2019年9月30日月曜日

「多次元」の大軍拡を謳った防衛白書

 27日の閣議で報告された19年版防衛白書は、「真に実効的な防衛力として多次元統合防衛力を構築する」として、従来の陸・海・空用兵器の拡充に加え、宇宙・サイバー・電磁波領域も含めた大軍拡路線を強調するものでした。
 
 「いずも」型護衛艦の事実上の空母改修をはじめ、ステルス戦闘機F35B・長距離巡航ミサイル導入など、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有・強化をうたいました。
 またすでにミサイル迎撃能力が否定されているにもかかわらず、「イージス・アショア整備推進本部」を設置し配備強行しようとしています。
 中国などが宇宙・サイバー・電磁波といった新たな戦闘領域を組み合わせた「領域横断」作戦能力獲得を追求しているとして、日本もそれに対処するためにその方面の能力を強化することも謳いました。
 
 憲法違反でほとんど役に立たない米国の兵器を大々的に導入することに加えて、「領域横断」作戦能力獲得を目指すのでは、どんなに金があっても足りません。
 なぜ中国と張り合わなければならないのか。この先、際限のない軍拡競争を続けるのでは、軍需産業にとっては願ってもないことですが、国民はこのさき貧困化の一途をたどるだけです。
 
 北朝鮮は20年以上前に日本を射程圏内に収めるミサイル「ノドン」を完成させ、2009年には320基を配備しましたが、それで日本を攻撃することはありませんでした(攻撃された場合、イージス艦などのパトリオット迎撃ミサイルでは全く対応できないことは、先のサウジアラビアの産油施設破被爆事件で証明されました)。
 中国の近隣国家で、一体どこが中国の宇宙作戦への対抗策に走っているというのでしょうか。そんな国はないし、それでも現実に攻撃もされることはありません。
 要するに国を防衛するのに必要なことは、こけおどしの兵器を買い揃えるのではなく、近隣諸国との善隣友好を目指すことです。子供じみた軍拡競争は国家を破綻に導くもので即刻止めるべきです。
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大軍拡 「多次元」で 防衛白書 辺野古・陸上イージス推進
 しんぶん赤旗 2019年9月28日
 河野太郎防衛相は27日の閣議で、2019年版防衛白書を報告しました。昨年末に決定した新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を踏まえ、「真に実効的な防衛力として多次元統合防衛力を構築する」として、陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波領域も含めた大軍拡路線を強調しました。
 
 北朝鮮の核開発について、18年版の白書は「実現に至っている可能性」と評価していましたが、19年度版は「核兵器の小型化・弾頭化を既に実現しているとみられる」と明記。北朝鮮の核・ミサイル能力は「本質的な変化は生じていない」と警戒しました。
 中国については「軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している」とし、宇宙・サイバー・電磁波領域の能力強化にも取り組んでいると指摘して、西太平洋で米軍の介入や展開を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」能力の強化につながるとしました。
 
 「いずも」型護衛艦の事実上の空母への改修をはじめ、最新鋭ステルス戦闘機F35B、長距離巡航ミサイル導入など、敵基地攻撃能力の保有・強化をうたっています。
 陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」導入をめぐって、配備候補地の秋田・山口両県への説明資料の誤りなどに関し「極めて不適切な対応があった」として「真摯(しんし)に反省している」としましたが、「イージス・アショア整備推進本部」を設置したとして、民意を無視しての配備強行をにじませています。
 
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、軟弱地盤の改良工事は「一般的で施工実績が豊富な工法」によって安定性を確保して工事が可能だと主張。圧倒的な新基地反対の民意が示された2月の県民投票の結果を「真摯に受け止め(る)」といいながら、新基地推進の強行姿勢を崩していません。
 
 
「領域横断」で戦場拡大 2019年防衛白書 宇宙から地上まで
 しんぶん赤旗 2019年9月28日
 27日公表された2019年版防衛白書は、陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな戦闘領域を組み合わせた「領域横断」(クロス・ドメイン)作戦能力を獲得するとして、大軍拡路線を示しています。
 
