2013年8月31日土曜日

税理士有志が消費税増税中止をアピール

 消費税の増税に反対する税理士が29日、税の専門家として日本経済を低迷させる増税の中止を求めるアピールを発表しました。

 アピールは、
消費税は所得の低い人には負担が重く、所得の多い人には負担が軽いという不公平な税制であり、働く者の大部分の給与は引下げられ、中小企業の収益が悪化しているなかでの消費税率の引上げは、国民生活や中小企業の営業を破壊することになる。
・輸出については免税(消費税率0%)とされ、「仕入に含まれる」とされる消費税相当額が還付されるという不公平がある。
・消費税の導入以降、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられ、消費税収は増えたものの国の税収全体は減っている。(⇒大企業への行き過ぎた減税や富裕層への優遇税制を見直す必要がある)
と述べて、消費税増税の実施は中止すべきとしています。

 ひところは「消費税は完全に平等な税率だから」などと口にするTVコメンテータがいましたが、逆進性が周知されてからはさすがにそんなことをいう人はいなくなりました。

 消費税は、突如「直間比率」という新しい概念が導入されて、1988年・竹下政権時代に強引に導入されました。しかしながらそれ以降は消費税率がアップする度に、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられたため、庶民の負担は増える一方であったのに対して、税収の方は相殺されて却って減りました。
 政府と財務省は法人税率が高いと国内企業が海外に逃避するということを理由にして税率を下げてきました。しかし実際に逃避するような企業はなかったし、近年はそれとは全く別の理由で海外に転出する国内企業が増えています。国内企業が逃避するから、というのはまやかしの理由でした。

 そして消費税の導入を機に、それまでは健全であった日本の国家財政は不健全な方向へと向かい始めました。
 その都度国家財政を立て直すためにと庶民に負担を要求する一方で、富裕層と企業の税負担はその分軽減してきたので、当然の成り行きといえます。その結果、大企業の内部留保は実に280兆円に達しました。

 今回もまた消費税の増税を前提にして、法人税率の軽減が論議されています。
 来年もしも消費税アップが実現するようなことがあれば、たちまち大不況が到来し、中小企業や商店が倒産することが予想されます。

 以下にしんぶん赤旗の記事と税理士有志のアピール(案)を紹介します。
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税理士137人が「アピール」 消費税増税中止求める
しんぶん赤旗 2013年8月30日
 安倍政権が4月に強行しようとしている消費税の増税に反対する税理士が29日、衆院第2議員会館で記者会見を開き、税の専門家として日本経済を低迷させる増税の中止を求めるアピールを発表しました。北海道から沖縄まで全国36人の税理士が呼びかけ、29日現在で137人が賛同しています。

 アピールは、大企業や高額所得者の所得が増えている一方で、働く者の賃金は引き下げられ、中小企業の収益は悪化していると指摘。所得の低い人に負担が重い不公平な税制である消費税の増税は、国民生活や中小企業の営業を破壊すると指摘しています。
 また、大企業へのゆきすぎた減税や富裕層への優遇税制を見なおすことの必要性を指摘。国民の暮らしと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やすことも税収増をはかるためには重要と強調しています。「格差が広がり、経済が低迷している今日、消費税の増税実施は中止すべきです」と訴えています。

 会見では、税理士の浦野広明、湖東京至、佐伯正隆、永沢晃、平石共子、青木輝光の各氏が、増税中止への思いを語りました。
 浦野氏は「国政の指針は日本国憲法です。税金は憲法にもとづき、負担能力に応じた取り方であるべきです」と語りました。湖東氏は「多くの中小企業は、消費税を滞納すると融資が受けられないので、給料や経費を削って必死に納めています。消費税が8%や10%になったら、これらの事業者の大半は事業を続けられなくなります」とのべました。


消費税増税の中止を求める税理士のアピール(案)

税理士の皆さん、国民の皆さんへ
 私たちは税に関する専門家として、来年4月、再来年10月からの消費税率の8%・10%への増税は中止すべきであるとの思いからこのアピールを発表しました。

