2022年11月30日水曜日

やはり息の根を止める必要 看過できない「泥船政権」の憲法破壊(日刊ゲンダイ)

 「敵基地攻撃」は当初「敵基地先制攻撃」と呼びました。それは相手国が「日本を標的にしたミサイル発射の兆候を正確にキャッチし、その直前に発射基地をピンポイントで攻撃する」というものでしたが、今は移動式発射台や潜水艦から突然発射されるのでピンポイント攻撃は無理です。それに兆候をつかんだとしても発射の意図や方向が分からなければ、日本への武力攻撃に着手したとは言えないので、結局、国際法違反先制攻撃となります。

 それに対して敵の司令部を攻撃するという代案?もあったようですが、それは直ちに全面戦争開始につながる攻撃に他なりません。
 それで「先制」という表現をなくしましたが考え方は同じで、結局は抗戦能力の保持ということで明らかな憲法違反です。
 有識者会議は22日、敵基地攻撃能力の保有「不可欠」と結論づけ「報告書」を提出しました。そのメンバーは元駐米大使や金融関係者、報道関係者ら10人で、最初から「結論ありき」の有識者会議でした。反対意見はまったく出なかったということです
 岸田政権はそれを口実にして、年末に改定する『安保関連3文書』に敵基地攻撃能力の保有を書き込む方針ですが、憲法との整合性へ視点が皆無の「報告書」を元に、そんな風に進んで良い筈はありません。
 そもそもその方向に向かえば、戦後日本が周辺諸国から攻撃の対象にならなかったのは『専守防衛に徹している』と認識されていたからという、絶対的な平和国家の根拠を放擲することになって、周辺国との軍事的緊張を高めることは必定です。
 そうなれば後は軍備拡張競争という「賽の河原の石積み」に励む中で、ひたすら損耗への道を歩むしかありません。これの何処に日本の安全があるというのでしょうか。
 岸田首相には元々信念なく、強い米国にも党内の強者にも逆らわずに保身に汲々としているだけです。自分がなく 状況に流されるトップほど、国を危機に陥らせると言われますが、実際その通りになってきました。
 日刊ゲンダイが「やはり息の根を止める必要 看過できない『泥船政権』の憲法破壊」とする記事を出しました。
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やはり息の根を止める必要 看過できない「泥船政権」の憲法破壊
                       日刊ゲンダ 2022年11月27日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 この国をどうするつもりなのか。一気にキナ臭くなってきた。
 自民党と公明党が25日、実務者会合を開き、自衛のために敵のミサイル基地を叩く「敵基地攻撃能力」の保有について議論を開始した。これまで躊躇していた公明党が「容認」に転じたことで、来週中にも敵基地攻撃能力の必要性で合意する見通しだ。
 敵基地攻撃とは、要するに「やられる前にやっちまえ!」ということだ。敵がミサイルを発射する前に敵の基地を攻撃するというものである。
 しかしこの理屈は、ウクライナに侵攻したロシアとほとんど同じだ。プーチン大統領も「侵略に対する先制攻撃だ」と「自衛」だったと主張している。逆に、たとえ「自衛目的」だったとしても、もしウクライナが侵略される前にロシアの基地を攻撃していたら、国際社会はウクライナに同情もせず、支援もしなかったのではないか。
 そもそも、ミサイル発射の兆候を正確にキャッチし、その直前にピンポイントで攻撃する、などということが可能なのかどうか
 元海将の伊藤俊幸氏が、毎日新聞でこう語っている。
「巨大な発射台からミサイルが発射されていた時代とは違い、今は移動式発射台や潜水艦から突然発射される。もし兆候をつかんだとしても発射の意図や方向が分からなければ、日本への武力攻撃に着手したとは言えないその段階での反撃は先制攻撃となり国際法違反であり、撃たれる前に敵基地を攻撃するのは不可能だ
 軍事評論家の前田哲男氏もこう言う。
敵基地攻撃は、技術的に無理だと思います。ミサイルは潜水艦や列車からも発射される。まず、発射の兆候をつかむのが困難だし、移動する標的を捉えることも難しい。自民党のなかには、だったら敵国の司令部を攻撃すればいい、などという乱暴な声もありますが、そんなことをすれば全面戦争につながってしまいます」

「結論ありき」の有識者会議
 どんなに「自衛目的だ」と強弁しても、敵基地攻撃は、国際法に反する先制攻撃だと見なされる可能性が高い。戦後日本が守ってきた「専守防衛」という考え方からも大きく外れる。なのに岸田政権のやり方は、あまりにも姑息だ。
 政府の有識者会議は22日、敵基地攻撃能力の保有は「不可欠だ」と結論づけ、岸田首相に「報告書」を提出している。しかし、会合は4回しか開かれていない。
 しかも、反対意見はまったく出なかったという。メンバーは元駐米大使や金融関係者、報道関係者ら10人だった。最初から賛成者だけを集めた「結論ありき」の有識者会議だったのではないか。
「有識者会議の報告書を受け取った岸田政権は、自公の合意を得た後、年末に改定する『安保関連3文書』に敵基地攻撃能力の保有を書き込む方針です。しかし、敵基地攻撃能力の保有は、日本は火の粉を払う『盾』に徹し、相手国の本拠地を攻撃する『矛』は米軍に任せるという安保政策を大きく変えるものです。どうしても保有したいのなら、国会で議論し、その上で解散総選挙で信を問うのが当然でしょう。有識者会議の結論や自公の合意だけで既成事実化するのは、おかしいですよ。安保政策は憲法問題に直結するのに、有識者会議のメンバーに憲法学者が入っていなかったことも不可解です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 多くの国民が気づかないうちに、日本の安保政策は大きく変えられようとしている。

