2026年3月23日月曜日

国家情報局設置法案 治安対策・世論工作が狙い

 高市政権が13日、国会に提出した国家情報局設置法案は、内閣情報調査室(内調)を格上げして国家安全保障局と同格とし、政府の情報収集・分析機関を強化するものでスパイ防止関連法制、対外情報庁創設とセットで、国民を対象とする「治安対策世論工作第一段階といえるものです。
 しんぶん赤旗が内調』の著者でアジア調査会事務局長の岸俊光さんに聞きました
 岸さんは、政府が設置を目指す「国家情報局」法案は「親米反共で治安対策・世論工作」をする機関と明言します。岸さんは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科にて博士号(学術)を取得しています。博士論文は『核武装と知識人』として出版され、国際安全保障学会最優秀出版奨励賞を受賞しました。
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内調を格上げする国家情報局設置法案
〝内調の著者でアジア調査会務局長  俊光さん
                       しんぶん赤旗 2026年3月22日
     俊光さん
     きし・としみつ 1961年愛媛県生まれ。一般社団法人アジア調査会常務理事・
     事務局長。博士(学術)。専門は政治宣伝。著書に『内調―内閣情報機構に見る
     日本型インテリジェンス』、『核武装と知識人 内閣調査室でつくられた非核政
     策』、編著に『内閣調査室秘録=戦後思想を動かした男』(志垣民郎著)など。

 高市早苗政権が13日、国会に提出した国家情報局設置法案内閣情報調査室(内調)を格上げして国家安全保障局と同格とし、政府の情報収集・分析機関を強化するものです。自民党と日本維新の会の連立政権合意書に盛り込まれており、スパイ防止関連法制、対外情報庁創設とセットで、その第一段階といえます。そもそも秘密の闇に覆われた調とはどんな組織で何をやってきたのかその増強は国民に何をもたらすのか、『内調』の著者でアジア調査会事務局長の岸俊光さんに聞きましたj            (伊藤紀夫)

親米反共で治安対策・世論工作 情報公開・民主統制の強化を

ー高市政権がGDP(国内総生産)比2%を超える軍拡と一体で進める治安体制強化の一環といえます。内調の取材、研究から、その実態をどのように見ていますか。
 内調は1952年4月に内閣総理大臣官房調査室として新設された首相直属の情報機関です。57年8月に内閣調査室、86年7月に内閣情報調査室となり、今日に至っています。
 内調が新設された時期は、50年8月の警察予備隊の創設、54年7月の自衛隊発足と重なります。米国の意向に沿う再軍備化の中で、親米反共の情報機関として内調は生まれたわけです。
 当初は冷戦の時代で、内調が最も重視したのは日本の共産化を防ぐことでした。最初は治安対策から始まっています。内調発足までに作られた原案のつには「調査室の活動の当面の重点目標を共産党及びこれに同調する勢力の(企画、宣伝、運動の)実体を国民の前に暴露することにおく」という記述があります。
 内調発足時からのメンバーだった志垣民郎さんは、私が編者になって『内閣調査室秘録』を著しました。その中で、共産党対策を担ったメンバーが「内調の使命もまたここにあるとの考えを持っていた」と語っています。
 吉田茂首相の秘書官だった公安警察出身の村井順氏が「独立するからには、日本にもCIA(米中央情報局)のような情報機関が是非必要である」と意見具申したところ、「それでは、お前がやれ」と吉田首相にいわれ、内調が発足した話も紹介しています。志垣さんら3人の内謁メンバーがCIAの招待で959年、50日間にわたる研修旅行をした日誌もあります。
 委託団体や委託研究に資金をだして、その中で学者を取り込んでいく実態についても、志垣さんのリアルな日記や証が明らかにしています。