中国を名指しで
 19年版防衛白書では、「領域横断作戦に必要な能力」の優先事項を整理(表)。これらの項目を実現するため、軍事費は過去最高を更新し続け、膨張の一途をたどっています。
 白書は、各国が「全般的な軍事能力において優勢にある敵の戦力発揮を効果的に阻害する非対称的な軍事能力の獲得のため、新たな領域における能力を裏付ける技術の優位を追求している」と指摘。とりわけ、この中で名指ししているのが中国です。
 これに対処するためとして、宇宙状況監視(SSA)体制構築、サイバー防衛隊の体制拡充、さらに電磁波領域では、相手方のレーダーや通信などを無力化するための能力を強化するとしました。相手の射程圏外から敵のレーダーや通信に電波妨害をかける「スタンド・オフ電子戦機」や、大量の電磁波を発生させ、地上の都市機能を破壊する電磁パルス(EMP)兵器などの導入に向けた研究開発を迅速に進めるとしています。違憲の敵基地攻撃能力につながります。
 
“夢の機体”
 同時に、陸・海・空の伝統的な領域でも一大強化を掲げています。
 敵の射程外から発射できる長距離ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の導入や、最新鋭ステルス戦闘機F35Aの増勢、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)能力をもつF35Bの導入などを示しました。「いずも」型護衛艦の改修の必要性について詳しく解説し、護衛艦でのSTOVL機の運用実現によって「戦闘機の運用の柔軟性をいっそう向上させ(る)」として、空母化の狙いを示しています。
 
 “自衛隊版海兵隊”水陸機動団の能力向上、陸上自衛隊V22オスプレイ導入による機動・展開能力の向上を強調。オスプレイについては、米国での訓練状況を伝える自衛官のコラムを掲載。「自衛隊全般の作戦様相を大きく変える能力を有する『夢の機体』」などと持ち上げています。
 
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自民は改憲へ挙党態勢/改憲策動葬る 憲法共同センターが総会

 自民党が憲法改正に向け挙党態勢で動き出しました。
 これまで憲法議論に距離を置いてきた二階幹事長まで、安倍首相が今回の党人事挙党態勢で改憲に臨む決意を示すと「憲法改正は、ほかのいかなる議案よりも重要だ」と応じ、1018日に地元・和歌山県での1千人規模の憲法集会開催を早々に決めまし
 岸田政調会長訪問先のシンガポールで21日、改憲をテーマにした地方政調会を開く考えを表明しました。
 また稲田朋美幹事長代行は自身が共同代表を務める議員連盟「女性議員飛躍の会」中心にして、全国各地での街頭演説や勉強会を計画しています
 
 しかしそうした取り組みは、産経新聞14、15に行った調査でも、安倍内閣が優先して取り組むべき課題として「改憲」を挙げたのは僅かに47「社会保障」34%)であるという現実からあまりにも乖離していて、安倍政権の失政でいち早く近隣国の中国・韓国との貿易量を落ち込ませ、その回復の見通しも立たない中で消費税増税を行う愚策と一対をなすものです。
 
 産経新聞の記事を紹介します。
 
 「戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター」(憲法共同センター)27日総会を開き、安倍改憲を阻止する運動を新たな構えでたたかうことを確認したという、しんぶん赤旗の記事を併せて紹介します。
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自民、改憲へ挙党態勢 幹部始動、二階氏は地元で大規模集会
産経新聞 2019.9.28
 自民党が結党以来の党是とする憲法改正に向け挙党態勢で動き出した。二階俊博幹事長や岸田文雄政調会長ら党四役が前面に立ち、全国各地での集会や講演などを展開する。改憲議論を活発化させ、国民の理解や世論の喚起につなげたい考えだ。(石鍋圭)
 