これでは危機が高まるだけ
 つい最近まで防衛省だって、憲法9条を持つ日本は敵基地攻撃はできないとしていたはずだ。
 防衛白書にはこうある。
専守防衛とは、武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、態様も自衛のための必要最小限に限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢
 こうなると敵基地攻撃は、憲法違反の疑いも出てくるのではないか。
 実際、歴代政権は敵基地攻撃能力の保有について、「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは、憲法の趣旨ではない」(1959年、伊能繁次郎防衛庁長官)という答弁を維持してきた。
 しかも敵基地攻撃能力の保有は、抑止力どころか、周辺国との軍事的緊張を高めることにもなりかねない。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。
「日本が敵基地攻撃能力を保有すれば、アジア諸国で軍拡競争が始まるでしょう。戦後、日本が周辺諸国から攻撃の対象にならなかったのは『専守防衛に徹している』と認識されていたからです。放棄してしまえば、日本への警戒心が高まるのは確実。いわゆる『安全保障のジレンマ』です。自国の安全を高めようと軍備を増強すると、相手国も軍事力を強化し、かえって緊張が強まってしまう。敵基地攻撃能力の保有は、最悪の事態を招く恐れがあります」

信念のない男が国民を危機にさらす
 敵基地攻撃能力の保有にシャカリキになっている岸田は、要するに日本を「戦争ができる国」にしたいのではないか。
 岸田は来年1月、米ワシントンを初訪問し、バイデン大統領と会談する予定だ。バイデンに「防衛費の相当な増額を確保する」と約束した岸田は、敵基地攻撃能力の保有、防衛力強化を“手土産”に訪米するつもりなのだろう。
 この男がヤバイのは、信念もなく、保身に汲々としていることだ。
 ノンフィクション作家の保阪正康氏は週刊誌「AERA」(9月26日号)でこう言っている。
「岸田さんは状況の中でしか生きられない政治家です。自分の思想を掲げて集団を引っ張っていく、ということができない人です。そういう人物がリーダーを務める危険性は、状況を自分で作っていない分、無責任になることです」
 実際、自分がなく、状況に流されるトップほど、国を危機に陥らせることは歴史が証明している。
 芯のない岸田が敵基地攻撃能力の保有や防衛力強化を言い出したのも、右派へのアピールのためなのは明らかだ。
 「宏池会出身の岸田首相は、信念を持って軍事力の強化に動いているのではないと思います。しかし、岸田派は第4派閥と基盤が弱いため、安倍派を中心としたタカ派の支持を取り付けなければ、政権を維持できない。タカ派にいい顔をするために過激な政策を打ち出しているのでしょう。国民が物価高に苦しんでいるのに、防衛力増強のために増税まで検討している。ご自慢の『聞く耳』は一体どこを向いているのか。国民生活に寄り添えないのであれば、首相を辞任すべきです」(金子勝氏=前出
 やはり岸田政権の息の根を止める必要があるのではないか。野党やメディアはあらゆる疑惑で追い込まなければダメだ。

軍事費太って、民痩せる(澤藤統一郎氏)

 安倍政権が登場するまでは日本の政府は「専守防衛」の一線を守り続けてきました
 それが、安倍晋三首相(当時)とトランプ大統領(当時)の間で布石が打たれたとはいえ、岸田政権になってから音を立てて崩れようとしています。
 まず敵基地攻撃能力の保有がそうであり、それをめざして岸田首相は5年後の2027年度時点で「防衛費とそれを補完する取り組み」を合算してGDP比2%とするよう浜田靖一防衛相と鈴木俊一財務相に指示したということです。
 軍事費GDP比2%の根拠はNATOがそれを目指しているからというのですが、NATOは第二次世界大戦後に米国にいわれてソビエト連合の進出に対抗するために欧州を中心に結成された「軍事同盟」に過ぎません。
 だから日本がNATOに倣う必要は全くないし、日本は外国とは親善・友好を旨として平和を維持するという「戦争放棄の国」なので、なお更のことです。
 それなのに岸田氏はNATOと聞くと何か世界最高の組織であるかのように理解している節があるのは全く解せません。
 「澤藤統一郎の憲法日記」に「軍事費太って、民痩せる」という怒りの記事が載りました。
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軍事費太って、民痩せる
                   澤藤統一郎の憲法日記 2022年11月29日
 平和国家だったはずの日本が揺れている。急転してくずおれそうな事態。ハト派だったはずの岸田政権、とんでもない鷹派ぶりである。
 富国強兵を国是とした軍国日本が崩壊し、廃墟の中で新生日本が日本国憲法を制定した当時、憲法第9条は光り輝いていた。その字義のとおりの「戦争放棄」と「戦力不保持」が新しい国是になった。
 「戦争放棄」とは、けっして侵略戦争の放棄のみを意味するものではない。制憲議会で、吉田茂はこう答弁している。「古来いかなる戦争も自衛のためという名目で行われてきた。侵略のためといって始められた戦争はない」「9条2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したのであります」。
 