第2次安倍晋三内閣では米国とともにたたかう集団的自衛権の行使を可能にする安保法制、特定秘密保護法の制定、国家安全保障会議の設置とともに、内閣情報官、内閣衛星情報センターの設置、国際テロ情報集約室の新設など内調の拡充が進みました。その歴史から見て、今回の内調格上げの意味は何でしょうか
 内調は当初から公安警察、外務省、公安調査庁、自衛隊などの情報機関の連絡調整を担ってきましたが、司令塔として他省庁に対する指示権は持てず、長年の懸案でした。発足から74年、高市内閣は当初からの悲願だった情報集約に今回手をつけようとしているわけです。
 しかし、これは内部でも懸念されていましたが、政権の「お庭番」的に使われる恐れがあります。時々のいろいろな問題について、国民に対する世論対策、悪くいうと世論工作に使われる恐れは常にあります
 野党の状況を調べるのはもとより、与党の政治家のことも調べるし、世論の動向も把握します。日本共産党について資料集を作っていつもウオッチしていた時代もありました
 マスコミに対する関心も強く、特に政府寄りではない新聞社などへの働きかけもしてきました。報道対策だけでなく、知識人の取り込みも含め、こうした工作が強まる恐れもあります。
 内調は首相官邸の関心に沿って情報を集めることはもちろんですが、内調スタッフの関心からスタートすることも多いため、政府の意向とズレたり、情報機関の枠を超えて政策に関与したりすることもあったようです。
 情報公開も不十分なので、どんな仕事をしているかチェックすることも難しい組織です。野党が国会で取り上げて、CIAとの関係を突っ込まれても、言を左右して絶対に認めませんでした。民主な統制が最も難しい課題になるでしょう。

-国家情報局設置法案のあとにはスパイ防止関連法制やCIAをモデルにした対外情報庁創設が控えています。この点はどうですか。
 CIAのような情報機関を創設する願望は、先に触れたように、当初からありましたが、当然、頓挫してきたわけです。それは民主化された日本にそぐわず、憲法にも抵触しかねない組
だからです
 CIAは対外情報の収集・分析だけでなく、ベネズエラやイランヘの軍事攻撃の際に秘密作をしていたことに見られるように、国家転覆さえ任務とする謀略機関です。そういう組織の
創設は、今の日本の法体系のもとでは簡単にできることではありません
「スパイ防止法」については、産業スパイなど経済安全保障が念頭にあると思いますが、これも運用や統制が難しい問題があります。一般の人は関係ないと思うかもしれませんが、機微な情報に接触する日本人にはアプローチして監視してくるでしょう。
 外国のスパイを捕まえるのは、本当に難儀なことです。外国人を捕まえたら、当然、国際問題になってくるので、政府は慎重にならざるをえません。しかし、それに協力した疑いのある日本人だったら、国内法でやりやすいので摘発される可能性があります

-市民のプライバシー権、思想・良心の自由、表現の自由・知る権利、報道の自由など、憲法が保障する基本的人権を侵害することになりますね。歯止めをかけるには何か必要ですか。
 ここまで来だのは戦後初めてのことなので、政府も国民もインテリジェンス(情報の収集・分析)機能を強化する意味をしっかり認識して、対応すべきだと思います。
 内調についても、マスコミは表面的なことだけでなく、過去の歴史を調べて、その実態はどういうものかを伝えていくことが大事だと思います。
 秘密のベールに包まれ、運用・統制が難しい組織だけに、国会や第三者機関によるチェックを含めて情報公開を進め、民主的統制を実効性のあるものにする必要があります。

国家情報局設置法案 関連図(PDF)
https://drive.google.com/file/d/1xHyt9D1dU88X5mNi_beYtAbNuMrMlSQE/view?usp=sharing 

3/26に最重要シンポ開催 「米露中日アジア外交を考える」

 植草一秀氏の掲題の記事を紹介します。
 シンポジウムの会場は東京の日比谷図書館大ホールなので遠方ですが。
 記事は冒頭で状況の説明として、
「ロシアのウクライナでの行動と米国のイランでの行動を同列に扱うのは間違い」と指摘し、その理由を簡潔に説明しています。
 つぎに、
 トランプは日本に対してもペルシャ湾への艦船派遣を要請したが、高市首相は「日本は憲法の制約があり、停戦が実現しない限り艦船の派遣はできないと説明したというので、「日本国憲法が最大の砦になった」と述べ、日本が安易に戦争に巻き込まれることが防がれたと指摘します。そして「日本国民は憲法問題を最重大視する必要がある。同時に日本の進路を改めて見つめ直す必要がある。日米の軍事同盟を基礎に置く進路を今後も維持するべきなのか。抜本的な見直し、熟考が必要である」と問題提起します
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3/26に最重要シンポ開催(メルマガの原題は「米露中日アジア外交を考える」)
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年3月22日
暴走する米国。イランに対して軍事侵攻したのは米国。
イランがホルムズ海峡を封鎖して世界経済に重大な影響が広がる。
米国のトランプ大統領は国際法は関係ないと明言する。これがまかり通るなら世界は「ジャングルの掟」が支配する時代に逆戻りする。新・帝国主義時代の到来

だが、ロシアのウクライナでの行動と米国のイランでの行動を同列に扱うのは間違い
ロシアは独立を宣言したウクライナ東部の2共和国を国家承認し、集団安全保障の条約を締結し、集団的自衛権を行使するかたちで軍事作戦を始動させた。
評価は分かれるが国際法上の手続きを踏んで軍事作戦を始動させている。

