2021年6月30日水曜日

「生産性低い人に残業代という補助金を出すのおかしい」という竹中

 27日、菅首相はブレーンとされている竹中平蔵氏と官邸で面談をおこな「経済の動向などをめぐって意見を交わし」まし

 竹中氏政府対策分科会の尾身会長が国会で「いまのパンデミックの状況で五輪を開催するというのは、普通はない」と発言した際に、『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)で「明らかに越権」、「人流抑制の効果はエビデンスがない」「日本の国内事情で『やめ』というのはあってはいけない」などと、首を傾げるしかない発言を連発しました。特に「人流抑制の効果にエビデンスがない」に至っては正気なのかというレベルです。
 竹中氏の実態は人材派遣会社パソナグループ会長なのですが、なぜかメディアには肩書「慶大名誉教授」をするよう強要している辺りも、うさん臭さ満点です。
 パソナグループは東京五輪の「オフィシャルサポーター」として大会スタッフの派遣業務を請け負っており、その中抜き率は97%とも言われているほか、政府のコロナ対策事業の大量受注などにより、前期の10倍以上の純利益を上げる見込みであるなど、コロナと五輪利権暴利を貪っている企業です。
      ⇒(6月9日)組織委の現役職員が五輪の異常な人件費と中抜きを告発
 竹中氏はパソナの経営者でありながら学者を装って国の経済委員会のメンバーを続けるなど「利益相反」の立場を批判されたり、郵政民営化では米国の利益第一で振る舞ったため「売国奴」呼ばわりもされ、彼を「政商」と呼ぶ人は今も沢山います。
 労働者を安く使うことに対する執念は強く、度々「正社員をなくせばいい」と主張しました。その流れで、残業代が不要となる「裁量労働制」の拡大にも熱心で、「残業するのは仕事が遅いから」という実に幼稚な発想に基づいて、平気で「生産性の低い人に残業代という補助金を出すのはおかしい」と発言していることでも有名です。
 こうした人間をブレーンにしている菅氏の人間としての底の浅さはもはやどうしようもありません。
 LITERAが取り上げました。
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菅首相が竹中平蔵と面談、残業代なし「裁量労働制」対象拡大を相談か 竹中は「生産性低い人に残業代という補助金を出すのおかしい」
                       水井多賀子 LITERA 2021.06.29
 まったくグロテスクとしか言いようがない。デルタ株などの変異株による感染拡大が明確になりながら観客を入れての東京五輪開催をゴリ押しして棄民姿勢をあらわにしている菅義偉首相だが、そんな最中の27日、よりにもよって、あの竹中平蔵氏と面談をおこなったからだ。
 報道によると、菅首相と竹中氏は「経済の動向などをめぐって意見を交わした」といい、竹中氏は面談後、記者団に対して「菅総理大臣は『ワクチン接種をこのまましっかりと続けて新型コロナウイルスを収束させ、経済をうまく回していきたい』と話していた」(NHKニュース27日付)などと語ったが、タイミングを考えれば東京五輪が話題にあがらないわけがない。
 竹中氏といえば、政府対策分科会の尾身茂会長が国会で「いまのパンデミックの状況で五輪を開催するというのは、普通はない」と発言した際も、6月6日放送の『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)で「明らかに越権」と批判。さらには「人流抑制の効果はエビデンスがない」「日本の国内事情で世界に『やめます』というのはあってはいけない」などと五輪開催を主張し、挙げ句、「世論は間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違ってますから」などと反対世論にまでケチをつけたことも記憶に新しい。
 竹中氏は菅首相のブレーンとして知られる人物だが、ようするに菅首相は、自分と同じように感染防止対策を軽視して東京五輪開催強行論を唱える竹中氏による鼓舞激励を得たくて、こんなタイミングで面談をおこなったのだろう。
 だが、竹中氏はたんなる経済学者のブレーンなどではない。菅首相と竹中氏の面談を報じたNHKや毎日新聞などは竹中氏の肩書を「慶應義塾大学名誉教授」としていたが、竹中氏は「パソナグループ取締役会長」だ。
 そして、本サイトでも繰り返し指摘してきたように、パソナグループは東京五輪の「オフィシャルサポーター」として大会スタッフの派遣業務を請け負っており、その中抜き率は97%とも言われている。さらに、パソナグループは今期、東京五輪、そして政府のコロナ対策事業の大量受注などにより、前期の10倍以上の純利益を上げる見込みとなっている。つまり、五輪利権に食い込み暴利を貪っているのである。
 東京五輪の開催に国民の不安が募るなか、国民が納得できる説明さえも放棄しておきながら、ど真ん中の利権関係者と面談して東京五輪の開催に弾みをつける──。まさしくその腐りっぷりを象徴するような面談だと言えるだろう。