 その後、戦力ではないとして「警察予備隊」が生まれ、「保安隊」に成長し、「自衛隊」となった。飽くまでも、軍隊ではないというタテマエである。さらに、安倍政権下、集団的自衛権の行使が容認された。それでも、政府は「専守防衛」の一線を守り続けてきたと言う。
 それが今崩れ去ろうとしている。いったい、この国はどうなったのか、どうなろうとしているのか。敵基地攻撃能力、敵中枢反撃能力、指揮統制機能攻撃能力の保有が声高に語られる。先制攻撃なければ国を守れない、と言わんばかり
 これまで、防衛予算の対GNPは1%の枠に押さえられていた。岸田内閣は、これを一気に倍増するのだという。それも、今年末までに決めてしまおうというのが、岸田優柔不断内閣の一点性急主義。

 11月22日には、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」なるものが、防衛費増額のために「幅広い税目による負担が必要」と明記した報告書を提出している。28日になって岸田首相は、NATOの基準を念頭に、5年後の2027年度時点で「防衛費とそれを補完する取り組み」を合算してGDP比2%とするよう浜田靖一防衛相と鈴木俊一財務相に指示した。「補完する取り組み」とは防衛力強化に資する研究開発、港湾などの公共インフラ、サイバー安全保障、国際的協力の4分野で、これまで他省庁の予算に計上されていたという。また、歳出・歳入両面での財源確保措置を今年末に決定する方針も示した。年末までには、安全保障3文書も公開されることになる。

 政府与党と維新・国民などは、「防衛力の抜本的整備だ」「大軍拡が必要だ」「そのための軍事予算確保だ」「福祉を削っても軍事費増額だ」という軍国モードに突入し、国民生活そっちのけで軍事優先に走り出している。本当にそれでよいのか。国民が納得しているのか
 円安、エネルギー高騰、物価高、そして低賃金。庶民生活はかつてなく苦しい。福祉も教育も、コロナ対策も、医療補助にも予算が不可欠な今である。国民生活に必要な予算を削る余裕はない。それでも、軍備拡大のための増税をやろうというのか。国民生活を削らねば、軍備の拡大はできない。軍備を縮小すれば、その分だけ国民生活を豊かにできる。さあ、この矛盾をどうする。

 本日午前に開かれた自民党の会合では、軍拡財源確保のための増税には「反対の大合唱」が起きたとの報道。これは、興味深い。軍拡と軍事費倍増を煽っても、増税には反対というのだ
 与党の税制調査会には「所得税、法人税を含めて白紙で検討する」(自民党の宮沢洋一税制調査会長)との声があり、基幹税の増税議論が行われる見通しだ。ただ、自民党内には増税に消極的な声も強く、調整は難航が予想されるという。一つ間違えば、国民から見離されかねない。

 さあ、防衛費増額の財源をどう手当てするのか。まさか、禁じ手の「戦時国債」発行でもあるまい。とすれば、軍拡は確実に民生を圧迫することになる。 

30- 米国政府に従って中国との戦争へ向かっていた台湾の与党が地方選挙で大敗

 1126日に実施され台湾地方選挙で、蔡英文総督の率いる民主進歩党が中国と友好関係を維持し経済活動を活発にしようとしている国民党大敗、蔡主席を辞任しました。民主進歩党は中国からの独立を主張し、その実現のためにアメリカの支配層へ接近したのでした。

 8月2日ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問しましたが、それは日本の衆議院議長が台湾に訪問するのとは訳が違います。下院議長は大統領権限の継承順位が副大統領に次ぐ第2位なので、その行為は米国の意思を表しているとされてもやむを得なかったのでした。
 米国は一貫して台湾有事を画策しており、日本政府はその流れに乗せられて軍国大国化に舵を切ろうとしていますが、台湾の人々はその流れを拒否したのでした。
 日本人にはそういう智慧はないのでしょうか。
 櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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米国政府に従って中国との戦争へ向かっていた台湾の与党が地方選挙で大敗
                         櫻井ジャーナル 2022.11.29
 台湾で地方選挙が11月26日に実施され、蔡英文総督の率いる民主進歩党が大敗、蔡は当主席を辞任した。民主進歩党は「ひとつの中国」を否定、独立を主張している。中国と友好関係を維持し、経済活動を活発にしようとしている国民党とは対立関係にあるが、その国民党に負けたわけだ。
 民主進歩党が自力で独立を実現することは難しく、アメリカの支配層へ接近したのだが、それは台湾をアメリカの侵略拠点にすることを意味し、中国政府はそれを容認しない。
 蔡総督が行動に出なけらば中国政府も行動に出なかっただろうが、このバランスを壊すためにナンシー・ペロシ米下院議長が8月2日に台湾を訪問。そして安定を失った。

