2026年5月6日水曜日

06- 田中淳哉弁護士「急浮上の改憲論どう考える」(朝日新聞インタビュー)のご紹介

 憲法カフェでおなじみの田中淳哉弁護士(上越中央法律事務所)が3日付で掲題のブログを出されましたのでご紹介します。なお朝日新聞にインタビュー記事が掲載されるのは、2016年6月(緊急事態条項)、2017年5月(共謀罪)に次いで、3度目ということです。
 ブログの記事には「朝日新聞同記事の写真版」も掲載されていますがそちらは省略しました。
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「急浮上の改憲論どう考える」(朝日新聞インタビュー記事)
                        田中淳哉弁護士 2026年5月3日
                          上越中央法律事務所
朝日新聞5月3日付朝刊の新潟版に、憲法改正を巡る状況に関するインタビュー記事が載りました。朝日新聞にインタビュー記事が掲載されるのは、2016年6月(緊急事態条項)、2017年5月(共謀罪)に次いで、3度目です。

前2回のときは、朝日新聞上越支局が当事務所と同じビルに入っていたので、取材に来ていただくのも気が楽でした。しかしその後上越支局がなくなってしまったため、今回は、2度にわたって、新潟市から片道2時間以上の道のりを遠路はるばる取材にお越し下さり、記事にまとめてくださいました。転載について許諾を得ましたので、記事をそのまま貼り付けます。
また文字数の関係から、一部省略された部分があったので、フルバージョンを貼り付けます。

記者:自民党案は自衛隊を明記するとの内容であるのに対し、日本維新の会は「国防軍保持」を主張しています。

自民党は、「今ある自衛隊を書き込むだけなので何も変わらない」と主張しています。しかし、9条2項を削除して国防軍を創設するという維新案はもちろん、9条2項を残して自衛隊を明記する自民党案であっても、それが実現すれば国の在り方は大きく変わります。
これまで自衛隊に対しては、憲法9条があることにより、「戦力」にあたってはならないという制限(ブレーキ)がかけられてきました。しかし、自民党案が通ればこうした制限は大幅に緩められます。また、自衛隊は憲法に権威付けられた存在となります。つまり、憲法が、自衛隊のブレーキから、アクセルに切り替わることとなる訳です。「軍事」が公益の代表格として様々な場面で幅を利かせるようになるでしょう。

記者:防衛装備移転三原則の運用指針が改定されました。

武器の輸出を禁ずる武器輸出三原則は、長らく「国是」とされてきました。それが小泉内閣以降、段階的に緩められ、今回の決定は実質的に武器輸出を全面解禁したものと言えます。
このほかにも、「1%枠」を超えて防衛費が増額されたり、非核三原則の見直しが取り沙汰されたりするなど、憲法に基づく制度や原則を無視するかのような動きが広がっています。
憲法のブレーキが利きにくくなってきていると言えるでしょう。

記者:国会の憲法審査会では、緊急事態条項の創設についても議論されています。

緊急事態条項として主に議論されているのは、「緊急政令」と「国会議員の任期延長」の2つです。どちらも、そもそも本当に必要なのかという点が慎重に吟味されるべきですが、それに加えて弊害がないかという点も確認しておく必要があります。
前者は、緊急時に、内閣が国会の関与なく、法律と同等の効力を有する政令を発することができるようにするというものです。いかにも独裁的な内容で、濫用の危険が比較的わかりやすいと言えます。
後者は、選挙の実施が困難な事態が続いた際、国会議員の任期が切れてしまわないように、任期を延長できるようにするというもので、一見すると危険性がわかりにくいかも知れません。しかし、選挙を先延ばしすることで民意を無視しうるという意味で、やはり民主主義に反する面があると言えるでしょう。

