2026年8月17日月曜日

終戦81年 共産党が各地で宣伝/戦争防ぐ外交こそ 沖縄で小池書記局長 ほか

 81年目を迎えた終戦記念日の15日、各地で日本共産党や市民・平和団体が反戦・平和を訴えました。
 埼玉愛知和歌山島根青森における宣伝活動の様子を紹介します。

 併せて同日「戦争防ぐ外交こそを」と訴えた共産党の小池晃書記局長山添拓政策委員長の様子を紹介します。
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終戦の日 共産党が各地宣伝
                    しんぶん赤旗 2026年8月16日
 81年目を迎えた終戦記念日の15日、各地で日本共産党や市民・平和団体が反戦・平和を訴えました。



戦争は繰り返さない 埼玉で塩川氏ら



「戦争する国づくりノー」と訴える、(左から2人目から右へ)塩川、梅村、板橋の各氏ら=15日、埼玉県川口市




 日本共産党の塩川鉄也衆院議員と梅村早江子元衆院議員は15日、埼玉県川口、さいたま両市で宣伝し、「再び戦争を繰り返さないために、戦争する国づくりを進める政治の転換を」と呼びかけました。板橋ひろみ県議予定候補や市議・予定候補も訴えました。

 塩川氏は、高市政権のもとでの大軍拡や非核三原則の見直しなどの動きを批判。「戦前から侵略戦争と植民地支配に反対を貫いてきた共産党だからこそ、市民と力をあわせて憲法9条を生かす平和な日本をつくるために頑張ります」と訴えました。
 梅村氏は、埼玉でもペンライト集会が広がり、高市政権の支持率は下がっているとして、「総選挙からたった半年で、みんなの力が情勢を変えている。もっと声を上げよう」と呼びかけました。
 訴えを聞いた30代の伊東あつこさんは「今の政権は戦争をしたがっている気がするし、やばい法案がどんどん通されて、戦前のような嫌な空気を感じます。護憲派の中でも共産党には特に共感することが多いし、国民に寄り添ってくれる。応援しています」と話しました。

平和憲法生かす外交を 愛知で本村氏ら




平和を求め、改憲ストップを訴える(左から)須山、本村両氏=15日、名古屋





 日本共産党愛知県委員会は名古屋市熱田区の金山駅前で終戦の日宣伝に取り組み、本村伸子前衆院議員、須山初美党県副委員長らが訴えました。
 本村氏は、侵略戦争でアジアで2000万人以上、日本で310万人以上が犠牲になったと述べ、犠牲者への哀悼と、戦争で苦しみ続けてきた人々への見舞いの言葉を送りました。そのうえで、高市政権のもとで進められる改憲発議や9兆円に上る軍事費、非核三原則見直しの動きを批判。若者の行動は希望だとし、「みんなの声には力があります」と力説。平和憲法を生かした外交で日本とアジアの平和を築こうと呼びかけました。
 須山氏は、戦時中、愛知が軍需産業の集積地として繰り返し空襲を受けたにもかかわらず、高市政権は愛知を防衛産業で成長させようとしていると指摘。「愛知を二度と戦争の標的にさせない」と力を込めました。東南アジア諸国が外交で戦争を防いでいると紹介し、「戦争だけは絶対に嫌だという幅広い皆さんと力を合わせ、平和の本流を前に進めていく」と訴えました。

平和とくらしを守ろう 和歌山  



 宣伝する支部・後援会員ら=15日、和歌山市



 和歌山市の日本共産党支部・後援会は、市内各地で奥村規子県議、森下佐知子、南畑幸代、坂口多美子の3市議、松坂みち子県議候補、中村あさと前市議とともに「平和とくらしを守ろう」と訴えました。
 県議補選和歌山市選挙区(9月4日告示、13日投票)で奮闘する松坂氏は、アジアで2000万人が犠牲になった日本による侵略戦争で、日本軍のなかにもPTSD(心的外傷後ストレス症)により81年たっても戦争が終わっていない人がいることや、中国残留孤児2世3世の苦しい生活、被爆の実態を報告し「二度と再び戦争を起こしてはならない」と力説。長距離ミサイル配備や自衛隊基地の地下化など「日本が現実に戦争の準備をすすめている」と告発し、平和とくらしを守る日本共産党を大きくと訴えました。

米国のいいなりやめよ 島根



訴える尾村県議(左から3人目)=15日、松江市



 松江市では、尾村利成島根県議、たちばなふみ、佐野みどり両市議らが街頭に立ち、不戦の誓いを述べました。
 尾村氏は、高市政権が敵基地攻撃能力の強化、軍事費の拡大、武器輸出全面解禁、非核三原則の見直しなどアメリカいいなりの「戦争する国づくり」を進めていると批判。「戦争準備ではなく、憲法9条を生かした平和外交にこそ力を注ぐべきだ」と訴えました。
 たちばな、佐野の両氏は「高市政権の危険な政治に立ち向かう市民の運動が各地で起こっていることは希望」と語り、憲法を守り生かす決意を表明しました。
 出雲市では大国陽介県議、吉井安見市議が街頭宣伝しました。