 アメリカの場合、大統領が何らかの理由で職務を執行できなくなった場合の継承順位が決められている。第1位は副大統領(上院議長)、第2位は下院議長だ。それだけの要職についているペロシが「ひとつの中国」を否定した意味は重い。それを意識しての挑発だったと言えるだろう。
 アメリカと中国との国交が正常化したのは1972年2月。その際、当時のアメリカ大統領、リチャード・ニクソンが北京を訪問して中国を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明している。つまりペロシの行動はアメリカと中国との友好関係を終わらせるという意思表示だと理解されても仕方がない。
 ニクソン政権が中国との国交を正常化させた目的のひとつは中国をアメリカ側へ引き寄せ、ソ連と分断することにあったと見られている。中国と日本が接近することもアメリカの支配層は嫌っていた

 ところが1972年9月に田中角栄が中国を訪問、日中共同声明の調印を実現するために田中角栄と周恩来は尖閣諸島の問題を「棚上げ」にすることで合意している。この合意を壊したのが菅直人政権にほかならない。2010年6月に発足した菅内閣は尖閣諸島に関する質問主意書への答弁で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張したのだ。
 そして同年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。棚上げ合意を尊重すればできない行為だ。その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。これ以降、東アジアの軍事的な緊張は急速に高まっていく

 「ひとつの中国」を壊す試みは1995年6月にもあった。李登輝総督がコーネル大学の招待を受け、講演のためにアメリカを訪問、中国政府は反発して台湾海峡の軍事的な緊張が高まり、中国軍がミサイルを発射、アメリカ軍が空母を台湾周辺へ派遣するという事態になった。そして1997年、下院議長だったニュート・ギングリッチが台湾を訪問して軍事的な緊張が高まった
 こうした好戦的な政策をアメリカで推進していたのはネオコン。彼らは1991年12月にソ連が消滅した直後、自国が「唯一の超大国」になったと認識、他国に気兼ねすることなく行動できるようになったと考える。国連中心主義を維持した細川護煕政権は彼らにとって好ましくない存在で、同政権は1994年4月に倒された。
 そして日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうとするのだが、日本人は抵抗する。それに怒ったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベルを説得して国防次官補のジョセイフ・ナイに接触、そのナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表したわけだ。
 そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後に警察庁の國松孝次長官は狙撃されている。
 すでに日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれ、アメリカ側の戦略に基づき、中国だけでなくロシアを攻撃するための中長距離ミサイルの配備を進めようとしている。これは「防衛」のためでも「反撃」のためでもなく、先制攻撃が目的だろう。
 その流れに乗ることを台湾の人びとは拒否した

2022年11月29日火曜日

敵基地攻撃能力の保有は違憲 共産・山添

 共産党の山添拓政策副委員長)氏27日、NHK「日曜討論」に出演し、安保3文書改定に関する政府有識者会議の報告書について、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有や大軍拡計画を批判し、軍拡財源を増税にたよる方針には消費税増税が含まれる危険を指摘しました
 山添氏は、アジア政党国際会議(ICAPP)で採択された「紛争解決の唯一の道としての対話と交渉を強調している」文書を例に挙げ、「これがアジアの本流だ」として岸田政権はまともな外交戦略がなく「軍事一辺倒」であると批判し、対話と交渉による平和の外交ビジョンを提案しました。
 更に「反撃能力」の保有を認めることは、これまで憲法上保有できないとしてきた政府見解を「百八十度転換し、憲法違反を公然と進めるもの」で、「敵基地攻撃能力が集団的自衛権とセットで使われると、日本が攻撃されていないのにアメリカの戦争で自衛隊が米軍と一体になって相手に攻め込むことになるので、相手にとって先制攻撃とな反撃を招く日本が戦争に巻き込まれていくきわめて危険な道に進もうとするものだ」と強調しました。
 また、防衛産業の育成、政府と大学、民間が一体となって軍事研究開発、空港や港湾の有事への備え、自治体と住民の協力も得て国力を総合するなどとしていることについて「あらゆる分野を軍事最優先で動員する。まるで国家総動員体制だ。過去の戦争と同じ過ちを繰り返しては絶対にならない」と強調しました。
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敵基地攻撃能力の保有は違憲 対話・交渉の平和外交を
NHK日曜討論 山添政策副委員長が主張
                       しんぶん赤旗 2022年11月28日
 日本共産党の山添拓政策副委員長は27日、NHK番組「日曜討論」に出演し、安保3文書改定に関する政府有識者会議の報告書について各党代表と討論しました。山添氏は「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有や大軍拡計画を批判し、軍拡財源を増税にたよる方針に消費税増税の危険を指摘。岸田政権はまともな外交戦略がなく「軍事一辺倒」だと述べ、対話と交渉による平和の外交ビジョンを提案しました。自民、公明、日本維新の会、国民民主は「敵基地攻撃能力」保有や軍事費増額が必要だと主張。立憲民主党も理解を示しました。(詳報は下掲

