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2020年5月10日日曜日

大学生協に届いた困窮学生の悲痛な叫び  学生の困窮は深刻

 教育ジャーナリスト木村誠氏が、全国大学生活協同組合連合会のアンケートに現れた大学生の声の一部をBusiness Journalに載せました。
匿名であるが、それだけに切実さが伝わってくる。真摯に受け止めたい“心の叫び”ばかり」だと述べています。

 京都新聞と時事通信のアンケート調査も併せて紹介します。
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大学生協に届いた困窮学生の悲痛な叫び…
「入学を後悔」「オンライン授業でも学費は同じ」
木村誠 Business Journal 2020.05.08
教育ジャーナリスト
 新型コロナウイルス対策での混迷は、大学生活にも及んでいる。国会でも、大学生支援の声が野党から上がっている。果たして、大学生活の実態はどうなのか。

 全国大学生活協同組合連合会は、4月20~30日に「緊急!大学生・院生アンケート」を実施、ウェブで3万5000件を超える回答を得た。大学生の実情を物語る自由記入欄の回答の中から、筆者が主催者の了解を得て選んだ「学部生の声」が下記である(人物を特定できないように配慮する目的で、声の趣旨を損ねない範囲で一部の表現を加筆修正している)。匿名であるが、それだけに切実さが伝わってくる。真摯に受け止めたい“心の叫び”ばかりだ。

■大学1年生の戸惑い
「正直、大学に入学したことを後悔しています。両親もぼく自身も収入が減ったのに対し、支出は変わりません。ぼくの学費が家計を圧迫していることを思うと申し訳なくてたまりません。家にはパソコンも無いのでなんとか映像授業はスマホで対応しています。バイトも勉強も中途半端でなんのために大学に入学したのかわかりません。四六時中不安です。」

「大学1年生ですが、入学式を含め一度も登校の機会がなく、感染予防のため仕方ないが不安です。一人暮らしの予定だったので、3月中旬に部屋を決めて引越しは済ませましたが、コロナの影響でそこには住むことなく実家にて過ごしており、住んではいないが家賃だけ払い続けている状態です。5月の連休明けよりオンライン授業の予定でしたが、学費は通常通りの高額な金額が引き落とされます。コロナの影響で親の収入が半分になるか、ヘタしたら会社が倒産するような見通しで、大変大変厳しいです。自分が大学生を続けられるのかもわからなくなってきました。大学の施設利用費や冷暖房費だけでも、割引いてもらえるとありがたのですが…。あと、家賃も割引など何か救済していだけると少しでも助かります。頑張って受験勉強して合格しましたが、入学式を含めて一度も登校することなく、コロナによる経済的な理由で退学しなければならないかもと思うと、真っ暗で絶望的な気持ちになります。」

「新入生でわからないことだらけの中でWeb授業になり、友達や先輩などと全く知り合えない状態はかなり大変です。半年間休校にして、9月からのスタートにして欲しいです。実家にも帰れず、知り合いもいない、話し相手もいないので、家で一人ぼっちでいるとかなりのストレスが溜まり、体調を崩しました。政府はもっと大学生にも目を向けて、早急に対策を取って欲しいです。生ぬるい対策ではなく、もっとしっかりとした対策を取っていただきたいです。」

「新入生です。パソコンも初めてなのに、設定や履修選択や教科書選択や課題提出など、大学からのフォローがまったく無く、毎日不安です。一度、大学に電話をしたのですが、『授業支援システムを見てください』のみの対応で不親切でした。おそらくパソコン未使用者はかなりいると思いますが、みんな大変な思いをしていると思います。」

「この春からの入学をなかったことにして、秋からの入学にしてほしいです。仮面浪人すると言っている人がすでに多人数います。なんとかしてください。やっとの思いではいった大学をきちんといちからやりなおしたいです。」