記者:私たち国民に求められる視点はどのようなものでしょうか。

「どうして憲法が作られたのか」、「憲法は何のためにあるのか」というそもそも論に立ち返って考えることが重要だと思います。 人類の歴史を振り返ると、深刻な人権侵害は、国家権力の濫用によって引き起こされてきました。そこで、人権や自由を守るために、国家権力に縛りをかけるというのが憲法の基本的な役割です。
ですから、人権や自由が脅かされないようにするためには、「憲法の縛りがしっかり利いているか」という視点で政治に関わる問題をチェックすべきということになりますし、憲法改正案の内容についても「縛り方を変えても権力が濫用されるおそれがないか」という視点で検討すべきということになります。
法律は、国家権力が国民に義務を課し、権利を制限するものです。矢印は、国家権力から国民に向いています。これに対し憲法は、国民が国家権力に制限をかけるもので、矢印は逆向きです。つまり憲法は、私たち国民が国家権力に『守らせる』ものなのです。

2026年5月4日月曜日

水俣病 70年 患者側募る喪失感 補装具、介護費用負担重く 生涯ケア体制強化急務

 水俣市他で大量で重篤の患者・死者を発生させた水俣病は公式確認から70年が経ちました。認定患者の高齢化が進み累計約2200名ほどのうち存命者は1割ほどになりました。

 1日、水俣市で行われた犠牲者慰書式には約780人が参列しました。患者・遺族の代表は「次世代に教訓として伝える」と述べ、参列者らは「公害の原点」とされる悲劇の再発防止を誓いました。
 新潟水俣病が公式に確認されたのは(熊本)水俣病の9年遅れでした。新潟県からも鈴木康之副知事、環境と人間のふれあい館藤田伸一館長ら関係者が参列しました。
 石原宏高環境相は4月30日から2日間にわたり被害者団体と懇談しましたが、前年までと同様、被害者団体側が求める患者認定制度の見直しなどに進展はありませんでした。
 医療費は認定患者に対しては全額補償されますが、生活上のハンディキャップに対する福祉面でのケアの不備が露呈しています。
 補装具や介護費用は社会保障制度に頼るしかないのですが、公害病という事情が考慮されないため患者側は負担感や尊厳の喪失感を募らせています。識者は生涯にわたるケアの実現へ体制強化が急務と指摘します新潟日報が報じました。
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水俣病「公害原点」70年の祈り 患者「教訓 次世代へ」
                          新潟日報 2026年5月2日
 水俣病が公式確認されてから70年となった1日、熊本県水俣市で犠牲者慰書式が営まれ、患者や遺族らが追悼の祈りをささげた。患者・遺族の代表は「次世代に教訓として伝える」と述べ、参列者らは「公害の原点」とされる悲劇の再発防止を誓った。石原宏高環境相は4月30日から2日間にわたり被害者団体と懇談したが、前年までと同様、団体側求める患者認定制度の見直しなどに進展はなく、改めて隔たりが浮き彫りになった
 慰式は水俣市内の会場で行われ、市によると、約780人が参列した。国などの代表者が「祈りの言葉」を読み上げ、石原氏は「政府を代表して、水俣病の拡大を防げなかったことを改めておわび申し上げる」と陳謝。「70年前、美しく豊かな自然が汚染され甚大な被害が生じたことに、ただただ言果に詰まり、深く思いを致さずにはいられない」と続けた。
 水俣病の原因企業チッソの山田敬三社長は「多くの方々が犠牲になり痛恨の極み。過ちを深く反省する」と強調した。
 患者・遺族代表の緒方正実さん(68)=水俣市=は「水俣病問題は人間が起こしてしまった出来事ですから、私たちの努力で問題を解決し、次世代の子どもたちに水俣病を教訓として
伝えたい」と述べた。
 慰式には本県からも鈴木康之副知事ら関係者が参列した。潟県立環境と人間のふれあい館(新潟市北区)の藤田伸一館長は「水俣で祈りの言葉を聞き、新潟水俣病についても正しく理解してもらう取り組みを懸命に重ねることが大切だと心を新たにした」と話した。
 石原氏は30日の6団体に続き、1日午前も水俣病患者連合など2団体と懇談した。団体側は、認定患者が利用する水俣市立の療養介護施設について未認定患者も利用できるよう要請したが、環境省側は「直ちに認定患者以外の入所は難しい」と後ろ向きな考えを示した。
 石原氏は、水俣病被害者に給付される「療養手当」の増額を4月分から実施したと強調。団体側か最近の物価高騰などを踏まえ、さらなる増額を要求すると「足りないということであれば、また検討する」と述べた。
 2024年の懇談中、持時間の3分を超えたとして途中で発言を遮られた水俣病患者連合の松崎重光さん(84)も1日の懇談に出席。石原氏は当時の対応を改めて謝罪した。松崎さんは「丁寧に訴えていたつもり。時間を制限されていたのがよくなかった」と話した。


