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2020年9月9日水曜日

安倍政権追い詰めた7年8カ月(6)陸上イージス 配備撤回(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗の連載記事「安倍政権追い詰めた7年8カ月」の第6弾は陸上イージス 配備撤回」です。
 安倍政権歴代政権の中でも突出して対米従属を貫き、「アメリカいいなり政治」を行いました。その最たる例が安保法制=戦争法をめぐる動きで多くの憲法学者や元内閣法制局長官、防衛官僚などが公然と異を唱え10万人を超える人々が国会前を埋めつくしました。
 また「バイ・アメリカン(アメリカ製品を買え)」を掲げるトランプ大統領に迎合し、F35ステルス戦闘機などの米国製武器の爆買いを続けたうえに、総額1兆円とされる「イージス・アショア」の導入を決めましたが、配備反対の声を上げ続けた地元住民や全国での連帯した運動、野党の批判により最終的に配備断念に追い込まれました。
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安倍政権追い詰めた7年8カ月(6)陸上イージス 配備撤回
しんぶん赤旗 2020年9月8日
 「日米同盟を強化していくことに変わりはないので安心してほしい」。安倍晋三首相は辞任表明から3日後の8月31日、トランプ米大統領との電話会談で「日米同盟強化は不変だ」と誓いました。

共闘の流れ
 日米安保体制のもと、対米従属を基調としてきた歴代政権の中でも突出していたのが安倍政権です。行き過ぎた「アメリカいいなり政治」への疑問の声がかつてなく高まっています。

 最たる例が、圧倒的な国民の反対世論を踏みにじって強行した安保法制=戦争法をめぐる動きです。安倍首相は辞任表明の会見で、レガシー(政治的遺産)として戦争法制定をあげ、「助け合うことができる同盟は強固なものになった」と誇りました。首相は持論である「血の同盟」=日本が海外で米軍と肩を並べて戦争できる国をつくるため、歴代政権が憲法上できないとしてきた集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定を強行。これに基づき安保法制がつくられました。

 自民、公明両党の数の力で成立が強行されましたが、多くの憲法学者や元内閣法制局長官、防衛官僚などが公然と異を唱えました。何より10万人を超える人々が国会前を埋めつくし、市民と野党の共闘という戦後かつてなかった流れを生み出す原動力になりました

爆買い続け
 もう一つの表れが、「バイ・アメリカン(アメリカ製品を買え)」を掲げるトランプ大統領に迎合し、F35Bステルス戦闘機などの米国製武器の爆買いを続けたことです。その結果、2020年度予算では軍事費が過去最大の5兆3000億円を突破し、6年連続で過去最高を更新。既に発注済みの兵器のローン残高(後年度負担)も膨らみ、将来の財政の圧迫を招いています。
 しかし、総額1兆円とされる超高額兵器・陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は配備断念に追い込まれました。配備反対の声を上げ続けた地元住民や全国での連帯した運動、野党の論戦が破綻に追い込みました。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動阿武・萩実行委員会」の米津高明共同代表は「地元では当初からブースターの住宅地落下や水源汚染などの問題が懸念され、宣伝や署名集め、ビラ配布など多くの人たちが頑張りました。署名は3万~4万人に上り、住民の結束した運動が撤回への大きな推進力になりました」と振り返ります。 (つづく)

2020年8月28日金曜日

28- 敵基地攻撃能力の保有についての検討(東京新聞)

 東京新聞が<敵基地攻撃能力>に関する記事4本を電子版に載せました。
 そのタイトルは下記の通りです。

  首相主導で「急いだ作業」 防衛相経験者「この短期間で無理」
「他国に脅威与えぬ」方針揺らぐ 敵基地攻撃は専守防衛の枠内か逸脱か
「先制攻撃能力」へ道 安保政策大転換の恐れ 抑止力向上か危険増大か
「地上イージスより安い」理由も2倍超の試算も 敵基地攻撃能力の保有

