世に倦む日々氏の掲題の記事を紹介します。
同氏は、G20の会合でベッセント米財務長官が日本(片山財務相)に対して大立ち回りを演じたのは彼自身が必死の立場にあるからで、9月中には1ドル145円に、今年中には1ドル130円にならなければ彼の立場がなくなるからだ、と述べます。
そして購買力平価でのドル円の理論値を検索すると、国際通貨研は1ドル106円と試算しているし、2年前の熊野英生のレポートではOECDの計算値をベースに1ドル93・7円という推計があると述べます。
それにしても、つい先日までアベノミクスの流れで1ドル160円とかの数字を見慣れてきた人間には、あたかも別世界が開けるかのように感覚に襲われます。
詳しいことは分かりませんが円の価値が高くなって悪い筈はないので、ここ10年以上に亘って円安のうま味を十二分に味わって来た日本の輸出企業には引っ込んでもらって、早く上述の展開に入って欲しいものです。
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歴史的円安の終焉 - ベッセントの要求を歪曲して食料品消費減税潰しを煽るマスコミ
世に倦む日日 2026年9月10日
9/1 のベッセントの警告と指導の後、為替市場は円が急騰し、9/8 に1ドル152円台をつける展開となった。7/23 に164円目前という40年ぶりの異常安値を更新、7/31 の日米協調介入で一旦157円まで上がっていたが、日銀の矛盾と限界を衝いてなお円安を試し探る市場(投機筋)の動きが止まらず160円に逆流していたところ、ベッセントの一喝効果で1週間で7円もハネ上がった。1か月半前のボトム値からは12円円高の市況となっている。9/7 にはゴールドマン・サックスが「円をロングにする根拠が強まった」という観測をブルームバーグに流し、ポジションを円買いに転換するトレード姿勢を示唆した。市場は来週 9/17-18 の日銀金融政策決定会合の結果と植田和男の会見を注視している。その場で単に政策金利を(織り込み済分)引き上げるだけでなく、長期的で持続的な金利引き上げの方向性をコミットし、長く続けたリフレ策(金融緩和)の止揚と脱却を宣言すれば、円相場は145円に向けて勢いよく高騰するだろう。
世界が注目するG20会合で、あれだけ過激に大立ち回りを演じ、啖呵を切り、掟破りの内政干渉に等しい政策要求を日本に突きつけた以上、日銀金融政策決定会合の後、市場がハプンせず、1ドル150円前後で固まるとか、円安に逆流するとかの事態になったら、米財務長官ベッセントの立場はない。大恥を掻いて権威失墜となる。9月中に145円、今年中に130円を目指して向かう図が、ベッセントが構想し思惑するドル円市場の進行だろう。円の政策金利の物理的数字よりも、日本の政策当局のマインドセットの方が重要なのであり、日本が金融緩和から金融引き締めに方針転換する事実の確定こそがベッセントの目的と課題なのだ。前回記事で分析したとおり、アメリカは財政危機が深刻化し、米国債売却による債券安・金利高を何より恐れている。日本が通貨円防衛のために保有米国債を売る事態を恐れ、それを阻止すべく、市場を円高に振れさせようと全力を挙げている。そのために日本のリフレ政策を中止・廃絶させる圧力を渾身でかけている。
従来は、アメリカと日本の金融政策で齟齬はなかったのだ。アベノミクスの金融緩和策、すなわち日本円の(不正常な)低金利の固定と持続こそが、世界の株高を牽引する原動力であり、世界金融市場の活況を担保する源泉だった。その政策認識で日米は一致し共通していた。だが、今年になって風向きが変わり、アメリカの財政難が大きな不安要因として浮上、アメリカの債券安を食い止めることが金融政策のプライオリティの第一に位置づけられた。株高の環境保全よりも債券を守る体制構築の方が優先事項となったのである。米国政府の認識と判断が変わった。なので、円キャリートレードの資本循環にリスクとインパクトが生じても、背に腹は代えられず、米財務長官は米国債の防衛に集中しなければならないのだ。ゆえに、ベッセントは直截強硬に日銀に金利を上げろと迫り、リフレ策(金融緩和)は撤廃しろと日本に要求した。もし高市が従わず、抵抗してリフレ策に拘泥すれば、ホワイトハウスは高市おろしに出るだろう。CIAに支持率下げ工作を命じるだろう。
