2022年2月28日月曜日

吉村知事が「高齢者の生活圏がー」論の根拠を会見で追及され逆ギレ

 大阪府の新型コロナの死亡者が国内でダントツであることについて、吉村知事は昨年「大阪は高齢化率が高い」だの「3世代同居率が高い」だのと主張しましたがそれらは実際のデータ否定されました

 すると今度は根拠を示すこともなく「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます」と言い出しました。しかしそれも同様に実際のデータと整合していません(日刊ゲンダイ2月27日)。
 これについて毎日新聞の記者から「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近い」ことの真偽と府の担当部署の共通認識なのかについて問われると、吉村氏は逆切れしたということです。
 今後どこまで死者数が増大するのかも見極められない中で、もっともらしい言い訳を口にして、自ら(維新)の失政を誤魔化そうとするのは卑怯です。
 LITERAが取り上げました。併せて日刊ゲンダイの記事を紹介します。
  お知らせ
 3月1日・2日は雪下ろしと雪片付けのため記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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死者最多の大阪・吉村知事が「高齢者の生活圏がー」論の根拠を会見で追及され逆ギレ なら何も言わないと会見拒否ちらつかせ
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 再び増加傾向に転じる可能性が指摘されるなど、まったく収束の見込みが立っていない新型コロナ第6波。とりわけ、全国トップの死亡者を出している大阪府は、22日に過去最多となる63人の死亡者数となり、昨日26日も49人と最悪の状況がつづいている
 だが、そんななかで最高責任者である吉村洋文知事は、記者から受けたごく真っ当な指摘にキレまくり、「会見拒否」さえ口にしはじめたのだ。
 問題が起こったのは、22日におこなわれた囲み会見でのこと。この場で、在阪メディアのなかでは唯一と言ってもいいほど吉村府政の検証をおこなってきた毎日新聞の記者が、吉村知事のある発言を取り上げた。
 その発言とは、吉村知事が生出演した読売テレビのバラエティ番組『あさパラS』(19日放送)でのもの。本サイトでも紹介したように( https://lite-ra.com/2022/02/post-6163.html )、この番組で吉村知事は責任逃れの発言を何度も繰り広げたのだが、そのなかで、東京都を上回る死亡者が大阪府で出ている問題について、吉村知事は「明確にこれが理由だというのは専門家すらもわからないというのが現実」などと言いつつ、こんな話をはじめた。
「ただ、われわれ現場で見てると、じゃあどういう状況が起きているかっていうと、やっぱり明らかに高齢者の方が重症化しお亡くなりになってる。高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます。職場もそうだし、生活もそうだし、もともと大阪は狭いところに高齢者の施設もたくさんあるし」
 大阪で死亡者が多いのは、感染を抑え込む施策を打たなかったことによって人口比で東京を上回る新規感染者を出してきたことや、保健所機能を抜本的に強化しなかったことによってまたもパンクし不全状態に陥っていることなどが指摘されている。つまり、吉村知事の失策がこれほどの死亡者を出す原因になっているのだ。にもかかわらず、吉村知事はさんざん「大阪は高齢化率が高い」だの「3世代同居率が高い」だのと主張し、これらが否定されると、今度は根拠を示すこともなく「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます」と言い出したのである。
 ようするに吉村知事は、自身の責任逃れのために、公共の電波を使って、またも根拠もなく詭弁を弄したわけだが、22日の囲み会見では、毎日新聞の記者がこの発言を取り上げ、「どなたが発言されているんでしょうか?」と質問。すると、吉村知事は「これは僕自身がそういった考え方もあるということで発言しているということ」などとごまかしはじめたのだ。
 こうしたごまかしは日常茶飯事ではあるが、しかし、毎日新聞の記者は「専門家からそういうひとつの仮説みたいなのを指摘されたわけではない?」「どなたですか?」と更問い。対して吉村知事は「……ちょっとそこは確認します」と逃げたのだ。
 だが、それでも毎日新聞の記者が「大阪府の対策本部会議の委員の方とかですか?」と食い下がると、吉村知事はこんなことを言い出したのだ。
「基本的には僕自身の考え方です。さまざまな人からの意見を聞くなかで、専門家の意見としてもなかなか正確な、これだという理由が明確に判明しているのは現時点ではない。さまざまな意見の方がいらっしゃいます。たとえば現場で出られている方、まあ報道なんかも出てますけども、高齢者施設が非常に都心部にあって非常に生活圏が近いんじゃないかとおっしゃられる方もいらっしゃいます。そんな情報がいろいろ入ってきますので、そのー、専門家会議の意見かどうかっていうのは僕も定かでないですけども、そういった意見をさまざまなところから集約するなかで、僕自身として、そういう可能性があるのではないかと申し上げています。ただ、これが確実なもんだというと、そういうものではないですよっていうのは、これはつねにお伝えをしているとおりです」
 まったくいい加減にもほどがある。前述したように、吉村知事は番組内で「理由は専門家すらもわからない」と言いながらも、「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます」と明確に発言した。当然、視聴者は「専門家のような偉い人がこういう指摘をしているのだな」と受け止めるのが自然だが、これを吉村知事は「僕自身の考えとして話した」「確実なものではないと伝えている」などと言い張ったのだ。

