2022年5月31日火曜日

戦争を未然に防ぐ外交努力こそ必要

 ウクライナ戦争を機に軍事費増額=軍備増強や9条の改憲を支持する人たちが増え、29日のNHK「日曜討論」でも安全保障問題がテーマになりました。

 共産党の小池書記局長は各党から軍事費増額は当然との主張が出されたことに対し、「政治の最大の役割は戦争を未然に防ぐ外交努力」なのに「外交の話がほとんど出てこない」のはおかしいとて、憲法9条を生かした積極的な平和外交をすべきであり、その良い事例として、米中韓など関係各国を巻き込み、徹底した対話で平和と協力の地域をつくる努力を重ねてきた東南アジア諸国連合(ASEANの構想こそが有用であると述べました。
 そして軍事費のGDP(国内総生産)比2%(年間11兆円)への増額や「敵基地攻撃能力」保有などの主張を厳しく批判しました。
 自国防衛のためと称して軍拡競争に奔るのは最も愚かなことで、いまや年間100兆円を軍事費に費やしている米国の内政の実態が「貧困大国」そのものであるのがいい例です。かつてのソ連もそれで破綻しました。
 世界の各国、とりわけ近隣諸国との善隣友好の関係を築くことは古来の鉄則であり国を守る要諦です。そしてそれが憲法9条の精神です。それを自衛隊を米軍の尖兵と見做している米国の言うがままに、中国を敵視し軍備拡張=軍事大国化に奔るのは愚かとしか言いようがありません。
 しんぶん赤旗が「日曜討論」における小池書記局長の発言を報じました。
 概要と詳報の二つの記事を紹介します。
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NHK「日曜討論」 小池書記局長が主張
戦争を未然に防ぐ外交努力こそ必要 軍事費GDP比2%“暮らし押しつぶす”
                       しんぶん赤旗 2022年5月30日
 日本共産党の小池晃書記局長は29日、NHK「日曜討論」に出演し、ウクライナ危機で浮き彫りになった日本の安全保障問題などについて各党の代表と討論しました。小池氏は「政治の最大の役割は戦争を未然に防ぐ外交努力だ」と述べ、憲法9条を生かした積極的な平和外交を主張するとともに、軍事費のGDP(国内総生産)比2%への増額や「敵基地攻撃能力」保有などの議論を厳しく批判しました。(詳報 下掲
 小池氏は各党から軍事費増額は当然との主張が出されたことに対し、「外交の話がほとんど出てこない」と述べ、ロシアのウクライナ侵略は絶対許されない国連憲章違反だが、力に対して力で対抗すればアジアは本当に危険になると強調。徹底した対話で東南アジアを平和と協力の地域につくりかえてきたASEAN(東南アジア諸国連合)の経験を紹介し、「地域のすべての国を包摂するような集団的安全保障の枠組みをつくっていくことが、ヨーロッパの教訓を生かす道だ」と主張しました。
 自民党が主張する軍事費のGDP比2%への増額について、小池氏は、5兆円から6兆円が必要となるが、国会で財源をどうするか聞いても岸田文雄首相からは何の説明もなかったと指摘。消費税の増税か教育・医療の削減か戦前のような国債による戦費調達か、いずれにしても「日本を軍事対軍事の危険な道に引き込み、暮らしをも押しつぶしかねない」と批判しました。
 自民党や維新が主張する「敵基地攻撃能力」をめぐって同党の小野寺五典元防衛相らが「日本が攻撃されたときの話だ」と述べたのに対し、小池氏は「それは2015年の安保法制以前の話だ」と反論。安保法制のもとでは日本に直接の武力攻撃がなくても同盟国への攻撃やそれへの着手があれば攻撃できるとしていると指摘し、「相手国から見れば先制攻撃になる。相手が反撃してくれば日本中に戦火が広がってしまう。絶対に認めるわけにはいかない」と語りました。
 また、日米首脳会談で「米国の拡大抑止」の確保がうたわれたことについて、小池氏は「拡大抑止とはいざとなったら核を使うことを前提とする議論で、核兵器のない世界に逆行するものだ」と批判。プーチン・ロシア大統領のような核先制使用をためらわない核大国の指導者が出てきたもとで核抑止力論は無力になっていると述べ、核なき世界をめざすために日本政府は核兵器禁止条約に参加する決断をすべきだと主張しました。


