペテン総理の私人の嫁は、当時、森友学園が開校予定だった小学校の名誉校長だったんだからね。裁判だったら、かなり確度の高い状況証拠ってところだ。

 でもって、どうやら財務省は工事業者とも語らって、「ごみは地下9mまで」ってことで調整しようとしていたことが音声記録で判明しちゃいました。ここでもシュレッダー佐川君の跡目を次いだ理財局長は、「口裏合わせはしていない」って強弁しとります。ひょっとして、この御仁も国税庁長官の椅子を狙っているのか・・・。

 それはともかく、この質疑中にもペテン総理は時折、薄笑いしてるんだね。その態度は何だ!・・・ってついTVに向かって叫びたくなるのであった。

北朝鮮が「ICBM級」ミサイル試射に成功

 北朝鮮29早朝、通常軌道なら飛行距離1万3000キロ以上で、米国全土が射程に入るICBM弾道ミサイル火星15)の試射に成功しました。
 実際はロフテッド軌道を選択したので、高度約4500キロに達したのちに青森県西方約250キロの日本の排他的経済水域内に落下したとみられます。
 これについてロシア下院外交委員会のスルツキー委員長は「日米韓が派手な軍事演習を行うなどで北朝鮮を挑発したため、緊張を高めてしまった」と指摘しました。

 北朝鮮は、米国が「2か月間核実験やミサイルの試射を止めれば会談に応じる」としたのに期待してそれらを自制してきましたが、その結果がトランプ大統領による「テロ支援国家再指定」で北朝鮮の対話への期待は完全に裏切られました。
 これは全く意外な展開で、これまでは米国は北朝鮮に対して非公式の連絡ルートを維持していて硬軟両用の対応をしていると見られていましたが、こうなると米国には最初から会談をしようとする意図がなかったのではないかという疑いが生じます。

 日本のメディアは、「北朝鮮の挑発」という言い方をし、安倍首相は例によって「暴挙を断じて容認できない」と最大級の非難をしましたが、米・韓や日・米が日本海でこれに見よがしの軍事演習を行っていることこそが、北朝鮮に対する最大の威嚇であり挑発です。
 安倍首相には北朝鮮を非難するのに急でその自覚が全くないようです。「徹底的に締め上げて北朝鮮が折れてくるのを待つ」と公言するに至っては、実に野蛮な考え方というしかありません。
 かつて国際社会は事実上イラクに降伏を進めましたが、そののちにイラクが無残に壊滅させられときに、ロシアなどを除き西欧はどの一国もアメリカを制止しょうとはしませんでした。
 北朝鮮はそのことを肝に銘じて現在の対応をしていると言われています。
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北「ICBM級」ミサイル発射 ロシアは日米韓による挑発批判
日刊ゲンダイ 2017年11月29日
 北朝鮮が日本時間の29日午前3時18分ごろ、弾道ミサイル1発を発射した。韓国軍や日本政府によると、ミサイルは首都平壌近郊の平安南道平城付近から東方に向け発射され、約50分間飛行。高度は約4500キロ、飛行距離は約960キロに達した。青森県西方約250キロの日本の排他的経済水域内に落下したとみられる。

 小野寺防衛相は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)級と判断すべき能力だ」と発言。北朝鮮が開発に傾注している「火星14」とみられる。また、小野寺防衛相は「いくつかに分かれて落下した」と語り、多段式の可能性も示唆した。

 通常より高い高度に打ち上げるロフテッド軌道だったとみられ、マティス米国防長官はこれまでで最も高い軌道だと指摘した。米専門家は通常軌道なら飛行距離は1万3000キロ以上で、米国の首都ワシントンを含む米国全土が射程に入るとの見方を示した。

■ロシア「日米韓が緊張高めた」と批判
 北朝鮮が2カ月以上自制していた挑発行為を再開させたことに、安倍首相は「暴挙を断じて容認できない」と非難。北朝鮮への「圧力を最大限に高めていく」と相変わらず。トランプ米大統領も「米国の姿勢は変わらない」と、軍事力を背景に北朝鮮に最大限の圧力をかける方針を維持する。

 こうした日米両国首脳の圧力一辺倒の姿勢に、ロシア下院外交委員会のスルツキー委員長は「日米韓が派手な軍事演習を行うなどで北朝鮮を挑発したため、緊張を高めてしまった」と指摘。これが国際社会の外交専門家の大方の見方だ。

 今回のミサイル発射で、金正恩が米国を攻撃する能力を手に入れたことが分かった。安倍首相もトランプもここらで少し頭を冷やさないと、取り返しのつかない事態を招きかねないのだ。


北朝鮮がミサイル発射、テロ支援国家再指定に反発か
日経新聞 2017年11月29日
【ソウル=山田健一】韓国の聯合ニュースは29日未明、北朝鮮が同日午前3時17分ごろ、首都平壌近郊の平安南道・平城(ピョンソン)付近から日本海に向けてミサイル1発を発射したと報じた。韓国軍合同参謀本部の関係者の話としている。同軍が米軍と連携してミサイルの種類など詳細な分析を急ぐとともに、追加挑発の可能性に備えて警戒を強めている。

