2021年3月31日水曜日

「まん防」を政府に要請し、マスク義務化を主張する吉村知事に非難殺到

 大阪は第3波で東京都を上回る死亡者を出すなど最悪の状態に陥りました。しかし吉村知事2月1日の段階から緊急事態宣言の解除に向けて独自の緩い基準を定めるなど宣言解除に前のめりになり、京都府・兵庫県と共に、他の8都県に3週間も先立って2月28日に解除に漕ぎつけました(その後変異株感染による死亡者がいたことを隠蔽していたことが分かりました)

 ところが1が月後の3月30日には、新規感染者数が解除時の8倍の432人/日に急拡大したため、こんどは国に対して「まん延防止等重点措置(まん防)」の適用を要請する考えを示し、同時に飲食店での「マスク着用の義務化」も打ち出しまし
 そもそも「まん延防止等重点措置」は、緊急事態宣言を出さずとも時短営業の命令や罰則を科せられるという強権好みの菅政権が新設したもので、“やっている感”を出したいのだという批判がありました。
 それに早めに宣言を解除させた吉村知事が、またまた“やってる感”を出したいと一番乗りするという構図です。
 もともと全体についても宣言の解除は早すぎるという議論がある中での功を焦った先行解除でした。「羽鳥慎一モーニングショーで玉川徹氏はこの件について、
「自分で最初に解除してくれ言って2月末に解除した。あの時点で変異株の話もあったし、まだ落ちきってないときに解除すれば戻りますよいう話してる。案の定そうなった
と述べました。
 まさにそれに尽きますが、要するに解除に当たってリバウンドを防止する対策は何もなかったということで、蹂躙される側の府民は堪ったものではありません。
 必ずしもひとり吉村知事の責任とは言い切れませんが、何につけても絶対に自分の非は認めずに、自己弁護し批判の矛先をすり替えようとする姿勢は度を越しています
 さすがに府には「緊急事態宣言の解除が早過ぎたのではないか」「解除したから感染者が増えた」といった意見が相次ぎ、大阪市内の飲食店経営者は、「前倒し解除したけど、いいことはひとつもなかった。この4週間で売り上げが回復したならまだしも、夜9時までの時短営業は続いたので売り上げにはつながらず、しかも感染者が増えているのだから、何のための早期解除だったのか」りました。
 マスク会食にブーイングが上がっているということで、飲食店経営者は、
「感染しないよう店側もできる限りの予防対策を取っている。それを何の根拠もなく、また飲食店を悪者にしてごまかそうとしている。府も市からも時短要請延長の知らせや給付金支給の連絡は一切ない。1年間振り回され続けてい
と述べているということです。
 LITERAが取り上げました。
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吉村知事の「まん防」「マスク義務化」主張に「宣言解除を要請した張本人が」と非難殺到! 玉川徹は「カスタネットじゃねぇよ」
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 本日3月30日の新規感染者数が432人という深刻な数字となった大阪府。緊急事態宣言が解除された2月28日の新規感染者数は54人だったから、ものの約1カ月でちょうど8倍まで拡大したことになる。
 しかし、これは予想外の展開などではまったくなく、起こるべくして起こった事態だ。実際、昨年の第1波の経験から見ても、3月という歓送迎会や人の移動が増える時期に感染が拡大するのではという指摘は宣言解除前からなされてきた。にもかかわらず、そうした懸念する声にまったく耳を貸さず、むしろ宣言解除を前倒し要請したのが吉村洋文知事であり、回避できた危機を自ら引き起こしたのである。
 だが、当の本人は自身の責任は棚に上げ、お得意の“やってる感”によって失策を糊塗するべく、さっそく国に対して「まん延防止等重点措置」の適用を要請する考えを示し、同時に飲食店での「マスク着用の義務化」も打ち出した。
 「マンボウ」という間の抜けた略称からもわかるように、「まん延防止等重点措置」自体が緊急事態宣言を出したくない菅政権が“やってる感”のために新設したシロモノで、緊急事態宣言を出さずとも時短営業の命令や罰則を科せられるようになるという強権発動でしかない。だいたい、宣言発出下でも東京都などは1日たりとも新規感染者数を100人以下に抑え込めなかったことを考えれば、感染拡大を本気で食い止めようというのなら事業規模に応じた補償を充実させた上での休業要請や検査体制の拡充に力を入れるべきだ。
 しかし、吉村知事は、まだどの都道府県も手を付けていない「マンボウ」の適用に一番乗りすることでまたも“やってる感”を出そうとし、さらには「マスク会食の義務化」で市民に責任を押し付けようというのである。
 この吉村知事の詐欺師ぶり、無責任ぶりに対しては、本日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で玉川徹氏がこう言及した。
「自分で最初に解除してくれって言って、2月末に解除した。あの時点で変異株の話もあったし、まだ落ちきってないときに解除すれば戻りますよっていう話してる。案の定戻ってきたわけ」
「そうすると、今度はマスク義務化だとか、マンボウだとかっていうふうに言って。何か言ってることが、打って休んで、打って休んで……カスタネットじゃねえよっていうふうに僕はちょっと思う。他の事をやることがあるんじゃねえのって、前からずっと言ってるんですよ」
 まったく玉川氏の言うとおりとしか言いようがないが、しかし、「カスタネット男」の吉村知事は、この期に及んでも自身の責任逃れのために詭弁を弄しつづけている。