改憲食い止めるため 青森 平和集会、高橋氏あいさつ

デモ行進でアピールする参加者=15日、青森市

 青森市の青森駅前公園では「戦争する国づくりストップ! 戦争ではなく平和なくらし! 青森市民平和集会」が開かれ、146人が参加しました。
 青森県九条の会など10市民団体と日本共産党、社会民主党、立憲民主党、いのちの党の4政党の共催です。
 県九条の会の木下武共同代表は、高市政権のもとで国の形が変わりかねない歴史的分岐点にあると指摘。「憲法を守る一点で手をつなぎ、改憲を阻むためにみんなで進みましょう」と呼びかけました。
 各政党によるリレートークが行われ、日本共産党からは高橋千鶴子元衆院議員が連帯あいさつ。憲法9条を政治に生かすことこそが必要だとし、「これまでも改憲を食い止めてきた私たちの力に確信を持ち、よりいっそう力を合わせましょう」と決意を語りました。
 参加者は集会アピールで、歴史に学び同じ過ちを繰り返さないために「市民の力」でさらに奮起することを確認。炎天下の中心街をデモ行進し、「戦争準備の大軍拡は許さない」「平和と暮らしを守ろう」と声を上げました。


戦争防ぐ外交こそ 終戦81年 各地で共産党 沖縄 小池書記局長
                      しんぶん赤旗 2026年8月16日

終戦記念日にあたり街頭演説する小池書記局長(中央)と、赤嶺政賢前衆院議員(その左)、大山氏(右端)=15日、那覇市

 日本共産党の小池晃書記局長は、戦後81年の終戦記念日となった15日、那覇市内で街頭演説しました。「沖縄を二度と戦場にしない。憲法9条を生かし沖縄を平和の発信地にすることを誓い合おう」と訴え、沖縄県知事選(27日告示、9月13日投票)での玉城デニー知事3選と、沖縄統一地方選での党19予定候補全員勝利で「基地のない平和で誇りある豊かな沖縄を一緒につくろう」と呼び掛けました。

 小池氏は、高市早苗首相が、沖縄戦の「慰霊の日」に、南西諸島を「防衛の最前線」と位置づけ軍事体制強化を宣言したと批判。同諸島に長射程ミサイルを配備すれば標的になるとして「沖縄を本土防衛の『捨て石』にするのか」と批判しました。
 辺野古新基地が完成する展望はまったくない上に、万が一新基地ができても、県内に「長い滑走路」が確保されない限り普天間基地(同県宜野湾市)は返還しないというのが米国の方針だと指摘し、「県民を愚弄(ぐろう)するにもほどがある」と批判。「やるべきは普天間基地の無条件撤去だ。住民の土地を奪ってつくった国際法違反の基地なのに、なぜ代わりの基地を差し出さなければならないのか」と述べ、デニー知事と党19予定候補勝利で「普天間基地即時閉鎖・撤去、新基地建設ストップの県民の総意を突き付けよう」と呼び掛けました。
 大山とも子東京都議団長も駆け付け、平和を守る決意を訴えました。

東京 山添政策委員長




訴える山添拓政策委員長。右は原のり子都議=15日、東京・新宿駅東口



 終戦から81年の15日、日本共産党の山添拓政策委員長は東京・新宿駅前で、原のり子都議とともに「全国各地で戦争反対、憲法を守れ、9条を守れと声を上げるみなさんとともに行動し、戦争のない平和な世界のために全力を尽くす」と訴えました。
 山添氏は、「戦争は人の手によって起こされてきた。人の選択によって戦争を起こさせないことが、いま求められている」と訴えました。
 抑止力とは常に相手を上回る軍事力で相手を脅すもので、際限なき軍拡競争に陥ると指摘し、唯一の戦争被爆国日本が核抑止力にしがみつくなどもってのほかだと強調。高市政権が武器輸出全面解禁など軍事を経済の柱に位置づけたのは「戦争で経済成長する国を目指す死の商人国家にほかならない」と批判しました。
 軍事に予算を注ぎ込めば暮らしや福祉、教育などが後回しにされると指摘。長射程ミサイルが配備された熊本では、エアコンがなく避難所が開設できなかった地域もあったとして「政治が優先課題を誤っている」と述べ、戦争準備ではなく憲法を生かした外交こそ必要だと訴えました。
 原氏は「戦争は突然始まるのではない。ひたひたと日常に入り込み、ものを言えなくさせる」と述べ、高市政権の大軍拡のもとでこそ戦争反対の声をあげることが大事だと訴えました。

反省もお詫びもない高市式辞/高市戦争推進内閣を潰そう(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の2つの記事を紹介します。
 1番目の記事では全国戦没者追悼式の高市式辞の問題点を指摘しています。
 その問題点は全面に渡っているので要約は省略します。
 2番目の記事では、日本は1945年8月14日にポツダム宣言を受諾し、翌15日にその旨を国民に伝えました。その後日本はGHQによる占領下に置かれました。
 GHQの実務はG2=民政局が主導し、その下で日本の民主化が急速に進み平和憲法が制定されました。
 しかし1947年にGHQの実権が突如G2=参謀2部に代わると、「民主化」という要素がなくなり、平和憲法とは対立する「再軍備」が進められるようになりました。
 米国の占領政策が右翼化し日本の政府に対して対米国従属が強いられました。植草氏は、米国従属の旗頭になったのが吉田茂と岸信介であり、その延長線上に現在の高市内閣があると指摘します。
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反省もお詫びもない高市式辞
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年8月15日
ポツダム宣言受諾が国民に発表された1945年8月15日から81年が過ぎた。
政府の全国戦没者追悼式が開催され、高市首相が式辞を述べた
「反省」の言葉はなく「アジア諸国の人々に損害と苦痛を与えた」の表現もなかった。
高市氏は「今日のわが国の平和と繁栄は、戦没者の皆さまの尊い命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは決して忘れません。改めて、衷心より、敬意と感謝の誠をささげます。」と述べた。