ウクライナ問題を正確に理解するには2004年と2014年の2度のウクライナ政権転覆を踏まえる必要がある。いずれも米国が工作して引き起こされた政権転覆である
2014年に暴力革命で非合法政府が樹立された。その非合法政府を真っ先に国家承認したのが米国
非合法政府は直ちにウクライナ東部2地域に対する弾圧と武力行使を始動し、ウクライナ内戦が勃発した。2022年の戦乱拡大はウクライナ内戦の延長線上に生じたものである。

トランプ大統領は日本に対してもペルシャ湾への艦船派遣を要請した。
主要国がこれを拒絶したためにトランプ大統領自身が要請を取り下げたが、そのタイミングで高市首相が訪米。日本は憲法の制約があり、停戦が実現しない限り艦船の派遣はできないと説明したという。日本国憲法が最大の砦になった。
憲法が存在するおかげで日本が安易に戦争に巻き込まれることが防がれている。

しかし、油断はできない。憲法を変えてしまおうという動きが日本国内で生じているからだ。
憲法が改変されていたなら日本がすでに戦争に巻き込まれているとも考えられる。
日本国民は憲法問題を最重大視する必要がある。同時に日本の進路を改めて見つめ直す必要がある。
日米の軍事同盟を基礎に置く進路を今後も維持するべきなのか。抜本的な見直し、熟考が必要である。

こうしたなかで、3月26日(木)に貴重なシンポジウムが開催される。
国際アジア共同体学会主催
「イラン・ベネズエラ侵攻後の米国にどう対応するか 新しい21世紀の米露中日アジア外交を論じる 『大転換する世界』出版記念を兼ねて」https://x.gd/Bh90C
国際アジア共同体学会会長を務められているのは進藤榮一筑波大名誉教授。
アメリカ外交・国際政治経済学・アジア地域統合を専門とする日本随一の最高の学者である。
『分割された領土』(岩波書店)https://x.gd/S6MKS
『敗戦の逆説』(ちくま新書)https://x.gd/D95sa
など多くの必読書を刊行されている。『芦田均日記』全七巻も編纂されている。
最新著は『陽はまた昇る:「日本再生」の国際政治学』(花伝社)https://x.gd/tDXqI

敗戦後日本がどのような経緯を経て戦後体制に至ったのか。その過程に重大な変節点がある。
「戦後民主化」から「逆コース」への大逆転が生じた。
この問題を考察する際に、私たちが知るべき最大の真実を発掘して解読されているのが進藤榮一氏であると思う。
列挙し切れない業績が広範な領域に広がっている。

3月26日のシンポジウムには驚くほど多数の専門家が登壇される。(後 略) 
残席がまだ残されているとのことなのでぜひご出席されたく思う。
日時  2026年3月26日 11時半〜16時半(予定)
会場  日比谷図書館大ホール (東京都千代田区日比谷公園1-4)
参加費 書籍購入者・予約注文者 1000円  会議のみ参加 3000円
*書籍は定価2750円のところ、講演会特価2200円で販売いたします。講演会とセットで3200円と大変お得です。
参加申し込みフォーム https://forms.gle/rZThnfwnyq8TnWkBA
書籍予約注文フォーム https://forms.gle/v2ftbEanuoJ2FPDJ6
プログラム https://x.gd/Bh90C

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4372号
「米露中日アジア外交を考える」 でご高読下さい。
この機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひお願いします。
https://foomii.com/00050
                (後 略)