水俣病公式確認70年 患者側募る喪失感 補装具、介護費用負担重く 生涯ケア体制強化急務
                          新潟日報 2026年5月2日
 水俣病の公式確認から1日で70年となった。認定患者の高齢化が進み、福祉面でのケアの不備が露呈している。医療費は全額補償されるが、補装具や介護費用は社会保障制度に頼る面も。公害病という事情が考慮されず、患者側は負担感や尊厳の喪失感を募らせる。福祉現場では人手不足が課題に。識者は、生涯にわたるケアの実現へ体制強化が急務と訴える。

病気でこういう体になったのに」。4月、週に数回のリハビリを終えた熊本県水俣市の胎児性患者、松永幸一郎さん(62)は顔をしかめた。下半身の痛みや脱力発作で16年前から車いす生活に。こぐ腕の力が衰え「近所での買い物すらしんどくなった」といい、数年後に電動に改造した。
 40万円ほどかかったが、医師には「手こぎ(での操作)は可能」と判断され、市が実施する補装具費の支給制度の対象外と告げられた。限られた年金で暮らしており、毎年約6万円のバッテリー交換代も含め「原因企業のチッソが払わないのはおかしい」と憤る。
 チッソは1973年に患者側と補償協定を結び、認定患者の医療費を全額支給する。福祉については協定が「実情に即した具体的方策を誠意をもって早急に講ずる」とするものの、多くの患者が利用する車いすの費用負担は明記されていない
 補償には介護費も含まれるが、チッソの担当者は「協定の基本は医療補償だ」と強調し、給付の額や対象を明らかにしていない。研究者らによる患者への聞き取りでは、一部の重症者に対する月5万円程度の補助にとどまっているとみられる。

申請が却下
 同じく胎見性患者の金子雄二さん(70)は30代で平衡機能が低下し、現在は手指が硬直している。ものを飲み込む機能も低下し、たんの吸引など医療的ケアが24時間欠かせない
 利用する訪問入浴介護費の給付を受けようと水俣市の障害者支援事業に申請したが、昨年12月に退けられた。介護保険サービスを利用できる65歳以上であることなどが却下の理由とされた。
 ただ国は障害福祉サービスの利用を巡り、申請者の意向を把握し障害の特性を考慮するよう、各自治体に文書で求めている。申請手続きの代理人を務めた中郷潤史弁護士は「水俣病患者として生きてきた事情への考慮がなく違法。自立への意志と誇りを否定するものだ」と市を批判する。

待ったなし
 患者は高齢化が進み、チソによると、今年3月までに認定された2284人のうち存命者は202人と1割に満たない平均年齢は約82歳で、今も認定を求めて申請中の人も多くいる。東京経済大の尾崎寛直教授(環境政策)によると、水俣病の影響で早期に老化が進む患者は少なくなく、介護支援の拡充は待ったなしの状況だ。
 だが水俣市内の訪問介護事業所は、受け取る基本報酬が減額改定された2024年度に8ヵ所から7ヵ所に減少。医療的ケアも担える事業所は限られ、金子さんの介護には車で1時間以上かかる熊本市のヘルパーも加わる。
 尾崎氏は、福祉的ケアは「原因の責任で補償すベきだ」と強調。認定患者の診療には通常より高く算定される診療報酬の仕組みがあり、「福祉事業者にも報酬や人材育成面でインセンティブが必要」としてチソや国に対応を促した。

