2018年8月31日金曜日

経産省 折衝記録で「発言の記載は不要」の内部文書

 経産省は3月27日付の内部文書で、政治家ら省内外の人物と折衝した際に作成する公文書について「議事録のように個別の発言まで記録する必要はない」誰が何と言ったか分からないよう、議事録を残してはいけない指示していたことを、30日、毎日新聞がスクープしました。
 同文書には即日廃棄が謳われていて、説明に当たり「これから言うことはメモを取らないようにと前置きするという念の入れようでした。
 これは、今後は誰が何を言ったかが記録からは分からないようにするという趣旨の改悪を、国民に隠したまま行ったということで、安倍首相が「公文書管理の適正を確保するため、必要な見直しを政府をあげて徹底的に実施する」と弁明し、「ガイドラインを改正し公文書管理の質を高める取り組みを行った」と強調したのは、真っ赤な偽りであったわけです。
 
 取り敢えず経産省がクローズアップされた訳ですが、そもそも首相の最側近である今井尚哉首相秘書官を筆頭に、佐伯耕三首相秘書官、長谷川栄一首相補佐官らはみな経産省出身で、同省はリーダー的な存在となっているので、他の省庁もそれに倣う(倣っている)可能性は大きいと思われます。
 
 毎日新聞の報道を受けて経産省は30日、問題の文書を公表しました(毎日新聞夕刊)。
 共産党の志位委員長は30日の記者会見で、「極めて重大な内容だ。真相究明と責任の糾明を強く求めていきたい」、「骨抜きの事態が行われていたのが経産省だけだったのか。他の省庁ではないのかも含めて総ざらいの究明が必要だ」と述べ、国会の閉会中審査を行うよう求める考えを示しました。 
 
 毎日新聞の2本の記事を紹介します。
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経産省  折衝記録「発言要らぬ」 内部文書、指針骨抜き
毎日新聞 2018年8月30日
 政治家ら省内外の人物と折衝した際に作成する公文書について「議事録のように個別の発言まで記録する必要はない」などと記載した経済産業省の内部文書を毎日新聞が入手した。文書は複数の会議で使用され、出席した職員は「誰が何と言ったか分からないよう、議事録を残してはいけないと指示を受けた」と証言した。森友・加計学園の問題などを受け改正された「行政文書の管理に関するガイドライン」は打ち合わせの際、記録を作成するよう定めているが、骨抜きにしかねない実態が判明した。 
 
 文書は3月27日付の「公文書管理について」。A4判6ページで、同日開催された、経産省(中小企業庁など外局を含む)の筆頭課長補佐級職員約20人が出席する「政策企画委員会」で「事務連絡資料」として配布された。ガイドライン改正を受け、公文書管理を担当する「情報システム厚生課」が作成。今後の運用方針などがまとめられている。 
 
 ガイドラインが新たに「政策立案や事務及び事業の実施方針等に影響を及ぼす打ち合わせ等の記録については文書を作成する」と定めたことを引用したうえで、作成する「記録」について「『いつ、誰と、何の打ち合わせ』(をした)かが分かればよく、議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」と説明している。さらに、ガイドラインは意思決定など検証に必要な文書について1年以上保存するよう定めているが、問題の文書の表紙に、その保存期間を会議当日の「平成30年3月27日まで」と指定し、即日廃棄扱いにしている。 
 
 同課は取材に対し、「(指摘のような)文書を配布した記憶はある」としたうえで「必要な時に議事録を作り、そうでない時は必ずしも作る必要はないという意味であり、ガイドラインに反しない。(当日廃棄については)議論のための資料で、その場でしか使用しないためだ」と主張した。 
 しかし、経産省職員によると文書は別の会議でも使用された。この会議に出席した職員は「文書を示され、『(これから言うことは)メモを取らないように』と前置きがあったうえで『誰が何と言ったか分からないように、議事録は残してはいけない』と指示された」と証言した。さらに、経産省のある課で課員全員に文書が配布されたことを明かした上で「討議用の資料ではなく、文書管理強化に関する省内の周知文書。重要な文書であり廃棄すべきではない」と話した。 
 