■吉村は感染急増を「ここ数日」などとごまかしも、原因は宣言解除! 大阪は解除後のフォローも不十分
 29日の会見で吉村知事は「私自身は第4波に入ったと認識している」と他人事のように語り、「(首都圏より)一足早く緊急事態宣言を解除したので、そのリバウンドもあると思う」などと評論家のようにコメント。いや、その宣言を解除したのはあなたなんですけど、という話だが、その上、このような身勝手な分析までおこなったのだ。
「客観的に分析しても、ここ数日で感染が急激に増えている。いつ感染したのかというと、3月の中旬ぐらい。15日以降。仮に3月7日に(緊急事態宣言を)解除しても同じ問題が生じていると思う」
 まったく何を言うかという話だ。当然ながら3月7日に宣言を解除するのではなく、延長を要請する選択肢だってあった。しかも、新規感染者の増加傾向は宣言が解除された2月28日のあとからはじまっており、3月中旬には解除時の約3倍となる150人近くにまで達していた。これは宣言解除後すぐに感染した人ということになる。
 それでなくても大阪は第3波で東京都を上回る死亡者を出すなど最悪の状態に陥った。その反省があれば宣言解除に慎重になるはずだが、ところが吉村知事が逆に2月1日の段階から緊急事態宣言の解除に向けて独自の緩い基準を定めることを表明するなど宣言解除に前のめりになり、23日には兵庫・京都とともに前倒しとなる28日の解除を国に要請した。しかも、菅義偉首相が2月28日での解除を表明する前日の25日に大阪府は変異株感染による死亡者を確認していたにもかかわらず、3週間近くもその事実を隠蔽していたのだ(詳しくは既報参照)。
 さらに言えば、大阪府は感染経路不明者の数が全国トップで、3月28日時点でその割合は61%にものぼっている。この数字について、北村義浩・日本医科大学特任教授は本日放送の『ひるおび!』(TBS)で「激烈(な数字)。保健所が追いきれていない」とコメントしていたが、これは宣言解除後のフォローがまったく足りていなかったことの証拠だろう。「新大阪駅で検温」なんてやっている場合ではなかったのだ。
 なのに、吉村知事はそうした自身の見通しの甘さや失策、府民の安全と健康を守ることよりも経済を優先させたことの責任を語るでもなく、「3月7日に宣言解除しても同じ問題が生じていた」などと自己弁護をまくし立てたのである。
 しかも、さらに呆れ果てたのは、吉村知事がおこなったこんな発言だ。
 28日に立憲民主党の枝野幸男代表は「時期尚早のタイミングで解除を求めたことが事態の悪化を招いた」などと発言していたが、これについて、吉村知事はこう述べた。
「枝野さんのおっしゃってることはコロナを政治利用している場合が多い。あまり取り上げる必要もないと思っている」
「報道では大阪と宮城を挙げているが、感染の状況を見たら、沖縄や兵庫も厳しい。全国にほかにも厳しいところがあるなかで、あえて大阪と宮城。よくあるパターンだが、立憲民主党はコロナをうまく政治利用して、批判の材料にしている」