吉村知事の発言に担当部局が「わからない」「公式見解でない」と返答するのが“吉村あるある”
 しかも、この吉村知事の詭弁に対し、毎日新聞の記者は粘り強く質問を繰り返したのだが、それでも「僕自身の考えだ」と主張しつづけた。
毎日記者「(確実なものではないと伝えていることは)そこは承知しています。いま確認したいのは……」
吉村知事「(質問を遮り)単独の考えという意味ではなくて、さまざまな声が上がってくるなかで僕自身はそういう可能性があるんではないかということをお伝えしているだけで、それが確証あるもんではないというのは何度も伝えているとおりです」
毎日記者「基本的には知事のお考えということを、たとえばテレビ番組やこういう公的な場で、専門家に聞いたかどうかわからないけれども『高齢者と若者の距離が大阪は近いんじゃないかという見方もある』というふうに、ご自身の意見としてではなく、何か別の方の第三者の指摘として紹介されるというのは情報発信の仕方として正しいんでしょうか?」
吉村知事「いえ、僕自身の意見として伝えています」
毎日新聞記者「いえ、そういうふうにおっしゃってないじゃないですか
吉村知事「いや、僕自身の意見として伝えています」
 
 言っておくが、既報でも書いたように、番組内で吉村知事が「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます」と発言したことを受けて、番組MCのハイヒール・リンゴは「結構、大阪市内でも(高齢者施設が)ありますもんね」「おじいちゃん、おばあちゃんが近くに住んでるっていう人も多いし、まあ東京の場合はちょっと働きに出てって、田舎があってという方が多いかもしれないので、この辺の違いが出てきてるんじゃないかということですよね」などと言い出し、大阪の死亡者が多い理由は「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近い」からだという空気がすっかりできあがったのだ。にもかかわらず、吉村知事はその発言の根拠を問われても答えられず、挙げ句、「僕自身の意見だ」と言ってごまかそうとするとは……。これでは、「僕自身の意見」として何でもでっち上げられるようになってしまうではないか。
 だが、吉村知事のごまかしはこれだけでは終わらなかった。
 というのも、毎日新聞の記者はさらに食い下がり、「誤解を招く発言だったし、知事ご自身の意見としては語られていなかった」と指摘。こうつづけた。
「(吉村知事が)そういった発言をされるので、(記者は)部局も含めて問い合わせはするんですけれども、担当部局も知事がおっしゃっている指摘・考え方というのは、どういったことを根拠にされているのかというのは『わからない』という回答をされています
「われわれ府庁にいる記者からするとですね、担当部局に質問をして、知事の考え方・発言というのが『何を念頭に置いているのかわからない』という返答が返ってくるとか、『公式見解ではない』という回答がくるっていうのは“あるある”の光景ではあるんですけれども、やはり組織のトップとして発言されているので、そこは通常は組織の考え方、知事の考え方っていうのは府の考え方だというふうに認識されるものだと思うんですけど、そういう府庁内のコミュニケーションをもう少し丁寧にされるべきじゃないでしょうか
 つまり、吉村知事の発言は担当部局ともまったくコンセンサスがとれておらず、裏付けを取ろうとしても、府庁の職員が「何を念頭に置いているのかわからない」「公式見解ではない」と返答するのが「あるある」だと毎日新聞の記者は指摘したのだ。

毎日新聞記者の追及に逆ギレし「発信できなくなる」と小学生レベルのイチャモンつける吉村知事
 コロナという府民の生命にかかわる、とくに注意を要する問題においても、根拠はおろかコンセンサスさえとられていない話をテレビや会見でペラペラと喋る──。世紀のバカ発表となった「イソジン会見」が象徴的だったが、ようするに吉村知事は、自分の人気取りや責任回避のために無責任な放言を繰り返している、というわけだ。
 しかし、この毎日新聞の記者の指摘を受けても、吉村知事は「『確かなものは専門家でもわかりません』というのを念頭に置いた上で、『知事としてどう考えられますか?』と言うのであれば、僕は知事としての発信をします」と宣言。さらに質問を重ねようとする記者の声をまたも遮り、キレ気味にこう口にしたのだ。
 
「誰かの意見が全部まとまらないと知事としての発信ができないということであれば、まったく発信できないことになりますから。さまざまな意見があるなかで知事としてはこう考えるという発信はしていく。ただ、今回もそれが本当に専門家として、これが確かだという意見もないなかで、僕自身はそう考えるということは、知事の考えとして発信することは、これからもあります。じゃないと発信できなくなりますから」
 たんに府庁職員とコンセンサスをとり、何かを発信する際は根拠を示した上で「これは専門家の意見」「これは知事としての意見」として語ればいいだけの話なのに、自身の混乱を招く発信を正そうともせず、「発信できなくなる」と逆ギレする。しかも、つづけて「府の意見とは切り離して発信されるということか」と質問されると、吉村知事は「それは切り離してはいない。知事としての発信なので大阪府としての発信としてとらえていただいていい」などと言い放ったのだ。
 あらためて、吉村知事の騙しの手口の悪辣さ、ごまかしの下劣さ、そして居丈高に開き直る態度には辟易とするが、しかし、このあとさらに吉村知事は、その下劣さを剥き出しにしたのである。
 