自ら仕掛け イランの罠にはまったトランプ/対イラン戦勝利を装うトランプ

マスコミに載らない海外記事」2つの記事を紹介します。
1番目の記事)
 トランプは中間選挙のあるこの時期に、米国が長い間 苦にしていたイランへの不法な攻撃を突然始めました。先の「12日間戦争」のように簡単に勝てると思っていたようですが実は「致命的な誤算」でした。
 トランプは中間選挙に有利なように、早々に戦果を挙げて終わりにしようと考えていたのに対して、イランは長期戦を覚悟し、米国に『負けない』ことを目標に全国民が必死になって対抗しています。イランは、休戦は「米国に兵器調達の余裕を与えるだけ」と考えているので、米国の休戦提案に応じることはありません。
 全く当てが外れたトランプは、「勝利して服従させる」という強気な発言と、撤退を模索する焦燥感の間で揺れ動き、そうした心境を毎日SNSで語っていますが、戦う相手にそんな姿を見せるのは異常なことです。
『負けない』ことで国民が一致しているイランを負かす手段は殆どありません。
(2番目の記事)
 トランプはイランを過小評価していました。これは軍事史における最も典型的な過ちの一つでしばしば予期せぬ敗北と多大な犠牲をもたらすとされています。
 トランプはいまや客観的な見通しを語ることは出来ないので、国内向けに勝利という政治的説明をしようとしていますが、戦争が長期化すればますます国民の支持を得られなくなるので事態は深刻です。
 何よりもSNSが発達している現在、そんな国民に対する粉飾が可能とはとても思えません。中間選挙の見通しは暗くなる一方です。
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失敗に終わった「一方的ゲーム」:自ら仕掛けたイランの罠にはまり苦境に陥るトランプ
                マスコミに載らない海外記事 2026年3月21日
      ムハンマド・イブン・ファイサル・アル=ラシード 2026年3月17日
                           New Eastern Outlook
 ドナルド・トランプが約束した中東電撃作戦は彼自身の政権にとって長期にわたる苦難へと変わりつつある。
 イランの精神的指導者の暗殺と軍事作戦開始からわずか二週間後、ホワイトハウスは矛盾した命令を発する沈没寸前の船のようだ。「短期侵攻」という強気な発言と、撤退を模索する焦燥感の間でワシントンは揺れ動いている。アメリカ大統領にとって真実は単純かつ残酷だ。イランは抵抗しているだけでなく、アメリカを中東から永久に追い出すことを目標に、何年も戦い続ける覚悟ができている。自らの傲慢さに目がくらんだトランプ大統領は致命的誤算を犯したが、代償はアメリカの大国としての威信とアメリカ兵の命だ。
 トランプ大統領は作戦終了を示唆し「名誉ある退場」を模索しているが、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は即座に「期限なし」戦争を宣言した。
 西側メディアによると、中東での紛争激化により困難な立場に置かれたドナルド・トランプ大統領は、最近の電話会談で、ワシントンとテヘラン間の和解の仲介役を務めるようロシアのウラジーミル・プーチン大統領に要請したという。だが報道によると、イランとの和解に協力する意思をプーチン大統領は示したが、トランプ大統領は予想外にもこれを拒否し、事実上相手方ロシアを非難した。情報通の報告によれば、恩知らずにも「ウクライナとロシアの戦争を終わらせた方が、はるかに役に立つ。その方がずっと役に立つ」とトランプ大統領は述べた。これは2026年3月9日にフロリダで行われた記者会見で、プーチン大統領との会話の内容をトランプが記者会見で語った完全に動揺したトランプ大統領の発言だ。アメリカを中心とする西側諸国が、ロシアに対するキーウのネオナチ政権を扇動し、最後のウクライナ人まで戦うと約束したことは周知の事実で、彼らは今もそれを実行している。

犯罪に近い無知:テヘランの警告をトランプが無視した理由
 過去の教訓を忘れる者は同じ過ちを繰り返す運命にあると歴史は教えている。イランを巡る状況の展開を見る限り、ドナルド・トランプは歴史を忘れただけでなく、教科書を露骨に燃やしてしまったようだ。紛争のまさに始まり、精神的指導者ラフバルの残虐な暗殺後、イラン指導部は明確かつ断固こう述べた。アメリカとイスラエルは再び超えてはならない一線を越えた。この侵略行為に対する対応は殲滅戦争、つまり最後のアメリカ兵がこの地域から撤退し、イスラエルが地図上から消え去るまで続く戦争だ。
 トランプは何をやったのか? まるで老練カジノ賭博師のように、彼はイランが一撃で崩壊することに全てを賭けた。開戦当初の彼の発言は傲慢さに満ちていた。「4、5週間で終わる」「これは簡単だ」。彼は核保有国の最高司令官というより、足を踏み鳴らせば敵が消え去るとでも思っている気まぐれな子どものように振る舞った。
 だが東側情勢は微妙な問題だ。イランは2003年のイラクのように数週間で壊滅した国ではない。イランは千年の歴史を持つ文明で、祖国のために殉教する覚悟が国民の規範の一部になっている不屈の文化を持つ国だ。トランプは近視眼的にこの点を無視した。彼は爆弾の力に頼り、国民の精神力の強さを忘れていた。指導者の死後、イラン軍事機構が崩壊するどころか、怒りを募らせて更に強化されるとは予想していなかった。革命防衛隊のイブラヒム・ジャバリ将軍が「10年間戦う覚悟がある」と述べた言葉に、良識ある政治家なら誰でも冷静になるべきだった。だが、ホワイトハウスでは、どうやら彼らは未だに自分たちが陥った事態の深刻さを理解していないようだ。