■宣言解除を批判した立憲・枝野に吉村が「コロナの政治利用」 政治利用しているのは吉村のほうだ
「コロナを政治利用している」って、これぞまさしく「お前が言うな」だろう。「大阪モデル」だの「コロナにうがい薬が効く」だの実効性も科学的根拠もない宣言ばかり連発し、コロナ対策も置き去りにしたままワイドショーをはじめとするメディアに出まくり、“やってる感”だけで「リーダーシップがある首長」という虚飾をメディアにつくらせ、その人気を利用してこのコロナ禍にまさかの「大阪都構想」住民投票を強行したのは、どこのどいつだ。これ以上の「コロナの政治利用」が、どこにあるというのか。
 しかも、この発言は「おまゆう」なだけではなく、自分が責任を問われる局面で野党批判を持ち出すことで批判の矛先をすり替えようとするもので、吉村知事の十八番だ。
 実際、大阪府は昨年12月に医療が逼迫して自前の医療体制で状況に対処することができず自衛隊の派遣を要請せざるを得ない状況に追い込まれたが、そのとき吉村知事はこんなツイートをおこなった。
〈本日、呉地方総監、自衛隊の皆さまと。国民の生命、財産を守って下さいまして、ありがとうございます。違憲のそしりを受けることがあってはならない。保守を自称する国会議員は、命がけで憲法9条の改正をやってくれ。維新は命がけで都構想をやって大将の首をとられた。その迫力が全く感じられない。〉(2020年12月7日)
 このとき起こっていた批判は、自衛隊派遣という事態を引き起こした吉村知事や維新のコロナ対応に対してであり、自衛隊が大阪に人員を派遣することを違憲と批判する声など一切起きていなかった。にもかかわらず、吉村知事は「違憲のそしりを受けることがあってはならない」などと自衛隊批判をでっち上げたのだ。
 そもそも、この「自衛隊が違憲扱いされている」というのは安倍晋三・前首相が9条改憲を正当化するために持ち出し始めた詐術だが、吉村知事の場合は改憲扇動ですらない。自分の失政を持ち出されたら反論できないために、ありもしない自衛隊違憲論をでっち上げて、目を逸らさせようとしたのである。その挙げ句、「命がけで憲法9条の改正をやってくれ」「維新は命がけで都構想をやって大将の首をとられた」って、命をかけさせられたのは吉村知事や松井一郎市長ではなく、コロナ感染拡大下で住民投票を強いられた大阪府民ではないか。その上、否決という住民投票の結果を蔑ろにし、大阪市の権限と財源を府に差し出す「広域一元化」条例を可決・成立させたのである。
 しかし、この男は、救えたかもしれない命を救えなかったことの責任を何ひとつ感じていない。今回もまた、自己保身のために自身の責任は棚に上げ、詭弁を弄して批判の矛先を野党に向けさせようと「政治利用」などと言い出しているのだ。
 大阪府民は、この無責任男の見え透いた手口に踊らされている場合ではない。第4波を引き起こしたことの責任追及がなされなければ、命をかけさせられるのはまたも大阪府民なのである。(編集部)

コロナと法人税 大企業に負担求める時代

 かつて先進国では法人税率は4050でしたが、各国が税率の値下げ競争をした結果 現在は20%前後大幅に低下しています(その分が消費税に加算され国民の負担が重くなりました)。
 英国は半世紀ぶり法人税増税を決め米国バイデン政権法欧州連合EU 大企業の負担を増す案を検討中ということです。
 それに対してアベノミクスを継承した菅政権は増税を検討していません。しかしコロナ禍で借金財政は一段と深刻になり、経済格差も増大しました。
 もはやアベノミクスは死語です。大企業優遇政策をやめ、世界に倣って法人税を上げるべきで、それが所得再分配という税制の理念に適う道です。
 しかも法人税のアップは単独では行いにくく各国が足並みを揃える必要があるので、いまはその良い機会です。
 毎日新聞が「コロナと法人税 大企業に負担求める時代」とする社説を出しました。