 山添氏は、中国の覇権主義的行動と北朝鮮の相次ぐミサイル発射を厳しく批判した上で、「軍事に軍事で対応すればエスカレートを招く」「外交的解決の姿勢がないまま、危機感をあおるばかりの(岸田政権の)対応は最悪だ」と批判。日本共産党が掲げる「平和の枠組みをつくる外交ビジョン」を紹介し、「あれこれの国を排除するのではなく、地域の全ての国を包み込むインクルーシブ(包摂的)な平和の枠組みが重要だ」と訴えました。アジア政党国際会議(ICAPP)で採択された文書は、「紛争解決の唯一の道としての対話と交渉を強調している」とし「これがアジアの本流だ」と主張しました。
 自民党の小野寺五典元防衛相が「軍事力や経済力を背景にした外交でないと前に進まない」と主張したのに対し、山添氏は「有識者会議の報告書では軍事力強化の話ばかりしている」と反論しました。
 山添氏は、同報告が「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有と増強を「不可欠」としていることについて、政府は相手に攻撃的脅威を与えるような兵器は憲法上保有できないとしてきたとして、「それを百八十度転換し、憲法違反を公然と進めるものだ」と強調。岸田政権が購入を検討している米国製の巡航ミサイル・トマホークについて、「もっぱら攻撃のための兵器だ」「大量保有することは、相手にとって先制攻撃の可能性のある脅威となる」と批判しました。
 軍拡財源を巡り、小野寺氏が「数字ありきではない」と述べたのに対し、山添氏は「自民党が選挙公約でGDP(国内総生産)比2%という数字を出している」と突き付け、「岸田首相がバイデン大統領に『相当な増額』を約束した」と批判。「アメリカの要求にこたえようとするものだ」と述べました。
 報告書が財源について「幅広い税目による負担」や「企業の努力に水を差すことのないよう、議論を深めていくべき」と明記していることをあげて、「大企業の負担にならないように気を使って国民全体で負担せよということであれば、消費税増税も排除されない」と批判しました。
 山添氏は、政府の税調では消費税のさらなる増税まで議論している状況だとし、「国を守るためだから国民は我慢せよというなら、かつての戦争と同じだ。平和も暮らしも押しつぶす道を歩んではならない」と強調しました。


NHK日曜討論 山添政策副委員長の発言
                       しんぶん赤旗 2022年11月28日
 日本共産党の山添拓政策副委員長は27日のNHK「日曜討論」で、政府が年末の安保関連3文書改定の中で狙う「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有や軍事費増額の財源などについて、防衛力強化に向けた有識者会議の報告を踏まえて各党の外交・安全保障担当者と議論しました。

平和への具体的外交ビジョンを
 北朝鮮の相次ぐミサイル発射や台湾海峡をめぐる中国の覇権主義的行動など日本周辺の安全保障環境について山添氏は「絶対に戦争をさせない具体的な外交戦略が重要だ」と指摘しました。
 その上で、トルコ・イスタンブールで行われたアジア政党国際会議(ICAPP)で、日本共産党の志位和夫委員長がASEAN(東南アジア諸国連合)と協力して、あらゆる国を排除せず東アジアの地域のすべての国を包摂して平和の枠組みをつくる外交ビジョンを訴えたことを紹介。「採択された文書では、ブロック政治を回避する紛争解決の唯一の道としての対話と交渉を強調している。これがアジアの本流だ」と語り、「(政府に)平和のための具体的な外交ビジョンがないということが最大の問題だ」と批判しました。
 自民党の小野寺五典元防衛相は「外交の背景には、その国を囲む力がある程度必要だ。防衛力や経済力がしっかりあることを背景にした外交努力でないと前に進まない」と軍事力一辺倒を正当化しました。