NHK「日曜討論」 小池書記局長の発言
                       しんぶん赤旗 2022年5月30日
 日本共産党の小池晃書記局長は29日のNHK「日曜討論」で、ウクライナ危機のもとでの安全保障政策などについて各党の代表者と議論しました。小池氏の発言は次の通りです。

ウクライナ危機と安全保障
地域のすべての国包摂する集団的安全保障の枠組みを東アジアで
 「ウクライナ危機で浮き彫りになった日本の安全保障上の課題をどう考えるか」というテーマで、自民党の小野寺五典・安全保障調査会長(元防衛相)は「いくら平和といっても、ロシアのような国がある以上、防衛力をしっかり整備し、同じ考えを持つ国と連帯を組むことが重要だ」と話しました。
 国民民主党の大塚耕平代表代行は「自分の国は自分で守るという公約を発表しているし、必要な防衛費は増やす必要がある」と述べました。
 これに対し小池氏は「政治の最大の役割は戦争を未然に防ぐ外交努力だ」と述べたうえで、「これまでの議論に外交がほとんど出てこない」と指摘しました。その上で、米中韓ロなど関係各国を巻き込み、徹底した対話で平和と協力の地域をつくる努力を重ねてきた東南アジア諸国連合(ASEAN)のとりくみを紹介。「地域のすべての国を包摂するような集団的安全保障の枠組みを東アジアでつくることが必要だ。日本は憲法9条を生かした積極的な外交で役割を果たすべきだ」と強調しました。

軍事費増額
GDP比2%なら11兆円超 世界第3位の軍事大国に――暮らしを押しつぶす
 日米首脳会談で岸田文雄首相が「防衛費の相当な増額」を約束し、軍事費のGDP(国内総生産)比2%への増額という議論が続いていることについて、自民・小野寺氏は「防衛予算の増額という総理の発言は重要だ」と歓迎し、増額の金額については「積み上げてみないと分からない」とごまかしました。公明党の北側一雄副代表も「防衛費増額は避けて通れない。しっかり議論したい」と述べました。
 立憲民主党の渡辺周・外交・安全保障・主権調査会会長代行は、条件付きで「防衛費の増額の議論はすべきだ」と発言。国民・大塚氏は「必要な防衛費は増やす必要がある」と述べました。維新の青柳仁士・外務・安全保障部会長は「防衛費は1%の枠にとらわれている。見直すべきだ」とあおりました。
 小池氏は「積み上げる前に首相は『相当な』と言い、米国に約束している」と指摘。GDP比2%とは11兆円超で、世界第3位の軍事大国になってしまうと批判。「財源をどうするのか、首相は国会でまったく答えようとしない。安倍晋三元首相が言うように国債でまかなうとなると、戦前のような歯止めのない戦費調達につながる。日本を軍事対軍事の危険な道に引き込み、暮らしをも押しつぶしかねない」と警告しました。
 さらに、「沖縄復帰50年にあたっての沖縄県の新しい建議書で基地のない平和な沖縄を言った直後に、それを一顧だにせず、辺野古の新基地建設で一致をしたということも許されない」と厳しく批判しました。
 一方、自民・小野寺氏は「防衛費で必要なのは研究開発費だ。防衛分野の研究開発からいろいろな技術が出た」と主張しました。
 これに対し、小池氏は「研究開発というなら研究開発そのものの予算削減をやめて、増額すべきだ」と反論。「教育費に対する公的支出はGDP比ではOECD平均は4・1%、日本は2・8%だ。そういうところにお金を使わずに、研究開発を防衛費増額のだしに使うべきでない」と主張しました。
 また、防衛省の武器購入先の1位は常に米国政府で、FMS(有償援助)で米国言いなり価格の高額な兵器を購入することに参院で全会一致で警告決議があがっていることを指摘し、「アメリカ兵器の爆買いのための莫大(ばくだい)な費用を、さらに対米公約で増やしていくことなど、許されない」と語りました。