データ捏造で削除された裁量労働制の対象拡大を厚労省が再び検討 営業職も働かせ放題に
 しかも、このタイミングでの竹中氏との面談には、さらなる問題が潜んでいる。それはいま、竹中氏の肝いりである「裁量労働制の対象拡大」に菅政権が再び手をつけようとしているからだ。
 2018年に強行採決・可決された「働き方改革」一括関連法案では当初、労使で決めた時間を働いたとみなす「裁量労働制」の対象職種の拡大が含まれ、新たに法人向け営業職などが追加される予定だった。つまり、これまで裁量労働制は研究開発職などの専門的な職種である「専門業務型」と、経営の中枢で企画や立案などの業務に従事する労働者が対象の「企画業務型」にかぎって認めてきたが、「企画業務型」の対象業務を拡大し、営業職までを残業代ゼロで働かせ放題する計画が進んでいた。
 ところが、国会審議では安倍晋三首相(当時)による「裁量労働制のほうが労働時間は短いデータもある」という答弁の根拠となったデータが“捏造”だったことが判明。結果、「裁量労働制の対象拡大」は法案から削除され、見送られることとなった。
 だが、ここにきて〈(厚労省は)「裁量労働制」が適用できる対象業務の拡大を検討する〉(朝日新聞26日付)と報道され、〈来月から有識者の検討会を始める。その後、労働政策審議会で議論する〉と伝えられたのだ。
 捏造データ発覚によって見送りとなった「裁量労働制の対象拡大」をまたも復活させて検討をはじめる──。ならば当然、「裁量労働制のほうが労働時間は短いデータもある」という安倍前首相の主張を裏付けるデータが得られていなければならないが、ところが、厚労省が25日に公表した調査結果によると、「1日あたりの平均労働時間は一般の職場より裁量労働制のほうが約20分長い」ことが判明。さらに、1週間の労働時間が60時間を超えた人の割合は、裁量労働制ではない人が5.4%であったのに対して裁量労働制で働く人は9.3%と上回り、深夜時間帯の仕事が「よくある」「ときどきある」と回答した人も裁量労働制で働く人は34.3%と、そうではない人の17.8%を上回っている
 ようするに、裁量労働制のほうが労働時間は長くなることが厚労省の調査からも判明したというのに、それでも対象拡大の検討をおこなおうというのである。滅茶苦茶ではないか。
 しかも、恐ろしいことに安倍政権は当初、「裁量労働制の対象拡大」について「契約社員や最低賃金で働く労働者にも適用が可能だ」とする答弁書を閣議決定していた。つまり菅政権は、コロナによって格差が急激に拡大しているにもかかわらず、さらに「最低賃金で働かせ放題」という過労死の温床となりかねない危険な政策を復活させようとしているのである。
 そして、この「裁量労働制の対象拡大」が復活しようとしている背景にも、竹中氏の存在がある。

裁量労働制の対象拡大の裏にも竹中、「生産性の低い人に残業代という補助金を出すのはおかしい」の暴言
 そもそも、「残業代も払わず定額で働かせ放題」の対象拡大は、政府の「産業競争力会議」が提言をおこなっていたものであり、竹中氏はこの会議の民間議員を務めていた。さらに、くだんのデータ捏造が判明した直後である2018年2月22日におこなわれたセミナーでも、竹中氏は性懲りもなくこう主張していた。
「今の働き方改革で意義があると感じるのは、約70年間変わらなかった労働基準法を変えようとしていること。世界のホワイトカラーの間ではすでに認められている裁量労働制にけちをつけるなど、抵抗の動きもあります。ですが、そこに切り込んでいくことで、真の働き方改革が実現できるといえるでしょう」
 でっち上げられた捏造データが問題になっていたのに、それを「けちをつける」「抵抗の動き」などと主張する。この発言からも、いかに竹中氏が「裁量労働制の対象拡大」を推進しようとしていたかがわかるだろう。
 実際、竹中氏は「働き方改革」一括関連法案に盛り込まれ、裁量労働制と同じ「残業代ゼロで定額働かせ放題」を可能にする高度プロフェッショナル制度の創設を正当化する際、「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」などという暴言を連発した上、「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」と述べていた。
 これは竹中氏が「裁量労働制の対象拡大」を進めさせようとしていたのと同じだ。裁量労働制の対象範囲が拡大し、派遣労働にまで適用可能となれば、竹中氏が「補助金」と憚らずケチっている残業代を気にせず、いくらでも派遣労働者を働かせることができる。ようするに、この男の頭のなかには規制緩和を提案して“自分の目先の利益”を得ることしかないのである。
 そして、この「裁量労働制の対象拡大」の再検討が決まった矢先におこなわれた、今回の菅首相との面談。東京五輪の問題はもちろんのこと、面談ではこの問題も俎上に載せられたことは想像に難くないだろう。
 国民の命や労働者としての権利が、この「政商」に食い物にされていく現実。これを変えるには、竹中氏を重用しつづける自民党を政権から引きずり下ろすしか方法はない。(水井多賀子)

『野党は反対ばかり』の裏にある「本当の意味」 上西充子法大教授

 政府寄りのメディアや応援団などから「野党は批判ばかり」「どっちもどっち」などの声があがります。「野党だらしがない」というMCもいるようです。
 まさに政府を免罪する不思議な論法ですが、実際には結構普及しています。
 「ご飯論法」や「やぎさん答弁」などの新名称を発案した上西充子法政大学教授のインタビュー記事がフライデーに載りました。
 一問一答の形式にはなっていないため、分かりやすいように上西教授の発言部分は太字になっています。そうしたメディアの論法に対して、どう考えて、どう対処すればよいかが分かりやすく示されています。
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お約束のフレーズ『野党は反対ばかり』の裏にある「本当の意味」
                     FRIDAY DIGITAL 2021年06月24日
内閣不支持5割越え! なのに、「何も変わらない」って? 
第204回通常国会は150日間の会期を終え、6月16日に閉会した。
新型コロナウイルス感染症への対応や、開催が予定される東京五輪・パラリンピックへの対応などについて何も答えず、山積する課題を積み残したままの閉会である。
それにしても、不思議なのはこうした状況下でも「野党は批判ばかり」「どっちもどっち」などの声が多数あること。坂上忍などは今国会中に「ほんっとうに野党のだらしなさ、同じぐらい罪」と自身の番組で語り、SNS上では「あんた国会まともに見たことねーだろ?」「国会中継見たことないんだろうなと思える低レベル」という批判を浴びていたが……。
こうした不思議な現象について、本サイトで「やぎさん答弁」「ご飯論法」について語ってくれた『政治と報道 報道不信の根源』(扶桑社新書)の著者・上西充子法政大学教授は言う。
「意図的に野党を貶めるような言説をする人たちには、お約束のフレーズがあるんです。 
例えば『野党は反対ばかり』『どっちもどっち』『結局、テーブルの下で手を握ってるんでしょ』など。SNSなどには、どうせ私たちが政治に関心を持っても何も変わらないと思わせる言葉があふれていますよね。 
『選挙で変えるしかない』というのも、確かにそうとも言えるんですが、『野党は反対ばかり』『野党はだらしない』という認識を共有していたら、そもそも野党に投票する気にもなれないじゃないですか。 
だから、そういう言説の裏にある悪意みたいなものをきちんと私たちが認識して自分自身で考えていかないと、状況は変わらないと思うんですよ」