 掲示時刻は全て一緒なので一つの記事を4本に分けて掲示したようです。
 掲示の順序は事務局で勝手に決めました。

 そもそも「敵基地攻撃能力の保有の検討は、地上イージスの配備撤回を発表した3日後6月18日、唐突に安倍首相21年度の予算案に間に合わせるために9月末までにまとめたいと提起し、それに自民党が応じ6月末に検討チーム発足させ、約1カ月で提言をまとめたものです。
 しかし憲法の「少なくとも専守防衛に留めるべき」との精神を逸脱し、諸外国に深刻な恐怖を与えるだけでなく結果として日本自身が壊滅的な反撃を受けることに繋がる この「構想」を、いくら首相がそれを望んだからと言っても、僅か1ヶ月間で しかも1回程度の会議で提言をまとめたのには大いに無理がありました。
 いくら首相の座にいるからと言って、好戦的であること以外には何の見識も持たない人間の意のままになっては国を大きく誤ります。

 しかもことのはじめにおいて、「敵基地攻撃能力の保有」は「イージスアショア」の設置より安上がりという見込みがあったようなのですが、それが間違いであることも明らかにされました。
 はじめに自分に都合が良いように漠然と考えたことには兎角間違っていることが多くあります。
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<敵基地攻撃能力>
首相主導で「急いだ作業」 防衛相経験者「この短期間で無理」
東京新聞 2020年8月27日

 敵基地攻撃能力の保有の検討は、安倍晋三首相の主導で期限を区切って進められている。
 首相が安保戦略について「この夏、国家安全保障会議(NSC)で徹底的に議論し、新しい方向性を打ち出す」と表明したのは6月18日の記者会見。河野太郎防衛相が地上イージスの配備撤回を発表した3日後だった。
 河野氏は方向性を2021年度予算案に反映させるのに「(9月末が締め切りの)概算要求は一つの節目になる」と言及。当初から検討期間を約3カ月に区切ったことになる。
 これに間に合わせる形で、自民党の検討チームが6月末に発足し、約1カ月で提言をまとめた。議論に参加した岩屋毅前防衛相は「非常に急いだ作業。もう少し時間がほしかった」と明かす。この間、国会は閉会中で、安保政策に関する審議は衆参両院で7月に一度ずつ開かれただけ。保有に慎重な与党の公明党との調整も行われていない。

 安倍政権は、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更といった安全保障政策の転換を、国民の根強い反対を押し切る形で進めてきた。地上イージスはトランプ米大統領に購入を促され、導入を閣議決定した。今回も丁寧な説明や議論が不足している印象は否めない。自民党の防衛相経験者は「この短期間で政府が敵基地攻撃まで踏み込むのは無理だ」と指摘している。(井上峻輔)


「他国に脅威与えぬ」方針揺らぐ 敵基地攻撃は専守防衛の枠内か逸脱か
東京新聞 2020年8月27日

 他国の領域内を標的にする敵基地攻撃能力の保有は、日本の安全保障政策の大転換にも直結する。専守防衛の枠内なのか、逸脱かが大きな論点だ。国際社会に発信してきた他国に脅威を与えない」という防衛の基本方針も揺らぎかねない。(上野実輝彦、川田篤志)

◆攻撃を防ぐのに「やむを得ない最小限度」
 政府は敵基地攻撃に関して、歴代防衛相の国会答弁などで「誘導弾などによる攻撃を防ぐのに、やむを得ない最小限度の措置を取ることは、他の手段がない限り、自衛権の範囲に含まれる」と、憲法上可能という立場を取ってきた。しかし、上智大の高見勝利名誉教授(憲法学)は「専守防衛を逸脱する」と明言し、違憲だと断じる
 敵基地攻撃を巡る政府見解は、鳩山一郎内閣が1956年2月に示した憲法解釈を現在も引き継いでいる。「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」として、相手国の領域内にあるミサイル発射台などを攻撃することも自衛の措置として認められるという内容だ。