 北朝鮮が夜明け前にミサイルを打つのは異例。聯合によると、平城付近からミサイルを打つのは初めてで「挑発に対する米韓の対応力を調べる狙いがある」と分析した。
 北朝鮮による弾道ミサイル発射は、9月15日に中距離弾道ミサイル「火星12」を日本の上空を通過する形で北太平洋上に発射して以来、約75日ぶり。2カ月以上にわたり大きな挑発を自制してきたが、米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことに反発し、米国を再び威嚇しようとした可能性がある

 韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相は外国メディアとの28日の記者会見で、北朝鮮の朝鮮人民軍に「注目すべき動向がみられる」と話し、近く挑発を再開する可能性に言及していた。


北朝鮮、新型ICBM「成功」 米本土全域射程か 核武力「完成」と宣言
時事通信 2017年11月29日
【ソウル時事】北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは29日正午(日本時間同日午後0時半)、重大報道を通じ、「新たに開発した大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』の試験発射に成功した」と発表した。同テレビは新型のICBMが「米本土全域を攻撃できる」と主張し、「われわれが目標としたミサイル兵器体系開発の完結段階に到達した」と強調。現地指導した金正恩朝鮮労働党委員長は「本日、国家核武力完成の歴史的大業、ミサイル強国の偉業が実現した」と宣言した。

 韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮は同日午前3時17分(日本時間同)ごろ、中部の平城付近から東方に向け弾道ミサイル1発を発射。ミサイルの高度は約4500キロに達し、約960キロ飛行して青森県西方約250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定され、日米防衛当局はICBMだとみている。
 ミサイルの飛行時間は約50分。小野寺五典防衛相は、通常より高い高度に打ち上げるロフテッド軌道だった可能性が高いとの見方を示した。自衛隊による迎撃措置は取らなかった。マティス米国防長官は高度に関し、これまでで最も高いと指摘した。

 米専門家によれば、通常の角度で発射した場合、射程は米本土全域を含む約1万3000キロに達する可能性がある。北朝鮮が2カ月以上自制していた挑発行為を再開させたことで、国際社会が北朝鮮の核・ミサイル開発放棄に向けた圧力をさらに強めるのは必至で、緊張が高まるのは避けられない。
 安倍晋三首相は「暴挙を断じて容認できない」と非難。北朝鮮への「圧力を最大限に高めていく」と述べた。国連安全保障理事会は日米韓3カ国の要請を受け、米東部時間29日午後4時半(日本時間30日午前6時半)に緊急会合を開く。
 トランプ米大統領は「事態を極めて深刻に受け止めている」と強調。一方で北朝鮮への対応について「何も変わらない」と述べ、軍事力を背景に、外交と経済制裁で最大限の圧力をかける方針は維持する考えを示した。安倍、トランプ両氏は日本時間29日朝、電話会談を行った。

30- 元米海兵隊員がイラク戦争の体験を語る

 横須賀市で26日に開かれた米退役軍人らが平和を語る集会で、元米海兵隊員マイク・ヘインズさんは、2003年にイラク侵略の地上部隊に加わった経験について
「敵の拠点として襲撃した家が、実際はただの民家のことも多かった」「おびえる子どもの泣き声が今も寝る時に聞こえる」「テロリストを倒すと乗り込んだが、テロ行為をしていたのは私たちの方だった」と、侵略戦争の残虐さを生々しく語りました。

 イラクでは、当時から国の「政府+米軍需産業シンクタンクが一体化した「戦争によってお金を稼ぐシステムがあったということです。
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元米海兵隊員「戦争で平和はつくれない」 イラクでの経験踏まえ
東京新聞 2017年11月28日
 二〇〇三年のイラク戦争に参加した元米海兵隊員マイク・ヘインズさん(41)が二十六日、横須賀市であった退役軍人らが平和を語る集会に参加し、自らの経験を踏まえ「戦争で平和はつくれない」と訴えた。

 〇三年三月に首都バグダッドを空爆後、米軍が展開した陸上作戦に加わった。「敵の拠点として襲撃した家が、実際はただの民家のことも多かった」と振り返り、「おびえる子どもの泣き声が今も寝る時に聞こえる」と明かした。
 戦争は憎悪の連鎖を生み、「イスラム国」(IS)の台頭を招いたともいわれる。「テロリストを倒すと乗り込んだが、テロ行為をしていたのは私たちの方だった」と悔やむ。