「敵基地攻撃能力」
安保法制下では先制攻撃に――相手が反撃すれば日本中に戦火が広がる
 自民党や維新が主張する「敵基地攻撃能力」をめぐって、自民・小野寺氏は「日本が攻撃されたときの話だ」と弁明し、公明・北側氏は、自衛隊と米軍による「盾」と「矛」の関係に触れた上で「基本的な役割分担は変えないまでも、全く矛の能力を維持しないでいいのかが問われている」と理解を示しました。維新・青柳氏は「憲法の議論、専守防衛の定義の議論を逃げずにすべきだ」と主張しました。
 小池氏は「与党の2人は“日本が攻撃された場合”とおっしゃったけど、それは2015年の安保法制までの話だ。安保法制のもとで、日本に対する直接の武力攻撃がなくても、同盟国への攻撃や、それへの着手があれば攻撃できるとされた。相手国からみれば日本の行為は先制攻撃となる。相手が反撃してくれば日本中に戦火が広がってしまう」と指摘しました。
 また、「相手国に脅威を与えるような攻撃的兵器は保有できないというのが、これまでの憲法解釈だ。専守防衛の大原則を投げ捨て、相手国の基地だけでなく、指揮統制機能=中枢まで含めてたたくというのは9条のもとで到底許されるものではない」と強調。「維新が言うような9条改憲は、危険な道を何の制約もなく進めるためのもので、絶対に認められない」と主張しました。
 自民・小野寺氏は「先制攻撃は国際法違反だし、専守防衛の考え方は堅持する」などと述べながら、「(日本が)平和といっても、ミサイルを撃ち込み、侵略する国があるのだから、まず自らの力を高めて攻撃されないよう抑止力もいる」と「敵基地攻撃能力」保有を主張しました。
 小池氏は「先ほどの指摘に答えていない」と述べ、安保法制のもとでは日本に対する直接攻撃ではなくても、「存立危機事態」で日本が攻撃をするということになれば、日本に対する報復が及んでくると指摘し、「安保法制のもとで、ますます危険になっている」と主張しました。
 自民・小野寺氏は「存立危機事態になっても必ず反撃能力を行使しないといけないということではない」と述べ、「敵基地攻撃能力」については「日本が攻撃を受けている場合だ」と繰り返しましたが、小池氏は「直接攻撃を受けていない場合もあり得るということだ」と主張しました。

「拡大抑止」、核軍縮
プーチン大統領の出現で核抑止力論は無力に――核禁条約への参加決断こそ
 議論は「核兵器をめぐる現状」に。日米共同声明で米国の核戦力による「拡大抑止」の重要性を確認したことについて、小池氏は「拡大抑止とはいざとなったら核を使うことを前提とする議論で、『核兵器のない世界』に逆行するものだ」と批判。「核兵器は人類と共存できない、絶対に使ってはいけない悪魔の兵器だ」と力を込めました。
 そのうえで、「ロシアのプーチン大統領のように核の先制使用をためらわない核大国の指導者が出ているもとで、核抑止力論は無力になっている」と強調。「世界は、核戦争を止めるため、核抑止と決別し核なき世界を目指す方向だ。核兵器禁止条約に86カ国が署名し、61カ国が批准しているのに、唯一の被爆国の日本がこれに背を向けている」と非難し、「6月に開かれる同条約の第1回締約国会議に日本政府は参加すべきだ。被爆の実相を世界に訴え、核禁条約に参加する決断をすべきだ」と述べました。
 自民・小野寺氏は「核は悪魔の兵器というのは小池さんと同じだ」と言いつつ、「日本が核攻撃されないようにするためには、日米の関係で抑止を働かせるしかない」と核抑止力論に固執。公明・北側氏も「米の核抑止力は必要だ」と述べました。

