2026年10月22日木曜日

イスラエル総選挙 問われるパレスチナ政策(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗の掲題の記事を紹介します。
 イスラエルの総選挙は27日に投開票されます。ネタニヤフ政権の路線が継続するのか、それとも野党への政権交代で何らかの変化や転換の可能性が生まれるのかが注目されます。
 とはいえ野党の中に極右政党が存在するので安易な期待は持てません。
 元国家安全保障会議副議長のエラン・エツィオン氏は、「国民の信頼を回復するには政府の仕組みや兵役制度、教育制度などに及ぶ「根本的な民主主義の刷新」が必要で、その実現には、選挙を経て国民の意思を反映した新政権が不可欠」と述べます。
 いずれにしてもネタニヤフは下野して汚職に対する審判を受けるべきです。
 併せてしんぶん赤旗の2つの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イスラエル総選挙 問われるパレスチナ政策
                      しんぶん赤旗 2026年10月20日
【カイロ=米沢博史】イスラエル総選挙は27日に投開票されます。2023年10月以来のパレスチナのガザ地区への侵攻やヨルダン川西岸での入植拡大、今年2月以来の対イラン戦争のなかでたたかわれる選挙戦では、これらを推進してきたネタニヤフ政権への国民の判断が下されます。ネタニヤフ政権の路線が継続するのか、野党への政権交代で何らかの変化や転換の可能性が生まれるのかです。

 ネタニヤフ首相は、総選挙に向け、「敵」の脅威を強調して国民の不安や恐怖に訴え、ガザや西岸での攻撃やレバノン、シリアヘの侵攻を実績として誇示し、イスラエルの「安全」を守る強硬な指導者をアピールしています。連立与党の極右もガザでの戦闘継続やパレスチナ人の強制移住、西岸での入植拡大を掲げ、入植者や右派支持層の結集を目指しています。ただし首相が呼びかけた極右2政党の統一は失敗しました。
 野党もー枚岩ではありません。政権交代を目指す右派野党と、パレスチナ人の権利を訴える左翼・アラブ系勢力の立場には大きな隔たりがあります。
 国会(クネセト)は定数120の一院制で、全国一区の比例代表制です。議席獲得には得票率3・25%以上が必要で、政権樹立には61議席以上が必要です。
 世論調査では、ネダニヤフ首相の連立与党、野党のいずれも過半数に届かず、選挙後の連立交渉が政権の行方を左右する見通しです。
 右派野党では、元軍参謀総長のアイゼンコット氏が率いる新党「ヤシャル」が支持を集めています。同氏はネタニヤフ首相の汚職疑惑や、イスラム組織ハマスによる襲撃を防げなかった政権の責任を追及しています。同党は、パレスチナ国家樹立に反対し、ヨルダン川西岸の入植地建設も容認する立場で、政権交代が実現しても政策は大きく変わらないと指摘されています。
 これに対し、パレスチナ人の権利を擁護する左翼連合ハダシュとアラブ系2政党による共闘名簿「統一リスト」は、今月の世論調査による獲得議席予想は8議席(現有5議席)、アラブ・イスラム系のラアムは、現有5議席維持となっており、選挙後の政局を左右する可能性があります。ただし、右派野党の指導者らはアラブ系政党との連立に慎重ないし否定的です。


ガザ再占領 狂気の沙汰 元イスラエル国家安全保障会議副議長 エツィオン氏に聞く
                      しんぶん赤旗 2026年10月20日
【カイロ=米沢博史】イスラエルで05~14年に国家安全保障会議副議長と外務省政策企画局長を歴任し、その経験と教訓から現政権を批判するエラン・エツィオン氏に、選挙で何か問われるのかについて聞きました。
      ◇
 3年前のイスラム組織ハマスによる襲撃は、わが国に戦略的、歴史的な打撃を与えた国家的惨事です。まず調査委員会の設置を実現して首相らの責任を追及すべきです。
 イスラエルは1967年の第3次中東戦争でガザ地区を占領し、軍政下に置いて入植地を建設しました。しかし、パレスチナ人の抵抗は続き、2005年に軍と入植地を撤退させました。その後は、ガザ地区を厳重な封鎖下に置き、軍事的圧力によって外部から支配する戦略に転換しました。
 ハマスの襲撃はこうした政策の破綻であり、ガザを内部から支配する試みは、過去の失敗を繰り返す狂気の沙汰です。米国が01年に始めたアフガニスタン侵攻も、膨大な血の犠牲を払いながら何ももたらしませんでした。
 現政権はイランやガザ、ヨルダン川西岸、レバノン、シリアなどで、「戦闘中」であることを前面に押し出して国民の注意を戦争に向け、責任追及をかわそうとしており、国益に反します。国民の信頼を回復するには、政府の仕組みや兵役制度、教育制度などに及ぶ「根本的な民主主義の刷新」が必要です。そして、その実現には、選挙を経て国民の意思を反映した新政権が不可欠です。