 というのも、毎日新聞の記者の質問のあと、他社の記者が5~11歳のワクチン接種が始まることについて知事の考えを問うたのだが、すると、吉村知事はこんなことを言い出したのだ。
「これはだから僕の考え方はいまあるんですけど、いま言ったら、『正式な見解ですか?』ってまた言われません? だからもうやめときます」
「いや、僕の考え方として言っていいですか? これ、正式見解じゃないですよって医療部に言われるかもしれないですけど、言っていいですか?」
「(毎日新聞の記者に向かって)っていうか、こういうことなんですよ、毎日新聞さん。言わないほうがいいですか? 僕、5~11歳(へのワクチン接種)の考え方ってあるんですよ。言わないほうがいいですか?」
 当然の指摘をおこなっただけの毎日新聞の記者をあてこするために、別の記者の質問に対して「言ったら『正式な見解か』と言われるから、もうやめる」と言い出す──。しかも、「言わないほうがいいですか?」と尋ねられた毎日新聞の記者が「部局とそれがやっぱり一致しないのであれば、正確にそこは……」と答えると、吉村記者はすばやくワクチン接種の質問をした記者のほうを向き、「部局にじゃあ聞いてください」と述べたのだ。まるで陰湿な学校のいじめを見ているようではないか。

陰湿な記者攻撃にも「知事の考えを聞きたい」と尻尾をふる他社の記者たち
 しかも、情けないのは他社の記者たちだ。このあと、ワクチン接種について質問した記者は「できれば知事のお考えと、メリット・デメリット、どういうふうに進めたらいいのか(を聞きたい)」と述べたのだが、ここでも吉村知事は「記者クラブで毎日新聞と調整してもらえますか? 僕、発信できなくなる。そう言われると」と発言。すると、また別の記者が「知事の考えは聞きたいです」と言い出したのだ。
 挙げ句、そのあとも吉村知事のあてこすりはつづき、「部局が『公式見解と違います』って言われたら、僕は違ったことを言ってることになるんですかね?」などと毎日新聞の記者にネチネチと絡み、それでも毎日新聞の記者が「そこを明確にわかるようにおっしゃっていただければ」と毅然と答えると、吉村知事は「何でそこまで指導されないといけないのかわかりません」と半笑いで切り捨て、こう言った。
「知事としての考え方を言うときに、部局がまだ組織として形成されていない意見でも、知事としてこう考えるというのは当然あり得る話で、毎日新聞のやり方でいったらもう、この知事会見、いらなくなると思う。うん」
 自分がテレビで広めた「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます」という発言について、根拠も示さずただごまかすだけで、挙げ句の果てには「(質問に答えるのは)やめる」「知事会見はいらなくなる」と言い、自分の正当化のために記者を孤立・分断しようと追い込む──。卑劣としか言いようがないだろう。
 そして、この吉村知事のやり口は橋下徹とそっくりだ。実際、『誰が「橋下徹」をつくったか─大阪都構想とメディアの迷走』(140B)の著者である松本創氏は、こう指摘している。
〈この問答見て思い出した。2013年、橋下市長の「従軍慰安婦」発言。新聞報道に責任転嫁する橋下氏に、記者が言葉や表現の不用意さを指摘したところ、「じゃあ囲み全部やめましょうか」と激昂。「一言一句全部チェックしろと言うんだったらやめます」と打ち切りを宣言した対応の仕方が似ている。〉
〈まあ結局、囲み取材が取りやめになることはなく、週明けの月曜日からまた普通に行われたんだけど。なんで理不尽にも報道のせいにされたことに抗議もせず、またいそいそと彼の「お言葉」を拝聴しに行くかね…と強烈な違和感を覚えたのが、だれはし取材の原点。〉
 
 テレビでの無根拠かつ無責任な発言を見逃さず、怯まず追及をおこなった毎日新聞の記者は、当然ながらジャーナリストの責務を果たしたと言える。一方、責務を果たそうとする記者に加勢するどころか、吉村知事の放言を看過し、「知事の考えは聞きたいです」などと尻尾を振る記者たちの姿の情けなさ、醜さはどうだ。あらためて、大阪の悲惨な現状の背景には、吉村知事の共犯者たる在阪メディアの罪があると言わざるを得ないだろう。(編集部)


大阪でコロナ死続出!吉村“言い訳”知事が説く「高齢者と若い世代の生活圏が近い」の真偽
                          日刊ゲンダイ 2022/02/27
 なぜ、大阪のコロナ死者数は多いのか。府内の1日当たりの死者数は25日まで4日連続で東京超え。ところが、吉村知事は目の前の惨状に“言い訳”を繰り返している。
「専門家に聞いても分かりません」──。死者突出の理由について、吉村知事は「よう分からん」の一点張り。その一方、「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないか」との説明を重ねている
 はたして、吉村知事の言い分は正しいのか。総務省統計局の「日本の統計2021」によると、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は全国で28.4%。大阪は27.6%で東京の23%よりも高いが、全国よりは低い。大阪の高齢者数がとりわけ多いわけではないのだ。
 加えて、2019年の国民生活基礎調査によると、大阪府内の「3世代世帯」の割合は2.5%。都内(1.8%)より若干高いものの、全国(5%)の半分に過ぎない。ちなみに、大阪市内に限れば1.4%である。1.8%の都内区部の方が「3世代」で住んでいる世帯が多い。
 もはや「高齢者と若い世代の生活圏が近い」との主張はデタラメだが、吉村知事は19日のバラエティー情報番組でも「もともと大阪って狭いところに高齢者の施設もたくさんあります」と“自説”を開陳。高齢者施設に関する情報を集めたウェブサイト「有料老人ホーム情報館」によると、都内の高齢者施設数が1097で、府内が541。1平方キロ当たりの施設数を算出すると、東京の0.46に対し、大阪は0.28だ。「狭いところにたくさんある」とは言い切れない
 第4波に見舞われた昨年5月から、大阪のコロナ死者数(人口100万人当たり)はワーストを独走中だ。言い訳知事にはもうウンザリだ。

