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2019年11月19日火曜日

憲法カフェ@秋の集会(田中淳哉弁護士)

 今回紹介する田中弁護士のブログは、新日本婦人の会 上越支部の「2019・秋の集会」として10日に開かれた憲法カフェの報告です。上越支部では5年前には奥様の篤子弁護士が講師をされたということです。
 淳哉弁護士は、「憲法改正をめぐる情勢」からはいって自民党の憲法改正の4項目を説明した後、9条の改正について詳しく説明されたということです。
 そして上越支部から事前に出されていた「国民投票になったらおしまいではないか」や「憲法について議論するのはよいことだと言われたらどう答えたらよいか」など5項目にわたる質問事項についてお話されたということです。

 記事中の青字強調部分は原文に拠っています。
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憲法カフェ@秋の集会
田中淳哉弁護士 2019年11月17日
5年前の篤子弁護士に引き続き11月10日(日)、新日本婦人の会上越支部の「2019・秋の集会」にお招きいただき、憲法カフェをしてきました。5年前の秋の集会では、篤子弁護士がお招きをうけて講師をさせていただいています

当初のご依頼は「憲法改正や国民投票法についてお話して欲しい」というものでした。ただ、みなさん基本的なところは既に理解していらっしゃるのではないかと思ったので、「もう少し具体的にどういう点について聞きたいのか、うまく説明できないところや、実は疑問に感じているところなどを話し合ってみてもらえませんか。」とお願いしました。その後、役員会での議論を経て事前に質問項目を送ってくださいました。

 【会場全景】

当日参加された方は60人くらい。男性の方や若い世代の方もいらっしゃいました。前日に申し込みされた方もいらっしゃったとのことです。

お話の概要
お話した内容は、こんな感じ。
最初に憲法改正を巡る状況を確認し、憲法改正4項目の内容を説明したうえで、事前にいただいた質問項目に答えるという流れにしました。

1.憲法改正をめぐる情勢をどう見るか
2.憲法改正案の内容
  ・9条改正の問題
  ・その他の3項目
3・事前にいただいた質問項目から
・国民投票になったらおしまいではないか
・憲法について議論するのはよいことだと言われたらどう答えたらよいか
・安倍総理はどうしてそこまで憲法改正に固執するのか
・野党各党の憲法改正に対する姿勢は?
・表現の自由や報道の自由が危機的な状況にあると思われるがどう見るべきか?

憲法改正をめぐる情勢
閣僚や自民党の役員人事は憲法改正を目指す体制となっている。「2020年までの憲法改正」という目標を達成することはスケジュール的にかなり厳しくなっているが、各地に支部をつくり集会を開催するなどしており、草の根で世論を広げようとしている。

「いつ国民投票になるかわからないので緊急に声を広げなければならない」というような短期の取り組みが必要な状況から、「中長期の展望を持ちながらしっかり関心や理解を広げていくべき状況」へと変わってきているのではないか、というようなことをお話しました。

自衛隊の憲法明記~3つの注意点
憲法改正の内容のところでは、4項目について簡単に触れたうえで、9条の改正について詳しくお話しました。そして安倍総理がしきりに繰り返している「現にある自衛隊を書き込むだけなので何も変わらない」という話には、注意すべき点が3つあると指摘。

1つめの注意点
1つめは、「現にある自衛隊」がどういう自衛隊かということ。安保法制がつくられたことで自衛隊の姿は大きく変わっている。災害のときに助けてくれる、日本が攻められたときに守ってくれるということに加えて、海外で武力行使できる自衛隊になっている。法律によって任務や権限が変わったことに対応して、組織編成も、装備も大きく変わっているということを具体的に紹介しました。

 【資料画像】

2つめの注意点
2つめは、「自衛隊を書き込むだけ」ではないということです。
自民党の条文イメージたたき台素案では、「必要な自衛の措置」をとることができるとされています。

 【資料画像】

この「自衛の措置」には、集団的自衛権の行使も含まれます。政府は、安保法制の国会審議において、フルスペックの集団的自衛権ではなく限定的な集団的自衛権だから濫用のおそれはないなどということを繰り返し主張していましたが、このような憲法改正がなされればフルスペックの集団的自衛権の行使が認められることとなります。つまり、この憲法改正案は、「自衛隊を書き込むだけ」のものではなく、自衛隊の権限を広げるものとなっているのです。