◆「政策判断で保有せず」に落ち着く
 この見解が出されたのは、自衛隊創設の約1年8カ月後。当時の鳩山首相が「飛行機で飛び出して(敵)基地を粉砕してしまうまではできない」と指摘する一方、船田中防衛庁長官は「敵の基地をたたかなければ自衛できない場合(がある)」と主張するなど、閣内でも答弁が定まらず、野党の追及を受けて憲法解釈を統一させる必要に迫られていた。その結果、「法理(憲法の理論)的には可能」で合憲だと整理しつつ、敵基地攻撃のための装備は政策判断で保有しないという説明に落ち着いた経緯がある。

 高見氏は政府が海外派兵を禁じていることに触れ「相手国に人を出すのはダメだが、兵器なら良いというのは無理がある。単なる言葉遊びにすぎない」と批判。敵基地攻撃能力の保有を求めた自民党提言は、米軍に矛(攻撃)を委ねて自衛隊は盾(防衛)に徹する役割分担に変わりはないと説明するが「そもそも憲法は、相手国に入り込んで自衛権を行使することを想定しておらず、専守防衛の域を超えている」と強調した。

◆防衛計画大綱の基本方針変えるのか
 歴代政権は過去の戦争の惨禍を踏まえ、日本が専守防衛に徹して軍事的な脅威を与えない国であるとの発信を重視。1995年以降、5回の改定を経た防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」は「憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」との基本方針を明記し、安倍政権が2018年に策定した現大綱まで維持している。敵基地攻撃能力を保有するなら、この方針を変えるのかの説明が求められる。
 安倍政権が13年に初めて打ち出した新たな外交・安保政策「国家安全保障戦略」でも「国家安全保障を達成するためには、国際社会や国民の理解を得ることが極めて重要」「諸外国との協力関係強化や信頼醸成を図る必要がある」と強調していた。

 中国は「日本が歴史の教訓をくみ取り、専守防衛の約束を誠実に履行し、行動で平和発展の道を歩むよう促す」(外務省副報道局長)と早くも警戒している。
 米中対立などで東アジア情勢の緊張が高まる中、近隣諸国の理解を得ないまま、敵基地攻撃能力の保有へと進めば、地域の新たな懸念材料になる可能性もある。


「先制攻撃能力」へ道 安保政策大転換の恐れ 抑止力向上か危険増大か
東京新聞 2020年8月27日
 政府は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備を撤回したことを受け、敵基地攻撃能力の保有を含む安全保障政策見直しの検討を近く本格化させる。9月中に一定の結論を得る方針だ。相手国内の兵器を攻撃する能力を備えれば、抑止力の向上につながるとの考えだが、逆に周辺国に脅威を与え、緊張を高めかねない。「先制攻撃」が可能になる能力との見方もでき、専守防衛を堅持してきた日本の安保政策を大きく転換させる懸念も高まる。

 敵がミサイルを発射する前に拠点をたたく敵基地攻撃能力について政府は従来、憲法上は保有を認められるが、専守防衛の観点から政策判断として持たないとの立場を維持してきた。だが、地上イージス配備と入れ替わる形で政府・自民党内に保有論が台頭。安倍晋三首相は6月の記者会見で「新しい方向性を打ち出す」と安保政策を見直し、保有を視野に検討する意向を表明した。
 自民党は8月、首相の指示を受け、事実上の敵基地攻撃能力である「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力」の保有を求める提言を政府に提出。北朝鮮や中国、ロシアが「従来のミサイル防衛システムを突破するような新しいミサイル開発を進めている」ことを理由に抑止力の向上が必要だと主張した。不規則な軌道を描く新型ミサイルなどは、地上イージスを含む日本の防衛システムでは迎撃できず、対応は「喫緊の課題」と位置づけている。
 相手国のミサイルを事前に破壊できる能力があれば、日本への攻撃を思いとどまらせることができる―。政府・自民党が保有の必要性を説く根拠だ。
 だが、相手国内への攻撃が可能になれば、相手側が日本を標的にする口実になり、かえって危険が増す懸念がある。敵基地攻撃は自衛の範囲内で、国際法が禁じる先制攻撃に当たらないというのが政府の解釈だが、周辺国が警戒感を強め、軍拡競争など緊張を高める恐れも否定できない。
 日米の軍事的一体化が加速する可能性もある。敵基地攻撃には、低軌道衛星など米軍の装備品が必要とされるからだ。自衛隊が攻撃能力を持てば、より主体的な任務を求められることも予想される。自民党の提言は、相手国の破壊に用いる兵器は持たず、装備品も最小限度に限るとするが、線引きは曖昧だ。
 安保政策上、敵基地攻撃能力の保有は地上イージスの配備に比べ、大転換へとつながる多くの論点を抱えるが、政府・自民党の国民への説明は十分とは言い難い。国民的議論は置き去りのままだ。(上野実輝彦)