「国会の議論の中身を知る前に、ニュースの断片から野党が人を責めているような印象を受け、それと『野党は反対ばかり』という言説が結びついてネガティブな印象を抱いてしまっていると思います」と上西先生は言う

野党議員の追及に…『ああ、嫌だな』 
また、ニュースなどの切り取り編集による問題もあるという。
「例えば、テレビのニュースでは、野党議員が強めの姿勢で質疑をするような場面ばかりが繰り返し取り上げられがちですが、ニュースを見た人はそうした“追及する口調”に対して感覚的に『ああ、嫌だな』と思ってしまうケースがあるんです。 
若い世代を中心に、野党の追及を“揉め事”“争いごと”のように感じて、『どっちもどっち』『見たくない』と感じてしまう。 
そのために、国会の議論の中身を知る前に、ニュースの断片から野党が人を責めているような印象を受け、それと『野党は反対ばかり』という言説が結びついてネガティブな印象を抱いてしまっていると思います」 
上西教授は、そうしたうんざり感や冷笑ムードを変えるべく、2018年に「♯呪いの言葉の解き方」というハッシュタグをつけて切り返し方をツイッターで募集している。
「例えば、『野党は反対ばかり』に対しては『与党は賛成ばかり』『なぜこんな法案にあなたは賛成するんですか』、『モリカケばかりで国会が進まない』には『モリカケ以外は進んでますよ。なんでモリカケは進まないのかなあ』など。 
それに、『野党は反対ばかり』という人に聞きたいのは、『じゃあ、あなたは何をして欲しいの?』ということです。 
『提案もするべき』と言う人には、具体例を挙げて『提案もしていますよ』と言えるし、『反対しないで、本当にこのまま追認で良いんですか』『政府の今の進め方で本当に良いんですか』と聞いたら、多分答えに窮すると思うんです。 
『野党は反対ばかり』という言説は結局、玉ねぎの皮を剥いたら何も残らないような言説だと思います」 
もちろん野党議員が皆、有意義な質疑や指摘をしているわけではないが、非常に重要な指摘や働きかけは多数ある。
「それに何より今、一番大切なのは『菅政権にそのまま任せていて本当に良いのか』ということです。 
今、菅首相はオリンピックをやりたいし、観客も入れたい。一方で『国民の命と健康を守るのが第一だ。オリンピックファーストじゃないんだ』と言う。 
言っていることとやっていることが違うし、感染が拡大した時に被害に遭うのは私たちですから。 
本当にアスリートのためを考えるなら、最小限の規模で厳重にガードをして行うはずですが、それでは盛り上がらず、政権浮揚につながらないんですよね。 
コロナの感染リスクを考えたら、みんなでワーッと盛り上がるわけにはいかないのに、これまでの政権のごたごたを忘れてもらって『オリンピック出来て良かった』みたいな感じになることを期待しているわけですよ」 
そこまで私たち国民が舐められ、バカにされていると思うと、腹も立つが。
「現実に、そう動く世論もありますからね。ただ、諦めたり、冷笑的だったりする人もいますが、ここで諦めてどうするの?と思います」

そもそも「野党の役割」って!?
また、「野党は反対ばかり」という指摘が的外れなのは、そもそも「野党の役割」を理解していないせいでもある。
「野党の役割は、大きく分ければ『予算の議決、法案の作成・審議・制定』と『権力監視』で、さらにひとり親家庭やLGBTの方など、なかなか拾い上げられない声をきちんと施策や法案に反映していくこともあります。 
不祥事や総務省の接待問題など、お金によって政策が歪められていることを指摘していくのも野党の役割ですよね。 
もう1つ重要なのは、政府がやろうとしていることが国民生活に問題になりそうなとき、それを指摘して止める・改正させることです。 
オリンピックはまさにその一例で、オリンピックによって感染拡大してしまうだろうから、開催は危険だと指摘してくれているわけですよね。危険を指摘することによって、中止になるかもしれないし、中止にならなくとも、感染拡大リスクを軽減させるための具体的対応を迫ることができるわけです」 
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』でおなじみの立憲民主党・小川淳也議員は「野球で言うと、野党の役割は守備についた与党の守備の乱れ、粗(あら)を探すこと」とオンラインで語っているが、これは非常に良い比喩だという。
「例えば今回のオリンピックについて『選手と大会関係者をバブルで包む』『一般の国民とは交わらない』と言うと、一見安全そうに見えますが、ボランティアやホテル関係者などはバブルの内と外を行き来するわけですよね。政府答弁からは見えてこないそうした問題を野党が指摘することで、課題が明らかになるわけです。 
また、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の『本来は、パンデミックのところで(五輪を)やるのは普通ではない』という発言がありましたよね。 
あれも6月3日の参議院厚生労働委員会における立憲民主党の打越さく良議員の質疑によって引き出されたものなんです。『スタジアム内の感染対策はプレーブックでしっかりやろうとしている。ある程度制御するのは可能だ』という発言に加えて、観客が集まることや移動によって感染拡大リスクが高まることが指摘され、『本来は、パンデミックのところでやるのは普通ではない』という発言につながっていたんです。 
野党議員が国会の場で問わないと、あの発言は出てこない。それは小川淳也議員が言う『ここに穴が開いてますよ』『ここに球を打たれたら通っちゃいますよ』という指摘で、『ここにきちんと手当てをしないと感染が拡大しますよ』という重要なアラートなんです」 