ネタニヤフ氏の全面支持を表明 米トランプ氏
                      しんぶん赤旗 2026年10月20日
【ワシントン、カイロ=時事】トランプ米大統領は18日、SNSで、27日投開票のイズラエル総選挙について、ネタニヤフ首相への「完全かつ全面的な支持」を示しました。最新の世論調査では連立与党が過半数を得るのは困難な情勢で、ネタニヤフ氏を後押しする狙いがあるとみられます。
 イスラエルと共に2月に開始した対イラン軍事作戦に触れ、「ネタニヤフはイランとの戦いにおいて、偉大な平和のパートナーだ」と称賛しました。トランプ氏は過去に、2月の衆院選で高市早苗首相を支持したほか、ハンガリーやコロンビアなどの選挙でも友好関係にある候補者への支持を明らかにした経緯があります。
 ただ、パレスチナ自治区ガザの停戦を巡って、トランプ氏が示した和平案の実現に消極的なネタニヤフ氏との間で方針の違いが表面化。トランプ氏はこれまで、記者団からネタニヤフ氏を支持するかどうか問われても明言を避けていました。
 ネタニヤフ氏は18日、X(旧ツイッター)に投稿し、トランプ氏の「多大なる支援と協力」に謝意を表明。「共に任務を完遂する」と述べました。
 ネタニヤフ氏にとってトランプ氏との「親密な関係」は求心力を維持するためのカード。イスラエルメディアによると、アイゼンコット元軍参謀総長が率いる中道新党「ヤシャル」など反ネタニヤフ陣営は、トランプ氏の側近ちに選挙で中立を保つよう求めていました。

米中露首脳会談が世界を変える(田中宇氏)

 田中宇氏の掲題の記事を紹介します。
 トランプはプーチンの提案を受け、米中露首脳会談を行ってウクライナ戦争の停戦や世界的な核廃絶について話し合うと表明しました。具体的には11月18日に中国の深圳で開かれるAPECサミットの傍らで米中露首脳会談が開かれることがほぼ決まっており、ロシアが最も熱心で中国と何度も協議し中国の了承を得ていました。

 これまで表向きはトランプの態度表明が欠落していましたが、今回トランプが表明したことで史上初の米中露首脳会談の開催が確定的になりました。
 田中氏は、トランプの本音はウクライナ和平であり それを実現することで自分とプーチンの米露結束を公式なものにして強化することにあると見ています。
 そうなればゼレンスキーは英欧に経済的支援のさらなる拡大を要請するしかありませんが、いまや仏をはじめとして英独等にはその余力はありません。そもそも支援金の使途の不明朗さは以前から指摘されてきたところでした。
 そして、米中露は今の政権のまま今後10年は首脳会談を続けていける(米国は29年からトランプ継承のJDバンスか誰かになる)ので、米中露は首脳会談を繰り返し、そのたびに英国系のいろんな首脳会議の中心に陣取って会議の機能を破壊し続け、英国系の覇権を低下させていくと見ています(高市氏もそろそろ中露に関する誤った認識を改めるべきしょう)。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
米中露首脳会談が世界を変える
                田中宇の国際ニュース解説 2026年10月20日
トランプ米大統領が、米中露首脳会談をやって、ウクライナ戦争の停戦や、世界的な核廃絶について話し合うんだと表明し始めた。(Trump Favorable On Trilateral Meeting With Xi, Putin: "I Would Do It")

11月18日に中国の深圳で開かれるAPECサミットの傍らで米中露首脳会談が開かれることは、すでにほぼ決まっている。ロシアが最も熱心で、中国と何度も協議し、中国の了承を得ていた。プーチンはトランプとの電話会談でも話を出している。
これまで表向き、トランプの態度表明が欠落していた。今回トランプが決意表明したことで、史上初の米中露首脳会談の開催が確定的になった。(Putin proposes summit with Trump and Xi to discuss Ukraine deal, WSJ says)

トランプは核廃絶を進めたいと言っているが、核保有国は米中露だけでない。核兵器の削減は、多くの試みが頓挫している。今のような乱世には特に難しい。トランプ自身が中東の核問題を悪化させた現実もある。
トランプが核廃絶を持ち出しているのは「見掛け倒しの看板」だろう。もしくはイランなど特定国の核問題だけ話したがるとか(それをやると習近平が敬遠する)。(Trump says he would be open to trilateral meeting with Putin, Xi)

トランプの本音は、ウクライナ和平だろう。ウクライナ和平そのものでなく、ウクライナ和平を実現することで自分とプーチンの米露結束を(これまでの隠然関係から)公式なものにして強化したい。
トランプは最近、ゼレンスキーを挑発して喧嘩している。ゼレンスキーは売られた喧嘩を買ってトランプとの関係を最悪に引き下げてしまった。トランプの謀略が奏功した。
(Trump and Zelensky’s relationship close to breaking down)

トランプは、ウクライナ(と、その背後の英EU)抜きで露中と話し合い、ウクライナ戦争を終わらせていきたい。
トランプの主眼は、ウクライナ終戦そのものでなく、英EU(英国系)を疎外した米中露中心の新たな国際社会を作ることだ。そのために、米中露だけでウクライナ和平して実績を作りたい。
(英傀儡であるマスコミや外交官群、既存の国際社会は、当事者のウクライナを外した大間違いな大国主義だと非難する)(米露が和解していく)