3つめの注意点
3つめは、憲法に自衛隊を書き込むと、自衛隊のあり方は大きく変わらざるを得ないということです。

自衛隊は、創設以来ずっと「憲法に違反するのではないか」という疑念の目を向けられ続けてきました。憲法は、あらゆる局面で自衛隊に対するブレーキ(歯止め)の役割を果たしてきた訳です。しかし、自衛隊が憲法に明記されれば、憲法違反ではないかとの疑念は生じにくくなり、ブレーキとしての機能はほとんど失われてしまいます。逆に、憲法上に根拠を有する組織として、権威を持つ様になります。つまり憲法は、自衛隊に対するブレーキ(歯止め)から、アクセル(権威の根拠)へと変わるのです。

事前にいただいた質問について
事前にいただいていた質問項目は5つです。おおむね以下のように答えました。

国民投票になったらおしまいではないか
国民投票法にはいろいろな問題点があるが、「おしまい」という表現には若干のひっかかりを覚える。「憲法改正されてしまう」という意味で言っているのであれば、そのような言葉遣いは避けた方がよいのではないか。

国民投票法の問題点は、民意が正しく反映される保障がないこと、民意がゆがめられてしまうのではないかという点にある。この点は憲法改正に賛成という立場の人も含めて賛同してもらえるはずのこと。しかし問題提起の仕方を誤ると、「憲法改正させないために言っている」ように聞こえてしまい、理解が広がらないと思う。

憲法について議論するのはよいことではないかと言われたらなんと答えたらよいか
「憲法について議論するのはよいこと」であるというのはまったくその通り。今日のような学習会もそういう場である。国民レベルではいろいろな立場の人同士が議論して理解を深めることは望ましいことだと思う。

ただ、政府や与党議員が「議論するのはよいことだ」「議論すらしないのはおかしい」などと言っているのを真に受けることはできない。彼らはこれまで、議論を途中で打ち切って強行採決をしたり、憲法の規定に基づく国会の開催要求に応じなかったり、参議院規則に基づく予算委員会開会要求に応じなかったり、安保法制の審議中は憲法審査会での議論を行わなかったりということを繰り返してきた人たちだから。過去の言動に照らせば、本当に議論しようとしているとは思えない。

 【説明の様子の写真】

安倍総理はどうしてそこまで憲法改正に固執するのか
合理的な理由や必要性は見当たらない。悲願をなし遂げたいという個人的な思いだけなのではないか。コアな支持者向けに掲げた旗を降ろすことができないという事情もあるだろう。

野党各党の憲法改正に対する姿勢
憲法改正に対する野党の姿勢は、各党それぞれ。大筋で一致しているのは「安倍政権の下での憲法改正には反対する」という点くらい。

注意して欲しいのは、政党に対しても個人に対しても、護憲派・改憲派という区分けをしたり、レッテル貼りをしたりすることは有害無益だということ。自民党がやっているのは改憲というより壊憲。それに対置されるのが立憲。強いて区別するとすれば壊憲か立憲かという線の引き方になる。こういう線引きをした場合、野党はもちろん、公明党や自民党の一部とも協力することができるのではないかと思う。

表現の自由・報道の自由の危機的な状況
あいちトリエンナーレの問題、やじ排除の問題など表現の自由 に関わることだけではなく、「公文書クライシス」と言われるような状況、関西電力の原発マネー環流問題、閣僚や議員の相次ぐ失言など、数え上げればきりがないほど多くの問題がある。それらの問題それ自体もそうだが、そうした問題に対する呆れや諦め、慣れのようなものが蔓延していること、人々の感覚が麻痺してきて社会全体がモラルハザードに陥りかけていることがより深刻だと感じる。1つ1つの問題について事の本質をしっかり捉えて社会に発信していくことが重要だと思う。

きめ細かい対応に感謝
終了後にもいろいろな企画が予定されており、そちらにもお誘いいただいたのですが、予定が詰まっていたので、お弁当と子ども達用にたくさんのお菓子をいただいて帰路につきました。持っていった書籍をいったん預かって販売して下さったので多くの方にご購入いただくことができました。事前に質問項目をあげて下さったことも含めて、主催者の方のきめ細かい対応がありがたかったです。