◆防げぬミサイル、緊張緩和以外に日本の安全はない<柳沢協二さんのウオッチ安全保障>
 地上イージスの配備中止と敵基地攻撃論が、どうつながるのか。地上イージス中止の理由は、ブースターが近隣地域に落下するのを防ぐ改修に2000億円かかることだった。だが、代わりにイージス艦を2隻増やすなら3000億円かかる。敵基地攻撃には、ミサイルの位置とそれが攻撃態勢にあることを判断する情報が不可欠で、1基100億円の偵察衛星が何10基も必要になる。
 今やミサイルは、極超音速滑空弾の時代だ。イージス・システムでは撃ち落とせない。落とせないなら基地を破壊しようというのが、敵基地攻撃論だ。
 しかし、全ての基地を同時に破壊できなければ、残りのミサイルが確実に飛んでくる。ミサイルを巡る「矛」と「盾」の競争は、依然として攻撃優位だ。だから、ミサイルのつぶし合いになる。こうした状況は疑心暗鬼を招き、抑止を不安定化させる。
 米インド太平洋軍が3月に発表した「全領域作戦」では、中国を念頭に、グアムを守る統合ミサイル防衛と、日本・沖縄を含む第一列島線への精密攻撃ミサイル配備が示されている。ミサイル軍拡競争の激化が予想され、その米軍と一体化すれば、米中戦争に巻き込まれるリスクも高まる。
 専守防衛とは、相手に脅威を与えないことで戦争の動機をなくす戦略だ。その条件は大国関係の安定だ。ミサイルを防げない時代だからこそ、米中・米朝の緊張を緩和する以外、日本の安全はない。それを考えることが政治の第一の責務ではないか。(元内閣官房副長官補、寄稿)


「地上イージスより安い」理由も2倍超の試算も 敵基地攻撃能力の保有
東京新聞 2020年8月27日
 防衛省は地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の迎撃ミサイルに技術的問題が見つかり、改修に2000億円以上かかることを撤回の理由に挙げたが、敵基地攻撃能力を保有する場合、どれぐらいの費用が必要なのか。防衛大の武田康裕教授は、地上イージスより年間で2倍超という試算をまとめた。全ての装備を独自に持つと年間863億円かかり、5兆円を突破した防衛予算をさらに膨張させる懸念がある。
 敵基地攻撃には
(1)目標地点の正確な把握
(2)相手国の防空網の無力化
(3)正確な打撃 
が必要。米軍の「矛」に依存せず、日本独自で能力を保持するには、さまざまな装備が必要となる。
 相手国の防空網を制圧し、自衛隊が危険を避けて攻撃するのに欠かせないのが、敵のレーダーや通信を妨害する機能。優れた性能を持つ米国製電子戦機「EA18―G」を採用すれば、年間119億円かかる

 爆撃には、自衛隊が導入を始めているステルス戦闘機F35Aを42機配備すると想定し、誘導爆弾なども搭載すると、年間コストは744億円に上る。
 防衛省は、地上イージスの購入と30年間の維持費などの総額を4504億円と見積もっていた。これに対し、武田氏は研究開発費や人件費なども加えて20年間で総額8250億円と、防衛省の見積もりを上回る費用がかかると試算。使用年数で割ると1年当たり413億円だが、それでも敵基地攻撃能力の費用が450億円高い。