 「憲法改正は、ほかのいかなる議案よりも重要だ」
 二階氏は24日の記者会見でこう強調した。これまで憲法議論に距離を置いてきた二階氏だが、安倍晋三首相(党総裁)が今回の党人事にあたり挙党態勢で改憲に臨む決意を示すと、いち早く呼応。10月18日に地元・和歌山県での1千人規模の憲法集会開催を早々に決めた。首相側近として改憲に取り組む下村博文選対委員長が講演し、首相もビデオメッセージを寄せる。
 党和歌山県連関係者によると、憲法記念日がある5月以外で大規模な憲法集会を開くのは異例だという。二階氏周辺は「二階氏が動かなければ『挙党態勢』は始まらない。地元での集会はわかりやすいメッセージだ」と解説する。
 岸田氏も腰を上げた。訪問先のシンガポールで21日、改憲をテーマにした地方政調会を開く考えを表明。自衛隊明記など4項目の党改憲案に加え、環境など新たなテーマを議論する必要性にも触れた。首相が目指す改憲に貢献することで「ポスト安倍」としての存在感を発揮したい狙いもある。
 稲田朋美幹事長代行は女性層にターゲットを絞る。自身が共同代表を務める議員連盟「女性議員飛躍の会」が中心となり、全国各地での街頭演説や勉強会を計画している。稲田氏は「女性は9条改正に対する抵抗感が強い。女性の立場から丁寧に改憲の必要性を説明する必要がある」と周囲に意欲を示している。
 
 産経新聞社などが14、15両日に行った世論調査で、安倍内閣が優先して取り組むべき課題を聞いたところ、「改憲」は4・7%だった。「社会保障」(34・0%)や「経済対策」(22・6%)に比べ低調で、党幹部が改憲の必要性を国民にどれだけ浸透させられるかが焦点となる。
 
 一方、挙党態勢と逆を行くのが石破茂元幹事長だ。20日のBSフジ番組では、4項目の党改憲案は総務会の意思決定を経ていないと主張。党内で再議論する必要があるとの持論を展開したが、党幹部は「党内議論は決着した。時間を巻き戻している余裕はない」と突き放している。
 
 
改憲策動葬る運動を 憲法共同センターが総会
しんぶん赤旗 2019年9月29日
 「戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター」(憲法共同センター)は27日、東京都内で総会を開き、安倍改憲を阻止する運動を新たな構えでたたかうことを確認しました。
 
 開会あいさつした新日本婦人の会の笠井貴美代会長は、参院選で改憲勢力を3分の2割れに追い込んだことを強調。憲法共同センターを設立し、幅広い団体と総がかり行動実行委員会をつくって共同の輪を広げてきた成果だとして、安倍改憲阻止、野党連合政権に向けて新たなたたかいを呼びかけました。
 国会情勢を報告した日本共産党の山添拓参院議員は、安倍首相が改憲へ執念を示していることを指摘。野党の13項目の共通政策の第一が改憲阻止であり、これを野党連合政権の柱にすえるような本気のたたかいが必要だと呼びかけました。
 
 議案を提案した全労連の竹下武常任幹事は、改憲策動に決着をつけるため総がかり行動実行委員会や市民連合などに結集し、総選挙勝利に向けて野党共闘の構築、政権構想を含めた政策合意に力を尽くそうと強調。安倍9条改憲阻止の署名運動をさらに広げていこうと訴えました。
 選択的夫婦別姓、LGBT(性的少数者)の権利保障、消費税10%反対など憲法の先駆性を生かして国民の多様な運動を広げようと呼びかけました。
 
 渡辺治一橋大学名誉教授が「参院選結果と安倍改憲阻止闘争」と題して講演しました。
 岩手の代表は「戦争法廃止の運動が参院選や知事選勝利の力になった」と発言。埼玉の代表も、市民と野党の共闘で知事選に勝利したと語りました。

30- 石崎徹衆院議員書類送検 説明責任いつ果たすのか

 石崎徹・自民党衆院議員(1984年1月25日 ~ )の元秘書が、5月から数百回にわたり殴る蹴るの暴行を受けたとして、6月に新潟県警に被害届が出されたのを受けて、925日、県警は石崎議員を傷害と暴行罪の疑いで、起訴を求める「厳重処分」の意見付きで、新潟地検に書類送検しました。
 これを受け自民党新潟支部は27日、石崎議員に対し離党を勧告しました。
 同議員は82日に自民党新潟支部長職の辞表を電子メールで県連に提出して翌3日付で辞任し、8月7日付で県連常任顧問職を解任されています。。
 
 石崎議員は、2007年慶大法学部卒業後財務省に入省。2012年、自民党の衆院総選挙の候補者公募に合格したので財務省を退官し、同年12月地元の新潟1区から立候補して衆院議員に当選しました。3期目の2017年の衆院選では新潟一区で立民党の西村智奈美に敗れたものの、比例北陸信越ブロックで復活当選しました。
 