昨年の「検察庁法改正案」では、浅野忠信さんや小泉今日子さんら著名人による抗議の投稿「#検察庁法改正案に抗議します」が話題に

小泉今日子も連投した怒りのツイート「#検察庁法改正案に抗議します」の意味
もう一つ、野党の大きな役割として、法案審議があるが、その働きが具体的に可視化した一例が昨年の「検察庁法改正案」だ。
「この法案で野党が問題視したのは、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるのにあわせて検察官の定年も同じく引き上げ、その際に内閣が必要と認めれば役職をそのままにして勤務延長することができる規定を追加で設けたことでした。
もともとの法案では検事長は63歳になったら検事に格下げになるはずだったのが、この新たな規定が設けられれば検事長のまま勤務延長できることとなる。この法改正のまえに黒川弘務検事長が閣議決定によって特例的に勤務延長が認められており、それを追認するための法改正であるとみられていたんです。
政権にとって都合の良い人物を検事長に留め置いたり検事総長に就任させたりすることが可能になることから、『時の政権が恣意的に検察の人事に介入することが可能になる』として、『♯検察庁法改正案に抗議します』というハッシュタグをつけた投稿がたちまち広がったんです」 
「♯検察庁法改正案に抗議します」の投稿は昨年5月9日午後3時半の時点で380万件を超え、5月18日に当時の安倍首相が検察庁法改正案見送りを表明。その翌々日、20日に、文春砲が黒川氏の賭け麻雀を報じたことにより、黒川氏は辞職に追い込まれた。
「この検察庁法改正案の見送りは世論が大きく働き、文春砲がトドメを刺したかたちだったわけですが、そもそも世論が盛り上がるきっかけとして、弁護士でもある参議院の山添拓議員などが国会審議で問題点を分かりやすく指摘したことにより、私たちが法案の問題を理解できた部分が大きいんです。
その分野に詳しい議員が的確に法案の問題点を指摘してくれたことによって、問題のある法案がそのまま成立してしまうことが防げたわけです」
「『どうせやるんでしょ』と私たちが関心を失ってしまったら、政治への関心が薄れ、それこそ政権は安泰です」

『オリンピック、どうせやるんでしょ』と関心を失ってしまったら思うツボ
上西教授は、私たち一人一人の政治の関わり方の重要性について、こんな説明をする。
政治を自分事として考えて初めて、野党の存在意義もわかってくると思います。
私たちがいて、私たちが見守っている野党議員がいて、その野党の力で政権の在り方を正そうとするという関係性です。私たちの存在がそこに全くないと、野党に丸投げになり、そして『野党はだらしない』で終わりますよね。
私たち自身が野党の質疑を見て、どういう問題が指摘されているかを聞いて、『確かにこの法案を通すのはマズイな』『政府が今やろうとしていることは危険だな』と感じて世論が反応しない限り、政府はその在り方を改めないんですよ。
問題を指摘し、アラートを出す役割が野党にあって、でも野党だけでは変わらないんです。どうしても与党が多数派ですから、数の力の制約がある。そこを補うのが私たちなんです」 
これだけ野党が危険性を指摘し、国民の多くが反対しても、開催の方向で、それも大量の観客を入れる方針で突き進んでいるオリンピック。無力感に絶望しそうになるが……。
『どうせやるんでしょ』と私たちが関心を失ってしまったら、政治への関心が薄れ、それこそ政権は安泰です
でも、そういう諦めによる安泰は、私たちにとって不幸だと思うんですよ。
今の状況は、戦争を止められなかった状況に似ているとよく言われますが、戦前だったら『戦争やめろ』と言えば捕まって、殺されていたかもしれないですよね。
でも、今は違う。かつ、戦前は、新聞も戦争協力の論調になっていて、一般の人は状況が把握しにくかったと思いますが、今は情報を得ることはできて、状況は明らかに見えるじゃないですか。
だから、見えているものに私たち一人一人がちゃんと関心を持ち続け、自分で見て、判断して、こうした状況を変えるために、ちゃんと自分の考えを持つことが大事。そのうえで投票に行けるといいと思います」

上西充子 法政大学キャリアデザイン学部教授。1965年生まれ。労働政策研究・研修機構研究員を経て、2003年から法政大学キャリアデザイン学部。単著に『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)など。国会パブリックビューイング代表。

取材・文:田幸和歌子

1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。 

30- すでに来日選手ら6人コロナ感染 / 五輪「無観客」開催 7月8日決定か

 ウガンダ選手団から計2名のコロナ感染者が出たことで、空港検疫のあり方やその後の対応が問題視されている中、五輪選手関係で他にも4人がコロナに感染していることが、野党議員のヒヤリングで明らかにされました。この4名はウガンダ選手が入国した時点よりもはるか以前に入国していた人たちでした。