「全国 首長九条の会」結成 現職及び元首長131人

 自治体の現職の首長や首長経験者が「全国首長九条の会」を結成し17日、東京都内で集会を開きました。
 結成総会には250人が参加し、「憲法と地方自治を踏みにじる行為に反対する。住民と力を合わせて運動を進める」とのアピール(下掲)を採択しました。
 17日現在で現職13人を含む131人が賛同・呼びかけ人に参加しました。
 宮城県で2008同種の首長の会が結成され、14年までに東北六県に拡大し、全国の会につながりました。
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9条守れ 首長ズラリ 一点で協力 「会」を結成
しんぶん赤旗 2019年11月18日
 自治体の首長とその経験者による「全国首長九条の会」の結成のつどいが17日、都内で行われました。17日現在で現職13人を含む131人が賛同・呼びかけ人に参加。全国の首長が所属や立場、信条の違いを超えて「9条守れ」の一点で力を合わせる画期的な動きです。安倍晋三首相と日本会議が改憲に執念を燃やすなか、全国首長9条の会は草の根の運動と連携し、「憲法9条擁護」の運動、世論づくりをすすめるとしています。結成総会では共同代表などの役員を選出し、規約と活動方針、アピールを採択しました。

 東北6県市町村長九条の会連合・共同代表の川井貞一氏(元宮城県白石市長)があいさつし、全国首長九条の会の発足経緯などを紹介。「市民の安全・安心を守るのが市長の使命というのが私の政治哲学。しかし、憲法改悪の動きが出てきた。戦争になれば、市民の安全・安心など吹っ飛んでしまう」とし、「草の根運動を展開しながら、改憲を絶対に阻止し、9条を守り抜かねばならない。今日がその出発点だ」と力強く訴えました。

 「九条の会」世話人の浅倉むつ子氏(早稲田大学名誉教授)が「首長九条の会」結成への「期待」を述べ、「憲法9条は私たちにとってまさに“灯台の灯”。いま、戦争という危機を迎えようとしている世界中の人々にとって憲法9条こそ、未来を照らす“灯台の灯”だと信じている」とあいさつ。6人の首長・元首長が「私と憲法」をテーマに発言し、9条への熱い思いと、改憲発議阻止への決意を語り、会場と熱気を交換しました。

 つどいには、玉城デニー沖縄県知事、武村正義元滋賀県知事、嘉田由紀子参院議員・元滋賀県知事らがメッセージを寄せ、250人が参加。結成総会で採択されたアピールで「9条改憲が草の根での攻防に入ったいま、私たち首長九条の会は、全国7000を超える地域、分野の九条の会と歩みを共にし、憲法9条の理念を高く掲げ、これを堅持し実践することをめざして、地域住民の知恵と力に依拠して運動を進めたい」と呼びかけました。

■首長九条の会の役員
【共同代表】川井貞一・元宮城県白石市長、小池清彦・前新潟県加茂市長、松下玲子・東京都武蔵野市長、岡庭一雄・元長野県阿智村長、武村正義・元滋賀県知事、井原勝介・元山口県岩国市長、田中全・元高知県四万十市長、稲嶺進・前沖縄県名護市長
【事務局長】鹿野文永・元宮城県鹿島台町長
【事務局次長】上原公子・元東京都国立市長、矢野裕・元東京都狛江市長

 17日の全国首長九条の会結成総会で確認されたアピールは次の通りです。
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全国首長九条の会結成総会アピール

 全国の地方自治体の首長のみなさん、元職のみなさん、市民のみなさん。

 私たちは、日本国憲法第9条を守り抜くという壮大な目標に向かい、さまざまな垣根を取り払い、「9条を守る心は一つ」「一人の百歩より百人の一歩」を合言葉に、本日その第一歩を踏み出しました。

 全国の住民ともっとも密接な行政機関の長として、住民の生命・財産を守る仕事に携わっている首長とその経験者による「全国首長九条の会」の発足は、「9条を守れ」という国民多数の意思を体現するものであると考えます。各地、各分野で奮闘されている草の根の運動と連携し、平和国家日本を後世に引き継いでいくために、所属や立場、信条の違いを超え、「憲法9条擁護」の一点で手を携えた運動、世論づくりをすすめる所存です。

 参院選が7月に行われ、「市民と野党の共闘」の力で、改憲勢力を後退させ、3分の2の議席確保を阻止しました。しかし安倍首相は9月11日、第4次改造内閣を発足させ、その中で「改憲は自民党が強いリーダーシップを発揮していく」と強調し、9条改憲への並々ならぬ決意を述べ、憲法審査会での改憲提案を狙っています。また、自衛隊のホルムズ海峡周辺中東地域への派遣を強行し、明文改憲を待たずに実質的な憲法破壊をも進めようとしています。