 7月17日、石崎議員が元秘書に対し、「バカ」「死ね」などの暴言を吐いた音声が週刊新潮のウェブサイトで公開され(7月25日発売の週刊誌で、石崎が英語のレッスンで知り合った東欧出身の27歳の女性に対し5万円で売春を持ちかけたことも報じられ)たことで、世間から非難されるようになりました。(『ウィキペディア』より)。
 
 石崎議員は週刊誌の報道があったときに、複数の県連幹部に電話で「迷惑をかけた。しばらく休養する」と伝え、8月2日に自民党新潟支部長職を辞職する際のメールには、「ご迷惑、ご心配を掛け、不徳を恥じ、おわび申し上げたい」とコメントしたとされていますが、いわゆる有権者への説明責任は何も果たしていません。
 新潟日報が沈黙を続けている石崎議員に対し「説明責任いつ果たすのか」とする社説を掲げました。
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【社説】 石崎氏書類送検 説明責任いつ果たすのか
新潟日報 2019/09/29
 いつまで逃げ続けるつもりなのか。公の場で説明責任を果たすよう、重ねて強く求める。
 自民党の石崎徹衆院議員が、秘書に対する傷害と暴行の疑いで書類送検された。
 県警が石崎氏に任意で事情聴取するなど捜査を進め、今回の書類送検となった。今後は新潟地検が起訴するかどうかが焦点となる。
 秘書を務めていた30代の男性が県警に被害届を出し、問題が明るみに出たのは参院選さなかの7月中旬だ。
 腕を殴ったり、足を蹴ったりしたとされる容疑そのものに加え、発覚から2カ月余、石崎氏が一度も公の場に姿を見せていないことも大きな問題だ。
 
 7月に2回、文書でコメントを出した。そこで石崎氏は秘書への暴言は認めた。ただし、暴行や傷害の有無については明確にしていない。
 文書では「真実を伝えられる時が来たら、しっかりと誠意を持って説明する」としていた。それは一体いつなのか。この約束は守られるのか。
 8月の臨時国会は体調不良で欠席した。国会議員が本務である国会に出席しないのは自らの責任の放棄だ。都合が悪くなると逃げるような姿も、政治家としての資質を疑わせる
 
 今回の書類送検を受けて菅義偉官房長官は「政治家は常に自らを律するとともに、説明責任を果たすべきだ」と求めた。
 「事実なら言語道断。出処進退を自らお考えになっていただくことと思う」と、辞職に言及する自民党議員もいる。
 石崎氏は前回2017年衆院選は新潟1区で敗れたが、比例北陸信越で復活当選した。石崎氏に1票を投じた有権者は約11万3千人に上る。この重みをきちんと感じているのか。
 
 新潟1区の有権者からは「若い議員で期待していたのに」「情けない」など、失望と怒りの声が上がっている。
 自民党県連は党本部に石崎氏の除名など厳しい処分を求めている。党本部の判断はまだ出ていないが、地元は既に石崎氏の後任選びに動いている
 10月4日に臨時国会が召集される。ここでも逃げるようなことがあれば、失望はさらに膨らむに違いない。
 
 財務省出身の石崎氏は12年衆院選で28歳の若さで初当選したが、これまでも女性問題などが取り沙汰されてきた。同期の自民議員には不祥事が相次ぎ「魔の3回生」と呼ばれている。
 政治家の「劣化」はどうしたものか。強い危機感を抱かざるを得ない。石崎氏の不祥事が県民の政治への不信感を高めたことは間違いない。そのことにも危機感を抱く。
 本県にはかつて、田中角栄元首相はじめ、与野党問わず実力ある政治家を輩出した時代があった。閣僚も珍しくなく、新潟県の政治力は中央政界でも一目置かれていた。
 国のため、地域のため有為な政治家を選び、育てる。そのためにはどうすればいいのかを私たち有権者が真剣に考えたい。