31- 「バイデンの戦争」にも大誤算 日本はアジアの中の「はぐれ狼」

 日刊ゲンダイが「 ~ 『バイデンの戦争』にも大誤算」とする記事を出しました。

 前半はウクライナ情勢についてで、例によって西側の情報だけでは実体は掴めないという指摘です。事態が西側メディアが報じる通りでないのは明らかですが、本当のところはどうなのか、元外務省国際情報局長の孫崎享氏も「本当はどちらが勝っているのかを見極めるのは難しく、間違いないのはこの戦争が長期化することだけ」と述べています。
 「アジア諸国で『アメリカ離れ』が進み孤立する」という中見出しを立てた後半の章では、唯一「米国の国益のために動いている日本アジアの中で孤立化を深めている実態を報じています。
 これはもう疑いのない事実で、かつてはアジアの中で信頼されていた時期もあったのに、いまや日本が「米国の腰ぎんちゃく」と見做されるようになってから久しくなります。
 日刊ゲンダイは、「米国との一体化をありがたがり、西側の情報だけをうのみにしていたら見えないものがある。日本は世界の潮流から取り残されかねない」と結んでいます。
 日本は、アジアの中で「はぐれ狼」になっている実態を改めて見つめ直すべきです。
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<ウクライナはどんどん占領されている>「バイデンの戦争」にも大誤算
                          日刊ゲンダイ 2022/5/28
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 ロシアの侵攻が続くウクライナの現状は、本当のところどうなのか。
 東部ルガンスク州の攻防は、ロシア軍が圧倒的に有利な戦況にあるようだ。ガイダイ州知事は25日、「州の95%がロシアに制圧された」と通信アプリ「テレグラム」に投稿。ウクライナのクレバ外相も、東部の戦闘について「人々が言う以上に状況はかなり悪い」と認めている。
 ロイター通信によると、親ロ派武装勢力は27日、東部ドネツク州のリマンを完全制圧したと表明。ウクライナのアレストビッチ大統領府長官顧問もリマン陥落を認めた。リマンは東部の主要都市に通じる陸の要衝で、ウクライナ軍の輸送拠点のひとつだ。
 一時、ロシア軍を国境近くまで押し戻したとされる北東部のハルキウも、再びロシア軍の攻撃にさらされている。ハルキウはウクライナ第2の都市だ。26日には市内の住宅地が砲撃され、少なくとも9人が死亡、19人が負傷したという。
 東部以外でも、ロシア軍は攻勢を強めている。ウクライナ側の発表によれば、ロシアの支配下にある南部でも部隊の増強がみられるという。また、短距離弾道ミサイルシステム「イスカンデル」がウクライナの北側に位置するベラルーシに配備されつつあり、首都キーウやウクライナ西部への攻撃に対する警戒が強まっている。
 これまで、われわれがテレビで見聞きしてきた戦況とずいぶん違う。ロシア軍は消耗し、プーチン大統領は苦境に立たされているのではなかったのか? 

