2018年3月31日土曜日

北朝鮮は中国の核の傘に入り再生することを決断した(世に倦む日々)

 今回の中朝首脳会談が意味するものについて、「世に倦む日々」氏は次のように考察しました。

 北朝鮮が中国の核の傘に入ることで自らの安全が保障され、核を持つ必要がなくなり、それによって経済発展を実現し、最貧国の地位から脱し、韓国とのGDPの格差を縮めて行くことができる。
 その選択で捨てるものは、核と主体思想のプライドだけであり、そうすることで中国の核の傘に入ることができ、安全を担保することができる
 米国と国交正常化して軍事上の脅威を取り払える。
 金正恩はその合理的選択をしたのに違いない。

 実に斬新で鋭い考察です。
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北朝鮮は中国の核の傘に入る
- 金正恩の核放棄の意思決定は本物だ
世に倦む日々 2018年3月30日
北朝鮮は中国の核の傘に入る。この結論を最初に置くことは、今回の中朝首脳会談の分析と北朝鮮の動向予測にあたっての、いわばコロンブスの卵だろう。この視点と仮説で考えると、すべてが腑に落ちてよく理解できる。中国の核の傘の下に入れば、北朝鮮の安全は保障されるのであり、米国の軍事的脅威から自国を防衛することが可能で、自ら核を持つ必要はない。金正恩の意中はこの一点だと推察される。北朝鮮と中国の間には「中朝友好協力相互援助条約」と呼ばれる軍事同盟が結ばれていて、第2条には「いずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する」という規定がある。この条項は2010年に解釈変更され、北朝鮮が韓国に先制攻撃を行って戦争になった場合には中国は北朝鮮を支援しないと、そう留保の通告が中国側からなされたが、現在でも条約は破棄されず維持されている。新華社の報道によると、今回の中朝首脳会談で習近平はこう語っている。「我々は中朝の伝統的友誼を絶えず伝承していくべきだと何度も表明している。これは中朝両国が歴史と現実に基づき、国際・地域構造と中朝関係大局を踏まえて行った戦略的選択であり、唯一の正しい選択である。一時的なことによって変えてはならず、変わることはない」。

習近平の言う「中朝の伝統的友誼」とは、具体的には「中朝友好協力相互援助条約」のことを指すと考えるべきだ。森本敏がよく解説で言うように、中国は原則の国であり、原則に従って外交を動かす国である。つまり、この習近平の言葉は、中朝軍事同盟の再確認の意味と解釈してよいだろう。北朝鮮が核開発に奔走し、六カ国協議を一方的に離脱して以降、中朝の関係は冷え込んでいく一方で、中朝同盟の存在と効力も有名無実化の方向に流れていたが、7年ぶりに行われた中朝首脳会談を通じてこの盟約が再確認されたことは明らかと言える。28日の朝鮮中央放送の報道によれば、金正恩の訪朝要請を習近平が受諾したとある。このことは中国側の発表にはないが、何の根拠もなく国営放送がこのような報道をするはずはなく、4月の南北会談と5月の米朝会談の結果を見きわめた上で、習近平が平壌を訪問する幕があると考えられる。非公式の会談だったが、中朝双方のテレビ報道が示した今回の首脳外交は実に豪華絢爛で、中国による北朝鮮の歓迎ぶりとその演出が際立っている。これほど目を見張るもてなしを北京で受けたのは、昨年のトランプ夫妻だけだ。

豪勢で壮麗な歓待について、中国が北朝鮮問題で出番を回復するためだとか、存在感を示し直すためだとか、嘗ての中華王朝の皇帝が周辺蛮国の王に威厳を張る朝貢外交の再演だとか、そういう見方も間違いではないが、私が確信するのは、金正恩が中国に対して非核化をコミットしたということである。非核化とは核放棄のことだ。事前の交渉で非核化をコミットしている。だから中国はあれほどの歓待で応じたのであり、具体的にどういうプロセスで非核化を実現するか、米国に対してどう提案するか、その中身を習近平に伝えたのだろう。中国外交部の発表では、金正恩は、「(米韓が)われわれの努力に善意で応え、平和実現に向けて段階的で歩調を合わせた措置を取るなら、半島非核化問題は解決できる」と述べている。誰もが知りたいのは、その「段階的で歩調を合わせた措置」の内容だけれど、それについての構想の概略も、おそらく北朝鮮側から中国側に伝えられ、中国側がそれを諒としたのだろう。非核化のゴールとロードマップのラフ(=概略が示されたと考えてよく、それへの中国の関与と役割が要請され、この地域の責任大国を自負する中国が大いに納得し、中朝間でほぼ完全な合意が得られたと見ていい。