「関東から関西に来て知り合いも全くいなくて、新歓とかで友達つくりたかったけど、それもどうなるか分からないです。帰省したいけど、帰省できないです。早く対面授業がしたいです。もう丸一年つぶしちゃったらどうだろうかな、とさえ思っています。2020年の新入生可哀想じゃないですか?」

「入学式すらなく、全てがオンラインで進んでいくので、自分が追いつけているのか分かりません。それを相談できる相手もおらず、大学側からもまとまった連絡が来ないです。取りこぼしている情報がありそうで不安です。また、大学からは、このままオンデマンドなどで授業を行なったとしても卒業要件を満たせるのか、テストはどうなるのか、学生生活についてなどのアナウンスがほとんどなく、果たして本当に4年で卒業できるのかとても心配しています。学費などに関わることなので早く発表してほしいです。」

■バイト収入減で中退も
「アルバイトをして授業料を支払っていましたが、今回のコロナウイルスの影響で解雇され、今は収入が全くありません。また、今は自宅で過ごしており、下宿先では全く生活していませんが、家賃や共益費等は支払わなければならず、学費も全額、支払う必要があります。収入がない中でこれらのお金を工面できるかどうか、とても不安です。」

「コロナの影響で大学に行くこともできず、キャリア支援のために行くこともできない状況なのに、お金を今までと同額払わなきゃいけないことに疑問を感じます。親に頼らずアルバイトで学費を賄ってきた身として、奨学金の返済が卒業後に控える中、コロナの影響でそのアルバイトすらできず、不安です。どうにか学費減額、免除について考えて欲しいです。」

「経済的に余裕がありません。奨学金とアルバイトで学費を賄っていましたが、映画館アルバイトは出勤日を減らされ、収入がありません。両親の収入も減っているため貯金を切り崩しながらの生活ですが、ギリギリの状態です。なのに、学費はそのままというのに納得がいきません。どうか学費を減額していただけないでしょうか。家賃光熱費を浮かすために実家へ帰ることも考えましたが、実家には高齢の祖父母がおり、不安だから帰らないでくれと言われました。経済的な余裕がないことが1番辛いです。この先もコロナの影響が続く中、生活費も倍かかりますし、政府給付の10万円だけでは正直足りません。どうか学費を減額していただきたいです。心から願いです。ご検討お願いします。」

「経済的不安が大きいです。一人暮らしで、アルバイト代で生計を立てているのに、バイト先は休業していて職がありません。交通手段が限られてきたので、実家に帰ることもできません。いつまで続くかわからないこの状況の中、どれほど頑張っても生活が崩れていく一方です。某大学では、学生一人ひとりに支援金が給付されると聞きました。私が通う大学でも何かしら、対策を取っていただきたいです。」

「アルバイト先(観光客向けの飲食店)が現在休業中で、おそらく緊急事態宣言が解除されない限り休業を続ける、とのことです。普段であれば月5万円ほどあるはずの収入が、もうほとんどお金が入ってこない状況です。今は親の仕送りと奨学金(毎月の家賃の分)と貯金で生活しています。休業補償があるとの連絡もバイト先から来ませんし、政府から10万円給付されるとしても、心許ない状況です。ただ、この状況であえてスーパーやコンビニで働き始めるというのも、正直、感染リスクを高める行動のように思えて、躊躇しています。しかし6月ごろになっても事態が変わらない(バイト先が再開せず休業補償も出ない、授業も開始しない)のであれば、そのようなところで働くしかないと最近は思い始めています(雇ってくれるかは別ですが…)。」

■大学への要望
「親元を離れて生活しており、今まで居酒屋でのアルバイトの収入月15万円程と奨学金で、学費含む身の回りのお金の全てを賄ってきました。現在は、コロナの影響でアルバイト先が休業になり、6割の休業補償はあるものの、今後は大幅に収入が減る見込みで、後期以降の学費支払いの目処が経ちません。奨学金は4年間で550万円程を借りていますが、返済が不安なため増額は希望しません。また、新しいアルバイトも決まらなく、このような状況が続けば、大学を退学、休学することも視野に入れて考えなければなりません。私の大学は特に、一人暮らしの友人が多く、親からの支援も限りがあるようで、皆、生活に困り始めています。せめて施設維持費等だけでも、納入金の減額や、一人暮らしの大学生を支援するような制度が出来てくれればいいなと、思います。」