戦争に巻き込む敵基地攻撃能力
 敵基地攻撃能力をめぐる議論では、小野寺氏が「盾の役割として『反撃能力』は重要だ」と主張。公明党の佐藤茂樹外交安保調査会長も「相手の武力攻撃を断念させる抑止力として『反撃能力』を位置付ける意義を共有している」と発言しました。立憲民主党の渡辺周元防衛副大臣や国民民主党の前原誠司代表代行、日本維新の会の三木圭恵衆院議員も「反撃能力」の保有を「現実的だ」などとして認める考えを示しました。
 山添氏は、「反撃能力」の保有を認めることは、これまで憲法上保有できないとしてきた政府見解を「百八十度転換し、憲法違反を公然と進めるものだ」と批判。「敵基地攻撃能力が集団的自衛権とセットで使われると、日本が攻撃されていないのにアメリカの戦争で自衛隊が米軍と一体になって相手に攻め込む(ことになる)。これは相手にとって先制攻撃となって反撃を招く。日本が戦争に巻き込まれていく、きわめて危険な道に進もうとするものだ」と強調しました。
 敵基地攻撃能力と専守防衛の関係が論点になり、佐藤氏は「反撃能力」の行使に関し、安保関連法が定める「存立危機事態」でも可能だとする認識を示しました。山添氏は「攻撃される前に相手の基地をたたくもので専守防衛を超えることは明らかだ」と批判しました。
 さらに山添氏は、岸田政権が米国政府に巡航ミサイル・トマホークなどの購入を打診していると報じられたことをあげ、「(敵基地攻撃能力が)いくら反撃のためだと主張しても、相手にとっては先制攻撃の可能性のある脅威だ。軍事対軍事がエスカレートすることになり、全面戦争につながってしまう」と述べました。

防衛政策の基本逸脱の軍事費増
 来年度から5年間の軍事費の規模が総額48兆円に増額などとされている問題では、「数字ありきではない。積み上げで検討する」(小野寺氏)、「数字が独り歩きしている」(佐藤氏)と否定する一方、増額容認の意見が各党から相次ぎました。
 山添氏は「(増額によって)日本の軍事費はアメリカ、中国に次いで世界3位とロシアより軍事大国になる。専守防衛や軍事大国にならないとしてきた防衛政策の基本を逸脱することは明らかだ」と批判。小野寺氏の発言に対しては「自民党は選挙公約でGDP(国内総生産)比2%という数字を出している」と指摘しました。
 また、報告書で防衛産業の育成、政府と大学、民間が一体となって軍事研究開発、空港や港湾の有事への備え、自治体と住民の協力も得て国力を総合するなどとしていることは「あらゆる分野を軍事最優先で動員する。まるで国家総動員体制だ。過去の戦争と同じ過ちを繰り返しては絶対にならない」と強調しました。

大軍拡のために大増税するのか
 軍事費増額の財源について各党から「将来的には安定財源が必要だ」(小野寺氏)、「国防に関わるものは国債でやるべきではない」(前原氏)などと増税ありきの発言が続きました。佐藤氏は、安定財源を確保すべきだとした上で「いきなり増税は難しい。一時的には国債があっても良い」と国債を容認する姿勢を示しました。

 山添氏は、報告書は国民全体で幅広い税目による負担が必要としているなどとして「大企業の負担にならないように気を使って国民全体で負担せよということであれば、消費税増税も排除されないと言うことだ」と指摘。「大軍拡のために大増税をするのか。国民の暮らしにはまったく気をつかわずに、国を守るためだから国民は我慢せよというのであればかつての戦争と同じだ」と批判し、「平和も暮らしも押しつぶす大軍拡の道を進んではならない」と主張しました。

日本平和大会 26~27日に行われる

 26~27オンラインで開かれた「なくそう 日米軍事同盟・米軍基地2022年日本平和大会」には、延べ4000人が参加しました。
 大会では岸田政権の「戦争する国づくり」、軍事予算倍増・大軍拡に批判が集中し、それらを批判しないメディアの姿勢も批判されました。
 2日目の、日米軍事同盟発効70年にあわせフリージャーナリストの布施祐仁氏と室蘭工業大学大学院の清末愛砂教授(憲法学)トークセッションでは、布施氏は「東アジア地域のすべての国が参加する集団的安全保障体制で軍事同盟に依拠しない安全保障ができる」と指摘し、清末氏は「軍事力ではなく外交に依拠する安全保障を。暴力による支配関係をつくらない」ことの必要性を強調しました。
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大軍拡より9条いかせ 日本平和大会始まる
                      しんぶん赤旗 2022年11月27日
 岸田政権が年末までに安保3文書を改定し「敵基地攻撃能力」を保有し、5年間で軍事費を倍増させる大軍拡方針を示すなか26日、「なくそう! 日米軍事同盟・米軍基地2022年日本平和大会」がオンラインで開催され全国から1700人以上が参加しました。
 開会集会であいさつした全労連の小畑雅子議長は、岸田政権が狙う「戦争する国づくり」を許さない運動の強化が求められていると述べ、「大軍拡路線ではなく憲法9条をいかし、東アジアに非核・平和の流れを広げよう」と語りました。
 主催者報告で日本平和委員会の千坂純事務局長は、岸田政権が軍事費倍増の財源を国民への増税や社会保障関連予算の削減で生みだそうとしていると告発。この動きに反対する国民的大運動を呼びかけました。
 日本共産党の小池晃書記局長は、岸田政権は「専守防衛」を踏み破る「敵基地攻撃能力」の保有も進めようとしていると指摘。有識者会議が示した安保3文書の改定は大軍拡のための大増税を―というとんでもない中身だと批判しました。
 海外から、ウクライナ、イギリス、韓国、ベトナムの代表が各国での取り組みを語りました。
 ジャーナリストの金平茂紀さんがゲストスピーチ。「かつてない日米軍事演習が行われているにもかかわらず、この事実をなぜ日本のメディアは報道しないのか」と指摘。大軍拡により世界第3位の軍事大国になることについて国民は考えなければならないと語りました。
 軍事基地強化とのたたかいが首都圏や沖縄など全国各地から報告されました。
 沖縄県の玉城デニー知事、立憲民主党、社民党、「沖縄の風」の国会議員から連帯メッセージが寄せられました。