消費税は不公平な税制です
 政府も「消費税率の引上げに伴う低所得者対策の検討」に言及せざるを得ないように消費税は所得の低い人には負担が重く、所得の多い人には負担が軽いという不公平な税金です。大企業や高額所得者の所得が増えている一方、働く者の給与は引下げられ、中小企業の収益が悪化しているなかでの消費税率の引上げは国民生活や中小企業の営業を破壊することになります。
 消費税法の仕組みでは「消費税の納税義務者は事業者」とされ税務署に納税するのは事業者であり、また、「売上等には消費税が含まれる」ことから消費税相当額を売上高のなかに転嫁できるかどうかは個々の事業者の努力いかんとなります。 
 力の弱い事業者ほど消費税の転嫁ができず身銭を切って消費税を納めざるを得ないことになり、税率の引上げはこれら事業者の死活問題となります。
 さらに、輸出については免税(消費税率0%)とされ、非課税とは異なり「仕入に含まれる」とされる消費税相当額が還付されるという不公平も拡大することになります。

能力に応じた税負担が必要です
 「国の財政が大変だから」「社会保障のためなら増税も仕方ない」というご意見もありますが、税の集め方や使い方を変える必要があるのではないでしょうか。
 消費税の導入以降、法人税率、所得税・相続税の最高税率が引下げられ、消費税収は増えたものの国の税収全体は減ってきました。消費税率を3%から5%に引上げた際には、回復しかかった経済が失速し、国全体の税収は14兆円も減少しました。
 大企業への行き過ぎた減税や富裕層への優遇税制を見直すことが必要です。国民の暮しと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やすことも税収を増やすためには重要なことです。さらに、税の使い道を変え、ムダな支出を削減し、国民生活の向上、社会福祉の充実などに効果的に支出することで経済・財政も活性化してきます。

今回の増税実施は中止すべきです
 消費税に関しては様々なご意見がありますが、格差が広がり、経済が低迷している今日、消費税の増税実施は中止すべきです。
 
 

2013年8月30日金曜日

図書館の自由に関する宣言 (全文)

 
 「はだしのゲン」の閲覧制限が問題になったときに、愛媛新聞は8月24日の記事で、「図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく…国民の利用に供する」という、1954年に採択された「図書館の自由に関する宣言」を紹介しました。
 そして多くの人たちがそういう格調高い宣言があったことを知りました。

 以下に「図書館の自由に関する宣言」の全文を紹介します。
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図書館の自由に関する宣言
1954 採 択
1979 改 訂

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
 日本国憲法は主権が国民に存するとの原理にもとづいており、この国民主権の原理を維持し発展させるためには、国民ひとりひとりが思想・意見を自由に発表し交換すること、すなわち表現の自由の保障が不可欠である
知る自由は、表現の送り手に対して保障されるべき自由と表裏一体をなすものであり、知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する。
知る自由は、また、思想・良心の自由をはじめとして、いっさいの基本的人権と密接にかかわり、それらの保障を実現するための基礎的な要件である。それは、憲法が示すように、国民の不断の努力によって保持されなければならない。
 すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。この権利を社会的に保障することは、すなわち知る自由を保障することである。図書館は、まさにこのことに責任を負う機関である。
 図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、図書館間の相互協力をふくむ図書館の総力をあげて、収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである。
 わが国においては、図書館が国民の知る自由を保障するのではなく、国民に対する「思想善導」の機関として、国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした歴史的事実があることを忘れてはならない。図書館は、この反省の上に、国民の知る自由を守り、ひろげていく責任を果たすことが必要である。
 すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。
外国人も、その権利は保障される。
 ここに掲げる「図書館の自由」に関する原則は、国民の知る自由を保障するためであって、すべての図書館に基本的に妥当するものである。
 
