2017年12月31日日曜日

詩織さんから はあちゅうまで セクハラ被害者 働く母親へのバッシング

 恒例のLITERAの年末特集(2017年の振り返り)の一つは、「詩織さんから はあちゅうまで、セクハラ被害者、働く母親へのバッシングが頻発した“男尊女卑”の1年を総まくり」です。
 今年、海外では女優たちから「女性の人権・性暴力被害」が告発され大きな問題としてクローズアップされました。しかし日本まだ、性暴行セクハラ被害告発女性は極めて少数であるうえに、勇気ある告発をした女性や性被害を受けた女性に対して、逆に卑劣なバッシングが巻き起こされるという異常な状況にあります。
 
 そうした実態をまとめたLITERAの記事は全文が7540字に及ぶ長編(5ページ)なので、ここでは第1ページ(【その1】の部分)のみを全文紹介し、その他の部分は「抜粋文」として、該当するURLを示しました(URLをクリックすると該当する原文のページにジャンプします)。


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 年末特別企画 リテラの2017年振り返り
詩織さんから はあちゅうまで、セクハラ被害者、働く母親へのバッシングが頻発した“男尊女卑”の1年を総まくり
LITERA 2017年12月30日
 2017年は世界的に女性の人権、性暴力被害が大きな問題としてクローズアップされた年だった。きっかけはハリウッド大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの長年のセクハラが告発されたことだったが、以降、「MeToo(私も)」を合い言葉に、次々と女性たちが声をあげ、社会全体でセクハラ告発を後押ししようという空気が広がっていった。
 また「TIME」誌の“今年の人”には「沈黙を破った人」としてセクハラ告発者らが選ばれるなど、そのムーブメントは世界的な広がりをみせている。

 しかし、日本はどうだろう。性的暴行、セクハラ被害に対して告発の声をあげる女性はまだまだ少数派であるうえ、勇気ある告発をした女性や性被害を受けた女性に対して、逆に卑劣なバッシングが巻き起こるのがパターンになっている。これは、日本社会が女性は“性の道具”とする男尊女卑思想、差別的偏見にいまだ支配されているからだ。いや、「いまだ」どころか、女性への蔑視、差別的攻撃は年々ひどくなっている。

 そうした実態を再認識する意味で、2017年年末、リテラ版男尊女卑セクハラ事件簿をお届けしたい。

【その1】官邸御用記者・山口敬之の準強姦事件被害者・詩織さんに向けられたセカンドレイプ攻撃
 今年、女性に向けられた卑劣な性暴力と攻撃の筆頭といえば、やはりTBS記者で“安倍首相にもっとも近いジャーナリスト”山口敬之氏による準強姦もみ消し事件だ。TBS時代に就職の相談で会った伊藤詩織さんをホテルに連れ込み性行為に及ぶ。山口氏に対し準強姦容疑で逮捕状が発布されるが、しかし逮捕直前、警視庁の中村格刑事部長(当時)の指示で逮捕が見送られたというもの。しかも、この不可解な捜査中止の背景には安倍官邸の影がちらついていた。逮捕見送りを指示した中村刑事部長は、菅義偉官房長官の懐刀と呼ばれていた警察官僚であることや、山口氏が安倍首相の側近である北村滋内閣情報官とみられる人物にこの事件についての相談メールを送っていたことも明らかになった。

 まさに、山口氏だけでなく、山口氏をかばった警察や官邸関係者も性犯罪の加担者というべきだが、しかし、問題はこれだけではない。被害者の伊藤詩織さんが「週刊新潮」(新潮社)で告発し、実名、顔出しで告発会見を開くと、ネトウヨや安倍応援団から一斉に詩織さんに対するバッシング攻撃が起こったのだ。
「ハニートラップ」「美人局」「民進党の仕掛け」などというデマ攻撃に加え、象徴的だったのが、詩織さんの服装について「胸元のボタンを開けすぎ」などという非難が浴びせられたことだ。
 実際の詩織さんはそういう服装ではなかったが、そもそもなぜ被害者服装が糾弾されなければならないのか。
 しかし、詩織さんはこうした声に屈することはなかった。メディアの取材に対して「被害者ならこうするはず、しないはず、というように被害者としてキャラクターづけられ生きていることは絶対に嫌です」と発言。著書『Black Box』(文藝春秋)のなかでも性犯罪被害者がタブー視されることのおかしさや、捜査や司法システムの問題、そして性被害に対する意識変革を訴え続けた。
 こうした詩織さんの活動は、性犯罪被害者の女性たちを勇気づけ、日本社会の性被害への偏見を正すために大きな役割を果たしたといえるだろう。