 支持率以外には何の関心も持っていないかのように見える菅政権に加えて、生活苦を経験したことのない議員たちが大勢を占めている国会にも、多くは期待できません。そうした中で、財政赤字を後々 消費税の増税で賄おうとするのは全くの間違いです。
 コロナ禍で庶民は困窮し、商店などの売り上げは軒並み大幅に落ち込んでいます。そのため商店などは、4月1日を待ち切れずに値上げをしているということです。
 田中龍作ジャーナルが報じました。
 毎日新聞の社説と併せて紹介します。
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社説 コロナと法人税 大企業に負担求める時代
                             毎日新聞 2021/3/30
 大企業を優遇してきた税制を転換し、負担を求める動きが各国に広がっている新型コロナウイルス禍で所得格差や財政難が深刻化したためだ。適切な判断である。
 英国は半世紀ぶりとなる法人税増税を決めた。米国のバイデン政権も、トランプ前政権が大幅に下げた法人税率を上げる意向を示している。欧州連合(EU)も大企業の負担を増す案を検討中だ。
 各国はこれまで自国産業を強化しようと法人税の減税競争を繰り広げてきた。安倍前政権もアベノミクスの目玉として実行した。先進国でかつて40~50%に上った税率は20%前後と大幅に低下した。
 だが、減税の効果には疑問が多い。推進派は経済を成長させて税収を増やすと主張したが、日本は減税後も成長率は低く、賃上げにも結びついていない。
 むしろ企業利益を優先してきた結果、社会的不公平が拡大した。
 先進国は高齢化で社会保障費が増加し、財源確保が課題となっている。大企業が払う税が減った分、消費税などが増税されて、国民の負担が重くなっている
 さらにコロナ禍で減税競争を見直す必要性は高まっている。
 営業が規制された飲食店や小売店では職を失った人が多い。各国は雇用対策などで巨額の財政出動を余儀なくされている。
 その一方でネット通販などが活発化し、IT関連の大企業は巨額の利益を得ている。こうした企業が払う税金が増えれば、生活支援の財源に充てられる。所得再分配の観点から理にかなう。
 法人税増税で政府の借金膨張に歯止めが掛かれば、財政への不安が和らぎ、経済の安定に資する。
 増税を実施する際は、各国が足並みをそろえやすい制度が求められる。一国では自国企業の反発もあって増税しにくい。世界共通の最低税率を設けるべきだ。税率の低い国を大企業が課税逃れに使う「抜け道」も防げる。
 日米欧などが議論してきたが、結論は先送りされてきた。協調重視のバイデン政権は前向きな姿勢を示しており合意を急ぐべきだ。
 アベノミクスを継承した菅政権は増税を検討していない。だが格差や借金財政はコロナ前より一段と深刻になっている。大企業に偏ってきた政策を再考する時だ。


4月1日を待てず値上げの春 「コロナで前年比50%減は当たり前」
                中山栄子 田中龍作ジャーナル 2021年3月30日
 消費税込みの総額表示が4月1日から始まるのを前に、値上げの話題が新聞テレビに登場するようになった。
 食用油、缶詰、ハンバーガー、セルフうどん店・・・税込み価格で分かりやすくすればいいだけの話なのだが、各社いくばくかの値上げを発表している。なぜか?
 理由はコロナ禍での需要落ち込みに歯止めがかからないからだ。コロナ不況の影響は飲食店だけでなく、私たちを取り巻くサービス業にまで及んでいた。
 細かい文字で書かれたA4判の紙を見つけたのは、もう半月以上も前だ。
 いきつけのクリーニング屋。コロナ対策のため天井から吊るされたビニールの仕切りに、「値上げの告知」が貼り付けられていた。
 クリーニング屋の値上げは、3月19日にすでに始まっていた。4月1日からの開始にすると、便乗値上げのように見えるからなのだろうか。
 「リモートでみんなスーツを着ないの。ワイシャツも。うちのチェーンでも前年同月比50%から60%減は当たり前。2人で回していた店も1人で十分になるくらい業務量が減った」と受付の女性は言う。
 「お宅だって、いつものようには(服を)出さないでしょ」と、ダメ出しをされた。
 そう言われればそうだ。第一、人と会うような状況がないのだから父ちゃんもワイシャツを着ない。
 そのクリーニングチェーンでは、もともと高めにしていた土日料金並みに平日料金を引きあげたのだった。

 わが家が狭いために借りている貸倉庫でも、同じ異変が起きていた。
 毎月15日までに来月分を支払わないと携帯に督促メールが来るようになっている。3月から金額は18,200円となった。従前の料金から見てすでに2000円近い値上げだ。
 断捨離に励んで、貸倉庫を解約しようかとの考えが一瞬頭をよぎった。
 近隣の商店やサービス業者が廃業していくのを見るのはつらい。だが、着てもいない父ちゃんのワイシャツを余計にクリーニングに出すこともできない。
 コロナに対する政治の無策が、じわじわと真綿で首を絞めるように庶民を痛めつけている。
                 ~終わり~

31- 北朝鮮、弾道ミサイル発射は自衛権に基づいた行動

 北朝鮮弾道ミサイル発射についてバイデン大統領国連安保理決議違反述べましが、北朝鮮は「主権国家としての自衛権に基づいた行動だ」と反発しました。
 国連安保理北朝鮮制裁委員会は26日緊急のオンライン会合を開き、その中で多くの国が今回のミサイル発射は安保理決議違反だと懸念を表明し、米国は制裁委員会に今回の発射に関する調査を要請し、制裁の強化を視野に独自の資料を提出する考え示しました(中国とロシアは、拙速な行動は控え長期的な視野に立って制裁を緩和すべきだと主張しました)。
 それに対して北朝鮮は、「世界の多くの国々は、軍事力強化を目的にさまざまな飛翔体を発射しているのに、われわれだけを問題視しているのは話にならない」「二重の基準にこだわるならば朝鮮半島の情勢は激化し、対話ではなく対決だけを煽ることになる」とけん制しました。
 米国要人らによる北朝鮮への恫喝的な発言や姿勢を見ると、北が「自衛権に基づいた行動」だと弁明するのは理解できるし、多くの国々軍事力強化を目的にさまざまな飛翔体を発射しているのに北朝鮮だけには禁止するのを理不尽と述べることにも同意できます。
 そもそも、米国などはミサイル発射や核実験を行っても良いとする一方で、北朝鮮がそれを行うのは絶対的に認められないし経済制裁を科すという安保理決議に道理があるのでしょうか。それは北朝鮮の独裁政治が是認できないこととはまた別の問題です。

