2022年10月3日月曜日

菅氏が弔辞で美談に仕立てた「山縣有朋の歌」は使い回しだった(LITERA)

 故安倍晋三氏の「国葬」で思いがけなかったのは、菅義偉氏の弔辞が聞く人に感銘を与えたとしてSNS上で一躍盛り上がったことで、自民・三原じゅん子議員はツイッターで「まるで恋文」と表現し、国民民主・玉木雄一郎代表は「感動した。国葬に対する印象が変わった人もいるのでは」と持ち上げました。

 もともと弔辞には情感に訴える部分があるので、それ自体はとやかく言うべきではないのかも知れませんが、弔辞の出来映えに関連して、彼の経験・見識・手腕を再評価しようという動きまで生れた(弔辞が絶賛された菅前首相、改めてその経験・見識・手腕を再評価する動き」JBpress  28日など)ことにはさすがに違和感しかありません。
 LITERAが、菅氏の弔辞の主体的部分である「山縣有朋の歌」は安倍晋三氏自身が読んだJR東海・葛西敬之会長への弔辞の引用だと指摘しました。そもそも弔辞に出てくる岡義武著の『山縣有朋』は、安倍氏が首相在任中の14年に葛西敬之氏から薦められた本だということで、弔辞の記述と齟齬が生じるとも指摘しています。
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菅義偉が国葬弔辞で美談に仕立てた「山縣有朋の歌」は使い回しだった! 当の安倍晋三がJR東海・葛西敬之会長の追悼で使ったネタを
                            LITERA 2022.10.01
 多くの国民が反対するなか、安倍晋三・元首相の国葬が9月27日に強行された。安倍元首相の業績とやらを振り返るフェイクだらけのPV、軍国趣味の式演出、男だらけの弔問客、ある意味安倍政権を象徴するグロテスクな葬儀だったと言えるだろう。
 そんななか話題になっているのが、菅義偉・前首相の弔辞だ。菅前首相といえば、スピーチ下手で有名だったが、今回は、ワイドショーやニュース番組でも繰り返し流され、「葬儀にもかかわらず自然に拍手が湧き起こった」など絶賛の嵐。
 田崎史郎氏が「菅氏の言葉には心を動かすものがありましたね。昭恵さんも涙ぐむ場面があり、国葬でのハイライトでした」と評すれば、恵俊彰も「菅さんの心の声を初めて聞いた気がする」「(岸田首相の弔辞は)申し訳ないが、あまり響かなかった」と岸田首相をくさして菅を持ち上げた。
 橋下徹・元大阪市長は「菅さんと安倍さんは明らかに友人、友情…失礼な言い方かもしれませんけど純粋な小学校、中学校、高校生の友情関係を強く感じましたので、それが強く表れた最後の言葉だったと思います」と声を震わせた。
 ほんこんも「心温まる、感動的な弔辞。新聞の記事で全文を読ませていただいて、凄いなと思ったところで、涙してしまうというところでございました」と絶賛。
 さらには、菅本人も調子に乗って、御用メディアであるABEMAの独占インタビューに応じ、以下のように追悼の辞の執筆エピソードを開陳する始末だった。
「提案があったので、『大変だ』と思って一生懸命資料集めから。一気にではなくまず全体像を入れていくというか、“何をして、何をして…”という構想からした。それと、私自身が今まで発言したものを集めていき、(完成形になったのは)意外に早かった」

 しかし、この弔辞、そんな絶賛を受けるようなご大層なシロモノなのか。菅前首相の弔辞をめぐっては、玉川徹氏が『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で、「電通が演出した」という事実に反する発言をして、大炎上しているが、実際のところ、電通以外のスピーチライターがいようが菅前首相本人が書いていようが、薄っぺらなハリボテ的演出がされた駄文だったことに変わりはなかった。

「山縣有朋の歌」は安倍元首相自身がJR東海・葛西会長の追悼で引用したものだった
 その象徴とも言えるのが、山縣有朋の歌を読み上げたくだりだろう。菅前首相は弔辞でこう語っていた。
〈衆議院第一議員会館、千二百十二号室の、あなたの机には、読みかけの本が一冊、ありました。岡義武著『山県有朋』です。
ここまで読んだ、という、最後のページは、端を折ってありました。
そしてそのページには、マーカーペンで、線を引いたところがありました。
しるしをつけた箇所にあったのは、いみじくも、山県有朋が、長年の盟友、伊藤博文に先立たれ、故人を偲んで詠んだ歌でありました。
総理、いま、この歌くらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません。
かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ
かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ〉
 ようするに、菅氏は、安倍氏の死後、倒れる直前まで読んでいた本を発見。その読みかけの最後のページに、暗殺された伊藤博文を偲ぶ山縣有朋の歌が載っており、それがいみじくも、自分の思いを表していると語ったのだ。
 ほんとうなら、「運命を感じさせる秘話」「ぐっとくるいい話」ではあるが、実際はそんなドラマチックな話ではまったくない。
 そもそも、この山縣有朋の歌を紹介すること自体、ある政治家が他の人を追悼するために使ったネタの使い回しにすぎなかった。
 ある政治家とは、ほかでもない安倍元首相だ。安倍氏は今年6月17日、Facebookにこう投稿している
〈一昨日故葛西敬之JR東海名誉会長の葬儀が執り行われました。
常に国家の行く末を案じておられた葛西さん。
国士という言葉が最も相応しい方でした。
失意の時も支えて頂きました。
葛西さんが最も評価する明治の元勲は山縣有朋
好敵手伊藤博文の死に際して彼は次の歌を残しています。
かたりあひて尽しゝ人は先だちぬ今より後の世をいかにせむ
葛西さんのご高見に接することができないと思うと本当に寂しい思いです。
葛西名誉会長のご冥福を心からお祈りします。〉