トランプは、米国の軽油不足を解決するためにやむを得ないと言って、ロシアに対する経済制裁を一部解除し、ロシアから米国と世界への軽油の輸出を再開した。米国の軽油不足の主因は、米国内で長年精油所の増強が見送られ、もともと需給が逼迫していたからだ。
トランプは、軽油など燃料費の値上がりで米政府に不満を持つ人が増え、中間選挙で共和党が不利になっているのを解消すると言いつつ、かねてからやりたかったロシアとの和解を進めている。
米議会は今年も共和党主導で新たな対露制裁を可決し、トランプはいったん承認した。だがその後トランプはそれも、軽油不足解消やウクライナ和平のためにやむを得ないと言いつつ、大統領令で制裁免除してしまった。(Russia Celebrates 'Historic Moment' After Trump Formally Waives Graham Act Sanctions)

11月18日の米中露首脳会談に向けて、トランプはロシアにどんどん接近している。外されたゼレンスキーは英EUにすり寄り「トランプに嫌われたので、代わりに英欧がもっとカネを出してくれ」とせびっている。フランスは財政破綻寸前で暴動が広がるばかり。ドイツは親露なAfDが強くなっている。英欧は財政難でウクライナに追加資金を出せない。自滅傾向が増す。(‘Great progress’ in Ukraine peace talks - Trump)

ウクライナ和平(や核軍縮)の話は、一回の会談で終わらない。トランプは、米中露首脳会談を繰り返し開こうとしている。11月18-19日の中国深圳APECサミットの次は、おそらく12月14-15日の米国マイアミG20サミットの傍らで米中露首脳会談を行う。
9月末の習近平訪米の段階で、習近平はマイアミG20サミットに参加するが、プーチンはG20サミットに行かないと露政府が言っていた。この時点では、G20サミットが米中首脳再会談の場になりそうだった。(Putin plans to attend Xi’s Apec summit and skip G20 with Trump)(習近平訪米の意味)

だがその後10月19日に露政府は、プーチンがG20サミットに行くかどうかまだ決まっていないと言い出した。プーチンが参加して、マイアミG20サミットが米中露首脳再会談の場になる可能性が出てきた。
トランプ提案のウクライナ和平はロシアにとって利得が大きい。プーチンは、米中露首脳会談が繰り返し開かれてウクライナ和平が進むことを望んでいる。(No decision on Putin’s potential visit to G20 summit in Miami - Kremlin spokesman)

以前の記事にも書いたが、米中露首脳会談が行われることで、深圳APECサミット自体の機能がかなり損なわれる。主催者である中共は、閣僚会議をオンライン化し、首脳たちの自由談義(レトリート)を不開催にした。
英国系のAPECサミットの機能が、反英的なトランプとプーチンが集う米中露によって破壊されている(習近平は本質的に反英だが、現実面は非英)。
12月のマイアミG20サミットも、プーチンが参加して米中でなく米中露の首脳会談が開かれたら、深圳APECと同様に、反英的な米露が英国系の国際会議を(リクード側に)変質させる画策が行われそうだ。(トランプ式のヤルタ2.0になる世界)

米中露は今の政権のまま、今後10年は首脳会談を続けていける(米国は2029年からトランプ継承のJDバンスか誰かになる)。
米中露は首脳会談を繰り返し、そのたびに英国系のいろんな首脳会議にずかずかと乗り込んで中心に陣取って会議の機能を破壊し続け、英国系の覇権を低下させていく。
来年11月には英国でG20サミットが開かれる。そこにも3人が乗り込んで乗っ取り、大本山である英国の機能を上書きするとか。G20やAPECの機能が破壊されていく。

BRICSには中露が参加しているが米国が不参加だ。もし今後、中露がBRICSサミットにトランプを招待すると、BRICSもトランプにずかずか乗り込まれて非米覇権としての機能を阻害される。習近平がそれを許すかどうか。
そこまでいかなくても、習近平は、トランプの米中露首脳会議に出続けることで、非米覇権を放棄し、リクード側に取り込まれる。習近平は、中共と中国統合の延命(リクード系による破壊の防止)のために、それをやっている。
米中露首脳会談が繰り返されるほど、非米側と英国系の国際的な意思決定機能が、トランプ(リクード系)主導の米中露に乗っ取られていく。

最終的に国連も乗っ取られるかもしれない。国連は、英国系が動かし、非米側が権限を拡大しようと動いてきた。英国系は冷戦構造で国連を分裂させ、米国は英国系に乗っ取られて冷戦体制(冷戦後も中露敵視)に押し込められてきた。
トランプは、リクード系のもとで、それを破壊しようとしている。これまでの米国の各政権は、米国に多くを求めすぎる国連を敬遠し、意図的に超強硬派を国連大使に送り込んでコワモテにやってきた。トランプはそれをさらに進め、国連の費用負担を拒否する姿勢だ。
しかし今後、米中露の首脳が直接連携する体制ができたら、それを国連に持ち込み、来年から極右(親リクード、反英非英的)なルペン政権になる常任理事国のフランスも取り込んで、国連を乗っ取っていける。米中露首脳会談を始めるトランプの最終目的は、国連の乗っ取りかもしれない。

