2021年1月31日日曜日

菅政権がコロナ専門部会の議事録を隠蔽 刑事罰に「専門も賛成」と大うそ

 懲役刑などの罰則を新たに設ける感染症法改正案などは、野党からの抗議を受けて政府は刑事罰を削除し行政罰のみに変更しました。しかしこの変更は当初から見込まれていた「譲り」代だったというのが大方の見方です。

 行政罰は前科がつかないとはいえ刑罰であることに変わりなく、70人を超える憲法研究者有志は30日に発した「新型コロナの特措法、感染症法などの改定に反対する声明」で、改定案が菅政権の「不適切なコロナ政策の結果として生じた状況に行政罰、公表などの威嚇で強権的に対応することを可能にする、本末転倒な法案であり、政府の失策を個人責任に転嫁するもの」だと批判しました。
 行政が要求する営業の時短や自粛に対する補償が一向に明瞭でない中で、改定案の法文に(行政)罰を謳うことの不当性は明らかです。
 それもさることながら政府はこの改定案を提出するに当たり、罰則の是非を話し合った専門家の会議の議事録を隠した上「専門家も概ね賛成」と大嘘をついていたでした。
 27日にこっそり厚労省のホームページに掲載された議事録によると、18名の委員のうち罰則に賛成していた委員はわずか3名で、8名は反対、3名が慎重意見でした。
 通常各省庁で選出される委員で構成される委員会が省庁の意向に反する結論を出すのは稀なことです。その委員会の大多数が反対乃至疑問視したというのはよくよくのことで、余程間違った法案であったことが分かります。
 そもそも委員会の意向に反する法案を提出するのであれば、何のための委員会であったのかということになります。委員会が否定した法案を出すのであれば、委員会での議論を議事録の形で示したうえで、なぜそうした法案にしたのかを明らかにすべきです。今回はそれもせずに前述のように「概ね賛成を得た」と虚偽の説明をしたのですから話になりません。

 問題は菅首相ですが、29日の衆院本会議で立憲の長妻昭衆院議員から「専門部会の中心メンバーから『当日の議論はただ実効性を高めるということの必要性は共有したけれども、刑事罰までを是認するということではなかった』と聞いた」旨を突きつけられても、「罰則を設けることも含め、改正の方向性について概ね了承が得られたとの報告を受けている」、「議事録については委員の確認後すみやかに公表されているものと承知しており、少なくとも隠蔽という指摘は当たらない」と答弁しました。白々しいことです。
 菅首相は官房長官時代も、議事録やデータを徹底して開示せず「公文書管理法に基づいて対応している」と言うだけで批判をシャットアウトするなど、都合の悪い情報を出させないようにしてきた“隠蔽の張本人”です。
 19年に発覚した統計不正問題でも、「毎月勤労統計」の調査手法の変更によって賃金伸び率を上振れさせるという「アベノミクス偽装」の中心にいたわけで、こうした過去の事例を考えれば、今回、法案修正の方向に動くまで議事録が公開されなかったことも、ほとんどが反対・慎重意見だったのに「概ね賛成」と事実が歪められたことも、いかにも菅首相らしいやり口です。
 それだけでなくこうした不祥事が明らかにされても、現に感染症法改定案は罰則の根拠となる立法事実がないにもかかわらず罰則は残ったままで過料の行政罰が科せるものになっているし、特措法改正により店側は深夜営業で罰せられるようになっています。
 自分たちの行動は顧みないのに国民を縛り付ける強制性だけは発動させ、不都合な事実は覆い隠そうとして透明性をまったく持たない。これだけ批判を浴びてきたのに、菅政権がいまだに新型コロナ対策の先頭に立つ立場として何ひとつまともな態度をとれていないということこそ、もっと問題にされるべきだろうと、LITERAで水井多賀子氏は述べています。
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菅政権がコロナ専門部会の議事録を隠蔽 刑事罰反対が大多数だったのに「専門家も賛成」と嘘! 菅の官房長官時代からの隠蔽改ざん体質
                               LITERA 2021.01.30
「隠蔽・改ざん」を繰り返してきた安倍政権を継承した菅義偉首相だが、なんと、新型コロナ対策でも「隠蔽」をおこなって政策を押し通そうとしていたことが発覚した。政府は22日に入院措置を拒んだ感染者への懲役刑などの罰則を新たに設ける感染症法改正案などを閣議決定し国会に提出。最終的には野党の反対で懲役刑などの罰則は削除されたが、まだ法案の修正に応じる前、罰則の是非を話し合った専門家の会議の議事録を隠した上、「専門家も賛成」と大嘘をついていたのだ。
 この菅政権による大嘘が判明したのは、27日に公開された厚労省「厚生科学審議会感染症部会」の議事録。この部会は1月15日に開催されたものだが、政府による法案提出時にも公開されず、議論の詳細は不明の状態だった。法改正をしようというのに専門家の議論の中身も明かさないまま法案提出すること自体がありえない態度だが、予算委員会がスタートした25日になっても、なんと議事録は出てこなかった
 実際、同日の衆院予算委員会では、立憲民主党の後藤祐一衆院議員が「議事録を公開するように私ずっと求めているんですけど、出てきませんよ。なんで隠しているんですか。出してください」「専門家はどんな意見だったんですか?」と追及をおこなったのだが、そのとき、田村憲久厚労相はこう答弁していた。
ここに議事録等々ないわけでありますけど、両方、まあ、ご意見がありました。しかしながら、『概ね賛成』というかたちでありました
 だが、これがとんだ大嘘だった。27日になって、公開を求めていた野党側には何の連絡もせず、厚労省はこっそりとHPで議事録を公開。そして、その議事録の中身を見ると、罰則に「概ね賛成」どころか、18名の委員のうち罰則に賛成していた委員はわずか3名だけで、8名は反対、3名が慎重意見だったのだ。

 たとえば、山田章雄・東京大学名誉教授は「御提案の罰則等は感染源対策はプロモート⇒促進できますけれども、感染経路対策にはほぼつながらない」「感染症に対する抑制効果がどのように出てくるのかという科学的根拠がない」と言い、白井千香・大阪府枚方市保健所所長も「対策の実効性が確保できるかといったところで、これが独り歩きするような形になると逆に保健所の仕事が増える」と発言。がん・感染症センター都立駒込病院の今村顕史・感染症科部長は「罰則をつくることによって、かえって従業者の検査行動を妨げる可能性が極めて高い」とし、中山ひとみ弁護士も「刑事罰であれば前科になるという非常に重い刑罰なわけなので、そういうもので感染症の蔓延防止に本当に実効性を担保できるのかというのは、私自身はやや疑問」と述べている。