 つい最近まで、ウクライナ南東部マリウポリの攻防が連日、日本のテレビで伝えられていた。最後の砦となったアゾフスタル製鉄所に立てこもって抗戦していた兵士が17日に投降。そこに至るまでの洪水のような戦況報道では、投降でマリウポリは陥落したが、ロシア軍を南東部に引き付け、足止めさせるのに十分な働きをしたと専門家が解説していた。この攻防でロシア軍は戦力を大きくそがれ、今後は東部戦線に集中することになるが、ウクライナ軍が6月ごろから本格的な反転攻勢に出てロシア軍を撃退することも可能だと言っていたはずだ。
 ところが、ここ数日で聞こえてくる戦況は、聞かされていた話とまったく様子が違う。ロシア軍は侵攻を進め、ウクライナはどんどん占領されている。一体、どうなっているのか。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は、奪われた国土を「奪還する」と力強く宣言していた。日本の国民世論もそれを支持し、プーチン苦境の報道には心の中で快哉を叫び、早期の戦争終結とウクライナ勝利を願ってきたはずだ。

戦争の長期化は果たして米国のシナリオ通りなのか
「まず、日本での戦況報道は西側の情報を基にしているということは考慮しなければいけません。西側メディアは基本的にウクライナ側に有利な情報を流し、ロシアやプーチン大統領の劣勢を強調する。5月16~22日に行われたロシア国内の世論調査センターでプーチン支持率が81.3%に達し、プーチンの行動も78.4%が支持しているという実態は日本では報じられないのです。もちろん、ロシアの世論調査にバイアス(⇒偏位)がかかっている可能性はありますが、それは西側の情報も同じ。ロシア軍が攻勢を強めているのは事実でしょう。ただし、ウクライナでの戦争の長期化を米国が望んでいるのも確実です。領土を簡単に奪い返すよりも、東部戦線で膠着状態が続いてくれた方がありがたいという米国側の事情もある。本当はどちらが勝っているのかを見極めるのは難しく、間違いないのはこの戦争が長期化することだけです」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)
 ロシアによる東部占領は米国のシナリオ通りなのか、あるいは誤算なのか。今はまだ判然としない。

 誤算で言えば、米国のバイデン大統領がシャカリキな「中国包囲網」も不発に終わりそうだ。ウクライナに武器を供給して戦闘を任せることでロシアを弱体化させ、その間に潜在的な敵国である中国に注力する。そういう思惑で22日に来日したバイデンは、あからさまに「中国包囲網」を推し進める姿勢を見せた。
 日本でIPEF(インド太平洋における経済枠組み)の設立を宣言し、クアッド(日、米、インド、オーストラリアの4カ国による外交・安全保障の協力体制)の首脳会談を開催したのだ。
「バイデン大統領に言われるがまま、日本の岸田首相は中ロに対抗する枠組みにインドを引き込もうと必死にアプローチしましたが、かわされてしまった。インドが包囲網に加わらなければ、クアッドは包囲網の意味がありません。そこで、バイデンはアジア諸国を巻き込んだIPEFを提唱したのですが、やはりアジア諸国に距離を置かれている。米国に盲目的に追随しているのは、バイデンから『国連常任理事国入りを支持する』と持ち上げられて舞い上がっている岸田首相だけです。ウクライナ支援に関しては、欧州も米国から距離を置き始めているように見える。失言が多く、判断能力に懸念があるバイデンに付き従っているだけの日本は国際社会からどう見られているか、考えた方がいい。日本国憲法より上位にある日米地位協定に唯々諾々と従っている米国の属国が常任理事国入りなんて、アジア諸国も支持するわけがないのです」(政治評論家の本澤二郎氏)

アジア諸国で「アメリカ離れ」が進み孤立する日本
 バイデンの訪日と同時期にタイ・バンコクで開かれていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)貿易相会合でも、日米両国は共同声明案にロシアを強く非難する文言を盛り込もうとしたが、参加国の立場は一致せず、共同声明は発表できなかった
 26日には、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への制裁強化が国連安全保障理事会で採決にかけられ、初めて否決された。2006年以降、全会一致で制裁強化を決議してきたが、常任理事国のロシアと中国が拒否権を行使したため廃案になったのだ。
米国が世界を分断しようと動いていると、中国は懸念を表明している。それに追随しているのが日本で、このままではアジア諸国と日本の間に分断の線が引かれることになりかねません。“脱アメリカ”が進むアジア地域で日本が孤立化すれば、経済的なマイナスが大きすぎる。外務省が25日に発表した東南アジア諸国連合(ASEAN)の世論調査でも、主要20カ国・地域(G20)で『今後重要なパートナーとなる国』は中国がトップでした。米国だって中国との貿易を増やしているのが実態です。どの国も、自国の国益を第一に考えて行動しているのに、日本だけは米国の国益のために動いているのです」(孫崎享氏=前出)