トランプ米大統領はエネルギー危機を顧みずイランを攻撃する可能性

 櫻井ジャーナルの掲題の記事を紹介します。 併せて2つの記事を紹介します。

 これまでの経緯を見れば、トランプがこの先いつイランを攻撃しようとも何の不思議もありません。トランプは今年2月、ネタニヤフに唆されて突如 対イラン戦争を始めましたが、ミサイルや爆弾等の在庫が乏しくなると休戦協定を結びました。
 それ以降も随時断続的な攻撃を繰り返したことは理解に苦しみますが、トランプの対イラン発言や対イラン攻撃に連動して、その都度 原油の先物取引価格が乱高下したことから、内部情報発信者の立場を利用して莫大な収益を得たのではという見方が有力になりました。今や世界の人たちは いつまたトランプがイランを攻撃しても不思議ではないという見方をしています。

・「イスラエルのための嘘が米国をイランとの戦争へ追い込んだ」(耕助のブログ)では
 米国ヴァンス副大統領は、「イラン国家が49年間米国やその他多くの人々に対するテロ行為」を行って来たと非難しましたが、数十年にわたり軍事的にも、経済的制裁によってもイランを攻撃してきたのは米国の方だと述べています。

・「イランにMOAB(大規模爆風爆弾)を投下するのか?」(マスコミに載らない~)では、
 重量10トンの大規模爆風爆弾を投下するには、C-130型輸送機が目標上空まで直接爆弾を運び、減速用パラシュートを使い、搬入スロープから投下する必要があるのですが、低速で飛行するC-130では厳重に防衛されたイラン領空中心部まで到達するのはほぼ不可能で自殺行為に等しいと、その実用性を一蹴しています。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トランプ米大統領はエネルギー危機を顧みずイランを攻撃する可能性
                         櫻井ジャーナル 2026.10.21
 ロシアは自国の沿岸沿いに北極海を航行する航路を切り開いた。北極海の沿岸からベーリング海峡を通り、千島列島を横切ってアジアへ向かう。ホルムズ海峡やマラッカ海峡のようなリスクがなく、航路が短いため短時間での輸送が可能だ。ロシアはこの航路で今年7月以降、前シーズンの総量を上回る約2000万バレルの石油を輸送している。その大半はアジア向けだという。この中に日本向けの石油が含まれている可能性がある。

 日本が輸入していた西アジアでは、アメリカとイスラエルが2月28日にイランに対して斬首作戦を実行したことから報復合戦になり、ホルムズ海峡をタンカーが航行することが難しくなった。イランが承認しない限り、タンカーは通過できない。戦争前、ホルムズ海峡を通過するタンカーは世界へ供給される石油の約20%を運んでいた。その大半が止まったのだ。
 ホルムズ海峡のオマーン側を小型タンカーで運び、海峡の外で大型タンカーに積み替えるということも行われているものの、イラン革命防衛隊(IRGC)に見つかれば攻撃される。
 ホルムズ海峡を避けるため、サウジアラビアはアラビア半島を横断する東西石油パイプラインを建設していたが、サウジアラビアからの攻撃を受けてきたイエメンのアンサール・アッラーはそのパイプランを攻撃して施設を破壊、石油の輸送を止め、バブ・エル・マンデブ海峡の航行も制限している。

 現在、石油を比較的安全に輸送できているルートは、ホルムズ海峡の外側にあり、オマーン湾に面したアラブ首長国連邦のフジャイラ港からのもの。この港へ石油を運んでいるのはハブシャン-フジャイラ石油パイプラインだ。このルートは日本への供給でも利用されている。現在、このルートだけが機能している。
 これまで日本は不足分をアメリカでは戦略石油備蓄(SPR)に頼ってきたが、限界に到達している。中国は膨大な量の備蓄石油を取り崩し、輸入を減らしていたようだが、元に戻しつつあるという。原油相場の上昇は不可避だ。
 その相場上昇を一時的なものだとする見方をアメリカのエネルギー・アナリストのカール・W・ミラーは否定している。戦争で被害を被ったペルシャ湾岸のエネルギー施設は戦争が終結しても解消されず、復旧、あるいは再建には数年の年月と数兆ドルの資金が必要で、その問題が解決されるまで世界の燃料不足は続く。5年後でも復旧できるのは全体の60%に過ぎず、7年は必要だとみられている。

 アメリカ政府はこうしたことを理解しているはずで、そうした事態を望んでいた可能性が高い。イランを攻撃する前、今年1月3日にアメリカはベネズエラに対する軍事作戦を実行、アメリカ陸軍のデルタ・フォースがニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拉致、デルシー・ロドリゲス副大統領が大統領代行に就任した。ロドリゲスがアメリカに協力していたと疑う人は少なくない。イラン攻撃の前にベネズエラの石油を抑えるという計画を作成したのはイギリスの寡頭勢力だという人もいる。

 イギリスの寡頭勢力はロシアによるエネルギー資源の生産/供給能力をウクライナに破壊させ、イランの体制を転覆させ、かつてのように自分たちの利権にしようとしたのかもしれないが。そうした展開にはなっていない。アメリカが世界のエネルギー資源を支配することもできないだろう。


