2026年7月20日月曜日

天皇制崩壊の端緒を切り拓く(植草一秀氏)

 植草一秀氏による掲題の記事を紹介します。
 今回の皇室典範の改定の強引さは目に余るものでした。
 高市政権は、国会議員会議の総意にも反するものを拙速に提案し、しかもそれを碌に審議もしない中で強行に採決しました。
 これによって将来、得体の知れない人物が天皇の地位に就くことになります。
 植草氏は、「『国民の総意を無視して男系男子に固執するなら天皇制そのものが国民の総意の支持を失う。天皇制廃止論が噴出するだろう」と述べます
 平成天皇と現在の令和天皇・皇后と愛子様が、常に国民に寄り添い、質素を旨とする生活に徹しておられる高潔さが、国民から絶大なる信頼を得られている理由です。今後も後継者の人格に関わらずその信頼が継承されるという保証は何処にもありません。
 西洋の王室国家が全て「直系の長子」を無条件に後継者にしている中でのこの改定は天皇制崩壊の端緒を拓くものです。
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天皇制崩壊の端緒を切り拓く
             植草一秀の「知られざる真実」 2026年7月17日
高市内閣が「数の力」を背景に横暴な政治を強行している。この暴走を推進するのは自維の与党。これに加担する与党補完勢力=ゆ党が 国民民主、みらい、保守、参政、中道、公明。与党方針に対峙するのが 共産、れいわ、社民。 類似するのが参院立憲
中道は皇室典範改悪に賛成した。小川淳也氏は「苦渋の判断」と述べたが、反対すればよかっただけ。

「男系男子」は大日本帝国憲法とその下での皇室典範が打ち立てた「明治の方針」に過ぎない。これが明治以降の「男尊女卑」、「家父長制」の根幹をなす。
日本の皇室に「万世一系の男系男子」という「歴史事実」は存在しない。
第26代継体天皇は朝鮮半島からの渡来人の系譜に属するとの有力な説も存在する。

第二次大戦で日本は敗戦。天皇の戦争責任も検討された。
天皇制は残存したが新しい天皇制は旧来の天皇制と明確に区分されるもの。
天皇制は国民の総意の上にしか存立し得ない。

第二次大戦後の皇室典範に男系男子での継承を定めたことが間違いである。
皇室典範を改正するなら男系男子の規定を削除することが基本に置かれるべきである。
旧宮家に養子を認め、その子が男子である場合に皇位継承権を与える案は論外。36親等から38親等の隔たりが生じる。
法律上、親族と認められるのは血族の場合、6親等以内である。36親等、38親等となれば完全に「赤の他人」。これを血族とするなら人類全体が親族ということになる。
「人類みな兄弟」という言葉を当てはめればよいということになる。

皇族を公募制で定めればよいということになる。
「国民の総意」は「女性天皇、女系天皇」を認めるというもの。
「国民の総意」を無視して「男系男子」に固執するなら天皇制そのものが「国民の総意」の支持を失う。「天皇制廃止論」が噴出するだろう。
高市首相は天皇制廃止の端緒をつくった人物として歴史に名を刻むことになる可能性が高い。

「数の力」が前面に押し立てられるが基盤がぜい弱な「数の力」。
2月総選挙比例代表選での自民投票率は37%。全有権者を分母とする絶対得票率は20%。有権者の5人に1人しか高市自民に投票していない。
ところが、衆院議席の68%を占有した。その理由は「小選挙区マジック」。
小選挙区に対抗勢力が複数候補を擁立すると自民が有利になる。
この「小選挙区マジック」で多数議席を獲得したに過ぎない。

高市内閣は「国民の総意とかけ離れた多数議席」に依存して横暴な国会運営を進める。
ようやく主権者も高市内閣の「悪政ぶり」に気が付き始めている。
皇室典範改悪、国家情報局創設、国旗損壊罪創設、個人情報保護法改悪などが強行された。
政権の横暴に対して対峙する勢力は 共産、れいわ、社民であり、これに歩み寄るのが立憲。
国民民主は「隠れ与党」の本性をまったく隠さなくなった。
中道も「隠れ与党」の正体を鮮明に示し始めた。
高市内閣の支持率急落が始動する。
高市首相が「食品消費税率1%」を取り下げるなら、支持率は間違いなく暴落する。
高市首相退陣の日は近い。

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暴走政権 行き詰まり 国民の生活に無関心 「数の力」で押し切り(しんぶん赤旗)

 既報のように時事通信の対面世論調査では、高市政権の支持率は先月から5.3ポイント低下しついに50%を切りました(49.0%に)。他の世論調査でも同様な現象が起きるものと思われます。
 高市政権が物価高にあえぐ国民生活に全く関心を示さないのは不思議としか言いようがありませんが、実効ある政策を何一つ持っていないのが真相でしょう。そして国会から逃げ回った挙句会期末が迫ると、国民の生活苦の改善ではなく内閣発足時に維新と約束したからとして両党の連立政権合意に盛り込んだ法案の成立を優先させようとしました。
 しかし比例区の議席低減法案とか副首都法案は余りにも筋が悪過ぎる上に、参院では与党が過半数を持っていないので強行採決に持ち込むことは出来ず、代わりに改定皇室典範、国旗損壊処罰法、再審制度見直しの改定刑事訴訟法などを一気に成立させました。
 与党が「数の力」で押し切る手法は、国会冒頭から繰り返されてきました。高市氏には何の罪悪感もないのでしょう。
 しんぶん赤旗は、与党の強権的な国会運営が続き審議が止まる事態に陥るなど異常な展開が続いている今国会での会期延長は、数の力で押し切る手法の行き詰まりの表れであると断じます
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暴走政権 行き詰まり 国民の生活に無関心 「数の力」で押し切り
                       しんぶん赤旗 2026年7月18日
 市自維政権は17日、特別国会の会期を8日間延長し、25日までとすることを強行しました。事実上、「副首都」法案の成立を強行するための会期延長で、全く道理はありません。国民置き去りで暴走を続けてきた高市自維政権の行き詰まりは明白です。