「私が終わらせたい時に終わらせる」:強さを装う弱さ
 ここ1週間のドナルド・トランプ発言は政治的分裂症の典型例と言える。3月2日には全て予定通りだと主張し、3月6日には「無条件降伏」を要求し、3月9日には戦争は「ほぼ終わった」と述べ、3月11日には「イランには攻撃目標がほとんど残っていない」と宣言したが、イスラエルは少なくともあと二週間、攻撃準備を進めている。
 これは戦略ではない。追い詰められた動物をもがき苦しませているようなものだ。大国を率いる能力の欠如を示している。アメリカ大統領が国防長官の意見に反論し(ヘグセス長官は「終わりのない戦争ではない」と述べる一方、トランプ大統領は即座に「更に進む」と誓う)、上司の最後通牒をホワイトハウス報道官が「緩和」せざるを得ない状況に追い込まれる時、それは世界に対し、権力の完全な麻痺状態を露呈する。
 結果は、アメリカがその傲慢さに対し十分な代償を払ったとイランが判断する時期によって決まる
 トランプは和平仲介者の役割を演じようとして、迅速な終結を示唆しているが、彼自身の軍や同盟国イスラエルは、これら発言を即座に否定している。一体何が起きているのか? 事実、イランに関する誤算は致命的なものになった。楽勝で支持率を上げるはずだった戦争は、血みどろの惨劇に変貌した。イランはクウェート、バーレーン、シリアにある米軍基地に激しい攻撃を加えている。米兵が命を落としている。原油価格は激しく変動し、トランプが繁栄を約束した一般アメリカ国民の懐を直撃している。
 「まだ十分な勝利を収めていない」という彼の発言は当初の計画が失敗したことを悟った男の叫びだ。彼はもはや有権者にどんな「勝利」を示せばよいのか分からなくなっている。イラン・インフラを破壊した? だが敵は攻撃を続けている。イランの将軍を殺害した? だが彼らは更に決意の固い新たな将軍に取って代わられている。

民衆の怒りと10年にわたる戦争:トランプを追い詰めたイラン
 この状況で、トランプにとって最も恐ろしいのは、今のところ軍事的敗北ではなく、戦略的行き詰まりだ。イランは最初から真実を語っていた。彼らは最後まで戦うつもりだ。軍事戦術だけでなく、国民全体の意思をジャバリ将軍は代弁した。アメリカがこの地域から追放され、撤退を余儀なくされるまで我々は戦争を続ける」。
 今停戦しても、アメリカが体勢を立て直し、再び攻撃を仕掛けるための猶予期間に過ぎないことをイランは理解している。そのため、テヘランは安易な解決策を求めていない。ホルムズ海峡封鎖、アメリカ船舶やタンカーの撃沈や、何年も続く戦いも辞さない構えだ。この戦争を、彼らは原則をめぐる戦いに変えたのだ。
 そして、まさにここで、トランプの支配手法の腐敗が露呈する。彼は安易な取り引きや短期的利益しか考えない。だが、戦争、特にイランとの戦争は不動産取り引きではない。「よし、お前たちの軍事施設を破壊したから、これで終わりにしよう」など、完全に撤退するまで戦い続けると敵が宣言している状況では、そうはいかない
 トランプ大統領は作戦終結を示唆し「名誉ある撤退」を模索しているが、イスラエルのカッツ国防相は即座に「期限なし」戦争を宣言した。一体どちらの言うことを聞けばよいのか? アメリカ大統領か、それともアメリカを更に泥沼に引きずり込もうとする同盟国か? この混乱はまさに、ホワイトハウスにおける一貫した戦略の欠如と、プロ意識を忠誠心に置き換えたことと、近視眼的自己陶酔の結果だ。

傲慢さの代償
 自らの卓越性と、世界に自らの意思を押し付ける権利を確信してドナルド・トランプは、この戦争に臨んだ。しかし、既にそうではないと歴史は断言している。国家精神はミサイルでは破壊できないことをイランは示した。トランプの誤算は、静かな怒りを弱さと、対話の姿勢を臆病さと勘違いした点にある。
 今日、自ら鳴り物入りで始めた戦争を一体どう終わらせればいいのか分からない指導者を世界は目にしている。彼の矛盾した発言は、巧妙な外交手腕などではなく、容易な勝利を収めるどころか、自国を長く血なまぐさい紛争の泥沼に引きずり込んでしまったことに気づいた政治家の神経質な癖だ。
 イランは警告した。だが信じてもらえなかった。そして今自らを偉大な戦略家と自負するアメリカ大統領は背後で閉ざされた罠から抜け出す方法を必死に探している。この戦争の結末は、もはやトランプ大統領が「いつ終わらせたいか」によって決まるのではない。傲慢さに対してアメリカが十分な代償を払ったとイランが判断する時が結末を左右する。テヘラン声明を見る限り、代償は非常に長く、非常に大きなものになりそうだ。