28- 「直撃インタビュー」 山岡淳一郎氏に聞く(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイの「注目の人 直撃インタビュー」のコーナーに、なぜ政府は失敗を繰り返すのか現場取材を続ける「コロナ戦記 医療現場と政治の700日」(岩波書店)の著者 山岡淳一郎氏が登場しました。

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注目の人 直撃インタビュー
第6波も敗戦濃厚…なぜ政府はコロナ対策で失敗を繰り返すのか? 
山岡淳一郎氏に聞く
                          日刊ゲンダイ 2022/02/28
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
 オミクロン株が猛威を振るう新型コロナウイルス第6波の脅威がつづく。感染力の強いオミクロン株の猛威によって感染者数はケタ違いに増え、高齢者を中心に重症者や死者も急増している。100人に3人しか入院できず、自宅で亡くなるケースも相次いでいる。第6波も「敗戦濃厚」だ。コロナに襲われ2年あまり。なぜ政府は、失敗を繰り返すのか。現場取材を続ける「コロナ戦記 医療現場と政治の700日」(岩波書店)の著者に聞いた。
                ◇  ◇  ◇
 重症者と死者の急増は、ケタ違いの感染者数によって「分母」が大きくなっただけでは説明できない事態です。
 第6波の特徴は高齢者が感染し、心臓、腎臓、呼吸器などの持病を悪化させて亡くなるケースが多いことです。高齢者施設の集団感染が多発していますが、医療が追いついていない。高齢者を搬送できない事例が増えているようです。

 高齢者の大半が3回目のワクチンを打てないまま第6波が直撃しました。
 医療専門家は3回目接種について、感染予防効果よりも重症化や死亡リスクを低下させる点で有効だとしています。感染拡大が沈静化していた昨年11月、12月に高齢者施設での3回目接種を進めていれば、様相は随分変わっていたと思います。

 高齢者施設への前倒し接種を要望した自治体もありました。
 東京・世田谷区の保坂展人区長は11月初旬には訴えていました。高齢者が大勢集まり、クラスターが起きやすい高齢者施設で先行接種するのは当然の策です。

■自治体判断に政権がブレーキかけ1カ月以上もムダに
 昨年11月15日の厚労省の予防接種・ワクチン分科会は、3回目接種について2回目完了から「6カ月」への前倒しを自治体判断で認める方針を了承しました。ところが翌日、後藤厚労相と堀内ワクチン担当相が会見でブレーキをかけました。
 自治体は大混乱でした。もし、ブレーキがかかっていなければ、世田谷区では11月後半から高齢者施設で接種を始められていたでしょう。結局、12月23日からとなった。1カ月以上も時間を無駄にしたのです。

 なぜ、ブレーキをかけたのでしょうか。
「自治体間競争」を避けたい自治体から与党や政府に対して反対の訴えはあったようです。もっとも、国側も第6波を甘くみていた。水際対策をしっかりやっているから、時間は稼げる。「8カ月」で十分間に合う。楽観論で失敗を繰り返す、いつものパターンです。加えて、後藤、堀内両大臣が力量的にどうしようもなかった。

 前大臣とは違いますか。
 田村前厚労相を持ち上げるつもりはありませんが、少なくとも専門家の話を聞き、情報収集し、自ら発信もしていた。厚労省が消極的だった高齢者施設での大規模PCR検査を世田谷区が実施したことも、田村氏は理解していた。退任する際、医療体制が不十分だったと認め、国民に謝罪をした。異例です。他方、菅前首相は石川県知事選の応援で「100万回の接種を進め、デルタ株流行時に多くの命を守れた」とぬけぬけとアピールしていた。言葉を失いました。

 私自身、1月下旬に感染しました。妻の感染が判明したため保健所に宿泊療養を希望しましたが、難色を示され、結果として自分も陽性になった。家庭内感染を防ぐのは至難の業だと実感しました。
 ホテルの部屋に1人ずつ入れて管理するのは非効率です。軽症の患者を臨時施設に集め、医師や看護師が定期的に健康観察する体制を事前に整備しておくべきでした。政府のコロナ対策は、相変わらず飲食店をターゲットにしているだけ。感染源となっている家庭への対応は現場に任せっぱなし。

 医療提供体制はどうですか。
 病床を3割増やしても全然足りない。検査キットも不足している。陽性者が医者に頼れない現状を追認するだけで、ほとんど放置です。自分で健康観察して治ってくださいと。今、目の前で具合が悪くなっている患者にどう医療を提供するのかが問われているのに、ワクチン頼みで、しかも3回目接種は進まない。