緊急性のない連立合意優先
 政府・与党は、物価えぐ国民の生活には関心払わず、全く緊急性のない法案、とりわけ自民、維新両党の連立政権合意に盛り込んだ法案の成立を優先させてきました。
 高市早苗首相は「消費税減税は私の悲願」だとまで述べ、総選挙では食料品のみ消費税を%に減税する公約掲げました。しかし、首相は国会での審議を避け、消費税廃止を掲げる政党を排除した「社会保障国民会議」に議論を丸投げ。同会議の実務者会合(16日)は、国民全人口のわずか1割程度への給付制度の導入に合意する一方、消費税減税には言及せず棚上げにしており、首相の食料品税率%公約は事実上投げ捨てられています。
 イラン情勢によるナフサ供給不足で苦境に陥っている業者に対しても、政府は「ナフサは足りている」「流通の目詰まり」といった根拠のない説明を繰り返し、抜本的な支援を拒み続けています
 一方で首相が力を入れたのが連立政権合意の一つ「国家情報会議」設置法の成立です。市民監視、人権侵害の拡大などへの強い懸念から、広範な市民や法律家団体が同法に反対の声を上げる中での強行でした。政府・与党は月内にも国家情報会議を設置し、第2段階の「スパイ防止法」成立を狙っています。
 国会終盤の17日には、改定皇室典範、国旗損壊処罰法、再審制度見直しの改定刑事訴訟法などを一気に成立させました。
 なかでも、終盤国会で与党が優先に位置づけたのが、「男系男子」の皇位継承に固執し、日本社会の女性差別を助長する皇室典範の改定でした。政府は「立法府の総意」に基づいていると主張しますが、国会の全党・会派による議論を経ながらも、衆参両院の正副議長が反対意見を無視してとりまとめた「立法府の総意」でさえ言及していない内容まで盛り込んだもの。「立法府の総意」にはほど遠く、女性・女系天皇を認める国民の圧倒的世論からもかけ離れています
 皇室典範の改定案は10日に衆院で審議入りし、同日中に衆院を通過させるなど、異常に短い審議日程のゴリ押しも目に余りました。
 国旗損壊処罰法も連立政権合意に盛り込まれたもので、憲法が保障する内心や表現の自由を侵害し、罪刑法定主義にも反する悪法です。衆参とも参考人質疑で憲法学者が違憲立法だと指摘しましたが、与党と国民民主、参政の各党が賛成し成立させました。
 改定再審法(改定刑事訴訟法)は、連立合意には盛り込まれていなかったものの、冤罪被害者を連やかに救済するための法改定が切実に求められていました。しかし、政府が強行した改定法は、「証拠の全面開示」や「再審開始決定に対する検察官不服申し立て(抗告)の全面禁止」などの焦点の課題に背を向ける内容で、事実上の改悪法です。

「数の力」で押し切り 冒頭から繰り返された手法
 与党が「数の力」で押し切る手法は、国会冒頭から繰り返されてきました。
 首相は通常国会召集日の1月23日にいきなり衆院を解散。超短期の総選挙で、喫緊の課題だった物価対策も放り出し、支持率が高いうちに政権の存続を図るための自己都合解散に踏み切ったのです。
 これにより、2026年度予算の審議開始が遅れ、年度内成立は不可能だったにもかかわらず、首相は年度内成立に固執。例年、衆院でカ月はかける予算審議をわずか2週間で打ち切るなど、衆院で得た圧倒的多数の議席をたてに強引な国会運営を進めました
 しかし与党が過半数を持たない参院では思惑通りにはいかず、結局予算成立は4月にずれこむことになりました。
 イラン情勢による物資不足や国民生活への深刻な影響を巡って、野党は補正予算を組むよう求めていましたが高市首相は国会で「必要ない」と繰り返し答弁。しかし、5月の大型連休後に、補正予算編成へと方針転換に追い込まれました
 遅きに失した上、その中身も予備費を積み上げただけで、電気・ガス料金支援の他には具体的な対策がなく、国民生活を応援するものではありませんでした。しかも、衆参の予算委員会で1日ずつ、本会議を合わせてもわずか3日間だけの拙速審議で成立させました。
 高市氏は歴代首相と比べ、首相が出席する集中審議時間の短さが指摘されています。参院での首相出席の予算の集中審議はわずか10時間程度。計24~40時間応じていたとされる菅義偉、尚田文雄、石破茂の歴代首相と比べても明らかに短く、国会軽視の姿勢が際だっています。
 与党の強権的な国会運営が続き、審議が止まる事態に陥るなど異常な展開が続いている今国会。会期延長は、数の力で押し切る手法の行き詰まりの表れです。