 現地では、ビジネスを始めようとする米国の業者に多く出くわした。「米国には政府と軍需産業、シンクタンクが一体になり、戦争によってお金を稼ぐシステムがある」と指摘。米軍と一体化が進む自衛隊の現状を懸念し、「日本も同じ道を歩まないか」と警鐘を鳴らした。
 ヘインズさんは、退役軍人らでつくる米国の反戦団体「ベテランズ・フォー・ピース」(VFP)のメンバー。集会には日本支部(VFPJ)代表の元陸上自衛隊員、井筒高雄さんも姿を見せた。(福田真悟)

2017年11月29日水曜日

質問時間強奪で森友・加計疑惑隠しをした上に馴れ合いの質問に終始した与党

 安倍政権は、自分たちが野党の時代に要求して実現した国会での質問時間の割合=野党8与党2を、議員数に「比例させろ」などと無体なことを言い出した挙句に、今回の衆院予算委では無理やり野党9与党5に変更させました。
 それは議院内閣制の原理に反するもので海外にも例がなく、第一、与党議員に問題の本質をつく質問など出来はしないというのが大方の見方でした。
 結果は案の定「よいしょの連発」、インタビューと見まごう質問のオンパレードで惨憺たるものでした。馴れ合いに終始する質問ほど見苦しいものはありません。国会を冒涜するものです。

「~立憲民主党の長妻昭代表代行は委員会終了後、相当よいしょ、お互いエールを送り合っていた。褒め合いのようだった」と批判しました。

議院内閣制のもとでは与党と政府が一体となって政権を運営し、政府は政策や法案を決める過程で与党と事前調整する。与党の国会質問は調整結果の確認や今後への注文が多くなる。
 政府説明を確認して問題なしとする与党質問では監視にならない」と批判しています。

 また28日の朝日新聞は、小池晃議員(共産党)の「発言録」として、
「(問題点を突っ込んで追及するのが質問であってあれは質問じゃなく、インタビューっていうんじゃないか。『総理が自らの言葉で語って頂きたい』とか『国民が分かるようにご説明いただきたい』とか言っていた。やはり国会は議院内閣制ですから、与党と政府は一体なんで与党に質問しろと言ったって無理なんですよ。結局、ご説明いただきたいと言って、ずっと政府の側は言いたいことをしゃべる
という「傑作」を紹介しています。

 LITERAは、「与党は森友・加計疑惑を隠すために質問時間を野党から強奪した」ものの、彼らが行った質問はフェイク(=虚偽)だらけ だったと批判しました。
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質問時間強奪で衆院予算委は自民党議員による森友・加計疑惑隠し、
フェイク質問だらけに!
LITERA 2017年11月27日
 与党5対野党9という不当極まりない質問時間配分で開かれた、本日の衆院予算委員会。閉会中審査を除くと約半年ぶりに委員会答弁に立った安倍首相は「真摯な説明を丁寧におこなう」と、いいかげん聞き飽きた嘘の台詞をきょうも吐いた。
 しかし、案の定そこで展開されたのは、「真摯」「丁寧」とは真逆の、人を食ったような無礼千万の答弁、そして自民党議員の質問だった

 たとえば、森友学園問題における不当土地取引の決定的証拠である音声データにかんしての答弁がそれだ。
 この音声データは、2016年5月中旬から下旬、籠池泰典前理事長と近畿財務局の池田靖・国有財産統括官(当時)のやりとりを記録したもの。このなかで籠池氏が「(ゴミ撤去などの費用として)1億3000万円がうんぬんというよりも、ぐーんと下げていかなあかんよ」と要求すると、池田国有財産統括官は「理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を、いまやっています」と返答。実際、その後、不動産鑑定士は土地評価額を9億5600万円と算出し、ごみ撤去費用を値引きして土地売却価格は1億3400万円となった。つまり、池田国有財産統括官が明言した通りになっているのである

 一方、国税庁長官に“栄転”した佐川宣寿・財務省前理財局長は、「価格につきましてこちらから提示したこともございませんし、先方からいくらで買いたいといった希望があったこともございません」と答弁してきた。音声データを聞けば、これが虚偽答弁であったことは明白だ。
 にもかかわらず、今日この音声データについて質問を受けた麻生太郎・財務大臣は「事務方に説明させる」とし、それを受けて財務省の太田充理財局長はこう答えたのだ。
「(音声データの内容は)国としての有益費1億3000万円を支払っている以上、それを下回るかたちでの売却はこの土地にかんする収支がマイナスになるということを意味し、国としてそのような対応をとることは考えられない、という趣旨の話」
不動産鑑定評価額が出る前に先方から買い受け希望価格が提示されたという認識はございませんし、当方から売却価格を提示したということもございません