厚労省は専門家に「国会でも反対の意見があったことを伝える」と約束していたのに逆に隠蔽
 もっともな意見ばかりだが、このほかの委員の発言を見ても、議論は明確な反対意見と慎重意見が大勢を占めており、どこからどうみても罰則に「概ね賛成」などとは言えないものだったのだ。
 しかも、議論の締めくくりでは、厚労省の江浪武志・健康局結核感染症課長がこうも語っている。
「罰則を設けるかどうかということ、それについてどういうものにするのかということについては、国会での審議が必要なことであるということでございますけれども、その際には先生方からいただきました御意見をしっかりお伝えするようにしたいと思います」
 つまり、専門家である委員たちには「国会審議ではいただいた意見をしっかり伝える」と言っておきながら、政府は議事録も公開せずに“隠蔽”し、「概ね賛成」などと事実を捻じ曲げて国会で説明をおこなっていたのである。
 28日の自民党と立憲の国対委員長による改正案修正協議で、自民の森山裕・国対委員長が感染症法改正案に盛り込まれた懲役刑の削除という立憲の安住淳・国対委員長からの要求を受け入れたのも、この議論の中身が判明したことが決定打になったと言っていいだろう。

 国民に大嘘の説明をおこなってきたのだから修正に応じるのは当然の話だが、しかし、信じられないのは自民党の姿勢だ。そもそも政府が法案提出時にこの議事録は公開すべきものだが、厚労省がこのタイミングで議事録を公開したことに対して、自民党幹部は「厚労省は本当にいいかげんだ」「与党の国対委員長としては(両改正案を)修正しなければならなかったのは極めて残念だ」などと怒りをあわらにしているからだ(読売新聞29日付)。ようは、「法案通過まで隠しとけ」ということらしい。
 いや、それ以上にひどいのは、菅首相の態度だ。この“隠蔽”問題があきらかになっても、菅首相は自分たちが虚偽の説明をおこなってきたことについて詫びるどころか、何ひとつ態度を変えていないのだ。
 28日の参院予算委員会では、日本共産党の小池晃議員から議事録問題を追及されても、菅首相は「全体を通じて、概ねの了承が得られたので提出したということであります。私はそういう意味において、この審議会においてそういう報告であれば、それは問題ないと思います」などと答弁した。
 しかし、「全体を通じて、概ねの了承を得られた」というのは、まったくの詭弁だ。問題の専門部会では、最後のほうで座長である脇田隆字・国立感染症研究所所長が「結論は事務局から提案された方針でよしとすると思いますけれども」と議論を打ち切っているが、つづけて「ただ、いろいろな意見はありますので、それも反映していただく必要がある」と発言している。つまり、脇田座長が判断しただけで「全体を通じて、概ねの了承を得られ」てもいないし、委員の意見を反映させる必要にも触れていたのだ。そうした事実が議事録の公開によって明るみに出たのに、菅首相は性懲りもなく大嘘を突き通したのである。

菅首相「隠蔽には当たらない」の釈明でまた大嘘 専門家の意見を封殺したのは官邸
 さらに、昨日29日の衆院本会議では、立憲の長妻昭衆院議員から「昨日、私は(専門部会に)出席した中心メンバーからお話をお伺いしました。『当日の議論はただ実効性を高めるということの必要性は共有したけれども、刑事罰までを是認するということではなかった』というふうにおっしゃっておられます」と部会の委員からの聞き取りの結果を突きつけられたにもかかわらず、菅首相はまたも「1月15日の感染症部会で議論をおこない、罰則を設けることも含め、改正の方向性について概ね了承が得られたとの報告を受けています」と答弁。その上、こう強調したのだ。
感染症部会は公開の場で議論され、その議事録については委員の確認後すみやかに公表されているものと承知しており、少なくとも隠蔽という指摘はあたらない
 公開までに約2週間もかかった上、公開される前に法案を国会に提出して「概ね賛成だった」などと事実とは真逆の説明をおこなってきたというのに、「隠蔽という指摘はあたらない」と言い張る……。だが、これはあきらかに“隠蔽”ではないか。
 そもそも、感染症法や特措法を改正して罰則を設けようというのは、菅首相が新型コロナ対策で「後手後手だ」と批判を受けたことから挽回しようとした結果のものだ。
 実際、昨夏に特措法の改正を求める声が大きくなった際もそれを無視し、感染収束後におこなうという姿勢だった菅首相だが、「Go To」一時停止の判断の遅さなどの「後手後手」批判や「大人数ステーキ会食」に非難が集中するようになると、昨年12月24日に「規制、罰則と給付金はセットで必要なのではないかと私自身は思っている」と述べ、翌25日の総理会見でも「給付金と罰則はセット」と発言。そうしたなかで、感染症法の改正による刑事罰までもが盛り込まれたのである。
 つまり、法改正によって「後手後手」批判を挽回しようと、特措法改正のみならず、菅首相は慎重な議論が必要な感染症法改正までをも突貫で押し進めようとしたのだ。当然、厚労省の専門部会で反対や慎重意見が巻き起こったことも報告を受けていたはずだが、それを「概ね賛成」などと事実を覆い隠させたのである。
 厚労省がようやく議事録を公開したのも、「入院すべき人が入院できない状況なのに、これはおかしい」という声が大きくなったことや、日本医学会連合をはじめ最前線でコロナ対策にあたっている保健所長からなる全国保健所長会からも意見書が出されたこと、さらには政権与党の松本純・自民党国対委員長代理と遠山清彦・公明党幹事長代理の“深夜の銀座クラブ通い”が報じられて反発が高まったことから法案修正に踏み切らざるを得ないところまで追い詰められた結果でしかないだろう。ようするに、官邸がまだ懲役刑の罰則を強行する姿勢を貫いていたら、そのまま議事録は隠蔽されていた可能性もある