 訪日したマレーシアのマハティール元首相も27日、都内で講演し、IPEFの中国排除に懸念を示した。「中国は他国の経済成長に貢献している」「中国との共存が重要だと米国は気付くべきだ」というのだ。IPEF創始メンバーに名を連ねているマレーシアも、米国の政治的な企みに疑念を抱いているのだ。ウクライナ情勢に関しても、NATO(北大西洋条約機構)の兵器供与が戦争拡大につながっていると指摘。
「軍事行動で平和は訪れない」と、米国に対する不信感をあらわにしていた。確実に、アジアの米国離れは進んでいるのだ。
 米国との一体化をありがたがり、西側の情報だけをうのみにしていたら見えないものがある。日本は世界の潮流から取り残されかねない。

2022年5月30日月曜日

「桜」前夜祭に安倍氏側 酒持ち込み提供 毎年サントリーから無償寄付受け

 安倍元首相側が「桜を見る会」前夜祭の会場に大量の酒を持ち込み、有権者らにふるまっていたと、新たな重大疑惑を報じた赤旗日曜版(529日号)のスクープ記事が大きな反響を広げています。日刊ゲンダイとLITERAが「『しんぶん赤旗日曜版』529日号がスクープを飛ばした」と配信しました。

 これについて神戸学院大学教授の上脇博之氏は、「企業から酒の無償提供を受けたのは規正法違反になるので収支報告書にも記載しなかったのでしょうが、不記載も規正法違反で、違法に違法を重ねています。新たな重大事実が出てきた以上、安倍元首相は当然、国会で説明する必要があります」と語りました。
 しんぶん赤旗が報じました。
 併せて赤旗日曜版(529日号)の該当記事を紹介します。
   お知らせ
  都合により31日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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日曜版スクープに反響
「桜」前夜祭に新たな重大疑惑 安倍氏側 酒持ち込み提供
 毎年サントリーから無償寄付受け
                       しんぶん赤旗 2022年5月29日
 安倍晋三元首相側が「桜を見る会」前夜祭の会場に大量の酒を持ち込み、有権者らにふるまっていた ―。桜を見る会をめぐる新たな重大疑惑を報じた赤旗日曜版(5月29日号)のスクープ記事が大きな反響を広げています。
 「『赤旗砲』が炸裂(さくれつ)した」と報じたのは「日刊ゲンダイDIGITAL」。ニュースサイト「LITERA(リテラ)」も、「『しんぶん赤旗日曜版』5月29日号がスクープを飛ばした」と配信しました。
 日曜版が公式ツイッターに投稿(25日)した記事告知は、リツイートが1・1万、「いいね」が1・6万に達しています(28日午後7時現在)。

 日曜版編集部は、東京地検に前夜祭をめぐる事件の記録の閲覧を請求。開示された文書の中に前夜祭会場のホテル職員が作成した「宴会ファイル」(2017~19年分)がありました。18年分には持ち込んだ酒の本数や種類について「ビール(80)ウイスキー(30)赤ワイン(24)白ワイン(24)焼酎(720ml)(12)」と記載されていました。
 大量の酒はサントリーが無償提供したもの。サントリーホールディングス広報部は日曜版編集部の取材に、16年以降、毎年前夜祭に無償提供していたことを認め、金額について「年度によって若干金額は異なるが、15万円程度」と説明しています。