 さらに、自民党は「安倍改憲反対」の国民世論を変え、改憲世論づくりに本腰を入れ、日本会議と連携し全国で改憲集会の開催を進めています。いま、地域、草の根が憲法をめぐる対決の場となっています。

 安倍首相による憲法9条を改変する企ては、地方自治をも蹂躙(じゅうりん)しています。安倍首相は、地方自治体の自衛隊募集業務への非協力を改憲理由の一つに挙げていますが、これは「国と地方は、対等協力の関係」という精神をわきまえない地方自治への挑戦にほかなりません。また沖縄県民の民意を無視し辺野古新基地の工事を強行することは、憲法と地方自治を踏みにじるものです。

 9条改憲が草の根での攻防に入ったいま、私たち首長九条の会は、全国7000を超える地域、分野の九条の会と歩みを共にし、憲法9条の理念を高く掲げ、これを堅持し実践することをめざして、地域住民の知恵と力に依拠して運動を進めたいと決意しています。

 私たちは、安倍首相の9条改憲を発議させないために全力で取り組みます。沖縄県民の民意を無視した辺野古新基地工事をはじめ、憲法と地方自治を踏みにじる政府の行為に反対します。9条擁護の立場に立つ全国首長の交流活動などを展開してまいります。

 全国の自治体首長、元職の皆さま、本会の趣旨に賛同し、ぜひこの一員に加わっていただくことを呼びかけます。また地域住民の皆さまにも本会の趣旨に賛同され、ご支援をお願いするものです。

 9条改憲を阻止し、憲法が生きる日本をめざして住民の皆さまと力を合わせて運動を進めることを重ねて表明し、本会結成にあたってのアピールとします。

2019年11月15日金曜日

AIのリスクと憲法の役割 (田中弁護士の“つれづれ語り”)

 これまで「湯沢平和の輪」には田中淳哉弁護士に2回お出でいただき、有益で興味深い話しをしていただきました。当ブログでは、これまで「田中弁護士のつれづれ語り」を何度か紹介させていただきましたが、この「つれづれ語り」は実は田中淳哉弁護士と奥様の篤子弁護士が共同で(交互に)書かれています。上述の関係もあってこれまで淳哉弁護士に偏ってしまいました。

 今回は篤子弁護士の記事「AIのリスクと憲法の役割」を紹介します(上越タウンジャーナルにご夫妻の写真が載っていますが、美男美女のカップルでいらっしゃいます ^^) 
 
 ところで『上越よみうり』に連載中のコラム「田中弁護士のつれづれ語り」電子書籍化されたということです。僅か100円で全編が読めます。記事の末尾に申し込み方法が載っています。

 本題の「AIのリスクと憲法の役割」に関しては最後の節:「AI時代に求められる憲法議論とは」のところで簡潔に述べられています。
 「プロファイリング技術」というと、TVドラマや読み物で、切れ者の刑事などがそれを活用して成果を挙げるというような認識しかありませんでしたが、A I を使えばほぼ無限に広範囲に、そして完璧に行えることになるのでしょう。勿論その技術は何も「犯人探し」に限定されるものではありません。

 篤子弁護士は「他人に知られたくないようなプライバシー情報がプロファイリング技術で明らかにされ,口には出さない内心の秘密まで暴かれる時代が,もう,すぐそこまで来ている(あるいはすでに来ている)」として、憲法、プライバシー権との関係を議論しなくてはならないとしています。
 詳細は、事務所のHPに写真入りで掲載予定ということなので、そちらを待ちたいと思います。
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つれづれ語り(AIのリスクと憲法の役割)
 田中淳哉・篤子弁護士 2019年11月13日
『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」
2019年11月13日付に掲載された第71回は、「AIのリスクと憲法の役割」です。先日、新潟大学で開催された山本龍彦教授の講演会に参加して考えたことなどがまとめられています。

 【連載コラムの写真版】↓

AIのリスクと憲法の役割

おかげさまで
このたび本コラムが電子書籍化されました上越タウンジャーナルでも大々的に宣伝していただき,周りの方々からも沢山の反響がありました。とても嬉しいです。その直後のコラムで若干緊張気味ですが,肩の力を抜き,これからも書きたいことを率直に書いていきたいと思います。

