2019年6月30日日曜日

公開日にも確たる意図 映画「新聞記者」なぜリスク取った

 東京新聞社会部の望月衣塑子記者の著書を原案にし安倍政権に渦巻く数々の疑惑や官邸支配に焦点を当てた映画「新聞記者」が、28日に公開されました。政権批判が明確なこの映画が官邸からは目の敵にされているのは間違いありません。
 
 製作者は、上映を少数の映画館で規模でやると逆に潰されてしまいかねないことから、全国150館規模で一斉に公開するということです。覚悟のほどが分かります。
 横暴を極める官邸の威光に社会全体が萎縮する中、なぜリスクを取ったのか。日刊ゲンダイがエグゼクティブプロデューサーの河村光庸氏にインタビューしました
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注目の人 直撃インタビュー  
公開日にも確たる意図 映画「新聞記者」なぜリスク取った
日刊ゲンダイ 2019/06/29 10:14 
 参院選(7月4日公示―7月21日投開票)が迫る中、安倍政権に渦巻く数々の疑惑や官邸支配に焦点を当てた社会派サスペンス映画が28日に公開された。東京新聞社会部の望月衣塑子記者の著書を原案にした「新聞記者」だ。
 
 企画始動から2年弱。現在進行形の政治事件をモデルにした作品の上映は異例だ。官邸が巧妙に仕掛ける同調圧力によって社会全体が萎縮する中、なぜリスクを取ったのか。エグゼクティブプロデューサーの河村光庸氏に聞いた。
 
 ――参院選目前の公開です。あえて、このタイミングにブツけたのですか。
 政治の季節をもちろん意識しています。たくさんの人に見てもらいたいので、参院選を狙いました。この6年半で民主主義的な政党政治は押しやられ、官邸の独裁政治化が相当に進んでいる。自民党員でさえも無視されている状況です。にもかかわらず、安倍政治を支えている自民党員、忖度を強いられている官僚のみなさんには特に見てもらいたいですね。単館上映で小さくやると逆に潰されてしまいかねないので、全国150館規模で公開します
 
 ――製作のきっかけは?
 かなり前から政治がおかしい、歪んでいると感じていたのですが、異常だとまで思うようになったのは2年ほど前。伊藤詩織さんが告発した事件がきっかけです。
 
 ――安倍首相と親密な関係にある元TBSワシントン支局長の山口敬之氏に持ち上がったレイプ疑惑ですね。詩織さんの訴えで警察が動き、山口氏は帰国直後に成田空港で逮捕されるはずが、執行直前に逮捕状が取り下げられた。
 逮捕状取り下げなんて、通常はあり得ないでしょう。官邸は身近な人間や取り巻きを守るために警察まで動かすのかと。衝撃でしたね。この国では警察国家化も進んでいる。官邸を支える内閣情報調査室(内調)が公安を使ってさまざまな情報を吸い上げ、官邸はそれを政敵潰しに利用しています。
 加計学園疑惑をめぐり、「あったことをなかったことにはできない」と告発した前川喜平元文科次官の出会い系バー通いが官邸寄りの新聞にリークされたり、昨年9月の自民党総裁選で対抗馬に立った石破茂さんの講演会に内調職員が潜り込んで支援者をチェックしたり。この作品で内調を取り上げたのは、安倍政治の象徴であると同時に、最も触れられて欲しくない部分ではないかと感じたからです。
 
 ――望月記者の著書が原案ということで配役が注目されましたが、ヒロインは日本人の父親、韓国人の母親を持つ米国育ちという設定。実力派女優として知られる韓国のシム・ウンギョンさんが演じていますね。
 この2、3年間で現実に起きた問題を生々しく展開したかったので、当初はリアルな事件をリアルに描こうと思い、実名を使うことも考えたのですが、そうすると作品としての広がりがなくなる。個人史としてではなく、テーマとして官邸支配とメディアの萎縮を扱いたかった。映画ならではの表現の自由を生かして普遍性を持たせたかったので、フィクション仕立てにしました。
 一方で、現実にリンクしたリアルなイメージを出すために、望月さん、前川さん、朝日新聞の南彰記者(新聞労連委員長)、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラーさんの4人が安倍政権の実態や報道のあり方について議論している映像を劇中で流しています。
 
 映画の設定としては、男女が出てくると作品が盛り上がるし、観客の期待値も上がる。ですが、どうしても恋愛関係の進展も期待されてしまう。その点で、シム・ウンギョンさんは男女関係という枠組みを乗り越えられる女優で、役柄にぴったりとハマった。記者と官僚の緊張感を豊かな表現力で演じてくれました。
 
「干されるかも」オファー固辞が相次ぐ
 
 ――内調に出向中のエリート官僚に扮した松坂桃李さんは〈「こんな攻めた映画を作るのか!」という純粋な驚きがありました〉とコメントしていましたが、キャスティングでご苦労は?
 役者のキャスティングは実はそうでもなかったのですが、スタッフ集めが難しかったですね。「テレビ業界で干されるかもしれない」と断ってきた制作プロダクションが何社もありましたし、「エンドロールに名前を載せないでほしい」という声もいくつか上がりました。映画館や出資者など協力してくれた人たちは口には出しませんが、いろいろと風当たりがあったと思います。僕自身は圧力を感じたことはありませんが。
 