 葛西氏といえば、安倍元首相の最大のブレーンと言われていた極右財界人で、第一次安倍政権下の2006年には国家公安委員や教育再生会議委員に就任。その後の首相再登板も猛烈に後押しして、第二次安倍政権以降は、首相動静で確認できるだけでも何十回も顔を合わせるなど、べったりの関係を築いてきた。安倍政権の政策への影響力もすさまじく、NHK会長などさまざまな人事まで左右していたことはあまりに有名だ。
 その最大のブレーンだった葛西氏が亡くなったとき、安倍元首相は葬儀で弔辞を述べたのはもちろん、さまざまなメディアで追悼の言葉を発したが、そのとき、持ち出していたのが、今回、菅氏が紹介した山縣の歌だった
 これは、安倍氏にその歌が載っている評伝『山縣有朋』を薦めたのが、葛西氏だったからだ。
 安倍元首相は、首相在任中の2014年12月27日にホテルオークラの日本料理店「山里」で葛西敬之JR東海名誉会長(当時)、北村滋情報官(当時)と会食しているが、その席で正月休みの読書におすすめの本を葛西氏に尋ね、葛西氏から件の岡義武の『山縣有朋』を薦められたと報じられている。ちなみに、岡は葛西氏の東大時代の恩師で、『山縣有朋』や『明治政治史』についてさまざまなメディアで言及しているし、葛西氏が山縣有朋を信奉しているのも有名な話だ。
 ようするに、極右国家主義政治の師匠とも言える葛西氏から“日本の軍国主義路線の大元”山縣の評伝を教えてもらった安倍氏が、その師匠の追悼に本に載っている山縣の歌を使ったのである。実際、安倍氏は6月24日発売の極右雑誌「WiLL」(ワック)8月号に掲載された櫻井よしこ氏との対談でも、葛西氏をしのび、葛西氏が山縣有朋を敬愛していたこと、葛西氏から岡義武の『山縣有朋』を薦められたことなどを語った上で、「まさに、私たちが葛西さんに贈りたい歌です」として、この歌を紹介していた。
 ところが、菅前首相は今回、故人である安倍氏が他の人を偲ぶために使っていたその歌を、何の説明もないまま、今度は自分の心情の表現として借用してしまったのだ。これって、弔辞のマナーとしてありなのだろうか。

菅前首相が弔辞で語った「安倍元首相の最後の読みかけの本」は嘘! 7年半前に読了していた
 もうひとつ、菅前首相の弔辞が問題なのは、安倍氏と山縣の短歌のほんとうのかかわりをネグって、インチキなドラマチック演出をしていたことだ。
 菅氏は、安倍氏の議員会館の部屋の机に読みかけの『山縣有朋』があったと言い、山縣の歌が載っていたページの端が折られ、歌のところにマーカーが引かれていたことから、そのページが銃撃される前に安倍氏が「ここまで読んだ、という、最後のページ」だとしていた。まるで読みかけのまま銃弾に倒れた安倍に導かれ、自分の心情を表す短歌に出会ったとでも言いたげに。
 だが、実際の安倍はこの『山縣有朋』を読みかけのまま倒れたわけではなく、とっくに読み終えていた。そもそも、前述したように、安倍氏が葛西氏からこの本を薦められたのが2014年末。いくら勉強嫌いで知られる安倍氏とはいえ、8年近く経つのにまだ読みかけということはないだろう。
 実際、安倍元首相は2015年1月12日のFacebookで、週末三連休を河口湖の別荘で過ごしたことを報告した上で、岩波新書版の『山縣有朋 明治日本の象徴』の表紙の写真とともに、〈読みかけの「岡義武著・山縣有朋。明治日本の象徴」 を読了しました。〉と投稿。〈伊藤の死によって山縣は権力を一手に握りますが、伊藤暗殺に際し山縣は、「かたりあひて尽くしし人は先立ちぬ今より後の世をいかにせむ」と詠みその死を悼みました。〉とくだんの歌も全文を引用して紹介している。
 それから7年半経って銃撃される前、議員会館の机の上にほんとうにこの『山縣有朋』があって、ページの端が折られ、歌のところにマーカーが引かれていたとしたら、それは「読みかけ」で「ここまで読んだ」という印ではなく、自分が銃弾に倒れる3週間前に葛西名誉会長が亡くなった際、葛西氏の「追悼」に使おうと、歌のところを“お勉強”し直したと考えるのが妥当だ。
「葛西さんが亡くなったし、追悼文、考えなきゃ。そういえば、葛西さんに薦めてもらった山縣有朋の評伝に、伊藤博文を偲んで詠んだ歌が載っていたな、あれ、使おう。ああ、ここここ」という感じだったのではないか。
 ところが、菅氏はそれをあたかも、安倍氏が銃弾に倒れる前、最後に読んだ本、ちょうど読みかけの最後のページにということにしてしまったのだ。
 菅前首相も、安倍元首相ほどではないが、葛西氏とは近く、安倍氏が自民党総裁に返り咲いた直後の葛西氏との会食にも同席している。普通に考えれば、安倍氏が葛西氏の追悼に山縣の歌を使っているのは知っていたはずだ。どう考えても事実を知りながら美談仕立てのためにしらばっくれたとしか思えない。