1995年の村山談話の表現と比較してみよう。村山首相は次のように述べた。
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」
このことについて村山首相は「疑うべくもないこの歴史の事実」と表現した。

式典は戦没者追悼式である。高市氏は戦没者として
 1.祖国の行く末を案じ、愛するご家族の幸せを願いながら、戦場にたおれた方々
 2.広島と長崎での原子爆弾投下、各都市での爆撃、沖縄における地上戦などにより
  犠牲となられた方々
 3.終戦後、遠い異郷の地で亡くなられた方々
を明示した。しかし、これらの人々が亡くなった原因に言及しない。

この点で村山首相の談話は明確だった。原因について
わが国が、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んだ」こととした。
村山首相は、この歴史の事実を踏まえて
「わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。」と宣言した。
歴史に向き合い、非を非として認め、反省し、お詫びするとともに未来に向けての決意を述べた。これこそが、追悼式での式辞にふさわしいものだ。

戦争で亡くなられた人々の大半は

「わが国が、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んだ」ことによって本人の意思に反して犠牲になった方々だ。
その犠牲者の多数は日本人でないアジアを中心とする外国の人々である。日本が国策を誤り、戦争への道を歩んだために、他国の市民も多数犠牲になった。
その最大の責任は日本にある。

日本の戦争責任に向き合い、反省し、お詫びをすることによって和解が成立する。
そして、二度と「過ち」を繰り返さぬことのないよう、不戦の誓いを確認することが求められる。
だが、高市氏の式辞には最重要の事項が脱落している。過去の「過ち」についての言及がない。「反省」の言葉もない。近隣諸国に対する「お詫び」の言葉もない。

極めつけは次の言い回し。「戦争の惨禍を、二度と繰り返させない。」戦争の惨禍を招いた責任ある当事者は日本政府であるから、「繰り返させない」ではなく「繰り返さない」でなければおかしい
「繰り返させない」は戦争の惨禍を招いた責任を「他者=他国」に転嫁するもの。
これでは国策の誤りによって意に反して命を奪われた人々がまったく浮かばれない。

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高市戦争推進内閣を潰そう
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年8月15日
日本は1945年8月14日にポツダム宣言を受諾。翌8月15日にポツダム宣言受諾を国民に伝えた。そのときから81年の時間が経過する。
45年まで続いた戦争を実体験として記憶する者が著しく減少している。

敗戦後、日本は新しい憲法を定めた。憲法制定にGHQが深く関与したことは事実。
しかし、日本人だけに任せて良い憲法が制定されたとは思われない。
GHQの強い指導力があったおかげで良い憲法が制定された。日本の世界遺産である。
憲法制定を主導したのはGHQのGS=民政局。GSはその後、GHQでの主導権を失う。
GSに代わって主導権を握ったのがG2=参謀2部。この部分が決定的に重要だ。
1947年に歴史は断裂している。トルーマン・ドクトリンによって米国外交が大転換した。

これに連動して米国の対日占領政策も大転換した。
1947年まで日本の占領政策を主導したGSを米国Aとする。
47年以降、GHQ主導権はGSからG2に移行した。これを米国Bとしよう。
米国Aと米国Bはまったく違う。米国Aが民主主義国家日本を創った。米国Bは米国Aと敵対し、民主主義国家日本を破壊した。

日本国憲法制定に大きな影響を与えたのは米国A。だが、米国Bはこれが気に入らない。
現在の米国は米国B。だから、日本国憲法は邪魔な存在。このことを私たちは知らねばならない。
「戦後民主主義」の時代は1947年を境に終了した。
GHQトップに位置したのはダグラス・マッカーサー。マッカーサーは米国大統領就任を目指した。トルーマン大統領とは犬猿の仲だった。
このために、GHQ占領政策の転換には時間がかかった。47年から52年にかけて時間をかけて路線転換が実行された。

マッカーサー自身もトルーマンによって解任された。米国Aは米国本国において「排除の対象」とされた。
米国Aは「ニューディーラー」である。米国は「ニューディーラー」を共産主義者として排除の対象にした。だから、米国Bは日本国憲法を嫌う。日本国憲法は忌み嫌うべき米国Aの置き土産なのだ。日本国民はこの「ねじれ」を知らねばならない。

戦後民主主義は1947年に終焉している。米国は47年の日本国憲法体制の日本を忌み嫌っている。
重要なことは日本の主権者国民が47年までの戦後民主主義を支持するのか、それとも、47年以降の対米隷属日本を支持するのかである。

平和・人権・民主主義を基本に据えた戦後民主主義。
反・戦後民主主義は、平和主義否定、人権軽視、反民主主義である。
戦後民主主義の影響を受けたいくつかの良い政権が誕生した。片山哲内閣、芦田均内閣、石橋湛山内閣、鳩山一郎内閣だ。しかし、これらの内閣は米国Bと衝突した。
米国Bはこれらの内閣を忌み嫌い、殲滅した。

米国が新たに日本に創作した政権は対米隷属政権。その旗頭になったのが吉田茂と岸信介である。その延長線上に現在の高市内閣がある。高市内閣の根本は対米隷属。米国は日本を戦争をする国にしようとしている。
この方針に絶対服従しているのが高市内閣である

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冷房設置の避難所はわずか2割/「支援金最大300万円」 全然不足倍増へ