政府のコロナ対策は属人的
 コロナで医療の脆弱性が浮かび上がりましたが、今後は充実させる方向に転換する可能性はあるのでしょうか。
 厚労省は「地域医療構想」の策定に向け、公的病院を再編・統合し、病院閉鎖や病床削減を進めてきました。コロナ患者の7~8割は公的病院が診療している。潰されそうになっている病院が一生懸命コロナ患者に対応しています。これ、潰せないですよね。さすがにブレーキがかかりましたが、この後どうするのかの議論はこれからです。重要なテーマです

 この2年あまり、失敗を繰り返したのは何がマズかったのですか。
 2020年1~3月の初動期の根本策の誤りを修正できないまま今に至っています。象徴的なのはPCR検査の抑制策です。病院のキャパシティーに合わせて検査数を絞るのが出発点ですが、お墨付きを与えたのが専門家会議、今の分科会の専門家たちです。「検査をしなくてもクラスターを追えば大丈夫」と主張していた。足元では検査数は多少増えましたが、抑制は今も続いています。検査で陽性者を把握して保護し、治療するという根本策が、いまだにできていないのです。

 誤った政策に専門家がお墨付きを与えたとして、2年以上もなぜ修正できなかったのですか。
 組織や構造的な問題に加え、属人的な面も大きい。組織に居座ってコロナ対策の舵取りをする専門家の感覚にも相当おかしな印象があります。2万人以上が亡くなっているのに、分科会のメンバーは反省してこうしようという議論をしない。また、全然サイエンスと違う政治的なことをやるわけですよ。

 というと?
 東京五輪開催の是非について、分科会の尾身茂会長は口を挟まないというスタンスでした。ところが、開会が近づく中、感染が広がっていき、世論調査では「中止か延期」が7割に上っていた。すると、尾身氏は「いまの状況で(五輪を)やるというのは、ふつうはない」と言いながら、「開催規模をできるだけ小さく」と国会で言った。メディアは菅政権に盾突いているとして「尾身の乱」と報じましたが、僕は「えっ、これは乱なのか」と思いました。国民は五輪を開催するのか、しないのかを問うている。その点には触れず、「規模縮小」へと議論をすり替えた。結局、「無観客開催」への道を敷いたわけです。科学とは程遠い。まさに政治的です。

■「権威」に腰が引けるメディア
 メディアの責任も大きい。
 メディアも「権威」のある専門家の批判を控える傾向があります。専門家は情報量も多く、知識も豊富です。尾身氏と近しくなり、記事を書くのもいいでしょうが、客観視する姿勢に欠けている。コロナに感染し、医療を受ける側の立場から、政策やアナウンスの仕方がどうなのかをみる必要がある。感染にはプロもアマチュアもないのです。メディアは権威に対し、腰を引かず、専門家個人を冷静に批判しなければならない。

 個人をターゲットにすべきと。
 そうです。日本では組織のしがらみの問題にすることが多い。しかし、「感染症ムラ」とひとくくりにしてしまうと、批判がぼんやりしてしまう。ムラの長がどうふるまい、誰がどう言ったかが、「ムラ」と言った瞬間に消えてしまうのです。個人でやっていることだから、一人一人を問題にしないといけない。政府組織の専門家は巧妙ですよ。責任を取らないために言質を残したり、「有志」で発言したり……。だまされてはいけません
            (聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)

山岡淳一郎(やまおか・じゅんいちろう)
 1959年、愛媛県生まれ。早大中退。「人と時代」「公と私」を共通テーマに政治、経済、近現代史、建築、医療など幅広く執筆。市民メディア放送局「デモクラシータイムス」で司会、コメンテーターを務める。「原発と権力」「ドキュメント 感染症利権」「後藤新平 日本の羅針盤となった男」など著書多数。

2022年2月27日日曜日

第6波死者数突出の大阪では6割超の施設が医療提供ナシ

 新型コロナ第6波は、ようやく新規感染者数は減少傾向が見られるものの、死者数は高止まりが続き、累計は日毎に増大しています。最も深刻なのが高齢者施設で、医療が行き届かずに命を失う“手遅れ死”が多発しています
 1月1日以降の死者の累計は大阪府が圧倒的に多く、人口100万人当りに換算すると
84・8人で、全国平均の2・3倍、東京都の3倍です。
 今後の死者数に影響を与える重症者数も、1月1日以降の増分では全国総数の53%を占め、人口100万人当りに換算すると86・8人で、全国平均の7・5倍、東京都の15・2倍です。
 詳細は下表のとおりです。
   1月1日以降のコロナ死者累計と重症者数の増分(2月25日時点)

 

 

全 国

東京都

大阪府

 

 

死者数 実数

4,618

389

750

 

 

100万人当り

367

27・9

84・8

 

 

重症者 増分

1,456

79

767

 

 

100万人当り

11・6

5・7

86・8

 