明治軍国主義の権化・山縣有朋を国葬の場で美談仕立てで持ち出すグロテスク
 いずれにしても、巨額の税金を使って開いた国葬の弔辞で前総理が明かした「運命の秘話」が、当の故人が別の人の追悼に使っていたネタの使い回しだったとは、なんというハリボテぶり。
 とはいえ、これだけなら、まさに“愛国者のハリボテ”だった無教養な安倍・菅コンビらしいオチというだけの話で済むかもしれない。
 しかし、今回の菅前首相の弔辞の本当の問題は、「使い回し」かどうか以前にある。それは国葬の弔辞で山縣有朋を持ち出したことそのものだ。
 そもそも山縣有朋といえば、明治政府の軍事拡大路線を指揮した日本軍閥の祖で、治安警察法などの国民弾圧体制を確立した人物。自由民権運動を潰し、天皇と国家神道支配の強化、富国強兵と中央集権体制の確立のため、自分の息のかかった地方長官会議に建議させ、井上毅内閣法制局長官や儒学者の元田永孚らに命じて、あの「天皇と国家のために命を捧げろ」と教える教育勅語をつくらせたことでも知られる。
 そして、安倍元首相の“明治軍国主義の祖”山縣への傾倒ぶりは相当で、首相在任中の2017年に防衛大の卒業式で「警戒監視や情報収集に当たる部隊は、私の目であり耳であります」「最高指揮官である私との意思疎通の円滑さ、紐帯の強さが、我が国の安全に直結する」などと語って、自衛隊を私兵扱いしていると批判を浴びたスピーチも、山縣が発意した「軍人勅諭」を踏襲しているとも指摘されていた。
 また、菅前首相も自身に抵抗する官僚を監視し干し上げてきた弾圧体質も、自由民権運動を弾圧したり、反長州の人間を徹底的に排除するなどした山縣有朋と通じるものがある。
 しかし、税金を使った国葬の弔辞で、そんな軍国主義の権化のような人間の歌を、堂々と美談仕立てで紹介するというのは、連中が日本をグロテスクな軍国主義の国に引き戻そうとしていることの証明ではないか。〈今より後の 世をいかにせむ〉=これからの世の中をどうしていこうかって、その後、山縣が指揮した大日本帝国がどんな道を辿ったと思っているのか。
 ところが、マスコミはその危険性を検証することも、「使い回し」を指摘することもせず、冒頭で指摘したように、この菅の弔辞を「泣けた」「素晴らしい」と絶賛している。
 統一教会報道と国葬批判で少しはマシになったと思っていたが、この国のヤバさは相変わらず、というしかない。(編集部)

注目の人 直撃インタビュー 経済学の重鎮・野口悠紀雄氏

 現代の経済学では宇沢弘文に代表されるように、理数系を専攻した学者が経済学に転じて画期的な業績を上げるケースが多くなりました。経済学においてもそれだけ数理的解析が重要になっているからでしょう。
 日刊ゲンダイが経済学者の野口悠紀雄氏を「 直撃インタビュー」しました。彼も工学を専攻した後に米エール大学で経済学博士号を取得していて、アベノミクスは「古い産業を維持する」ことが目的で、その結果日本の経済は足腰が立たない状態になったと断定しています。
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注目の人 直撃インタビュー
経済学の重鎮・野口悠紀雄氏「日銀は利上げにカジを切る時、悪影響のない政策はない」
                          日刊ゲンダイ 2022/10/03
■野口悠紀雄さん(一橋大名誉教授)
 急速な円安と物価高が日本経済を侵食している。円相場は1ドル=145円を突破し、政府・日銀は為替介入に追い込まれた。実は、アベノミクスのはるか前から円安誘導は一貫して進められてきた。それは、日本経済に何をもたらしたのか。この先、展望はあるのか ─。経済学の大御所に聞いた。
 ◇  ◇  ◇
 ──この半年で30円もの「スピード円安」が進行し、値上げラッシュも止まらない。足元の日本経済をどう見ていますか。
 経験則から、輸入物価指数が10%上昇すれば、時間を置いて、消費者物価指数が1%上がる。輸入物価が3~4割上昇しているので、消費者物価指数が3~4%上昇するのは十分あることです。4月以降、マイナスが続く実質賃金はさらに落ち込むことになりそうです。