イスラエルのための嘘が米国をイランとの戦争へ追い込んだ
               耕助のブログNo. 3066  :2026年10月21日
  Lies Serving Israel Have Sent Us to War with Iran
                   by Paul Craig Roberts
10月5日にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とニューヨーク・タイムズ(NYT)はともに、「イランのドローン攻撃の脅威により、米国は英国の基地から爆撃機を撤退させた」と報じた。https://www.wsj.com/politics/national-security/uk-us-bomber-move-iran-drone-threat-5097f827? st=zHbrGr&reflink=article_email_share

NYTの 見出しは「イランのドローン攻撃の可能性により、米軍機が英国空軍基地から撤退」となっている。https ://www.nytimes.com/2026/10/05/us/politics/iran-drone-attack-us-uk-base-fairford.html

NYTによると、「爆撃機を基地から移動させる必要性が非常に緊急であると判断されたため、空中給油機が米国への飛行を支援するために配備されている最中に、一部の航空機とその乗組員が基地を離れた」とのことだ。
NYTはまた、「85軒の家屋が慌ただしく避難し、爆発物処理ロボットがバンの中から爆発物を捜索し、バーナム首相が国家安全保障会議を招集した」と報じている。
遠く離れた英国に配備されている米空軍の戦闘機は、イランの攻撃に対して安全ではないだけでなく、NYTは、「イスラエルがドイツに対し、欧州にある米軍基地がイランの攻撃を受けるリスクが高まっていると警告した」と報じている。

WSJによると、この攻撃計画は、イランが航空機を標的にし、フェアフォード空軍基地のアメリカ人パイロットを殺害しようとする、より広範な陰謀の一環だったという。
NYTは、この攻撃を「疑わしい」または「可能性のある攻撃」だと報じた。米国のジョン・D・ヴァンス副大統領は攻撃の深刻さを軽視し、ペンタゴンが「万全を期して我々の兵士を守ろうとした」として爆撃機を迅速に移動させたと述べた。
それにもかかわらず、ヴァンスはこの疑惑の攻撃をイランに対するプロパガンダに利用し、「イラン国家が49年間行ってきたこと、つまり米国やその他多くの人々に対するテロ行為」をイランが行っていると非難した。ヴァンスは事実を誤っている。数十年にわたり、軍事的にも経済的にも制裁によってイランを攻撃してきたのは米国の方だ。
ワシントンがイランに初めて制裁を課したのは47年前の1979年、イラン国民がアメリカの傀儡政権を打倒し、1953年8月19日にCIAとMI 6がクーデターを起こし、民主的に選出されたモハンマド・モサデク首相を打倒し、ファズロラ・ザヘディ将軍を後継者に据え、レザー・パフラヴィーをシャーに復位させたことで失われた自治権を回復した時だった。

26年後、イラン国民は1979年のイラン革命で再び自治権を取り戻した。1979年11月14日、ジミー・カーター大統領はイラン革命に対し、大統領令12170号に署名し、米国に保有するイラン政府資産および銀行預金120億ドルを凍結した。この制裁に続き、輸入禁止と貿易禁輸措置が実施され、その後数十年にわたるイランに対する制裁の方向性が定まった。
イランはこれまで米国の病院や子供の学校、民間住宅を爆撃したことは一度もなく、米国の政治指導者、軍指導者、科学者を暗殺したこともない。テロリストはワシントンとイスラエルで、イランの女性、子供、医療従事者、科学者、そしてイランの最高指導者を虐殺してきた。ヴァンス氏、イランによる「米国やその他多くの人々に対するテロ行為」について、いくつかの事実を挙げてほしい。ワシントンによるイランへの侵略が嘘で正当化されなければならないという事実は、その侵略が不当であることを証明している。ワシントンは「イランの核兵器」から米国を守っているわけではない。ワシントンは、米国の血と金を使って、「大イスラエル」というシオニストの計画に奉仕しているのだ。

そして、ヴァンス氏、もしイランのドローン攻撃によってイギリス国内で米軍機が安全でないのなら、米中央軍と財務長官が主張するように、ワシントンはどのようにしてホルムズ海峡を支配していると言えるのだろうか?遠く離れたイギリス国内で米軍機が安全でないとしたら、ペルシャ湾ではどうして安全なのだろうか?
 https://paulcraigroberts.org/lies-serving-israel-have-sent-us-to-war-with-iran/


イランにMOAB(大規模爆風爆弾)を投下するのか?
               マスコミに載らない海外記事 2026年10月20日
                   Moon of Alabama 2026年10月16日
 この愚かさには腹が立つ。  
独占情報:イランに対する「MOAB大規模爆風爆弾」使用をアメリカは検討していると関係筋が語る– CNN、2026年10月16日

 ピッケル山を含むイラン核施設への攻撃に関する軍事計画には、MOAB使用が明確に盛り込まれていると別の情報筋がCNNに語った。
 GBU-43/B大規模爆風爆弾(MOAB)は重量10トンの対地用爆弾だ。ピッケル山は、イラン中部のナタンズ市近郊に位置している。









 米軍はMOABを搭載できる爆撃機を保有していない。そのような爆弾を投下するには、C-130型輸送機が目標上空まで直接爆弾を運び、減速用パラシュートを使い、搬入スロープから投下する必要がある。
 低速で飛行するC-130では厳重に防衛されたイラン領空中心部まで到達するのはほぼ不可能だ。それは自殺行為に等しい。