 ムハンマド・イブン・ファイサル・アル=ラシードは政治学者、アラブ世界専門家
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/03/17/a-one-sided-game-has-failed-trump-flounders-in-the-iranian-trap-he-set-himself/


現実を無視し、対イラン戦勝利を装うことを選んだトランプ
             マスコミに載らない海外記事 2026年3月22日
                   ルーカス・レイロス 2026年3月19日
                      Strategic Culture Foundation
 長期的に、アメリカ国民から真実を隠し通すのは不可能だ。
 中東紛争の最新動向で、アメリカ外交政策に繰り返し見られる現象、すなわち主張と現実を意図的に切り離そうとする試みが見られる。ドナルド・トランプ政権は、イランとの戦争の深刻さを軽視し、テヘランは「終わった」あるいは「無力化された」と示唆して、現場の事実と矛盾するだけでなく、危険な戦略的乖離を露呈している。
 支配的なイメージを演出しようとワシントンは躍起になっているが、独立した報告書や軍事力学自体から得られる証拠は、その逆を示している。非対称的な対応能力をイランは著しく発揮し、中東各地の要衝にある米軍基地を攻撃してきた。これらの攻撃は単なる象徴的なものではなく、死者を含む米軍の兵站面や作戦面で現実的代償を課している。かつて不可侵だとされていた米軍施設の脆弱性が、今や明らかになっている。
 更に、ペルシャ湾および周辺地域における米海軍施設への圧力の高まりは、紛争の様々な側面で、テヘランが主導権を握っているという見方を強めている。軍艦や商船の被害は、西側メディアによって、しばしば過小報道されるものの、勢力バランスの著しい変化を示している。アメリカが歴史的に主張してきた技術的・戦術的優位性は、弾道兵器に優れ、広範な地域同盟国ネットワークを通して活動する敵国に対して、もはや揺るぎない優位性を保証するものではない

 こうした状況を踏まえると、トランプ大統領発言は客観的評価というよりも、国内向けに政治的説明をしているように映る。戦争は存在しない、あるいは既に勝利したと装うことで、長期化し、国民の支持を得られなくなる可能性がある紛争に伴う政治的代償を政府は回避しようとしているのだ。だが、この否定戦略は深刻な影響を及ぼす。敵を過小評価するのは軍事史における最も典型的な過ちの一つで、しばしば予期せぬ敗北と多大な犠牲をもたらす
 この姿勢を理解する上で重要なもう一つの要素は、親イスラエル・ロビーがアメリカ外交政策策定に及ぼす影響だ。イランに対し強硬姿勢を維持するという主張は、イランを主要地域ライバルとみなすイスラエルの戦略的権益に大きく合致している。だが、この方針に無条件に従うことは、自国の長期的国益を反映しない決定をワシントンが下すことにつながりかねない。

 イランとの継続的紛争を求める圧力は、地域情勢の複雑さを無視し、ペルシャ国家の本当の能力を軽視している。イランは「孤立」や「崩壊」どころか、ここ数十年で、国家主体と非国家主体両方を含む影響力ネットワークを強化し、戦略的深みと戦力投射能力を確保している。この構造により、テヘランは分散型対応が可能になり、イランの活動をアメリカとイスラエルが無力化するのが極めて困難になっている。
 戦略的観点から見れば、現在のワシントンの姿勢は逆効果とみなせる。軍事的エスカレーションはイランを弱体化させるどころか、イラン国内の結束を強め、地域および世界世論に対する抵抗姿勢を正当化してしまった。同時に、アメリカにとっての代償は、財政面でも国際的信頼性の面でも増大し続けている
 戦争は既に終わったと主張するだけで、トランプが「勝利」を収めようとしても、ほとんど意味はない。現実は言説を凌駕する。インターネットやソーシャル・メディアや代替メディアが普及した現代に、関連するあらゆる問題に関する本当の情報源を一般市民が利用するのを阻止できる検閲や公式見解は存在しない。トランプは、中東情勢が全てコントロール下にあるとか、アメリカが最小限の被害で事態を収拾していると有権者を説得することはできない。真実を明らかにし、MAGAプロジェクト本来の理念への裏切りと多くの人がみなす行為について、アメリカ国民はトランプに詳細説明を求めるだろう。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/03/19/trump-chooses-to-ignore-reality-and-pretend-victory-against-iran/