 経済制裁をしたからと言って独裁政権が倒れるわけではありません。
 食糧や燃料の輸出禁止によって苦しむのは北朝鮮の国民であり、その大半は飢餓に苦しんでいるといわれています。そして厳寒の冬季に燃料がないため家を暖房することも出来ないというありさまで、どちらも人道上大問題です。国連が理性的に対応しているとは到底言えません。
 NHKの記事と「論文 経済制裁は死を意味する(アルフレッド・デ・ザヤス)」を紹介します。
 この論文は北朝鮮に関するものではありませんが、「経済制裁が国民の死を意味する」という点では全く共通しています。
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北朝鮮 国連安保理を前に談話 “自衛権侵害なら相応の措置”
                     NHK NEWS WEB 2021年3月29日
北朝鮮は、先週の弾道ミサイル発射を受けて、今週開催が検討されている国連安全保障理事会の会合を前に談話を発表し、「われわれの自衛権を侵害する試みは必ず相応の措置を誘発することになる」とけん制しました。
北朝鮮が、今月25日に弾道ミサイル2発を発射したことを受けて、国連の安全保障理事会は30日に非公開で会合を開くと伝えられています。
これを前に、北朝鮮外務省のチョ・チョルス国際機構局長は、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「世界の多くの国々は、軍事力強化を目的にさまざまな飛しょう体を発射しているのに、われわれだけを問題視しているのは話にならない」として、ミサイルの発射は自衛権の行使だと主張しました。
そのうえで「二重の基準にこだわるならば朝鮮半島の情勢は激化し、対話ではなく対決だけをあおることになる。われわれの自衛権を侵害する試みは、必ず相応の措置を誘発することになる」とけん制しました。
安保理をめぐっては、北朝鮮の友好国の中国とロシアが長期的な視野に立って北朝鮮に対する制裁を緩和すべきだという立場で、アメリカとの間の意見の隔たりが浮き彫りになっています。


北朝鮮 “ミサイル発射は主権国家の自衛権” 朝鮮中央通信
                      NHK NEWS WEB 2021年3月27日
北朝鮮は、25日、弾道ミサイルの発射について国営メディアを通じて談話を発表し、発射が国連の安保理決議に違反するとのアメリカのバイデン大統領の発言に対して「自衛権に対する露骨な侵害で挑発だ」と反発しました。
北朝鮮は、25日の弾道ミサイルの発射について、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の側近で発射に立ち会った朝鮮労働党のリ・ビョンチョル書記の談話を27日朝、国営の朝鮮中央通信を通じて発表しました。
談話では「主権国家としての自衛権に基づいた行動だ」と発射を正当化した上で今月行われた米韓の合同軍事演習に対抗するための措置だと主張しました。
その上で、ミサイル発射が国連の安保理決議に違反するとのアメリカのバイデン大統領の発言に対して「自衛権に対する露骨な侵害で挑発だ。極度に体質化したわれわれに対する敵対感をあらわにした」と反発しました。
さらに、バイデン政権に対して「はじめから間違っている。われわれは自分たちがすべきことを分かっており、継続して圧倒的な軍事力をつくっていく」として、核・ミサイル開発を推し進める姿勢を強調しました。
今回の発射について日本政府は、北朝鮮に対し、国連安保理の決議に明白に違反しており、断じて容認できないとして、中国・北京の日本大使館を通じて抗議しています。