 ――藤井道人監督にも一度はオファーを断られたそうですね。
 監督は32歳。新聞をまったく読まない世代で、政治にも関心がなかった。それで、「民主主義国家で生きている以上、政治とは無縁ではいられない。一人一人の生身の生活と政治は切り離せない。政治から遠ざかれば、民主主義からも遠ざかる」というような話をしたんです。「上から目線ではなく、若者の視点から映画を撮ったら面白いとは思わないか。やってみないか」と。
 すると、監督は俄然ヤル気を出して、東京新聞の購読を始めて、モーレツに政治の勉強を始めた。国民が何も知らなければ、権力によって意のままに分断されてしまう。そこに「政治に無関心」の怖さがある。そうしたことが政治による同調圧力に屈してしまう下地になっていることを監督は悟ったんです。うれしかったですね。
 
 ――芸能界にも政治を忖度する雰囲気が広がっているのですか。
 毎年恒例の首相主催の「桜を見る会」があるでしょう。官邸は芸能人や文化人をたくさん招待している。彼らの間では、呼ばれることが一種のステータスのような雰囲気が出来上がっていますよ。官邸はSNSを通じたイメージ戦略にも非常に長けていますよね。安倍首相は若者に影響力のある芸能人には積極的に会い、彼らはその様子をツイートする。思想的に近い文化人もうまく利用して、安倍政治に都合の良い色に社会を染め上げている印象です。
 
 ――官邸自身も「安倍首相スゴイ!」と言わんばかりの動画を量産し、SNSでバンバン発信しています。
 野党に比べ、実にしっかりとマーケティングができています。それと、安倍政権は2つの要素を使い分けている。来年の東京五輪開催への期待や、新元号「令和」の祝賀を利用したお祭りムードによる国威発揚。非常事態が継続しているという雰囲気づくり。要所要所で福島をはじめとする復興を持ち出し、災害に対する危機感を維持させる。核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威もあおってきた。よく練られたコントロールだと思いますよ。
 これではメディアがいくら政権の腐敗を報道してもかなわない。中でも、認可事業であるテレビ局は官邸に服従していると言わざるを得ない状況でしょう。結果的にメディアが官邸を守る役割を担っているのが現状です。
 
 ――政権に批判的な言論人はメディアから消え、もの言えば唇寒しの風潮が広がる一方です。
 もうひとつ、安倍政治で間違っていると感じるのが、憲法改正が政治目的化していることです。憲法は法律の親分という一面ばかりが強調されていますが、憲法はそもそも、国民の代弁者である国会議員や為政者を縛るもの。為政者が前のめりに改憲を進めようとしているいまの政治状況は明らかにおかしい。なのに、国民レベルではそうした意識は希薄です。政治について財界人が遠慮なくモノを言い、学校でも職場でも語り合うようにならないとおかしい。そういう社会に戻さないとマズイことになりますよ。
(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)
 
▼映画「新聞記者」 原案は東京新聞社会部の望月衣塑子記者の著書「新聞記者」。権力とメディアの裏側、組織と個人のせめぎ合いに迫る政治サスペンス。加計学園問題を彷彿(ほうふつ)とさせる医療系大学の新設をめぐる内部告発を受け、政権がひた隠す暗部を暴こうとする女性記者(シム・ウンギョン)と、出向中の内閣情報調査室で情報操作を強いられる若手エリート官僚(松坂桃李)との対峙(たいじ)や葛藤を描く。
 
▽かわむら・みつのぶ 1949年、福井県生まれ。慶大経済学部中退。フリーランスでイベントやCMなどのプロデューサーとして活動後、08年にスターサンズを設立。「牛の鈴音」(09年)、「息もできない」(10年)を配給。主な作品はエグゼクティブプロデューサーを務めた「かぞくのくに」(12年)、企画・製作に携わった「あゝ、荒野」(17年)、「愛しのアイリーン」(18年)など。 

“日米安保条約見直し”に「安倍は理解を示した」とトランプ氏

 LITERAによれば、やはりトランプ大統領は安倍首相に日米安保条約の見直しを伝えていました。とはいっても条文の見直しではなく、日本の経費負担の増額(や自衛隊の海外派兵促進など)がその内容であると思われます。トランプ氏は米テレビ局・FOXビジネスネットワークのインタビューでもその「不平等」を強調していたので、日米首脳会談で言い出さない筈はありません。彼は、安倍首相がそのことを「理解している」と述べたことも明らかにしました。
 
 トランプ氏にすればそれは米国の国益に適うことなので隠す必要は何もありません。
 不明朗なのはその事実を必死に隠そうとする安倍首相の方です。その態度を見ると、世界で断トツに負担している米軍駐留経費をさらに大幅にアップさせることを了解した可能性は大いにあります。
 
 日米安保条約の見直しと言えば、本来は廃棄するかどうかこそが真っ先に俎上に上るべきテーマです。そうでないとしても、少なくとも日本国内で傍若無人に振る舞っている米軍のあり方を改めるために日米地位協定の改定を行うべきです。
 
 そもそも安倍首相やトランプ氏がいうように、日本が攻撃されたとき米国が無条件で日本を守ることはありません。日本を守るには「米議会の議決を要する」と明記されているからです。かつては安倍首相は「米国の青年が血を流して日本を防衛してくれるのに  」を得意のセリフにしていましたが、米軍の幹部にそんなことはあり得ないと一蹴されてからは口にしなくなりました。それも何よりの証拠です。
 