この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する
 図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。
 図書館は、自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際、
(1) 多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する。
(2) 著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
(3) 図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
(4) 個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。
(5) 寄贈資料の受入にあたっても同様である。図書館の収集した資料がどのような思想や主 張をもっていようとも、それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない。
 図書館は、成文化された収集方針を公開して、広く社会からの批判と協力を得るようにつとめる。

第2 図書館は資料提供の自由を有する
 国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
提供の自由は、次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべきものである。
(1) 人権またはプライバシーを侵害するもの
(2) わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの
(3) 寄贈または寄託資料のうち、寄贈者または寄託者が公開を否とする非公刊資料
 図書館は、将来にわたる利用に備えるため、資料を保存する責任を負う。図書館の保存する資料は、一時的な社会的要請、個人・組織・団体からの圧力や干渉によって廃棄されることはない。
 図書館の集会室等は、国民の自主的な学習や創造を援助するために、身近にいつでも利用できる豊富な資料が組織されている場にあるという特徴を持っている。
図書館は、集会室等の施設を、営利を目的とする場合を除いて、個人、団体を問わず公平な利用に供する。
 図書館の企画する集会や行事等が、個人・組織・団体からの圧力や干渉によってゆがめられてはならない。

第3 図書館は利用者の秘密を守る
 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。
 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。

第4 図書館はすべての検閲に反対する
 検閲は、権力が国民の思想・言論の自由を抑圧する手段として常用してきたものであって、国民の知る自由を基盤とする民主主義とは相容れない。
検閲が、図書館における資料収集を事前に制約し、さらに、収集した資料の書架からの撤去、廃棄に及ぶことは、内外の苦渋にみちた歴史と経験により明らかである。
したがって、図書館はすべての検閲に反対する。
 検閲と同様の結果をもたらすものとして、個人・組織・団体からの圧力や干渉がある。図書館は、これらの思想・言論の抑圧に対しても反対する。
 それらの抑圧は、図書館における自己規制を生みやすい。しかし図書館は、そうした自己規制におちいることなく、国民の知る自由を守る。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
 図書館の自由の状況は、一国の民主主義の進展をはかる重要な指標である。図書館の自由が侵されようとするとき、われわれ図書館にかかわるものは、その侵害を排除する行動を起こす。このためには、図書館の民主的な運営と図書館員の連帯の強化を欠かすことができない。
 図書館の自由を守る行動は、自由と人権を守る国民のたたかいの一環である。われわれは、図書館の自由を守ることで共通の立場に立つ団体・機関・人びとと提携して、図書館の自由を守りぬく責任をもつ。
 図書館の自由に対する国民の支持と協力は、国民が、図書館活動を通じて図書館の自由の尊さを体験している場合にのみ得られる。われわれは、図書館の自由を守る努力を不断に続けるものである。
 図書館の自由を守る行動において、これにかかわった図書館員が不利益をうけることがあっては ならない。これを未然に防止し、万一そのような事態が生じた場合にその救済につとめることは、日本図書館協会の重要な責務である
(1979.5.30 総会決議)
 
 

集団的自衛権の行使は歴代長官認めず

 安倍首相によって異例の起用をされた小松内閣法制局長官は、記者会見で以下のような一問一答を行っています。(23日 産経新聞より)

Q:集団的自衛権の行使容認に向けた解釈見直しにどう取り組むか
A:「内閣法制局設置法では法律問題について内閣、首相、各省大臣に意見を述べると書いてある。内閣法制局は内閣の重要な機関として、その議論に参加するのは当然。内閣法制局の役割・任務だ」

Q:解釈見直しには慎重論もある
A:「積み重ねた政府の見解を無視して好き勝手に(見直し)できることではない。法治国家において法的安定性、継続性、整合性は非常に重要なことで、そういうことも十分勘案してやっていく必要がある。その上で、首相、官房長官が発言しているように最終的には総合的に判断し、内閣が全体として結論を出すべきものだろう」