国連安保理北朝鮮制裁委 議長国がミサイル発射非難声明
                     NHK NEWS WEB 2021年3月27日
北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会は26日緊急の会合を開き、議長国のノルウェーは発射を非難する声明を出しました。しかし、制裁の実施を含む今後の対応ではアメリカと中国、ロシアの間で意見がわかれました。
北朝鮮制裁委員会は、各国に制裁の実施を求めたり、安保理決議違反への対応にあたったりする安保理の付属機関で、北朝鮮による弾道ミサイル発射のあと、アメリカの要請に基づいて26日、緊急の会合をオンラインで開きました。
会合は非公開で行われ、議長国ノルウェーの国連代表部は会合後、ツイッターに「ノルウェーは、弾道ミサイルの発射を非難した。制裁は実施されるべきだ。北朝鮮は意味のある対話を行い、非核化に向けた確かな措置をとらなければならない」とする声明を投稿しました。
安保理の関係筋によりますと、会合では、多くの国が今回のミサイル発射は安保理決議違反だとして懸念を表明しました。
このうちアメリカは、制裁委員会に対して今回の発射に関する調査を要請し、制裁の強化を視野に独自の資料を提出する考えも示したということです。
一方で、北朝鮮の友好国の中国とロシアは、拙速な行動は控え、長期的な視野に立って制裁を緩和すべきだなどと主張したということで、アメリカと中国、ロシアの溝が改めて浮き彫りになりました。


経済制裁は死を意味する
              アルフレッド・デ・ザヤス博士 2021年3月29日
                                 (国連作家協会)
  (前 略)
国際社会は、すべての国のすべての人々がすべての人権を享受することを促進することを約束します。世界人権宣言や10の中核的人権規約に謳われているこの崇高な目標は、国際的な連帯と協力によってのみ達成することができます。
また、国際社会は、国際連合の基本的な目標、すなわち平和と開発の促進を地域的、国際的に推進することに取り組んでいます。これらの目標を達成するためには、国家の主権と自国の政策を決定する権利を尊重しつつ、繁栄と安定をもたらす民主的で公正な国際秩序を実現するための戦略を策定する必要があります。
国連人権高等弁務官事務所は、その諮問サービスと技術支援が、民主主義、法の支配、国家機関の強化に効果的であることを実証している。一例として、2019年にベネズエラのカラカスにOHCHR事務所が開設されることは、UNDP、UNHCR、UNICEF、WHO、ILO、FAOなどの国連機関からの支援を調整する上で重要なステップとなります。
国連憲章が世界の憲法に等しいことを考えれば、多国間主義に基づいた国際的な行動と、国内法や法律実務がその憲法に沿ったものになるように努力すべきである。歴史を振り返ると、国際平和と各国の幸福は、他国、特に地政学的または地経済的なライバルに対する一方的な強制措置の発動を含むユニラテラリズムによって脅かされています。国連憲章第7章に基づいて課される国連制裁のみが合法である。一方的な制裁は、国連憲章の文言と精神に反するものです。
武器禁輸は、紛争を緩和し、和平交渉の機会を与えるために必要かつ正当なものですが、「政権交代」を目的とした経済制裁は、世界の平和と安定を脅かすものです。どの国やグループも、すでに戦争状態にある国や、内外の混乱の恐れがある国の武器の輸出入に対して禁輸措置を取ることはできますが、各国は地政学的または地経済的なライバルに対して、常に弱者を直撃するような壊滅的な経済制裁を課すことでギャング化してはいけません

これまでの経験から、経済制裁は影響を受ける人々の人権に悪影響を及ぼすことがわかっています。多くの制裁は、たとえ国連安全保障理事会が課した「合法的な」制裁(例:対イラク1991~2003年)であっても、ユニセフやその他の国際機関が記録しているように、死、さらには大量死を引き起こす可能性があります少なくとも50万人の子どもが制裁によって死亡したと推定されていますベネズエラだけでも2018年には約4万人が制裁によって死亡しています)。制裁がこのような大混乱を引き起こす場合、制裁を解除し、国連の原則と目標に沿った他の方法を試す必要があります。このような制裁は、「集団的懲罰」を明確に非難する国際人道法にも違反します。さらに、制裁によって影響を受けた国の経済が破壊され、あるいは停滞すると、失業、飢餓、病気、絶望、移民、自殺などが起こります。このような制裁が「無差別」である限り、地雷やクラスター爆弾、劣化ウランの発がん性兵器の使用と同様に、無差別な殺戮を伴う「テロ」の一形態となる
一方的な強制制裁の歴史は、苦しみと荒廃の歴史でもあります。このような制裁は、当該国の政策を変えるように「説得」するためのものであるという理論です。専門家は、制裁によって国民の不満を募らせ、国民が政府に対する怒りを爆発させたり、クーデターを起こしたりすることを目的としていると考えている。制裁の目的は、まさに混乱、国家的緊急事態、予測不可能な結果をもたらす不安定な状況を引き起こすことですが、制裁を正当化しようとする政治的シナリオは、その真の目的として人権や人道的原則を呼び起こします。これは、「政権交代」を目的とした、典型的な人権の道具立てです。しかし、制裁によって人権は守られるのでしょうか? 制裁対象国の人権状況が改善されたという実証的な証拠はありますか?