 ピッケル山では、厚い花崗岩の下に深いトンネルが張り巡らされていると言われている。MOAB(大規模爆風爆弾)が起こせるのは、トンネル入り口を一部塞ぐことくらいだ。それは、掘削機を使えば1、2日で元に戻せる。

 この狙いでMOAB使用を提案した米軍関係者は無能であり、即刻解雇されるべきだ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/10/dropping-moab-on-iran.html

22- 元国対委員長・森山裕氏 「国会軽視」の高市総理に強い違和感/「高市総理のX投稿」に覚える危惧

 週刊現代の掲題の記事を紹介します。
 国対委員長として歴代最長の在任記録を持つ森山裕氏は、「言論の府」に通じそれを重んじてきた人でした。
 国会軽視が叫ばれる今、旧知の記者・後藤謙次氏に心中を明かしました。
 高市氏が自民党員から見ても、国会の在り方について正しい認識を持たずに 独断・独善的に対処している実態が温厚な語り口で述べられています。
 前編・後編にわたる対談記事です。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「国会軽視」の高市総理に強い違和感…元国対委員長・森山裕氏が前回国会は「異様な運営」だったと指摘する理由(前編)
                      週刊現代オンライン 2026/10/20
国対委員長として歴代最長の在任記録を持つ森山氏。国会軽視が叫ばれる今、「言論の府」を重んじる彼が、旧知の記者に腹の中を明かした。

森山裕(もりやま・ひろし)/'45年鹿児島県生まれ。衆議院議員。鹿児島市議、同議長、参議院議員を経て、'04年衆院選で鹿児島選挙区から初当選。農林水産大臣や自民党の国会対策委員長、選挙対策委員長、総務会長、幹事長などを歴任した。現在、日中友好議員連盟会長なども務めている

後藤謙次(ごとう・けんじ)/'49年東京都生まれ。政治コラムニスト、白鷗大学名誉教授。共同通信で政治部長、編集局長などを歴任。その後TBS系『NEWS23』キャスター、テレビ朝日系『報道ステーション』コメンテーターを務めた。著書に「ドキュメント平成政治史」シリーズ(岩波書店)など

また「ゴリ押し」の国会運営か?
後藤 臨時国会が開会し、本格論戦に入りましたが、国会運営をめぐる高市政権の布陣には永田町でも強い違和感が広がっています。国会を「言論の府」「国権の最高機関」として尊重せず、「官邸の直轄地」のように扱おうとする意図が透けて見えます。

森山 そもそも行政府(内閣)と立法府(国会)は役割が違います。行政府は総理大臣がトップでおやりになればいいわけですが、立法府は衆参両院の議長を中心に、各党が話し合いのルールに基づいて運営するもの。そこは明確に区別しなければなりません。

後藤 ですが今回の人事を見ると、その原則が怪しく思えます。国会の「効率化」を訴えてきた村井英樹・前国対筆頭副委員長を国対委員長に起用。さらに、先の特別国会で委員長職権を連発し野党の反発を招いた坂本哲志・前予算委員長を、衆院議院運営委員長へとスライドさせました。野党から「強引すぎる」と批判された陣容を重要ポストに据えた形で、今後も「ゴリ押し」の国会運営が常態化するのではないですか。

森山 国会は国民から選ばれた議員が集う場です。それぞれの後ろには主権者がおられるわけですから、議論を尽くすことが大原則です。前回の国会で残念だったのは、与野党の合意がないまま全野党が欠席する中で、本会議が定時定刻に強行されたことです。あれは国会運営として異様な光景でした。

後藤 通常は国対委員長らが粘り強く交渉して妥協点を探るのが、永田町の「智慧」でした。それを放り出して進めてしまったわけですね。

森山 野党が話し合いに応じないからといって何でも予定通り開いていいわけではありません。時間を置いてでも、出席を要請する努力を重ねることこそが与党の責務です。

後藤 高市政権の一番のアキレス腱は、参議院が少数与党である点です。本来なら野党との手練れの交渉役が必要不可欠ですが、その役を担ってきた石井準一前参院幹事長を強引に代えてしまった。

森山 石井さんは議席が足りない中で野党の皆さんのご理解をいただき、まとめる努力をしてくださった方でした。

後藤 今回の臨時国会の日程もほぼ石井氏が事前に作ったものを踏襲していると言われます。海図を作った船長がいない状態で、大洋を渡りきることができるのでしょうか。

森山 石井さんが作ってくださったとすれば、よくお考えいただいた日程でしょう。それをどう動かすかは、新しい国対委員長や幹事長の下、現場でおやりになるんでしょう。

自民党と維新の微妙な関係
後藤 高市政権は参院で法案が否決されても、衆院で「3分の2以上」で再可決し、強行突破を狙っているのではないかという見方もあります。

森山 間違っても「数の力」で強行しようなどと考えてはなりません。それは二院制の否定です。制度上可能であっても、その「刀」は絶対に抜いてはならないのです。

後藤 高市総理は'18年に衆院議運委員長を務めた際、大島理森衆院議長(当時)に無断で国会改革の試案を理事に配って大問題になり、事実上撤回に追い込まれました。当時からルールを跳び越える手法の原型が見えていましたね。