 政治資金規正法は、物品などの供与や交付を「寄付」と規定。企業が寄付できるのは政党か政治資金団体のみ。同社から前夜祭を主催した「安倍晋三後援会」への寄付は違法な企業献金にあたる可能性があります
 前夜祭をめぐりこれまで、安倍氏側が会費を上回る費用を補てんしていたことが判明しています。
 ホテル側との契約交渉を担当した東京の安倍事務所の秘書は検察に、会費の補てんが、公職選挙法で禁じられている選挙区内の有権者への寄付にあたるおそれがあると認識していた、と供述。「前夜祭の会場でホテルから提供される飲食の代金を抑えるため、前夜祭の会場にお酒を持ち込んだ」とのべています。
 日曜版編集部の取材に安倍事務所は回答しませんでした。


スクープ!!
桜を見る会前夜祭 新たな利益供与 安倍氏側持ち込み ふるまい酒
サントリーが無償供与 違法寄付の疑い
                   しんぶん赤旗日曜版 2022年5月29日号
 「桜を見る会」前夜祭をめぐる新たな重大疑惑が浮上しました。安倍晋三・元首相側が会費を上回る費用を補てんしただけでなく、会場に大量の酒を持ち込み、有権者らに提供していました。安倍氏の秘書の供述調書によると、大量の酒の持ち込みは、公職選挙法違反の指摘を恐れ、補てん額を抑えるためのいわぱ隠ぺい工作″。しかも違法寄付の疑いも-。
 安倍氏は国会で説明する責任があります。   取材班

編集部が事件記録を調査し発覚
 刑事確定訴訟記録法に基づき編集部は東京地検に事件記録の閲覧を請求。開示された安倍氏の秘書やホテルの従業員らの供述調書などを閲覧しました。

「宴会ファイル」
 2018年4月の「安倍音三後援会 桜を見る会前夜祭」。会場となたホテルの職員が作成した「宴会ファイル」には、安倍事務所側が持ち込んだ酒の種類や本数が明記されていました。「ビール(80)ウスキー(30)赤ワイン(24)白ワイン(24)焼酎(720
ml)(12)」
 前夜祭は13~19年まで、東京都内の高級ホテルで安倍氏の地元後援者らを対象に会費1人5千円で開かれたもの。ホテルヘの支払額が、参加者から集めた会費を上回ったため、不足分を安倍氏側が補てんしていました。
 事件記録によると安倍氏側の補てん額は、17年で約186万円、18年で約145万円、19年で約251万円となっています。
   桜を見る会前夜祭で安倍氏側が地元有権者らに酒を提供

 

安倍氏側が会場に持ち込ん

 

これまでに判明してい

 

 

だ酒と本数が新たに判明

 

るホテルへの補填

 

 

ウイスキー   30本

 

 

 

 

赤ワイン    24本

 

 

 

 

白ワイン    24本

17年

186万860円

 

 

焼酎      12本

 

 

 

 

ビール     80本

 

 

 

 

ウイスキー   30本

 

 

 

 

赤ワイン    24本

18年

144万9700円

 

 

白ワイン    24本

 

 

 

 

焼酎(720ml)    12本

 

 

 

 

ビール500ml   20本

 

 

 

 

ウイスキー   42本

 

 

 

 

赤ワイン    24本

19年

250万7732円

 

 

白ワイン    24本

 

 

 

 

焼酎      12本

 

 

 

 補てん額などを政治資金収支報告書に記載しなかったとして「安倍晋三後援会」の代表で安倍氏の公設第1秘書だった配川博之氏が政治資金規正法違反(不記載)罪で東京地検に略式起訴(20年12月)されました。
 選挙区内の有権者への寄付を禁じた公選法違反容疑について東京地検は「参加者に寄付を受けた認識がなかった」などとして不起訴処分。不起訴処分だった安倍氏は検察審査会で「不起訴不当」の議決を受けましたが、21年12月に再び不起訴処分(嫌疑不十分)となりました。
 編集部が注目したのは、前夜祭の会場となったホテル職員が作成した「宴会ファイル」。少なくとも17~19年の前夜祭で安倍事務所側が会場に持ち込んだ酒の種類や本数が詳しく記されています。(表)