高市首相 党首討論「嘘と居直り」 集中審議でも懲りずに「十八番答弁」

 常に虚言を弄して首相の座まで上り詰めた人間に慎ましさを要求するのは土台無理なことです。
 高市首相がG7会談に先立って巨額の投資を手土産に英国首相を訪問したときに「貴女が良い天気を連れて来た」とごく普通の挨拶をされると、小躍りして喜んだことが「奇異な反応」であるとして向こうの界隈では評判になったということです。
 またインドの首相が高市氏のことを「美しい妹」(プレティとか?)と呼んだことをわざわざ現地から当人が報告したのも呆れることです。2000年以上続いてきたカースト制を背景にしたインドの(深窓の)「美女」たちは、高市氏などとはまるで「その」レベルが違います。彼女の辞書には「儀礼的」は欠落しているようです。
 また彼女は頻繁にSNSを発信し、それを熱心な岩盤支持層が持ち上げることで「自己肯定感」に浸っているようですが、「ひと月万冊」の清水氏の情報によると最近のコメントは90%以上が「酷評」に変わったということです。
 で、それらを読むことに耐えられなくなった高市氏はコメントの分析をナント役人にさせるようにしたということで、そうなれば必然的に「肯定」の分しか報告されません。
 こんな風に、「嘘つき」の権力者の回りでは自らが率先して「虚偽の安楽な世界」に浸るだけでなく、周囲もそのお膳立てをするという構造が必然的に構築されます。

 日刊ゲンダイに高市氏を批判する記事が載りました。直近の3つを紹介します。
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高市首相2カ月ぶり党首討論「嘘と居直り」のデタラメ60分…国民民主に猫なで声、公明には高圧
                         日刊ゲンダイ 2026/07/16
 今 国会は17日が会期末だ。国会を軽視する高市早苗首相が招いた審議ストップのツケは大きく、自民党が最優先する皇室典範改正案を含む法案が大渋滞。会期延長が不可避となる中で15日、党首討論が実施された。高市首相が外遊などを理由に6月はエスケープしたため、通常より15分拡大の60分。典範改正、食料品の消費税減税、物価高対策、そして高市首相が抱える一連の疑惑など、テーマは多岐にわたったが、見るべきところはなし。高市首相が性懲りもなくデタラメを重ねる1時間だった
  ◇  ◇  ◇
 トップバッターの国民民主党の玉木雄一郎代表は、長期金利急騰と円安加速につながった「骨太ショック」に言及。「原因をどのように認識していますか」と質問した。
 高市首相は口角を終始グイッと上げて玉木代表に応じつつも、「閣議決定もしていない政府のひとつの文書の原案がショックの原因だと思っておりません」と強弁。「リスクに耐性のある国づくりで今、絶好のチャンスが来ている。今やらなかったら経済は強くならない」とぐいぐい押し返し、「一緒にやりましょう。強い経済づくりは今ならできる」と呼びかけた。くみしやすい相手と見るや、上目遣いの猫なで声ですり寄る高市スタイルは健在だ。

中傷動画拡散疑惑には「身に覚えのないことを追及され大変心外」
 2番手で立った中道改革連合の小川淳也代表は完全にやり込められた。ペーパーに目を落とす高市首相に対し、「読み物を読まれていることは残念だ。自分の言葉でダイレクトにお答えいただきたい。ライブ感あるやりとりにご協力をいただきたい」とチクリとやり、中傷動画拡散疑惑への対応を「 国会は都合のいいことを聞いてくれる場ではない」と指摘したまでは良かった。
 しかし、減らず口の高市首相に「(小川)ご自身もメモを見ていられました」「内閣総理大臣としての答弁でございますから、ここはできるだけ正確にということでメモを用意してまいりました」と返され、委員会室は爆笑の渦。勢いづいた高市首相は「国会からお呼びがあれば国会に来て答弁をいたしており、答弁書も自分でしっかりペンを入れて懸命に誠実に答弁している」と従来の主張を繰り返し、「全く身に覚えのないことを追及され、大変心外だ」と例の調子で居直った。
 高市首相の地金が最も出たのは、公明党の竹谷とし子代表とのやりとりだ。円安物価高への手だてなどを求めた。すると高市首相は、持病の関節リウマチで痛めているという右手をぶんぶん振り回しながら、「高市円安かどうかわかりませんけれども、今やらなきゃいけないのは国際競争力を徹底的に強化し、供給力を強くすること」などと持論を展開。「強い経済をつくるための挑戦を続けさせて下さい」と論点をズラした。遡ること9カ月前、公明から三くだり半を突きつけられ、首相就任が危ぶまれた恨みは骨髄まで徹しているのがよく分かる。
 高市首相は女扱いされることに喜びを感じるタイプと見受けられる。ここはジェンダーフリーに「キングオブ嘘つき」と呼びたい。


