2016年2月12日金曜日

拉致問題が解決しない真の理由(天木直人氏)

 元外交官の天木直人氏が「拉致被害者家族はいいかげんに目を覚ませ」という刺激的なタイトルをつけたブログを発表しました。
 
 それは安倍政権が独自の対北朝鮮制裁に踏み切るのは北朝鮮の核脅威の空騒ぎを前にして拉致問題を完全に切り捨てたということだとする指摘に始まって、2001年のピョンヤン宣言を機に一気に拉致問題の解決=日朝国交正常化に向かわなかったのはアメリカの意向によるものであり、「米国に追従する限り拉致問題は解決しない。拉致問題は北朝鮮の核と切り離し、日本独自で北朝鮮と話しあって解決するしかない」と述べています。
 
 そして「拉致問題の解決は、日朝ピョンヤン宣言に立ちもどって解決するほかはなく、対米従属から自立して、本気になって北朝鮮と国交正常化交渉するしかない」としています。
 いずれにしても安倍政権下では拉致問題の解決は望めないということです。
 
 天木氏が12日に発表したもう一つのブログも一緒に紹介します。
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拉致被害者家族はいいかげんに目を覚ませ
天木直人 2016年2月11日
 安倍政権が、国連安保理による対北朝鮮への制裁決議を待たずして日本独自の制裁に踏み切った。
 安倍首相が拉致問題の解決を本気で行おうとするなら、どう考えても間違いだ。
 
 思えば2001年のピョンヤン宣言は、拉致問題と日朝国交正常化を包括的に解決しようとしたものであり、その判断は正しかった。
 誤りは、拉致被害者の生死を軽んじて、歴史に名を残そうと手柄を焦ったところだ。
 当然ながら、拉致被害者家族と世論の反発を招き、全員無事で帰って来なければ解決にはならない、となって行き詰まった。
 
 しかし、行き詰まった本当の理由はそれではない。
 拉致被害者家族や世論の反発だけだったら、国民の生命に非情な政治家と官僚は、押し切っただろう。
 あの時点で日朝国交正常化を進めることを、米国が許さなかったのだ。
 米国はすかさず北朝鮮の核脅威を持ち出して潰した。
 たちまちのうちに六か国協議が始まり拉致問題は核問題の前にかすんだ。
 
 それから15年ほどたって、いま我々が目にしているのは、北朝鮮の核脅威の空騒ぎを前にして、拉致問題を完全に切り捨てたということだ。
 六か国協議が五カ国協議になって、北朝鮮との話し合いさえ吹き飛ばされようとしている。
 愛国・保守が売り物のはずの安倍・谷内コンビが、保身の為に、小泉・田中コンビ以上に、対米従属に成り下がったということだ。
 
 今度の安倍政権の対北朝鮮独自制裁強化について、横田めぐみさんの母親である早紀江さんはこう評価したという。
 「家族の思いを理解し、北朝鮮に対して毅然とした姿勢を示してくれた」(2月11日読売)
 
 いい加減に目を覚ましたらどうか。
 米国に追従する限り拉致問題は解決しない。
 拉致問題は北朝鮮の核と切り離し、日本独自で北朝鮮と話しあって解決するしかない。
 ウソだと思うなら教えよう。
 米国がいかに日本国民の人権を軽視し、安倍政権がそんな米国に従うしか能がないことを。
 これもまたきょう2月11日の読売新聞が書いている。
 拉致問題を調べている「特定失踪者問題調査会」は10日、防衛省に調査と情報提供を要請したという。
 自衛隊員や在日米軍基地周辺に住んでいた日本人が拉致の疑いのある121人の特定失踪者に含まれているからだ。
 ところが、非公開を条件に要請しているにもかかわらず、防衛省からは情報提供の明言はなかったという。
 米国が教えないからだ。
 米国は、みずからの安全保障政策を日本国民の生命より優先させ、防衛省は、みずからの隊員が拉致された疑いがあるというのに、米国に従うしかないのだ。
 
 繰り返していう。
 拉致被害者家族は目を覚ませ。
 拉致問題の解決は、日朝ピョンヤン宣言に立ちもどって解決するほかはない。
 そして、あの時と違って、日本政府が拉致被害者家族と一体になって、対米従属から自立して、本気になって北朝鮮と国交正常化交渉するしかない
 制裁ではなく、巨額の賠償と引き換えに、全員の消息の全貌を白状することを求めるしかない。
 そして、その結果がどうであれ、それを受け止めるしかない。
 
 その責任は、あの無謀な戦争に突き進み、そしてその責任をとらずに今日に至っているこの国の為政者たちに取らせるしかないのである(了)
 
 
日本の衛星ロケット打ち上げ延期が暴露した北朝鮮発射の空騒ぎ
天木直人 2016年2月12日
 三菱重工業の衛星ロケットH2Aが悪天候のため打ち上延期となったという。
 予定では12日に打ち上げられるところだったという。
 もし打ち上げが成功していたらメディアは大歓迎しただろう。
 北朝鮮のロケット発射はミサイルといい、日本のそれは天文衛星といって。
 しかし、ロケットの先に搭載する違いがあるだけだ。
 爆弾を積めばそれはそのままミサイルだ。
 
 北朝鮮が「事実上のミサイル」を発射した同じ2月7日の、しかも、ほぼ同時刻に、ロシアが人工衛星を打ち上げた(2月8日日経新聞)ことを、果たしてどれだけの日本国民は知っているだろうか。
 なぜメディアはその事を報じなかったのか。
 ロシアがそれを公表したというのに。
 しかも北朝鮮が発射を一日早めた理由は、天候ではなく、ロシアの発射に合わせたと言われているのに。
 
 因みに日米韓が声高に叫んでいる国連安保理決議違反の意味を正確に把握している日本国民はいるだろうか。私はそのいい加減さを2月8日の日経新聞で知った。
 安保理決議の解釈で、北朝鮮だからミサイルと見なされ、違反と見なされるのだと。
 こんないい加減な解釈があるか。
 
 ちなみに、北朝鮮のミサイル発射を批判したテレビ番組で、識者のひとりが語っていた。
 ここまで誇示する狙いは、米国へのシグナルとともに、ロケット技術を世界に売り込むためだと。
 そういうなら、三菱重工のロケット打ち上げも、日本のロケット技術を世界に輸出するビジネスのためではないのか。
 日本の打ち上げ成功は祝福し、北朝鮮がそれを行うと大騒ぎする。
 日本は正しくて、北朝鮮は悪い。
 北朝鮮から見れば笑止だろう。
 
 いや、北朝鮮だけではない。
 およそミサイル攻撃など無縁の大多数の世界の国々は、国連安保理決議による北朝鮮への制裁の馬鹿騒ぎは、軍事大国のエゴだと冷笑しているに違いない。
 安倍首相はこれ以上北朝鮮のミサイル打ち上げを騒がない方がいい。
 安倍首相がいまなすべき事は他に山ほどある。
 それらが皆うまく行かないからと言って、北朝鮮や中国の脅威に逃げ込むのは、あまりにも姑息である(了)