23- 沖縄 米海兵隊が中東へ移動/ディモナ原子炉(イスラエル)近傍をイランが攻撃

 櫻井ジャーナルの掲題の2つの記事を紹介します。
1番目の記事)
 沖縄のキャンプ・ハンセンで訓練中の米軍海兵隊第31海兵遠征部隊(MEU)に所属する2500名と、佐世保海軍基地を母港とする強襲揚陸艦トリポリとその強襲揚陸艦群は13日に佐世保港を出てイラク戦争に加わろうとしています。
(2番目の記事)
 米軍またはイスラエル軍17日ミサイル発射し稼働中のブシェール原発(イラン)から数の地点に着弾しました。その報復としてイラン軍は21日、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センターに近い場所をミサイルで攻撃しました。米国・イスラエルが始めたイラン戦争は深刻の度を深めています。
 関連してイスラエルが核弾頭150~200発所有していることを、製作を担当したイスラエルのモルデカイ・バヌヌ1986年10月5日告発した経緯が記述されています。
 西側は証拠のないイランの核弾頭疑惑を強調しますが、既に所有が明白なイスラエルについては何の追及もしないという不条理をどう考えているのでしょうか。
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日本に駐留している米海兵隊の部隊が中東へ移動、イラン攻撃に参加の可能性
                         櫻井ジャーナル 2026.03.22
 沖縄のキャンプ・ハンセンで訓練中のアメリカ海兵隊の31海兵遠征部隊(MEU)に所属する2500名と佐世保海軍基地を母港とする強襲揚陸艦トリポリとその強襲揚陸艦群(強襲揚陸艦サンディエゴとニューオーリンズ)は3月13日から中東へ向かっているという。
 アメリカ軍とイスラエル軍は2月28日にイランを奇襲攻撃、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害した。
 オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相によると、9カ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたという
 ドナルド・トランプ米大統領は3月14日にイランのハールク島を爆撃させた。この島はイランの原油輸出の約9割を扱っている重要な場所。イランの原油輸出の約9割を扱っている同島の石油輸出ターミナルはこの攻撃でダメージは受けなかった。また、爆撃後もハールク島の防空システムは機能している。
 このハールク島に対する上陸作戦をトランプ政権は考えていると言われ、そのために第31MEUが派遣されたというのだが、日本駐留しているアメリカ軍部隊がイランに対する攻撃に参加するとなると、日本もイランにとって敵国ということになる。中東にあるアメリカ軍基地はイランやその同盟組織からの攻撃で破壊されているが、日本にあるアメリカ軍基地が攻撃されることもありえるということになるだろう。

 上陸作戦が成功する可能性は高くないが、もし成功して占領した場合はイラン軍からの集中攻撃を受けることになり、捕虜になるか戦死することになる。アメリカ政府もそうした展開になることは理解しているはずで、海兵隊員を生贄にして核攻撃するつもりではないかと危惧する人もいる。イランに勝利することが困難になっているイスラエルが核兵器を使っても不思議ではない。
 アメリカ軍の内部にはイスラエルのために命をかけたくないという将兵も少なくないが、イランを核攻撃したいと考える将兵もいる。2007年8月29日にアメリカのノースダコタ州マイノット空軍基地でW80-1可変出力核弾頭を搭載したAGM-129 ACM巡航ミサイル6発が行方不明になるという出来事があった。しかもミサイルの紛失は報告されず、マイノットとバークスデール両基地で36時間にわたり航空機に搭載されたままだったという。
 間違ってB-52H重爆撃機に搭載され、ルイジアナ州バークスデール空軍基地へ輸送されたということになっているが、核兵器を扱うための手順を考えると、少なくとも軍の幹部が核弾頭を搭載しミサイルの移動に関係している可能性が高い。アメリカ国内での核テロを計画していたのか、イランを独断で核攻撃しようとしたグループがいるのではないかと言われていた。現在トランプ政権を動かしている人びとの一部が核攻撃を目論んでいても不思議ではない。