2019年9月29日日曜日

老後2000万円報告書隠ぺいと消費税増税 「独裁者と変わらない」

 藤井聡・京都大学大学院教授は、2012安倍政権内閣官房参与に着任安倍首相の政策を支えてきまし。その一方で消費増税反対を主張し、昨年11月には『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社)を出版するなど消費増税を批判し、2018参与を辞職しました。
 その後も積極的に消費増税が経済に与える影響の深刻さを訴えつづけ、日刊ゲンダイにもシリーズ「藤井聡 消費税を凍結・減税すべし!」を2019年3月14日から7月5日まで17回にわたって掲載しました(本ブログでも紹介)。 
⇒ 藤井聡 消費税を凍結・減税すべし!(日刊ゲンダイ 3/14~7/5
 
 その藤井教授が27日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(TV朝日)に登場し、まず「老後2000万円報告書」を了承せずにお蔵入りした件について、政府が「誤解を与えた」という理由で報告書を受け取らなかった問題を「誤解された方が仮にいたとしたら、きちんと説明すればいいだけの話で誤解だから受け取らないというのは論理としてはありえない」『科学的には正しいけれども、政府のスタンスでは都合が悪いから』受け取らないというのは、これは言語道断」科学的事実を無視して政治をやるんだったら、独裁者と何も変わらない」と批判しました。
 
 そして「(そうした政府の対応は)政府に対する信頼を失わせただけでなく、将来に対する信頼も失わせた」「将来に対して不安だらけで、お金を使わなくて、なけなしのお金を貯金する極貧生活をするようになれば、お金が回らないからもっと貧乏になる」「そこにさらに消費税10%がのしかかれば日本経済は地獄になる(要旨)」と警告しました。
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安倍政権の元内閣参与が玉川徹と意気投合し「老後2000万円報告書」隠ぺいと「消費税増税」を猛批判!「独裁者と変わらない」
LITERA 2019.09.28
 消費税増税の強行が目前に迫っているが、そんな中、安倍政権が国民を不安に陥れた都合の悪い事実をまたひとつ闇に葬り去った。25日に金融庁の金融審議会が総会を開催したのだが、そこで例の「老後2000万円報告書」問題について、「今後は報告書を議題としない」と決定したのだ。
 まったくふざけた決定としか言いようがないが、この決定について27日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)が特集。そこに専門家として登場し、怒りを露わにした人物がいた。
 それは、第二次安倍政権で内閣官房参与として安倍首相の政策を支えてきた、藤井聡・京都大学大学院教授だ。
 藤井教授といえば、思想的にも右派で安倍首相の有力ブレーンのひとりと目されていたが、一方で消費増税反対を主張。昨年11月には『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社)を出版し、さらに共産党の機関紙「しんぶん赤旗日曜版」(2018年11月18日付)にも登場して消費増税を批判。この「赤旗」登場がきっかけで、昨年末に内閣参与を実質「解任」に近い形で退職したが、その後も積極的に消費増税が経済に与える影響の深刻さを訴えつづけている。
 
 今回の『モーニングショー』のテーマは消費税ではなかったが、藤井教授は「老後2000万円報告書」を了承せずにお蔵入りした件についても、麻生太郎財務相が「誤解を与えた」という理由で報告書を受け取らなかった問題を「誤解された方が仮にいたとしたら、きちんと説明すればいいだけの話です。だから誤解だから受け取らないというのは論理としてはありえないです」と批判。さらにこうつづけた。
「(麻生財務相が受け取らなかった理由のもうひとつは)『スタンスが違うから受け取らない』。それって『科学的には正しいけれども、政府のスタンスでは都合が悪いから』というように聞こえてしまいます。スタンスがいかなるものであろうと、科学的な事実は事実として受け取って、それでどういう政策判断をとるのかが政府がやるべきことです。しかしながら『スタンスが違うから受け取らない』というのは、これは言語道断です。ありえない!」
 