国会で何も答えず悪法強行 高市早苗のふてぶてしさを支える内閣支持率の奇怪
                        日刊ゲンダイ 2026/07/17
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 身勝手な解散、数々の答弁拒否などスッタモンダの挙げ句、国会終盤のドタバタ、ドサクサ紛れの悪法強行。
 役所の人事、骨太方針の閣議決定なども滞留し、国民生活は悲鳴をあげているのに、反省ゼロの鉄面皮。それを支える不思議な支持率の謎を分析
  ◇  ◇  ◇
 東京での無差別殺人を計画していた富山県の男(53)が今月12日、殺人予備の疑いで逮捕された。男の供述によれば、無差別殺人をすれば射殺されるか死刑になると考えたといい、その理由は「物価高による生活苦で死にたいと思っていた」だった。
 日銀が16日に発表した6月の「生活意識に関するアンケート調査」でも、消費者の不安心理が見て取れる。現在の暮らし向きは、「ゆとりがなくなってきた」が55.0%で3カ月前の調査から1.6ポイント上昇。1年後の物価について、現在と比べて「上がる」と回答した人は90.4%で、3カ月前から6.7ポイントも上昇し、過去最高を更新した
 経済無策の高市政権が、物価高対策そっちのけで皇室典範改正やら国旗損壊罪やらの国民生活に関係のない法律の実現に躍起になっているのだから、生活苦が増えるのは当然だろう。それなのに、高市内閣の支持率が下がらないのは謎だ。
 時事通信が10~13日に実施した最新の世論調査で内閣支持率が49.0%(前月比5.3ポイント下落)となり、政権発足以来、初めて5割を下回ったしかし、全体的には低落傾向とはいえ、いまだ半数が高市内閣を支持しているというのは、驚愕であり、奇怪でしかない。

200日あったハネムーン期間
 高市首相は、就任時や衆院選時こそ「物価高対策が最優先」と強調していたが、「飲食料品の消費税を2年間ゼロにする」という選挙公約の議論は国民会議に丸投げ。そのくせ、「睡眠がとれない」ほど忙しいはずが、首相の義務を放棄し、国会答弁には嫌がって出てこない。秘書が誹謗中傷動画を拡散した疑惑についても、陳述書で逃れようなどという姑息な手段に出て、野党から総スカン。国会空転を招いた。
 歴代首相と比べても前代未聞の唯我独尊で、思い返してみれば、今年2月の解散総選挙も身勝手極まりないものだった。新年度予算の年度内成立が難しくなるのに、高支持率をバックに「今なら勝てる」で踏み切ったのだ。
 そうしたデタラメのオンパレードで国会終盤に法案は大渋滞。ドサクサ紛れで成立を強行するのは、国旗損壊罪、皇室典範改正、副首都創設といった悪法だらけ。国旗損壊罪法案は、憲法学者が国会で「違憲」と断罪し、刑事法学者ら140人超が「表現の自由が制限される」として反対声明まで出すようなシロモノだ。
 高市のアタマの中には、支持層である右派の人気取りと、連立政権を組む日本維新の会への配慮しかなく、その結果、国会を大混乱に陥らせたのに、それでも反省ゼロの鉄面皮。これほどのふてぶてしさにもかかわらず、依然、5、6割台の高い支持率を維持し続けているのはなぜなのか。摩訶不思議としか言いようがない現状について、世論研究が専門の明大教授の井田正道氏(計量政治学)に聞いてみた。
「一般的に新しいリーダーは誕生時に高い支持率となり、その後、落ちていく。米国などでは、高支持率のハネムーン期間は100日と言われます。高市首相の場合、首相就任こそ昨年10月でしたが、今年2月に解散総選挙をやったことで、仕切り直しとなり、ハネムーン期間が5月末まで続いていたと見ることができます。また、これまでの首相が打ち出さなかった積極財政や消費税減税が好感されており、なかなか進まなくとも、まだ失望には至っていない。期待が残る分、支持率の下落を食い止めているのではないかと見ています」

私の言う通りにしないと人事はやらせない
 高市の無理筋強行と国会終盤のドタバタで「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」の閣議決定や役所の人事も滞っている。
 当初、消費税減税の方針を6月中にとりまとめ、骨太に書き込む予定が、消費税減税は迷走。そのうえ、骨太は6月末の経済財政諮問会議で示された原案から修正を繰り返すあり得ない事態となり、閣議決定がズルズルと遅れているのだ。
 原案にあった「『強い経済』の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」との文言が、日銀の利上げ阻止とマーケットに受け止められ、円安・債券安の「骨太ショック」が発生した。これを払拭するため、最終的に表現を和らげる他、日銀の独立性を尊重する姿勢を“脚注”に明示するのだという。骨太の閣議決定は来週21日になるらしい。

 霞が関の幹部人事の滞留も異常事態だ。
「人事に関しては例年、スクープ合戦になりますが、今年は6月末になってもどこの社も書かない。高市首相が『私が決める』と言っているし、内示の前に名前が出ると、高市首相の逆鱗に触れ、人事が覆される可能性があるので、どこも報道できないでいる」とは大手メディアOBの弁だ。
 ところが、高市本人はどこ吹く風で、15日の党首討論では「消費税減税の決定は8月頭でも間に合う」と言ってのけた。骨太の閣議決定後、幹部人事は7月末にズレ込みそうだ。
 元経産官僚の古賀茂明氏はこう言った。
「霞が関の人事は役所にもよりますが、次官や局長は通常、7月初めには出揃うその下の幹部は6月中旬ごろに内示です。まだ国会が開いているし、消費税減税の問題が残っているので、高市首相からすれば、『私の言う通りにしないと人事はやらせない』として人事を財務省のグリップに使っているような感じですね。なぜ内閣支持率が下がらないか? ほとんどの人は国会で今何が起きているかや政策テーマについて、あまりよく分かっていないのではないでしょうか