 対照的に、事件発覚後も卑劣きわまりなかったのが、加害者である安倍御用記者の山口氏だった。会見も開かず、一時は表舞台からフェイドアウトしていたが一転、“お仲間”の極右媒体で、詩織さんに対して反論にもならない反論を展開、恫喝攻撃までおこなった
 そしてもう一人、女性の人権を踏みにじった人物がいた。事件が報じられた直後、山口氏は自身のフェイスブックでもセカンドレイプ的な反論をしていたのだが、現首相夫人の安倍昭恵氏がその記事に「いいね!」を押していたのだ。
 この事件はたまたまではない。レイプを容認するような女性蔑視の体質が日本の最高権力を取り巻く組織や人脈にまで及んでいることを証明したといえるだろう。

【その2】小出恵介淫行事件で起きた被害少女への誹謗中傷に松本人志が賛意!「相手の未成年の女にも罰則を」
 ・・・なかでも悪質だったのが『ワイドナショー』(フジテレビ)の松本人志だ。「未成年の女のほうにも罰則を作るべき」と暴言を吐き、さらに被害者少女がバッシングされている状況を「SNSとかがまんざら悪くない」「我々タレントにしたらいい時代になってきた」とまでコメントしたのだ。・・・

【その3】斉藤由貴ら女性芸能人の不倫は厳しく糾弾される一方で、宮迫博之ら男性の不倫は笑い話に
【その2と同ページ)
 日本社会の男尊女卑、不平等を語る上で、はずせないのが不倫問題だ。今年も、芸能界では斉藤由貴、上原多香子、江角マキコ、藤吉久美子、政界では今井絵理子、山尾志桜里と、女性の不倫が大々的に取り上げられ、激しいバッシングが浴びせられた。・・・
しかし、一方、男性の不倫は全く厳しく追及されない。・・・ これは社会が女性にだけ強い貞操を求め、男性の不倫は“芸の肥やし”“誰でもする”という肯定論、寛容論が根強く存在するからだ。・・・

【その4】今年も政治家のセクハラ事件が続発!安倍内閣の閣僚もハレンチ事件の前歴もつ差別主義者だらけ
 今年も中央、地方問わず、政治家の暴言、女性スキャンダル、セクハラ事件が頻発した。・・・福井県あわら市の橋本達也市長(当時)・・・岩手県岩泉町の伊達勝美町長(当時)・・・立憲民主党の青山雅幸議員、初鹿明博議員・・・中川俊直衆院議員(当時)・・・松山政司一億総活躍担当相・・・西村康稔内閣官房副長官・・・茂木敏充氏・・・

【その5】女性が女性を抑圧する典型? 指原莉乃がセクハラ告発に「ハニートラップの可能性も」と攻撃
【その4と同ページ)
 ・・・感想を求められた指原莉乃がこんなことを言い出した。「もちろん女性が被害に遭うことに違いないし、絶対あってはいけないことだと思うんですけど。でも立て続けにこうなると、市長さんとか町長さんだと、よく思っていない人も多いじゃないですか。だからハニートラップの可能性も今後増えてくるかもしれないじゃないですか」こうした発言は、セクハラ被害に対し勇気をもって告発した女性たちを貶めるもので、セカンドレイプとも言える悪質なもの。・・・こうした揶揄や中傷は、ある意味男性から以上に被害者を抑圧し孤立を招く。女性側も、そろそろそのことに気づくべきだろう。

【その6】子連れ議会出席の熊本女性市議にバッシングが…ネトウヨタレントつるの剛士もトーンポリシング攻撃!
 熊本市議会女性議員の子連れ議会出席問題も、理不尽な女性へのバッシングが起こったケースだった。11月、生後7カ月の長男と一緒に出席しようとした緒方夕佳市議だったが、これが認められず開会が40分遅れた。その様子はワイドショーで大きく取り上げられ、案の定、緒方市議への批判が殺到したのだ。・・・緒方市議に向けられたこれらの批判は、典型的なトーンポリシングだ。トーンポリシングとは、正当な訴えをしていても、その内容を無視し、口調や態度がヒステリーだと責めたり、その手法がルール違反だと批判することで、その本質から議論を逸らせ、問題を矮小化する抑圧的ロジック。
 実はネトウヨタレントのつるの剛士もこトーンポリシングを使って、緒方市議を攻撃していた。・・・