 公文書管理全般を所管する内閣府の公文書管理課は、取材に対し「必要な場合は議事録を残し、そうでないなら残す必要はないという意味なら、経産省の文書の記載に問題はない。ただすべての議事録を残さない方針なら問題。(文書の保存期間については)ケース・バイ・ケースだ」としている。【小林直、向畑泰司】 
 
解説 事実検証を妨げ 行政の問題封印 
 経産省の内部文書や、議事録作成を妨げる省内の指示は、公文書への信頼を大きく損なう。 
 ガイドライン改正につながった、森友・加計学園問題は、行政側に残された文書が発覚の引き金になった。加計学園の獣医学部新設を巡っては昨年5月に見つかった文部科学省の「メモ」に、早期開設について内閣府幹部が「総理のご意向」と発言したとの記載があった。森友学園への土地売却を巡っては、元理事長の籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=が安倍晋三首相の妻昭恵氏らの名前を挙げ、値下げを迫る記録が財務省から見つかった。 
 当時、今回の経産省のような運用がなされていれば、二つの問題が明らかにならなかった可能性が高い。どんな発言があったのか、検証できないからだ。 
 安倍首相は3月の参院予算委で、「ガイドラインを改正し公文書管理の質を高める取り組みを行った」と強調した。しかし、実態はかけ離れており、行政のブラックボックス化が進んでいるのではないか。【杉本修作】
 
 
経産省 「発言要らぬ」内部文書を公表 菅氏、問題視せず
毎日新聞 2018年8月30日
 経済産業省が省内外の人物と折衝した際に作成する公文書について、「個別の発言まで記録する必要はない」などと指示する内部文書を作成していた問題で、同省は30日、問題の内部文書を公表した。毎日新聞が30日朝刊で報道したものとほぼ同じ内容。 
 この問題では、同省職員が毎日新聞の取材に「誰が何と言ったか分からないよう、議事録を残してはいけないと指示を受けた」と証言しており、この通り運用すれば全発言が公文書から欠落する可能性がある。同省情報システム厚生課は報道を受け、「議事録を残すな、と省として決めたことはない」と強調したうえで「研修などの機会で職員にきちんと説明する」と述べた。
 
 毎日新聞の報道した文書は会議の場で配布された当日(3月27日)に廃棄するよう指定されていた、今回公表された文書は「12月31日まで保存」となっている。保存期間の違いについて、同課は「(毎日新聞のものは)今回公表した文書を完成する過程で作成した」と説明した。 
 一方、菅義偉官房長官は30日の記者会見で「記録を残すということはきちっとしている」と経産省の運用に問題はないとの見解を示した。【向畑泰司、杉本修作】 
 
共産・志位氏「国会で閉会中審査を」 
 共産党の志位和夫委員長は30日の記者会見で、経済産業省が政治家ら省内外の人物と折衝した際に作成する公文書について「個別の発言まで記録する必要はない」などと記載した内部文書を作成していた問題について、「極めて重大な内容だ。真相究明と責任の糾明を強く求めていきたい」と述べ、国会の閉会中審査を行うよう求める考えを示した。 
 志位氏は「骨抜きの事態が行われていたのが経産省だけだったのか。他の省庁ではないのかも含めて総ざらいの究明が必要だ」と指摘した。【影山哲也】.

“左遷”の森友スクープ記者 NHKを退職へ

 今年5月、NHK大阪放送局の敏腕記者(副部長)が、番組チェックなどを行う「考査室」へ突如左遷させられました。考査室は、定年間際の社員が行くようなところで第一線の記者が行くような部署ではありません。
 同記者は、それまで『財務省が森友学園側に口裏合わせ求めた疑い』4月4日)など森友問題に関する数々のスクープを連発していたので、この異動は森友問題を報道させないための“官邸忖度人事”としか考えられません。
 「安倍サマの ・・・ と揶揄されるNHKが、如何に官邸に迎合しようとしているかの例で、これでは権力を監視する公共放送の役割は果たせません。
 