 あまりに真っ当な怒りだろう。たとえばこれを年金ではなく災害にかんする被害試算に置き換えて考えてみればいい。そこでは「科学的に正しくても政府のスタンスとは違うから受け取らない」なんてことが通るわけがないからだ。
「科学的事実というのは政府のスタンスの上に立ちます。真実なんだから。それを無視して政治をやるんだったら、独裁者と何も変わらない」(藤井教授)
 さらに、ここで番組レギュラーコメンテーターの玉川徹氏もこう呼応した。
「これは政府のせいですから、いままでの。『自分たちのせいでみなさんが不安になるということは認められない』ということなんですよ」
 安倍政権に対する不満を引き出す“不都合な事実”は認めない──。藤井教授も、老後に2000万円足りなくなるという数字の根拠になっている“毎月の赤字額が約5万5000円”というものは「有名な数字で、ずいぶん前から使っている」「この数字自体は当然ながら以前の報告書のなかでも答申で受け取っている」「『5万5000円は足りません、そこは頑張ってください』っていうのが政府のスタンスだった」と指摘していたが、本サイトも当時いち早く報じたように「5万5000円の赤字」は金融庁独自の試算などではなくそもそも厚労省の提出したデータによるものだ。それを突如「受け取らない」とし、安倍首相も「不正確であり、誤解を与えるものだった」などと否定にかかったのは、参院選を控えていたからにほかならない。つまり、「政府のせい」と言われないように、自分たちが認めてきた事実さえなかったことにしてしまったのである。
 
玉川徹の「安倍首相ってそういう人なんですか」という質問に元内閣参与の藤井聡は
 一体、この政権は同じことを繰り返すのか。森友問題では公文書を改ざんし、働き方改革ではデータを捏造した。そうした事実を踏まえ、コメンテーターの吉永みち子氏もこう言及した。
「やはりそうやって(都合が悪いから認めないと)やってゆくと、国民が著しく不安になる、不安を持つからそれを批判する、その道筋がなくなりますよね。そうすると、その不安を与えるようなことは一切隠蔽されると。そういうことになると、かつてのね、大本営発表と同じことになってしまうわけで、大変に由々しき事態。
 こればっかりじゃなくて。これ(2000万円報告書)はまだとりあえずHPで見られるわけですよ。だけども、いままでずっと見てると、『つくらない』とか『隠す』とか『あるべきものがない』とか、もっと言えば改ざんとか捏造とかも含めて、ここ数年すごく多いことが、国民としてはすごく気になっています」
 
 安倍政権にとって不都合なことがすべて隠蔽されていく──。吉永氏のこの指摘に対し、玉川氏もさらにこう言葉を重ねた。
「国民をね、舐めてるんだと思いますよ。政府は。はっきり言えば。『だって、いままでもいろんな問題があったけれども、支持率高いじゃねえか』と。『だから今回だって、なかったことにしても別に国民は怒んねえよ』と、麻生さんは思っていると私は思いますよ」
 
 そして、内閣参与として安倍首相のブレーンだった藤井教授に、玉川氏はこんな質問をぶつけたのだ。
 玉川「藤井先生にちょっと訊きたいんですけど、藤井先生は安倍内閣の官房参与をやっていたんですよね。安倍総理とも、何回も何回も経済の問題を話されてるわけでしょ? で、今回のこの問題っていうのは、2000万円問題じゃなくて、不都合な真実はないことにするということなわけですよ。今回のこの話は」
 藤井「国民にそう言われても仕方がない」
 玉川「そうでしょ? で、安倍総理って、そういう人なんですか? いわゆる、これ安倍内閣として受け取らないわけでしょ? さっきから麻生大臣、麻生大臣って言ってたけれども、結局、内閣のトップは安倍総理なわけだから。そういう人なんですか? 安倍総理って」
 安倍首相は不都合な事実はないことにする人なのか──。この直球の質問に対し、藤井教授は「そうじゃないと僕は信じたいですけれど」と回答したが、これにも玉川氏は「信じたいじゃなくて」と食い下がった。藤井教授は「そういうふうに見えてしまいますよね」と言うにとどまったが、一方でこうも指摘した。
「容易に想像できると思いますけど、これだけ(金融庁のワーキンググループの委員が)議論して報告書をまとめてHPに載せているのに受け取ってもらえなかったら、委員はやっぱり忖度、絶対します。これから。受け取ってもらえなかったら意味ないですから」
 政権にとって都合が悪いと判断されれば、いくらいままで認めていた数字でも受け取り拒否にする。その結果、引き起こされるのは忖度だ。つまり、安倍首相はやはり「不都合な事実はないことにする」張本人ということではないか。
 