 日本は既に米国の雇用創出のために51兆円を投資し、さらに約4兆4600億円を米国の自動車工場に投資することも表明しています。加えて全く不要乃至役に立たない米国製の武器を何兆円も爆買いしました。
 
 安倍首相はトランプ氏の歓心を買うためには国税や積立金を湯水のように使うことを躊躇しませんが、全て売国の所業そのものです。今後も続ける気でいるのでしょうか。
 価値判断の基準が完全に間違っている安倍首相は一刻も早く退場すべきです。
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トランプが「安倍に“日米安保条約見直し”を伝えた」「安倍は理解を示した」と衝撃発言! 事実隠蔽の裏で安倍政権は…
LITERA 2019.06.29 11:05.
 安倍首相がまた、不都合な事実をトランプ大統領にバラされてしまった。きょう、G20閉幕後の会見でトランプ大統領が“日米安保条約を破棄するつもりなのか”と問われ、「破棄することはまったく考えていない」としたものの、「不平等な合意だ」と持論をぶった後、「条約は見直す必要があると安倍首相に伝えた」と述べたのだ(ロイター通信)。
 しかも、朝日新聞によると、〈トランプ氏は、安倍首相はこうした考えを理解しているとの認識も示した〉という。
 
 トランプの「不公平」主張のインチキについては後述するとして、これは安倍政権のこの間の説明がすべて嘘だったということではないか。
 周知のように、トランプ大統領が日米安保条約を不公平だと主張していることは、すでにG20前から報道されていた。
 6月24日、米通信社・ブルームバーグが、「トランプ氏が日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった」と報道。また、26日には、トランプ大統領自身が米テレビ局・FOXビジネスネットワークのインタビューのなかで、日米安保条約についてこう述べていた。
「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」
「でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」(朝日新聞デジタル27日付)
 
 ところが、これに対して、安倍政権は一貫して完全否定していた。複数の外務省幹部は「ありえない」と一斉に否定し、菅義偉官房長官も25日の会見で「報道にあるような話はまったくない。米大統領府からも政府の立場と相いれないと確認を受けた」と、事実関係そのものを否定。
 トランプの発言後も、やはり菅官房長官が27日、「(日米安保条約は)片務的ではなく、お互いにバランスがとれている条約だと思う」としたうえで、「(日米の)政府間では日米安保条約の見直しといった話、これは一切なく、米大統領府との間でもその旨は確認している」とコメントするなど、問題をなかったことにしつづけた
 
 さらに、昨日午前に開かれた安倍首相とトランプ大統領の首脳会談でも、メディアは一斉に「日米安保条約見直しは話題に上らなかった」「日米安保の話はなかった」と報じた。これは、会談に同席した西村康稔官房副長官が記者団に「話はなかった」と明言し、「日ごろから安保条約を前提とする日米同盟がアジア太平洋の平和と安定の基礎だと確認している。あえてそういうことをする必要はない」と語ったためだった。
 しかも、この会談では、トランプの“日米安保発言”隠しの報道統制まで行っていた。会談の冒頭は当初、公開とされていたのだが、記者がトランプに質問しようとすると、日本の外務省職員がそれを「退室願います。サンキュー」と遮ったのだ。トランプは答えようとしたが、安倍首相は手を振り、記者に退室を促したという(毎日新聞デジタル版6月28日付)
 ようするに、安倍首相と安倍政権はトランプから「安保見直し」を伝えられていたにもかかわらず、こんな重大な事実を国民に知らせず、なかったことにしようとしていたのである。
 
トランプに貢ぎ続けたあげく日米安保見直しを突きつけられた安倍首相
 まあ、たしかに、安倍政権がこの事実をひた隠しにしたくなる理由はわからなくはない。なにしろ、これまで安倍首相は歴代の総理大臣が誰も見せたことのないくらい露骨な“トランプのポチぶり”を発揮してきたのだ。
 トランプに言われるがままに、イージス・アショアやステルス戦闘機を大量購入、爆買いによって、アメリカからの有償軍事援助(FMS)による兵器購入契約の額は安倍政権下でどんどんと膨らみつづけ、2018年度は従来の5倍もの6917億円にまで増加。昨年末に閣議決定された「中期防衛力整備計画」では、2019から2023年度に調達する防衛装備品などの総額は、なんと約27兆4700億円程度と過去最高水準に達した。
 ほかにも、2017年には、公的年金数兆円をアメリカのインフラ事業に投資する方針が報じられた。日本企業が400億ドル(約4兆4600億円)を米国の自動車工場に投資することも表明した。
 さらには、トランプのご機嫌取りのために、安倍首相はトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦までした。
 
 ところが、安倍首相はこれだけトランプに尻尾を振り、あらゆる要求を飲んできたにもかかわらず、さらに「日米安保見直し」という、これまで日本の総理大臣が経験したことのないような理不尽な要求を突きつけられてしまったのである。
 この事態は“安倍外交”の完全失敗を意味するもので、“不都合な真実”を次々なかったことにしてきた安倍政権としては、到底、認めるわけにはいかなかったのだろう。
 