平和憲法を壊されてたまるか!〜有明防災公園をうめた5万人の人波

 レイバーネット日本2.0の掲題の記事を紹介します。
 5月3日の憲法記念日。有明防災公園5万人の人びとが集まりました。九条を掲げる市民団体をはじめ、労働組合の旗、女性団体、NPOの旗などグループでの参加が目立ち、ざっと見た感じではシニア層が多かったということです。
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平和憲法を壊されてたまるか!〜有明防災公園をうめた5万人の人波
                    レイバーネット2.0 2026年5月3日










5月3日の憲法記念日。有明防災公園は人びとの波でぎっしり埋まった。九条を掲げる市民団体をはじめ、労働組合の旗、女性団体、NPOの旗などグループでの参加が目立った。ざっと見た感じではシニア層が多い。杖を付いてきた人もいた。「平和憲法を壊されてたまるか、戦争はゴメン」という戦争第二世代のシニア層が、危機感をもってこぞって集まってきた感じだった。若者も目についた。共感を広げる「ハグ・握手」行動をしている人がいた。話を聞くと「ペンライト行動から関心をもって参加している」とのこと、19歳だった。(写真下)















 参加者の思いは手作りのプラカードに込められていた。記者がインパクトを感じたのは高市の似顔絵をあしらった「この人キケン 武器輸出・監視社会・戦争する国」のプラカードだった。3つの短い言葉に、高市の危険な未来が凝縮されていた。また「悪の組織・日本政府から平和憲法・国民皆保険を守る!!」も刺さる。軍拡重視で人びとの平和と生活をズタズタに破壊する日本政府は、「悪の組織」という言葉が相応しい。こうした高市政権への大きな危機感、それが5万人の大結集になったのだろう。












 メインスピーチは吉岡忍さん、仁藤夢乃さんだった。そして演壇には、立憲・共産・社民・れいわ・沖縄の風の野党議員が勢揃いした。共闘から距離を置いてきた「れいわ」が来たのはよかった。厳しい局面の野党だがここは踏ん張りどきという感じで、熱いスピーチが続いた。
 参加者全員でプラカードを掲げてのコールは圧巻だった。「主権者は私たち」「憲法改悪 絶対反対」「戦争反対」「退陣退陣 高市政権」の大コールが防災公園を揺るがした。5.3憲法大集会は、改憲の高市政権にストップをかける大運動の新たなスタートになったことは間違いない。ウェブサイトで順次報告・写真・動画を掲載する予定。(M)