 18日の大阪府新型コロナ対策本部会議の資料によると、17日時点で陽性者が複数発生している高齢者施設と障害者施設は426施設で、入所者の陽性者3125人のうち、入院できているのは349人(11%)にすぎません。426施設のうち、病院での治療や往診など「医療介入」があったのは、158施設(37%)で、6割超の施設は医療機関の手が届いていないというのが実態です
 またも医療崩壊で、これでは重症者数も死者数も増える一方です。大阪府・市のトップはこの実態をどう考えているのでしょうか。言い逃れに腐心している場合ではありません。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
  お知らせ
 都合により28日の記事の更新は夕方になります。
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高齢者施設で“手遅れ死”多発…
第6波死者数突出の大阪では6割超の施設が医療提供ナシ
                          日刊ゲンダイ 2022/02/26
 第6波の新規感染者数は減少傾向が見られるものの、死者数は高止まりが続く。最も深刻なのが高齢者施設だ。医療が行き届かずに命を失う“手遅れ死”が多発している
 厚労省によると、14~20日の1週間に全国で発生したクラスターは、過去最多の1253件。高齢者施設などの「福祉施設」が699件と最も多く、「学校・教育施設」276件、「医療機関」179件をはるかにしのぐ。「飲食店」はわずか9件だった。
 死者増も高齢者施設が震源地だ。読売新聞の集計によると、都内の高齢者施設で療養中の死亡例は1月が3人だったのに対し、今月は23日時点で35人に上る。
 高齢者施設の入所者が感染しても、軽症なら施設内療養となることが多い。問題は急変した時だ。高齢者施設は医療機関ではなく、すみやかに病院に入る必要があるが、対応が追いついていないのだ。もともとリスクの高い高齢者だけに、治療の手遅れは死に直結する。

3月にも第6波死者が1万人超え
 第6波の死者数が突出している大阪の衝撃データがある。
 18日の大阪府新型コロナウイルス対策本部会議の資料によると、17日時点で陽性者が複数発生している高齢者施設と障害者施設は426施設。入所者の陽性者3125人のうち、入院できているのは349人(11%)にすぎない
 さらに、426施設のうち、病院での治療や往診など「医療介入」があったのは、158施設(37%)。実に6割超の施設は医療機関の手が届いていないことになる。
「今頃、政府は高齢者施設の3回目接種を急いでいますが、効果が出るのはまだ先。急変し、すぐに入院できなければ、手遅れで死亡するケースは避けられません。当面、高齢者施設を中心に死者数が高止まりする可能性があります」(医療ガバナンス研究所理事長・上昌広氏)
 第6波(1月~23日)の死者数は4196人。足元(23日までの1週間平均)の1日当たりの死者数228人が続けば、来月にも第6波の死者は1万人を超える計算だ。
 24日の参院予算委員会で、岸田首相は高齢者施設に医療が届いていない問題について「施設への医療従事者の派遣単価の拡充など強化を行っている」と答弁。カネを積めば何とかなると思っているのか。高齢者施設の前倒し接種に“ブレーキ”をかけた岸田政権の罪は大きい。


ゼレンスキーとバイデンの戦争責任/ミンスク合意の誠実履行必要

 いま西側の世界に流されている情報は全て米国の意向に沿ったもので、米国の一挙手一投足を全て是認しないことには周囲から袋叩きに遭うというのが実態です。取り分け米国の意図に反して、いわゆる旧共産圏の中国やロシアを擁護する意見を発表することは困難になっていて、現状はロシアのウクライナ侵攻に対し「プーチン非難」の一色に染まっています。
 他国への軍事侵攻は批判されるべきことですが、世界を敵に回すことを承知の上で敢えてそれに踏み切ったのですからそれなりの理由がある筈です。その説明もしにくいような雰囲気に包まれている現状は、やはりおかしいというしかありません。
 世に倦む日々氏と植草一秀氏が、今回のウクライナの事態についてゼレンスキー・ウクライナ大統領とバイデン・米大統領に責任があるとする記事を出しました。
 プーチンを「悪の権化」と見做すのはバイデンの望むところですが、それはしばらく抑えて、プーチンを擁護する論調にも耳を傾けるべきです。
 2つの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ゼレンスキーとバイデンの戦争責任 – 異端の少数意見ながら
                          世に倦む日々 2022-02-25
イラク戦争のときのことを思い出す。国連憲章違反の一方的な侵略戦争だった。侵攻する側が時間をかけ大量に兵力を集め、無茶苦茶な大義名分(口実)を言い立て、最後通牒を突きつけて空爆に踏み切った。巡航ミサイルで地上の防空システムを破壊し、制空権を握り、地上軍を首都に侵攻させた。あのときと絵は一緒だが、今回は侵略される側に世界の同情と支持の全てが集まっている。国連事務総長がロシアを非難糾弾しまくっている。あのときは、正義の戦争だとして美化し、侵略者のアメリカを支持する声がずいぶん多かった。

あのとき、19年前、戦争の原因を作った張本人として指弾され、責任を押しつけられたのは、侵略を受けた側のサダム・フセインだった。今回、ゼレンスキーに責任があると批判する声を聞かない。今度の戦争にバイデンに責任があると断罪する者はいない。けれども、本当にそうだろうか。私は少数派として異論を唱えたい。ゼレンスキーの責任は小さくないと思う。大統領にはその国の国民の命と安全を守る責任がある。自国を戦争に導かない義務があり、戦争に巻き込ませない政治をする使命がある。