安倍政権時代から都合の悪い文書廃棄やデータ改ざんを主導してきた菅首相の体質
 実際、菅首相は官房長官時代も、「桜を見る会」招待者名簿廃棄があきらかになっているのに「公文書管理法に基づいて対応している」と言うだけで批判をシャットアウトするなど、議事録やデータを徹底して開示せず、都合の悪い情報を出させないようにしてきた“隠蔽の張本人”だ。
 そればかりか、2019年に発覚した統計不正問題では、「毎月勤労統計」の調査手法の変更によって賃金伸び率を上振れさせるという「アベノミクス偽装」の疑惑が浮上したが、この調査手法変更をめぐっては、政府検討会の委員が「サンプルを(全数)入れ替えるたびに数値が悪くなるそれまでのやり方に官邸か、菅(義偉官房長官)さんかが『カンカンに怒っている』と言って厚労省職員は検討会の最初から相当気にしていた」と証言をおこなっていた。つまり、菅首相は自ら“悪い数字”が出ることに業を煮やして厚労省職員をどやしつけていたのである。ちなみに、この検討会では調査手法の変更について「さらに検討が必要」という意見が多かったにもかかわらず、検討会自体が打ち切られ、別の強引な手で調査手法は変更されてしまうのだ。
 こうした過去の事例を考えれば、今回、法案修正の方向に動くまで議事録が公開されなかったことも、ほとんどが反対・慎重意見だったのに「概ね賛成」「概ね了承」と事実が歪められたことも、いかにも菅首相らしいやり口だとしか言いようがない。
 新型コロナという国民の命に直結する問題でさえ、平気で嘘をつき、情報を隠し、国民を欺く。刑事罰が法案から削除されたからといって、この重大な背信行為を見過ごすわけにはいかない。しかも、政府は入院拒否によって感染が拡大した科学的なデータに基づいた事例をいまだに示しておらず、罰則に根拠となる立法事実がない状態であるにもかかわらず、修正案では罰則は残ったままで過料の行政罰が科せるものになっている。特措法改正による罰則規定にしても、政権与党の幹部議員が緊急事態宣言下で深夜に銀座のクラブに繰り出しても役職辞任程度でお茶を濁して終わりなのに、深夜営業で店側は罰せられるのは、どう考えてもおかしいだろう。
 自分たちの行動は顧みないのに国民を縛り付ける強制性だけは発動させ、不都合な事実は覆い隠そうとして透明性をまったく持たない。これだけ批判を浴びてきたのに、菅政権がいまだに新型コロナ対策の先頭に立つ立場として何ひとつまともな態度をとれていないということこそ、もっと問題にされるべきだろう。 (水井多賀子)

自民党本部職員は全員PCR検査/生活保護受給者には事前に許可を取れと

 自民党が党本部勤務の全職員200人を対象にPCR検査を実施するとの報道にネット上では「すぐに検査できない人もいるのに」「一般市民は頭にくる」などの声が相次ぎ、「上級国民の集まりか」がツイッターのトレンド上位に入りました。
 積極的PCR検査を受けること自体はいいことなのですが、政府が何時まで経っても検査を拡大しない中で、与党の本部勤務の職員が大々的に受けることに対して、多くの人たちが何となく釈然としない気持ちでいることの反映と思われます。まあ与党に繋がっていることへのトバッチリとでも思ってもらうしかありません。
 折しも田中龍作ジャーナルが、「『生活保護受給者は事前に許可を取れ、さもなくば自腹』埼玉で」とする記事を出しました。
 埼玉県ふじみ野市在住の生活保護受給者の8歳の長女が高熱を出し、近所の発熱外来を受診したところ医師が「PCR検査を受けますか」と言うので検査を受けたところ、4日後に同市の福祉課から電話が入り、「次回からPCR検査を受ける場合は事前に許可を取ってくれ。さもなくば自腹になる可能性がある」と告げたということです。
 生活保護を受けようとする人たちを役所は徹底的に妨害するだけでなく、こうした受給者を見下すような態度を取ります。日本では「上級国民」には検察司法も一目置く一方で、弱者に対しては平然とこうした人権無視的対応をすることがあります。
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なぜ「自民党本部全職員PCR検査」は大ブーイングを浴びたのか
                          毎日新聞 2021年1月30日
 自民党が党本部勤務の全職員を対象にPCR検査を実施するとの報道に批判が噴出した。ネット上では「すぐに検査できない人もいるのに」「一般市民は頭にくる」などの声が相次ぎ、「上級国民の集まりか」がツイッターのトレンド上位に入った。職場での積極的な検査自体はいいことなのに、なぜ自民党は集中砲火を浴びるのか。【大場伸也/政治部、大迫麻記子/統合デジタル取材センター】

またもや相次ぐ「上級国民」批判
 自民党は29日、党本部に勤務する全職員約200人を対象にPCR検査を実施することを決めた。これが報道されると、ツイッターには「自分たちだけ積極的なPCR検査」「体調不良でもなかなか検査してもらえない一般市民は頭にくる」「国民には自粛を求めて自分らは銀座で遅くまで会食、陽性者が一人出たら全員検査。身内大事にするのも大概にしろ!」などの批判が数多く投稿された。
 また「さすが上級国民。全国民が気軽にPCR検査ができる体制を望んでいます。自分たちだけですか?」「上級国民はやっぱり扱いが違うなあ……」といった批判も相次いだ。「上級国民」とは2019年に起きた東京・池袋の乗用車暴走事故で、旧通産省工業技術院長が逮捕されなかったことをきっかけに広く使われるようになった言葉だ。
 1月22日に感染が判明した石原伸晃元幹事長が無症状なのに即入院した直後にも同じような批判が相次いでいた。
 野党の政治家からは検査態勢の拡充を求める声が上がっている。立憲民主党の泉健太政調会長は「自民党総裁は、党職員へのPCR検査の重要性を認識しているならば、医療・介護従事者、せめて無症状患者となりやすい若年の医療・介護従事者には、PCR検査を公費で実施すべき」だとツイート。同党の原口一博元総務相も「全ての人にPCR検査が無料で受けられる体制を作るべき。自民党職員は全員PCR検査が受けられるのに、生活保護受給者が抑制圧力を受けるなどあってはならない」と投稿した。