「AIと憲法」講演会を終えて
さて,先日,本コラムでもご案内していた山本龍彦慶應義塾大学教授による憲法講演会「AIのリスクと個人の尊重~新しい憲法論~」(主催新潟県弁護士会)が開催されました。老若男女,理系文系と様々な方々にお越しいただき,とても有意義な講演会となりました。なんといっても山本教授のお話がテンポ良く,刺激的で,示唆に富んでいて,「こういった深刻なテーマでおもしろいという感想はどうかとも思うが,正直とてもおもしろかったです。」という感想が参加者から出たほどでした。個人的には,新潟大学の21歳の学生さんから,「図書館で山本先生のご著書『AIと憲法』を手に取り,すぐに引き込まれて読みふけったので,新潟で講演会があると知って興奮した。」と言ってもらえたのが嬉しかったです。若い人たちにこそ聞いてもらいたいと,新潟大学との共催で,新潟大学内で開催した甲斐がありました

会場って大事です
余談ですが,今回会場となった新潟大学中央図書館のライブラリーホールなのですが,赤を基調としたセンスの良い内装と階段状の客席から見下ろす形で設置されたステージのデザインが相まって,「TED」カンファレンス(ご存じでない方は検索してみてください)のような雰囲気で,とてもいいなと思いました。講演会の企画ではいつも会場探しに悩むのですが,こんないい場所があったのかと感動しました。上越で公会堂などをリニューアルする折りには,ぜひ参考にしていただきたいです。

AI時代に求められる憲法議論とは
肝心の講演会の内容もお伝えしたいのですが,文字数の関係でとても伝えきれません。詳細は,事務所のHPに写真入りで掲載予定ですので,よろしければそちらも合わせてご覧いただけると幸いです。私がいちばん印象に残ったのは,AIによるプロファイリングの技術が,すでに現時点において,自分の予想を遙かに上回るほど高性能になっているということです。他人に知られたくないようなプライバシー情報がプロファイリング技術で明らかにされ,口には出さない内心の秘密まで暴かれる時代が,もう,すぐそこまで来ている(あるいはすでに来ている)のだと感じました。個人情報の「取得」には本人の同意が必要とされるなどの法規制がありますが,プロファイリングで暴くことについては法規制が手つかずの日本。恐ろしい監視社会が生まれることをどう防ぐのか,プライバシー権など憲法に基づくAIの利用規制に関する議論が今必須なのではないかと感じます。

【田中弁護士のつれづれ語り 本 表紙の画像】↓

『上越よみうり』に連載中のコラム「田中弁護士のつれづれ語り」が電子書籍になりました。憲法に関わる問題についても何度か取り上げています。
販売価格は100円。こちらのリンク先(amazonからお買い求めいただけます。スマートフォン、パソコン、タブレットがあれば、Kindleアプリ(無料)を使用して読むことができます。

2019年11月14日木曜日

14- 憲法審査会の開催に強く反対する法律家団体の緊急声明

 自由法曹団などで作っている「改憲問題対策法律家6団体連絡会」が「改憲案の発議を許さず、安倍改憲のための憲法審査会の開催に強く反対する」緊急声明を出しました。

 国民の中には改憲の要求は全くないに等しく、朝日新聞の世論調査で「憲法改正」を希望する者は3%NHKの世論調査でも「憲法改正」は5%であるという状況のなかで、
安倍政権は、憲法に自衛隊を明記する9条の改憲に加えて、軍事的な緊急事態において国権の最高機関である国会の立法権を奪い、内閣が独裁的に国民の人権制限を行うことを可能にする緊急事態条項」の導入を目指しているとして、現時点における憲法審査会の始動は、安倍政権が進めようとしている改憲の動きを加速させるだけのものになりかねないことから、衆参憲法審査会の開催に断固反対するとしています。

 声明は「自民党改憲案は、我が国を戦争する国に作り変えようとするものである。その発議と国民投票に向けての最初の一歩を踏み出すことは、改憲を望まない国民の意思に反すると確信する」「私たち改憲問題対策法律家6団体連絡会は、自民党改憲案に強く反対する立場から、憲法審査会の開催に断固反対し、改憲手続法改正案の審議・採決にも反対するものである」と結んでいます
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安倍政権が進めようとしている改憲案(4項目改憲案)の発議を許さず、
安倍改憲のための憲法審査会の開催に強く反対する法律家団体の緊急声明
2019年11月12日
          改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター      共同代表理事  宮 里 邦 雄
自 由 法 曹 団            団 長  吉 田 健 一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 北 村  栄
日本国際法律家協会            会 長  大 熊 政 一
日本反核法律家協会            会 長  佐々木 猛 
日本民主法律家協会            理 事 長  右 崎 正 博