国民監視と〝認知戦″対処の諜報機関「国家情報局」- 中道も日弁連も賛成して設置法案が衆院通過

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 高市首相は、何一つ首相らしい仕事をしない中で、真っ先に国家情報局に設置に向けた法案を成立させようとしています。世に倦む日々氏は、国家情報局法は戦前の「治安維持法」に当たる「スパイ防止法」とセットの治安法制で、スパイ防止法を運用する組織の立ち上げ立法であると明言します。
 それは高市氏が極右政治家であると知るほどの人にとってはすぐに納得できるし、それが極右的発想に基づいた国民弾圧法であることが理解できますが、メディアは全くそうした観点からの報道をしないので多くの人たちにとっては格別有害なものではないのだろうという認識のように思われます。
 しかし戦前の治安維持法(と治安警察法)こそは国民を弾圧するための中核をなす法制であり、そんな法制が実現すれば戦前の暗黒時代が再来するのは目に見えています。
 世に倦む日々氏はその辺のことを丁寧に説明したのち、末尾で「国家情報局」をテーマにした4/26のNHK日曜討論に出演した日弁連元副会長の斎藤裕が、上原アナウンサーに「インテリジェンス(諜報活動)の強化は必要か」と問われたのに対して、「当然それは必要だと思っています」「政府が必要な政策を打つためにはインテリジェンス(諜報活動)の強化が必要です」と即答したことに大憤慨し「眩暈がする。ショックで言葉もない」と嘆いています。
 メディアも日弁連も一体どうしたのでしょうか。
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国民監視と認知戦対処の諜報機関「国家情報局」 - 中道も日弁連も賛成して設置法案が衆院通過
世に倦む日日 2026年4月30日
4/23、衆院本会議で「国家情報局」と「国家情報会議」を新設する法案がで与野党の賛成多数によって可決、衆院を通過した。日本のマスコミは全社揃って、「政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の司令塔を担う」とか「政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化」という文言で法案の目的と意義を説明している。中央日報は、この件の報道に「インテリジェンス」の語を積極的に使っておらず、その点が注意を惹いた。「国家情報局」がどのようなものか、自国の現代史で嫌と言うほどよく知っている韓国の記者は、記事での説明に「インテリジェンス」の語を躊躇うのではないか。「インテリジェンス」の英語を前面に出すことが、言葉の詐術の機能と効果を導き、事態の本質を隠蔽して粉飾する欺瞞行為になると本能的に察知するからかもしれない。日本政府が設置する「国家情報局」は、韓国の「国情院」であり、嘗て「泣く子も黙るKCIA」と国民に恐怖された弾圧と拷問の暴力装置に他ならない

一般の日本人は、英語の intelligence を「知能」や「知性」の意味で理解していて、そこには悪性表象の要素はない。だが、英語 intelligence には「知能」や「知性」とは別に「機密情報」とか「諜報活動」とか「諜報機関」の意味があり、今回の「インテリジェンス」はそれだ。朝日もそう解説している。であれば、横文字(片仮名英語)の「インテリジェンス」の語を用いず、日本語の「諜報」を用い、「諜報機能の強化」と言い、「諜報機能の司令塔」の組織を設置するのだと正直に言うべきだろう。「諜報」の語を使わず、それを避け、「インテリジェンス」の片仮名で目眩ましするのは、世論にマイナスイメージとなる影響を忌避したからであり、姑息な情報工作であり、新設する「国家情報局」の毒悪な正体を隠すためだ。「諜報」の語を「インテリジェンス」に変え、日本版CIAを作ろうとする佞悪な政治策動は、もう10年以上前から始まっていて、BSフジの政治番組などで地均ししてきたが、いよいよ本番となった

一般の日本人は、英語の intelligence を「知能」や「知性」の意味で理解していて、そこには悪性表象の要素はない。だが、英語 intelligence には「知能」や「知性」とは別に「機密情報」とか「諜報活動」とか「諜報機関」の意味があり、今回の「インテリジェンス」はそれだ。朝日もそう解説している。であれば、横文字(片仮名英語)の「インテリジェンス」の語を用いず、日本語の「諜報」を用い、「諜報機能の強化」と言い、「諜報機能の司令塔」の組織を設置するのだと正直に言うべきだろう。「諜報」の語を使わず、それを避け、「インテリジェンス」の片仮名で目眩ましするのは、世論にマイナスイメージとなる影響を忌避したからであり、姑息な情報工作であり、新設する「国家情報局」の毒悪な正体を隠すためだ。「諜報」の語を「インテリジェンス」に変え、日本版CIAを作ろうとする佞悪な政治策動は、もう10年以上前から始まっていて、BSフジの政治番組などで地均ししてきたが、いよいよ本番となった

法案(国家情報会議設置法案)の原文が衆議院のHPに掲載されている。第2条に法の目的が書かれていて、①「重要情報活動(安全保障の確保、テロリズムの発生の防止、緊急の事態への対処)に資する情報の収集調査活動」と、②「外国情報活動への対処(外国の利益を図る目的で行われるものへの対処)」の二つが示されている。この第2条の条文は抽象的で複雑な表現のため意味が分かりにくいが、①の中に国民を監視する中身があり、②の中に、「認知戦」対策の中身があることが読み取れる。「安全保障の確保」という抽象的な目的で、「国家情報局」が国民の個人情報を管理・監視・追跡することが合法化され、さらに、外国の諜報活動をしていると嫌疑をかけた者に対する「国家情報局」の「対処」が合法化されている。その含意がある。①も②も、来年以降に国会提出されるスパイ防止法案で内実が明らかにされるだろう。国家情報局法は、スパイ防止法とセットの治安法制で、スパイ防止法を運用する組織の立ち上げ立法だ