 ──物価上昇率が8%超の米国と比べ、日本は2%台と低い。
 日米でインフレのタイプが異なります。昨年来の米国のインフレはデマンドプル型です。コロナ禍から経済が正常化し、成長率が高まり、賃金が著しく上昇している。そのために物価上昇が起きています。日本は輸入価格の上昇によるコストプッシュ型インフレ。賃金上昇は伴っていません

 ──なぜ、日本では賃金が上がらないのですか。
 企業の付加価値は短期的には為替の影響などで増えたり減ったりしていますが、長期的に見れば増えていない。ほぼ一定です。だから賃金が上がらない。

■足腰が立たない日本経済
 ──企業の利益が増えない要因は何ですか。
 米国の場合、情報処理産業を中心に新しい産業が発達して、長期的に企業の利益が増えています。ところが、日本では成長産業が現れなかった。そういう道を選択したからです。
 ──と言いますと。
 円安に誘導することで、古い産業を維持しようとしたのです。円安によって自動的に輸出企業は儲かるため、企業は技術開発したり、新しいビジネスモデルを構築してこなかった。だから、日本経済の体力が衰えたのです。そして、足腰が立たない状態になった

 ──1ドル=80円台だった2010年ごろ、製造業に従事していました。海外向けの売値が跳ね上がり、非常に苦しかったのを覚えています。日本企業は価格競争では勝てない。高くても売れる高付加価値品で勝負するしかないと言われました。
 日本に限らず、どこの国でもそうです。高付加価値品化を実現したのが、米国であり、韓国です。日本は円安が進行したため、企業があぐらをかき、努力を怠ったのです。

■アベノミクスの本当の目的は古い産業を助けること
 ──円安誘導政策はいつごろからですか。
 90年代半ばから始まり、2000年ごろからは、積極的に為替市場に介入するようになった。13年に導入されたアベノミクスの異次元緩和以降、円安誘導は非常に顕著になったと言えます。

 ──異次元緩和はデフレからの脱却をうたい、2%の物価上昇率を目標に掲げています。
 アベノミクスの本当の目的は、金利を抑えて円安を促進し、古い産業を助けること。物価目標は名目的にそう言っているだけです。事実、消費者物価指数(生鮮食品を除く)の対前年比が28%になっても、日銀は金融緩和を続けています。アベノミクスの狙いが、物価上昇ではなく、円安促進であることが今ハッキリ分かりました。

 ──そもそも金融緩和はすべきではなかった。
 もちろんそうです。大企業や株式を所有している人にとってはプラスでも、国民の大半を占める働く者にとっては良くなかった。賃金が上がらず、物価だけが上がってしまっている。日銀は大企業の利益を重視し、働く者を無視してきました。

 ──国民の中に「円安は良いこと」という認識があったような気がします。
 マスメディアが「円安は日本にとってプラス」という報道でミスリードしたからです。メディアの責任は大きい

 ──民主党政権時代は1ドル=80円台の円高水準でした。
 民主党も一所懸命、円安に誘導しようとしました。大企業の利益を優先し、働く者の立場に立たなかった。自民党政権と全く同じです。

■賃金が安いニッポンには海外人材は集まらない
 ──円安を食い止めるにはどうすればいいですか。先週、政府日銀は24年ぶりに円買い・ドル売りの為替介入を行いました。
 日銀が金利の上昇を容認するしかありません。金利抑制とドル売り介入は矛盾する政策でアクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるのと同じです。利上げにカジを切る時です

 ──どの程度の利上げが必要ですか。黒田総裁は、7月の記者会見で「金利をちょこっと上げたらそれだけで円安が止まるとは到底考えられない」と言っています。
 米国との金利差が縮小すれば、円安は止められる。米国の足元の長期金利は3%台。年内、4%も視野に入っている。日本は日本の状況に合わせて利上げする必要があります。

 ──大幅利上げをすれば、日本経済に冷や水となりませんか? 設備投資や住宅ローンへの影響が心配です。
 日本の設備投資はいまや、金融機関からの借り入れよりも内部留保の役割の方が大きいのです。金利に対する感応度は大きくないと思います。住宅ローンには悪い影響があるでしょう。もっとも悪影響がない政策はありません米国ではインフレ抑制を最重要目的として、株価下落を承知で、利上げを重ねているのです。