「どこにもマスクは売っていないのに、マスクが無いと対面授業を受けられなかったり、大学内の施設を使うことが出来なかったりすることや、寮のWi-Fiは電波が弱く全く繋がらないのに、遠隔授業に対応できる寮のWi-Fiへの対策を大学が取ってくれないことに憤りを感じています。大学からの連絡が遅く、こちらが行動に移るまでに時間がかかります。大学のホームページに最新情報を載せるのなら、更新情報をその都度メールで知らせて欲しいです。」
「浪人を経て、夢にまで見た大学に合格したのに、このような形で大学に通わずに講義を受けることがままならなくなったのは非常に残念です。大学では、学びだけでなく、友人とのコミュニケーションも大切にしたいと感じているので、それができない現状の大学生活は満足できているものであるとは断言できません。今後の予定についても見通しが立たず、不安です。一方で大学の方はオンライン授業など、対策を取ってくださり、最低限、学びだけでも出来る環境を整えてくださることに感謝しております。」

■絶望の声
「酒と薬(睡眠薬)がやめられません。感染症に対して不安だと名目上そう言っていますが。本当は早急に命を絶ちたいです。誰か本当に助けてほしい。だけれど助けてくれる人がいません。苦しいです。涙が止まりません。」   (文=木村誠/教育ジャーナリスト)

●全国大学生協連の緊急!特設サイト

木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。


大学生、7割がアルバイト収入減 京都の学生団体がコロナ影響調査
京都新聞 2020年5月9日
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、京都府内の大学生らの約7割がアルバイト収入がなくなったり減ったりしているとの調査結果を、学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE京都」がまとめた。学生への経済的支援などを求める提言書と合わせて京都市に8日提出した。
 調査は4月21日~5月2日にインターネット上で実施。府内の大学や短期大、専門学校に通学する学生から390件の回答を得た。

 バイト収入は「減った」が38・2%、「ゼロになった」が29・2%だった。バイトの有無については44・1%が「なくなった」または「やりたいが見つからない」と答えた。保護者の収入減もあって退学や休学を考えている学生は24・7%に上った。新たに各校で始まるオンライン授業については33・1%が「経済的負担が増える」と回答した。
 メンバーは中京区の市役所で担当職員と懇談。学生への一律給付金の支給や授業形態の変化に伴う諸問題への支援、学生専用の相談窓口の開設などを求めた。
 同団体事務局の立命館大4年小島あずみさん(22)は「調査を通じ学生の大変な実情が明確になった。市は国などにも働き掛け、学ぶ権利を守ってほしい。調査は今後も続ける」と話した。


学生2割、新型コロナで中退検討 影響深刻化―団体調査
時事通信 2020年04月30日
 学生団体「高等教育無償化プロジェクト」は30日までに、新型コロナウイルスの影響で退学を検討している学生が20.3%に上るとするアンケート結果を発表した。同団体が22日に公表した中間報告の7.8%から大幅に増加。学生を取り巻く経済的な状況がより深刻化していることが浮き彫りとなった。

 調査は全国の大学生や短大生、大学院生らが対象。インターネットを通じ、9~27日までに1200人が回答した。
 それによると、自身のアルバイトや親の収入減で退学を「大いに考える」と答えた人は4.8%、「少し考える」は15.5%だった。「辞めることにした」と回答した人も0.2%いた。
 アルバイト収入が「ゼロになった」と回答した人は28.5%で、「減った」の39.8%と合わせると7割近くを占めた。親など家計を支える人の収入に何らかの影響があったと答えた人は、53.2%に達した。
 オンライン授業に関しては、8.6%が「パソコンがない」と回答。無線通信Wi―Fi(ワイファイ)の環境がない人は10.5%だった。
 アンケートでは、「バイトがなくなり、親がタクシー運転手でほぼ仕事がなくなった」「親の収入が減り、私も働けない。学費が払えず借金が膨らむなら退学したい」などの声が寄せられたという。 