ゼレンスキーが、ウクライナも署名したミンスク合意を履行していれば、今回の戦争には至らなかったメルケルが汗をかき骨を折り、徹夜の協議を重ねて成立させたミンスク和平。その合意事項を守っていれば、ウクライナ共和国を戦争の危機に導くことはなかった。そもそも、2019年の大統領選でゼレンスキーが勝ったとき、ゼレンスキーは対ロ協調派の候補だったのだ。争ったポロシェンコの方が対ロ強硬派であり、東部親ロ勢力との対話を訴え、穏健派のイメージで票を集めて当選したのが新人のゼレンスキーだった。

大統領選の結果とゼレンスキーの政見を見て、プーチンは、ミンスク合意の履行、すなわち東部2州の自治権の法制化に期待を持ったはずで、それゆえ、その後のゼレンスキーの豹変には裏切りを感じたに違いない。ウクライナという国の置かれた客観的な立場と状況を鑑みて、国際環境を冷静に判断して、もっとリアルで賢明な外交行動に出ることはできなかったのか。何より平和を第一に考える慎重で堅実な政策の舵取りができなかったのか。隣国の大国の指導者であるプーチンと、最低限の信頼関係を保つ努力はできなかったのか

指導者として無能だったゼレンスキーの責任は小さくない。これと同じ認識と感想は、24日のNHKニュース7で下斗米伸夫も述べていた。大きな戦争になってしまったが、元々はウクライナの国内問題であり、親欧米派と親ロ派の対立紛争がベースにある。双方がマイルドに混在共存し、穏和に一体性を保持していたはずのウクライナに、分断と混乱をもたらしたのは、2004年のオレンジ革命からの動きとそれに続く2014年のマイダン革命であり、親ロ派を追い落としたクーデターである。背後にNED(CIA)の画策と謀略があったとされている。

旧ソ連圏諸国でのカラー革命はこれまで幾度起こったことか。2000年のユーゴスラヴィアでのブルドーザー革命、2003年のグルジアでのバラ革命、2004年のウクライナでのオレンジ革命、2005年のキルギスでのチューリップ革命。どれもCIAが裏で糸を引いており、ソロス財団やシンクタンクが関与していて、フランスのテレビ局が真相をよくジャーナリズムしていた。結局、総括的に本質論を言えば、アメリカはソ連崩壊では満足しておらず、さらに欲深く執念深く、ロシア連邦そのもののを標的にし、旧ソ連・旧共産圏の悉くを自らの意のままになる親米国家群に塗り替える野望を戦略化している

主権国家であるウクライナが、どのような方向性を目指そうが、それはウクライナの自由であり、他国が口を差し挟むことではない。だが、傍から見て、ウクライナの地政学的条件や民族歴史的所与を考えれば、ロシアとEUの間に立ち、双方と友好的な外交通商関係を組み、その独自の立ち位置を生かして、双方から利益を享受し平和裡に自国を発展させるのが最もベストな選択だと思われる。琉球王国の「万国津梁」的な理想を掲げて国家運営することが、ウクライナの平和と繁栄に繋がる道なのではないかと私は思う。森安達也が生きていたらそう言うだろう。

ウクライナとバルト3国・ポーランドとは違う。事情と背景が異なる。ロシアに屈服したり抵抗したりの歴史でアイデンティティが形成されている国ではない。敢えて言えば、ウクライナには、ロシアに対して無理に歴史的な憎悪や怨恨の感情を抱くべき必然性はない。2国は同じ東スラブ人の東方正教会の国であり、キエフ・ルーシを祖先とする兄弟国である。最近、ホロムドールの過去が強調され、そこに拒絶と反発の根源があるのだという歴史認識を聞くけれど、それは、欧米がウクライナを唆(そそのか)してロシアと離間させるための政治言説ではないかという作為性を私は嗅ぎ取る。

なぜなら、ホロムドールの悲劇への遺恨をネーション形成の精神的基礎に据えるのなら、その憎悪対象はボリシェヴィキ・ソ連共産主義に向けられるべきで、ロシアとロシア人に直接被せるのは筋違いだからである。ロシアとボリシェヴィキはイコールの思想的存在ではない。フルシチョフはウクライナ人だった。ウクライナはソ連邦を構成する15の共和国の2番手であり、その地位と序列は常に不動で、いわばソ連邦の建設と運営において陽の当たる位置で参画してきた国だ。スターリンに強制併合された気の毒な冷や飯組のバルト3国とは境遇が違う。まして西スラブ系のポーランドとは根本的に違う。

ウクライナ人は素朴で純粋な人々に私には見える。第一印象で好感の持てる人々だ。現在の西側のウクライナに対する思想工作は、ウクライナ人の純朴さを逆手にとった陰湿で狡猾なもののように見え、嘗てナチスがウクライナ人を慰撫し洗脳して、反ソ連の協力者に扇動・利用した邪悪な歴史を想起させる。同じことが繰り返されている。それが2004年から2014年の事実だった。隣の芝生が青く見えるのは誰も同じで、ウクライナの人々の目にはEUやNATOが過剰に美田に見え、その心理を操縦され、自らの本来のアイデンティティを忘れさせられているのではないか