■分野に既得権があり、経済の変化を阻止している
 ──スイスがマイナス金利政策から脱し、主要中銀では日本だけになりました。22日の金融政策決定会合後の会見で黒田総裁は、「2~3年は利上げしない」といった趣旨の発言をしています。円安進行は家計以外にどんな影響がありますか。
 大企業が恩恵を受ける一方で、中小零細企業は壊滅的です。4~6月の法人企業統計によると、資本金が5000万円未満の企業は、営業利益や経常利益、さらに従業員数も減少している。コストアップを価格転嫁できていないからです。中小零細企業は価格面で譲歩してでも、取引を続けることを優先させる傾向があるためです。

 ──ドル建ての賃金低下が深刻です。1ドル=140円なら、日本の平均賃金は年3万ドルとなり、90年ごろの水準に戻る計算です。
 日本が門戸を開けば、海外から人材は集まってくると思いがちですが、そうはいかなくなる。高齢化が進み、海外からの介護人材の確保が必要ですが、賃金が安い日本には来なくなります。介護だけでなく、ITの人材やさまざまな分野の専門家も日本に来ません。そうした現象はすでに起きていますが、いっそう深刻になる恐れがあります。

 ──円安誘導を止めることに加え、経済を好転させるには何が必要ですか。
 経済成長の主体は企業です。企業が新しいビジネスモデルと技術を開発して、付加価値を増加させて賃金を上げていくことです。

 ──政府が取るべき経済政策は何ですか。
 政府は新しい技術産業が生み出される条件を整えるべきです。あらゆる分野に既得権があり、経済の変化を阻止している。規制を緩和し、既得権を打破することが重要です。補助金など余計なことはしなくてよい。 (聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)

のぐち・ゆきお 1940年、東京生まれ。東大工学部卒業後、大蔵省入省。米エール大経済学博士号を取得。一橋大教授、東大教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大客員教授、早大大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。専門は日本経済論。〈超」整理法〉を考案し、シリーズはベストセラー。「円安が日本を滅ぼす」(中央公論新社)、「どうすれば日本人の賃金は上がるのか」(日経プレミアシリーズ)など著書多数。 

03- パートナーシップ制度と統一協会(下)/謀略団体の反共ビラ 統一協会が配布指示

 シリーズ「パートナーシップ制度と統一協会」(下)を紹介します。今回が最終回です。

 併せてしんぶん赤旗の記事「謀略団体の反共ビラ 統一協会が配布指示 19年参院選の直前に 内部文書を入手」を紹介します。
 これは悪質なデマで日本共産党と野党共闘への攻撃をくり返してきた正体不明の謀略団体「ジャパン・ガーディアンズ」のビラを統一協会が配布するよう信者に指示していた内部文書を、関係者から入手したことに関するものです。
    関連記事
     9月2日)徹底追及 統一協会 闇勢力編Ⅱ(上)(しんぶん赤旗)
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パートナーシップ制度と統一協会(下)
    いっせい請願で働きかけ 埼玉県内37市町が導入
                       しんぶん赤旗 2022年10月2日
 県内63市町のうち37市町が、性的少数者のカップルの関係を自治体が公認する「パートナーシヅプ制度」を導入している埼玉県。4年前に結成した「レインボーさいたまの会」が、推進役を果たしてきました。

安全に暮らせる
 現在、メンバーは、当事者、支援者あわせて約100人。6人の役員1回の会合を開き、個報を交換。いっせいの請願で議会に働きかけるとともに首長や担当課に要請してきました。共同代表の鈴木翔子さんは、パ―トナーシップ制度の意義は、「性的少数者の存在」を前提にしている点に特徴があると言います。「性的少数者が、安全暮らせるのがパートナーシッ制度」というのは、役員の一人、野村奈央さん。「利用者の数は問題ではない」とをそろえます。
 今年7月に制定された埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例に対して反社会的カルト集団・統一協会(世界平和統家庭連合)は、条例が成立すれば、「男女を前提にした性秩序や家族の破壊につながる」『トイレなど『女性の空間』に『女性』を自称する男性が入り込む」(「世界日報6月21日付)と攻撃しました。
 レインボーさいたまの会は、一部メディアや団体からの差別や偏見をあおるやり方が当事者の抱える困難の解消を阻むことを危惧。「条例の制定は、差別や偏見に満ちた社会に理解を促し、当事者や家族などが希望を見つけるための大きな一歩となる」と歓迎しました