10- [困窮する学生]を公的責任で学び支えよ(沖縄タイムスほか)

 新型コロナウイルスの影響で圧倒的多数の大学生困窮する中各大学はそれぞれに学生への支援を行っていますが、それだけでは不足でとても解決しません。
 学生の学びを助ける責任は国にあります(安倍政権は大学生の学費を無料にすると公約しなかったでしょうか)。
 教育は国家の根幹です。ここで有為な学生たちを挫折させることが将来の日本に与える被害は計り知れません。
 沖縄タイムス、時事通信ほかの記事を紹介します。
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社説[困窮する学生]公的責任で学び支えよ
沖縄タイムス 2020年5月9日
 「このままでは進学や在学が危ぶまれ、世代ごと未来を奪われる」
 新型コロナウイルスの影響で困窮する大学生が増える中、文部科学省を訪ねた学生団体の代表は、そう訴え、国の予算で学費を半額にするよう求める署名を提出した。「未来を奪われる」との言葉が胸を衝(つ)く。
 今、親の失業やアルバイト先の休業で学費が払えなくなり、学業継続への不安を訴える声があちこちから上がっている。
 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査によると、親の収入減などで退学を考えていると回答した学生は5人に1人に上る。約半数が自身のアルバイト収入が「減った」または「なくなった」と回答。とりわけ実家を離れて1人暮らしをする学生は家賃や光熱費負担が重く、打撃は深刻だ
 大学生の収入を支える3本柱は親からの仕送りとバイト代、奨学金。春休み中のバイトで前期の学費を捻出しようとしていた学生も多く、仕送りとバイト代が細る中、奨学金を借り続けることへの不安もつきまとう。
 生活が立ちゆかなくなった大学生らによる学費減額運動は全国に拡大している。 
 給付金や授業料納付の猶予といった独自支援に乗り出す大学があるとはいえ、学費減免には踏み込んでいない。少子化で財政事情が厳しい大学も多く、学校側の自助努力にも限界がある。
 求められるのは、学びの継続を支援する国主導の取り組みだ。
■    ■
 安倍晋三首相は緊急事態宣言延長を表明した4日の記者会見で、アルバイトが減り困窮する学生の支援に向け、追加経済対策をまとめると明言した。
 政府は当初、給付型奨学金や授業料納付猶予の活用などを呼び掛けていたが、アルバイト学生への支援を強く求める野党に歩み寄りを見せた形だ。
 立憲民主党などの野党会派は、授業料減免と一時金支給を柱とした学生支援法案を国会に提出する準備を進めている。
 貧困問題を深刻化させた2008年のリーマン・ショックを超える急激な景気悪化である。その影響は、困窮世帯に限らず中間所得層まで及び、将来に不安を抱く大学生が多い。
 具体的な制度設計を急ぎ、学費の減免を含む幅広い支援を求めたい
■    ■
 大学生同様、追い込まれている高校生がいることも忘れてはならない。
 県が16年に実施した高校生調査で、困窮世帯の生徒の半数近くがアルバイト経験があり、生活費や学校にかかる費用を自ら稼いでいた。
 このまま高校生活を続けられるか、1人悩んでいる生徒がいるのではないか。
 経済協力開発機構(OECD)加盟国で、日本の教育に関する公的支出の低さが指摘されてから何年もたつ。
 学生たちの苦境はこうした問題とも深く関係している。教育における公的責任が問われている