 法治国家において法的安定性、継続性、整合性は非常に重要なので、好き勝手な見直しは許されないとする一方で、「最終的には内閣が全体として結論を出すべきもの」とも述べています。
 この最後のところは他紙でも見出しに使われているほど意味深な表現です。素直に解釈すれば内閣の決定には容喙しないということであり、それこそが安部首相が望んでいることです。
 しかしそれでは内閣法制局の存在意義はなくなります。いくら長官とはいえ過去半世紀以上に亘って積み重ねられてきたシステムを、そんな風に一挙に放擲できるものでしょうか。
 そんな無法を行ってまでも「集団的自衛権の行使」を実行しようというのであれば、安倍氏も小松氏も恐るべき確信犯です。

 しんぶん赤旗の記事、「集団的自衛権行使の容認 歴代長官異議あり 憲法解釈の信頼損なう」を紹介します。
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集団的自衛権行使の容認 歴代長官異議あり 憲法解釈の信頼損なう
しんぶん赤旗 2013年8月30日
 安倍内閣が解釈改憲で強行しようとしている「集団的自衛権」行使の容認について、政府の憲法解釈を国会で答弁してきた内閣法制局長官経験者から批判や異論が相次いでいます。世論調査で国民の多数が「集団的自衛権」行使容認に反対しているのに加え、与党内からの異論にも直面し、安倍内閣は深刻な矛盾に直面しています。

 「集団的自衛権」は、「自衛」とは無関係の概念で海外での武力行使を可能とするもの。大国が侵略や軍事介入する際の口実に使われてきました。歴代政府もその行使は「憲法上許されない」としてきました。

 安倍内閣はこれを可能にするため、憲法解釈を変更したうえ、安全保障基本法で裏付けようとしています。憲法研究者の小沢隆一さんは「解釈改憲は裏口入学のようなもの。そのうえ安全保障基本法をつくって集団的自衛権を行使できるようにしようというのは、いわば立法クーデターです」と指摘します。

 この解釈改憲に異論を表明したのが、阪田雅裕(まさひろ)、山本庸幸(つねゆき)、宮崎礼壱(れいいち)の法制局長官経験者の3氏。この間の記者会見や新聞社のインタビューなどで解釈変更は「難しい」「できない」などと明言しています。

 阪田氏は第2次・第3次小泉内閣時の長官。「朝日」(9日付)で「集団的自衛権の行使とは海外で戦闘に加わるということだ」と指摘。「集団的自衛権の問題は日本国憲法の三大原理の一つ、平和主義に関わる。…(国会の憲法論議の)蓄積を無視し、今までのは全部間違っていたということがあっていいのか」と語っています。

 今年8月まで長官だった山本氏(最高裁判事)も20日の会見で「今の憲法の下で半世紀以上議論され、維持されてきた憲法解釈であり、私自身は難しいと思っている」と発言。第1次安倍内閣時の長官だった宮崎氏は時事通信のインタビュー(27日)で「(解釈変更は法律上)ものすごく、根本的な不安定さ、脆弱(ぜいじゃく)性が残る。やめたほうがいいというか、できない」と語っています。

 海外の法制機関に詳しい鹿児島大の横大道聡(よこだいどうさとし)准教授は「仮に法制局が安倍首相のいいなりに憲法解釈の変更を認めてしまえば、憲法解釈の信頼性が根本から失われてしまうので、容易にのめる話ではありません」と指摘します。

 内閣法制局 内閣に置かれ、閣議にはかる法律案や政令案、条約案などの審査や法令の解釈を行います。また、法律問題について首相らに意見を述べることを任務としています。その長が内閣法制局長官です。
 
 

秘密保護法案の危険性

 政府が秋の臨時国会に提出する予定の秘密保護法案の全貌は不明ですが、「特定秘密保護法」という名称で、その「特定秘密」の範囲「安全保障に支障の恐れ」のある「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の四分野とされ、そのうちから大臣などの各省庁や行政機関の長が任意に「特定秘密」事項を指定できるというものです。
 しかし肝心なその指定が妥当なものであるかのチェック機能はありません