森山 高市さんご自身にとっては、議運委員長だった時の思い出は不愉快だと思いますよ。そして、その時にいろいろ面倒を見たのが、現在の総理補佐官である日本維新の会の遠藤敬国対委員長です。その頃から高市さんが「遠ちゃん、遠ちゃん」と頼る深いお付き合いなんですね。

後藤 今回、維新が連立与党に本格参画しましたが、維新が求める「衆院議員の定数削減」など、自民党内には容易に許容できないテーマもあります。連立がおかしくなるような懸念はないでしょうか。

森山 定数削減は45名の議員を減らす話ですから非常に難しい課題です。「比例代表は何名減らし、小選挙区は何名にするのか」という具体的な割り振りから始まるわけで、一筋縄ではいきません。

後藤 遠藤氏が与党の国対をコントロールするのではないかという見方もあります。

森山 いや、議席数から言っても国会運営は自民党国対が責任を持ち、維新のご理解とご協力をいただくスタイルでないといけません。遠藤さんは非常に能力のある方ですが、国会運営の秩序や筋道というものは、そういうわけにはいかないと思います。

後藤 今の高市政権を見ていると、結論をすごく急いで、その前の議論をないがしろにしている印象があるのですが。

森山 自民党政調での議論をしっかりする事が大事です。


元国対委員長・森山裕氏が「高市総理のX投稿」に覚える危惧…「公と私の区切りがなくなってきた」強引な政権運営で「国民政党」に翳り(後編)
                  週刊現代オンライン 2026年10月21日
国対委員長として歴代最長の在任記録を持つ森山氏。国会軽視が叫ばれる今、「言論の府」を重んじる彼が、旧知の記者に腹の中を明かした。

森山裕(もりやま・ひろし)/'45年鹿児島県生まれ。衆議院議員。鹿児島市議、同議長、参議院議員を経て、'04年衆院選で鹿児島選挙区から初当選。農林水産大臣や自民党の国会対策委員長、選挙対策委員長、総務会長、幹事長などを歴任した。現在、日中友好議員連盟会長なども務めている

後藤謙次(ごとう・けんじ)/'49年東京都生まれ。政治コラムニスト、白鷗大学名誉教授。共同通信で政治部長、編集局長などを歴任。その後TBS系『NEWS23』キャスター、テレビ朝日系『報道ステーション』コメンテーターを務めた。著書に「ドキュメント平成政治史」シリーズ(岩波書店)など

人事をすべて自分で決めてしまう
後藤 政府の広報費増額や、高市総理の一方的なSNS発信も目立ちます。

森山 内閣広報官がSNSで、高市総理とトランプ大統領の電話会談について、まったく違う場面の写真を使用し、「印象操作だ」と批判があります。一方、総理の発言は公文書でずっと残っていくものですが、SNSでの発言はどうするのか。公と私の区切りがなくなってきたと感じます。

後藤 党の最高意思決定機関である「総務会」のメンバーを決める人事でも、非常に象徴的な出来事がありました。 総務会のメンバーには、党総裁が自分で指名できる総裁指名枠(6人)があります。歴代の総裁は党内の意見を調整しバランスを取るため、この枠を自分ですべて埋めずに幹事長や総務会長に判断を譲るのが永田町の常識でした。ところが、高市さんはこの枠を自分の息がかかった人物で埋め尽くしてしまった。幹事長や総務会長に任せる調整の余地を一切残さず、党の役職から国会の人事に至るまで、自分ですべて決めてしまったわけです。

森山 本来、党の役員人事はもちろんのこと、予算委員長や国対委員長、予算委員会筆頭理事といった国会運営の人事も、現場を預かる幹事長が責任を持って調整・決定してきた領域でした。

後藤 臨時国会の山場となるのが、食料品の消費税率を1%へ引き下げる法案の審議です。森山さんは一貫して健全財政の重要性と消費税の意義を説いてこられましたが、現在の自民党内は高市総理の減税論に対してすっかり沈黙しています。

森山 選挙の際、総理が「消費税引き下げは悲願だ」と国民に訴えられた経緯がありますから、約束を守るべきだという声が強くなったのでしょう。私自身は、消費税が導入されてきた歴史、社会保障や地方交付税の財源としての役割を考えれば、安易な減税は避けるべきだと一貫して主張してきました。でも党の正式な手続きで決定された以上、組織の人間としてそれに従うのはやむを得ない面もあります。ただ2年間の時限措置と言うからには、今度の減税法案の中に「2年後に必ず元の税率に戻す」という規定を絶対に明記しなければなりません。

岩屋前外相「訪中」の裏側
後藤 消費減税でさらに深刻なのは、市場の反応です。高市さんが減税を口にするたびに円安が進み、10年物国債の金利が3.1%近くまで上がっています。

森山 これまで国の財政を国債で支えてきてくれた地方銀行や信用金庫、農協などが多大な打撃を受けることになる。金利が上がれば国債の利払い費も急増し、減税しても利払いで歳出が膨らむという悪循環に陥ります。

後藤 高市総理は「財源の心配はいらない」と断言していますが、防衛費の増額や370兆円超規模とも言われる官民投資、国債の利払い増が重なる中で、まともな財源など出てくるのでしょうか。