 一体、あの音声をどう聞いたらそんな話になるのだろう。音声データで池田国有財産統括官ははっきり「0円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を、いまやっています」と発言しているのだ。それを太田理財局長は“「1億3000万円を下回ることは考えられない」と説明しているだけ”と強弁し、“佐川理財局長の答弁は虚偽じゃない”と言い張るのである。寝言は寝て言え、という話だ。
 だが、虚偽答弁をしてきたのは、佐川前理財局長だけではない。安倍首相もまた同様に、国会で「適正な価格だ」と答弁してきた張本人だ。しかし、そのことについて追及を受けると、「財務省が国土交通省が適切に処分していたと報告を受けていたので、私の発言はその理解の上でのもの」と開き直り
 しかも、会計検査院が土地の値引き額を「十分な根拠が確認できない」とまとめたことについて問われて安倍首相は、「国有財産の売却について業務のあり方を見直すことが必要と考えている」と言うだけ。国民の資産が不当に安く払い下げられているというのに、「なぜそんなことになったのか」という疑惑の真相を追及するとも言わず、「これからは見直す」で幕引きを図ろうとするのである。

 さらに、加計学園問題についても、安倍首相はいつもの言い訳答弁を繰り返し、言うに事欠いて「民間有識者のみなさんが私を忖度することなど、到底考えられない」とまで言い出す始末。国家戦略特区ワーキンググループの今治市へのヒアリングでは加計学園幹部が参加し発言していたにもかかわらず、議事要旨ではその事実を伏せていたことが発覚しているが、それでもなお「プロセスには一点の曇りもないと有識者は言っている」と主張したのだ。

「子どもを産んだら女じゃない」の菅原一秀・自民議員が安倍擁護質問を展開
 しかし、安倍首相もさることながら、きょうの衆院予算委で醜態を晒したのは、3時間半もの質問時間を得た自民党議員だ。
 まず、最初に質問に立った田村憲久議員は、モリカケ問題について、こう宣った。
「何もないことを証明するのは総理がおっしゃられる通り『悪魔の証明』ですから。赤いカラスがいるかいないか、これ、赤いカラスをいないと証明しようとするとすべてのカラスを捕まえなければ証明できないわけで、非常に難しい」
どうか『悪魔の証明』ではありますけども、天使のようにですね、謙虚に誠実に、そして実直にお答えいただきたい
「悪魔の証明」も何も、証拠となる文書は「破棄した」の一点張りのくせに、よく言えたものだと呆れるが、この田村議員の上をゆく安倍首相擁護を繰り広げたのが、つづいて質疑に立った菅原一秀議員だ。
 菅原議員といえば、元愛人に「子どもを産んだら女じゃない」などという暴言、モラハラを繰り返していたことを、当の元愛人に「週刊文春」(文藝春秋)誌上で告発されたことも記憶に新しい“ゲス議員”のひとりだが、その菅原議員はきょうの予算委で森友・加計問題を取り上げた。
 だが、これは「疑惑隠しはしていない」「ちゃんと質問している」というポーズをとるためだけのもの。現に、前述の音声データに対して菅原議員は「籠池夫妻が執拗に極めて威圧的な言い方で迫っている。そういう問い詰めに普通の人であれば気押されてしまって、非常にセンシティブになってしまう」と述べ、あたかも近畿財務局は籠池氏に脅迫された被害者のように一方的に説明。

 また、菅原議員は音声データ問題の追及もそこそこに、「ここでちょっと話変えますけど」と言い出し、先日、情報公開された森友学園が財務省に提出した小学校の設置趣意書の話を唐突にもち出したのだ。
 この設置趣意書については、朝日新聞が籠池氏の証言として「安倍晋三記念小学校」の校名を記したと今年5月9日付けの記事のなかで紹介。しかし、今回公開された設置趣意書には「開成小学校」と書かれていた。この問題を、先の選挙前に自民党広報副本部長に就任したばかりの和田政宗議員はネット上で〈朝日新聞は紙面を通じて籠池氏の嘘を拡散した形になりはしないか〉と猛批判。朝日の記事をもとに質問した野党議員に対しても〈偽メール事件に匹敵するような案件〉と述べ、こうした和田議員の主張を麻生太郎財務相も使い、「朝日新聞は書いてあるとあおった」「自分に都合の悪いところを隠すんじゃない。だから報道はゆがんでいるといわれるんだ」とバッシング。現在はネトウヨが嬉々としてそうした記事を拡散する事態となっている。

 そして、きょうの国会でも、菅原議員はこう述べたのだ。
「この朝日新聞ではですね、籠池氏のこの発言、『安倍晋三記念小学校』とそのまま載せているんですよ。言ってみればフェイクの発言をそのまま載せるとフェイクニュースになるというような典型でありまして」
野党のみなさんはフェイクの発言に基づいて質問したり、そういったことが結局間違った方向にミスリードしてきた

「朝日報道はフェイク」質問こそフェイクだ! 
 だが、この質問こそが「フェイク」になり得る可能性がある。というのも、今回、公開された設置趣意書にはたしかに「開成小学校」と書かれているが、設置趣意書は複数あるのではないかと見られているからだ。事実、情報公開請求をおこなっていた上脇博之・神戸学院大学教授もツイッターで〈開示された文書は全部不開示に近かった文書と比べると微妙に異なっていました〉〈小学校設置趣意書は複数あるようなので再度情報公開請求しておきました〉と述べている。
 つまり、「安倍晋三記念小学校」と書かれた設置趣意書が存在する可能性はあるのに、「朝日はフェイクニュースを流した」とバッシングの材料に仕立て上げ、自民党議員がテレビ中継されている予算委員会で質問時間を使って喧伝したのだ。