トランプの「安保見直し」に理解を示した安倍首相、秘密裏にさらなる妥協
 しかし、日米安保条約の見直しを要求されるというのは、日本の平和や安全保障を根幹から揺るがす問題だ。こんな重大な事実を国民に隠していていいはずがない。
 しかも、前述したように朝日の報道では、トランプは今日の会見で「条約見直しを伝えた」ことだけでなく、〈安倍首相はこうした考えを理解している〉との認識まで示しているというのだ。
 日米安保条約と付随する日米地位協定は、米国最大の海外戦略拠点を日本に提供させている上、基地負担や米軍の特権的地位を押し付ける、むしろ日本側にとって著しく不公平なものだ。しかも、日本が攻撃されたとき、米国が本当に日本を守ろうとするかどうかについては、多くの国際政治学者や軍事の専門家が疑問を投げかけている
 
 いずれにしても、ここまで理不尽な要求を突きつけられたら、「だったら、こちらが日米安保条約や日米地位協定の見直しを要求する!」と、むしろ日本に平等な見直しを突きつけ返すというのが、本来の外交交渉というものだろう。ところが、トランプ大統領に安倍首相はこんな無茶苦茶な要求に唯々諾々と「理解を示した」というのだ。
 実際、政府関係者の間では、安倍首相がトランプ大統領に「日米安保見直し」を突きつけつけられて、さらなる妥協をしたのではないかという見方が有力になっている。
「安倍総理が今回の会談で、農産物の輸入関税を米国の主張通り大幅引き下げを約束した、あるいは、先月の首脳会談で約束したものよりもさらに大量の武器購入を提案したのではないかという話が流れています。西村康稔官房副長官は日米安保条約見直しだけでなく、防衛装備品購入についても『議論はなかった』と言っていましたが、額面通りには受け止められません。安倍首相は先月の首脳会談でも、参院選後の大幅関税引き下げを約束したことをトランプにバラされましたが、まったく同じパターンなのかもしれない」(全国紙政治部記者)
 
参院選後、トランプの要求を大義名分にさらなる解釈改憲が始まる
 さらに、安倍首相が参院選後、トランプ大統領の要求に応じて、本当に「日米安保条約のアメリカの見直し」に踏み込む可能性もある。
「安倍首相は、いまは参院選を意識して、日米安保見直しの話題をひた隠しにしていますが、参院選後は姿勢を変えるでしょう。いまの情勢では、改憲勢力が3分の2を占めるのは難しくなっていますから、米国の日米安保条約の見直し要求を大義名分にして、自衛隊が海外で武力行使できるよう解釈改憲をさらに進めていく可能性が非常に高い」(政治部デスク)
 トランプ大統領は24日のTwitterでも、ホルムズ海峡のタンカーについて〈中国は91%、日本は62%、ほかの国も同じようなものだが、あの海峡から原油を運んでいる。なぜ、われわれアメリカがそれらの国のために航路を無償で(何年にもわたって)守っているのか。そうした国々はみな、危険な旅をしている自国の船を自国で守るべきだ〉(編集部訳)と投稿している。
 日本政府は、岩屋毅防衛相が「現時点でホルムズ海峡付近に部隊を派遣することは考えていない」(25日会見)と述べるなど、いまのところ否定してはいるが、参院選後にさっそく、自衛隊がホルムズ海峡に派遣されるかもしれない。
 わたしたちが警戒しなければならないのは、トランプの“ディール”発言よりも、安倍首相の国民に対する裏切りのほうなのである。 (編集部)

30- 板門店で電撃の米朝首脳会談(田中 宇氏)

 トランプ大統領は、「30日に韓国に移動し北との境界線である板門店まで行くがその時に金正恩に挨拶したい、金正恩がこのツイートを見ているなら明日板門店まできてくれ』」29日朝ツイートしたということです。
 その時点での北の対応は「正式な連絡を受けていないので」というものでしたが、田中宇氏は、この会談は「急に思いついたように演じているが、これは周到に準備された話に違いない。金正恩は明日、板門店に来る」と、29日のブログで述べました
 
 以下に紹介します。
(註 原文では各節の末尾に関連の記事・ブログのタイトルが載っていますが、英文のものは削除しました)
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板門店で電撃の米朝首脳会談
田中 宇 2019年6月29日
大阪でG20サミットに出ているトランプ米大統領は明日6月30日に韓国に移動し、北朝鮮との境界線である板門店まで行くが「その時に金正恩に挨拶したい、金正恩がこのツイートを見ているなら明日板門店まできてくれ」と先ほど(6月29日朝)ツイートした。トランプは、急に思いついたように演じているが、これは周到に準備された話に違いない。金正恩は明日、板門店に来る。3回目の米朝首脳会談が電撃的に行われる。
 
数日前、韓国の文在寅大統領が、米朝首脳会談の準備が進んでいると漏らしている。その前には、米朝首脳が書簡を送り合ったり、習近平が平壌を訪問したり、金正恩の妹である金与正がソウルを訪問したりしている。これらの流れから見て、米朝はかなり前から明日の板門店での首脳会談を準備してきたようだ。
 
過去の2回の米朝首脳会談は、シンガポールとハノイという、北朝鮮から見ると外国で行われており、金正恩の暗殺防止策など、「隠遁国家」である北にとって煩雑な事前の準備が必要で、話が大掛かりになっていた。今回の会談場所は北の一部である板門店なので、北は面倒な事前の準備をせずに電撃的に開催できる。トランプにとっても、直前まで首脳会談を秘密にできるので、北を永久に敵視したい軍産(永久に対米従属したい同盟諸国)に邪魔されにくい利点がある。(中露に米国覇権を引き倒させるトランプ
 