 敵基地攻撃能力と地上イージスをはじめとするミサイル防衛(MD)システムのいずれを選択する場合でも、弾道ミサイルなどの攻撃目標を正確にとらえる早期警戒衛星の活用が不可欠。日本が独自に保有すればさらに年間850億円の費用が上乗せされる。
 武田氏は「敵基地攻撃は防衛の効果は高いものの専守防衛の考え方に抵触する恐れがあるので、兵器コストだけでなく世論を説得する政治コストも生じる可能性がある」と指摘した。(山口哲人)

2020年8月26日水曜日

米軍駐留経費負担 筋通らぬ「思いやり」は不要だ

 ボルトン前米大統領補佐官は、先に出版した回顧録で、197月、谷内正太郎国家安全保障局長当時)に、トランプが弁軍駐留経費として年間約8500億円の負担を求めていると伝えたことを明らかにしました。

 しかし米軍の駐留経費は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と、日米地位協定24明記されているので全く筋が通りません。
 いわゆる「思いやり」予算1978年、円高・ドル安と財政難を理由にした米国の要求に応じ、当時防衛庁長官であった金丸信氏が違法を承知で発案したもので、総額62億円でスタートしたのでした。
 それが次々と色々な項目が追加され金額も増大し、20年度予算では「思いやり」予算1993億円その他の項目を加えると総額は3939億円に達しました。

 トランプの要求はそのうちの「思いやり」予算1993億円8500億円に吹っ掛けた上に、「もしも応じなければ米軍を撤退させると脅せ」とボルトンに言ったというものです。
 そもそも米軍の駐留は米国自身の必要性から行われているもので、米軍が日本から撤退するのは独立国家としてむしろ当然で喜ばしいことです。

 いずれにしても不当な要求には屈するべきではありません。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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主張米軍駐留経費負担 筋通らぬ「思いやり」は不要だ

しんぶん赤旗 2020年8月25日
 日本に米軍が駐留するのに必要な経費(在日米軍駐留経費)の負担をめぐる日米交渉が今秋、本格化する見通しです。同経費の日本側負担のうち、日米地位協定にも反する「思いやり」予算の特別協定が2021年3月末で期限を迎えるためです。トランプ米政権は現状の4倍以上になる法外な負担要求を日本側に伝えていたことも明らかになっています。「思いやり」予算は廃止が当然であり、増額が許されないのはもちろん、特別協定の延長もやめるべきです。

総額は10兆円近くにも

 在日米軍への「思いやり」予算は、円高・ドル安と財政難を理由にした米国の要求に応じ、1978年度に始まりました。しかし、日米地位協定24条は、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記しています。78年当時、防衛庁長官を務め、「思いやり」予算の生みの親とされる金丸信氏(元自民党副総裁)は著書で、同協定に反するのを承知の上での「政治的決断」だったと明かしています。
 「在日米軍駐留費の分担増は政府内でも長くタブー視されてきた」「亘理(彰・防衛)施設庁長官は、まず、地位協定をじっくり研究したらしいが、(米軍の)経常的経費は地位協定第二十四条一項で『米側負担』に該当するという。しかし、ここを切り抜けて妙案を考えないことにはどうにもならない」「ここは一番“政治的決断”が必要だと私は思った」(『わが体験的防衛論』)
 金丸氏は同著で、「“思いやりの精神”の前に不可能ということはない」と豪語しています。