“推し活ブーム”がまだ続いている
 国会は17日が会期末だが、皇室典範改正と国旗損壊罪法案は参院本会議で成立する見通しの一方、副首都法案は参院に送付されたものの審議入りしていない。そのため与党は、会期を1週間か10日程度延長する方針だ。17日午後に行われる、高市出席の参院予算委員会集中審議の終了後、衆院本会議で延長を議決する。
 高市は口を開けば、「国会からの求めがあれば応じる」と言うくせに、衆院の集中審議の開催は今も中ぶらりんだ。国会で答弁せず、SNSでの一方的な投稿だけは積極的都合が悪くなると逃げるのに悪法を強行する。国民はいつまでこれを許すのか。世論はさじを投げないのか。内閣支持率が急落してもおかしくないのに、なぜそうならないのか

 法大大学院教授の白鳥浩氏(現代政治分析)はこう話す。
「首相としての姿勢や政策がどうあれ、やはり、戦後初の女性首相という事実は支持率を支える要素として大きい。頑張っているアピールも効いていると思います。男性の首相が『私は寝てない』と言ったら『ふざけるな』となるところ、高市首相の場合は『寝ないで頑張っているんだ』と好意的に受け止められる。“推し活ブーム”がまだ続いているのでしょう。高齢者の支持は落ちてきても、支えているのは若年層・現役世代と岩盤保守層だと見ています。若年層や現役世代には、記者会見を避けてSNSで投稿することが、『国民に対して直接メッセージを伝えてくれる新しいスタイルの首相』だとプラスに映っている面がある。さらにそれを補う形で、非常に保守的なナショナリズムに訴える高市首相を岩盤保守層が支えている。『あなたも日本人だろう。だったら日の丸は大事だよな』などと言われると反論しにくい。ただ、世代間の断絶が国民間の断絶に広がっていく可能性があるので、そこは注意する必要があると思います」
 自民党内ですら遠心力が働く高市を支えているのは世論の支持だけだ。高市政権で円安物価高が落ち着き、生活が楽になることはない。国民はよーく考えた方がいい


国会会期延長…高市首相を余裕シャクシャクにさせた“戦犯” 集中審議でも懲りずに「十八番答弁」全開まくしたて
                          日刊ゲンダイ2026/07/18
 疑惑まみれの高市首相が国会から逃げ回った結果、法案が渋滞したまま時間切れ。特別国会は17日が会期末だったが25日まで8日間の延長が決定。高市政権は政府提出の予防接種法改正案と建築物省エネ法改正案、議員立法の「副首都」創設法案と国民投票法改正案の成立を期す。何だかんだで「国論を二分する政策」をおおかた仕上げた高市首相は余裕綽々。17日の参院予算委員会集中審議でも野党の追及を適当にかわしていた。逃げ切らせたらダメだ。
 当初の会期末を迎えた17日は、採決ラッシュだった。政権爆誕の立役者である自民党の麻生副総裁が固執する改正皇室典範が成立。国旗損壊処罰法案、再審制度を見直す刑事訴訟法改正案なども通った。一方、国会正常化の条件だった会期内の集中審議の実施は参院のみ。衆院は24日に先延ばしされた。

蓮舫氏の畳みかけに「十八番」展開
 参院集中審議の野党トップバッターの立憲民主党の蓮舫議員は開口一番、「総理、国会への出席はお嫌ですか?」と直球を投げるも、高市首相は「嫌ではございません」といけしゃあしゃあ。蓮舫氏は集中審議出席時間が石破前首相の3分の1だと指摘し、「なんでこんなに少ないんでしょうか?」と畳みかけるも、高市首相は十八番の言い訳。「国会からお呼びいただいたらこうして来て、答弁書にもしっかり、自分でペンを入れながら誠実に答弁をさせていただいている」とまた言っていた。
 続いた田名部匡代幹事長は高市陣営がライバル潰しの中傷動画を拡散した疑惑に言及し、「木下(剛志公設第1)秘書の参考人招致を求めましたが、受け入れられませんでした。改めて一連の問題に関する集中審議開催を理事会でお取りはからいいただきたい」と要求。質問を続けたが、高市首相はそれをパスして「まず申し上げたいんですけれども、私も事務所も中傷動画の作成を第三者に依頼していない」「NHKの)中継も入ってますから、これは絶対に、私は他候補の誹謗中傷をしていない」と例の調子でまくし立てた

持ち時間の大半で持論を展開
 3時間の集中審議で最もひどかったのが、自民と連立を組む日本維新の会の猪瀬直樹議員だ。質疑者は通常、所属会派と名前のみを名乗るのに、「日本維新の会参議院幹事長の猪瀬直樹です」と入り、党幹部であることをアピール。社会保障国民会議で議論されている給付付き税額控除を「大阪城」に例えて、「大阪城を築きましょう」「大阪城を目指しましょう」と連呼。維新肝いりの副首都実現の宣伝に徹した。
 猪瀬氏は持ち時間16分のうち、13分も持論を展開。高市首相への質問は2回だけだった。審議時間を楽々消化した高市首相は「詳しく教えていただき、ありがとうございました」とニンマリ。同じ釜の飯を食う与党のお仲間とはいえ、度が過ぎる。野党がシャキッとしないと、高市首相の思うツボだ。

20- うそ・居直り・どう喝 満載の首相(しんぶん赤旗)