藤井聡が「消費増税で12%賃金が下がる 戦後、こんな総理大臣はいない」
 “安倍首相が主犯”という問題については直接言明しなかった藤井教授だったが、この「老後2000万円報告書」をお蔵入りにし、国民に不安が広がってしまったことがいかに経済に打撃を与えるかについては、鋭くその責任を追及した。
「これが、ものすごくいまの日本の経済を疲弊させるんですよ。なぜかというと、これからね、国民は不安になります。どうするかというと、たとえば給料30万円もらいました。いつも20万円使ってました。でも心配やから15万円にします。そうしたらその方の貯金は増えるかもしれないけれど、その方が使っている5万円が市場に回らなくなるんですよ。これ、1億人が5万円使わなくなったら、すさまじく経済、疲弊するんですよ」
「だからこれは“2000万円デフレ”を引き起こすんですよ。しかもこれで消費税、増税するんでしょ? 日本ぐちゃぐちゃになりますよ」
 
「みんなが貧乏になったら所得が減るから所得税も減って、政府の収入も減るんですよ。政府の収入が減ったらどうなるかと言うと、19万円の年金すら18万、17万円になるんですよ。これ、とんでもない悪影響をもたらします」
「(報告書をお蔵入りにしたことで)政府に対する信頼がなくなっただけじゃなくて、将来に対する信頼もなくなった。97年の消費増税以前ってインフレ、ようするに経済が成長していたんですよ。経済が成長しているときというのは、20歳の子とかは『30歳になったらこれくらいの給料やな』と。30歳の人は『40歳やったらこれくらいの給料になる』と。だから30代とかで家を買ってローンを組んで借金を返すとかできたわけですよ。だけど、いま景気がすごく悪い、で、将来2000万円足りないかもしれん、そうしたらいまどうしたらいいねんってことで、将来に対して不安だらけで、お金使わなくて、なけなしのお金を貯金して、自分は百均に行くと。極貧生活になって、みんな百均に行くからお金が回らないからもっと貧乏になる。で、政府に10%の消費税をぶっこ抜かれていくわけですよ。これはね、日本経済の地獄ですよ、これから」
 
 今後、日本経済は地獄になる──。さらに藤井教授はこうつづけた。
「資産を形成しないと、我々未来がないわけですよ。で、資産を形成するにはどうすればいいかというと、我々の月々の給料が上がることが必要なわけですよ。にもかかわらず、我々の給料は消費増税によって低減させられているんですよ。安倍内閣下でね、消費増税を3%にしたときに、サラリーマン給与って3%下がったんです。で、それからさらに3%下がって、今度の2%の増税によってさらに2%下がるんです。で、それを長期的にみると、1割から1割2分くらいの賃金が下がります
 そして、藤井教授は強い口調で、このように断言したのだ。
戦後の総理大臣で、12%も賃金を下げた総理はいない! これは由々しき事態だと国民のみなさんに知っていただきたい。消費増税が原因です、これは」
 
 予定どおりに消費増税を実施すると安倍首相が公表してから、ワイドショーでここまではっきりとした消費増税批判、さらには安倍首相の責任が言及されたことがあっただろうか。しかも、今回の番組の特集テーマは「老後2000万円報告書」問題だったが、これは結局のところ安倍政権の経済政策につながる問題なのだと藤井教授は指摘したのである。
 不都合な事実はなかったことにして、国民の不安や不満、さらには批判を封じ込め、玉川氏が言ったように国民を舐めきって「いろんな問題があったけれども、支持率高いじゃねえか」「なかったことにしても別に国民は怒んねえよ」と高を括ってきた安倍政権。その結果、来週にはついに消費増税が実施される。「不都合な真実はないことにする」安倍首相の一貫した姿勢が、ついに「地獄」に向けて動き出す──。この現実の切迫感を、一体どれほどの国民が認識しているだろうか。 (編集部)

旧統一教会と関係断て 霊感商法全国弁連 国会議員に要望書

 旧統一教会は、違法な伝道や異常な霊感商法で世間を騒がせました。旧統一教会が日本国内で信者から集める「献金」目標は、いまは非常に高くなっているということです。
 
 そうした違法な伝道や霊感商法被害の救済に取り組んでいる全国霊感商法対策弁護士連絡会は27日、会見を開き、全国会議員に対して旧統一協会と関係をもたないことを求める要望書を送付することを明らかにしました。
 山口弁護士(連絡会事務局長)は「安倍首相が旧統一教会と親和的なことから、集会に参加する議員が増えている」としたうえ、「旧統一教会はいまも反社会的行為を組織的にしている団体であり、政治家が関係を持つことは違法活動にお墨付きを与え、反社会的活動の是正が困難にな」と強調しました。
 また全国霊感商法対策弁護士連絡会集会基調報告した東京事務局長の渡辺博弁護士は、関係をもつ自民党国会議員が旧統一教会への責任追及を妨げる「後ろ盾」となっている状況を改める必要性を強調しました。
 