北朝鮮の非核化という問題は、米国だけでなく中国にとっても同じ外交課題なのである。北朝鮮が米国にコミットする非核化は、中身は中国にとっても同じであり、同じでなければならないものだ。中国の安全保障にとって容認できないもので、国連五大国の一としてこの地域を自らの管轄範囲と考える中国にとって、速やかに問題解決しなくてはならない懸案事項だった。われわれは、今回の問題を米朝間の紛争として捉え、米朝間の軍事衝突ばかりをイメージするが、紛争は国境を接し合う中朝間で起きていて、長年友好関係だった中朝が間一髪の危機的事態になっていたことを考えないといけない。中国は北朝鮮に核放棄を要求し、拒否する北朝鮮を経済制裁で締め上げ、生命線である石油の禁輸にまで及ぶという最終段階に至っていた。そしてどうやら、北朝鮮が音を上げるように降参し、非核化の意思を国際社会に示す決断に至ったのは、やはり中国による経済制裁が与えた効果が大きいのだ。金正恩は36歳。人生の大半を、緩やかに経済が豊かになってゆく平壌で送っていて、北朝鮮が飢餓で苦しんだ90年代は遠いスイスで留学生活を送っている。

平壌に物資が行き渡るようになり、自動車や高層ビルや携帯電話が日常の風景になったのは、ひとえに中国の経済発展のおかげであり、隣国経済のトリクルダウンの恩恵を受けたからである。中国の安全保障上の庇護があったから、国際社会からの圧力と制裁にも屈せず、金王朝独裁体制を持続することができた。中国の存在感の大きさというのは、若い金正恩にとっては決定的なものだろう。金正日の時代は、北朝鮮はとにかく米国だけをフォーカスして、生き残りのため、米国との直接交渉のみを目標として足掻いていた。米国による体制保証を得るために、米国からの軍事攻撃を避けるために、あらゆる術策をめぐらせて騒動し、なりふり構わず、わがままな幼児が暴れるように周辺国に面倒をかけ、国際社会を手こずらせてきたのが北朝鮮だった。六カ国協議から北朝鮮が離れたのが10年ほど前のことである。そこから世界は変化した。安保・軍事の面では米国の一極支配は変わらず、米国の軍事力が圧倒的である点は変わらない。だが、経済の面を見ると、米国の一極支配に中国が割って入る状況が明確になっている点は否めない。

だからこそ、南シナ海の問題でもASEANは米国の意向どおりには動かない。米国のアジアをコントロールする力は弱まっていて、米国と中国が支配を二分する現状に変わっている。今回、中国からの本格的な経済制裁を受けて、金正恩は初めて自らの核開発の意味と影響を知ったのだろう。観念的でなく、皮膚感覚で破綻を直観したのに違いなく、これ以上続けるのは不可能だと悟ったのだろう。もともと、北朝鮮の核開発・核武装は、米国からの体制保証を得るための交渉のカードだった。外交の手段だったのであり、核武装して核戦力を持つことが目的だったわけではない。もし、中国の核の傘に入ることができ、安全を担保することができるのなら、核を自前で持つ必要はなくなる。自らの核を放棄し、米国と国交正常化して軍事上の脅威を取り払い、その上で、中国の核の傘でガードしてもらえればいい。金正恩はその合理的選択をしたのに違いない。今後の半島統一に向けての韓国との交渉を考えても、そうした方が北朝鮮にとって得策で、韓国に主導権を渡さずに済む。韓国の統一攻勢に引き摺られずに済み、DPRK(=朝鮮民主主義人民共和国の独立を維持することができる。その根拠となる。

核を放棄した北朝鮮が生き残る道はそれしかなく、逆に言えば、そうすることで北朝鮮は悠々延命することができ、国際社会に復活して、平和の裡に経済成長を遂げることができる。北朝鮮が棄てるのは、核と主体思想のプライドである。今後は、韓国と米国のような関係を中国との間で取り結んで生きていくのであり、それによって経済発展を実現し、最貧国の地位から脱し、韓国とのGDPの格差を縮めて行こうと模索するのだろう。中国は日本海に出口を持っていない。日本海に接する自国領の土地がなく港湾がない。一路一帯は北極海航路も含む巨大な経済構想だから、当然、日本海から北へ伸びるシーレーンも習近平の戦略と視圏の中に入っている。すなわち、現在、インド洋のスリランカで起きている出来事が、北朝鮮の東岸で今後発生するかもしれない。南北会談と米朝会談が終わった後、習近平が平壌を訪問し、その将来の絵が見えてくるだろう。いずれにせよ、今回の北朝鮮の核放棄の意思決定は本物だ。この核放棄は、米国に対して約束するものであると同時に中国に対して約束するものでもある。中国の経済制裁の威力と恐怖を痛感した上での旋回に他ならない。

踏み込んで言えば、金正男の死は、「一粒の麦もし死なずば」の意味になった。金正男が生きていて、張成沢の宮廷クーデターが成功し、金正恩が排除されていれば、もっと早く、今回と同じ北朝鮮の方針転換が図られ、核放棄と米国の体制保証が実現し、中国的な改革開放がスムーズに進行していただろう。金正恩が中国に核放棄をコミットしたのは、金正男を暗殺し、後顧の憂いを取り去ったからだと、そう考えることもできる。

NHKの森友文書改ざん報道に圧力が

 NHKが「安倍政権寄り」であることはこれまでも指摘されてきましたが、決裁文書の改ざんを「書き換え」と呼び続けたNHKがようやく「改ざん」と言い換えたのも、安倍首相が改ざんと認めた後、すべてのメディアが「改ざん」と呼ぶようになってからでした。