大軍拡阻止・憲法守れ 国民的大運動を呼びかけ
日本平和大会閉会
                      しんぶん赤旗 2022年11月28日
 「なくそう! 日米軍事同盟・米軍基地2022年日本平和大会」(オンライン)は27日、閉会集会を開き、岸田政権を打倒し、「敵基地攻撃能力」保有や大軍拡を阻止し憲法を守る国民的大運動を呼びかけました。2日間でのべ4000人が参加しました。
 日米軍事同盟発効70年にあわせフリージャーナリストの布施祐仁氏と室蘭工業大学大学院の清末愛砂教授(憲法学)がトークセッション。ロシアのウクライナ侵略など軍事同盟・集団的自衛権が戦争や軍拡競争につながること、在日米軍基地の存在が米軍の軍事介入で日本を戦争に巻き込むことにつながることなどを解明。布施氏は「東アジア地域のすべての国が参加する集団的安全保障体制で軍事同盟に依拠しない安全保障ができる」と指摘。清末氏は「軍事力ではなく外交に依拠する安全保障を。暴力による支配関係をつくらない、憲法24条の個人の尊厳と男女の本質的平等の人間関係が必要です」と語りました。

 米軍基地からの有害なフッ素化合物の流出被害について特別報告がありました。普天間基地がある沖縄県宜野湾市の「#コドソラ」の与那城千恵美さんは「住民の血液からも検出され、先祖代々受け継いだ水や土、娘が通う小学校の土からも検出された。国は対策をとってほしい」、横須賀基地がある神奈川県・横須賀平和委員会の田中隆雄事務局長「米軍は泡が出ても異常値を検出するまで認めない。日米地位協定の抜本的改定を」と訴えました
 各団体が「コロナ禍で休止していた実行委員会を再開」(若者憲法集会実行委員会)、「原水爆禁止世界大会にあわせて東京学生ツアー」(東京学生平和ゼミナール)などリレートーク。

 次回開催地の鹿児島県(準備会)は、馬毛島の軍事基地化や鹿屋基地への米軍無人機配備などの実態を報告し「基地のない鹿児島、基地のない日本を」と決意を語りました。

29- 「円安」 実質過去50年間で最も安い水準にある意味(東洋経済)

 東洋経済オンラインにリチャード・カッツによる ~ (円は)実質過去50年間で最も安い水準にある意味」という記事が載りました。経済学の知識がないと十分には分かり兼ねる内容ですが、10年近く継続しているアベノミクスが如何に日本の経済を根本からダメにしたかは良く知ることができます。
 そうかといって今さら金利を上昇させれば中小企業は軒並み倒産に追い込まれるし・・・で、予想された通り日本はいま身動きが出来ない状態にあります。
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「円安」で起こっている日本人が知りたくないこと 実質過去50年間で最も安い水準にある意味
          リチャード・カッツ  東洋経済オンライン 2022年11月24日
短期的には、アメリカのインフレ率急落を祈ることが、超円安に対処するための日本の唯一の選択肢かもしれない。しかし、長期的には、日本企業の競争力を根本的に強化しなければならない。なぜなら、それが「実質」円安の根本原因だからである(「実質」円の定義と経済的意義は後述する)。円安は、日本企業が国際市場で元気をなくしているから起きているのだ。
まず、短期的な話をしよう。この1年半、円安の唯一最大の要因は、アメリカの金利と日本の金利の差である。そして、金利の上昇は、アメリカの高インフレに対するアメリカの武器である。日米金利差が大きければ大きいほど、日本からアメリカへの資金流入が増え、円安が進む。
逆に、11月10日に一時、1ドル=146円から138円まで急激にドル高になったように、アメリカのインフレ率が下がれば、アメリカの金利が下がり、円高になる。つまり、アメリカのインフレ率の数値は、日本銀行がどうこうするよりも、はるかに円に対して大きな影響を与えるのである。









 (出所:米ウォールストリート・ジャーナル紙をもとに筆者作成)© 東洋経済オンライン

金利を上げればゾンビ企業が次々破綻する
日本銀行が円高になるように金利を上げるべきだという人がいる。しかし、四半世紀にわたるゼロ金利に近い状態が、日本の企業や政府を低金利中毒にしてしまった。現在、銀行融資の17%が0.25%以下、37%が0.5%以下の金利で行われている
その結果、現在支払い能力があると錯覚している多くのゾンビ企業は、金利上昇を強いられると突然債務危機に直面することになる。要するに、日銀が日米金利差3.5~4%を縮めるほど金利を上げるには、経済がもろすぎるのである。
もし金利差だけが円安の理由なら、インフレと金利が正常に戻れば円は反発する可能性がある。しかし、歴史的な円安は、日本の基礎的競争力の劇的な劣化を反映したものでもある。