 また「安全保障に支障の恐れ」といい「安全脅威活動」といい、従来と言葉遣いは多少変わりましたが、その定義は依然としてあいまいです。これでは従来から懸念されてきたとおりいくらでも拡大解釈が出来るので、国民の知る権利や表現の自由などが侵害されて大変なことになります。

 1985年にも、この秘密保護法案とよく似た『国家秘密(スパイ防止)法案』が提出されましたが、そのときには「戦時下の監視体制に逆戻りする」という世論の猛反発を受けて結局廃案となりました。
 今回はそのときよりもさらに対象とする秘密の範囲が拡大された危険なものなのですが、残念ながらそのときのような反対世論の盛り上がりはまだ見られません。

 29日、秘密保護法案に関して
  南日本新聞が(社説)「国会での慎重な議論を」を、
  愛媛新聞が(社説)「政府は国会提出方針の撤回を」を、
  中国新聞が(社説)「知る権利は大丈夫か」を、
それぞれ掲げました。

 以下に、東京新聞の記事を紹介します。
 東京新聞はこれまでも、しばしば秘密保全法の問題点を取り上げてきました(8月18日「こちら特報部」の特集など多数)。
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「機密」拡大解釈の恐れ 秘密保護法案 見えぬ意義
東京新聞 2013年8月29日 
 安倍政権が秋の臨時国会に提出を目指す特定秘密保護法案は、「国の安全保障に著しく支障を与える恐れがある」として指定する「特定秘密」が拡大解釈される可能性がある。今でも、公務員が国の機密情報を漏らすと国家公務員法や自衛隊法、日米間の協定に基づく法律で罰せられるのに、政府はさらに厳罰化して、機密情報の対象も際限なく広がりかねない法案を提出しようとしている。 (金杉貴雄)

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十八日の記者会見で「法案を提出する限り、その国会で成立を目指すのは当然だ。できるだけ国民に分かりやすい形で議論し、成立させたい」と臨時国会での成立に強い意欲を示した。

 公務員による情報漏えいを禁止する法律には、国家公務員の守秘義務違反に対する懲役一年以下または五十万円以下の罰金を定めた国家公務員法、「防衛秘密」を漏えいした場合に五年以下の懲役を科す自衛隊法がある。
 加えて、日米相互防衛援助協定(MDA)に伴う秘密保護法では、米国から供与された装備品等に関する情報を漏らせば、最長で懲役十年の罰則となる。
 政府は新たに特定秘密保護法案で、厳罰の対象を広げようとしている。政府が指定した「特定秘密」を漏らした場合には、秘密保護法と同じく最長十年の懲役を科す考えだからだ。

 問題は「特定秘密」の範囲。政府は「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の四分野と説明する。「安全保障に支障の恐れ」という定義はあいまいで、拡大解釈される余地が十分にある。しかも、この「特定秘密」を決めるのは大臣などの各省庁や行政機関の長だ。

 この法案が成立すれば、政府は重要な情報を、これを盾に隠すことができる。
 例えば、収束のめどが立たない東京電力福島第一原発など原発に関する情報について、政府が「公表するとテロに遭う危険がある」との理由で国民に伏せる事態も想定される。
 実際、原発事故の直後には、政府は「直ちに健康に影響はない」などと繰り返し、国民が知りたい情報を積極的に公表せず、信用を失った。外交でも、沖縄返還の際に財政負担を米国に約束した沖縄密約問題の情報は明らかにしなかった。同法案はそうした傾向をさらに強めかねない。
 
写真
 
 

2013年8月29日木曜日

敵基地攻撃能力の検討で日米防衛相が一致

 ブルネイを訪問中の小野寺防衛相は28日、同国のホテルで米国のヘーゲル国防長官と会談し、北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、ミサイル攻撃を受ける前に相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力を日本が保持することに関し、日米で検討していく方針で一致したということです。