議員への不信が党への不信に
 なぜ自民党は今回、党本部職員全員のPCR検査をすることになったのか。
 党本部の所属国会議員に対する説明によると、党組織運動本部の20代の男性職員が新型コロナウイルスに感染、28日に陽性が判明した。職員は保健所の指示に従って自宅療養している。この職員は直近の1週間に国会や議員会館への出入りはしておらず、党本部内にも濃厚接触者はいないものの、翌週までに党本部の全職員を対象に検査をすることにしたという。
 職場での積極的な感染拡大防止策といえるが、なぜ、ここまで批判が高まったのか。
 「党職員の検査は本来批判されることではありません。議員の問題行動と同一視されて不信感を持たれてしまったのではないでしょうか」と、政治評論家の有馬晴海さんは指摘する。「国民に夜の飲食の自粛などを求めながら、菅義偉首相が8人で不急の会食をしたり、自民党の松本純前国対委員長代理が深夜に銀座のクラブに行ったりと、脇の甘い行動が国民の反感を買って党への不信につながっています。新型コロナ対策の特別措置法が改正されれば国民に一層の負担を求めることになる。与党は『李下(りか)に冠を正さず』で、一層慎重に行動することが求められます」


【PCR検査】
「生活保護受給者は事前に許可を取れ、さもなくば自腹」埼玉で
                     田中龍作ジャーナル 2021年1月29日
    【写真説明】ふじみ野市が福祉事務所長名で市内の医療機関に出した通達。生活保
          護に詳しい弁護士は通達の文言に驚く。=市内の医師より入手=
 ある生活保護受給者(埼玉県ふじみ野市在住・男性)の8歳の長女が38度5分の高熱を出し、近所の発熱外来を受診した。
 医師が「PCR検査を受けますか」と言うので検査を受けた。今月14日のことだ。
 それから4日後の18日にふじみ野市役所の福祉課から男性の携帯に電話が掛かってきた。
 福祉課は男性の長女がPCR検査を受けたことを確認すると「次回からPCR検査を受ける場合は事前に(福祉課の)許可を取ってくれ。さもなくば自腹になる可能性がある」と告げた。
 ふじみ野市役所は14日、福祉事務所長名で市内の医療機関に対して「生活保護受給者がPCR検査を実施する場合は、必ず福祉課までご連絡下さい」との通達を出している。
 生活保護受給家庭の子供のPCR検査を実施した病院が、通達に沿い福祉課に連絡したのである。男性は「自腹というのを聞き、すっかり萎縮してしまった」と力なく語った。
 
 知人のベテラン医師(60代)は「人道問題だ」と言って驚きを隠さない。
    【写真説明】通達を見た医師は怒りに手が震えた。「生活保護受給者への差別
          だ」。=ふじみ野市の医師より入手=
 生活保護問題に長年取り組んできた弁護士は、次のように指摘した―
 「生活保護受給者は栄養摂取が満足でなく免疫力が低下しているため、ウイルスに感染しやすい。(なのに)自腹という恫喝でPCR検査を抑制させようとしている」。
 医師が必要と判断すればPCR検査(※)は無料だ。生活保護受給者だけが自腹というのは憲法25条の精神を踏みにじるに等しい。
 
 前出のベテラン医師は「コロナ感染を抑制するためにも、生活保護受給者が受診を自粛するような指導は厳に慎むべきだ」と怒りを抑えきれない様子で語った。
 厚労省のスタンスは、生活保護受給者のPCR検査は問題ない、だ。
 同省生活保護課の医療係は田中の電話取材に「医師が必要と認めた場合は保険適用となるので(生活保護受給者のPCR検査は)問題ない」との見解を示した。
 ふじみ野市福祉課は田中の問い合わせに「医療扶助を出すべきかどうかを把握するためにも事前に連絡を頂きたい」と答えた。
 この国の最高権力者は「最後は生活保護がある」と言い放った。だが現場では生活保護受給者が見捨てられようとしている。
                 ~終わり~

31- 愛知県知事リコール署名不正 刑事告発へ

 高須克弥高須クリニック院長が主導し、河村たかし・名古屋市長が支援した愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動で、名古屋市の各区選管に提出された署名計約16万人分の署名のうち、同一人物が書いたとみられる署名が約11万件、選挙人名簿に記載されていない署名が数万件に及ぶなど、全体の約83%が無効と判断されました。

 愛知県選管は、県内64選管に提出された署名の大部分に不正が疑われるとして、地方自治法違反容疑での刑事告発に向け調整を進める方針を決めまし
 こうした不正は住民の意思で地方自治体の首長などを解職できる直接民主制を揺るがす重大な問題で放置できません。
 追記)このリコール運動は「愛知トリエンナーレ」への展示品の賛否を巡って、大村秀章知事への反感を持つ河村たかし・名古屋市長らのグループが起こしたものでした。
 この件では大村知事が常に理路整然と正論を発信していたのに対して、河村氏の方はそうとは言えない対応でした。
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6月5日) 大村知事リコールに高須克弥、百田尚樹、有本香らが勢揃い 吉村知事も賛成と
12月30日)高須院長が村上春樹氏に差別丸出し攻撃 大村知事リコール運動では不正が続々
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愛知県知事リコール署名、刑事告発を調整へ 名古屋市でも8割超不正の疑い
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 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡り、名古屋市選挙管理委員会に提出された約16万人分の署名のうち、8割以上に不正が疑われるとの調査結果を市選管がまとめたことが29日分かった。愛知県選管は、県内64選管に提出された署名の大部分に不正が疑われるとして、地方自治法違反容疑での刑事告発に向け調整を進める方針を決めた。関係者が明らかにした。
 住民の意思で地方自治体の首長などを解職できる直接民主制を揺るがす重大な問題だと判断した。週明けにも選管委員会を開き、告発のタイミングなどを巡り協議する。
 関係者によると、名古屋市の各区選管に提出された署名計約16万人分の署名のうち、同一人物が書いたとみられる署名が約11万件選挙人名簿に記載されていない署名が数万件に及ぶなど、全体の約83%が無効と判断された。無効署名が9割を超えた区もあった。
 リコール運動は美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が主導。名古屋市の河村たかし市長が支援した。高須氏らは昨年11月、各選管に計約43万5千人分署名を提出。解職の賛否を問う住民投票実施に必要な法定数約86万6千人には届かなかった。(共同)