 その言葉の通り、米軍基地で働く日本人従業員の福利費などの負担(78年度62億円)から始まった「思いやり」予算は、79年度に新規の基地施設の整備費などにも拡大され、額も毎年膨れ上がります。87年には、政府自身がこれ以上の負担は不可能と国会答弁していた基地従業員の労務費そのもの(退職手当など)に対象を広げるため、米国と特別協定を結びます。政府は、特別協定は「暫定的、一時的、特例的な措置」だと弁明しましたが、その後も改定を繰り返し、今では基本給を含めた労務費の全てと米軍基地で使う光熱水料、訓練移転費まで負担しています。
 しかも、政府は、沖縄の米軍基地・演習を移転するSACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費の負担を当初予算で97年度から始めます。2007年度には、沖縄の辺野古新基地建設などのため米軍再編経費の負担も開始します。
 その結果、20年度予算には、「思いやり」予算1993億円、SACO経費138億円、米軍再編経費1799億円の計3930億円が盛り込まれています。いずれも日米地位協定に反する負担で、78年度から20年度までのこれら予算の総額は10兆円近くに達します。

米追随から抜け出す時

 「思いやり」予算に関し、ボルトン前米大統領補佐官は、現職だった19年7月、当時、国家安全保障局長だった谷内正太郎氏に対し、トランプ大統領が年間80億ドル(約8500億円)の負担を求めていると伝えたことを回顧録で告白しています。“不可能はない”とまで言われる「思いやり」という名の、屈辱的な対米追従から今こそ抜け出すべきです。

2020年8月11日火曜日

敵基地攻撃論に危うさ 柳沢協二氏/敵基地攻撃能力保有は憲法を蹂躙 小池晃氏

 いわゆる「敵基地攻撃能力保有」論議に関して、時事通信が柳沢協二氏(元防衛庁防衛研究所長)にインタビューしました。

 しんぶん赤旗が、9日のNHK日曜討論会で共産党の小池晃書記局長が「敵基地攻撃能力の保有」に関して発言した要旨を伝えましたので併せて紹介します。
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敵基地攻撃論に危うさ 柳沢協二・元官房副長官補
時事通信 2020年08月10日

 ―政府が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」導入を断念した。
 どんなに迎撃ミサイルを置いても百発百中とはいかない。ウエポンシステム ⇒この場合は迎撃システムを置いたから安心だという錯覚に陥るのが一番まずい。隙間をどう防護するかは、兵器でなく政治の役割だ。

 ―ミサイル防衛に穴があいた。
 もともと穴だらけだった。ミサイルを撃たれない状況をつくることを考えていく必要がある。本当に穴があいて大変なら、(ブースター落下制御に必要な改修のため)追加の2000億円をかけることと、他の手段との費用対効果を比べなければならない。そういう発想が全くないのが理解できない。

 ―政府は「敵基地攻撃能力」の保有を検討している。
 (陸上イージスより)はるかに難しく、お金も天文学的にかかる。攻撃目標を把握し、相手の防空網をたたかなければいけない。どのくらいつぶせたか効果の測定も必要だ。不足部分は第2撃をやらなければいけない。迎撃ミサイルに比べ、より相手の反撃を誘発する。政治的なハードルもさることながら、軍事作戦的に難しい。そういう話にすぐ行くところに危うさを感じる。

 ―専守防衛との整合性は。
 専守防衛とは、攻めて来るものはたたくが、こちらが攻め込まないことで、相手に攻撃の口実を与えないことだ。敵基地攻撃能力はそれを超える。対米協力という文脈で、既に専守防衛の理念を超えている。米朝、米中の戦争をどう防ぐか、緊張を下げるために日本に何ができるか考えなければいけない。それをせずに敵基地攻撃能力を求めるのは、政治の本来の役割を忘れた議論でしかない。

 ―米中間の緊張が高まる中、日本にできる役割とは。
 もう少し(米中間の)対話を模索していい。呼び掛けるだけでなく、日本としての仲介の理念が必要だが、誰もそれを考えていない。

 ―米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の見直しを求める声もある。
 軟弱地盤(の判明)によって工費が3500億円から9300億円になる。ただ、24年かけた経緯があり、今までの政策の惰性も働いている。今の政権では見直しは望めないかもしれない。