 その記者・相澤冬樹氏は、もうNHKでは記者職に戻れないからと、9月から「大阪日日新聞」に転職するということです。元公共放送・NHKの堕落を象徴する出来事です。
 
 8月30日付及び5月17日付の日刊ゲンダイの記事と、相澤氏の「退職の挨拶」を紹介します。
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“左遷”の森友スクープ記者「記者続けたい」とNHKを退職へ
日刊ゲンダイ 2018年8月30日
 NHKで森友問題に関するスクープを連発していたA記者が、考査部門に“左遷”されたことを、日刊ゲンダイが今年5月に報じたが、そのA記者が8月末でNHKを辞めることが分かった。
 
 A記者は、NHK大阪放送局考査部の相澤冬樹副部長(55)。本人のフェイスブックによれば、8月31日にNHKを退職し、9月1日からは、新日本海新聞社の傘下の「大阪日日新聞」で記者として働くそうだ。フェイスブックには、<この仕事(記者)を愛し、誇りを持ち、これからも記者を続けたい、その一心で今回の転職を決めました>とある。
 
 相澤氏に確認すると、NHKを退社することを認めたうえで、こう言った。
「フェイスブックに書いたように、記者をやりたいという思いが強く、NHKでは二度と記者に戻れないと状況的に考えて退職を決意しました。これまで外部の取材には応対してきませんでしたが、辞めることはもう確定していますし、個人的なことなのでお伝えしても問題ないかと思います」
 
 NHKは、先日の安倍首相の鹿児島での出馬表明の生中継といい、ますます「アベ様のNHK」と化している。森友関連のスクープも、もう出てこないのだろうか……。
 
 
【退職と転職のごあいさつ】 (「半歩前へ」より転載)
 
 皆さま。残暑厳しき折、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、私、31年余り勤めたNHKを、今月31日をもって退職することにいたしました。9月1日から新日本海新聞社に入社し、傘下の大阪日日新聞で引き続き記者として働きます
 
 思い起こすのは初任地、山口での日々。夜回りに行くたび「あんたはええ記者になる。ええ刑事にもなれる」と言ってくれたけれど、ネタは決してしゃべらなかった山口県警某刑事。
 飲みに行くたび「お前は勘が悪い。記者に向いとらん。すぐ辞めろ」とからかった山口地検某検事。
 それから山口→神戸→東京社会部→徳島→大阪→東京BSニュース→再び大阪と、報道の世界を渡り歩く中で、様々な方に出会い、取材し、お話しし、飲みに行き、時には叱責され、鍛えて頂きました。
 そしてNHK関係者にも、先輩・同期・後輩記者、映像取材(カメラマン)、音声・照明さん、映像編集、ディレクター、アナウンサー、リポーター、車両さん、タクシーの運転手さん、
 技術さん、営業、編成、総務、経理、事業、広報の方、スタッフの方々、そして最後に所属した考査部の皆さん、あげだすときりがないけれど、様々な職種の仲間たちに支えて頂きました。
 取材先の方々や仲間たちに育てられて、今の私があります。皆さん、お世話になりました。感謝の気持ちでいっぱいです。
 
 31年間の記者人生でも、大阪で司法取材を担当したこの2年間は最も充実した日々でした。
 中でも森友学園事件にめぐり会ったことは望外の喜びで、「自分はこのネタをやるため記者になったのだ」と確信して取材していました
 そして今年5月、記者を外れる異動内示を受けました。
 「最後にいい夢、見させてもらった」という思いもあるので、そのまま一線を退く道もあるのでしょう。
 でも、私はまだ夢を見ていたい。この仕事を愛し、誇りを持ち、これからも記者を続けたい、その一心で今回の転職を決めました。
 これは人生の賭けだと思います。でも私は、この賭けに勝てそうな気がしています。
 どこまで行けるかわかりませんが、前に進みます。
 
 これまでご縁のあったすべての皆さまと、これからご縁ができるであろうすべての皆さまに、今後も私に関わり、叱咤し、ご指導くださいますよう、お願い申し上げ、退職と転職のごあいさつとさせて頂きます。
 本当にありがとうございました。     相澤冬樹 拝
 