 熊本地震から2週間が経ちましたが、いまだに断水は3万戸超で避難所の8割はクーラーなしの有様で、災害関連死が懸念されます。
 高市首相は先にごく短時間現地を訪問しご丁寧に短いPR動画を発表して何しに被災地に行ったのかと大炎上しました。
 NHKなど無批判偽善報道ばかりのなか日刊ゲンダイが健闘しています。
 同紙の下記の2つの記事を紹介します。
・冷房設置の避難所はわずか2割…熊本地震で高市首相はPR動画以外に何をしたのか
・熊本地震から2週間…被災者生活再建「支援金最大300万円」では全然足りない、

注)1番目の記事の中で、避難所から宿泊施設などへの2次避難行うことの問題点について ジャーナリストの鈴木哲夫氏が指摘しています。
 それらの指摘は尤もですが、ザコ寝状態の避難所から宿泊施設などへの2次避難』は当面の関連死を防止するために不可欠であり「緊急避難的対応」です。
 従ってその後の生活再建のための勤務や農業従事などへの利便性に対応した「第3次避難」を別途に考える必要があるという指摘であると理解します。
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冷房設置の避難所はわずか2割…熊本地震で高市首相はPR動画以外に何をしたのか
                          日刊ゲンダイ 2026/08/13
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 熊本地震から2週間がたったが、いまだに断水3万戸超、避難所の8割はクーラーなし。災害関連死が懸念されるが、この内閣はこれまでの反省を生かしているのか。
 やらせのようなPR動画だけが話題になり、NHKも無批判、偽善報道ばかり。問われているのは首相の資質
  ◇  ◇  ◇
「被災地の経済再生に向け、観光需要の回復や風評被害の払拭が重要だ」
 最大震度7を記録した熊本地震の発生から2週間が経過 ─。高市首相は12日、非常災害対策本部会議でこう話し、対策の検討を加速するよう指示を出した。熊本県内では、地震発生に伴う宿泊キャンセルなどによる被害が計約60億円にも上るとみられており、夏休み期間中の観光業界にとって大打撃。風評被害の払拭も重要な課題ではある。
 ただ、一方で、今この瞬間も猛暑の中、クーラーがなく、水も不足する厳しい環境下で避難生活を強いられている被災者が大勢いる。観光需要回復、風評被害払拭も大事だが、まずは苦しむ被災者一人一人に寄り添う対策を何よりも優先すべきではないか。
 避難者は発災当初から減りつつあるとはいえ、11日時点でまだ3700人超。断水は3万戸以上に上る。
 大震災が起きるたびに問題視されるが、段ボールベッドや仕切りのない避難所もあり、いまだに床に敷いた毛布の上で雑魚寝を強いられている人もいる。
 そんな状況に加え、猛暑が被災地に追い打ちをかけている。
 熊本県で避難所に指定された小中学校の空調設置率は20.9%で、8割に冷房が未設置。車中泊をしていた70代女性が熱中症の疑いで亡くなったことも分かり、「災害関連死」とみられている。
 10年前の熊本地震では直接死50人に対し、災害関連死は、4倍以上の228人。今後、重視すべきは災害関連死をいかに食い止めるか、という点だ。

見当外れな「2次避難」推進
 しかし、高市の対応はどうも見当が外れている。3日、視察先の熊本県氷川町の中学校で被災者と面会した際、避難所から宿泊施設などへの「2次避難」を進める考えを伝達。「町外のホテルや旅館を借り上げ、順次移ってもらえる対応をしている」と説明したそうだ。確かに、避難所からホテルや旅館に移動すれば、劣悪な環境からは解放されるだろう。しかし、そこには重要な視点が抜けている。
「シン・防災論」の著者で、ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。
2024年の能登半島地震では、2次避難によって高齢者が慣れない土地で孤立し、ストレスで既往症を悪化させたり、コミュニティーが崩壊したりする問題が多発。結果的に、災害関連死につながったケースも見られました。また、現役世代でも仕事を持つ人は地元を離れるのは難しい。能登半島地震の時に被災者に取材すると、多くの人がホテルなどに2次避難するよりも、最寄りの避難所の設備を充実させてほしいと言っていました。そのためには、段ボールベッドや間仕切りといった防災グッズを各避難所に行き渡らせることが重要ですが、そうはなっていない。いまだに国の防災対策は縦割りなため、一元的で機動的な意思決定ができない。結果、満足な避難所を整えることが出来ていないのです」
 加えて今回、高市政権は初動から対応を誤っていたフシもある。
10年前の熊本地震では、政府と県が一体となった『K9(ケー・ナイン)』という対策本部を現地に設置し、うまく機能した成功事例がありました。これは、現場に『小さな政府』をつくるようなもので、意思決定を迅速にし素早い災害対応を実現したのです。能登半島地震でも活用されたのですが、今回、発災当初に高市政権はこうした組織を立ち上げなかった。過去の成功体験を生かせなかったわけです。加えて、現地入りのタイミングも早すぎた。総理が現地に入るだけで県警の警察官数百人が警備に動員され、多くの県庁職員もその対応に追われます。結果として、ただでさえ人手不足の現場のリソースを奪うことになった。現地入りするにしても、発災から2~3週間はあけるべきだったと思います」(同前)