 航空機内で数時間以上を過ごせば、機内はその間中 換気されずにただ空気を循環するだけなので、座席の遠近に無関係に「濃厚接触者」になります。それにもかかわらずウガンダ選手団のケースでは、感染判明者以外の人たちは空港から泉佐野市まで通常のバスで移動し、そこにしばらく滞在した後に新たな感染者が顕れたのでした。そこには「海外からのコロナ流入阻止」の配慮は感じられません。
 選手団滞在先の各自治体は、空港から滞在先に送り届けるまでは国が責任を持って行うべきであると要求しています。菅首相は28日に羽田空港を訪れ、コロナの水際対策の状況を視察し対策の徹底を指示したということですが、そんなことでコロナの流入阻止が達成されるとはとても思えません。
 また全ボランティア7万人にこれからワクチンの接種を始めるそうですが、それでは開会までにとても間に合わず感染の防止は出来ません。
 水際作戦と関係者のコロナ感染防止に絞ってみても全てがザルです。無能な政府の下では安全安心の五輪など期し得ません。
 菅首相はコロナワクチン接種の普及を唯一の頼りにしていますが、現行のワクチンがデルタ株に有効でないことは既に明らかですから無意味です。確かにイギリス株に対しては有効で、イギリスでも一時新規感染者数が2千人/日まで落ちましたが、インド株が優勢になった現在は14,654人/日(7日間平均)に増加しています(イスラエル、オーストラリア等のワクチン先進国も増加傾向)。
 ところで東京都のコロナ感染の状況は、28日時点で新規感染者数は7日間平均で490人/日で、1週間前の7日間平均の31%増しと再拡大の傾向が明らかです。実行再生産数は19日に1を上回り28日には117に増加しています。
 こうした中でデルタ株よりも更に凶悪なペルー由来のラムダ株の流行も伝えられています。
 ここにきてさすがに政府は無観客開催を決断しつつあるという情報も流れました。五輪を開催するのであればせめて無観客にすべきでしょう。
 まるこ姫の独り言の他関連の記事を紹介します。
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もうすでに来日選手ら6人コロナ感染、野党ヒアリングで判明
                         まるこ姫の独り言 2021.06.29
まだ、五輪関係者の入国が少ない中でウガンダ選手2人以外に、すでに4人もの五輪関係者がコロナに感染していることが分かった。

五輪、来日選手ら6人コロナ感染 ウガンダ以外に4人判明 
                        6/28(月) 17:06配信 共同通信
>政府は28日、東京五輪・パラリンピックに参加するため日本に入国した選手や関係者で、ウガンダ選手団の2人のほかに、フランスなどから来日した4人が新型コロナウイルスに感染していたと明らかにした。立憲民主党が国会内で開いたヒアリングで答えた。

この記事のように政府が明らかにしたというと政権が自ら発表したかのように思ってしまうが、それとは全然違う。

野党のヒアリングで、野党の追及に官僚が抗えずに渋々喋らざるを得なかったというそんな感じだった。
自公は、野党の要請にも応じず、国会を勝手に閉じてしまい長い夏休みに入り選挙の事ばかり考えているのだろう。

「野党がだらしない」「野党は批判ばかり」と言う人は、なぜ自公がコロナ禍での五輪開催と言う未曽有の状態で国会を閉じたことを批判しないのか。

私はこの部分の動画を見たが、野党議員の質問に答える官僚のシドロモドロ具合が半端じゃなかった。
答えになっていなかったと言っても過言ではない。

しかも五輪開催日からもう1カ月を切っているのに、今に至っても検討すると言っていたが、なんでここまであやふやなんだろう。
今ごろ検討?

本来なら、五輪で世界から色んなコロナウイルスが入ってくるか分かっているのだから、一番悪い状態を想定して対策なり対応なり考えておくのが開催国の使命だろうに。

今ごろ、検討と言う時点でこの国の対策の拙さが際立つ。
しかしなんでここまでずさんなんだろう。

「日本の官僚は世界一」という言葉が躍った時期もあったが、実態はなんでここまでボケているんだろうという印象だ。

野党がヒアリングをしなかったら、海外から来た五輪感染者数も有耶無耶で、発表しなかった可能性大だ。

しかし、海外からの五輪関係者の入国のピークはこれからだ。

まだとっかかり段階でこれだけの感染者数がいる、そして検疫があまり対応できていない現実を見ると、これから毎日何百人・何千人規模で五輪関係者が入国した際に、きちんと対応できるのだろうか。

それこそ世界各国からウイルスが検疫を逃れて国内に入り、五輪閉会後、最悪の変異ウイルス見本市になる覚悟は必要だと思う。
政府はそういう想定をしているのだろうか。


ペルー発のラムダ株が“五輪上陸”する恐れ ワクチン効果5分の1の衝撃
                       日刊ゲンダイ 2021 年 6 月 29 日
 インド株を超える脅威となるのか――。南米ペルーで大流行している新型コロナウイルスの「ラムダ株」の威力はハンパじゃない。東京五輪を機に上陸する恐れが浮上している。
                ◇  ◇  ◇
 ペルーは感染者数が200万人を超え、死者数は20万人に迫る。人口10万人当たりの死者数約600人は世界最多だ。昨年8月、同国で見つかったラムダ株が感染を広げている。今年4月以降の感染者の81%がラムダ株だった
 近隣のアルゼンチンやチリでも3割を占め、米国、ドイツ、イスラエルなど南米以外でもラムダ株が確認されている。15日時点で29カ国で見つかっている
 恐ろしいのが、ラムダ株がワクチンの効果を大幅に低減させる可能性があることだ。WHO(世界保健機関)は感染力の強さに加え、抗体への耐性を持つ恐れを警戒。ニューヨーク大の多田卓哉博士研究員も、これまでにない変異がみられることから、3~5倍程度ワクチンの有効性が下がる可能性を指摘している。効果5分の1とは衝撃である。