 
森友問題スクープ記者を“左遷” NHK「官邸忖度人事」の衝撃
日刊ゲンダイ 2018年5月17日
「皆様のNHK」どころか、これでは“安倍様のNHK”だ。森友学園問題に関するスクープを連発していたNHK大阪放送局の記者が突如“左遷”されるというのだ。安倍政権の急所である森友問題を報道させないための“忖度人事”ではと、NHK内部に衝撃が走っている。
 森友問題を最初に指摘した木村真豊中市議が15日、フェイスブックに〈大阪NHKの担当記者さんが、近く記者職から外されるということです!〉〈NHKが「忖度」したということなのか〉と投稿し、物議を醸している。
 
 これを受け、日刊ゲンダイが調べたところ、木村氏が言及したA記者は現在、大阪放送局の報道部の副部長だが、来月8日付で記者職を離れ、番組チェックなどを行う「考査室」へ異動する内々示が出されたという。
「考査室は、定年間際の社員が行くような部署で、悪くいえば“窓際”。A記者は昨年、森友問題が発覚した後、いち早く籠池前理事長のインタビューを行い『籠池に最も近い記者』とメディア関係者の間で一目置かれていました。今年4月4日の『財務省が森友学園側に口裏合わせ求めた疑い』をスクープしたのもA記者。文書改ざん問題など、検察の捜査が進んでいて、真相究明はまさにこれからというタイミングだけに、A記者も上層部に記者職を継続したいと伝えていた。なのに“考査室”ですからね」(NHK関係者)
 
 スクープ記者がいなくなれば、安倍首相を追い詰めるような森友問題の報道はNHKからガタ減りするだろう。やはり“忖度人事”なのか。
 A記者に話を聞こうとしたが、「私の立場ではお答えすることはできません」と口をつぐんだ。NHKに問い合わせると、「職員の人事に関して、原則、お答えすることはありません」(広報局)と返答した。
 
 前出の木村市議はこう言う。
「スクープ記者を外すようではNHKは終わりです。視聴者を見て番組を作っているとはいえず、今後、受信料を払いたくないという国民も出てくるのではないでしょうか」
 NHKの森友報道をめぐっては、先日、共産党議員の国会事務所に〈森友報道をトップニュースで伝えるな〉と、上層部が部下に指示したとのNHK内部からとみられるタレコミもあった。いったい誰のための公共放送なのか。

31- 徹底比較 安倍晋三と石破茂 (5)

 日刊ゲンダイの連載記事:「徹底比較 安倍晋三と石破茂 (5)」を紹介します。
 対談者の鈴木哲夫氏、野上忠興氏のプロフィールについては、連載1回目 
      ⇒ (8月26日)徹底比較 安倍晋三と石破茂 (1)、(2)
を参照ください。
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 徹底比較 安倍晋三と石破茂  
安倍は安保否定論の教師にブチ切れ 石破は15歳で単身上京
日刊ゲンダイ 2018年8月30日
鈴木 知事の息子ということで中学校でイジメを受けた石破は、「このまま鳥取にいて嫌がらせが続けば、この子はおかしくなる」という母の決断によって、15歳で単身上京し、慶応義塾高校に入学します。そこでは誰も「石破」という名字を読めなかった。鳥取では、石破と言えば「ああ、知事の息子か」となるのに、「せきは」とか「いしやぶり」とか呼ばれる。それが何よりうれしかったそうです。同級生には中川一郎元農相の息子、1級下には石原慎太郎の長男・伸晃ら、いわゆる権力者の一族が山ほどいて、特別扱いされることもない。のびのびと学校生活を楽しんだそうです。
 
野上 安倍の高校時代のエピソードといえば、「安保が戦争を誘発」と唱える社会科教師にブチ切れた一件が印象的です。「待ってください!」と立ち上がった安倍は、「安保条約の第2条にある経済条項が日本の繁栄の基礎を築いた」とまくしたてた。その教師は議論に乗ってこなかったそうですが、クラスメートの一人は「その時の安倍君の満足そうな顔はよく覚えている。とにかく自己主張の強いヤツだった」と述懐していました。もっとも、安倍は著書「美しい国へ」の中で、<本当を言うと、そのとき私は、条文がどんなことになっているのか、ほとんど知らなかった><祖父からこれは日本の発展にとって大きな意味があると聞かされていたので突っかかってみたまでだった>と種明かししています。安保について勉強していたわけではないが、敬愛する祖父の業績を否定されて激高し、受け売りで反論をしてしまう。そういう気質は今も変わっていないように見えますが。
 