撮影のための視察か
 その視察だって、一体何をしにいったというのか。はなはだ疑問だ。
 3日の熊本県氷川町の氷川中学校での視察は小1時間。現地で取材したジャーナリストの田中龍作氏によれば、高市は校長室で被災者と意見交換などを行ったが、避難所になっている教室の視察はわずか3分程度だったという。
 そもそも、高市が視察した氷川中は、意見交換した校長室と避難所の教室はクーラーが設置されていた。教室には段ボールベッドも用意されていて、環境が整った避難所である。
 ところが、車で5分程度しか離れていない鏡小学校で避難所となっていた体育館には、クーラーも段ボールベッドも間仕切りも当時、設置されていなかった。
 本来、被災地の実態を知るために、高市はより過酷な環境を見るべきではなかったか。田中氏によれば、地元住民からは「なんで厳しい環境の鏡小を視察しないのか」といった声が上がったという。わざわざ、環境が整った避難所に向かったのは「マスコミに劣悪な環境を見せれば、防災対応の失敗を全国にさらすことになる。だから、あえて鏡小を避け、氷川中を視察したのではないか」(田中氏)。こんな見方が出てきても不思議ではあるまい。
 一方、政権寄りのNHKは「地元の理容店が避難所で散髪のボランティア」「無料で使える洗濯機設置」なんて美談ばかり報じているが、これじゃあ現実を伝えない偽善報道ではないか

高市首相ならやりかねない
 内閣支持率の下落傾向を気にしたのかは知らないが、こんなPR動画は被災地の政治利用に他ならない。高市は首相の資質自体を問われてしかるべきだ。
 法大名誉教授で政治学者の五十嵐仁氏はこう言う。
被災地の政治利用でPR動画を作成・配信するなど普通では考えられませんが、高市首相ならやりかねない。なぜなら、彼女はネットやメディアのコントロールによる情報操作に、これまでも強い関心を示してきたからです。総務相時代には、政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局への『電波停止』に言及。先の国会では、昨年の自民党総裁選や今年の衆院選で、高市陣営が対立候補を誹謗中傷する動画の作成・配信にかかわった疑いも浮上しました。政権が掲げてきたインテリジェンス機能の強化と国家情報局の創設だって、市民とメディアへの監視を目的としたものとみられている。被災地対応の後手後手もさることながら、自己PRに利用しようという姿勢は看過できない。資質そのものを疑わざるを得ません」
 自己PRにばかり注力する高市に、この事態を乗り切れるとは思えない


熊本地震から2週間…被災者生活再建「支援金最大300万円」では全然足りない、倍増へ待ったなし
                         日刊ゲンダイ 2026/08/14




倒壊した自宅を見つめる男性=熊本県氷川町(C)共同通信社





 最大震度7を観測した熊本地震から2週間が経過した。県災害対策本部によれば、住宅被害は11日時点で約2万3000棟全壊、半壊ともに1000棟を超えており、3700人以上が避難を余儀なくされている。被災者の生活支援拡充は待ったなしだ。
 政府は10日、「被災者生活再建支援法」を県全域に適用すると発表。再建支援法は、住宅の被害程度に応じて支払われる「基礎支援金」と、住宅の再建方法に基づく「加算支援金」の2つからなる制度だ。例えば、自宅が「全壊」して「建設・購入」せざるを得なくなった場合、基礎支援金100万円と加算支援金200万円の最大300万円が支払われる
 しかし、世帯人数が1人の場合、支給額は4分の3に減る。自宅の損害割合が30%台の「中規模半壊」では、基礎支援金はゼロ。再建方法が「賃借(公営住宅除く)」なら、加算支援金は25万円に過ぎない。そもそも最大300万円支給のハードルが高いうえに、1人世帯は20万円足らずの支援にとどまる恐れがある。

立国維で改正案を共同提出
 問題は、支給上限額が20年以上も変わっていないこと。能登半島地震が発生した2024年1月、立憲民主党・国民民主党・日本維新の会が支援額倍増を求めて国会に提出した改正案は、継続審議の末に今年1月の衆院解散によって廃案となった。法案の筆頭提出者である中道改革連合の近藤和也衆院議員が言う。
「当時、岸田政権は法改正の代わりに臨時特例交付金制度を新設し、石川県6市町を対象に予備費から61億円を支出しました。対象地域や対象者が限定されるなど不完全でしたが、結果的に被災者の一部は再建支援金に加えて300万円が支給されることになりました。しかし、根本である再建支援法の支給上限額を見直す必要があることに変わりはない。現行は国と都道府県が支援金を半分ずつ負担していますが、国の負担を4分の3に引き上げれば、自治体の負担は現状のまま、支援金額を最大300万円から600万円に倍増できます。今後の国会で与野党一緒に整理していきたいと考えています」
 維新は高市自民と連立政権を組んでいるが、倍増に賛同していたのだから反対する理由はない。国民民主もしかりだ。
 今回の熊本地震でも、少なくとも臨時交付金のような支援拡充はマストだ。高市首相は「できることは、すべてやる」と言った以上、被災者置き去りなんて許されまい

17- 国内外に仲間なし…高市早苗の周りは敵ばかり/プーチン択捉電撃訪問の衝撃

 ロシアのプーチン大統領が13日、択捉(エトロフ)島に初めて訪れました。日本政府は北方領土は日本固有の領土という認識ですが、逆にロシアは日本がポツダム宣言を受諾したことによってロシア領になったと認識しているわけです。
 いわゆる北方4島に返還は、日露平和条約の締結に向けて特に安倍晋三元首相が精力的にプーチンと交渉を重ねましたが、残念ながら解決に至らなかったのでした。
 折しもトランプが始めた対イラン攻撃が長期化したことで中東情勢は混迷し、日本のエネルギー不安解消のメドが立たないことから、高市政権は5月下旬に経産省や外務省幹部をモスクワに派遣し、日本が権益を持つ「サハリン2」の取引拡大を目指しているのですが、その先行きが不透明になってきました
 元々プーチンは、対ウクライナ軍事作戦を開始後に日本が直ちに西側諸国と連帯して対ロシア経済制裁を発動したことに不満を持っていました。そんな中で外交的センスがゼロの高市氏がプーチンのエトロフ島訪問を型通り強く抗議するだけでは、「サハリン2」のロシア産原油・LNGの輸入拡大の実現性は危うくなるばかりです。