都城で条例制定
 統一協会が、同性愛に激しい攻撃をかけてきたのは2003宮崎県都城市の男女共同参画社会づくり条例の制定のときでした。「性別又は性的指向」という言葉を使って性的少数者の権利を擁護することを盛り込んだ初の条例で、市議会では僅差で可決され、画期的と評価されました。当時、市議だった日本共産党の来住一人・現宮崎県議は、統一協会の攻撃を議場で明らかにしてたたかいました。その後、市長の交代と市町村合併を契機に、「性的指向」を削除した条例が制定されています。
 当時の関係者から聞き取りを行い、経緯をまとめた著書には、日本共産党の活動が記録されています。
 「来住は議会質問で、人類の歴史に女性差別がいかに刻まれてきたか、性的少数者の権利を守ることは『過激』でもなんでもない、と述べた。多数の傍聴者が居並び、TVでも中継されている議会で、人々に届くわかりやすい弁論を意識して行ったという」(山口智美、斉藤正美、荻上チキ・共著『社会運動の戸惑い』)
 都城市の条例制定から19年。パートナーシップ制度を導入した自治体の人口は5割を大きく超えています。来住県議は、9月12日の県議会の質問で、統一協会との激しいたたかいを振り返り、県のパートナーシップ制度導入を迫りました。 (おわり)、
        (この連載は武田恵子が担当しました)


謀略団体の反共ビラ 統一協会が配布指示 19年参院選の直前に 内部文書を入手
                       しんぶん赤旗 2022年10月2日
 悪質なデマで日本共産党と野党共闘への攻撃をくり返してきた正体不明の謀略団体「ジャパン・ガーディアンズ」のビラを統一協会(世界平和統一家庭連合)が配布するよう信者に指示していたことが1日、関係者から入手した内部文書で分かりました。統一協会との関わりを隠して大量のビラを計画的に配布するよう指示した内容で、統一協会の反社会的な体質が浮き彫りになった形です。(統一協会取材班)
 同団体はホームページで「反日勢力」「悪魔的な政党」と日本共産党を誹謗(ひぼう)中傷しています。本紙の調べでは、ビラに書かれた住所は民間の私書箱で、所在地すら隠蔽(いんぺい)しています
 本紙が入手したのは、同団体が2019年に発行したビラと、その配布方法を指示した「実施要項」です。カラー印刷のビラは、日本共産党が「『天皇制の廃止』を目指している」「暴力革命の方針を堅持する」などと事実無根のデマを書き連ね、公党の名誉を毀損(きそん)する内容です。
 関係者によると、これらは東京都内の信者に渡されました。
 実施要項には、配布期間「6月中 ※7月の参議院選挙の公示前までには必ず配布し終える」と指示しています。

 注意事項として、次のような細かい指示もされていました。
 CH(統一協会を意味する隠語)の他のチラシなどと一緒に投函(とうかん)しない
 共産党のポスターが貼られているなど明らかに共産党関係のお宅には投函しない
 配布中に第三者から尋問を受けた際には、『この団体やチラシの趣旨に賛同して友人ら有志で配布しています』などと回答する
 さらに「配布期間内に必ず配布できるよう、計画的に配布する」と期限の厳守を徹底。青年1人が1日(午前9時から午後5時まで実働7時間)配布した場合「1000枚ほど配布可」との例まで示し、大量に配るよう呼びかけています。
 このビラが配られた19年の参院選は、市民と野党の共闘が初めて全国的に成立し、統一協会と協力関係にあった安倍晋三首相(当時)ら政権側は強い危機感を抱いていました。
 ジャパン・ガーディアンズのビラは第8弾まで発行されています。衆院選があった昨年は、4月から10月にかけて東京都、新潟県、岩手県、神奈川県と広範囲に配布されたことが分かっています。
 正体を隠した謀略ビラで政党を侮辱し、民主的な選挙を妨害する反社会的な行為です。