 メディアの報道を取り上げる〝レーダー″のコーナーに掲題の記事が載りました。
うそ・居直り・どう喝」・・・高市発言の特徴です。
 勇ましげに「大言壮語」はするものの「民生無策」の高市政権ではこの先国民の生活は破綻に向かうしかありません。
 記事は「国民の声を聞かず、うそ、居直り、どう喝を重ね、数の力で悪法をごり押しする高市首相は、首相の資質ゼロ、と言わざるを得ません」と結びます
 首相の資質ゼロの高市氏には一刻も早く退場して欲しいものです。
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〝レーダーうそ・居直り・どう喝 満載の首相
                      しんぶん赤旗 2026年7月18日
 高市早苗首相が久々に国会に出てきました。15日、党首討論に参加、同日夜のテレビは、各党代表の質問に堂々″と答弁する首相を中心に報じます。
 しかし、その内容は 。たとえば、衆参両院予算委員会の集中審議への出席回数と時間が歴代首相と比べて極端に少ない問題を問われると、「国会からお呼びがあれば、これまでも国会に来て答弁しているし、答弁書も自分でしっかりペンを入れて相当懸命に誠実に答弁している」とかわします。昨年の通常国会での石破茂首相の約90時間にたいし、今国会での高市首相は3分の1程度というのが実態です。
 6月末から週間以上の国会空転は日本維新の会との連立合意を優先させる首相の意向で、衆院議員定数削減法案と「副首都」法案の審議を強行したことが原因なのに、その政治姿勢を問われれば、「議員立法の進め方について、首相として申し上げられない」と、首相と自民党総裁の立場を都合よく使い分けます。
 あきれたのは、自民党総裁選などでの中傷動画作成・拡散疑惑で、秘書の「陳述書」で答弁を回避しようとする姿勢について「私にとっては、全く身に覚えのないことを追及されたわけで、疑惑という言葉を使われるのは大変心外だ」とドスをきかせて居直ります。
「身に覚えがないこと」といえば、疑惑を否定したことになるのか。「陳述書」の提出ではなく、秘書が国会に出てきて、真相を語ればいい話です。
 食料品の消費税減税については、政府と一部の政党で構成される「社会保障国民会議」に「議論を委ねている」と丸投げ。円安加速、長期金利上昇など首相の責任にふれられそうになると、急にテンションを上げ、「成長のスイッチを押して押して押しまくる。一緒にやりましょうよ!強い経済づくり」。中身がありません
 皇室典範改定案について「『立法府の総意』には異論が出ている」との指摘には「ただ人の議員が反対したから『総意ではない』と言われたら、ほとんどのことが立ちゆかなくなる」。
 16日の日本系「DayDay」で、司会の武田真一さんは消費税減税、皇室典範改定、中傷動画報道をあげ、「いずれも国民が聞きたいことだったと思うんですけど、正面から議論するというよりも、追及をかわすことに腐心したという印象が否めない」。
 国民の声を聞かず、うそ、居直り、どう喝を重ね、数の力で悪法をごり押しする高市首相は、首相の資質ゼロ、と言わざるを得ません。     (藤沢忠明)

2026年7月18日土曜日

18- 社説「皇室典範改正をめぐる暴走 このままの成立は許されない」ほか

 17日、皇室典範改定案が参院で可決成立しました。議会は一体何を考えているのでしょうか。高市内閣並みに劣化しているというしかありません。
 私たちは平成天皇方と近上天皇方二代にわたって、象徴天皇としての至上の在り方に接することが出来ました。それは質素な生活に甘んじながら常に国民に寄り添うという真の帝王学の具現の姿でした。
 今般の改定案は強引にそれに終止符を打たせるというもので、衆参両議員が審議してきた原案とは異るものでした。そこではひたすら今上天皇の代で終止符を打つことが目指されていて、次代の天皇がどの様に国民から評価され、海外からどう評価されているかについて何の関心も持たないものでした(漏れ聞くところによると色々問題があるようです)。
 明確なことは、これまで国民から敬愛されてきた象徴天皇像を 愛子様を含めたご三方で終焉させるというもので、まことに恐るべき法案です。

 参院予算委員会集中審議で蓮舫議員38親等も離れた、遠い遠い親戚の男子を見つけて養子にして、その子に皇位継承権を渡すのであれば、陛下の一親等、直系長子であられる内親王殿下への皇位継承も認めることこそ、憲法に規定する世襲の原則に沿うものではない」と指摘したことに対して、高市首相は「たとえば過去に122代明治天皇の御代に、32親等の隔たりのある皇族男系男子が養子になられた例がある」と、得意げに述べたようですが、それは改定法の本質を偽る的外れの回答でした。

 朝日新聞は7月9日、「皇室典範改正をめぐる暴走 このままの成立は許されない」とする異例に長い社説を掲げました。また日経新聞は、6月27日、6月30日、7月10日と立て続けに3回に渡り、抑えきれない怒りの社説を掲げました。
 これらは高市内閣の邪悪な改定案の問題点を明確にしているので、記録を残す意味で掲載します。
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【社説】皇室典範改正をめぐる暴走 このままの成立は許されない
                          朝日新聞 2026年7月9日
この社説のポイント
●旧宮家の養子案などを含む皇室典範改正案は、男尊女卑をいびつに反映する内容だ
●立法府や国民の「総意」からも逸脱しており、合意形成とはほど遠い
●このままでは歴史に汚点を、将来に禍根を残す。撤回し、議論をやり直すべきだ