いわば、スパイ防止法の制定と施行を前に、先に実行部隊である諜報治安組織を準備しようとする法律であり、外側の体制を構築する方法から入ったと言える。法文の中には「インテリジェンス」の語がない。「諜報」という語も控えられている。インテリジェンスの組織を設立する法律だと全マスコミが説明し、その意味はスパイ対策の機構だと誰もが講釈しているのに、不思議なことに「インテリジェンス」も「諜報」も条文の中に語の記載がない。法文に書かれているのは、「重要情報活動」だとか「外国情報活動」という、意味が定義しにくい曖昧模糊とした概念であり、要するに、この法律を根拠に行う国家の活動に無限のフリーハンドを持たせ、制約なしに当局の行う「対処」に法的正当性を与えようという危険な意図が透けて見える。こんな(憲法違反の)法律が、4/2 に提出され、まともな審議も議論もなく 4/22 に衆院通過となった。日本国の中に、韓国の国情院のような、謀略と弾圧のスパイ機関を正式に設立する法律が成立しようとしている

日経の記事が政権側の本音をよく説明しており、この法律の意味と本質を権力側から隠さず書いている。「国家情報局」の設置法は第一歩であり、やろうとする目的は、スパイ防止法の制定と対外諜報機関の設立という三段階で実現されると言っている。スパイ防止法は、中国の「情報戦」「認知戦」に対処し抑止することが大義名分の趣旨であり、要するに戦前の治安維持法と同じで、その中身は国内の市民を監視し摘発して言論統制と思想弾圧をすることだ。戦前の治安維持法が共産主義者狩りを名目として反戦を訴える者を検挙したように、スパイ防止法では「中国のスパイ」狩りを名目として反戦派や左翼を排除する。4/27 に安保3文書改定の有識者会議が開かれたが、報道記事を見ると、やはりと言うべきか「認知戦の激化」に対応する「新しい戦い方」というコンセプトが示され、「対処力強化」が謳われていた。有識者会議の中に、東野篤子と細谷雄一が入っている事実は、「認知戦」への対応が3文書改定の目玉の一つとなることの証左と看て取れるだろう

今秋を予定していたスパイ防止法の国会提出が見送られ、来年の通常国会に変更になったのは、安保3文書の作業の中で「認知戦」への「対処」の詰めをやり、思想犯を取り締まる刑事法制化の理論構築と技術措置を万全にするためではないかと思われる。スパイ防止法では、戦争に反対する意見をネットで発信した者を「中国のスパイ」だと認定し摘発し断罪するのであり、そうした発信と拡散を「中国の認知戦に加担し幇助した」犯罪行為として類型化し、構成要件を設定し、国家の安全に脅威を与えた犯罪者として処罰する。そして、小林多喜二のように、法の執行と運用の過程で見せしめにする必要がある。現在の法制度では人権侵害となる、乱暴で凶悪な思想弾圧(国家の市民へのテロ)をやらないといけないのであり、その治安法制を敷く上では、テクニカルな法令構造の設計と共に、それを正当化する理論武装とプロパガンダが必要なのだろう。東野篤子と細谷雄一はそのための要員だと思われる。3文書改定の中で「認知戦」とスパイ防止法がキーになるのだ