 「敵基地攻撃」とは、例えば、弾道ミサイルなどで日本に攻撃を仕掛ける他国の基地を、巡航ミサイルや飛行機による空爆などで攻撃することで、他国から攻撃を受けたときに国民を守るための軍事力を保持することは許されるとする、現在辛うじて有している9条第2項との整合性から大きく逸脱するものです。当然日本がそれを主張すれば、アジア全体の軍事的緊張は著しく高まります。

 そうした解釈改憲に相当する軍事政策について、何の躊躇もなくアメリカと合意するというのは安倍政権ならではのことです。
 衆参両院で多数を握った以上何でもできる、世論の反対も目ではない、憲法9条何するものぞ、という思いなのでしょう。恐ろしい話です。

 そもそも安倍首相は02年、北朝鮮が高濃縮ウラン計画を認めた第2次核危機の際に、石破防衛庁長官が「敵基地攻撃は法理上は可能、敵基地への打撃力の保有は検討に値する」と答弁したときに、前原誠司氏らとともに「敵基地攻撃論」を打ち上げました。
 また06年に北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を行った際に、額賀防衛庁長官が「敵基地攻撃論」の口火を切ったときにも、安倍官房長官(当時)も同様の発言を繰り返しました。
 要するに集団的自衛権の行使と同様、敵基地攻撃論は安倍氏とは切っても切れない関係にあります。

 それにしても日中間の緊張が高まることを危惧しているアメリカは、この時点で日本が集団的自衛権の行使に踏み切ることには反対している(といわれているにもかかわらず、その一方で中国が大いに警戒する筈の「敵基地攻撃論」を日本にそそのかすとは、相変わらずの無原則・ご都合主義ぶりです。
 
 そして安倍首相の暴走は留まるところを知りません。

 読売新聞の記事を紹介します。
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日米防衛相会談、敵基地攻撃能力の検討で一致
読売新聞 2013年8月28日
 【バンダルスリブガワン(ブルネイ)=松下正和】ブルネイを訪問中の小野寺防衛相は28日午前(日本時間同)、バンダルスリブガワンのホテルで米国のヘーゲル国防長官と会談した。
 両氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、ミサイル攻撃を受ける前に相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力を日本が保持することに関し、日米で検討していく方針で一致した。

 小野寺防衛相は会談で、敵基地攻撃能力について、「日米の役割分担の一つで、慎重に検討することが大事だ」と述べた。有事における自衛隊と米軍の協力を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」改定の議論を通じて検討することになりそうだ。
 ヘーゲル氏は会談で、近く訪日する意向を表明した。今秋をメドに日本で開催する外務、防衛担当閣僚の「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)が念頭にあるとみられる。
 
 

2013年8月28日水曜日

秘密保全法案の概要を自民党PTに提示

 国民の知る権利、報道の自由を侵害する惧れのある秘密保全法が秋の臨時国会に提出されることになり、政府は27日、自民党プロジェクトチーム(PT)に法案の概要を提示しました。
 PT座長の町村信孝議員会合のあと記者団に、「正常な取材活動は問題ないことを法律上明確にしたい」と強調しました。ただ「何が不当な方法かは議論が分かれるかもしれない」と述べました。そんなことではとても取材の自由や報道の自由が保障されるとは思えません。

 また法案概要は「法適用に当たり、拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」と規定しているということです。しかし憲法の条文をわざわざ盛り込まなくてはならない法律とは、正に語るに落ちた話で、よくよく危険な法律であることを表しています。

 報道の自由が極めて重要なことはいうまでもありませんが、秘密保全法の問題点を「取材の自由」が保障されるかどうか、というようなところに矮小化すべきではありません。

 以下に時事通信とNHKの記事を紹介します。
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「不当な取材」定義不明確=秘密保全法案、政府が概要-自民幹部
時事通信 2013年8月27日
 政府は27日、秋の臨時国会に提出する特定秘密保全法案の概要を自民党プロジェクトチーム(PT)に提示した。会合後、PT座長の町村信孝元官房長官は同法案が報道の自由を制約しかねないとの指摘について、「正常な取材活動は問題ないことを法律上明確にしたい」と記者団に強調。ただ「何が不当な方法かは議論が分かれるかもしれない」と述べ、具体的にどのような活動が違法とされるのかは明確になっていないことを認めた。