 「立法府の総意」でも「国民の総意」でもない皇室典範改正に向け、高市早苗政権が遮二無二突き進んでいる。わきおこる異論や批判を顧みない姿は、極めて異常である。
 皇室典範改正案について、与野党は10日の衆院議院運営委員会で審議することで合意した。ところが与党はわずか3時間の審議で採決して本会議に緊急上程し、即日衆院通過させることを急いでいる。国のかたちに関わる重大テーマであるにもかかわらず、力ずくで押し切る構えだ。必要と主張してきた「静謐(せいひつ)な環境」を自ら壊す暴挙である。
 このまま成立させれば、歴史に汚点を、将来に禍根を残す。政府は法案を撤回し、一から議論をやり直すべきだ。

皇室典範改正案のポイント
 皇室典範改正の議論は、通常の法案とは性格が異なる。憲法1条は天皇の地位を「国民の総意に基づく」と定める。だからこそ歴代政権は、皇位継承や皇室制度をめぐる問題で慎重な対応を重ねてきた。特に、この改正案は重大な欠陥を抱えている。結論ありきで進めてはならない

にじむ男尊女卑
 当初、「皇族数の確保」策を議論することが目的だったはずだ。「安定的な皇位継承」という大きな目標は、その先に位置付けられる。
 そうした観点からは、改正案で女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにすることには一定の意味はある。一方、結婚した際の配偶者や子を皇族にするかどうかは、今後の議論に委ねるはずだった
 ところが、結婚した女性皇族に住民基本台帳法を適用するなど、女性皇族の配偶者や子を皇族としないことを前提とした仕組みが、突如として政府案に盛り込まれた
 さらに問題なのが、戦後間もなく皇籍を離れた旧11宮家の男性子孫を養子として迎えることができ、その養子の男性子孫は皇位継承資格を持つと明示したことだ。
 女性・女系天皇への道をできる限りふさいでおこうという思惑が前面に出た形だ。
 天皇制に埋め込まれた男性第一主義を見直す好機だったのが、これではかえって男尊女卑を歪(いびつ)に反映する制度になってしまう。養子推進派の論理は、女性は決して皇位継承にはかかわらせないが、補佐的な役割としてはとどまってほしいという身勝手なものに映る。6月25日の与野党の全体会議でもこういった批判が相次いだのは当然だ。

二つの総意から逸脱
 改正案が「国民の総意」を得たとは到底言えない世論調査では女性天皇や女系天皇を容認する意見が多数を占める一方、旧宮家からの養子縁組については賛否が割れる。朝日、読売、毎日、日経の全国4紙と多くの地方紙が、そろって社説で反対を表明している。歴史学や法学など各学界からも批判が相次ぐ
 改正案は、与野党協議で事前に取りまとめられた「立法府の総意」も逸脱している。一部野党だけでなく自民党内からも、「国会の総意にも基づかない内容であれば、憲法の精神に反することになりはしないだろうか」(船田元・衆院議員)などの声が上がる。国会内の十分な合意はまったく形成されていない
 天皇陛下も6月11日の記者会見で「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べた。求められているのは、幅広い理解と納得を得られるよう議論を尽くすことであろう。
 野党の対応は割れる。国民民主党や参政党などは賛成、立憲民主党や共産党などは反対の方向だ。そして、態度を決めかねているのが中道改革連合だ。

野党の対応も焦点
 中道がまとめた付帯決議案には「女性天皇の是非や女性宮家創設の検討」などが新たに加えられたが、仮に認められても法的拘束力はない。そんな付帯決議と引き換えに、十分な審議なしに賛成するのが妥当といえるのか。中道には良識ある判断を求めたい
 逆に衆院と参院でそれぞれ野党第1党の中道と立憲が反対すれば、改正案が可決されても「立法府の総意」は崩れ去る。野党の対応も焦点だ。
 国民や立法府の総意から乖離(かいり)した改正案を政権が押し通せば、むしろ天皇制への国民の信頼を失いかねない
 歴代天皇や皇族は戦後、被災地や福祉施設などを訪ねてひざをついて対話し、戦争をめぐる慰霊の旅を繰り返してきた。象徴天皇制は、国民とともに築き上げてきた信頼関係の上に成り立っている
 象徴天皇制と、法の下の平等や個人の尊重など「人類普遍の原理」という、異質なものが憲法には同居しており、完全に整合させることは難しい。ただ、憲法的価値をはじめ国民が象徴として求めるものをさまざまに体現する努力が重ねられてきた。そこに歪な制度が無理やり導入されれば、不整合をかえって広げてしまわないか
 与党は成立ありきの姿勢を改めるべきだ。野党も安易な妥協に流されてはならない。必要なのは採決を急ぐことではなく、国民的な理解と納得を得る丁寧な議論である。このままの成立は許されない