これまでの2度の米朝首脳会談によって、韓国と北朝鮮が和解する流れが進み、板門店のまわりも地雷が撤去され、南北が経済交流を深める体制が作られてきた。だが、南北の経済交流は、北に資金が入るので国連安保理の対北経済制裁に抵触してしまう。米政府(在韓米軍)が、そのように判断して韓国に、北との経済交流の進展を禁止しているため、南北和解と経済交流が途中で頓挫している。経済交流が進まないと、北は核廃棄を進めないので、北核問題の解決全体が止まっている。北はトランプに、国連の対北制裁を緩和してほしいと求めてきたが、トランプは応じてこなかった。今回、トランプが金正恩との再会を決めたことは、トランプが国連の対北制裁の緩和に応じることにしたという意味だ。そうでなければ、北は再会談に応じない。
 
国連安保理(米中露仏英)での対北制裁の緩和を、米国が進めるとは限らない。中国とロシアが北制裁の緩和を提起し、米国が反対しなければ可決できる。覇権放棄屋・隠れ多極主義者であるトランプは、北問題の解決の主導役を、米国自身でなく、中国にやらせたい。これまで中国は、米国(軍産)から妨害されかねないので、北問題の解決主導役になりたがらなかった。それで、北問題解決の流れが止まっていた。
 
だが今回、習近平は貿易面でトランプから売られた喧嘩を買い(中国の反米ナショナリズムが習近平の権力を強めるので)、中国は米国に配慮せず国際活動する度合いをぐんと強めた。6月5日には中露がモスクワで首脳会談し、身勝手すぎるトランプ米国の覇権を抑止していくことを宣言した。習近平は北問題解決を中国が主導することも決意し、彼が権力者になって初めて平壌を訪問した。中国は、北の海軍と人民解放軍との連携を強めるなど、安保面の中朝関係を強化し始めている
 
こうした流れの中に、明日の板門店での米朝首脳会談がある。習近平は、米国以上に本気で北の核兵器を廃絶させようとする可能性がある。米国の軍産は、北が核武装寸前の状態でいてくれることが、在韓・在日米軍駐留をはじめとする世界支配に好都合だったので北の核開発を放置・隠然支援してきたが、中国は、となりの小さな従属国である北に核武装してほしくない。習近平は金正恩に、米国を覇権国の座から引きずり下ろし、米国に北敵視をやめさせ、在韓米軍を撤退させてやるので、その代わり北も核廃絶してくれと伝え、金正恩も基本的に了承していると考えられる。
 
今後うまくいけば、中露が安保理で北制裁を緩和し、南北の経済交流が始まり、今は裏でやっている中朝間の貿易も表向きに再開する。在韓米軍の撤収が俎上にのぼり、在日米軍の撤収も言及される(すでにトランプは今回、日米安保条約を破棄したいと表明している)。米朝だけでなく、日朝も和解していく。安倍は早く訪朝したいと以前から思っている。日米安保の代わりとして、中国は昨秋、安倍の訪中時に、日本と安保協定を結びたいと提案していたと、先日暴露された。こんな暴露が今の時期に行われた点も興味深い。 
 
安倍はプーチンとも仲良しで、日露の平和条約も早く結びたい。北方領土は2島返還以外の解決がないと大昔からわかっていた。北朝鮮、中国、ロシアの3か国と平和的な恒久関係が確立したら、日本にとって脅威な外国はなくなる。米軍が日本に駐留する必要もなくなる。ハブ&スポーク的な日韓別々の対米従属を維持するための、子供じみた日韓の相互敵視も、米国の覇権低下とともに下火になり、日韓も安保協定を結ぶ。日本の対米従属の終わりが、すぐそこまできている

2019年6月29日土曜日

ハンセン病隔離政策 国に患者家族への賠償命令

 ハンセン病は極度の栄養不良の状態の中で例外的に生じる疾病で伝染病ではありません。それを「らい予防法」により患者をハンセン病患者の施設に強制的に生涯にわたり隔離したのは著しい人権侵害である、という反省のもとに同法は1996年に廃止されました。
 ハンセン病が伝染病でないという事実は遅くとも1960年には判明していたのに、同法を漫然と継続させたのは立法府(国会・国会議員)の重大な落ち度であったともされました。ハンセン病を伝染病と規定して隔離したのは患者にとって最大の不幸でしたが、それはまた患者の家族たちの社会的差別などを生み、深刻な苦痛を与えました。
 
 ハンセン病の患者に対する隔離政策をめぐり、元患者の家族500人余りが国を訴えた集団訴訟で、28日、熊本地方裁判所は、家族が受けた損害についても国の責任を認める初めての判断を示し、国に3億7000万円余りの賠償を命じました。原告側の訴えをほぼ認めるものでした。
 
 この判決に対して、長く偏見に苦しめられてきた元患者の家族らは「良い判決が出た」と笑顔を見せました
 国はこの判決を受け入れて決して控訴などすべきではありません。
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ハンセン病 国に患者家族への賠償命令 今後の焦点は国の控訴
NHK NEWS WEB 2019年6月29日 4時50分
ハンセン病の患者に対する隔離政策をめぐり、元患者の家族500人余りが国を訴えた集団訴訟で、28日、熊本地方裁判所は、家族が受けた損害についても国の責任を認める初めての判断を示し、国に3億7000万円余りの賠償を命じました。原告側の訴えをほぼ認めた今回の判決に対して、今後、国が控訴するかどうかが焦点となります。
 