 日刊ゲンダイの下記の2つの記事を紹介します。
国内外に仲間なし…自業自得だが高市早苗の周りは敵ばかり
高市ノホホン“夏休み”にプーチン択捉電撃訪問の衝撃と暗雲
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国内外に仲間なし…自業自得だが高市早苗の周りは敵ばかり
                        日刊ゲンダイ 2026/08/15
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 その求心力の低下と孤立を見透かされたようなプーチンの択捉入り。国内では消費減税を巡り、党内、霞が関、大手メディアも敵ばかり。報復人事でますます敵をつくり、改造人事でもささやかれるのは不仲ばかり。夏休みに外遊をしない首相も前代未聞で、米国との間もすきま風
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 ロシアのプーチン大統領が13日、北方領土・択捉島に初めて足を踏み入れ、日本政府は虚を突かれた。
 北方領土は日本固有の領土である。高市首相は「断じて許容できない」と憤ったが、このタイミングについて、長引くウクライナ戦争で不満が高まるロシア国内向けのナショナリズム高揚が狙いなどと解説されている。
 だが、それだけじゃないだろう。高市が国内外に仲間なしで孤立状態にあることを見透かされたような訪問だ。
 イランと長年の友好関係があったにもかかわらず、米イスラエルの仕掛けたイラン戦争で日本は仲介役はおろか外交的に何のプレゼンスも果たせていない。高市が抱きついたトランプ米大統領とも最近は疎遠。6月のG7サミット後の会見で、トランプは高市を「私の一番のファン」扱いして軽んじた。求心力が低下し、外交的にも無力な高市をプーチンが恐れるはずがない。
 国内でも消費減税を巡って、自民党内、霞が関、大手メディアと敵ばかりだ。高市が「私の悲願だ」と2月の衆院選の公約に掲げた「2年間限定の飲食料品の消費税ゼロ」。レジシステムの改修期間を早めるため、税率は1%にしたうえで、1%相当分を低所得者に現金給付する「実質ゼロ」を、政府は来年4月から実施するつもりだが、閣議決定後も自民党内には依然、異論が渦巻く
 13日配信のTBSのユーチューブ番組で、石破茂前首相が秋の臨時国会に向けて反対派議員と連携していく考えを示したと報じられた。来月に税制改正大綱を決定後、政府は臨時国会に関連法案を提出する方針だ。党内はおとなしくまとまるのかどうか。

打算と方便の「錦の御旗」
 党税制調査会の「合同会議」での了承は、高市チルドレンを“動員”して乗り切ったが、税調の幹部会議では6割が減税に慎重だった。「全会一致」で党の最終意思決定を担う総務会もメンバー25人中、9人が欠席。そのひとり、財政規律派の「ラスボス」宮沢洋一前税調会長は「財源が赤字国債頼みになる恐れ」と、14日の読売新聞で警告を発していた。中谷元前防衛相、森山裕前幹事長、税調「インナー」を辞任した小渕優子元経産相などなど、反対派のベテラン勢は結構な数に上る
 軽減税率の恩恵を受けている大新聞は、もともと食料品だけの消費減税には反対だ。年5兆円の代替財源が決まっていないことが一番の問題だと指摘してきたが閣議決定時の社説の見出しは「消費税減税の強行は将来に禍根を残す」(日経新聞)、「消費減税と自民 これで責任政党なのか」(朝日新聞)と厳しかった。
 円安阻止で協調介入した米国もベッセント財務長官が消費減税に疑問を呈している。世論調査でも、賛成と反対の割合は5対4程度で、国民は財源なき減税をもろ手を挙げて歓迎しているわけではない。高市にとっては、支持率アップ狙いのあてが外れた
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「そもそも高市さんは仲間がいない中で、自民党内の打算を利用して首相までのし上がった人。消費減税について『公約を守ることが大事だ』という『錦の御旗』を持っているつもりだろうが、選挙に勝つための方便であって、これが高市さんの政策だと思っている人は誰もいない。で、党内や財務省が財源などに懸念を示すわけですが、それに対して『自分の言うことを聞かない者は人事で飛ばす』と粛清のような姿勢を見せているのが現状です」