大村知事リコール、署名の8割超が不正か 高須院長らが提出  愛知
                         東京新聞 2020年12月28日
 美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長らが主導した愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動で、県選挙管理委員会は28日、署名の提出があった県内64選管のうち、14の選管の署名を調べたところ、署名の8割超が選挙人名簿に登録されていない人物や、同一人物の筆跡と疑われる署名があったと明らかにした。
 25日までに県選管に報告のあった分。年明け以降も調査を継続し、悪質と判断した場合は県警への刑事告発も視野に入れるという。選管の担当者は「現行の直接請求制度の問題点や課題を示すものが非常に多く見られる」としている。リコール運動の事務局は取材に「現段階ではコメントできない」と答えた。
 高須氏らは11月、43万5231人分の署名を県内各市区町村の64選管に提出。その後、不正な署名が多数あるとの情報が寄せられ、県選管は21日、調査を決定した。自治体の選管に自己情報開示請求をした複数の愛知県議や県内の自治体の市議らも、取材に「無断で自分の名前を書かれた」と証言している。(共同)

2021年1月30日土曜日

罰則は撤回し十分な補償を 感染症法等改定案を批判 共産・小池書記長

 共産党の小池晃書記局長は28日の参院予算委で、政府が新型コロナ対応の特措法、感染症法等に罰則規定を盛り込もうとしていることについて、「差別や偏見を生み、感染症対策に逆行する」として、罰則をすべて撤回するよう主張し、感染拡大を防止するためには「休業や時間短縮をしても、事業を続けることができる十分な補償が必要だ」と事業規模に応じた支援を要求しました。

 また、感染症法改定案を審議した感染症部会では、出席委員18人のうち罰則賛成は3人だけで、11人が慎重や反対、懸念を表明していたのに、「それを国会に報告しないまま法案が提出されたこと国民に謝罪すべきだ」と迫りました。
 緊急事態宣言下で、時短要請に従った事業者への協力金が「1日最大6万円」では、大規模店から固定費すら賄えないと悲鳴が上がっていることについて、ドイツでは売り上げの75%を補償する支援策を打ち出していることをあげ、「個別の事情に可能な限り配慮して必要な支援をするのが政府の責任だ」と追及しました。菅首相は「大規模店などは足りないとの声がある」と認めながら現行で「進めたい」の一点張りでした。
 小池氏は、生活保護申請で親族に「扶養照会」をするのをやめるように要求し、その法的根拠を問いました。田村厚労相「扶養照会は義務ではない」を明らかにすると、「法律事項ではなく、実施要領という一片の通知だけのものであるのなら政治が決断すればやめられる」と強く求めました
 菅首相が官房長官を務めたときに868000万円を「政策推進費」に振り分け、領収書なしで自由に使っていたことについて、小池氏は「既得権益を打破すると言いながら自分は既得権益にどっぷり漬かってきた。こういう税金の使い方を絶対に許すわけにはいかない」と厳しく批判しました。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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参院予算委 小池書記局長の質問 コロナ対策 政治の責任果たすとき
                       しんぶん赤旗 2021年1月29日
 日本共産党の小池晃書記局長は28日の参院予算委員会で、新型コロナ患者や飲食店への罰則を盛り込んだ関連3法の改定案、中小事業者や文化芸術への不十分な支援、生活保護の「扶養照会」など政府のコロナ対策・支援策の問題点をただし、75歳以上の高齢者の医療費窓口負担増、官房機密費の巨額かつ不透明な支出についても追及しました。

罰則 “異論の排斥”撤回迫る
 小池氏は、入院措置に応じない人や入院先から逃げ出した人への罰則を盛り込んだ感染症法改定案をめぐり、27日に公開された厚生科学審議会感染症部会の議事録で、委員18人中、罰則賛成は3人だけで、3人は慎重意見、8人は反対か懸念を表明していた事実が判明したと指摘。厚生労働省の担当課長は「国会審議の際には(審議会での)意見をしっかり伝える」と述べていたのに、専門家の多数が反対・慎重だった経過について国会に報告がないまま法案が提出されたことに抗議し、「経過について国会と国民に謝罪すべきだ」と迫りました。
 田村憲久厚労相は、部会で「最終的にはおおむね了承をいただいた」と強弁しました。
 小池氏は、日本医学会連合、日本公衆衛生学会、日本公衆衛生看護学会や野党の反対の声に耳を傾けず、自らが意見を求めた審議会の異論さえ無視する政府のやり方を批判。“罰則導入は知事会の要請”としてきたことも、「知事会は刑事罰までは求めていなかった」と告発し、「都合の良いところだけつまみ食いし、反対意見は無視して法案を出すという強権的なやり方は改めよ」と厳しく批判しました。
 さらに、「自民、公明の議員は夜11時に銀座のクラブに行っても謝罪だけで、国民には罰則を科すのか」と批判し、「刑事罰でなくても、罰則を入れることそのものに反対だ」として罰則規定の撤回を求めました。

 小池氏は、休業・営業時間短縮の命令に従わない事業者などへの罰則を盛り込んだ新型コロナ対策のための特別措置法改定案についても、「密告や相互監視を進め、差別や偏見を生み、感染症対策に逆行する」と批判し、撤回を求めました。
 その上で、「何よりも、休業や時間短縮をしても事業を続けられるだけの十分な補償が必要だ」と強調。一律で1日最大6万円の時短要請協力金について、料理研究家の服部幸應氏ら飲食業界の著名人が「規模に関係なく、ひとくくりにするのは不公平だ」と訴えるなど、現場は事業規模に応じたきめ細かな支援を求めていると迫りました。
 西村康稔経済再生相は、現行の支援策で「踏ん張ってほしい」と述べるだけで、新たな支援に応じませんでした。
 小池氏は「1日6万円では固定費すらまかなえないところが確実に出てくる」と批判。ドイツは売り上げの75%を補償しているとして、東京都北区の中規模の居酒屋に当てはめた試算を紹介(表)し、「ドイツのように規模に応じた支援でないと現場はもたない」と追及しました。
 菅首相は「大規模店などは足りないとの声がある」と認めながら、現行策で「進めたい」の一点張りでした。
 小池氏は「政府の時短要請によってつぶれる店を出してはならない」と力を込め、事業規模に応じた支援と、持続化給付金の再給付を重ねて求めました。