独自の学生支援策、100校超 一律給付、授業料返金
専門家「大学だけでは限界」
時事通信 2020年05月01日
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮する学生のため、独自の経済支援策を講じる大学が4月30日時点で100校超に上ることが1日、時事通信の集計で分かった。オンライン授業の通信環境整備費や生活費補助、学費の一部返金など多岐に及ぶが、専門家は「大学だけの財源では限界がある」と、国の支援を訴えている。

 集計によると、オンライン授業に必要なパソコンやタブレット、通信環境などの整備費として全学生に一律で支援する大学が約70校に上る。金額は1万~5万円が多いが、中には10万円を一律で配る大学もある。
 独協大はオンライン授業の負担軽減策として、全学生約8600人に10万円を給付する。同大では5月から始まるオンライン授業に向けた調査で、4割の学生は通信環境が整っていないことが判明。迅速な対応が必要との判断から一律給付を決めた。
 広島大では、困窮する学生に3万円を給付。4月28日までに60人程度の申請があり、「当面の食べ物を確保してもらいたい」(同大担当者)として振り込みを始めた。原資は大学の基金を活用するが、不足分を補うため寄付を呼び掛けている。
 学費の一部返還を決めた大学もある。京都芸術大は、4~5月分の施設費の約8割を返金。同大担当者は「学内で創作活動に励む学生に影響が出ており、オンライン授業にも限界がある」と芸術大ならではの苦悩を明かす。
 早稲田大では、一律ではないものの生活苦の学生に10万円を給付。慶応大は通信機器を自前で準備できない学生へ1万5000円を補助する。
 一方で学費の減額に応じる大学は少ない。一律6万円給付を決めた芝浦工業大の担当者は「大学ではオンライン講義の環境整備などに注力しており、学費の一部も充当されている」と説明する。
 桜美林大小林雅之教授(高等教育論)は「特に私立大の収入源で授業料は大きなパイを占めている」と指摘。「比較的余裕のある大学とそうではない大学で、支援内容に格差が生じてしまう」として、予算措置などを通して国が大学を支援する必要性を強調した


「これ以上借金できない」コロナで困窮…学生たちを救え
西日本新聞  2020/5/9
 バイト先休業、親の収入減…就活も中断
 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、アルバイト先の休業や、親の収入減により大学生の生活が困窮している。やむなく退学を検討する学生が2割に及ぶという調査もあり、大学側に支援を求める署名運動が広がりをみせている。

 福岡大商学部4年の太田克成さん(22)=福岡市城南区=は8日、大学側に学費の減免や、パソコン室などの設備利用費の返還を求める約700人分の電子署名をメールで提出した。会員制交流サイト(SNS)を通じた署名呼び掛けに応じた学生らからは「お金がなくて勉強を諦める。考えただけで悲しくなる」との声も寄せられたという。

 「学生の声に耳を傾け、せめて話し合う機会をつくってほしい」と訴える太田さん自身、アルバイトができなくなり、生活のめどが立たなくなった。
 1人暮らしのアパートの家賃や生活費のため、親からの仕送り月2万円と、インターネットカフェでのバイト代月8万円を充ててきた。ところが緊急事態宣言でネットカフェも休業要請の対象となり、バイト先からは「しばらく休業する」と連絡が入った。急きょ別の仕事を探したものの、居酒屋や飲食店はどこも厳しく、新たなバイト先は見つからなかった
 福岡大は家計が急変した学生向けに複数の貸与型奨学金を紹介したが、太田さんは学費のため既に毎月6万円の奨学金を借りており「これ以上、借金を増やせない」。中高生のきょうだいが3人いるので家族に新たな経済負担はかけられない。4月中旬、岡山県の実家に戻らざるを得なくなり、就職活動も中断している。志望はITや広告関連の福岡市の企業。しかし企業説明会は次々と中止になり、採用そのものを取りやめる企業もある。内定は獲得できないまま。「予想もしなかった事態で将来は不安ばかり」とつぶやいた。