森山 12月の予算編成に向けて議論することになっていますが、企業の利益増による自然増収などを甘く見積もっているのだとすれば危険です。不確実な試算に頼るような計画であってはなりません。

後藤 外交に目を転じますと、高市総理は訪米時の国連演説で「敵国条項の削除」を唐突に求めたり、台湾有事をめぐる発言で中国側を激怒させたりと、自ら摩擦の種を撒いているように映ります。高市総理から森山さんに相談などはないんですか。

森山 特にありません。今の日中関係は容易に糸口が見える状況ではありません。ただ、日中友好議員連盟の若手議員らの訪中や、河野洋平先生の後任として日本国際貿易促進協会の会長に就任した岩屋毅さんが中国を訪問し、王毅外相や何立峰副首相らと会談するなど、現場レベルの努力は続いています。とはいえ、岩屋さんの訪中では、王毅氏との会談に日本の駐中国大使が同席できなかったようですね。

後藤 中国側の日本政府に対する強い警戒感が浮き彫りになりましたね。前任の外務大臣である岩屋さんを厚遇する一方で、現政府を冷遇する姿勢は非常に不気味です。

森山 日中はお互いに切り離すことのできない隣国同士です。'96年、日中国交正常化を果たされた二階堂進先生のお供で、私は北京を訪れました。二階堂先生は江沢民国家主席(当時)から日中国交正常化の際のやり取りを聞かれ、こうお答えになりました。「周恩来首相と田中角栄先生の合意は『小異を捨てて』ではなく『小異を残し、大同につく』だった」と。会談終盤、田中先生が尖閣諸島の問題を切り出した際、周首相が「それは我々よりも頭のいい次の世代に委ねましょう」と応じた。これこそが「小異を残す」ということです。立場や主張の違い(小異)が存在するのは当然であり、それを抱えながらも大きな共通利益(大同)のために協力する姿勢こそが今の外交に求められています。

後藤 ですが自民党内や政府内を見渡すと、威勢のいい防衛論ばかりが目立ちます。

森山 日本という国は、先の大戦の痛切な反省の上に立つ「戦わない国」です。抑止力を備えることは必要ですが、自ら戦う国になってはならない。この大原則だけは絶対に揺るがしてはなりません。

次の総理にふさわしいのは……
後藤 ここで気になるのが党内の政局です。高市総理の強引な政権運営や「一方通行」の政治に対し、党内では不満がマグマのように溜まっています。そうした中で先日、次期総裁選に立候補するとされる林芳正氏が、森山さんのお膝元である自民党鹿児島県連の政治資金パーティーに講師として招かれました。永田町では「森山氏がポスト高市に向けて、林芳正擁立に動いた」と大騒ぎになりました。

森山 それは全くの誤解です(笑)。鹿児島県連が3年ぶりにパーティーを開くことになり、実行委員会で相談したところ、県議や地元の幹部から「ぜひ林さんのお話を聞きたい」という声が圧倒的多数だったんです。

後藤 ですが、内閣人事の直前にも森山さんと林氏は会談されていますよね。

森山 「総理に役職の希望を出したか」という確認をしただけですよ。林さんは「出していない」とおっしゃっていたし、私も「出していない」と。内閣や党の人事は総理の専権事項ですから、こちらから希望を申し上げるような筋合いのものではないという考え方で、二人とも完全に一致していたということです。

後藤 昨年の総裁選で高市総理と争った小泉進次郎防衛大臣や茂木敏充外務大臣、小林鷹之政調会長らは早々と重要閣僚や党幹部に留任されました。しかし、林氏だけが意図的に外された。党幹部の間では「高市総理は仮想敵を作ることで自らの求心力を高めようとしているのではないか」という見方すらあります。

森山 政治の世界でわざわざ敵を作るような真似は避けるべきでしょう。林さんは総務大臣や外務大臣、官房長官など主要閣僚を完璧にこなし、党内でも「政界の119番」と呼ばれるほど政策通で安定感のある素晴らしい政治家です。私自身、参議院時代に6年間ご一緒してその卓越した手腕を間近で見てきましたし、私の政治の師である二階堂先生と林さんのお父様(林義郎元蔵相)が非常に近い間柄でしたから、個人的にも親近感と深い敬意を持っています。

後藤 森山さんからご覧になって、林氏は次の総理にふさわしい資質をお持ちですか。

森山 私は十分にその資格がおありだと思っています。これだけの複雑な外交や財政の深い知識と識見を持つ人材は、今の自民党を見渡してもそういません。ご本人は控えめなお人柄ですが、国の舵取りを担う総理を目指すお気持ちは当然お持ちでしょうし、その準備もできているはずです。

後藤 高市総理が「好き嫌い」で周りを固め、論議を拒否して自分の意向を押し通す政治を続ければ続けるほど、党内では実力・実績・安定感を兼ね備えた林氏への期待が高まらざるを得ません。永田町の視線は今、党内の不満を受け止める森山さんの動向に注がれています。

森山 私にそんな大層な力などありませんよ(笑)。ただ、自民党という政党は、一部の過激な意見や個人的な感情に流されることなく、常に国民全体の利益を考える健全な「国民政党」であり続けなければならない。そのための努力は、これからも一政治家として続けていく決意です。
          「週刊現代」2026年10月26日号より