これまでの経験から、ある国が戦争状態にあるときは、それがどのような種類のものであっても、市民的・政治的権利から逸脱していることが多い。同様に、非従来型のハイブリッド戦争を戦っている国が、経済制裁や金融封鎖を受けている場合。その結果、人権の拡大ではなく、正反対のことが起きています。制裁が経済的・社会的危機を引き起こすと、政府は日常的に「国家の緊急事態」を正当化して、異常な措置を講じます。したがって、古典的な戦争状態と同様に、国が包囲されているときには、ある種の市民的・政治的権利を一時的に制限することによって、安定を取り戻すことが試みられます。

市民的及び政治的権利に関する国際規約の第4条は、政府が一定の一時的な制限を課す可能性を規定している。例えば、第9条(拘禁)、第14条(公正な裁判)、第19条(表現の自由)、第21条(平和的集会の自由)、第25条(定期的な選挙)の適用除外などが挙げられる。このような例外を望む人はいませんが、どのような国家であっても、その主権とアイデンティティを守るために生き残ることが優先されます。国際法では、制裁、準軍事的活動、破壊工作などに直面した場合、国家の生存に対する脅威の度合いを決定する上で、政府にある程度の裁量権があることを認めている。
このように、経済制裁は人権状況の改善を促進するどころか、重要な利益を維持するための緊急の国内法の制定につながることが多いのです。このような場合、制裁は逆効果となり、負け犬の遠吠えとなってしまいます。同様に、「Naming and Shaming⇒名指しして恥を与える」という使い古された手法も効果がないことがわかっています。これまで有効だったのは、静かな外交、対話、妥協です。

   (後 略) 

2021年3月30日火曜日

安保法制施行5年 「戦争する国」の阻止が急務

 安保法制=戦争法が施行されてから5年が経ちました(成立は15年9月19日)。
 8年近く続いた安倍・菅政権では数々の悪法を成立させましたが、国を直接危うくする法律の最たるものが戦争法の成立・施行でした。それは成立させる過程からして、内閣法制局長の首をすげ替えた上で進めるという「無法を地で行く」手法でした。
 人類史上空前の戦争国家1である米国を宗主国と仰がんばかりの安倍氏の態度は異常の一語に尽きるものでした。
   1(15.2.28) アメリカは建国後合計222年間=93%の年間 戦争をしてきた

 しかし米国の驥尾に付していれば安全というのは大間違いでした。先に孫崎享氏が分かりやすく解説した通り2です。
   *2(3月28日) 尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる

 しんぶん赤旗は「 ~ 『戦争する国の阻止が急務だ」とする主張を掲げました。
 琉球新報は「~ 平和外交にこそ力を注げ」とする社説を掲げました。
 日本は「カチカチ山の狸」にならないように進路を転換するべきです。
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主張 安保法制施行5年 「戦争する国」の阻止が急務だ
                        しんぶん赤旗 2021年3月29日
 安倍晋三前政権が憲法の平和主義と立憲主義を破壊し強行した安保法制=戦争法が2016年3月29日に施行されてから5年がたちます。同法制が海外での米軍の戦争に自衛隊が参戦し武力行使できる道を開いた中で、日米両国の軍事一体化が急速に深まっています。安倍前政権を継承した菅義偉政権の下でも「戦争する国」づくりの重大な動きが進んでいます。

米軍の防護が最多に
 防衛省は2月、安保法制に基づき自衛隊が20年に実施した米軍防護が25回だったと発表しました。米軍防護は、米艦や米軍機などを自衛隊が警護するものです。警護の地理的範囲に限定はなく、米軍が攻撃を受ければ自衛隊が武器を使用して反撃できます。
 年ごとの米軍防護の回数は、初めて実施された17年が2回、18年が16回、19年が14回で、20年の25回は最多です。その内訳は、弾道ミサイルなどの情報収集・警戒監視活動を行っている米艦の警護が4回、日米共同訓練に参加している米軍機の警護が21回でした。
 米軍防護は、自衛隊を意図しない戦闘に巻き込む恐れがあります。例えば、南シナ海で自衛隊と共同訓練をしている米軍と中国軍との間で偶発的な衝突が起こった場合でも、米軍防護の任務に就いている自衛隊は武器を使用して米軍を守らなければなりません。
 今月16日の日米外交・軍事担当閣僚会合(2プラス2)の共同発表は、南シナ海での中国の不法な活動への反対をうたい、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘しました。その上で「同盟の運用の即応性及び抑止態勢を維持し、将来的な課題へ対処するための、実践的な二国間及び多国間の演習及び訓練が必要」と強調しました。「実践的」な演習・訓練は、不測の軍事衝突の危険を高めかねません。