 記事の内容や扱いを政権への打撃にならないように変更させる圧力はNHKの内部にも存在し、岩田明子記者を筆頭とする政治部が様々に報道に干渉していることも知られていました。折角のスクープ記事が結局日の目を見ないで没にされることもしばしばあったようです。

 29日、参院総務委員会NHKの今年度予算審議の席上、共産党の山下芳生議員が、NHK関係者からの内部告発と思われる文書が届いたとして、その文書を読み上げました。

 それは「ニュース7」「ニュースウオッチ9」「おはよう日本などのニュース番組の編集責任者に対し、NHKの幹部が森友問題の伝え方を細かく指示しているもので、具体的には「トップニュースで伝えるな」「トップでも仕方がないが、放送尺は3分半以内」「昭恵さんの映像は使うな」「前川前文科次官の講演問題と連続して伝えるな」というものでした。

 この指示の出元が官邸であるとまでは言いませんでしたが、ニュースを伝えること自体は禁止できないものの、そのインパクトを出来るだけ小さくしようとするための具体策で、まさに官邸の意向に沿ったものであるのは明らかです。

 かつて選挙報道で官邸が事細かにメディアに指示を出したことを思い起こします。
 NHKはいまでも国会の録画報道では、必ず首相の回答で締めくくるようにするなど、官邸の指示に忠実に従っています。
 LITERAの記事を紹介します。
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NHK森友文書改ざん報道に圧力が!
「トップで伝えるな」「昭恵さんの映像を使うな」「尺は3分以内」
LITERA 2018年3月30日
 安倍首相が放送法4条をはじめとする放送規制撤廃の動きを見せていることに関し、本サイトではきょう配信した記事で、森友文書改ざん問題の報道に対する民放テレビ局への圧力であると同時に、地上波番組の『ニュース女子』化を狙っていると報じた。

 放送法4条の“政治的公平”を盾にさんざんテレビ局に圧力をかけてきた方針から一転、今度は政権擁護とフェイクの情報を氾濫させよう──。改ざん問題で安倍首相が責任を取ることがなければ、この国のテレビは一気に骨抜きにされ、独裁が強化されることは必至だ。
 いや、じつのところすでにあるテレビ局は完全に骨抜きになっている。そう言わざるを得ない事実が明らかにされた。
 その内容は、公共放送であるNHKで、森友報道にかんして現場に幹部から圧力が加えられている、という内部告発だ。
 それは、NHKの2018年度予算審議がおこなわれた昨日29日の参院総務委員会でのこと。共産党の山下芳生議員は「NHKの権力の監視機能は著しく低下している」「政府からの独立が極めて弱い」と指摘した上で、「私のところにも、NHK関係者からの内部告発と思われる文書が届きました」と切り出し、その内部告発を読み上げた。

「『ニュース7』『ニュースウオッチ9』『おはよう日本』などのニュース番組の編集責任者に対し、NHKの幹部が森友問題の伝え方を細かく指示している」
「トップニュースで伝えるな」
「トップでも仕方がないが、放送尺は3分半以内」
「昭恵さんの映像は使うな」
「前川前文科次官の講演問題と連続して伝えるな」

「トップで伝えるな」というだけではなく「トップでも仕方がないときは3分半以内」と指示しているあたりから見ても、これはかなりリアリティが告発と言えるだろう。とくに、「前川前文科次官の講演問題と連続して伝えるな」という指示を考えると、これはここ最近の指示だと思われる。
 しかも、この幹部からの指示は、現場でも重く受け止められているものだということが放送を見ればわかる。

内部告発どおり、NHKは実際「改ざん問題」「前川前次官講演問題」を続けて報じず
 たとえば、前川喜平・前文部科学事務次官がおこなった公立中学校での授業に対し、文科省が教育委員会を通じ学校側を問い詰め、録音データの提出まで求めていた件をスクープしたのは、今月15日放送の『NHKニュース7』だった。さらに、トップニュースでは自殺した近畿財務局の職員が遺した「このままでは自分1人の責任にされてしまう 冷たい」というメモを紹介。つづけてこの前川授業圧力問題を取り上げていた。同夜の『ニュースウオッチ9』も同様だ。
 こうした報道には、テレビ業界をよく知る森達也氏が〈踏み込んだ報道〉〈たぶん凄まじい抗議が来ているはず。スタッフルームでディレクターやプロデューサーたちは息をのんでいます。どんどん褒めてください。激励してください〉と素早く反応。このツイートは現段階で1万3000件リツイート、1万5000件も「いいね」されており、多くの人がNHKの報道姿勢を応援。翌16日も『ニュース7』と『NW9』は改ざん問題と前川授業圧力問題を連続して伝えた。

 しかし、授業圧力問題で自民党の池田佳隆衆院議員と赤池誠章参院議員が文科省に「照会」をおこなっていたことを林芳正文科相が認めた20日の両番組の放送では、トップで改ざん問題を報じ、2つのニュースを挟んでから自民議員の関与を伝えた。自社のスクープの大きな続報だというのに、2番手では伝えず、わざわざ間を空けたのだ。これは、内部告発にある「前川前文科次官の講演問題と連続して伝えるな」という指示が実際にあったということではないのか。
 安倍首相が改ざん問題の報道に神経を尖らせていることは間違いなく、NHKの報道に官邸が難癖をつけた結果、幹部たちが現場に指示していたとしても不思議はない。だが、それ以前に、NHKに確実に存在するのは、安倍政権に不利になる情報を潰しにかかるという政治部の動きだ。