WHOは「警戒」も厚労省「様子見」
 WHOは変異株を「懸念される変異株」(VOC)と「注目すべき変異株」(VOI)に分類しているが、14日、ラムダ株をVOIに指定した。厚労省も15日付の報告でWHOの指定を伝えている。
 ところが、23日の厚労省専門家会議「アドバイザリーボード」の資料には、「VOI」のリストにラムダ株が載っていない。厚労省に聞いた。
「WHOがVOIに指定しても、すべてを紹介するわけではありません。もちろん、国内で確認されていなくても、リストに載ることはあり得ますが、現在、掲載されている株は国内で確認されたものばかりです。検疫の陽性者全て、国内陽性者の検体の5~10%はゲノム解析を行っていますが、今のところ、ラムダ株は確認されていません。引き続き、情報収集を行っていきます」(結核感染症課)
 差し迫った脅威ではないという認識なのだ。今月の空港検疫での陽性者145人のうち、ペルーからの渡航者は1人だけ。たしかに、今のところは地球の裏側の話だが、五輪が始まると世界200カ国以上から9万3000人が来日する。ペルーなどラムダ株流行国からの入国も予定されている。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「もし、既存ワクチンの有効性が大幅に低下するのであれば、ワクチン接種が進んでも、ラムダ株によって感染再拡大が起きかねません。厚労省の対応は従来通りのようですが、五輪を控え、今から、最大限の警戒を払うべきです。今から水際を強化すれば、上陸を食い止められます。すべての五輪関係者に対して、例外なく入国後14日間の待機が必要です
 ラムダ株を上陸させてはならない。


東京五輪「無観客」開催と7月8日決定か…飛び交う菅政権のシナリオ
                          日刊ゲンダイ 2021/06/29
 心配された通り、新型コロナの感染拡大が止まらなくなってきた。27日の東京の新規感染者は386人。これで8日連続、前週の同じ曜日を上回った。もはや7月11日に期限を迎える「まん延防止等重点措置」の解除は難しい状況である。延長は確定的だ。はやくも政界では、東京五輪の観客数について「菅首相は7月8日、無観客開催を決定する」という情報が飛び交っている
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 現在、東京都を含む10都道府県に発令されている「重点措置」について、当初、菅政権は期限通り7月11日に解除する予定だった。しかし、新型コロナの感染者が急増し、シナリオは崩壊している。「重点措置」の解除どころか、「緊急事態宣言」の再発令に追い込まれかねない状況だ。
 東京五輪の観客数は、政府のイベント制限に準拠し、「緊急宣言」や「重点措置」が解除された場合は上限1万人、発令中は上限5000人となっている。5000人は入れられる。
 しかし、菅政権は、「無観客」で行うと腹をくくったという話が流れている。具体的なスケジュールまで流布されている。
「いま発令されている“重点措置”を7月11日(日)に解除するかどうかは、7月8日(木)、専門家に諮問して決定されます。間違いなく延長になるでしょう。場合によっては“緊急宣言”に切り替わる。菅首相はその日の夜、『安心安全のために、東京五輪は無観客で行いたい』と記者会見で発表するとみられています。ミソは、7月6日に五輪観戦者の抽選結果が発表されることです。抽選は観客1万人を想定して行われます。もし、7月11日以降も“重点措置”が延長されたら、もう一度、観客を5000人にして再抽選しなくてはならない。しかし、再抽選となったら混乱必至です。時間もない。混乱を避けるためには無観客にするしかない。本当は観客を入れたいのでしょうが、その時、菅首相は『国民の安全安心のためだ』と強調するシナリオだといいます」(政界関係者)

「天皇 五輪懸念“拝察”」発言も後押し
「無観客」にするかどうか――。宮内庁長官の<天皇 五輪懸念「拝察」>発言も大きいとみられている。24日、西村長官は、「陛下は感染状況を大変心配されている。開催が感染拡大につながらないか、懸念されていると拝察している」と記者会見で発言している。
 宮内庁長官が記者会見を行った2日前、菅首相は皇居に行き、天皇に内奏している。当然、東京五輪についても話が出たはずだ。
「宮内庁長官の“拝察発言”を、国民の多くは、陛下のお気持ちだと受けとめたはずです。もし、菅首相が“無観客”に方針を一転させても、陛下のお気持ちに応えられたと国民は考えるはず。だから、批判はされない。菅周辺は、そう判断しているようです」(自民党事情通)
 五輪を「無観客」でやるなら、一日でも早く発表した方がいい。7月6日に抽選結果を発表し、当選者をぬか喜びさせるのは最悪である。

2021年6月29日火曜日

NHK板野専務 超異例「4期続投」の裏に官邸のゴリ押

 先にNHKが、安倍番の記者として盛名を馳せた岩田明子氏やその上司の部長をラインから退場させたときには、安倍氏も菅氏も一体と思っていた我々には奇異な感じしかなかったのですが、いまや菅氏にはその存在が目障りになったとNHKが忖度したものと、後付けで納得できたのでした。