[社説]強引な皇室典範改正は禍根を残す
                      日本経済新聞 2026年6月27日
政府による皇室典範改正案の内容が明らかになった。与野党協議でまとめた「立法府の総意」の枠を越え、男系による皇位継承を固めたい意向が鮮明だ。幅広い合意形成が必要な皇室を巡る議論の進め方として、乱暴と言わざるを得ない。丁寧な対応を求めたい。
先に公表された「立法府の総意」は、意見が割れる論点の多くで結論を出していない。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるかや、結婚する女性皇族の配偶者や子を皇族とするかどうかなどだ。
ところが政府が検討する具体的な皇室典範の改正案には、「総意」にはなかった内容がいくつも盛り込まれている
養子に男子が生まれれば、皇位継承権を持つことが明確にされた。生まれた時から一般人だった人の子が天皇になりうるということだ。現在の天皇家に取って代わるということでもある。これほど大きな方針転換を十分な議論もなく行うのは、民主主義の軽視にほかならない。国民の理解が得られるか極めて疑問だ
養子は配偶者と子のいない15歳以上の男子で、いったん皇族になれば自らの意思でその身分を離れられないという。養子選びに政治的な思惑が入り込む余地もあり、人権上も問題があろう。
結婚した女性皇族には住民基本台帳法が適用される。皇族は通常「皇統譜」と呼ばれる皇室の特別な戸籍に記載されるが、それとは異なる扱いになる。女系継承の可能性を排除する方策ではないか。
全体を通して男系継承にこだわる意図が明確だ。報道機関の世論調査では女性・女系天皇への高い支持が目立つ。養子案は賛否が割れるうえ「分からない」との声も多い。改正案は国民の意見を十分に反映しているとは言えまい
皇室問題は国民統合の根幹に関わる特殊なテーマだ。だからこそ与党の「数の力」によらない議論が求められ、歴代政権も慎重に対処してきた。それを無視すべきではない。強引な改正は禍根を残す。


[社説]皇室典範の改正案は再考を
                      日本経済新聞 2026年6月30日
政府が皇室典範の改正案を閣議決定した。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるなど、先の与野党協議では議論されていなかった項目が唐突に盛り込まれる異例の展開であるあまりに拙速で、政府・与党には強く再考を求める。
改正案では養子に男子が生まれた場合、皇位継承権を持つことが明確になった。近現代だけ見ても明治から令和まで連綿と続く今の天皇家に代わり、一般人の養子の子孫が天皇になり得る仕組みだ。皇室と国民の間の長年の信頼と敬慕の念が、ないがしろにされたと感じる人は多いのでないか。
一般人である旧皇族の家系が特別な「養子の出し手」として扱われれば、門地による差別を禁じた憲法に抵触する恐れがある。違憲訴訟が起きる可能性が高い。国民統合の象徴である天皇や皇室を巡り、法的地位に疑義が生じるような制度を持ち込むべきではない
明治期の旧皇室典範も「皇統が乱れる」などの理由で養子を禁じていた2005年に自民党政権下の有識者会議がまとめた報告書も、第三者の介入が起きかねない、国民の理解を得るのが難しいといった事情から、養子案の採用は極めて困難としている。
にもかかわらず一方的に制度改正を急ぐのは理解できない。新たな仕組みを盛り込むなら、立法府の協議をやり直すのが筋だ。

自民党の中曽根弘文憲法改正実現本部長が、天皇陛下の長女愛子さまによる皇位継承を「あり得ない」と発言するなど、与党で男系への固執を示す言動が相次ぐ。皇室問題は世論に耳を傾けた柔軟な検討が不可欠なのに、それに背を向けていると言わざるを得ない。

天皇陛下は記者会見で「国民の理解が得られるものとなることを望む」と述べられた。現在の改正案は、広く理解を得られる内容とは到底言えまい。政府は強引な姿勢を改め、静謐(せいひつ)な議論の環境を早急に整えるべきだ。国民に支持されない皇室制度を作っては元も子もない


[社説]結論ありきの皇室典範改正は理解得られぬ
                       日本経済新聞 2026年7月10日
皇室典範改正案を巡る国会論戦が始まり、衆院は1日だけの審議で可決され参院に送られた。
内容、経緯ともに疑問や異論が出ている法案にもかかわらず、短時間の審議で成立を急ぐ姿勢には問題がある。合意形成に向けた政府の努力は十分とは言えない。結論ありきで強引に進めても、国民の理解は得られまい。丁寧に議論を積み重ねるべきだ。
与党が衆院議員の定数削減法案の今国会での成立を見送ったことなどから、空転してきた国会は正常化が進み、皇室典範改正案も審議入りした。
改正案では、皇室の養子となった旧皇族の子孫に男児が生まれた場合、皇位継承権を持つことが明確にされた。事前の与野党協議による「立法府の総意」には含まれていなかった内容である。
政府側は10日の審議で、養子の子の皇位継承権に関する記述が「総意」にないことから、現行の皇室典範に基づいて判断することになり、養子の子は継承権を有すると説明した。だが与野党協議は継承権には踏み込まない前提だったのであり、唐突との指摘はやはり免れまい
政府側は今回の改正案について、立法府での将来の検討を縛る趣旨ではないとし、付帯決議によって制度の再検討の余地があるとの趣旨の説明もしている。中道改革連合はそうした点も踏まえて改正案に賛成した。
もっとも付帯決議には法的拘束力がない2017年の上皇さまの退位特例法の付帯決議では、女性宮家の創設が検討課題に挙げられたが、その後具体的な議論は進んでいない。重要な論点は議論を尽くして法律本体に反映させるのが筋ではないか。
改正案は約3時間の質疑などを経て、衆院本会議で可決された。象徴天皇制のあり方に大きく影響する可能性があり、異論もある中、1日で衆院の審議を終えるのは拙速と言わざるを得ない。
今後は参院での審議に移る。立憲民主党などは反対の意向を示している。十分に議論を行い、課題点を洗い出す必要がある。
皇室を巡る問題は、できる限り幅広い合意形成と国民の理解が欠かせない。にもかかわらず、政権は国会での熟議や国民への説明責任を軽んじていないだろうか。「数の力」をたのんで改正案を押し通すべきではない。慎重な国会運営を改めて求めたい。