2022年10月2日日曜日

世界大不況に無為無策の岸田政権という運の尽き

 国内の値上げラッシュは10月にピークを迎え1カ月間に値上げされる食品は6700品目に上ります。22年に価格が上がる食品は2万品目を超え、これによる家計の負担の増分は6万8800です
 食品以外にも家電、タイヤ、たばこ、私鉄の特急料金と何もかも値上がりしますが、それでも原材料などのコスト増の価格転嫁はこれまで客離れを恐れたため「不十分」とされています。それが「皆でやれば怖くない」ということで、その抑制がなくなれば一斉に値上げされます。そうなれば最悪のインフレが現出します。
 海外の通貨も、英ポンドは史上最安値ユーロも20年ぶり、中国人民元は14年ぶり、韓国ウォンは13年ぶりの安値を記録し、日本ほどではありませんが各国通貨歴史的な安値なっています。
 このまま進めば第2次オイルショックによるインフレ退治のため、FRB1979年に強烈な引き締めを実施したため、その後約3年にわたって世界中が大不況に陥ったことが再来する可能性が高いということです。
 この時に無為無策の岸田首相が日本のカジ取りを担っているのだから最悪です。岸田政権の政策でいま分かっていることは、住民税非課税世帯への5万円給付といった弥縫策だけで、物価高を抑え込む抜本策もなければ、世界不況に立ち向かう知恵もありません。
 そのうえ日本経済を破壊したアベノミクスをまだ続けようというに至っては、岸田氏の眼は大企業にのみ向いていて庶民に対する視線は皆無ということです
 いまだにアベノミクスを称賛し対症療法でごまかそうというのでは日本経済は潰れるしかありません。仮に後継者と目されている?河野太郎氏にも難はあろうとも、まずは岸田氏に退場してもらうしかありません。日刊ゲンダイの記事を紹介します。
 併せて同紙の記事「岸田首相『所信表明』原案に“安いニッポン”頼みの成長戦略 ~ 」を紹介します。
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誰が日本に投資などするものか 世界大不況に岸田政権という運の尽き
                         日刊ゲンダイ 2022/10/01
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 もう国民生活はもたないのではないか。かつてない「値上げの秋」が、10月1日からはじまったからだ。
 帝国データバンクによると、国内の値上げラッシュは10月にピークを迎えるという1カ月間に値上げされる食品は6699品目に上り、担当者も「バブル崩壊以降ではあまり見たことのない規模だ」と指摘しているほどだ。2022年に価格が上がる食品は2万品目を超え、家計の負担は、年に6万8760円も増えるという。
 ただでさえ昨年から続く値上げで家計は疲弊しているのに、庶民はさらに追いつめられることになる。
 しかも、10月から値上がりするのは食品だけではない。家電、タイヤ、たばこ、私鉄の特急料金……となにからなにまでだ。
 ヤバイのは、地獄のような値上げラッシュは、まだまだ続く恐れが強いことだ。日経新聞が行った「社長100人アンケート」によると、原材料などのコスト増の価格転嫁は「不十分」が88.6%に上り、半年後までに「値上げする」「値上げを検討する」の合計は86.4%に達している。たしかに、8月の消費者物価指数も前年同月比2.8%上昇しているが、企業物価指数は9.0%も上昇していて、十分に価格転嫁できていないのが実態である。
 経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「半年以上続いている物価高騰は、簡単には終わらないと思います。これまで経営者は、客離れを恐れてなかなか値上げに踏み切れなかったが“値上げ慣れ”しはじめているからです。他社も上げているので上げやすいという心理もあるでしょう。さらに、世界中で起きている穀物争奪戦は、来年以降、もっと激しくなる懸念がある。輸入物価を押し上げている円安にもブレーキがかかりそうにない。物価が落ち着く要素が見当たらないのです」
 しかも、モノの値段は高騰しているのに、賃金の上昇はちっとも進んでいない。7月の実質賃金は、前年同月比1.3%の減少だった。実質賃金のマイナスは、これで4カ月連続である。年金も4月から減額されてしまった。
 物価が上がっているのに、賃金がほとんど増えないのは、主要国でも日本くらいではないか。
「この先も労働者の賃金は上がらないでしょう。多くの経営者が『これから景気は悪化する』と身構えているからです。実際、“悪いインフレ”に見舞われている日本は、急速に景気が悪化する恐れがあります。株価も2万6000円を割り込んでしまった。景気の先行きが怪しいのに、賃上げする経営者は、ほとんどいないはずです」(荻原博子氏=前出)
 これから年末、年始に向かって国民生活は「不況」と「物価高」でドンドン苦しくなっていくに違いない。

世界を揺るがす火種がゴロゴロ
 どうにも不気味なのは、世界経済も変調を来しはじめていることだ。
 米国株は年初来安値を更新。英ポンドは史上最安値をつけ、ユーロも20年ぶり、中国人民元は14年ぶり、韓国ウォンは13年ぶりの安値を記録。各国通貨が歴史的な安値水準となっている。
 世界経済に異変をもたらせている最大の原因は、アメリカの中央銀行FRBによる急速な利上げだ。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
 「米国の一連の利上げは、1979年当時、FRB議長だったポール・ボルカーが主導した強烈な金融引き締め策に似ています。あの時は、第2次オイルショックによるインフレ退治のため、FRBは強烈な引き締めを実施。結果、その後、約3年にわたって世界中が大不況に陥ってしまった。今回も同じ道をたどる恐れがある。FRBは23年末まで、あと1年以上、引き締め策を続けると明言しているから、当面、明るい兆しは見えてこないでしょう」
 深刻なのは、世界大不況の火種になりそうな国が、ゴロゴロしていることだ。
 EU加盟国第3位の経済大国であるイタリアは国債が急落し、財政悪化の連想からギリシャなど南欧各国の金利も上昇。欧州経済を牽引してきたドイツまで、OECDによると23年の成長率はマイナス0.7%に沈むという。ドイツがマイナス成長となったら、欧州経済はどうなってしまうのか。
 さらに世界銀行は、世界経済の現状は、南米各国で債務危機が生じ、アフリカ諸国が相次いでデフォルトに陥った1980年代初頭に似ていると警鐘を鳴らしている。
 どう見ても世界経済の後退は、そう簡単には収まりそうにない。
 「世界的な不況の根本原因は、国際社会で分断が進んだことにあります。冷戦終結によって、世界はグローバル化し、国境を超えてヒト、モノ、カネの移動が自由になり、国際的な分業体制ができた。ある意味、ビジネスがやりやすくなった。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立の先鋭化によって、冷戦時代のブロック経済に逆戻りしてしまった。そう考えると、世界経済の変調は今後も続いていくでしょう」(斎藤満氏=前出)
 世界不況が目前に迫っている時に無策の岸田首相が日本のカジ取りを担っているのだから最悪のタイミングである。