鈴木 石破は高校時代は庭球部でテニスに打ち込み、ほとんど女性と口をきく機会もなかったそうです。慶応高校生ならモテそうなものですが、女性と縁がないまま、あっという間に3年間が過ぎて、慶応大学法学部法律学科に進学。大学では真面目に勉強していたようです。特に刑法は性に合ったらしく、学期末試験の時に「石破のヤマかけ講座」を開設するまでになります。
 
野上 対照的なのが安倍で、成蹊大学法学部政治学科に進むも、本人や母・洋子も認めていることですが、勉強熱心ではなかった。実際、大学時代の恩師が「勉強していなかった。ましてや経済、財政、金融などは最初から受けつけなかった」と振り返っていました。真っ赤なアルファロメオで通学し、雀荘通いとアーチェリー部の活動にいそしむ毎日。アーチェリーを選んだのは、「スキーやテニスだと腕の立つ連中が入ってくるが、アーチェリーならスタートが一緒でハンディがない」と考えたそうなんです。学友が言う「要領のよさ」が、ここにも顔を出していますね。ちなみに学友は「美人が多かった学習院アーチェリー部との合コンが楽しくて仕方なかったようだ」とも明かしていました。
 
鈴木 石破の場合は一途というか、慶大の同級生で「石破のヤマかけ講座」に来ていた女性が、今の奥さんです。 (つづく・敬称略)

2018年8月30日木曜日

玉城氏 知事選に出馬表明 植草氏が直近3回の沖縄国政選挙を分析

 玉城デニー・自由党衆院議員が29那覇市で記者会見し、沖縄県知事選への出馬を正式に表明し県が手続きを進める辺野古埋め立て承認の撤回については「全面的に支持する」と述べました。
 既に出馬を表明している前宜野湾市長の佐喜真淳氏(日本会議メンバー)との事実上の一騎打ちとなります
 
 沖縄知事選に関して、植草一秀氏が沖縄における直近3回の国政選挙の分析結果を発表しましたので紹介します。
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玉城氏が知事選出馬を正式表明 翁長氏の遺志継ぎ
「知事の強さ、思いは県民の胸に刻まれている」
琉球新報 2018年8月29日
 沖縄県知事在任中の8日に死去した翁長雄志氏の後継候補として県政与党などが出馬を要請した衆院議員の玉城デニー氏(58)が29日、那覇市のホテルで記者会見し、9月30日投開票(同13日告示)の県知事選への出馬を正式に表明した。
 玉城氏は「自立と共生の沖縄を目指す。生まれてくる子どもたち、あすを担う若者たちに平和で真に豊かな沖縄、誇りある沖縄、新時代沖縄を託せるよう全力疾走で頑張る」と述べた。
 県知事選は玉城氏と、既に出馬を表明している前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)の事実上の一騎打ちとなる。
 
 会見に先立ち、玉城氏は県政与党や労働組合などでつくる調整会議の照屋大河議長に対し出馬要請への受託を伝えた。
 玉城氏は辺野古新基地建設阻止を貫いた翁長氏に触れ、「県民が持つ力を誰よりも信じ、揺らぐことのない決意が県民とともにあることを最期の瞬間まで、命懸けで私たちに発し続けた知事の強さ、思いは県民の胸の奥に確かに静かに刻まれている」と述べた。
 一方、「知事が誰よりも望んだ心を一つにすることへの、心ない攻撃がある。民意、地方自治を踏みにじる形で辺野古新基地建設を強行するこの国の姿だ」と批判した。県が手続きを進める辺野古埋め立て承認の撤回については「全面的に支持する」と述べた
 
 
直近3回の沖縄国政選挙結果が物語ること
植草一秀の「知られざる真実」 2018年8月28日
201412月衆院総選挙、20167月参院通常選挙、201710月衆院総選挙の沖縄県比例代表選挙得票数を検証してみる。
 