文化芸術 抜本支援“要件なしで”
 小池氏は、コロナ禍で苦境に立つ文化・芸術活動への支援の抜本的強化を求めました。
 小池氏は、文化・芸術活動に対しては休業要請ではなく「働きかけ」であり、協力金の対象にすらならない一方、徹底した感染防止対策で映画館では1件の感染事例報告もなく、劇場やライブハウスなども昨年7月以降、観客などのクラスター(感染者集団)は発生していないと指摘。「補償もなく、生活に困っているのに観客の安全を優先する涙ぐましい努力に政治が応えるべきだ」と迫りました。
 「できる限り取り組みを進めたい」という萩生田光一文部科学相に対し、小池氏は、第3次補正予算案で文化庁が示した支援策「ARTS for the future!」が「これまで訪問したことのない地域や文化施設で公演」など新しい活動を支援の要件にしていることを告発。要件の撤廃を求めました
 萩生田氏は「従来の形ではなくオプションを増やしてもらうことで応援したい」と答弁。小池氏は「従来の活動ができないときにそれを超えろというのでは支援にならない」と厳しく批判しました。
 また、民間の寄付が集まらず支援が始められていない「文化芸術復興創造基金」について、自民党を含む超党派の文化芸術振興議員連盟も提案する国庫支出による基金の創設を国の責任で決断するよう求めました。

75歳窓口 2割へ引き上げやめよ
 菅政権は、コロナ禍で国民生活が不安にさらされているにもかかわらず、75歳以上の医療費窓口負担を現行1割から2割に2倍化しようと狙っています。
 小池氏は「長寿を祝うどころか、長生きへの罰則ではないか」と厳しく批判。2割負担化による負担増の影響額をただしました。
 田村憲久厚労相は、窓口負担は年1880億円も増え、公費は年980億円も減ると答弁。“現役世代からの支援金が減る”と2割負担化を正当化してきたのに、現役世代の負担減は1人あたり年700円だと説明しました。
 小池氏は、事業主負担分を除けば年350円、月30円弱にすぎないとして、「今回のやり方は国の負担、公助が一番減る。これが総理が言う『自助』か」とただしました。菅首相は「若者と高齢者の支え合い」が大切だと国民に責任を押しつけ、「若い世代の負担上昇を少しでも減らしていく」と2割負担化に固執する姿勢を示しました。小池氏は「医療費窓口負担は2倍になり、国が一番負担を減らす。これが今回の構図だ」と告発しました。
 小池氏は、2013年の社会保障制度改革国民会議の報告書では「(制度改革は)世代間の税源の取り合いをするのではなく、それぞれ必要な財源を確保」すべきだと明記していたと述べ、「いまやっていることはまったく違う。2割負担への引き上げはやめるべきだ」と強調しました。

生活保護 「扶養照会」申請を阻害

 小池氏は、生活保護が必要な世帯の2割しか利用できていない実態にふれ、「総理は『最後のセーフティーネット』と言うが、その役割を果たしていない」と指摘。年末年始に自身も参加した生活困窮者の相談会などで聞いた“生活保護の申請を親族に知られたくない”との思いを代弁しながら、保護申請の際に行われる親族への「扶養照会」はやめるべきだと求めました。
 小池氏は、生活保護にあたって親や配偶者だけでなく兄弟や孫など3親等まで「扶養義務」の対象としている国は日本だけだとして、「生活困窮を知られたくないと思う人が申請をためらうのは仕方ないというのか」と強調しました。田村厚労相は、16年7月に保護を開始した1・7万世帯に関して、照会件数は計3・8万件、うち金銭的援助が可能と回答したのは約600件にすぎないと答弁。小池氏は「こういう問い合わせはやめるべきだ」と求めました。
 小池氏の質問に田村厚労相は「扶養照会は義務ではない」と明言しました。これを受けて小池氏は「法律事項ではなく、実施要領という一通知だけのものであり、政治が決断すればやめられる」と強調。「総理は『最後は生活保護だ』と言った。それなら(申請を)阻んでいるものは見直す責任がある」とたたみかけました。
 菅首相は「生活保護は国民の権利だ」と認めながら「所管大臣にゆだねる」と無責任な答弁に終始。小池氏は「『生活保護をためらいなく申請を』と言うなら、ためらわせるような扶養照会はやめるべきだ」と力を込めました。

機密費 「既得権益」は首相自身
 小池氏は、「赤旗」が情報開示請求で入手した資料をもとに、菅首相が官房長官在任中の7年8カ月に支出した官房機密費のうち「政策推進費」が86億円(1日307万円)に上った問題を追及しました。
 領収書不要の政策推進費について小池氏は、官房長官に渡った時点で支出が完了し、使いみちは官房長官にしか分からないと指摘。「政治家や官僚などに配っていないと断言できるか」とただしましたが、菅首相は「機密保持」を口実に使途の公表を拒否し、「適正な執行に努めている」と述べるだけでした。
 小池氏は「口で適正と言うだけで何の証拠もない」と批判。日本学術会議を「年間10億円を使っている」「閉鎖的で既得権益」と攻撃してきた菅首相に対し、「学術会議全体の予算よりも多い11億円の税金を1人で使っている。これこそ閉鎖的な既得権益ではないか。国民の理解が得られると思うか」とただしました。菅首相はまともに答えられませんでした。
 小池氏は、昨年9月の自民党総裁選の出馬表明前日から首相就任までに4820万円の政策推進費が使われたとして、「総裁選のために使ったと言われても仕方がない」と強調。菅首相は、何ら証拠を示さず「そのようなことは一切ない」としか答えられませんでした。
 小池氏は「国民に自助を押し付け、自身は莫大(ばくだい)な公助を受け、既得権益にどっぷりつかってきたのが総理だ」と批判。「こういう税金の使い方は絶対に許されない」と力を込めました。

Go Toに1.1兆円追加 コロナ困窮者支援は「生活保護がある」と拒否

 政府は28日、年度内に再開出来る見通しはゼロにもかかわらずGo To」キャンペーンに約1.1兆円追加計上するなどした3次補正予算案を、共産党や立民党などの反対を押し切って通しました。