「唯我独尊」相談相手も助言者もいない
 もちろん財務省が衆院選直後から、水面下で消費減税の実現阻止に動いていたのは間違いない。社会保障国民会議の議論を減税反対や、減税ではなく「給付付き税額控除」の前倒しへ誘導したりもしていた。
 そんな財務省を目の敵にした高市は、報復人事を断行。主計局長の事務次官昇進こそのんだものの、国民会議の事務局を取り仕切っていた主計局次長を東京税関長へと事実上“左遷”したのだ。社会保障制度に精通した財務省のエースを飛ばして、消費減税の制度設計ができるのか、参院は少数与党でもあるのに、臨時国会を乗り切れるのか。ムキになる性格の高市は、後先を考えずに動く
「それで永田町では、秋の臨時国会で消費減税の関連法案を成立させられず、行き詰まって高市首相が政権をブン投げるとか、いや、参院で否決されたら、2005年の小泉郵政解散のように、衆院の解散総選挙を打つ、などという話まで語られています」(野党関係者)
 今週も、ほぼ公邸に引きこもる首相は、内閣改造・自民党役員人事を練っているとされるが、これについてもささやかれるのは不仲説ばかり。「高市首相は鈴木幹事長の動きが悪いと嫌がっている」「高市首相は片山財務相に不信感を持っていて交代させたがっている」など、適材適所ではなく、好き嫌いで人事を動かす。これも党内に敵を増やす要因になる。
「当然、人事後は遠心力が働きますよ。萩生田氏を幹事長に引き上げるなどと言われています。旧安倍派を主流派として返り咲かせようという腹づもりだろうが、裏金や旧統一教会組が復権し、やり放題になってきたら、どうなるか。来年の統一地方選やその後のことを考えると、次の総裁選で高市首相の再選はないとなったり、自民党の評判が再び落ちる前に高市政権は潰さなければダメだという雰囲気になってくるのではないか。今度の改造人事はそんな試金石になるでしょう」(角谷浩一=前出)

焦燥感が見えたXの5連投
 孤立する首相の頼みの綱は米国だけだが、高市はトランプともすきま風来月、今年2度目の首脳会談を予定する米中が接近すればするほど、高市は孤立する
 外交オンチだからだろう。国会閉会中の夏に外遊を見送る首相は前代未聞だ。政治評論家の野上忠興氏が言う。
「とにかく高市首相は国民の目を徹底的に気にしている。つまり人気取りです。世論の支持が頼りなので、それが細れば焦る。外遊に関して言えば、高市首相がトランプ大統領にバカにされているというのは、欧州やアジア、中南米の国々にもバレてしまっている。外交ができないうえに、外交で得点を稼げない。人気取りにならないので行かない、行けないのでしょう。そこで、国内向けに消費減税で財務省と戦っている姿を見せて人気回復を狙っているわけですが、そんな高市首相の薄っぺらさに世論も気づいてきた。結局、唯我独尊なので、相談相手もいない、助言してくれる人もいない、人の言うことも聞かない。敵ばかりになるのは自業自得ですよ」
 そんな孤独な宰相の焦燥感が見えたのが、14日の高市のXだ。おこもり中の公邸で午後2時ごろから、ナント5件連続の投稿
<高市内閣は、国民の皆様が苦しむ「物価高対策」をないがしろにして、自らの政治的信念の実現を優先しているように見えるとのご意見があるようですが、それは私の認識とは異なります>
 としたうえで、「補正予算」や「電気・ガス料金支援」など、いかに高市内閣が家計を支援してきたかの具体例をずらずら並べ、延々と反論しているのだ。
 1本ずつの投稿がダラダラと長く、読むだけで一苦労。国民が切望する物価高対策をほったらかして、皇室典範改正や国旗損壊罪など自分が進めたいタカ派政策ばかりに邁進したと批判されていることがよほど悔しいのか。しかし、読み進めるほどに、ひとりよがりの言い訳にしか聞こえない。ますます世論は離れていくんじゃないか。
 自己愛が強すぎ、被害妄想に取りつかれているようにも見える。これがこの国の首相……。明らかにヤバい。


高市ノホホン“夏休み”にプーチン択捉電撃訪問の衝撃と暗雲
                        日刊ゲンダイ 2026/08/14
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 日本政府と右往左往のドタバタだが、こうなることは見えていた。怪しい安倍蜜月外交の検証もないまま、実効支配を許し、情報収集も問題だらけ。
 戦争で対ロ関係が冷え込む中、対中関係も悪化し、中ロは結託のプーチン訪問。問われる首相の危機対応
  ◇  ◇  ◇
 歴史を軽んじる者は物事の本質を見誤り、淘汰されるのが世の習いだ。15日は81回目の終戦の日。戦争を知る世代が右旋回を強める高市首相に対する警戒を強める中、あの男が動いた。4年超に及ぶウクライナ侵攻で手いっぱいとみられてきたロシアのプーチン大統領だ。13日、実効支配する北方領土の択捉島を訪問。前日に極東のサハリン州ユジノサハリンスクに入り、日本海などで展開中のロシア海軍太平洋艦隊による軍事演習を視察していて、ちょっと足を延ばしたとでも言わんばかりだった。
 プーチンの北方領土初訪問に政府はドタバタと右往左往するばかりだが、予兆はあった。12日に海軍幹部らと開いた会合で、対日関係について詳しく言及していたのだ。第2次大戦の結果、クリル諸島(北方領土と千島列島)がロシア領になったとする立場を改めて強調。「日本はウクライナでの出来事を口実に、紛争原因に深く踏み込まずに制裁を科した」と批判し、G7と足並みをそろえて対ロ制裁を継続する高市政権に矛先を向けた。
 そうして、13日正午を過ぎたころ、ロシア国営タス通信の報道を引用し、大手メディアがプーチンの択捉訪問を速報。大騒ぎになった。ところが高市は午前中から公邸にこもり続け、午後3時半に馳せ参じた市川恵一国家安全保障局長や外務省の船越健裕事務次官らと10分ほど面会。2022年5月にロシアが発表した入国禁止対象者リストに入った際は自民党政調会長の立場で、〈上等やないかいっ。招かれても行かんわい!〉とX威勢よく投稿していたものだが、政府のトップになったところで打つ手なし。ただただ報告を聞いていたのだろう。