 西南学院大2年の米村大吾さん(19)=福岡県那珂川市=も学費減免を求め、オンラインの署名活動を始めた。4月28日の開始から、既に530人以上の署名が集まった。
 西南学院大は、家計に打撃を受けた学生、大学院生らを対象に上限6万円を給付する「緊急支援給付奨学金」を発表した。それでも、視界は晴れない。米村さんは「新型コロナの影響が長引けば6万円ではとても足りない。支援は1度だけなのか」と漏らした。

 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」(東京)が実施したアンケートの中間集計(4月9~27日)では、回答した319校の大学生ら1200人のうち「バイト収入が減った」「ゼロになった」が合わせて約7割に上り、5人に1人が退学を検討していた。事務局を務める一橋大2年の木村和貴さんは「大学単独の支援では財源に限りがある。国が積極的に支援するべきだ」と話した。(山下真)


学生支援法案 週明けにも提出 田村政策委員長表明
しんぶん赤旗 2020年5月9日
 日本共産党の田村智子政策委員長は8日、国会内で記者会見し、学生が新型コロナウイルスにより学業でも生活でも深刻な影響を受けるもとで、週明けにも野党として学生支援法案を提出したいと表明しました。
 田村氏は、野党共同でオンラインなどで学生から意見を聞き、これらを反映した法案だと報告。すべての大学生、短大生、大学院生、専門学校生を対象に授業料を一律半額にして国が肩代わりするとともに、アルバイトの収入減がある場合、20万円を上限に給付金を出すことでまとめていると語りました。
 その上で、学生の実態アンケートで5人に1人が大学退学を検討していることを指摘し「“辞めなくていいよ”とするには、緊急に負担が大きい授業料を半額にするのは当然だというのが日本共産党の見解だ」と語りました。

 学費減額を求めて、207大学(5月1日時点)で学生の自主的な署名行動が取り組まれていることに言及。一方で、学生が大学キャンパスに立ち入ることができないとして、「本来の学びができていないときに、授業料を全額、学生に負担させるのか。オンラインなどで大学が頑張っていることも分かるが、本来の学びではない。大学の中に入って議論ができる、図書館が使えるなど、本来の学びができないときに国がどうするのかが問われる」と述べました。
 田村氏は、共産党として高学費問題の解決を提案してきたとして「非常に重すぎる学費負担、アルバイトをしなければ学生生活が成り立たないという事態も、これを契機に見直すことが必要だ」と強調しました。


学費半減、20万支給 野党の学生支援法案
時事通信 2020年05月07日
 立憲民主、国民民主両党などの野党共同会派は7日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済的に困窮する学生を支援する法案の概要をまとめた。学費の半額免除や一時金20万円の支給が柱。8日にも国会へ共同提出したい考えだ。

 同法案は、学費軽減に同意する国内の大学、大学院、専門学校などに通う全学生の授業料を、最大55万円程度を上限に半額免除。免除分は国が負担する。また、アルバイトができなくなった学生には、20万円を上限に減収分を支給する。
 対象期間は1年間で、財源規模は約1兆3000億円を見込む。社会人が支払う奨学金の返還を1年猶予することも盛り込んだ。 

2020年5月9日土曜日

現代っ子に「戦争」が伝わる展示に 戦災資料センター改装

 多くの現代っ子は、あまり日米戦争や東京大空襲などについて知っていません。まして70代以上の人たちのような現実感は持っていません。戦争の事実さえ知らないのは、日本史の授業が大体「明治時代」の辺りで終了してしませいと言われています。

 東京大空襲・戦災資料センター(江東区)の学芸員だちが、「軍国主義ってどういう意味? 高射砲って何?」などと戦後75年の現代を生きる子どもたちが口にした素朴な疑問をヒントに、同センターの大規模なリニューアルを進めているということです
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現代っ子に「戦争」伝わる展示に 東京大空襲・戦災資料センター、若手研究者らでリニューアル
東京新聞 2020年5月8日
 軍国主義ってどういう意味?高射砲(こうしゃほう)って何?戦後75年の現代を生きる子どもたちが口にした素朴な疑問をヒントに、東京大空襲・戦災資料センター(江東区)が大規模なリニューアルを進めている。戦争の体験者が減っていく中、これからのセンターに求められる役割とは―。(文・加藤健太/写真・由木直子)