公選法違の会費補てん隠ぺいしようと〝工作″

秘書が供述
 安倍氏側は、参加者の会費を上回る費用を補てんしただけでなく、会場に大量の酒を持ち込み、有権者らに提供していたのです。これ自体、選挙区内の有権者への寄付を禁じた公選法違反の疑いが濃厚。なぜ大量の酒類を持ち込んだのか-。
 その動機″が、ホテル側との契約交渉を担当した安倍氏の東京事務所の秘書の供述調書に記されています。
 「(会費の)不足分を、安倍代議士個人や安倍代議士の関係政治団体が負担することになれば、前夜祭に参加した地元の有権者に対する寄付に該当し公職選挙法に違反するおそれがあることは分かっていました。そのため、私は、前夜祭の会場でホテルから提供される飲食の代金を抑えるため、前夜祭の会場にお酒を持ち込んだ」
 費用補てんが公漕法に違反する恐れがあると認識し、その補てん額を抑えるために、大量の酒を持ち込むという隠ぺい工作″だったのです。
 安倍氏側による有権者らへの利益供与は、会費の不足分の補てんだけでなく、酒の提供も加えたものだったことになります。

収支報告書に記載なし
 ところが安倍氏の関係政治団体の政治資金収支報告書には、該当する支出の記載がありません。なぜか 
 19年の「宴会ファイル」には、酒の本数とともに「●●様より前日持ち込み」として電話番号が付記されています。電話をかけると「サントリー秘書部です」。編集部が酒の納入の経緯などを責問すると、サントリーホールディングス(HD)広報部は「会の開催については、安倍議員事務所から教えていただいた。多くの方が集まる会だとお聞きし、弊社製品を知っていただく良い機会と考え、この会に協賛させていただいた」と回答しました。
 酒の代金は「無償」と説明。各年の酒の金額については「年度によって若干金額は異なるが、15万円程度」としています。
 政治資金規正法は、物品などの供与や交付を「寄付」と規定。企業が寄付できるのは政党か政治資金団体に限られており、同社から「安倍音三後援会」への寄付は違法な企業献金に該当する可能性があります。
 サントリーHDの新浪剛史社長は安倍政権下の14年9月から経済財政諮問会議の民間議員を務めています。18、19年には前夜祭の1週間前に安倍氏と面談・会食しています。
 安倍氏は首相在任中、前夜祭について国会で118回も虚偽答弁をしました。配川氏が略式起訴された20年12月、安倍氏は自ら答弁を修正したいと申し出て衆参両院の議院運営委員会で謝罪・説明しています。
 前夜祭の明細書の再発行と国会提出を求められると、安倍氏は「ホテルの営業上の秘密」などと提出を拒みました。しかしホテル側は地検に明細書などを提出。一部を除き閲覧できる状態でした。明細書には酒の持ち込みを示す記載があり、安倍氏自身が発覚を恐れて隠していた疑いがあります。
 安倍事務所は回答しませんでした。

安倍氏は国会で説明を   神戸学院大学教授 上脇博之さん

 安倍元首相は国会で「収支報告上、計上していれば問題がなかった」などと説明していました。問題ないどころか、秘書らは当初から、会費収入で不足する支払い分を補てんするのは有権者への寄付になり、公職避挙法違反にあたると認識していました。これを検察が公選法違反で起訴せず、嫌疑不十分で不起訴にしたのは不当な処分でした。
 企業から酒の無償提供を受けたのは規正法違反になるので収支報告書にも記載しなかったのでしょうが、不記載も規正法違反で、違法に違法を重ねています
 新たな重大事実が出てきた以上、安倍元首相は当然、国会で説明する必要があります。