   ⇒(6月9日)自分の言葉で語ることなし 小池書記局長、首相答弁を批判
 しかし間違った思い込みであってはならないので、何らかの方法で確認もとったことでしょう。それほどまでにNHKが官邸に迎合するのは極めて不自然なことですが、それにはそれなりの経緯もあったのでした。
 安倍政権以降 官邸によるNHKへの介入は、経営委員会の人事を含めてその度合いを大いに増しました。それを象徴する異常な人事がまたしても明らかになりました。
 板野裕爾専務理事は、NHKで官邸の代理人と呼ばれているそうです。その彼は通常は2期4年退任するのが通例のところ既に3期6年に及んでいるので、NHK会長が退任案とまとめたのですが、決定の直前になって官邸から横やりが入り、通算4期8年間の異例の就任が決まったということです。
 LITERAが取り上げました。
「クローズアップ現代」の国谷裕子を降板に追い込んだのをはじめ、この間 板野専務がNHKに敷いた恐怖政治の一端が語られています。これではNHKはなかなか公正な報道を目指す公共放送にはなり得ません。
 折しも 日本学術会議の会員候補6人の任命を菅首相が拒否した問題で、任命に関する個人情報の開示を求めた6人の申し立てに対し内閣府28日「個人情報の存否を明らかにせず、開示請求を拒否する」と決定しました。理不尽というしかありませんが、そんなことを公然と口にできる異常さが安倍・菅政治の本性です。
 反動政権が如何に国を蝕むのか、この面でも菅政権の早期退陣が求められます。
 LITERAの記事を紹介します。記事の2節以降は下記の再掲となっています。
(LITERA 19.4.10)NHKで国谷裕子を降板に追い込んだ“官邸の代弁者”が専務理事に復帰! 安倍政権批判の完全封殺へ
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NHK“菅官邸の代理人”専務理事の超異例「4期目続投」の裏に官邸のゴリ押し! クロ現・国谷裕子を降板に追い込んだ張本人
                             LITERA 2021.06.27
 国民の政権への批判・不満がこれだけ高まっているというのに、ますます官邸に対する忖度をエスカレートさせているNHK。しかも、ここにきてそのことを象徴する異常な人事が発覚した。
 NHKで “官邸の代理人”と呼ばれる板野裕爾専務理事の退任案が一旦出されながら、官邸の意向でひっくり返っていたというのだ。毎日新聞がスクープした。
 板野専務理事は、菅首相の右腕・杉田和博官房副長官とべったりで、2014年には専務理事・放送総局長に昇格。以来、菅−杉田ラインの意向を受けて政権批判潰しに動いてきた。
 2016年、『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターが当時、官房長官だった菅義偉・現首相にインタビューで厳しく迫ったことが原因で降板させられたが、これを主導したのも板野専務理事だった。
 その後、板野氏は籾井勝人会長と対立して一旦、退任するものの、2019年4月に専務理事に復帰。これまで以上に政権批判に目を光らせ、些細な報道にまで圧力をかけ、かかわった記者やキャスターを片っ端から飛ばしてきた
 しかし、“官邸の代理人”である板野氏だが、今年4月、すでに理事と専務理事通算で3期6年になったため、退任すると思われていた。ところが、蓋を開けてみると、再任。理事は2期4年でやめるのが通例なのに、板野氏は4期目に入ってしまったのである。
 そして、今回の毎日新聞の報道で、この異例人事の裏に、官邸の意向があったことがわかった。
 実は、NHKのトップ・前田晃伸会長は4月、板野専務理事を予定通り退任させる役員人事案を経営委員へいったん郵送させていたというのだ。ところが、同意を得る経営委員会の直前に撤回し、再任する案に差し替えていたのだという。
 毎日新聞の報道によると〈前田会長は、事務方を通じて4月2日に最初の人事案を各経営委員へ郵送させていた。しかし、6日の直前になって各委員に「なかったことにしてほしい」と事務方から連絡があり、6日の会合では理由の説明なしに人事案の文書は回収された〉という。
 もちろん、この異例の経緯をみれば、菅−杉田ラインが前田会長に圧力かけたと考えた間違いないだろう。
 黒川弘務・東京高検検事長の定年延長や日本学術会議の任命拒否と同じ、菅政権のゴリ押しである。
 しかし、問題は“菅官邸の代理人”板野専務理事が残ることになったNHKの今後だ。いったいどんな恐怖政治がしかれるのか。本サイトでは、2019年4月、板野専務理事が復帰した際に、その報道への介入のやり口を検証した記事を配信している。その記事を再録するので、ぜひ読んでほしい。(編集部)

NHKで国谷裕子を降板に追い込んだ“官邸の代弁者”が専務理事に復帰! 政権批判の完全封殺へ
 安倍政権に対する目に余る「忖度」報道が相変わらずつづくNHKだが、今後はさらに「安倍放送局」に拍車がかかりそうだ。
 というのも、NHKは9日に板野裕爾・NHKエンタープライズ社長を専務理事に復帰させる人事を発表したからだ。
 板野氏は、経済部長、内部監査室長などを歴任して2012年に理事に就任。籾井勝人・前会長の「側近中の側近」「籾井シンパ」と呼ばれ、2014年には専務理事・放送総局長に昇格した人物だ。
 そして、この板野氏こそ、『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターを降板させた張本人と言われているのだ。
 今回の人事について、毎日新聞はこう報じている。
〈16年3月に「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターが番組を降板。複数のNHK関係者によると、番組全般を統括する放送総局長だった板野氏が、番組に対する政権内の不満を背景に降板を主導したとされる。また、15年の安全保障関連法案を巡る国会審議中、個別の番組で政治的公平性を保つのが難しいとの理由で、安保関連の複数の番組の放送を見送るよう指示したとも言われる。〉(Web版8日付)
 板野氏が国谷キャスターを降板に追い込んだ──。じつは、今年2月に発売された『変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場』(花伝社)でも、約30年にわたってNHKを取材してきた朝日新聞記者・川本裕司氏がこの内幕を詳細にわたって紹介。そこでは、NHK報道局幹部が「国谷キャスターの降板を決めたのは板野放送総局長だ」と証言。さらに、別の関係者は板野氏についてこう語っている。
「クロ現で国民の間で賛否が割れていた安保法案について取り上げようとしたところ、板野放送総局長の意向として『衆議院を通過するまでは放送するな』という指示が出された。まだ議論が続いているから、という理由だった。放送されたのは議論が山場を越えて、参議院に法案が移ってからだった。クロ現の放送内容に放送総局長が介入するのは前例がない事態だった」
 じつは、こうした板野氏の官邸の意向を受けた現場介入については、以前から証言が相次いでいた。たとえば、2016年に刊行された『安倍政治と言論統制』(金曜日)では、板野氏の背後に官邸のある人物の存在があると指摘。NHK幹部職員の証言として、以下のように伝えていた。
板野のカウンターパートは杉田和博官房副長官
〈ダイレクトに官邸からの指示が板野を通じて伝えられるようになっていった〉
 杉田和博官房副長官といえば、警察庁で警備・公安畑を歩み警備局長を務めた公安のエリートであり、安倍氏が内閣官房副長官だった時期に、同じ内閣官房で、内閣情報官、内閣危機管理監をつとめたことで急接近し2012年の第2次安倍内閣誕生とともに官房副長官(事務担当)として官邸入り。以後、日本のインテリジェンスの中枢を牛耳る存在として、外交のための情報収集からマスコミ対策、野党対策、反政府活動の封じ込めまで一手に仕切っている。実際、官邸のリークで「出会い系バー通い」を読売新聞に報道された前川喜平・元文科事務次官は、その前年の秋ごろ、杉田官房副長官から呼び出され、「出会い系バー通い」を厳重注意されたと証言している。