イスラエルが核兵器を製造しているディモナ原子炉の近くをイランが攻撃
                         櫻井ジャーナル 2026.03.23
 イラン軍は3月21日、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所をミサイルで攻撃した。そこにはディモナ原子炉で働く科学者が避難するための地下施設があると言われている。この攻撃はイスラエルがイランのナタンズ核施設を攻撃した数時間後に実施された。アメリカ軍、あるいはイスラエル軍が発射したミサイルが3月17日、稼働中のブシェール原子力発電所から数メートルの地点に着弾している。
 ディモナ原子炉では核兵器が製造されている可能性が高い。ここで技術者として働いていたモルデカイ・バヌヌの告発1986年10月5日付けのサンデー・タイムズ紙に掲載されたが、それによると、イスラエルが保有する核弾頭の数は生産のペースから推計して150から200発水爆の製造に必要なリチウム6やトリチウム(三重水素)の製造もバヌヌは担当、別の建物にあった水爆の写真を撮影したという。それだけでなく、イスラエルは中性子爆弾の製造も始めていたとしている。(The Sunday Times, 5 October 1986)
 ジャーナリスト、セイモア・ハーシュは『サムソン・オプション』の中で、バヌヌのディモナに関する話はイギリスのマスメディアを経由してイスラエル政府に伝わり、拉致に繋がったという。

 イスラエル軍情報局のERD(対外関係部)に所属、イツハーク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたこともあるアリ・ベン-メナシェによると、イスラエルの情報機関はバヌヌがサンデー・タイムズ紙へ持ち込む前の段階で調査を開始している。
 バヌヌにディモナの話を記事にしないかと持ちかけたのは、オーストラリアで知り合ったジャーナリストのオスカー・ゲレロ。まず地元のシドニー・モーニング・ヘラルド紙やザ・エイジ紙に持ち込んだが、掲載を断る。そのうえで同紙はオーストラリアの対内情報機関ASIOに通報し、その情報はさらに対外情報機関のASISへ伝えられ、そこからイスラエルへ知らされた。アングロ・サクソン系国とイスラエルの情報機関は密接に繋がっている。
 次にゲレロはイギリスへ渡り、デイリー・ミラー紙に接触するが、同紙を所有していたロバート・マクスウェルはイスラエル軍の情報機関のために働いていた。ベン-メナシェによると、同紙の国外担当編集者のニコラス・デービスもイスラエルの情報機関のエージェントだ。

 ゲレロとバヌヌがデイリー・ミラー紙の前にサンデー・タイムズ紙へ持ち込まなかったなら、記事は掲載されていなかった可能性が高い。モサドのロンドン支局長はイギリスの治安機関MI 5に協力を要請、工作をはじめていたのだ。MI 5はイギリスで政治的、あるいは外交的問題を引き起こさないという条件で協力を約束した。
 モサドはバヌヌを拉致することにしたが、MI 5との約束があるため、イギリスでは実行できない。そこで彼をイタリアのローマにおびき出すことにした。そして登場してくるのが「シンディ・ハニン・ベントフ」なる女性だ。
 まずシンディは散歩中のバヌヌに何気なく話しかけ、パブに誘う。そうしたデートを何回か重ねた後、バヌヌはローマへ旅行しないかと持ちかけられ、彼はローマ行きを承知してしまう。ローマで彼を待ちかまえていたのはモサドのエージェント3名。ローマで大きな箱に押し込められたバヌヌは船でイスラエルのアシュドッドに運ばれた。外交特権で箱が調べられることはなかった。サンデー・タイムズが記事の掲載を決定したのは1986年10月5日、バヌヌが拉致された数日後のこと。バヌヌは1988年3月に懲役18年の判決を受けている。
 バヌヌの告発はアメリカの情報機関にとっても驚きだったという。彼らはイスラエルの保有する核弾頭数を24から30だと推測していたからである。バヌヌが告発した後、イスラエルが保有する核兵器の数は増えているはずだが、ジミー・カーター元米大統領はその数を150発以上だとしている。中には400発だとする人もいる。実際の保有数が不明な理由のひとつはディモナを詳しく調べられないからだ。ジョン・F・ケネディ大統領は調べようとしたが、1963年11月22日に暗殺された。

 イスラエルがイランの核開発についてとやかく言うのはおかしいのだが、アメリカとイスラエルがイランを爆撃している理由がそこにあるとは思えない。ガザのようにして、中東全域をイスラエルにしたいのだろう。「大イスラエル」だ
 イスラエルはアメリカやイギリスにとって中東を支配するための航空母艦だと考えることができる。北アメリカやオーストラリと同じように先住民を虐殺し、自分たちの領土にしたいのだろう。大イスラエルを荒唐無稽の話だと考える人は歴史を学び直すべきだ