 27日におこなわれた参院予算委野党議員から生活困窮者への支援を求められた際、菅首相はなんと「生活保護がある」と言い出しました。
 緊急事態宣言によって生活の糧を失う人たちに「生活保護を受けよ」とは余りにも的外れな言い草です。緊急事態の中でも国民が正当な手当てによって生きていける道を講じるのが政治であるのに、その認識がないのであれば政治家として失格です。
 それだけではなく生活保護が日本ではどれ程受けにくいのかを、安倍政権の中枢にいた菅氏が知らない筈がありません。「生活保護がある」という逃げ口上には二重の欺瞞性があります。
 日本の生活保護の捕捉率(生活保護を利用すべき世帯のうち実際に利用している世帯の割合)は2〜3割程度にすぎません。その背景には悪名高い「水際作戦」(生活保護の申請に訪れた人を受け付けずに追い返すやり方)がありますが、そこに追い打ちをかけたのが、片山さつきや世耕弘成など参院議自民党議員が煽動してきた「生活保護バッシング」でした。
 そして極めつけが親族に対する不法な「扶養照会」です(法的な根拠はなく、一片の通達で行っている)。日本では生活保護を申請すると最大3親等にまで、「なぜ申請者に対して援助が出来ないのか」の照会が行きます(諸外国では、あっても1親等止まり)。これは申請者にとって堪えがたいもので、生活困窮者を支援する団体が行った調査によると「生活保護を利用していない理由」という質問に対して3人に1人が「家族に知られるのが嫌」と答えています。
 そもそも「水際作戦」も、厚労省から出向した役人が自治体で指導し、それが遍く全国に広がったと言われています。生活保護を受ける権利は憲法で保障されているのに、なぜこうまでしてその権利を妨害しようとするのでしょうか。
 LITERAが取り上げました。
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Go Toに1.1兆円予算の一方、菅首相がコロナ困窮者支援を拒否し「生活保護がある」 しかも申請しづらい生活保護の問題点に知らんぷり
                                                                        LITERA 2021.01.28
 本日、与党や日本維新の会などの賛成多数によって、「Go To」キャンペーンに追加で約1.1兆円も計上された第3次補正予算案が参院本会議で可決、成立した。立憲民主党と日本共産党は「Go To」予算などを医療体制の強化や生活困窮者の支援などに充てる組み替え動議を共同提出していたが、自民党などはそれを否決。緊急的・機動的な予算措置であるはずの補正予算であるのに、菅政権はこの緊急事態にまったく対応しない内容のまま押し通したのだ。
 医療体制の強化はもちろんだが、新型コロナ感染拡大の影響を受けて解雇・雇い止めされた人(見込みも含む)が8万人を突破したいま、生活困窮者の支援は「命」にかかわる問題だ。だが、菅義偉首相はこうした現実を無視し、見殺しにしようとしている。
 その本音が出たのが、昨日27日におこなわれた参院予算委員会の答弁だ。野党議員から生活困窮者への支援を求められた際、菅首相はなんと、「生活保護がある」と言い出したからだ。
 その答弁が飛び出したのは、午前中の質疑でのこと。立憲民主党の石橋通宏参院議員は「昨年来の新型コロナ感染症対策のなかで、弱い立場にある方々に政府の施策が届いているでしょうか?」と質問したのだが、菅首相は「医療が逼迫しているので、そうしたことには全力をあげていま取り組んでいる」と答弁。文脈を考えても生活困窮者の問題を問われているのに、菅首相は医療の話をはじめるというポンコツぶりを発揮したのだが、このあと石橋議員から「収入を失って路頭に迷う方々が多数にのぼっています」「政府の施策が届いていないことがあきらかになれば、菅総理の責任において即刻、届けていただくお約束をいただけますか?」と問われると、菅首相はこんなことを言い出したのだ。
それは、あのー、いろんな見方があるでしょうし、いろんな対応策もあるでしょうし、政府には、最終的には生活保護という、そうした仕組みも、最終的にですよ、そうしたことも、しっかりセーフティネットをつくっていくという、それが大事だというふうに思います
 生活困窮者への支援策を求められて、「最終的には生活保護がある」と答弁する──。ようするに、“生活保護があるから支援策はいらない”と述べたのだ。
 この驚きの答弁には、午後の質疑で同じく立憲の蓮舫参院議員が「あんまりですよ、この答弁。生活保護に陥らせないためにするのが総理の仕事で、政治じゃないですか」と追及したのだが、またしても菅首相はこう述べたのだ。
生活保護っていう言葉をさせていただきましたけど、自助・共助・公助、そのなかの話のなかであります
 本人にとっては釈明の答弁のつもりだったのかもしれないが、これ、逆にダメ押しだろう。
 蓮舫議員が指摘したように、生活保護は最後の手立てであって、その前に支援策を講じるのが政治の責任だ。しかも、2度目の緊急事態宣言を出さざるを得ない状況までコロナの感染拡大を招き、さらなる困窮者を生み出しているのは、菅首相が対応策を打ってこなかったせいだ。だからこそ、野党は第3次補正予算案の組み替えによって緊急の貸付制度などの充実や低所得子育て世帯への給付金、持続化給付金の延長、大学授業料への半額補助、アルバイト学生への収入補助などをおこなうよう要求してきた。
 こうした支援策が本来「公助」というものだが、その「公助」の提案を蹴って、菅首相は「生活保護がある」「生活保護とは公助のこと」と主張したのである。つまり、最終手段である生活保護しか、この国では「公助」はない、と言ったようなものだ。

自民党の生活保護バッシング、家族への「扶養照会」のせいで生活保護を申請しづらい状況に
 しかも、菅首相は生活保護を「最後のセーフティネット」と言うが、この国の生活保護制度はそのようには機能していない。
 実際、本来ならば生活保護を利用すべき世帯のうち実際に利用している世帯の割合(捕捉率)は2〜3割程度にすぎない。その背景には、窓口に訪れた人に生活保護の申請をさせず追い返す「水際作戦」があるが、そこに追い打ちをかけたのが、自民党議員が煽動してきた生活保護バッシング。たとえば、2012年4月に持ち上がった次長課長・河本準一の親族が生活保護を受けていた問題では、違法なものでもなかったにもかかわらず、自民党の片山さつき参院議員や世耕弘成参院議員がメディアに登場しては河本の大バッシングを展開。同年1月には、札幌市で40代の姉妹が生活保護の相談に出向きながらも申請に至らず死亡するという痛ましい事件が起こっていたが、生活保護の重要性が訴えられるどころか、片山の主張と同じようにメディアも「不正受給許すまじ」とバッシングに加担し、「生活保護は恥」などという空気を社会につくり出していった。
 つまり、菅首相は「生活保護がある」「生活保護は公助」と言うが、その公助が受けられない、受けづらい状況を醸成したのは当の自民党なのである。
 さらに、そもそも捕捉率が低い状況なのに、このコロナ禍で生活困窮に陥っている人びとの多くが生活保護を受けられる状況にあっても申請をためらっている。その大きな原因となっているのが、家族への「扶養照会」だ。
 生活保護法では生活保護より親族による扶養を優先しており、生活保護の申請をおこなうと、基本的に自治体は親族に連絡して援助できるか否かを尋ねる「扶養照会」をおこなう。これが大きな抵抗感を生んでおり、たとえば生活困窮者を支援する一般社団法人「つくろい東京ファンド」が、この年末年始に生活困窮者向け相談会の参加者を対象にしたアンケート調査をおこなったところ、「生活保護を利用していない理由」という質問に対して3人に1人が「家族に知られるのが嫌」と答えたという。
 しかも、この国では「扶養義務」の範囲が他国と比べても広いという特徴がある。本日おこなわれた参院予算委員会で質疑に立った共産党の小池晃参院議員によると、フランスやスウェーデン、イギリスは扶養義務の範囲は配偶者と子(未成年)で、ドイツはそこに子(成人)と親が含まれる。いずれも1親等の範囲だ。ところが、日本は兄弟姉妹や祖父母、孫という2親等、曾祖父母に曾孫、さらには家族が認めた場合は叔父・叔母、甥・姪という3親等までが範囲とされているのである。
 ようするに、これは「親や子どもに迷惑をかけたくない」「きょうだいに困窮していることを知られるのは恥ずかしい」といった感情を引き出して生活保護を諦めさせようとする「水際作戦」のひとつとして機能しているのだ。
 現に、田村憲久厚労相の答弁によると、「扶養照会」をした3.8万人のうち、金銭的な援助が可能と回答が得られた件数はわずか600件。これでは手間暇をかけて嫌がらせをしているようなものだ。