はじめに
 安倍首相は、自民党人事刷新にあたり、「必ずや憲法改正を成し遂げる」「新しい時代にふさわしい憲法改正原案の策定に向け、衆参両院で第一党の自民党が憲法審査会で強いリーダーシップを発揮すべきだ」と述べ、臨時国会の所信表明演説では、「令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会ではないでしょうか」と訴えて、自らの任期中に改憲を成し遂げることに強い執念を燃やしている。
 改憲問題対策法律家6団体連絡会は、自民党4項目改憲案に強く反対し、現時点における憲法審査会の始動は、以下のとおり、国会議員の憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に違反し、かつ、安倍自民党政権が進めようとしている改憲の動きを加速させるだけのものになりかねないことから、衆参憲法審査会の開催に断固反対するものである。

1 自民党の4項目改憲案の危険性・・・その狙いは憲法9条の改憲にある
 自民党の改憲4項目は、①憲法9条に自衛隊を明記する、②緊急事態条項の新設、③合区解消、④教育充実、であるが、安倍首相自身が語るように、最大の目的は憲法に自衛隊を明記する9条の改憲である。
 安倍首相は、この改憲によっても「自衛隊の任務・権限は変わらない」などと述べているが、現状と変わらないのであれば改憲など不要なはずである。上記改憲案は、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条2項を空文化し、「必要な自衛の措置」の名目で、憲法違反の安保法制をも超える権限を持つ、無制限の集団的自衛権の行使を憲法上可能にし、自衛隊を通常の「軍隊」・「国防軍」にしようとするものに他ならず、「戦争をしない国」という我が国のあり方を根底から変える危険な改憲案であって、絶対に許してはならない。
 緊急事態条項は、9条改憲とあいまって、軍事的な緊急事態において、国権の最高機関である国会の立法権を奪い、内閣が独裁的に国民の人権制限を行うことを可能にすることものである。大地震などの自然災害の対応についてはすでに充分な法律が整備されており、憲法に緊急事態条項を置く必要性はない。
 合区解消は、投票価値の平等を侵害するおそれがあり、仮に合区に関わる問題の解決が必要であるならば、議員定数や選挙制度の改革など法律改正で解決すれば足りるのであり、改憲の必要性はない。
 教育の充実も、法律や予算措置によって実現できるものであり、改憲の必要性はない。教育格差を是正すべき文科大臣が「身の丈」発言をするような安倍政権の退陣こそが教育の充実につながるものである。

 以上のとおり、自民党改憲案は、我が国を「戦争のできる国」に作り変えようとするところに本質があり、日本国憲法の基本原理である平和主義、国民主権、基本的人権の尊重を破壊するものであって、断じて許してはならない。これが参院選で示された国民の意思であり、このような危険な改憲に踏み出す憲法審査会の開催に応じるべきではない。

2 国民は憲法改正を望んでいない
 今、国民が、憲法改正を必要とは考えていないことは、この間のいずれの各種世論調査からも明らかである。例えば、7月22~23日の朝日新聞の世論調査では、首相に一番力を入れて欲しい政策は「年金などの社会保障」が38%で最も高く、「憲法改正」は3%であった。9月6~8日のNHKの世論調査でも、「新内閣が最も力を入れて取り組むべきだと思うこと」は「社会保障」が28%、「景気対策」が20%に対し、「憲法改正」は5%であった。
 国民は、10月1日からの消費税率10%への増税、相次ぐ台風による大規模災害などに苦悩と不安を抱き、こうした問題の解決にこそ政治の力を求めている。そうした中で、2週連続で経済産業大臣と法務大臣が辞任し、萩生田文部科学大臣の大学入試における民間試験導入による経済的・地域的格差を是認する「身の丈」発言をきっかけに世論の激しい批判を受けて、英語民間試験の導入を延期せざるを得なくなるなど、安倍政権そのものが根底から揺らいでいる。
 このような情勢下にある臨時国会において、国民は憲法改正論議を進めることなど全く望んでいないことは明白である。
 憲法改正は、「国民のなかから憲法を改正すべしという世論が大きく高まってきて、国民的なコンセンサスがそういう方向で形成されることが必要である」(1980年11月17日政府統一見解)。
 国民の支持がないままに、「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)を負う首相や国会議員が改憲議論を主導することは、明らかな越権行為であり、憲法尊重擁護義務に違反する。