 柳沢協二氏(やなぎさわ・きょうじ)東大法卒。防衛庁防衛研究所長、官房副長官補を経てNPO国際地政学研究所理事長。73歳。東京都出身。


敵基地攻撃能力の保有 憲法をじゅうりん NHK番組小池氏主張
しんぶん赤旗 2020年8月10日
 日本共産党の小池晃書記局長は9日のNHK「日曜討論」で、敵基地攻撃能力の保有などを柱とする自民党提言を受け、政府が安全保障戦略の見直しに着手したことについて、「攻撃的兵器を保有することは、自衛のための最小限度の範囲を超え、いかなる場合も許されないとしてきた政府の憲法上の立場をじゅうりんすることになり、許されない」と批判しました。

 小池氏は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが「日本は軍事的先制攻撃オプションに踏み出す」と報じていることを紹介し、「国際的には先制攻撃とみなされている。果てしない大軍拡になり、軍事費もますます膨れ上がることになる」と強調しました。
 提言を受けとった安倍晋三首相が「国の使命は国民の命と平和な暮らしを守り抜くことだ」と述べたことを指摘し、「ならば最優先で取り組むべきは新型コロナウイルス感染から国民の命を守ることであり、そのために予算を振り向けることだ」とのべ、「憲法9条に基づく積極的な平和外交こそ日本の役割だ」と主張しました。

2020年8月6日木曜日

敵基地攻撃能力は憲法破壊の危険な暴走/真の抑止力にならない

 自民党は4日の政調審議会で党ミサイル防衛検討チームがまとめた敵基地攻撃能力の保有を含む抑止力向上を求める提言を了承し、安倍首相に提出しました。
 首相は提言を受けた後、麻生副総理、菅官房長官、茂木外相、河野防衛相と国家安全保障会議(NSC)関係閣僚会合を開催しました
 会合後、首相は記者団に「政府においても国家安全保障会議で徹底的に議論を行っている。今回の提言を受け止め、しっかりと方向性を打ち出し、速やかに実行していく考えだ」と述べました。政府は新たなミサイル防衛についての協議を本格化させ9月中に方向性を示す方針です

 自民党は第二次安倍政権の発足以降、二度にわたり敵基地攻撃能力の保有を政府に提言してきました。今回の提言ではあからさまな「敵基地攻撃能力」という表現避けていますが、それは党内外の批判をかわすためのごまかしです。

 しんぶん赤旗が「敵基地攻撃の提言 憲法破壊の危険な暴走やめよ」とする主張を掲げ、「専守防衛」からの重大な逸脱で、軍拡競争の悪循環を生むだけだと警告しました。
 東京新聞も「敵基地攻撃能力 真の抑止力にならない」とする社説を掲げ、抑止力と称しても必然的に周辺国の軍拡競争を促すので「安全保障のジレンマ」に陥ると批判しました。
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主張 敵基地攻撃の提言 憲法破壊の危険な暴走やめよ
しんぶん赤旗 2020年8月5日
 自民党が敵基地攻撃能力の保有について早急な検討と結論を求める提言をまとめ、安倍晋三首相に提出しました。「敵基地攻撃能力」という言葉は使わなかったものの、その保有を実質的に促し、憲法の平和原則を破壊する安倍政権の暴走をいっそう後押ししようとする極めて危険な動きです。

「専守防衛」から逸脱
 安倍政権は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念を受け、9月にも新たな安全保障戦略の方向性を示そうとしています。提言はこれに合わせ、同党の「ミサイル防衛に関する検討チーム」(座長・小野寺五典元防衛相)を中心に議論されてきました。
「国民を守るための抑止力向上に関する提言」というのが、タイトルです。「イージス・アショア代替機能の確保」にとどまらず、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」=敵基地攻撃能力を保有する必要性を強調しているのが最大の特徴です。
「敵基地攻撃能力」という表現を避けたのは党内外の批判をかわすためのごまかしです。しかし、保有に積極的な議員からは、「相手領域内」という表現について「これまで(攻撃対象を)基地だけに限っていたが、基地外にも攻撃できるようになった。むしろ前進だ」(「朝日」1日付)という声も上がっているとされます。