 実際、加計学園問題では、前川氏のインタビューをもっとも早くおこなったのはNHKだったが、これはお蔵入りになってしまった。一方でNHKは萩生田光一官房副長官(当時)の直接関与と安倍首相が開学時期を切っていたことを示す文書をスクープ。だが、これを最初に報じたのは、『ニュース7』や『NW9』といった看板ニュース番組ではなく、『クローズアップ現代+』だった
 じつは、このスクープは社会部の文科省担当記者のもので、報道する準備も整っていたのだが、政治部が横やりを入れ、国会閉幕後まで報道をずらされてしまったのだという。『クロ現+』での第一報となったのも、政治部が主導権を握るニュース枠で第一報をやるのを拒否したためだと言われている。

安倍首相が「改ざん」と認めても、最後まで「書き換え」と言い続けたNHK
 いまやNHKの政治部は、岩田明子記者を筆頭に、安倍官邸と距離を保つこともなく広報部隊と化している。公文書の改ざんという国家の根幹を揺るがす大事件が発覚したというのに、その姿勢はまったく変わっていないのだ。
 そのことを何よりも象徴するのが、「改ざん」を「書き換え」と言いつづけてきた問題だ。
 12日に財務省が「文書の書き換え」を認めると、多くのメディアが「改ざん」と報じるようになった。あの産経新聞でさえ、14日には「書き換え」から「改竄」に表現をあらためた。だが、読売新聞と日本経済新聞は「書き換え」と表記しつづけ、26日に安倍首相が「改ざんという指摘を受けてもやむを得ないのではないか」と答弁したことを受けて、27日に両紙とも「改ざん」に変更した。

 このことに対し、池上彰氏は今朝の朝日新聞で〈安倍首相が認めた途端に「改ざん」と“書き直す”。新聞社として恥ずかしくはないですか〉と批判。まさに池上氏の言うとおりだが、じつは、読売や日経が変更したあとも「書き換え」と言いつづけていたのが、NHKだ。NHKは27日午前のニュースでも「書き換え」と表現し、午後のニュースでようやく「改ざん」にあらためたのだ。
 NHKは「改ざん」に言い換える理由を“佐川氏の証人喚問の証言などから”と説明したが、読売・日経の朝刊を受けて言い換えたのはミエミエだ。つまり安倍首相が「改ざんもやむを得ない」と認めたあとも、問題を矮小化するかのように「書き換え」と言いつづけたのはNHKただ一社だったのである。まったく、「権力の犬」の魂ここにあり、だ。

 だが、いまは「犬HK」などと揶揄しているような場合ではない。きちんと問題の根深さを報じなければ、NHKだけではなくこの国のメディアも死んでしまうからだ。幹部から圧力を加えられる一方、NHKのニュース番組ではこれまでなかなか取り上げてこなかった市民による抗議デモの映像が流されるケースが増えている。どうかいまこそNHKには、公共放送としての権力の監視という役割を取り戻してほしい。(編集部)

31- 南北・米朝首脳会談の成功を素直に喜べないメディア

 中国は、今度の金正恩訪中については米国と韓国には通知していました。しかし日本には通知はありませんでした。安倍首相が登場するやいなや、たちまち中国との関係を壊してしまったからでした。
 南北朝鮮融和に関する情報も何も入りませんでした。やはり安倍氏が韓国との関係を壊していたからでした。

 今、国際社会で孤立しているのは、北朝鮮ではなくて日本だと言われています。東アジアで四面楚歌、どこからも嫌われて情報が全然入らない(「世に倦む日々」氏のツイート)。米国の尻馬に乗ってさえいれば万事OKと思っていた結果がこのザマです。

 ところがこと北朝鮮問題となると、日本のメディアはすべて安倍化して北朝鮮をめぐる一連の首脳外交を素直に喜べず、むしろ成功しない事を願っているかのような報道ばかです。どのメディアも「非核化を巡る交渉でこれまで北朝鮮に合意を破棄された裏切りの歴史があるので油断できない」と報道するばかりで、そこに明るさを見出そうとする姿勢はありません。

 メディアがスクラムを組んで権力の横暴と対決するのは喜ばしいことですが、それとは逆に、何が悲しくてメディアは安倍首相の発想の感化を受けなくてはならないのでしょうか。

 天木直人氏のブログを二つ紹介します。

 二つ目のブログは、金正恩氏が、米朝首脳会談が成功裏に終われば「6月初めにも日朝首脳会談がありうる」と語り、日本と国交正常化すれば、2兆円余ないし5兆円余の支援を受け取れると語ったことを伝えています。
 官邸は、そのことは安倍外交の最後のサプライズとしてその時点まで秘しておきたかった筈ですが、金正恩政権がそれを先にバラしたということです。
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南北、米朝首脳会談の成功を素直に喜べないメディア
天木直人のブログ 2018-03-30
 これまで何度も書いて来たが、北朝鮮問題となると日本のメディアはすべて総安倍化しているごとくだ。
 北朝鮮をめぐる一連の首脳外交を素直に喜べず、むしろ成功しない事を願っているような報道ばかりしている。