 しんぶん赤旗の二つの記事を紹介します。
 
追記 旧統一教会の正式名称は「世界基督教統一神霊協会」ですが、2015年に「世界平和統一家庭連合」と改称したため一般に「旧」をつけて呼んでいます。
 安倍首相と「旧統一教会」との関係は、かつて教祖と親しかった祖父岸信介の影響もあってやはり親しく、2006年5月に統一教会系政治団体・天宙平和連合(UPF)が福岡で開催した合同結婚式併催イベントに、当時官房長官だった安倍晋三氏が祝電を贈っています。
 
 安倍氏との具体的な関係は、ハーバー・ビジネス・オンラインの連載記事(全16回):「自民党安倍政権と統一教会。2013年参院選時に蠢いた策動<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第1回>」(2019.1.11  https://hbol.jp/183109 参院選で安倍首相肝入り候補を組織的支援、証拠資料流出も教団は関与を否定<同・第16回>」(2019.9.12  https://hbol.jp/201473?cx_clicks_art_mdl=2_title などに詳しく載っています。それによると今回登場する北村経夫参院議員2013年の参院選に全国区で出馬したとき、教団内部文書で「安倍首相じきじきの依頼」があったと組織内に通達して、統一教会票8万票を集めて当選させましたが、今夏の参院選でもそれが繰り返された可能性があるとしています。
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旧統一協会と関係断て 霊感商法全国弁連 国会議員に要望書
しんぶん赤旗 2019年9月28日
 旧統一協会(家庭連合に改称)による違法な伝道や霊感商法被害の救済に取り組んでいる全国霊感商法対策弁護士連絡会(事務局長・山口広弁護士)は27日、記者会見を開き、全国会議員に対して旧統一協会と関係をもたないことを求める要望書を送付することを明らかにしました。
 旧統一協会は10月、愛知県内で大規模な集会を予定しています。これは旧統一協会が勢力を誇示し、政界への浸透を図ることを目的とするもので、旧統一協会側は有力政治家ら20人が参加すると内部で情報を流しているといいます。
 昨年7月に岡山県で開いた同種の集会には、自民党の山下貴司前法相、逢沢一郎衆院議員、北村経夫参院議員が来賓として出席し、加藤勝信厚労相は秘書を代理出席させたうえ祝電を送りました。
 
 要望書は ▽旧統一協会の今回の集会に参加したり、賛同メッセージを送るなどしないこと ▽旧統一協会やその正体を隠した各種イベントに参加・賛同しないこと ▽選挙で旧統一協会信者らの支援を受けないこと―の3点を求めています。
 山口弁護士は「私たちは旧統一協会と政治家の関係を警戒しています。安倍晋三首相が旧統一協会と親和的なことから、集会に参加する議員が増えている」としたうえ、「旧統一協会は反社会的行為を組織的に行ってきた団体であり、今もそれを続けています。政治家が関係を持つことは違法活動にお墨付きを与え、反社会的活動の是正が困難になります」と強調しました。
 
 
霊感商法全国弁連が集会 市民・宗教関係者ら参加
しんぶん赤旗 2019年9月28日
 全国霊感商法対策弁護士連絡会は27日、東京都内で集会を開き、弁護士、宗教関係者、市民ら120人が参加しました。
 基調報告した東京事務局長の渡辺博弁護士は、旧統一協会が日本国内で信者から集める「献金」目標が非常に高くなっていることを指摘。裁判での責任追及とともに、関係をもつ自民党国会議員が旧統一協会への責任追及を妨げる「後ろ盾」となっている状況を改める必要性を強調しました。
 
 元信者の女性、2世元信者が体験を報告しました。
 「エホバの証人」の問題点について、日本基督教団深沢教会の齋藤篤牧師が報告。ジャーナリストの江川紹子さん、藤倉善郎さんが講演しました。