◆ピンとこない「学童疎開」
 開館から十五年以上がすぎ、展示内容を見直す時期を迎えていた。運営にかかわってきた三十~四十代の学芸員ら五人が中心となり、「活字離れが叫ばれる中、子どもたちに伝えるにはリアルな体験が欠かせない」と時代に合わせた展示内容を模索してきた。
 その象徴が、精巧に作り直した焼夷(しょうい)弾の模型だ。これまでも実際に投下された焼夷弾を置いていたが、ずっしりとした重さ約二・七キロの筒を新たに並べ、燃料が入った状態の重さを体感できるようにした。担当した石橋星志さん(37)は「こんなに重いものが空から降ってきたんだと、手に取ることで想像が深まるだろう」と狙いを語る。
 展示物に添える解説文も中学生が分かるように練り直した。当たり前のように使ってきた用語でも、今の子どもたちにはピンときていなかったからだ。学童疎開もその一つ。「学童疎開の狙いは~」と前置きなしで始まる解説文に、「学童疎開」の説明を書き加えた。
写真
焼夷弾の重さを体感できる展示について話す石橋星志さん。筒は実際の重さと同じ2.7キロある

◆体験者の語りを形に
 リニューアルは、戦争体験者がいなくなる時代も見据えている。センターの主任研究員で法政大准教授の山本唯人さん(47)は「死体が折り重なる写真は悲惨さを伝えてきたが、これは火が収まった夜明けの記録。東京大空襲の瞬間をとらえた写真は少なく、三月十日の未明に人々がどう逃げ惑ったかを知るには体験談を聞くしかすべがない」と指摘する。
 センターでは体験者の証言を直接聞くことができるが、それがかなわなくなる時に備えて、証言集を壁一面に展示した。「二、三十メートルの火ばしらが立ち、それが一度に倒れてくる」などの生々しい言葉が悲惨な光景を想像させる。一九七三年刊行の「東京大空襲・戦災誌」に収録された約百三十人分の体験記を読めるようにし、そのうち空襲時十一~五十歳だった十九人分をパネルにした。

◆地元の子たちにも
 二〇一七年から四年がかりで進めてきたリニューアル事業は大詰めを迎えている。約四百点あった展示物を半分近くまで減らす一方、QRコードを読み込むことで、展示物のより詳しい情報をスマートフォンで読めるようにした。東京大空襲の被災状況を示す地図は縦二・二メートル、横三・四メートルと以前の倍近くの大きさになり、東は瑞江(江戸川区)、西は青山(港区)の仮埋葬地も含まれるまで対象エリアが広がった。
 入館者数は一四年度の一万四千八百三十八人をピークに、一八年度は九千九百三十三人まで減っている。中学生が最も多いが、実態は他県から来る修学旅行生が大半。そこで、センターがある江東区北砂周辺の街並みを紹介する「砂町の暮らし」のコーナーを新設した。学芸員の比江島大和さん(37)は「地元の子どもたちにも東京の過去に目を向けてほしい」と話した。
 吉田裕館長(65)は若手がリニューアルを主導したことに「彼らは両親や教師が戦争を経験していない世代。体験を継承する意味では意義深い」と語った。
 再オープンは四月四日を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期された。再開時期の見通しは立っていない。

<東京大空襲・戦災資料センター>10万人が亡くなったとされる1945年3月10日の東京大空襲を伝えていこうと2002年にオープンした。開館時に続き、今回のリニューアルでも区民らから多くの寄付が寄せられた。初代館長は作家の早乙女勝元さん。昨年6月に歴史学者で一橋大名誉教授の吉田裕さんが館長に就任した。