3 与党提出の改憲手続法改正案の審議について
 自民党の森山国会対策委員長は、11月9日鹿児島市で開かれた会合であいさつし、与党提出の改憲手続法改正案について、「公職選挙法に基づいて国民投票法を改正しようということなので、ほとんどの与野党は議論がないと思う。」「何としても審議し、結論を出してもらいたいと強く思う」と述べ、今臨時国会で成立を目指す考えを重ねて強調した。
 与党提出の改憲手続法改正案は、2016年成立の改正公職選挙法の内容にそろえて国民投票環境の改善を目指すと説明されている(いわゆる「公選法並びの」改正案)ものであるが、投票環境の後退面も含まれるほか、何よりも、テレビ、ラジオ、SNS等による国民投票運動の有料広告の規制について検討がなく、現行法の持つ「国民投票をカネで買う」危険が全く考慮されていないという本質的な欠陥がある改正法案である。そのほかにも、公務員・教育者の国民投票運動をめぐる不当な規制の問題や最低投票率の問題など、極めて多数の問題が解決されていない。これらの問題点の抜本的な議論と見直しのないまま改憲手続法改正案を成立させることは許されない。

 さらに、我々法律家6団体は、憲法審査会を開き改憲手続法改正案を審議・採決すること自体にも反対する。なぜならば、自民党公明党は、これまで数の力を恃んで憲法違反が指摘される多くの問題法案の強行採決を繰り返してきた。憲法審査会において改憲手続法改正案の審議に進めば、重大な欠陥法案である与党案の採決が強行される可能性も否定できない。野党が、与党提出の改正案の議論に応じても、自民党が抜本的な手続法改正の議論に真摯に応じる保障はなく、任期中の改憲を目指す安倍自民党は欠陥改正法案を多少の手直しで強行採決し、自民党改憲案の実質議論に突き進もうとすることは目に見えている。欠陥改正改憲手続法を成立させることは、自民党改憲案が憲法審査会に提示される道を開き、改憲発議、国民投票への道を開くものというべきである。
 自民党改憲案は、我が国を「戦争する国」に作り変えようとするものである。その発議と国民投票に向けての最初の一歩を踏み出すことは、改憲を望まない国民の意思に反すると確信する。
 
 以上のとおり、私たち改憲問題対策法律家6団体連絡会は、自民党改憲案に強く反対する立場から、憲法審査会の開催に断固反対し、改憲手続法改正案の審議・採決にも反対するものである。

2019年11月9日土曜日

安保法制判決 司法は本質を直視せよ

 司法は何故 違憲立法審査を徹底的に忌避するのでしょうか。
 安全保障関連法は違憲で、施行により精神的苦痛を受けたとする訴訟に対して東京地裁が7日に下した判決は、またして「原告に損害賠償で保護すべき利益はない」として、門前払いするものでした。立証に不可欠な証人尋問も認めなかったことは、端から棄却ありきの考えだったからとしか思えません。
 「原告に損害賠償で保護すべき利益はない」という文言は勿論、「平和的生存権は具体的権利保障するものではない」の表現も、あるいは「具体的な危険が発生したとは認め難い」と言い立てるのも、いずれも理解に苦しむものばかりです。「合憲」と言えないものの、訴えを却下するために尤もらしいことを並べ立てたとしか思えません。それにしても到底納得できるものではありません。
 「原告の精神的苦痛は義憤ないし公憤。法的保護を与えられるべき利益でない」に至っては、もはや偏見・暴論の類で言葉を失います。判事とは実際に戦争が勃発するまでは危険性は皆無と思う人種なのでしょうか。

 東京新聞と北海道新聞の社説を紹介します。
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【社説】安保法制判決 司法は本質を直視せよ
東京新聞 2019年11月8日
 安全保障関連法は「違憲だ」とする集団訴訟で東京地裁は訴えを退けた。ただ合憲とも言わず憲法判断を避けたのは、問題の本質を直視しない表れではないか。司法の消極主義は極めて残念だ。
 ピストルの例え話をしよう。銃弾が発射され、標的の人に向かって飛んでいる。それを超スローモーションで見たら…。確かに銃弾は空中にあるので、その時点では人には何ら被害は起きていない。しかし、危険は刻一刻と迫り、いずれは人に命中する