私は、歴史的円安のステージは終焉したと観測する。164円のドル高ピーク(円安ボトム)で終わった。今後は、150円を抜けて140円に向かう流れが加速し、その勢いのまま130円を見通す円高トレンドになるだろう。今回の転換点はベッセント・ショックと呼ばれるに違いない。そう予測する根拠は、購買力平価でのドル円の理論値である。検索すると様々な数字が出て来る。国際通貨研は1ドル106円と試算している。2年前の熊野英生のレポートにOECDの計算値を元に出した試算値があり、1ドル93.7円と推計している。購買力平価の指標に照らして、実勢のドル円レートがあまりにも乖離していると指摘する議論は多かった。また、購買力平価の理論値に対して円の実勢値が異常に安くなり、ギャップが広がったのは、2013年の黒田バズーカ以来であると熊野英生は解説している。その分析を公理として敷衍すれば、日銀が今後金融引き締めを遂行することで、為替は120円、110円と円高に向かう展望が見えるだろう。惰性で長期続けた金融緩和が異常な失策だったのであり、日本のマクロ経済を病体にしていたのだ。
円安の運動が止まり、140円→120円→100円と円高に是正されるとどうなるか。立ちんぼを買いに来る外国人観光客が減るだろうし、外国人富裕層向けにつり上げた東京のマンション価格も下がるだろうし、輸入原材料コストが下がって食料品価格も下がるだろうし、電気料金やガソリン価格も下がるだろう。この4年以上、輸入インフレによる物価高で悩まされ、生活レベルを落としてきた庶民の暮らしに、人心地つける安心の地平が訪れるはずだ。原油や輸入原材料や輸入食糧が高騰して苦しんだのは、世界中の国々が同じだが、日本の庶民はそこにリフレ策による円安インフレという猛毒の要素が加わり、二重苦というか、物価高が倍加してのしかかる厄禍を背負わされ、受難を耐えさせられてきた。4年前にアベノミクスの幕を閉じ、政策金利を上げていれば、これほど悲惨なインフレ疲弊はなかっただろう。倒産件数が17年ぶりの高水準で喘ぐ事態はなかっただろう。インフレが猛威を振るっているのに、日銀は「物価2%目標」の常套句を言い続け、黒田以来の緩和策をやめなかった。
日銀が金融緩和策をやめず、アベノミクス路線を固守し、ひたすら円安シフトを徹底したのは、金融市場に日銀マネーを大量投入するためであり、株高を促進するためだった。麻生太郎の意図と戦略に従い、株式市場の規模を拡大し、富裕層経済を繁栄させて “景気をよくする” ためだった。NISA口座を開設してタンス預金を株に替えた高齢資産家を後押しし、貧乏生活しながら給料の一部をNISAに積み立て、老後資金を作ろうとする若年層の幻想を支援するためだった。そのタンス預金高齢者の満足も、NISA貧乏若者の願望も、いずれ崩壊して泡となる可能性が高いと予想するが、彼らのNISA口座残高を増殖させる価値の源となったのは、経済学的なリアルは、物価高で喘ぎつつ二重に収奪された無資産の人々のお金である。異常なコストで輸入原材料や仕入食料品を購入させられ、経営破綻に瀕した中小企業の汗水たらして得たお金である。価値を移転させているだけだ。それが株式市場が4倍に膨らんだ手品の仕掛けだ。無産者層の夢と人生を食い潰しながら、資産家・資本家が儲ける金融経済を肥満させている。
日本のマスコミ報道は、ベッセントの日本への要求について中身を捻じ曲げて報道している。ベッセントはストレートに日銀の金利引き上げを要求し、長期に続く金融緩和策を批判し、為替を円高方向に是正せよと主張しているのに、日本のマスコミはそれを歪曲し、ベッセントは高市の「積極財政」を批判しているのだと報道している。ベッセントが指弾する「日本のリフレ政策」の意味を、高市の「積極財政」だと決めつけ、日銀の低金利・金融緩和から焦点を逸らしている。意図的にその言説工作をやっている。その動機と目的は一つで、高市の食料品消費減税策を潰すためだ。日本のマスコミは、もう何年も何十年も前から、ずっと消費税増税に賛成し、消費税増税で財政再建しろと扇動し続け、政党が選挙で繰り出す消費税減税策に反対してきた。将来世代に借金を残すなと刷り込み続けてきた。松原耕二がその筆頭で象徴と言えるが、NHK含めすべて同じであり、まさに森永卓郎の言う「ザイム真理教」の司祭の役目を果たしてきたと言える。消費税減税の政策や公約を目の敵にし、世論調査を駆使してその否定に躍起になってきた。