2020年4月4日土曜日

難問「ABC予想」を望月京大教授が証明 「歴史に残る成果」

 世界の数学者が30年余り挑戦して解くことができなかった難問、「ABC予想」について、京都大学は数理解析研究所に所属する教授が証明したと発表しました。
 会見に出席した数理解析研究所の教授は「証明したことに間違いがないと言ってかまわない。『ABC予想』は根本的な問題で、証明できたことは非常に大きなインパクトがある」と話しました。
 この分野を専門とする東京工業大学の加藤文元教授は「非常に独創的な新しい論文で、何百年に一回の数学の歴史に残る成果だ」と評価しています。

        関連記事
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難問「ABC予想」京大教授が証明 専門家「歴史に残る成果」 
NHK NEWS WEB 2020年4月3日
世界の数学者が30年余り挑戦して解くことができなかった難問、「ABC予想」について、京都大学は数理解析研究所に所属する教授が証明したと発表しました。専門家は「数学の歴史に残る成果だ」としています
「ABC予想」は、ヨーロッパの数学者が提唱した整数の性質についての難問で、数学における多くの未解決な難題を解く手がかりになるとして、30年余りにわたって多くの数学者が証明を試みてきましたが、これまで成功した人はいませんでした。
京都大学数理解析研究所の望月新一教授(51)は「ABC予想」を証明したとする4本の論文を書き、複数の研究者が審査する数学専門の科学雑誌に掲載されることになったことから、3日、京都大学が会見を開き、望月教授が「ABC予想」を証明したと発表しました。

この4本の論文は、望月教授が1人で築いた新しい理論を使って「ABC予想」を証明したとしていて、8年前に自身のホームページで公表するとともに、科学雑誌の審査が行われていました。
しかし、この論文は従来の数学の概念や理論の枠組みを離れ、全体で600ページという数学としては異例の長さの論文だったため、審査は長期間に及んでいました。
この間、海外の一部の研究者から論文の正しさについて指摘などがあり、望月教授は論文の修正を重ね、今回の掲載につなげたということです。

会見に出席した数理解析研究所の教授は「証明したことに間違いがないと言ってかまわない。『ABC予想』は根本的な問題で、証明できたことは非常に大きなインパクトがある」と話しました。
この分野を専門とする東京工業大学の加藤文元教授は「非常に独創的な新しい論文で、何百年に一回の数学の歴史に残る成果だ」と評価しています。

望月教授 みずから築いた新理論で証明 
「ABC予想」は1985年にヨーロッパの数学者によって提唱された数学の難問です。
「ABC予想」は、1630年代に提唱され、解決までに300年以上かかった「フェルマーの最終定理」や、1850年代に提唱され、150年以上たった今も未解決の「リーマン予想」に匹敵する数学の難問とされ、証明できれば今世紀最大級の成果になるとも言われてきました。
「ABC予想」は、整数の足し算とかけ算の間にある特別な関係を証明することで、整数の性質を明らかにしようというものです。
具体的には正の整数のaとbで「a+b=c」が成り立つ時、a、b、cそれぞれを素因数分解した時に現れる異なる素数をかけ合わせたdとcの間には特別な関係が成り立つことを証明します。
これによって、まだ分からないことが多い整数の性質をとけることにつながるため、これまで多くの数学者が証明に挑んできましたが、誰も成し遂げられずにいました。
今回、望月教授は、「宇宙際タイヒミュラー理論」=「IUT理論」と呼ばれる新しい理論を1人で築き、この理論を使って「ABC予想」を証明したということです。
「IUT理論」は前提となる概念から独自に作り出すなど、これまでの数学とは全く異なる枠組みで理論を構成しています。
また、4本の論文全体で600ページという数学としては異例の長さの論文だったため審査は長期間におよび、論文の掲載までにおよそ8年かかりました。
一方で、以前から論文の正しさに疑問を投げかけていた研究者も海外を中心に存在していて、望月教授は自身のホームページなどで、新しい枠組みの議論を一から始めて、一つずつ受け入れてもらいたいとしています。