 同法案は、安全保障や外交に関わる国の機密情報の漏えいやその教唆を処罰対象としており、取材活動にも漏えいの教唆罪が適用されるとの見方がある。法案概要は「法適用に当たり、拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」と規定しているが、自由な取材の担保には不十分との指摘も出そうだ。
 政府側は会合で、法案提出前に国民の意見を聴くパブリックコメントを実施すると説明した。

「秘密保全法案」政府が概要示す
NHK NEWS WEB 2013年8月27日
政府は、安全保障に関して特に秘匿が必要な情報を漏えいした公務員らに対し、最高で10年の懲役刑を科すなどとした「秘密保全法案」の概要を、自民党の作業部会に示し、座長を務める町村元官房長官は、正常な取材活動は問題ないことを明確にしたいという考えを示しました。

10月に召集される見通しの秋の臨時国会で、政府が成立を目指す「秘密保全法案」について、27日に開かれた自民党の作業部会で、北村内閣情報官が、概要を説明しました。
それによりますと、安全保障に関する情報を厳重に保護するため、▽特に秘匿が必要な情報を「特定秘密」に指定し、扱えるのは政府が「適正評価」を行った公務員らに限定することや、▽「特定秘密」を漏えいした公務員などに対して最高で10年の懲役刑を科すとしています。
これについて出席者からは、「外国のスパイなどから情報を守るための法整備をしなければ、国民の生命を守れない」という意見や、「法整備にあたっては、国民の基本的人権や報道の自由を侵害しないようにすることが重要だ」という指摘が出されました。
会合のあと、作業部会の座長を務める町村元官房長官は、記者団に対し、「基本的人権を不当に侵害することがないような法律にしなければならない。また、報道の自由を確保するため、正常な取材活動は問題ないことを法律上明確にしたい」と述べました。
作業部会では、来月中に党としての考え方を取りまとめることにしています。
 
 

2013年8月27日火曜日

英IOC委員 “汚染水問題”未解決にガッカリ

 猪瀬都知事や安倍首相などは「2020年東京オリンピック」実現のための大がかりな誘致委員会を結成し、9月のIOC総会に向けて招致活動に余念がないようですが、英国のIOC(国際オリンピック)委員は、懸念材料の一つとして福島第一原発の汚染水問題を挙げ、「2年半もあったのにどうして解決できなかったのか」と述べているということです

 日本はこれまで「収束宣言」も出し、国際会議などではいつも格好の良いことだけを口にしてきたのに、いざ蓋を開けてみれば「この惨状は一体何なんだ」というのが、海外の人たちの率直な思いなのではないでしょうか。

 政府と東電は、7月の参院選に向けて汚染拡大の実態を隠蔽してきました。これからまた9月IOC総会に向けて隠蔽を続けるなどということは到底許されません。

 TV朝日のニュースを紹介します。
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未解決にがっかり…IOC委員“汚染水問題”懸念
TV朝日 2013年8月27日
 オリンピックの東京招致へ逆風となるかもしれません。投票権があるイギリスのIOC=国際オリンピック委員会の委員は、
 IOC、アダム・ペンギリー委員:「(招致するには)人々の懸念材料を取り除くこと。その一つが原発の状況だ。汚染水問題が解決されていないことにがっかりした。2年半という長い期間があったのだから、誰かが解決すべき。海や人々や環境に影響がないようにすべき」
 委員はそのほかの懸念材料の例として、日本柔道界の暴力問題などを挙げ、それらを取り除きながら、なぜ東京なのかを情熱を持って伝えていく必要があるとしました。