専務理事に復帰する板野氏は杉田官副房長官、JR東海・葛西敬之氏とべったり
 板野氏は安倍首相の「後見人」と呼ばれる葛西敬之・JR東海名誉会長ともパイプをもつ。そして、杉田氏はJR東海の顧問をつとめていたこともあり、安倍首相に杉田氏を官房副長官に推したのも葛西名誉会長だといわれているほど。こうしたなかで杉田官房副長官の“子飼い”となった板野氏だが、NHK新社屋建設にかかわる土地取引問題では籾井会長に反旗を翻し、結果、籾井会長から粛清人事を受けて2016年4月に専務理事を退任した。
 もちろん、このとき板野氏が籾井会長を裏切ったのも杉田官房副長官の意向に従っただけで、実際に官邸は任期満了で籾井会長を引きずり下ろす方針で動いていた。逆に、粛清人事で板野氏を専務理事から外した籾井会長に対し、杉田官房副長官や菅義偉官房長官は怒り心頭。そのため、じつは籾井会長の後任は板野氏が選ばれるのでは、という見方も出ていたほどだった。
 ようするに、板野氏の専務理事復帰は満を持して官邸主導でおこなわれたわけだ。いったいNHKはこれからどうなってしまうのか。
 そもそも、板野氏の復帰以前に、NHKの報道局幹部幹部は完全に安倍政権の言いなり状態になっていた。
 たとえば、森友問題をめぐるNHK内部の“圧力”などを暴露したノンフィクション本『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)を出版した元NHK記者の相澤冬樹氏は、局内上層部からの“圧力”を赤裸々に明かしている
 その最たる例が、2017年7月26日の『NHKニュース7』で報じられた相澤記者のスクープをめぐる“恫喝”だ。これは近畿財務局の担当者が森友側に国有地の購入価格について「いくらまでなら支払えるか」と購入可能な金額の上限を聞き出していた、という事実を伝える内容。それまで「森友側との事前交渉は一切なかった」と強弁してきた財務省のウソ、佐川宣寿理財局長(当時)の虚偽答弁を暴く特ダネで、すべての大手マスコミが後追いに走った。しかし、その渾身のスクープ当日の夜、NHK局内では、こんなことが起こっていた。
〈ところがその日の夜、異変が起きた。小池報道局長が大阪のA報道部長の携帯に直接電話してきたのだ。私はその時、たまたま大阪報道部のフロアで部長と一緒にいたので、すぐ横でそれを見ていた。報道局長の声は、私にも聞こえるほどの大きさだ。「私は聞いてない」「なぜ出したんだ」という怒りの声。〉
 この「小池報道局長」というのは、政治部出身で安倍官邸とも強いパイプを持つとされる小池英夫氏のこと。国会でも取り上げられたように、森友問題関連のニュースで現場に細かく指示を出しているのは周知のとおりで、局内ではその頭文字から「Kアラート」なる異名がついている。相澤氏の著書によれば、小池報道局長からの大阪の報道部長への“怒りの電話”は、いったん切れても何度も繰り返しかけてきたという。

報道局長が森友報道の記者に「将来はないと思え」と恫喝するNHK
 しかも、信じがたいのは、小池報道局長の最後のセリフだ。
〈最後に電話を切ったA報道部長は、苦笑いしながら言った。
あなたの将来はないと思え、と言われちゃいましたよ」
 その瞬間、私は、それは私のことだ、と悟った。翌年6月の次の人事異動で、何かあるに違いない……。〉
 大スクープを掴んだのに、逆に「将来はないと思え」と恫喝する──。これは加計問題でも同様のことが起こっている。NHKは、文科省の内部文書をスクープできたというのに、肝心の「官邸の最高レベルが言っている」などの部分を黒塗りにしてストレートニュース内で消化するという“忖度”報道を行い、翌朝の朝日新聞にスクープを譲ってしまった。さらに、早い段階で前川氏の独占インタビューも収録していたにもかかわらずお蔵入りにしてしまった。
 前述した『変容するNHK』では、当時の出来事として、こんなエピソードが紹介されている。
〈NHK関係者によると、加計学園問題を取材する社会部に対し、ある報道局幹部は「君たちは倒閣運動をしているのか」と告げたという。〉
 このように、NHKには社会部が安倍政権に都合の悪い事実を伝えようとすると、安倍政権の意向に沿うことしか頭にない政治部、報道局幹部がそれらに介入するという図式ができあがっているのだ。
 それに加えて、今回、“官邸の最大の代弁者”ともいえる板野氏が専務理事に復帰するのである。官邸はもっと直接的に報道に介入し、現場の萎縮はさらに進んでゆくことは間違いない。これまでは社会部のぎりぎりの奮闘によって、政権の不正や疑惑を追及する報道がわずかながらも放送されていたが、そうした報道は完全にゼロになるかもしれない。
 この異常な状況を打ち破るには、視聴者がメディアを監視し、声を上げてゆくほかない。本サイトもNHKの「忖度」報道を注視つづけるつもりだ。(編集部)