 しかも、菅原議員は加計学園問題でも「獣医学部認可は新たな歴史の1ページが開かれた」と言い、「鳥インフルエンザ、BSE、口蹄疫、最近ではヒアリといったものがあって獣医師そのもののニーズが高まっている」と獣医学部新設は妥当な判断だと強調。言わずもがな、ヒアリ対策に当たっているのは生態学や生物学の専門家であって獣医師は関係ない。嘘八百もいいところだが、挙げ句、菅原議員は「官邸からの圧力」を文科省に否定させた上で、前川喜平・前文科事務次官について、こんなことを声高に叫んだのだった。
「普通に考えればですよ、(前川氏)本人の思い込み、こういうふうにも見えてくるわけです」
「前川前次官の自作自演という立ち振る舞いに我々が振り回された、振り回されている」
 この期に及んで、なおも前川バッシング。……こんなことを繰り返しているから、ずっと国民は納得できないままでいるのだ。そして、与党の質問時間を増やした結果、このように疑惑追及のポーズをとりつつも安倍首相をアシストする不毛な質問しか出てこないのである。

 安倍首相はきょうの委員会で、野党の質問時間削減を萩生田光一・自民党幹事長代行に指示した事実はないとし、多くの新聞の報道は“誤報”との認識を示したが、立憲民主党の長妻昭議員から「指示をしていないと言うなら自民党の国対委員長に時間配分を従来通りでいいんじゃないかと言っていただけませんか」と迫られると、それを無視した。
 もちろんそんなこと、安倍首相が言うわけがないだろう。実際、委員会が閉会されると、安倍首相は朝日・前川批判を繰り出した菅原議員のもとに近づき、「きょうは良かったよ」と言わんばかりの笑顔で固い握手を交わしていたのだから。
 こんな茶番劇に、なぜ国民は付き合わなくてはならないのか。自民党による質問時間横取りは、まさに民主主義の危機というしかない。(編集部)

クロスオーナー制度を禁止せよ(日々雑感)

 メディアにおけるクロスオーナーシップ(クロスオーナー制度)とは、現在の日本のように、新聞社が放送業に資本参加するなどして、特定資本が多数のメディアを傘下にして影響を及ぼすことをいい、海外では禁じられています。
 日本でも民主党政権時代に、小沢一郎氏などによってこの制度の禁止が提案されましたが、メディアからの大反対があったのでしょう、その後は沙汰やみになっています。

「日々雑感」氏は、日本のようにマスメディアが僅か数社の全国紙によって牛耳られている状況が、政権によるマスメディア支配を可能にしているとして、この制度を禁止しなければならないと述べています。
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電波の規制改革よりも前に「クロスオーナー制度」を禁止せよ。
日々雑感 2017年11月27日
政府の規制改革推進会議は、電波の割り当て制度の改革について、民間の新規参入を促すため、電波の周波数帯の利用権を、入札価格だけでなく、企業の技術力などを総合的に評価して決める新たな方式の導入を求めるなどとした答申案をまとめました。
政府の規制改革推進会議は、電波の割り当て制度の改革や、待機児童の解消に向けた保育制度の見直しなどの重点検討分野について、改革の方向性を盛り込んだ答申案をまとめました。

それによりますと、電波の割り当て制度の改革で、民間議員が、新規参入を促す必要があるとして提案していた、電波の周波数帯の利用権を競争入札で決める「電波オークション制度」の導入については、業界団体などから慎重な意見が出ていることを踏まえて、継続課題にするとしています。

一方で、電波の周波数帯の利用権を、入札価格だけでなく、企業の技術力などを総合的に評価して決める新たな方式の導入を求めていて、来年度中に、電波法の改正案を提出すべきだとしています。

また、待機児童対策で、企業が設置した保育所では、従業員以外の子どもの受け入れが定員の半数までとなっていることについて、空きがある場合は、半数を超えて受け入れられるように上限の撤廃を求めています。

規制改革推進会議は、29日開かれる会合で答申を決定し、安倍総理大臣に提出することにしています
(以上「毎日新聞」より引用)

 2011年7月24日から始まった「地デジ」は多くの家庭になどにあったブラウン管式のアナログテレビを廃品にしてしまった。私の家でも三台のアナログテレビが「廃品」になったことを契機にテレビ視聴をやめた。
 そうした莫大な負担を各家庭やホテル業者などに課した「地デジ」への切り替えは電波の開放が謳い文句だった。つまり「地デジ」にすればチャンネル数が増えて電波が有効活用できる、との事前説明で国民や各企業は納得させられた。