 置き去りにされた安倍政権とその応援団が失敗を望むのはわかる。
 しかし、「ゴマすり外交の限界」と題して、蚊帳の外に置かれた安倍首相を批判している東京新聞(3月30日こちら特報部)ですら、きょう3月30日の紙面で、きのう開かれた南北閣僚級会談を批判的に書いている。
 すなわち、南北首脳会談を4月27日に開く事では合意したものの、会談後に発表された共同報道文は、最重要課題である「朝鮮半島の非核化」には一切触れられなかった、北朝鮮と韓国の立ち場の違いが浮き彫りになったと。

 日米韓はこれまで非核化を巡る交渉で北朝鮮に合意を破棄された裏切りの歴史があり、油断できないと。
 これでは、まるで安倍外交を擁護しているようなものだ。
 「朝鮮半島の非核化」という最大のテーマについて合意されるとしたら、それはまさしく首脳会談においてであって、準備段階のいまは何も言及されないのは当たり前だ。
 しかも、過去の非核化交渉と今回の非核化交渉は、その歴史的状況も意味合いも、まったく異なる。
 朝鮮戦争の終結まで見越した今度の一連の首脳会談の重みが、まるで分っていない東京新聞の記事だ。

 そうかと思ったらきょうの朝日が書いていた。
 金正恩の電撃的訪中は中国も予想外だったと。
 すなわち金正恩は何度も中国から訪中を要請されていたが拒否し続けて来たと。
 それが一転した受け入れたのだと。
 そのことを日米韓は何も知らされていなかったと。
 まるで、蚊帳の外に置かれたのは安倍首相だけではなかったと言わんばかりだ。
 東京と朝日がこれだから産経や読売は推して知るべしだ。

 要するに、日本のメディアは皆、今度の南北、米朝首脳会談の結果がうまく行かない事を望んでいるのだ。
 終ってしまった中朝首脳会談ですら、あら探しばかりしている。どうして素直に喜べないのだろう。
 まさしく北朝鮮問題については、国会はもとより、日本のメディアは総安倍化している。
 そして、それは無理もない。
 日本のメディアもまた勉強不足、取材力不足で、この一連の朝鮮半島の和平という歴史的大転換の蚊帳の外に置かれているからだ。
 メディアに安倍首相を笑う事は出来ない(了)


電撃的な金正恩訪中の全貌が教えてくれた安倍外交の孤立
天木直人のブログ 2018年3月29日
 一夜明けて金正恩電撃訪中の全貌が明らかになった。
 今日の各紙が大きく報じるその実態は驚きの数々だ。
 その中でも、一番驚かされたのは、安倍首相の日本だけが何も教えてもらっていなかったということだ。
 これまでにも私はさんざん批判的に書いて来た。
 安倍外交ははしごを外されたと。
 それどころではない。完全に置き去りにされていたのだ。
 そのことが今度の金正恩の訪中で証明されたのだ。
 なにしろ習近平はまっさきにトランプに会談内容を教えている。
 それをトランプがツイッターですかさず公表し、歓迎するとまでつぶやいている。
 出し抜かれた形になっている韓国であるが、きょう29日、板門店で南北閣僚級会談を開く。
 同じ民族が朝鮮戦争の終結に向かって今度こそ本気で南北首脳会談を成功させようと決意した以上、文在寅大統領の韓国が主役から外れることはない。
 つねに情報は北朝鮮から同時並行的に伝わっているのだ。

 蚊帳の外に置かれているのはプーチンのロシアと安倍首相の日本だけだ。
 しかし、プーチンのロシアは、ついこの間まで、習近平の中国がトランプの米国に譲歩して金正恩の北朝鮮に対する経済制裁を強化した時、ただ一人それに反対し、北朝鮮を擁護した国だ。
 おまけにプーチンはロシア疑惑でトランプの急所を握っている。
 いざとなれば本当のことをばらすぞと凄めばいい。
 どんなにプーチンのロシアと西側主要国の関係が悪化しても、トランプの米国はプーチンのロシアを敵に回す事は出来ない。
 良くも悪くも、プーチンのロシアは国際政治の中心国なのだ。
 こう考えて行くと、安倍首相の日本だけが、いかにその存在価値のない、どうでもいい国であることがわかる。

 極めつけはきょう3月29日の朝日新聞が報じた次の記事だ。
 すなわち、北朝鮮関係によると、金正恩政権が最近、朝鮮労働党幹部らに「6月初めにも日朝首脳会談がありうる」と語っているというのだ。しかもそれを内部の資料として配布しているという。
 日本と国交正常化すれば200億ドルとも500億ドルともされる支援を受け取れるとまで書いているという。100億ドル≒1兆620億円
 6月初めというタイミングは、すべての首脳会談が終わったタイミングだ。
 すべてが平和裏に終わり、北朝鮮の支援が始まれば金を出すのは日本だと言っているのである。