 
選挙時期
201710
20167
201412
 
自  民
140,980
160,170
141,447
 
公  明
108,602
86,897
88,626
 
次世代・心
7,278
7,627
6,411
 
維  新
45,815
44,102
77,262
 
希  望
84,285
 
 
 
民主・民進
 
76,548
49,685 
 
立憲民主
94,963
 
 
 
共  産
75,859
90,061
79,711
 
社  民
70,876
69,821
81,705
 
生 活
 
18,352
28,525
 
2014年衆院選
自公+次世代   236,484
民共社生     239,606
 
2016年参院選
自公+こころ   254,694
民共社生     254,781
 
2017年衆院選
自公+日本維新  302,655
立希共社     325,983
となっている。
 
2014年衆院選では維新の党が 77,262票、
2016年参院選ではおおさか維新の会が 44,101
獲得しているが、この両党は基本的には野党陣営の政党であった。
(自公と次世代・こころ・維新 (反自公陣営) での選挙結果は基本的に伯仲している。
自公政権陣営 30万票
反自公陣営  30万票
が基礎票となっていると見てよいだろう。
 
公明党と共産党の得票推移を見ると、
公明党  88,626 86,897 108,602
共産党  79,711 90,061  75,859
となっている。
安倍政権側に公明党が位置し、反安倍政権側に共産党が位置している。
公明党を含む政権与党陣営と共産党を含む反政権陣営がほぼ互角に対峙している。
この情勢の下に、過去3回の国政選挙では、反安倍政権陣営が僅差で勝利を獲得してきた。
 
2014年知事選では大差で翁長雄志候補陣営が勝利したが、これは、保守陣営の票の一部が翁長支持に回ったためである。
しかし、その後、安倍内閣は沖縄県に対する利益誘導の姿勢を強め、この結果として翁長氏を支持してきた保守陣営の一部が切り崩されてきた
これを「オール沖縄」の弱体化と表現しているが、その変化は、安倍内閣の「札束でほおを叩く戦術」によってもたらされたものである。
 
今回の沖縄県知事選は、自民党総裁選終了直後の選挙となる。
知事選日程が930日に設定されたのは、自民党総裁選後に自民党幹部を沖縄に大量投入できるようにしたためのものである。
また、翁長前知事の県民葬が知事選の後に先送りされたのは、自公サイドが知事選への影響を恐れて、横車を押した結果である。
つまり、この二つの重要日程設定は、現在の沖縄県執行部の意思決定が安倍政権の強権発動の支配下に置かれていることを意味している。
 
沖縄知事ポストが安倍政権側に奪取された場合の状況を想定して沖縄県執行部が動いているということだ。
今回選挙最大の争点は辺野古米軍基地建設の是非であるが、これは、安倍政治そのものの是非と置き換えることができる。
米国に隷従する安倍政治を是とするのか、非とするのか。
沖縄の主権者が判断を示す選挙になる。
 
この意味では、保守陣営を含めた「オール沖縄」体制の構築にこだわる必然性は高くない。
米国に隷従し、沖縄に不当な負担を押し付けようとする安倍内閣の基本姿勢を問えばよいのである。
保守陣営に属する主権者であっても、米国にひれ伏すだけの安倍内閣の基本姿勢を非とする者は多数存在するだろう。
この人々は、対米隷従の安倍内閣の基本姿勢を非として、反安倍自公政権側の候補を支持することになる。
 
ただ一方で、保守陣営の一部が切り崩されたことも事実ではあるから「オール沖縄」の言葉にこだわる必要性は低くなっているのだ。
沖縄での国政選挙での結果を分析すれば、次のことだけは確実に言える。
それは、共産党を含む共闘体制を確立しなければ、自公候補には勝てないということだ。
これだけは間違いない。
政権与党側候補には公明党の支持がつくのである。
この陣営と対峙して勝利を得るには、共産党を含む共闘体制を構築することが絶対に必要である。
 
逆に言えば、自公陣営は、反自公陣営を「共産党との共闘を推進する勢力」と「共産党の共闘に消極的な勢力」とに分断することが勝利を得る最良の方策と考えているはずだ。
このための情報誘導がすでに大規模に展開されていることを認識するべきだ。