 しかし実際に「地デジ」放送が始まって六年が経つが、テレビチャンネルは増えていないしテレビ放送事業法が改定されて新規参入の敷居が低くなったとは寡聞にして知らない。これも官僚たちの謳い文句をそのままオウム返しに国民への説明に使った馬鹿な政治家による暗愚政治の賜物かと嘆息するしかない。
 日本の政治家はかくも暗愚揃いだ。事前説明と実施後の実態とが大きく乖離していることがしばしばある。

 消費税もそうだ。最初の導入時に「社会福祉の財源」に消費税の安定財源は必要だと説明された。5%増税時も8%増税時も同じような説明がされた。そして今回の10%増税を前にして一部を「福祉」や「国民への投資」の財源だと説明して安倍自公政権は大勝を果たした。
 なぜこうしたデマによる世論操作が可能なのか。それほど日本国民は愚かで騙され易いのか。いやそうではない。日本のマスメディアが僅か数社の全国紙によってテレビまでも牛耳られ、政権による支配がマスメディアにガッチリと及んでいるからだ。

 米国のような百社前後のテレビ放送局があって、各社各様に自由闊達な政権との距離感を保つマスメディアが日本にはない。その元凶は新聞各社がテレビ局を支配する「クロスオーナーシップ」にある。ちなみに米国ではクロスオーナーシップは禁止されている
 しかも日本は電波の管理が総務省で行われ、総務官僚の恣意的な差配で電波利用税が年間6億円前後と異常に低く抑えられている。テレビ放送事業者は「電波利用タダ」状態が日本では定着している。

 なぜテレビ電波のクロスオーナー制度を禁止して、すべてに解放された入札制度にしないのだろうか。もちろんNHKも公共放送としての使命を果たしたとして民営化すればよい。年間6000億円もの巨額費用を浪費する放送局が「公共放送」だと海外の放送局が知れば爆笑ものだろう。
 日本のテレビ放送事業は外国の常識に照らせば非常識の塊だ。現在ではネットを「配信手段」とする放送局もいくつかある。自由な意見を表明するには現行数社の全国紙にガッチリと握られたテレビ局では不可能だ。

 そして最も危惧するは日本の寡占的なマスメディアによる「言論統制」が日本の世論を支配していることだ。例えば「CO2地球温暖化」という科学的根拠のない「説」に基づくプロパガンダを唯一無上の「真理」とする放送以外認められていない、という事実だ。例えば日本は朝鮮半島や台湾を「併合」したにも拘わらず「植民地支配」と表現するのが日本のマスメディアでは常態となっていることだ。
 なぜ自由闊達な様々な意見が日本のマスメディアに見られないのだろうか。それが国際問題になろうが、それは発信した個々人の問題であって、マスメディアは自由闊達な発言の場を提供するだけで良いはずだ。しかし、現実はそうはなっていない。きわめて厳格な「言論統制」がなされ、使ってはいけないとして特定の言葉が使用禁止として「言葉狩り」がなされている

 それらの元凶もクロスオーナーシップに関連している。日本は決して自由な国ではない。ことに言論に関しては後進国以下の「言論統制」国家だ。

29- 柄谷行人氏の護憲論にうなづく(天木直人氏)

 新党憲法9条の党首である天木直人氏が、27日の毎日新聞の「そこが聞きたい」のインタビュー記事で柄谷行人氏が述べた「憲法9条の存在意義」等に大いに共鳴したことを、メールマガジンで明らかにしました。

 天木氏は、柄谷氏の9条論を次の3点にまとめています。
1.憲法9条は単にJHQから押し付けられたものではなく、日本人自主的に選択したもので、いわば『文化』である。
2.長い戦国時代の後、戦争を否定する徳川幕府体制が生まれ、国内だけでなく、東アジア一帯の平和が実現され徳川の平和と呼ばれ徳川の文化こそが9条の精神を先取りしたものであった。
3.9条『戦争放棄』は単なる放棄ではなく、国際社会に向けられた『贈与』と呼ぶべきもので、贈与によって日本は無力になるわけではなく、国際世論を勝ちとるものとなる。

 天木氏は、「素晴らしい言葉まさしく憲法9条の存在意義がこれらの言葉の中にある。私が考えていることと同じ事が語られている」と述べています。

 元になった毎日新聞のインタビュー記事も併せて紹介します。
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柄谷行人(からたにこうじん)さんの護憲論にうなづく
天木直人のメールマガジン 2017年11月27日
(阿修羅 投稿 市村 悦延 より転載)
きょう11月27日の毎日新聞で、文芸評論家であり思想家の柄谷行人(からたにこうじん)さんが語っていた。
「そこが聞きたい 憲法9条の存在意義」というインタビューの中で答えていた言葉だ。
 その中に、私が考えていることと同じ事が語られていた。