 二〇一四年に政府は従来の解釈を一転させ、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をした。それに基づき安保法制がつくられ、一六年に施行された。事実上の解釈改憲であり、大多数の憲法学者から当時、「違憲」「違憲の疑い」と指摘された。
 安保法制は野党や国民からも「戦争法案」と呼ばれ、「戦争ができる国」へと変質しているとの声が上がった。元内閣法制局長官は別の裁判所で「丸ごと違憲」と証言している。
 確かにかつての「専守防衛」の枠から逸脱する防衛力が装備されつつある。自衛隊の任務も変わりつつある。
 例えば海上自衛隊の護衛艦「いずも」は事実上の空母に改修され、F35B戦闘機が搭載予定だからだ。これは憲法九条下で保有できないとされてきた攻撃型空母の機能を果たしうる。

 防衛費も二〇年度の概算要求は約五兆三千二百億円と過去最大規模に膨らむ。軍事大国化はもはや懸念の域を超えつつある。中東で米国が求める有志連合には加わらないが、自衛隊がいずれ中東地域に派遣され、近くの米軍艦船が攻撃されたら、自衛隊は紛争に巻き込まれる恐れはないか。交戦状態にならないか。閣議決定以来、なし崩し的に事は進み始めている。

 全国二十二の地裁で起こされた訴訟だ。東京の原告は実に約千五百五十人。みんなが迫りくる“ピストルの弾”という危険におびえている。札幌地裁に続き、今回も判決は「原告の精神的苦痛は義憤ないし公憤。法的保護を与えられるべき利益でない」と一蹴した。だが、この訴訟の本質は、安保法制に対する憲法判断を迫ったものだ。
 それに応答しない判決は肩透かし同然である。ならば「合憲」と言えるのか。違憲なら止めねばならぬ。その役目は今、司法府が負っている。裁判官にはその自覚を持ってもらいたい。


社説 安保法制判決 憲法判断回避は無責任
北海道新聞 2019/11/08
 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法に違反するものだとして、約1500人が国に損害賠償を求めた集団訴訟の判決で、東京地裁はきのう原告の請求を退けた。
 全国22地裁・支部で提訴された同種の集団訴訟のうち2件目の判決で、今年4月の札幌地裁判決に続く原告側敗訴となった。
 原告は、安保関連法施行で平和的に生きる権利を侵害されたと主張したが、判決は法的保護を与えられる利益とはいえないと判断。憲法判断をすべき理由がないとして請求を棄却した。
 行政や立法府が憲法を守らない場合、司法はそれを是正する役割を担う。最高裁が最終的権限を有する違憲立法審査権は、そのためにある。
 立証に不可欠な証人尋問も認めなかった東京地裁の判決は、門前払いに等しい。これでは憲法を巡る審理の深まりは期待できない。

 安保関連法を巡っては、「日本を取り巻く安全保障環境の変化」という薄弱な根拠で、憲法9条を実質的に骨抜きにする憲法解釈の変更を行った
 極めて違憲性が強く、廃止するのが筋だ。
 三権分立の根幹が問われる重要な局面で憲法判断を回避した東京地裁の判決は、司法の責任の放棄と言わざるを得ない

 東京地裁判決は、安保関連法の施行で、日本が反撃されたり、テロの対象となったりする危険が増したという原告の主張について、具体的な危険が発生したとは認めがたいとして退けた。
 憲法判断は、具体的な権利の侵害が審理の対象となるとされ、抽象的な訴えでは中身の検討に入らないことが多い。
 しかしながら、「戦争は繰り返したくない」という空襲体験者やテロ攻撃などの巻き添えを恐れる米軍基地周辺住民の不安は、果たして具体性を欠いた訴えだっただろうか。
 高度に政治的問題は司法審査になじまないとして、憲法判断を避ける「統治行為論」も影響したとみられる。
 前橋地裁や横浜地裁の訴訟で証人尋問に臨んだ宮崎礼壹元内閣法制局長官は、安保関連法について「長年の政府解釈や国会議論に反しており、違憲だ」と述べた。
 その事実だけでも憲法判断を行う理由になるのではないか。
 立憲主義が問われている今こそ、司法が憲法判断と向き合うべきだ。