アメリカとバイデンの責任について言わなくてはいけない。なぜ、ロシア軍の侵攻を阻止できなかったのか。プーチンとの外交バトルに負けたのか。現在の結果はアメリカの敗北と失態としか言いようがないではないか。米軍を派遣投入すればよかったと言いたいのではない。NATOに入れてやる、NATOに入れと口では言いながら、結局、ウクライナはアメリカに騙されたのと同じだ。その気もないのに、責任がとれないことをウクライナに言い、ウクライナをその気にさせて誑(たぶら)かした。アメリカはウクライナを道具にして玩びながら、ウクライナを戦争と破滅の淵に追いやったのと同じだ。

アメリカは、CIAの諜報能力で全てを分析し予測できていると自惚れ、ロシアを打ち負かす戦略の遂行をしていると思い込みながら、実際にはプーチンに裏をかかれ、プーチンの胆力に圧倒された。自慢のインテリジェンス作戦は何の役にも立たず、松原耕二に「アメリカの諜報戦略は単に実況中継やってただけ」と揶揄される始末に終わっている。ブリンケンやサリバンではプーチンとは格が違いすぎて喧嘩にならない。白帯と黒帯の差だ。小僧臭が鼻につくサリバンは、単なる間諜謀略オタクで、ゲームアプリの趣味者のようにCIAに謀略させることだけが生きがいの小物に見える。アメリカが唯一の超大国になってからの世界しか知らない。

アメリカが、「ウクライナはNATOに入れない」と一言言えば、この戦争は起きなかった。たった一言コミットすればよかった。東アジア人の一人として率直に言わせてもらえれば、ロシアにすら勝てないアメリカが中国と「競争」して勝てるなどど、その自信過剰はどこから来るのかヨーロッパですら仕切れないアメリカが、どうやってアジア太平洋を制して指導することができるのか


ミンスク合意の誠実履行必要
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年2月26日
国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。これが国際連合の考え方。
その前提に 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおくことがある。
内政干渉しないこと。自決の原則を尊重し、平和的手段によって紛争を解決する。
武力の行使または武力による威嚇をしないことが世界平和実現のカギを握る。
この原則が重視されなければならない。この意味でロシアによる軍事作戦実施は許されるものでない。しかし、同様の武力行使は他の事例でも実行されてきたという歴史がある。
米軍によるアフガニスタンへの侵攻。米軍によるイラクへの侵攻。これらもまた、紛争を武力の行使によって解決しようとしたものである。
米国がロシアを非難するが、基本的にどっちもどっち。
ウクライナの政権は2014年の政変で転覆された。暴力的革命による政権転覆である。
暴力的革命によって親ロ政権が反ロ政権に転覆させられた。

ウクライナにはウクライナ系住民とロシア系住民が併存している。ウクライナ系住民が多数派である。両者の対立は根深い。したがって、単純多数決で決定するとロシア系住民の意向が踏みにじられる。
ロシア系住民は東部、南部に偏在している。
2014年政変に伴いウクライナ内戦が勃発した。ドネツク州、ルガンスク州では親ロシア系勢力が優勢で、この勢力が同州主要部分を実効支配した。
これに対してウクライナ軍が攻撃し、内戦状態が生じてきた。この内戦を停止するために2014年から2015年に「ミンスク合意」が締結された。
合意にはドネツク州、ルガンスク州に対する自治権付与の方針が定められた。

両地域に自治権が付与されれば、ウクライナのNATO加盟は実現しない。
ロシアはウクライナがNATOに加盟して対ロシア敵対姿勢を強めることを警戒している。
また、ロシア系住民がウクライナ政府から圧迫を受けることを警戒してきた。
ロシアはウクライナ政府にミンスク合意の履行を求めてきたが、合意が履行される気配さえなかった。
逆にウクライナのゼレンスキー大統領はロシアに対する対決姿勢を鮮明に示してきた。

この状況から、ロシアはドネツク、ルガンスク両地域が共和国として独立を宣言したことを受けて、これを承認し、両共和国の要請にしたがって、ロシア軍のウクライナ国内への特殊軍事作戦を始動させた。
ゼレンスキー大統領はコメディアン出身の大統領。ゼレンスキー氏が出演してきた政治ドラマが大統領就任の布石になった。
この政治ドラマを放映した放送局”1+1”はCMEの放送網に属する企業。
CMEから放送局を買収したのはイスラエルに近いウクライナの財閥である。
世論をコントロールするメディアを活用して新しい大統領を創出したのである。
その大統領がミンスク合意を履行しようとせず、ウクライナのNATOへの加盟を求め、対ロシア対決姿勢を強めるためにウクライナへのNATOおよび米国の軍事支援拡大を求めてきた。実際に、米国およびNATOはウクライナに対する軍事支援を実施してきた。
こうした経緯があっての今回のロシアの行動。

中国はロシアに対して、これまでの経緯に関する理解を示した。
平和を維持するためには、価値観や立場の異なる者が対話を継続し、互いに譲歩し、着地点を見出すことが必要。
ロシアの動向を察知した米国には二つの道があった。
米国が仲介者として行動し、戦乱を未然に防ぐ対応。
もうひとつは、ロシアの動向を大々的に喧伝して、軍事衝突を放置あるいは誘導すること。
結局、取られた対応は後者である。
戦乱がこれ以上拡大するのを防ぐため、早期に停戦協議を始動させることが重要だ。
米国はその先頭に立つ責務を負っている。

ワクチン接種にはくれぐれも慎重に対応することが求められる。

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