 ひとつは押しつけ憲法であっても、それを日本人が受け入れたことこそ重要であるということだ。
「・・・確かに9条は連合軍総司令部(GHQ)に押しつけられたものです・・・しかし、9条がGHQに強制されたことと、日本人がそれを受け入れたことは矛盾しません。実際、GHQが憲法9条の改正を言って来たのに当時の吉田茂首相はそれをしりぞけました。
 まず外部の力による『戦争の断念』がありました。それが良心を生み出し、それが『戦争の断念』を一層求めたのです。
 その意味で9条は日本人による自主的な選択です。いわば『文化』です・・・」と。

 二つは明治維新に対する次の如き評価だ。
「・・・長い戦国時代の後、戦争を否定する徳川幕府体制が生まれ、国内だけでなく、東アジア一帯の平和が実現されました。『徳川の平和』と呼ばれています。武士は帯刀しましたが、
刀は身分をあらわす象徴であり、武器ではなかったのです。徳川の文化こそが9条の精神を先取りした『先行形態』です。
 ところが、明治維新後に日本は徴兵制をはじめ、朝鮮半島を植民化し、中国を侵略しました。
9条が根ざしているのは、明治維新以後、日本人がやってきたことに対する無意識の悔恨です・・・」
 ちなみに天皇と徳川幕府の関係を次のように語っている。
「・・・徳川家康は天皇を丁寧に扱いました。天皇を否定したら、他の大名が天皇を担いで反乱を起こすに決まっていたからです。
 徳川は天皇を祭り上げて、政治から隔離した上で、徳川幕府体制の中に位置づけました。それは戦後憲法における『象徴天皇』の先行形態だと言えます・・・」

 三つ目は9条が国際社会に果たす役割だ。
「・・・9条にある『戦争放棄』は単なる放棄ではなく、国際社会に向けられた『贈与』と呼ぶべきものだと思います。贈与された方はどうするか。例えば、どこかの国が無防備の日本に攻め込んだり脅迫したりするなら、国際社会で糾弾されるでしょう。
 贈与によって日本は無力になるわけではありません。それによって、国際世論を勝ちとります。贈与の力は軍事力や経済力を超えるものです・・・ 具体的には日本が国連総会で『9条を実行する』と表明することです。これは、第二次世界大戦の戦勝国が牛耳って来た国連を変え、ドイツの哲学者カントが提唱した『世界共和国』の方向に国連を向かわせることになると思います・・・」
 素晴らしい言葉だ。まさしく憲法9条の存在意義がこれらの言葉の中にある。


そこが聞きたい
憲法9条の存在意義 ルーツは「徳川の平和」 思想家・柄谷行人
毎日新聞 2017年11月27日
 10月の衆院選で与党の自民、公明両党に希望の党、日本維新の会を加えた「改憲勢力」が3分の2を上回る議席を獲得したことで、今後、国会での憲法改正論議が本格化しそうだ。焦点は平和憲法の代名詞となってきた9条。安倍晋三首相は自衛隊の存在を明記したいと考えている。私たちは9条の恩恵を受けてきたのか、それとも束縛されてきたのか。9条の存在意義を思想家の柄谷行人さん(76)に聞いた。【聞き手・南恵太、写真・宮本明登】

--自民党は衆院選で「9条への自衛隊明記」など憲法改正4項目を公約に掲げて勝利しました。今後、憲法改正が進むと見ますか。
 これまで自民党は「憲法9条はそのままにしておいて、自衛隊を認める」という「解釈改憲」でやってきました。衆院選に際して9条を変えると言ったのは安倍首相が初めてです。ただし、自衛隊を公認する条文を憲法に付け加えるだけだというわけです。しかし、衆院選で3分の2以上の議席を取っても、国民投票になると、ただではすみません。もちろん、安倍首相はそれを予期しているでしょう。「改憲ではない。加憲だ」という説明で国民投票を乗り切れると考えているようです。

 しかし、それによって、事実上の憲法改定ができるか。「国の交戦権はこれを認めない」という9条の条文が残る以上、「加憲」は今までの解釈改憲と同じようなものです。憲法上、自衛隊は海外で戦争をすることは許されません。軍事同盟の言い換えである集団的自衛権も現行憲法では認められません。このような状態を本当に変えたいのであれば、安倍首相は堂々と憲法の改定を主張すべきなのです。しかし、それはできません。もしそうしたら、国民投票で負けますから。

--なぜ、国民投票で改憲が否決されると思われるのですか。
 9条は日本人の意識の問題ではなく、無意識の問題だからです。無意識は潜在意識と同一視されていますが、違います。潜在意識は教育や宣伝によって操作することができます。無意識はオーストリアの精神分析学者、フロイト(1856~1939年)の言う「超自我」==だと考えるべきです。超自我は意識を統御するものです。9条は日本人の戦争経験から来たものですが、意識的な反省によるものではありません。従って、教育や宣伝で変えることはできません。もし、9条が意識的な反省によるものであったなら、ずっと前に放棄されたでしょう。