 防衛庁(現防衛省)幹部を歴任し、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を務めた柳沢協二氏は「日米共同で軍事的プレゼンスを高め、状況によっては米艦も防護するという姿勢は、アメリカの秩序・覇権に与(くみ)することを意味します」「南シナ海や台湾で米中が衝突し、本格的な戦争になれば、日本も無傷ではいられません」と警告しています(『抑止力神話の先へ―安全保障の大前提を疑う』)。
 安保法制は、南シナ海や台湾での有事を「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)と認定すれば、戦闘が予測される地域でも自衛隊が米軍に補給や輸送などの後方支援をすることを可能にします。米軍の後方支援部隊の警護もできます。そうなれば自衛隊が標的になるだけでなく、米軍基地が集中する日本、とりわけ沖縄が攻撃目標になるのは避けられません。

自衛隊が本格参戦も
 さらにそれを「わが国の存立が脅かされる明白な危険がある事態」(存立危機事態)とすれば、自衛隊は集団的自衛権を行使し本格的に参戦することになります。
 日本は2プラス2の共同発表で「日米同盟を更に強化するために能力を向上させる」と表明しました。菅政権は、他国を攻撃できる長距離巡航ミサイルなど「敵基地攻撃能力」の保有も企てています。安保法制の廃止と、同法制の根拠となっている集団的自衛権の行使などを認めた閣議決定の撤回はいよいよ急務になっています。


<社説> 安保法制施行5年 平和外交にこそ力を注げ
                          琉球新報 2021年3月29日
 憲法学者から違憲との指摘がある集団的自衛権行使を可能にし、日米の軍事一体化を進めるなど、さまざまな課題をはらむ安全保障法制は、29日で施行から5年を迎えた。
 この間、自衛隊と米軍の一体運用は常態化し、太平洋に面するオーストラリアだけでなく、欧州を含めた形で軍事的な連携が際限なく広がる
 海洋進出を図る中国や弾道ミサイルを発射した北朝鮮など、東アジアの安全保障環境に懸念は絶えない。しかし軍事的な力に頼るばかりの安全保障策でよいのか。
 有事となれば真っ先に狙われるのは国境の島であり、米軍、自衛隊基地が集中する沖縄であるのは疑いない。76年前、軍民混在の地上戦を経験した県民は「軍隊は住民を守らない」という教訓を得た。
 政府は違憲の疑いが濃い安保法制を見直すだけでなく、国民を守るため平和外交にこそ力を注ぐべきだ。
 安保法制で可能になった任務では、集団的自衛権の行使こそなかったが、平時に他国軍の艦艇などを自衛隊が守る「武器等防護」は19年に14件、20年に25件実施している。防衛省は件数と概要のみ公表し、詳細は明かしていない
 現状は米軍だけを対象にしているが、菅義偉首相はオーストラリアのモリソン首相との昨年11月の会談で、オーストラリア軍も「武器等防護」の対象に追加するよう調整を進めることで合意した。
 「武器等防護」は地理的制約がなく自衛隊が世界中で活動できる。しかし詳細な情報を公開せず、国会も十分関与できない。これでは自衛隊を統制できない。
 当時の安倍晋三首相は国会と国民に説明責任を果たすと語ったはずだ。「抑止力」を名目にした自衛権が際限なく広がれば、国民が知らないうちに戦争に巻き込まれる可能性がある。
 国民に重要な情報を開示しない中で各国軍隊との訓練が日常化すれば、沖縄を拠点とする米軍の活動もさらに激しくなる。沖縄は現状でも過重な負担を強いられている。最近では米軍の低空飛行や物資つり下げなど危険な訓練も常態化する。自衛隊の先島配備も着々と進みつつある。
 法そのものの問題も多いが、成立過程で残した立憲主義や法治主義の否定は現在にもつながる。集団的自衛権行使を違憲とする専門家の声に耳を傾けず、政権の意に沿う人物を登用し「法の番人」である内閣法制局の見解さえも変えてしまった
 安倍前政権が残した負の遺産は、政権に異議を唱える学者を排除するという点で、現政権の日本学術会議任命拒否問題とつながっている
 法的安定性を損ない、違憲とする国民からの疑念も絶えない安保法制は、本当に必要なのか。現状では隣国との摩擦の種にしかならない。

 政府は、違憲との指摘がある安保法制を根幹から見直すべきだ。