関係修復の真っただ中
 それから約1時間後。午後4時半過ぎに公邸で応じたぶら下がり取材は3分だけだった。「北方領土は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土だ」と強調し、「2024年1月にプーチン大統領が北方領土を必ず訪問する旨を述べて以来、政府として大統領による北方領土訪問が行われないよう累次申し入れてきた」「日本の一貫した立場と相いれず、断じて許容できない」「強く抗議する」などと非難。「日本国内の対ロ感情を一層厳しくし、中長期的な関係回復を困難にした。ロシア側にはこのことの重大さを深刻に受け止めてほしい」と語気を強めてもいたが、プーチンの動きを把握したのは「きょうの午後」と言っていたから、政府の情報収集能力および官邸機能に疑問符がつく事態だ。
 その後、茂木外相はロシアのノズドレフ駐日大使を外務省に呼び出し、抗議したというが、コケにされ通しだ。茂木は7月下旬にマニラで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)関連外相会議でラブロフ外相と短時間接触したと明かしたが、クレムリンにすぐさま否定された。そうでなくても、米国のトランプ大統領が突き進んだ対イラン軍事作戦のあおりで中東情勢は混迷し、エネルギー不安解消のメドが立たないことから、高市政権はロシアとの関係修復へ傾斜を強めていたところでもあった。5月下旬に経産省や外務省幹部をモスクワに派遣。日本が権益を持つ資源開発プロジェクト「サハリン2」の取引拡大をもくろむが、不透明になってきた。

「スパイの巣窟」放置が回り回って自業自得
 それにしても、内閣支持率の急落に焦る高市にしてみれば、弱り目にたたり目だ。プーチンの択捉訪問は言うまでもなく計算ずくだとして、眼目は何なのか。
 北方領土問題の解決に前のめりだった安倍元首相は第2次政権を率いた18年の日ロ首脳会談で、歯舞群島と色丹島の引き渡しが明記された1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉加速でプーチンと一致したと喧伝。いわゆるシンガポール合意だ。しかし、プーチンは北方領土を1ミリも譲ろうとしなかった。にもかかわらず、海軍幹部との会合で安倍を引き合いに出し、高市について「立場に違いが見られる」とくさしたという。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。
「このタイミングでの択捉訪問は国内事情によるところが大きい。第2次大戦の戦果である島上陸によって、戦勝国であったことを誇示し、膠着するウクライナ戦争でも必ずや勝利を収めるとの宣言の意味合いがあります。9月に控える下院選対策の側面はあるものの、対日強硬姿勢を崩さない中国との結束強化の材料にしたいという思惑も透けて見える。8月31日から2日間、キルギスでSCO(上海協力機構)首脳会議が開催予定で、中ロ首脳会議もセットされています。北朝鮮への技術供与のバーターで派兵も燃料供給も頼るほど窮するロシアにとって、中国と並び立つことくらいしか強国アピールの手段がない。その点で言えば、米ニューヨーク・タイムズに〈日本はロシアのスパイの巣窟〉と報じられたのは、高市政権にとって苦々しかったかもしれません。結果、税関の目が厳しくなり、ロシアへの兵器部品の密輸は容易ではなくなった。プーチン氏が嫌がらせする動機には十分になり得ます」
 NYタイムズによる7月中旬の報道は衝撃的だった。ウクライナ侵攻直後に西側から追放されたロシアのスパイは、防諜も諜報も弱く、関連法制が整わない日本に移動。継戦に必要な物資を調達し、第三国を介してロシアに密輸していたという。そうした動きを探知したウクライナ当局が日本側に繰り返し情報を提供し、抑え込みを働きかけるも成果がなかったため、リークしたとの指摘もある。
 だとすれば、目をつぶってきた政権の自業自得。安倍後継を自称して女性初首相に上り詰めた高市には、安倍とプーチンの怪しい蜜月外交を検証し、対ロ外交を立て直すこともできまい。遠からず、こうなることは目に見えていた。拉致問題で対峙しなければならない北朝鮮は中ロを後ろ盾にし、もはや取り付く島もない

外交的孤立で米国隷従
 お盆のこの時期、時の首相は夏休みを取るのが恒例だが、高市は最大震度7を記録した「令和8年熊本地震」の発生などもあり、休暇を公言しないまま、開店休業状態。ノホホンと過ごしていた“夏休み”に想像だにしない衝撃が走り、垂れ込む暗雲にどう向き合うのか。常套句の「危機管理」がまさに問われる局面だが、期待する方がヤボだろう。
 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「戦後40年に際し、西ドイツのワイツゼッカー大統領は〈過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる〉と演説しました。これがそっくり当てはまるのが高市首相です。戦争加害を明確に認め、反省と謝罪を表明した村山談話をめぐり、〈私自身は当事者とはいえない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもない〉と国会で言い切った。30年前、30代だったとはいえ、代議士を務める見識はなく、広島や長崎の平和式典での言動を見る限り、今もって変わっていない。この国の歩みを振り返れば、きちんとした歴史認識を持たなければ、外交で立ち往生するのは当然。とりわけ高市首相の場合は外交的孤立が対米隷従に直結する。米国の言いなりで防衛力強化を急ぎ、放漫財政に由来する円安対処は日米協調介入であたり、日本版CIAの創設に躍起。戦後81年にあって、この国を米国の植民地にしようとしている。そう見えてなりません。こんな人物に国の舵取りを任せていいのか。冷静に見極めるべきです」

 15日は全国戦没者追悼式が執り行われる。例年になく厳しい局面にあって、高市はどんな式辞を述べるのだろうか。