マスコミは、ベッセントの要求と圧力を神風と捉え、意味をスリ換え、ベッセントは「積極財政」を叩いているのだと言う。ベッセントが批判する「リフレ策」とは「積極財政」のことだと歪曲し、視聴者を騙して錯覚させている。矛先を消費税減税に向ける世論操作を狡猾に行っている。食料品消費減税は年5兆円の財源を要する。が、5兆円だった支出規模が10兆円に倍増した防衛費についてはマスコミは何も言わない。防衛費については松原耕二は「財源を示せ」とは言わない。素通りだ。F-35やトマホークは積極容認。庶民経済の福利平癒に資する政策についてのみ、目を瞋らせて攻撃と排除の標的にし、無駄なバラマキだ、将来世代へのツケ回しだ、選挙目当ての人気取りだと罵倒する。インフレ禍に喘ぐ弱者庶民の生活を救済する政策は悪として貶め、アメリカから武器を買い戦争の準備をする政策は善として意義を宣伝する。毎晩毎晩、公共の電波を使い、参謀系や新自由主義系をレギュラー出演させてプロパガンダに終始し、視聴者の洗脳工作に余念がない。
そして、日銀が政策金利を上げれば住宅ローンの返済が厳しくなると言い、金利引き上げを悪印象化して視聴者に警戒感を植え付ける。だが、その販売住宅なるものは、新築マンション(首都圏)の平均価格が1億6400万円で、中古マンション(東京23区)の平均価格が1億2700万円だ。誰がこんな高額物件を購入できるのだろう。限られた一握りの富裕層の資産保有ではないか。日本の給与所得者の平均年収は478万円で、うち約4割を占める非正規は206万円である。30代の共働き夫婦の世帯収入は850万円。1億円の住宅を購入契約する場合、金融機関の審査基準(返済負担率35%)によってローン上限は7000万円となり、頭金3000万円以上が必要となる。頭金も返済も、親が資産家でない庶民の30代にとっては不可能な金額だ。5000万円のローンでも、35年固定で毎月返済が18万円に及ぶ。住宅の値段は途方もなく騰がった。今の日本にはわれわれの時代のマイホームの概念はない。外国人富裕層(特に中国人)か準富裕層のパワーカップルの資産物件だ。
それなのに、NHKなどテレビ局は、恰も普通の30代夫婦が(嘗ての時代と同じように)住宅購入を検討し、物件を探しているような映像を見せ、誰でもその経済生活の境遇にあるように錯覚させている。一部を全体化して虚像を見せている。金利が上がれば住宅ローンがという言説は庶民には無意味で、庶民とは縁遠い世界の話だ。むしろ、円高になり輸入資材コストが下がった方が、新築住宅を欲する側の利点は大きいだろう。円高になれば間違いなく(異常に高騰していた)不動産の相場は下がる。そうなれば賃貸住宅の家賃も下がる傾向になるのであり、一般庶民の住宅事情にとっては希望の曙光となる。富裕層や外国人以外の、日本の中低所得者層にとっては、住宅経済についても円高の方がありがたいのだ。が、高市・麻生の円安路線に忖度し同調するマスコミはその経済的真実を言わない。日銀の利上げを脅威のように言う。マスコミは、自身もタワマンに住む準富裕層であり、富裕層側の論理と視点で、すなわち高市・麻生をエンドースする立場で経済を説明する。その利害を持った身分階層だから。
中小企業の借入負担増についても、一言いえば、今は中小企業全体の7割が利益ゼロ・赤字の経営状態にあり、すなわち法人税免除の状態で、こちらの方を何とか改善しなくてはいけない。元請け大企業が仕入原価(納入単価)を無理に過剰に引き下げ、中小企業に利益が出ない新自由主義的構造に固めたのが原因で、その冷酷な慣習が続いたために日本経済は活力を失った。萎縮と停頓と諦惰に次第に嵌り、時間の経過と老化と共に公的補助金に頼る経営体質になった。東京以外のすべての経済活動の地表がラストベルトに変じた。金利のある経済が普通の経済であり、中小企業が銀行借入して設備投資し、経営を拡大し、地域社会を潤すのが健全な経済である。その本来的で理念的な市場経済の姿に戻すことを根本から考えないといけない。