ワイドショーは蓮舫批判一色だが、SNSでは菅の「生活保護がある」に非難殺到 「#もういらないだろ自民党」拡散
 一方、厚労省は昨年12月、生活保護の利用を促進するためHPに「生活保護を申請したい方へ」というページを新たに設け、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」という一文を明記した。このこと自体は意味のあることだが、しかし、このページには簡単にたどり着けない構造になっており、この重要なメッセージはほとんど国民に浸透していない。政府はマイナンバーカード普及のための「マイナポイント」の広報費として53億8000万円も計上してコロナ禍でもさんざんテレビCMを垂れ流していたが、むしろ「生活保護の申請は国民の権利です」というメッセージをいまこそ徹底的に広報すべきであり、ネックとなっている「扶養照会」を即刻見直すべきだ。
 しかし、「最終的には生活保護がある」と言って支援策を否定した菅首相は、この「扶養照会」の見直しを求められても、信じられない答弁をおこなった。
 本日の参院予算委員会で小池議員は、扶養照会は法律上明記されていないため義務ではないことを確認した上で、「大臣が決断すればできる」として運用の見直しを迫り、菅首相にこう訴えた。
「総理は『最後のセーフティネットは生活保護だ』とおっしゃった。私は生活保護に行き着く前にいろんな手立てで支えなければいけないと思いますよ。でも『最後は生活保護だ』とまでおっしゃるのであれば、それを阻んでいる、ためらわせているものについて、こういうときに見直す必要があるんじゃないですか?」
 だが、菅首相は答弁席に立つと、弛緩しきった声で“雇用調整助成金や小口の特例貸付などがある”と現行の支援策を挙げ、肝心の「扶養照会」の見直しについては、最後にこう述べただけだった。
運営の仕方は所管大臣に当然委ねるわけですから、そのほうのなかで対応されるものだと思います
 現行の支援策だけでは生活困窮者をまったく救えきれていないという現実が目の前にあるのに、それを無視した挙げ句、「生活保護がある」と言いながら、生活保護申請の足枷になっている問題も“俺は対応しない”と責任を放棄したのだ。
 追加支援策という本来の「公助」もなく、菅政権下で唯一の「公助」だという生活保護さえまともな運用をおこなう気がまったくない──。生活保護バッシングの片棒を担いできたワイドショーは、蓮舫議員の追及に菅首相が「失礼ではないか」と言い返した場面ばかり取り上げ、「蓮舫議員は失礼すぎる」などと菅首相に同調しているが、ネットでは、菅首相の「最終的には生活保護がある」発言に、「#もういらないだろ自民党」というハッシュタグが拡散されている。
 ワイドショーはこんなくだらない話で菅擁護と野党叩きをする暇があったら、菅政権がいま生活困窮者を見殺しにしている問題こそ伝えるべきだ。(編集部)


菅首相「最終的には生活保護」に“怒りのウイルス”拡散中!
                          日刊ゲンダイ 2021/01/28
 「#もういらないだろう自民党」 SNS上でこんな声が全国に拡散している。広がり始めたのは27日夕方ごろ。2020年度第3次補正予算案をめぐる参院予算委の質疑が終わった直後からだ。世論の“怒り”に火をつけたとみられているのが菅義偉首相の答弁だ。
 この日の予算委では参考人として、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連氏が出席し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って生活困窮者が増えている状況を説明。政府の施策が非正規雇用者や失業者には届いていないとして、給付金支給など政府支援の必要性を訴えた。そして立憲民主党の石橋通宏議員が国民の強い要望があるとして、特別定額給付金の再支給に対する考えをただすと、菅首相は「考えていない」と素っ気なく答え、さらに「最終的に生活保護がある」などと冷たく言い放ったのだ。
 昨年9月に発足した菅政権のキャッチフレーズは〈国民のために働く内閣〉だったはず。このフレーズ通りであれば、新型コロナで苦しむ国民のために働くということ。つまり、医療体制の充実はもちろん、給付金や生活支援など、あらゆる知恵と政策を使って国民が安心して暮らせるように手を尽くすべきで、国民が生活保護に陥らないようにすることが政治の役割ではないのか。「最終的に生活保護あるよ」では何のために国会議員が存在するのか。
 菅発言に対し、SNS上では〈国民のために働くのは嘘〉といった声が続出。次第に批判の矛先は自民党議員の会食にも向けられ、〈菅首相は国民には外出を控えろ、会食するなと言いながら、自分は銀座で二階幹事長と8人で高級ステーキ会食。このお金を給付金に回したら〉〈博多で9人も集まってフグ宴会した石破元幹事長の食事代も税金〉〈緊急事態宣言中に麻生財務相の側近、松本元国家公安委員長は銀座クラブでハシゴ酒〉〈二階幹事長の秘書は和歌山のカラオケバーで騒いでクラスター。これも血税〉〈自由飲酒党はいらない〉と“祭り”状態になった。
 国民の“怒りのウイルス”も感染拡大を続けているようだ。