本気で「円安容認」なのか
 日本は今すぐ「世界不況」と「国内の物価高」への対策を取らなければならないのに、肝心の岸田は全く動こうとしないのだから、どうしようもない。
 新たな総合経済対策を掲げ「物価高への対応に全力で当たる」「日本経済の再生に最優先で取り組む」なんて豪語していたが、中身は住民税非課税世帯への5万円給付といった弥縫策ばかり。物価高を抑え込む抜本策もなければ、世界不況に立ち向かう知恵もない。そもそも、日本経済を破壊したアベノミクスをまだ続けようというのだから、本気で対策する気があるのか疑問だ。
 円安是正どころか、岸田は円安頼みの“成長戦略”を打ち出すつもりだ。3日に召集される臨時国会の所信表明演説では、「円安のメリットを最大限引き出す」と強調。訪日客消費を年間5兆円超に増やす目標を掲げる。要するに、通貨安を売りに外貨を獲得しようとする途上国と発想は同じ。これでは輸入物価高を止められるわけがない。
 9月に訪米した岸田は、ニューヨーク証券取引所で演説し、「確信を持って日本に投資をしてほしい」と呼びかけていたが、いったい誰が、株も通貨も下落している日本に投資するというのか。政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「岸田首相が掲げている『資産所得倍増』は、本人が会長を務めている宏池会の創設者・池田勇人首相が打ち出した『所得倍増』を意識したものでしょう。でも、この2つは正反対のものです。所得倍増は、日本国民全員を対象にしたものでした。全国民を豊かにしようとした。しかし、資産所得倍増の対象は富裕層です。カツカツの暮らしをしている貧困層は、投資する余裕資金などありませんからね。聞く耳などと称していますが、岸田首相の眼中に庶民がいないことは明らかです」
 安倍元首相が生きていれば、亡国の経済政策アベノミクスの結末を見届けさせ、責任を取らせるべきところだが、もはやそれもかなわない。
 いまだにアベノミクスを称賛し、対症療法でごまかす岸田政権のままでは、日本経済はクラッシュしてしまうだろう。一刻も早く、交代させないとダメだ。


岸田首相「所信表明」原案に“安いニッポン”頼みの成長戦略
    …発想はまるで途上国
                         日刊ゲンダイ 2022/09/30
 もはや先進国ではない──。岸田首相が3日召集の臨時国会で行う所信表明演説の原案が判明した。驚くことに、深刻な物価高騰を引き起こしている急激かつ過度な円安を食い止めるどころか、円安頼みの“成長戦略”が示されている。

■インバウンドに工場誘致
 2019年に4兆8000億円を超えた訪日客消費は昨年、コロナの影響で推計1200億円余りに激減。所信表明では、10月11日から外国人の個人旅行を解禁することなどに触れ、「円安のメリットを最大限引き出し、国民に還元する」と強調。「年間5兆円超」の訪日客消費を目指すという。
 また、円安を追い風に、海外からの半導体や蓄電池の工場立地、企業の国内回帰などにも取り組む考えだ。
 「単に為替メリットを生かすと言っているだけで、成長戦略でも何でもない。発展途上国が安さを売りに外貨を獲得しようとする発想と同じです。円安の進行により、外国人は安い物価やサービスを求めて訪日し、安価な賃金の日本に工場を立地しようという気になります。勤勉で教育レベルが高い日本人が薄給で働いてくれるわけですから、外国企業には魅力的でしょう」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
 かつて、途上国に観光に行けば、価格の安さに驚いた。また、日本の製造業は人件費や物価が安い中国や東南アジアに製造拠点を移した。それも今は昔。日本が逆の立場になりつつある。
 日本のビッグマック価格はパキスタンやベトナムより安い。OECDデータによれば、日本の平均賃金(21年)は1ドル=145円で計算すると、OECD加盟34カ国中、何と28位。エストニアやチェコよりも下位だ。
 岸田首相は“安いニッポン”を前面に、途上国化を進めようとしている。「新しい資本主義」とは、こんなことだったのか。
訪日客消費や工場誘致の肝は円安です。円安が進めば進むほど、大きな成果が得られる。間違っても、円高に振れてはならない。岸田政権が円安阻止に後ろ向きになるのは必然です。外国人や外国企業が安さの恩恵を受ける一方、さらなる円安は国内の物価高を加速させ、低賃金のため海外から人材は集まらなくなる。値上げと人手不足が深刻になり、国民生活は壊滅的になるでしょう」(森岡英樹氏)
 野党は代表質問でガンガン追及すべきだ。