 これを安倍首相が言うのならわかる。
 何しろ訪朝して拉致問題を解決し、日朝国交化正常化を成し遂げるのは安倍外交の最後のサプライズであるからだ。しかし、金正恩政権がそれを先にばらしたのである。
 何も知らされていないのは安倍首相の日本だけだ。
 無理もない。知らせてくれなかった、冷たいではないか、と文句を言ったら、トランプも習近平も文在寅もこう言い返してくるだろう。
 今あなたは森友疑惑でそれどころではないだろう。それを忖度して、今あなたにその事に専念して危機を乗り切ってもらいたかったからだと。

 もはや安倍首相では力強い日本外交は進められない。
 一刻も早く安倍政権を変えて仕切り直さなければ、日本外交は乗り切れないということである(了)

2018年3月30日金曜日

安倍首相による放送制度改変は政権擁護番組の量産が目的

 安倍内閣がにわかに、放送法4条をはじめ、外資規制、番組審議会などを廃止する放送制度改革を目指しているのは、現行の民放に対する恫喝であるとともに、露骨な政権擁護番組を地上波に導入しようという安倍氏一流のメディア戦略に基づいているということです。

 こういう「改革」は例によって「規制改革推進会議」に答申を求めるやり方をして進めますが、そのメンバーは、議長大田弘子氏をはじめ安倍首相と昵懇のメンバーが顔を揃えているだけでなく昨年1月に沖縄ヘイトデマを垂れ流しBPO(放送倫理・番組向上機構)放送倫理委員会から「重大な放送倫理違反」と指摘されたDHC放送『ニュース女子』のスタッフが3人も含まれているということです。

 安倍内閣は、教育制度や放送システムの変更に手を染める適性からは最も遠い内閣に思えます。そんなことはしないで静かに退場して欲しいものです。
 LITERAの記事を紹介します。
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安倍首相の放送法撤廃はやはり政権擁護フェイク番組の量産が目的!
官邸の推進会議委員に「ニュース女子」出演者が3人
LITERA 2018年3月30日
 なんとわかりやすい“圧力”だろう──。政治的公平を義務づける放送法4条をはじめ、外資規制、番組審議会の設置などの規制撤廃を盛り込んだ放送制度改革の方針案を、安倍政権が打ち出そうとしている件だ。
 この放送制度改革では放送の規制を全廃する方針だといい、もし実施されれば、インターネットテレビなどによる放送事業への新規参入が促されることになる。そのため、すでに民放テレビ局のトップたちが相次いで批判の声をあげているが、いま、この改革案を安倍首相がもち出したのは、民放に対する恫喝であることはあきらかだ。

 これまでも安倍政権は電波の利用権を競争入札にかける電波オークションの導入をちらつかせてきたが、ここにきて放送改革の話が急に進んだのは、森友文書改ざん問題に対する報道を牽制するためだ。
 事実、朝日新聞が改ざんのスクープを報じた3月2日と同じ日の夜、安倍首相は『BSフジLIVE プライムニュース』(BSフジ)の放送10周年を祝う集いに出席し、「電波、通信の大改革を行いたい。大競争時代に入り、ネットや地上波が競合していく」と挨拶。祝辞のなかで、わざわざ電波改革に言及したのである。そのタイミングから考えて、暗にテレビ局に対し“改ざん問題の後追い報道をすればどうなるのか”と警告を与えたようなものだ。
 さらに、15日に共同通信が放送法4条の撤廃を政府が検討していることをスクープしたが、20日の参院総務委員会で放送を所管する総務省の大臣・野田聖子氏は「私自身はまだ何も承知していない」「(安倍首相からの指示は)「きょうまで何もない」と答弁。安倍官邸による独走で一気に動きはじめた疑いが濃厚なのだ。

 しかし、今回の放送法4条の撤廃の問題はそれだけではない。最大の問題は、安倍政権が露骨な政権擁護番組を地上波で放送できることを狙ってこの方針を打ち出したことだ。
 これまで安倍政権は、むしろ放送法4条を盾にして、テレビ報道に圧力をかけてきた。たとえば、2014年11月には、『NEWS23』(TBS)内で生出演していた安倍晋三首相がアベノミクスに懐疑的な声をあげる街頭インタビューについて「意見を意図的に選んでいる」と声を荒げて批判。その直後に自民党はテレビ局に公正・中立報道を求める文書を送りつけている。さらに、『報道ステーション』(テレビ朝日)でコメンテーターの古賀茂明氏が「(官邸に)バッシングを受けた」と述べた際も、菅義偉官房長官は「放送法がある以上、事実に反する放送をしちゃいけない」と発言。自民党の情報通信戦略調査会はテレビ朝日の経営幹部を呼びつけ、事情聴取までおこなった。

 それが一転、圧力の道具にしてきた放送法4条の撤廃を打ち出す。─これは「政治的公平」で番組内容にケチをつける方法ではなく、政治的にり切って政権擁護をおこなう番組を増やそう、という方針に転換したからだ。つまり、安倍応援団が勢揃いして政権を擁護しまくるDHCテレビ制作の『ニュース女子』や『真相深入り!虎ノ門ニュース』などのような番組を地上波でガンガン放送させようというわけだ。