 提言は、敵基地攻撃能力を保有する口実として「飛来するミサイルの迎撃だけを行っていては、防御しきれない恐れがある」としています。そのため、日米同盟の下での「日本は防御(盾)、米国は打撃(矛)」という基本的な役割分担は維持するとしつつ、「日米の対応オプション(選択肢)が重層的なものとなるよう、わが国がより主体的な取り組みを行う」とし、日本が「矛」の役割を一部担う考えを示しています。政府・自民党がこれまで曲がりなりにも堅持するとしてきた「専守防衛」からの重大な逸脱です。

 提言は、敵基地攻撃能力の保有のため、どのような兵器が必要かについては具体的に言及していません。しかし、安倍政権はすでに敵基地攻撃能力を構成する兵器の導入を進めています。巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)や、F35B戦闘機の運用を可能にする「いずも」型護衛艦の空母化などです。「高速滑空弾」と呼ばれる超音速の新型ミサイルや、敵のレーダーを無力化する電子戦機の研究・開発も進めています。

 提言は、弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルや無人機などによる攻撃に対処するため、米国の「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」との連携を主張するとともに、数百基もの監視衛星を打ち上げる「低軌道衛星コンステレーション」の検討も求めています。宇宙軍拡につながる大問題です。

際限のない軍拡の危険
 提言は、「抑止力の向上」を繰り返し強調しています。しかし、相手を抑え込む能力を高めれば、相手は抑え込まれないように自らの攻撃能力を強化します。能力を強めた敵をさらに抑え込もうとすれば、いっそうの攻撃能力が必要です。軍拡競争の悪循環を生み、東アジアの緊張をさらに激化させるのは明らかです。
 世論と運動を強め、自民党の暴走を阻止することが必要です。


社説 敵基地攻撃能力 真の抑止力にならない
東京新聞 2020年8月5日
「敵基地攻撃能力の保有」を事実上求める自民党の提言は、「専守防衛」の憲法九条を逸脱するのでは、との疑問が拭えない。地域の軍拡競争が加速すれば、真の抑止力にもならないのではないか。
 提言の発端は、安倍内閣が進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備計画の撤回だ。それによって生じるミサイル防衛の「空白」をどう埋めるのか、自民党が検討してまとめた提言を、安倍晋三首相、菅義偉官房長官ら政府側にきのう申し入れた。
 提言は日本を標的とする弾道ミサイルについて「迎撃だけでは、防御しきれない恐れがある」と指摘した上で「相手領域内でも弾道ミサイルを阻止する能力の保有」が必要だとして、政府として早急に結論を出すよう求めている。
 提言には「敵基地攻撃能力の保有」という文言はないが、相手領域内での阻止能力には言及しており、敵基地攻撃能力の保有を事実上促したものといえる。

 歴代内閣は、ミサイル発射基地への攻撃は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」と、憲法九条が認める自衛の範囲内としてきた。
 同時に政府見解は「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」ともしており、敵基地攻撃が可能な装備を持つことを認めてきたわけではない。
 それが一転、攻撃能力を保有することになれば、専守防衛を逸脱しかねない。抑止力向上のための取り組みが周辺国の軍拡競争を促し、逆に緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥る恐れもある。
 政府は国家安全保障会議で新しい安全保障戦略を検討、九月にも新しい方向性を示すというが、自民党提言をそのまま受け入れず、慎重に議論する必要がある。

 日本世論調査会の全国郵送世論調査では、自衛隊は「専守防衛を厳守するべきだ」と答えた人は76%に上る。国民多数の思いを、政府が踏みにじってはならない。
 安倍首相の政権復帰後、防衛費は増額が続き、過去最高を更新し続けている。新しい安保戦略に、防衛費を増額、維持する意図があるとしたら看過できない。
 首相は提言を受けて「国の使命は国民の命と平和な暮らしを守り抜くことだ」と述べた。ならば、最優先で取り組むべきは、コロナ禍に苦しむ国民の暮らしや仕事、学びを守ることであり、限られた予算を振り向けることである。