全国に住むハンセン病の元患者の家族561人は、国の誤った隔離政策によって患者の家族として差別される立場に置かれ、家族関係が壊れるなど深刻な被害を受けたとして、国に賠償を求めました。
28日の判決で熊本地方裁判所の遠藤浩太郎裁判長は、遅くとも昭和35年には隔離政策は必要なかったとして、厚生労働大臣が隔離政策を廃止する義務に違反していたことや、国会が平成8年まで隔離政策を定めた法律を廃止しなかったことは違法だと指摘しました。
 
そのうえで、「結婚や就職の機会が失われるなどの差別被害は、個人の尊厳に関わる『人生被害』であり、生涯にわたって継続する。家族が受けてきた不利益は重大で、憲法で保障された権利を侵害された」として、原告側の訴えをほぼ認め、国に対して、総額3億7000万円余りを支払うよう命じました。一方、原告のうち20人については、被害の状況などを踏まえて訴えを退けました。
 
ハンセン病の元患者本人については、平成13年に隔離政策は憲法違反だとして国に賠償を命じた判決が確定していますが、家族が受けた損害についても国の責任を認める判断は初めてです。
 
判決のあと、根本厚生労働大臣は、記者団に対して、「今後の対応については、判決内容の詳細を確認したうえで、関係する各省庁と協議していきたい」と述べていて、今後、国が控訴するかどうかが焦点となります。
 
 
被害認定「良い判決」 ハンセン病元患者の家族ら
時事通信 / 2019年6月28日 20時10分
 ハンセン病患者の隔離政策で家族も差別などの被害を受けたとして、国に賠償を命じた28日の熊本地裁判決。長く偏見に苦しめられてきた元患者の家族らは「良い判決が出た」と笑顔を見せた。
 
 父親が患者だった原告団長の林力さん(94)=福岡市=は、判決後に熊本市内で開いた記者会見で、「ここまでの判決が出るとは思っていなかった」と驚きを隠さなかった。
 判決は、就学や就職、結婚など人生の節目で差別を受けてきたとし、家族に対する国の責任を初めて認めた。林さんは「ハンセン病の歴史や現実、課題が明らかにされていくことが人権にプラスとなる」と語気を強めた。
 
 原告団副団長で家族が患者だった黄光男さん(63)=兵庫県尼崎市=は「一生を台無しにされた原告がいっぱいいる。心の底から喜んでいいのかと思うが、家族の被害が認められたことはステップの一つ」と評価。「国は判決を正面から受け止め控訴を断念してほしい」と求めた。父親が元患者の80代男性も「いい判決が出たという点ではみんな喜んでいると思う」と話した。
 
 弁護団の八尋光秀共同代表は「家族に対する差別偏見の除去に国を挙げて対応すべきだったことを認めた画期的判決」と強調した。一方で、敗訴した20人については「控訴を前提に話し合う」と述べた。 

映画『新聞記者』が描く「安倍政権」の不正がリアルすぎる!

 安倍首相は内閣情報官(内閣情報調査室トップ)と毎日会っていると言われます。従来の首相は週に1~2回と言われているので異常な頻度です。
 それだけでなく他にも、俗に「官邸ポリス」といわれる組織を持っています。それは内閣府本庁舎6階にアジトを構え、元警察庁警備局長の杉田和博官房副長官をトップに警察官僚で固められているということです。「内調」だけでは足りないとしてそんな組織を作るとは余りにも陰険です。それが目指しているのはとても公には出来ないようなことばかりです
 
 東京新聞記者・望月衣塑子原案映画『新聞記者』には、内閣情報調査室の驚くべき謀略の数々が出てくるということですが、そんな陰湿な組織をダブルで作るとは一体どういうことなのでしょうか。
 
 映画『新聞記者』昨日公開されました。それにしても安倍政権の暗部・不正を描えていて、普通に宣伝されれば大ヒット疑いなしの映画であるにもかかわらず、政権忖度して大手メディアは殆ど宣伝をしていないということです。映画にまで報道の萎縮が進行しているわけです。
 LITERAが「~ 映画『新聞記者』が描く安倍政権の不正がリアルすぎる! 内閣情報調査室の謀略も」と題して取り上げました。
 大ヒットして欲しいものです。
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望月衣塑子原案、松坂桃李出演の映画『新聞記者』が描く「安倍政権」の不正がリアルすぎる! 内閣情報調査室の謀略も
LITERA 2019.06.27
 明日、あまりに衝撃的な一本の映画が全国公開される。菅義偉官房長官に果敢に切り込みつづけている東京新聞・望月衣塑子記者の著書を原案とした藤井道人監督の『新聞記者』だ。
 一体、何が衝撃的なのか。それは、劇映画というフィクション作品でありながら、ここ数年のあいだに安倍政権下で起こった数々の事件をまさに総ざらいし、あらためてこの国の現実の“異常さ”を突きつけていること。そして、その“異常さ”の背後にある、官邸の“謀略機関”となっている内閣情報調査室の暗躍を正面から描いていることだ。
 