長谷川幸洋、飯田泰之、原英史が放送法の「規制改革推進会議」メンバーに
「まさか、そこまで露骨なことは考えないだろう」……そういう人もいるかもしれない。しかし、これが被害妄想でないことは、官邸で安倍首相のもと、この放送法撤廃を議論しているメンバーを見れば、わかってもらえるだろう。
 今回の放送制度改革案は「規制改革推進会議」が取りまとめをおこない、6月にも安倍首相に答申する予定なのだが、この「規制改革推進会議」のメンバーに、あの『ニュース女子』出演者が3人も含まれているのである。

 それは、『ニュース女子』司会である長谷川幸洋・東京新聞論説委員に、同番組の準レギュラーで、文書改ざん問題では朝日批判を展開していた経済学者の飯田泰之氏、同じく準レギュラーである、加計学園問題では国家戦略特区ワーキンググループ委員として「議事録はすべて公開されている」と虚偽の主張を繰り広げていた政策コンサルタントの原英史氏の3名だ。

 言わずもがな、『ニュース女子』といえば、昨年1月に沖縄ヘイトデマを垂れ流しBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理委員会は「重大な放送倫理違反」と指摘。今月8日には放送人権委員会も、市民団体「のりこえねっと」共同代表である辛淑玉氏に対して「名誉毀損の人権侵害があった」とし、判断としてはもっとも重い「勧告」を出したばかり。批判の高まりもあり、TOKYO MXをはじめとして番組の放送中止を決定する地方局が相次いでいるが、DHCという巨大な資本をバックに、番組はいまなおデマやヘイトを流したことへの謝罪は一切ないまま継続されている。
 そして、司会の長谷川氏はもちろんのこと、飯田氏も原氏も、まったく事実に基づかないデマや人権を犯す放送がおこなわれた以降も、この番組に疑問を呈することなく、平気な顔で出演しつづけているのだ。このような者たちが放送制度改革案を取りまとめるというのだから、それが安倍首相の意向を反映させたものになるのは必至だろう。

 しかも、同会議の委員は、現在、議長を含め計14名で構成されているが、そのなかにはこの3名のほかにも安倍首相シンパが勢揃いしている。議長は第一次安倍政権で民間閣僚として経済財政政策担当大臣に抜擢された大田弘子氏であり、議長代理の金丸恭文・フューチャー会長兼社長も〈菅義偉官房長官とのパイプが太く、安倍首相にも信頼されている〉(日経ビジネスオンライン2016年11月4日付)といわれる人物。さらに、安倍首相を応援する財界集団「さくら会」の中心メンバーである富士フイルムホールディングスの古森重隆会長や、安倍首相とはゴルフを興じる仲である森下竜一・大阪大学大学院教授など、安倍首相と昵懇のメンバーが顔を揃えているのだ。

 放送制度改革がこのまま実施されれば、地上波に『ニュース女子』のようなフェイク番組が溢れかえり、昨年、総選挙公示日直前に安倍首相が出演したAbemaTV『徹の部屋』でホスト役の見城徹・幻冬舎社長が「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」などと繰り返したような発言がただただ流される──。恐ろしい悪夢のような現実が、確実に待ち受けているのである

 放送法4条にかんしては、政治権力が直接メディアに圧力をかけることを可能にしてしまっていることから「撤廃するべき」という声もあったが、このような安倍首相の思惑がある以上、いまは到底、看過できるものではない。だいたい、公文書を改ざんしてしまうような独裁政権に規制改革など任せられるか。放送を安倍首相のおもちゃにさせないためにも、一刻も早く内閣総辞職に追い込まなくてはならない。(編集部)

永田町の話題は“安倍政権の壊れ方”と総裁選の行方に 

 共同通信の世論調査:「次の総裁は誰になるかでは、ついに安倍氏はこれまでのトップの座から滑り落ちて、石破茂氏、小泉進次郎氏に次ぐ3位に転落し、当人はまだやる気まんまんなのですが、その一方で、気の早い永田町事情通たちの話題は既に、安倍政権の壊れ方とその後の総裁選の構図に移っているということです。

 事態がそういう風に推移すれば、憲法9条の改憲も沙汰やみになる可能性が強まるのでで喜ばしいことです。
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 永田町の裏を読む
永田町の話題は“安倍政権の壊れ方”と総裁選の行方に集中 
高野孟 日刊ゲンダイ 2018年3月29日 
 このところマスコミ各社の世論調査で、内閣支持率が一斉に9~13ポイントほども急落して30%台に突入、政権の行方に黄信号がともったので、気の早い永田町事情通たちの話題はもっぱら、安倍政権の壊れ方とその後の総裁選の構図である。その事情通のひとりがこう解説する。

安倍夫妻の行状を隠すために公文書の改ざんが行われて、そのために末端官僚に自殺者まで出たとなると、もうこれは逃げ切れない。逃げようとすればするほど、支持率は泥沼に足をとられたように落ちていく。そこで、麻生太郎財務相に全部をかぶせて辞任させ、安倍だけ生き残るという虫のいいシナリオが側近の間で検討されているようだが、そんなことをしたら麻生はブチ切れて安倍を道連れにして内閣を引きずり倒すだろう。それよりも、安倍が進んで内閣総辞職をするほうが、まだ混乱が少なくて済む」