驚いたのは、中道が法案に賛成投票したことで、棄権の選択もしなかったことだ。3/28 の報道では「国家情報法案に小川氏慎重姿勢」という見出しがあり、長妻昭が牽制する場面もテレビで見たので、まさか賛成はないだろうと楽観視していた。付帯決議のお茶濁しで賛成票を投じるなど、まさに裏切りそのもので、大政翼賛会の卑劣な配信行為そのものではないか。長妻昭は「政府の政策に反対するデモや集会に参加しただけの人に、顔写真の撮影や本名・職業を調査することはしないか」と質問していたが、国家情報局やスパイ防止法が監視し探索する対象は、デモや集会の参加者だけではない。最も重要で懸念される問題は、ネットの言論に対する「国家情報局」の監視と諜報であり、個人情報を密偵し検閲する工作活動である。言論と思想信条の自由を奪い、権利を侵害して威圧し恐怖させる、国家権力による市民の統制弾圧である。反戦や反政府の声の封殺と排除だ。この点について長妻昭は追及しなかった。来年国会のスパイ防止法の審議の際は追及するのだろうか

4/26 のNHK日曜討論で「国家情報局」を特集していたが、出演し日弁連元副会長の斎藤裕は、「インテリジェンス(諜報活動)の強化は必要か」と上原光紀が尋ねたのに対して、「はい。当然それは必要だと思っています」と応じ、「政府が必要な政策を打つためにはインテリジェンス(諜報活動)の強化が必要です」と即答した。中道の対応と同じだが、この発言にはテレビの前で驚かされた。まさしくファシズムの時代そのもの。斎藤裕は日弁連で「秘密保護法・共謀罪法対策本部本部長代行」も務めていて、この問題のエキスパートである。日弁連は13年前の秘密保護法には強く反対し、反対運動をリードする理論的支柱の存在だった。その日弁連が「国家情報局」法案には堂々と賛成表明し、テレビで「国家情報局」の必要性と正当性を説いている。しかも、共謀罪と秘密保護法の反対運動を法曹の立場から主導した当人が。斎藤裕は2019年に新潟県弁護士会の会長も務めているから、先輩で同会の副会長を務めていた高島章とも昵懇で周知の間柄だったに違いない

斎藤裕と日弁連は、「国家情報局」とスパイ防止法とがセットの関係であり、「国家情報局」がスパイ防止法を主管し、その執行と運用を担う機関だということを当然知っているだろう。スパイ防止法の制定と施行を前提として、先行して1年前に国家情報局を立ち上げ、その組織陣容を政府内に整備するのである。つまり、「国家情報局」とスパイ防止法とは、戦前の特高警察と治安維持法と同じ関係と構図なのだ。日弁連と斎藤裕にその基礎認識がないはずがない。にもかかわらず、NHKで、斎藤裕は「インテリジェンス(諜報機関)の強化は必要だ」と言い、「国家情報局」の設置を正当化した。現在の高市政権の思惑と情勢から考えたとき、マスコミを使って周知させ”教育”している「インテリジェンス」とは、まさに「外国勢力による認知戦・情報戦」への対処の意味であり、「中国のスパイ」を発見し暴露し処罰する治安対策という意味だ。それをキャリーする⇒推進する)ために右翼政権が創設するのが「国家情報局」である。それ以外の情報収集・分析なら各省庁が行っているわけで、強化に新組織は必要ない

眩暈がする。ショックで言葉もない。国論二分にもなってない。が、ネット検索すると、日弁連が院内集会を開いて、幹部の面々が「国家情報局」設置に反対するプラカードを掲げている。海渡雄一と斎藤裕と平岡秀夫が立っている姿がある。どういうことなんだろうあれほど生放送の上原光起の前では、NHKと一緒に作成した台詞原稿を読み合うように「国家情報局」の意義必要性を肯定しながら25:40’)。二枚舌とエクスキューズのパフォーマンスか。TBSでさえ「日本版CIA」と呼んでいるのに。中道も日弁連もプロレスをやっている。脱力と憤慨で鬱病になりそうだ