--9条が日本人の無意識の中に根付いているのはなぜですか。
 確かに9条は連合国軍総司令部(GHQ)に押し付けられたものです。当時、GHQのマッカーサー元帥は天皇制を維持しなければ日本で大きな反抗が起こると思っていました。(象徴天皇制と国民主権を規定した)憲法1条を制定するため、当時のソ連などに「日本は変わったのだ」という説得材料としての9条でした。

 しかし、9条がGHQに強制されたことと、日本人がそれを自主的に受け入れたことは矛盾しません。実際、GHQが憲法の改定を言ってきたのに当時の吉田茂首相はそれをしりぞけました。まず、外部の力による「戦争の断念」がありました。それが良心を生み出し、それが「戦争の断念」を一層求めたのです。その意味で9条は日本人による自主的な選択です。いわば「文化」です。

--日本の歴史の中に9条を生み出す土台があったのでしょうか。
 長い戦国時代の後、戦争を否定する徳川幕府体制が生まれ、国内だけでなく、東アジア一帯の平和が実現されました。「徳川の平和」と呼ばれています。武士は帯刀しましたが、刀は身分を表す象徴であり、武器ではなかったのです。徳川の文化こそが9条の精神を先取りした「先行形態」です。ところが、明治維新後に日本は徴兵制を始め、朝鮮半島を植民地化し、中国を侵略しました。9条が根ざしているのは、明治維新以後、日本人がやってきたことに対する無意識の悔恨です。

 付言すれば、憲法1条のルーツも徳川時代に始まっています。徳川家康は天皇を丁重に扱いました。天皇を否定したら、他の大名が天皇を担いで反乱を起こすに決まっていたからです。徳川は天皇を祭り上げて、政治から隔離した上で徳川幕府体制の中に位置付けました。それは戦後憲法における「象徴天皇」の先行形態だと言えます。

--現行憲法の1条と9条の関わりをどう見ますか。
 1条と9条には相互依存的な関係があります。現在の天皇、皇后は9条の庇護者(ひごしゃ)になっています。天皇は日本国家の「戦争責任」を自ら引き受けることによって、皇室を守ろうとしていると言えます。つまり、9条を守ることは1条を守ることにもなるのです。かつては「1条(天皇)のための9条(戦争放棄)」でしたが、現在では「9条のための1条」へと地位が逆転しています。

--9条が国際社会で果たしている役割は何でしょうか。
 9条にある「戦争放棄」は単なる放棄ではなく、国際社会に向けられた「贈与」と呼ぶべきものだと思います。贈与された方はどうするか。例えば、どこかの国が無防備の日本に攻め込んだり脅迫したりするなら、国際社会で糾弾されるでしょう。贈与によって、日本は無力になるわけではありません。それによって、国際世論を勝ち取ります。贈与の力は軍事力や経済力を超えるものです。

--北朝鮮情勢が緊迫する中、そうした考え方は「現実離れしている」と反論されそうです。
 現実には、自衛隊を持っている日本は9条を「実行」していません。だから、北朝鮮にも大きな脅威を与えています。しかし、9条を実行すれば状況は違ってきます。具体的に言えば、日本が国連総会で「9条を実行する」と表明することです。それは、第二次世界大戦の戦勝国が牛耳ってきた国連を変え、ドイツの哲学者、カント(1724~1804年)が提唱した「世界共和国」== の方向に国連を向かわせることにもなると思います

聞いて一言
 押し付けられた憲法9条を日本国民が変えようとしなかったのはなぜだろう。戦争に対する国民の反省にその理由を求めるなら、戦争を知らない戦後世代が増えるにつれて9条支持は弱まるはずだが、そうはなっていない。柄谷さんは国民の無意識に主因を見いだし、「9条が強制されたことと、日本人がそれを自主的に受け入れたことは矛盾しない」と説明する。では、9条を受け入れた無意識を精神分析することはできるのか。論理的な結論を導き出すのは難しいかもしれないが、「9条を考える材料」が提供されている。

■ことば
 超自我
 フロイトの精神分析理論の主要概念。良心や理想に照らして自我の活動を統制する精神構造の一つ。柄谷さんは「フロイトは両親や社会のような『外』から押し付けられたものではなく、自らの攻撃欲動が外に向けられた後、内向して形成されると考えた」と解釈している。
 世界共和国
 カントが自著「永遠平和のために」で提唱した世界秩序構想。永遠平和を実現する方策として(1)共和制国家の樹立と維持(2)自由な諸国家による「平和連合」の制度化(3)「世界共和国」の形成--を挙げた。理念上は世界共和国が望ましいが、暴力や権力による強制なしには実現することが困難なため、「消極的な代替物」として諸国家連合が提示されている。構想は国際連盟の創設に影響を与えた。

■人物略歴
からたに・こうじん
 1941年兵庫県生まれ。東京大大学院修士課程修了後、69年文芸評論家としてデビュー。法政大教授、近畿大教授、コロンビア大客員教授などを歴任。近著に「憲法の無意識」(岩波新書)。