 ストーリーは、東都新聞という新聞社に、ある大学新設計画にかんする極秘文書がFAXで送られてくることからはじまる。取材に動くのは、日本人の父親と韓国人の母をもち、アメリカで育った女性記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)。そうした最中にも、政権に絡んだきな臭い問題が立てつづけに起こるのだが、その裏側で動いているのが、内閣情報調査室だ。
 内調に出向している若き官僚・杉原拓海(松坂桃李)は、粛々と任務をこなしていた。政権を守るための情報操作に、政権に楯突く者たちを陥れるためのマスコミ工作……直属の上司である多田内閣参事官(田中哲司)は「国のため」「国民のため」だと言うが、そんななかで杉原の元上司である官僚が自殺したことをきっかけに、吉岡が追う大学新設計画にかんする国家ぐるみの計画を知ることになるのだが──。
 
 観客にとってきっと忘れられないシーンになるであろうラストまで、息をつかせない重厚な政治サスペンスが繰り広げられる『新聞記者』。だが、あらためてハッとさせられるのは、物語を大きく動かしていく大学新設計画の問題のほかにも、政権に睨まれた元文科省官僚に対するスキャンダル攻撃や、“総理ベッタリ記者”による性暴力被害ともみ消しを訴える告発、政権とメディアの癒着・圧力、官僚の自殺など、さまざまな事件が起こってゆく点だ。
 微妙な違いはあるものの、これらは言うまでもなく、この国で実際に起こった森友公文書改ざん問題での近畿財務局職員の自殺や、加計学園問題に絡んだ前川喜平・元文科事務次官に仕掛けられた官邸による謀略、伊藤詩織さんによる告発などが下敷きになっている。実際、本作の企画・製作をおこない、エグゼクティヴ・プロデューサーを務めている河村光庸氏は、このように述べている。
これらの政治事件は本来であれば一つ一つが政権を覆すほどの大事件です。ところがあろうことか、年号が令和に変わろうが継続中であるべき大事件が一国のリーダーと6人の側近の“令”の元に官僚達はそれにひれ伏し、これら大事件を“うそ”と“だまし”で終りにしてしまったのは多くの国民は決して忘れはしないでしょう」(「論座」6月23日付)
 
 普段、御用メディアによる報道しか接していない人がこの映画を観れば、「こんな腐敗や不正が立てつづけに起こるなんてフィクションだ、映画の世界の話だ」と思うかもしれないが、これはすべて実際に、短期間のあいだに起こったことなのだ。逆に、この一連の動きを知っている観客ならば、本作によって、あらためてこの国の現実に背筋が凍ることは間違いない。
 そして、なんと言ってももっとも衝撃的なのが、官邸と一体化した内閣情報調査室の暗躍ぶりだ。「こんなことまでやっているのか」と驚愕させられる謀略の数々に、これもまた観客のなかには「映画だから」と言う人もいるかもしれないが、内調の問題を追及してきた本サイトから先に言っておくと、映画が描いている内調の謀略は現実にやっていることがほとんどだ。
 たとえば、映画では、伊藤詩織さん事件をモデルにしたと思われる事件をめぐり、松坂演じる杉原が上司に命じられるままチャート図をつくって週刊誌に横流しするシーンが出てくるが、現実でも同じことが起きていた。伊藤詩織さんが司法記者クラブで実名顔出しで記者会見をおこなった際、詩織さんと詩織さんの弁護士と民進党の山尾志桜里議員の関係をこじつけ、詩織さんを「民進党関係者」だとするフェイクチャート図の画像がネット上に出回ったが、これも、内調が謀略チャート図を政治部記者に流していたと「週刊新潮」(新潮社)が報じているし、本サイトの調査では、内調が情報を直接2ちゃんねるに投下した可能性すらうかがわれた。
 
本物の前川喜平氏も映画に登場し“出会い系バー”通いの謀略を証言!
 さらに、映画には、前述したように、前川喜平元文科事務次官の“出会い系バー通い”リーク問題を下敷きにしたと思われる事案も登場する。
 本サイトでは繰り返しお伝えしてきたが、前川氏の“出会い系バー通い”の情報は、もとは公安出身の杉田和博官房副長官や内調が調査して掴んだものだったという。それを使って加計学園問題の「総理のご意向」にかんする前川氏の告発の動きを封じ込めるために、読売新聞にリークしたのだ。
 当時、本サイトはいち早く報じたが、じつは読売の記事が出た直後から、官邸記者クラブのオフレコ取材では読売記事についての話題が出ていた。そのなかで読売に情報を流したと言われている安倍首相側近の官邸幹部が、記者にこう言い放っていたことをキャッチしている。
「読売の記事にはふたつの警告の意味がある。ひとつは、こんな人物の言い分に乗っかったら恥をかくぞというマスコミへの警告、もうひとつは、これ以上、しゃべったらもっとひどい目にあうぞ、という当人への警告だ」
 内調と官邸が一体化し、告発者だけではなくマスコミまで恫喝するために、何の事件性もないものを最大手の新聞社に記事として掲載させる──。とんでもない話だが、映画では、この内調の前川元次官に対する謀略報道とそっくりなディテールが登場するのだ。
 