      実質実効為替レート(出所)日本銀行 © 東洋経済オンライン
前述の通り、実質実効為替レートは過去50年間で最も安い水準にある。実質実効為替レートとは、日本の貿易相手国すべてに対する円のレートを、日本とそれ以外の国の物価動向の違いによって調整したものである。
なぜそれが重要なのか、説明しよう。
まず、実質実効為替レートは、日本の輸出企業が海外の顧客に請求できる価格を測るものである。円安になると、日本企業はよほど安い価格でないと輸出ができなくなる。品質や革新的な機能によるプレミアム価格を要求することができなくなるのだ。
さらに悪いことに、国際競争力のあるスマートフォンのような必需品を十分に生産することができなくなっている。同時に、実質的な円安は、日本の消費者や中小企業が、食品やエネルギーといった輸入集約型の製品に対して、より高い価格を支払わなければならないことを意味している。
実際、円安は進行しており、金利差がある場合、10~20年前に比べて現在は20ポイント程度円安になっている。つまり、仮に金利差が2ポイントに戻ったとしても、2000年〜2012年の円/ドルレートは100円前後であったのに対して、現在は120円前後である。

円安になっても日本企業の競争力は低下
最も心配なのは、円安になっても、日本企業の競争力が低下していることだ。かつて日本は、今よりずっと円高だった時代にも慢性的な貿易黒字を享受していた。
しかし、この10年以上、日本は慢性的な貿易赤字に苦しんでいる。この10年間、実質円レートは1994年から2012年の間よりも30%安くなっているにもかかわらず、である。日本企業は、加速するランニングマシーンの上で衰弱した人のようなもので、どんどん速く走ってみても、ついていくのが難しいのである。
エレクトロニクスのようなかつてのスーパースター産業でさえ、今や慢性的な赤字に陥っている。エレクトロニクスは輸出が減り、輸入が増える。2000年当時、日本の電機メーカーは7兆円の貿易黒字を計上しており、これはGDPの1.3%に相当する額だった。それが2018年には1.2兆円の貿易赤字に転落した。
さらに、これらの企業は、コストの低い他国で生産しても競争することが困難になっている。2008年から2020年にかけて、世界の電子機器売上高は40%急増したにもかかわらず、日本の電子機器ハードウェアメーカー上位10社は、いずれもその間に世界売上高が低迷している。さらに、2010年から2020年にかけて、日本のエレクトロニクス企業の世界総売上高は30%も急落した。
円安は日本経済の病巣の症状であるだけでなく、病巣を悪化させる。日銀は、円安が日本に純益をもたらすと主張するが、それは間違いである。これはゴルディロックスの原則で、弱すぎる通貨は強すぎる通貨と同じくらいダメージを与えるというものだ。日本の経済学者の多くは、この問題に関して日銀の意見に反対している。
一方で、円安は日本の輸出とGDPに以前ほど貢献していない。日本の実質(価格調整後)貿易収支の改善による実質GDP成長率への寄与は、最近の平均で年率0.1%と、誤差程度のわずかなものである。これは、円高だった数十年前と比較しても、けっして高くはない。
一方、円安は実質賃金や消費者の購買力、中小企業の収益力を著しく低下させている。それは、輸入集約的な食料とエネルギーの大幅な値上げを引き起こすからだ。
過去18カ月間、そして過去10年間の総物価上昇の9割は、食料とエネルギーに起因している。その他の経済分野の物価は、2012年から2022年までの10年間で、わずか2%しか上昇していない。

外国の生産者により多くのお金を払うように
これは、日銀が生み出そうとして失敗した健全な2%のインフレとはほど遠いものである。輸入品による物価上昇は、日本の家計から外国の生産者に所得を移転させる。また、日本の家計から日本の多国籍企業へも間接的に所得を移転する。
後者の仕組みはこうだ。日本の消費者は、自分の所得の多くを海外の生産者に支払う。その一部は、日本の多国籍企業に還元される。なぜなら、多国籍企業はより多く輸出することができ、海外の関連会社で得た利益は本国へ送金される際に、より多くの円を生み出すからである。
円安は、賃金抑制や消費税増税と相まって、2019年の価格調整済み家計消費(コロナ禍前)が2013年より1%低く、現在は2013年より2.6%低くなっている理由の一部である。戦後を通じて、これほど長期にわたって家計消費が落ち込んだことは過去にない。
日本の生産性・革新性の底上げを行い、日本企業の国際競争力を高める改革が必要である。円ショックは警鐘を鳴らしている。問題は、政策立案者がこの警鐘を本当に聞き入れ、先見の明のある日本の専門家が提案した多くの有益な提案を最終的に採用できるかどうかである。