 いずれにせよ、9月の総裁選は繰り上げ実施となる可能性が出てきたわけだが、それで顔ぶれはどうなるのか。前出の事情通によると、「安倍は出馬できないし、出ても負ける。昔の自民党だったら、黒幕が取り仕切って、右翼で非インテリでせわしない性格の総理の後には、リベラルでインテリで落ちついた雰囲気の総理に振り子を振った方がいいといった知恵を働かせるので、岸田文雄政調会長が有利ということになる。しかし力の勝負になった場合は、やはり石破茂元幹事長が出てくる」という。

 共同通信の世論調査は「次の総裁は?」と尋ねていて、トップは石破で前回調査から4・1ポイント上がって25・4%。次が小泉進次郎筆頭副幹事長で、4・2ポイントアップの23・7%と、石破と拮抗するほどだ。半面、前回はまだトップを保っていた安倍は7・5ポイントダウンの21・7%にとどまった。これを見ても、もう安倍は終わったと分かる。

 思い起こせば、2012年の総裁選では小泉が石破を支持して票集めに大いに貢献し、そのおかげで石破は地方票で圧勝していながら国会議員票のみの決選投票で安倍に敗れた。ところが、今年1月の本欄で書いたように、総裁選のルールが変わって、第1回投票で国会議員票と地方票が同数になり、決選投票になった場合も地方に一定の票が割り当てられることになった。そのため、もしまた石破と小泉が手を組んで戦えば、圧倒的な勢いになることは間違いない。岸田が、この期に及んでなお安倍による“禅譲”に期待して戦う姿勢を鮮明にしないようでは、石破・小泉連合に蹴散らされるだろう。

 高野孟ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。


電撃的な金正恩訪中の全貌が教えてくれた安倍外交の孤立
天木直人のブログ 2018-03-29
 一夜明けて金正恩電撃訪中の全貌が明らかになった。
 今日の各紙が大きく報じるその実態は驚きの数々だ。
 その中でも、一番驚かされたのは、安倍首相の日本だけが何も教えてもらっていなかったということだ。
 これまでにも私はさんざん批判的に書いて来た。
 安倍外交ははしごを外されたと。
 それどころではない。完全に置き去りにされていたのだ。
 そのことが今度の金正恩の訪中で証明されたのだ。

 なにしろ習近平はまっさきにトランプに会談内容を教えている。
 それをトランプがツイッターですかさず公表し、歓迎するとまでつぶやいている。
 出し抜かれた形になっている韓国であるが、きょう29日、板門店で南北閣僚級会談を開く。
 同じ民族が朝鮮戦争の終結に向かって今度こそ本気で南北首脳会談を成功させようと決意した以上、文在寅大統領の韓国が主役から外れることはない。
 つねに情報は北朝鮮から同時並行的に伝わっているのだ。

 蚊帳の外に置かれているのはプーチンのロシアと安倍首相の日本だけだ。
 しかし、プーチンのロシアは、ついこの間まで、習近平の中国がトランプの米国に譲歩して金正恩の北朝鮮に対する経済制裁を強化した時、ただ一人それに反対し、北朝鮮を擁護した国だ。
 おまけにプーチンはロシア疑惑でトランプの急所を握っている。
 いざとなれば本当のことをばらすぞと凄めばいい。
 どんなにプーチンのロシアと西側主要国の関係が悪化しても、トランプの米国はプーチンのロシアを敵に回す事は出来ない。
 良くも悪くも、プーチンのロシアは国際政治の中心国なのだ。
 こう考えて行くと、安倍首相の日本だけが、いかにその存在価値のない、どうでもいい国であることがわかる。

 極めつけはきょう3月29日の朝日新聞が報じた次の記事だ。
 すなわち、北朝鮮関係によると、金正恩政権が最近、朝鮮労働党幹部らに「6月初めにも日朝首脳会談がありうる」と語っているというのだ。
 しかもそれを内部の資料として配布しているという。
 日本と国交正常化すれば200億ドルとも500億ドルともされる支援を受け取れるとまで書いているという。
 6月初めというタイミングは、すべての首脳会談が終わったタイミングだ。
 すべてが平和裏に終わり、北朝鮮の支援が始まれば金を出すのは日本だと言っているのである。
 これを安倍首相が言うのならわかる。
 何しろ訪朝して拉致問題を解決し、日朝国交化正常化を成し遂げるのは安倍外交の最後のサプライズであるからだ。しかし、金正恩政権がそれを先にばらしたのである。

 何も知らされていないのは安倍首相の日本だけだ。
 無理もない。知らせてくれなかった、冷たいではないか、と文句を言ったら、トランプも習近平も文在寅もこう言い返してくるだろう。
 今あなたは森友疑惑でそれどころではないだろう。それを忖度して、今あなたにその事に専念して危機を乗り切ってもらいたかったからだと。
 もはや安倍首相では力強い日本外交は進められない。一刻も早く安倍政権を変えて仕切り直さなければ、日本外交は乗り切れないということである(了)