 しかも、驚いたのは、前川氏本人が映画に登場したことだ。主人公が見ている「番組」という設定で、前川氏や新聞労連委員長で朝日新聞記者の南彰氏、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長であるマーティン・ファクラー氏、そして原案者である望月氏の座談会の模様が挿入されるのだが(この動画は公開前に「ハフィントンポスト」がYouTubeで公開中)、前川氏はそのなかで週刊誌にも“出会い系バー通い”がリークされたことを明かしている。
「あるほう(「週刊新潮」)は『新宿である店に出入りしているそうだけども、その話が聞きたい』と言ってくる。もうひとつのほう(「週刊文春」)は『そういう話を聞いたんだけども、そっちの話じゃなくてあっちの話を聞きたい』と。そっちは書かないけれども、書かない代わりに、ある大学の獣医学部設置にかかわる内情を聞きたいと。そういうアプローチがあったんですよね。これは非常にわかりやすかった。それは出所は同じだったんだろうと思うわけでね」
 
原案の望月記者も「望月さんを内調が調べ始めた」と国会議員らから聞かされたと証言
 もうひとつ興味深かったのは、この座談会で、東京新聞の望月記者も自分が内調に狙われていたことを明かしたことだ。
「私自身の記憶で言うと、やはり非常にバトルを官房長官とやっていたときに、ある内調(の人物)が、非常に仲が良いと、私はその議員が誰だか知らないんですけど、その国会議員に、内調が『望月さんってどんな人?』という調べる電話をかけてきた。この国会議員が非常に仲が良い、あるジャーナリストの人に『望月さんのこと内調が調べ始めたよ』という話をするんですね。この人(ジャーナリスト)から私に『望月、調べられているから気を付けておけ』っていう」
 「彼(内調)が知っている政治家とかジャーナリストを使って、あなたを見ているんですよと、ウォッチングしているんですよ、ということを、やっぱり政権を批判的に言ったり厳しめにつっこんでいる私とかに対して、間接的な圧力になるように、そういうことをやると」
 官房長官会見で質問をおこなうことは記者として当然の行為であり、それに答えるのが官房長官の務めだ。しかし、その当然のことをするだけの望月記者に質問妨害をおこなったり、官邸記者クラブに恫喝文書を叩きつけている官邸。だが、それだけではなく、内調を使ってこんな脅しまで実行しているのだ。
 
 いや、内調と官邸による情報操作、マスコミ工作は映画で描かれているもの以外でもいくらでもある。
 たとえば、2014年、小渕優子経産相や松島みどり法相など、当時の安倍政権閣僚に次々と政治資金問題が噴出した直後、民主党の枝野幸男幹事長、福山哲郎政調会長、大畠章宏前幹事長、近藤洋介衆院議員、さらには維新の党の江田憲司共同代表など、野党幹部の政治資金収支報告書記載漏れが次々と発覚し、政権の“広報紙”読売新聞や産経新聞で大きく報道された(所属と肩書きはすべて当時)。ところが、この時期、内調が全国の警察組織を動かし、野党議員の金の問題を一斉に調査。官邸に報告をあげていたことがわかっている。
  また2015年、沖縄の米軍基地問題で安倍官邸に抵抗していた翁長雄志・沖縄県知事(当時)をめぐって、保守メディアによる「娘が中国に留学している」「人民解放軍の工作機関が沖縄入りして翁長と会った」といったデマに満ちたバッシング報道が巻き起こったが、これも官邸が内調に命じてスキャンダル探しをおこない、流したものといわれている。
 
 野党や反対勢力だけではない。前川氏に対してもそうだったように、内調は官僚の監視もおこなっている。2017年には韓国・釜山の総領事だった森本康敬氏が電撃更迭されたが、これは森本氏がプライベートの席で慰安婦像をめぐる安倍政権の対応に不満を述べたことを内調がキャッチ。官邸に報告した結果だったと言われる
 
報道の萎縮が進行するなか、映画『事件記者』が突きつけるメディアの使命!
 まるで映画のような話だが、この映画のような謀略が、この国では当然のようにおこなわれているのである。そういう意味では、『事件記者』が描いているのはフィクションではなく、まさに現実なのだ。
 しかし、このような独裁的な振る舞いを平気で見せる安倍政権下で、状況をさらに悪くさせているのは、あらためて指摘するまでもなく、メディアの姿勢だ。映画『新聞記者』は、吉岡記者の姿を通し、強大な権力と対峙する恐怖のなかでも真実を伝えようとするジャーナリストの使命を浮き彫りにしている。
 
 前述したエグゼクティヴ・プロデューサーの河村氏は、製作にあたっての思いをこうも述べている。
「前提としてですが、私はどこかの野党や政治勢力に与するものではありませんし、この作品は一人の記者を礼賛するでもありません。むしろ報道メディア全体、記者一人一人に対するエールを送るつもりで作りました。
 「これ、ヤバいですよ」「作ってはいけないんじゃないか」という同調圧力を感じつつ映画を制作し、宣伝でも多くの注目を浴びつつも記事にはしてもらえず、それでも何とか公開まで持っていこうというのが今の状況です」
 大手メディアで政権への忖度がはたらき、報道の萎縮が進行しているなかで、映画でこの国の問題に正面から向き合う──。河村氏をはじめ、見事な作品へと昇華させた藤井監督、製作側の思いに応えたキャスト陣(とりわけ人気俳優でありながら、この挑戦的な作品に主演した松坂桃李)には、大きな拍手を送りたい。そして、ひとりでも多くの人が劇場に足を運び、映画のヒットによって大きなうねりが生まれることを期待せずにはいられない。(編集部)