権力に媚びない批評精神(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の記事を紹介します。

 憲法記念日に当たり、高市首相憲法改定に前のめりになっていることに対し、世界に誇ることのできる最大の「世界遺産」とも言える日本国憲法が「壊憲」の危機に直面していると述べます。そして憲法を変えて何をしたいのかが問題だとして、憲法を変えて日本が米国の命令に従って戦争をする国にするのが理由であるような壊憲を許してよいわけがないと怒ります。
 そして戦争の経験もないし、戦争を禁じる日本国憲法の重要性をも知らない若い人々を壊憲に巻き込もうとしていると警告し、5月3日、有明で憲法集会が開催され5万人近い市民が参集したことを紹介し、「戦争と壊憲の危機が迫るなか、これを止めようとする市民が多数存在する、この声を生かし戦争と壊憲にブレーキをかけなければならない」と述べます。
 記事は、「市民が目を醒まして自分たちの命と暮らしを守らなければならない。若者と手を握り、日本の進路を誤らぬよう市民が自前の運動を作り上げなければならない」と結びます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
権力に媚びない批評精神
                植草一秀の「知られざる真実」 2026年5月3日
日本国憲法施行から79年が経過した。
日本が世界に誇ることのできる最大の「世界遺産」とも言える日本国憲法。
いまこの憲法が「壊憲」の危機に直面している。

高市首相は「時が来た」として憲法改定に前のめりの姿勢を示す。
しかし、憲法を変えて何をしたいのか。動機と理由が問題だ。
憲法を変えて日本が米国の命令に従って戦争をする国にする。これが動機と理由だと考えられる。こんな壊憲を許してよいわけがない。

若い人々を壊憲に巻き込もうとしている。
若い世代は戦争の経験もないし、戦争を禁じる日本国憲法の重要性をも知らない。メディアの誘導に乗せられて「雰囲気」で高市支持になびいている

戦後日本の教育制度のひずみがもたらした結果とも言える。
戦後日本の教育制度では「従うことと覚えること」だけが重視されてきた。
「お上」が提示したものを「覚える」。「お上」の指示に従う。
これだけが重視されてきたのではないか。

国家権力にコントロールされる人材の輩出が教育の目的とされてきた。
その結果、権力のコントロール下に置かれる者が増殖しているように思われる。
その若者たちに問題を投げかけることが重要だ。
5月3日、有明で憲法集会が開催され5万人近い市民が参集した。
戦争と壊憲の危機が迫るなか、これを止めようとする市民が多数存在する。
この声を生かし、戦争と壊憲にブレーキをかけなければならない。

トランプ大統領と高市首相は国際社会で孤立を深める。
「世界中で平和と繁栄を破壊しているのはドナルドだけ」が国際社会の共通認識。
だが、高市首相は「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」という歯の浮くようなおべんちゃらを提示。国際社会の鼻つまみ者になっている

タレント清水ミチコさんが全国ツアー「清水ミチコのHAPPY PARADISE」千秋楽の沖縄公演で替え歌を披露した。https://www.youtube.com/watch?v=KY7-G2yUSkQ

  「ホルムズ海峡冬景色」
  UAE発の運搬船 浮遊したまま
  アラブの海域 荒れ模様
  石油運ぶ 船の群れは誰も無口で
  トランプだけに キレている
  おまえが一人 連絡船に乗り
  舵を取って 責任とって イランことするな
  ああ
  ホルムズ海峡 浮遊景色

拍手喝さいを浴びたが、これが芸人魂というもの。
権力に媚を売る腰巾着芸人ばかりが跋扈するなか、本当の芸の披露に会場が沸き立った。
権力に媚びれば地上波の出番は増える。その金感情で行動する者ばかり。
芸能事務所は権力に取り入って芸人に権力迎合を指示する。
権力と癒着する芸に本当の笑いは生まれない。

日本社会全体が「媚び」と「すり寄り」に支配される風潮が強まっている。
しかし、権力は庶民の命も暮らしも守らない。庶民は権力に見捨てられるだけだ。
市民が目を醒まして自分たちの命と暮らしを守らなければならない。
若者と手を握り、日本の進路を誤らぬよう市民が自前の運動を作り上げなければならない。

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