【その7】“痴漢冤罪”問題でも男目線の意見ばかり! ネットでは被害者女性への「嘘つき」バッシングが
【その6と同ページ)
 ・・・ネットでは「被害を訴える女はみな嘘つき」「平然と嘘をつく」「ハニートラップですね」「冤罪生み出すくそ女!」「エロいカッコだったからじゃね」「目的は示談金」など女性に対する罵詈雑言が溢れた。
 本来、痴漢冤罪は、冤罪を生み出している警察や検察、そして司法の問題だ。しかしそうした議論はほとんどなく、その矛先はひたすら痴漢被害に声をあげた女性たちに向かう。・・・本当に必要なのは痴漢という卑劣な犯罪をなくすために何ができるか、という議論だろう。・・・

【その8】はあちゅうに激しい非難が殺到する一方で、新たなセクハラ告発の動きが
 ・・・電通時代の上司であるクリエイティブディレクターの岸勇希氏からセクハラ、パワハラを受けていたという告発をしたはあちゅう。大きな話題を呼び、岸氏は自分の経営する会社の代表を辞任する結果となったが、一方で起こったのは、はあちゅうへの激しい批判、バッシングだった実際、はあちゅうは「(セクハラを告白したことで)人生で一番、心ない言葉を浴びました」と苛烈なバッッシングを語っている・・・この背景には“被害を受ける女性にも落ち度や責任がある”という女性に対して抑圧的な日本社会の特性、そしてセクハラする側が自分の行為を性暴力だと認識していないという問題がある。・・・性被害は女性の落ち度などでは決してない。性被害者に責任などない。#MeTooの流れ、女性たちの意識改革の流れが日本でも広がっていくことを期待しよう。 (編集部)

上空米軍機飛行禁止を要求 宜野湾で市民大会

 沖縄県宜野湾市の緑ヶ丘保育園と普天間第二小学校への米軍ヘリ部品落下を受け、教育関係の6団体は29日、宜野湾市役所前で事故に抗議する「米軍基地被害から子どもを守り、安心・安全な教育環境を求める市民大会」を開きました。市内外の43団体が賛同し600人が集まりました。
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「子の命守る」上空飛行禁止要求 米軍機部品落下 宜野湾で市民大会
琉球新報 2017年12月30日
【宜野湾】沖縄県宜野湾市の緑ヶ丘保育園と普天間第二小学校への米軍ヘリ部品落下を受け、県高校PTA連合会など教育関係の6団体は29日、宜野湾市役所前で事故に抗議する「米軍基地被害から子どもを守り、安心・安全な教育環境を求める市民大会」を開いた。主催者発表で約600人が集まり、繰り返される米軍機の事故に反発の声を上げた。米軍機の保育園・学校施設上空の即時飛行禁止を日米両政府に求める決議を採択した。

 普天間第二小や緑ヶ丘保育園の保護者や識者らがマイクを握り、事故に対する憤りや危機感を訴えた。完全な飛行禁止を約束しない日米両政府に対する批判の声も上がった。会場には親子連れの姿も多く、涙を流しながら登壇者の話に耳を傾けていた。

 教育に関係する6団体が実行委員会を組織し、29日までに市内外の43団体が賛同した。大会実行委員長の仲西春雅県高P連会長は「何もせずに年末を迎えては米軍の不条理を許したことにされる。今こそさまざまな垣根を越えて声を上げなければ、子どもの安全は守れない」と力を込めた。緑ヶ丘保育園の神谷武宏園長は「あまりにも命が軽視されている。子どもたちの命を守るため、平和な空の下で自由に伸び伸びと遊べる空にするため、一緒に声を上げよう」と呼び掛けた。

 県高校障害児学校教職員組合の福元勇司執行委員長の音頭で全参加者はガンバロー三唱をし、抗議の声を上げ続けることを誓った。

 決議は「子どもたちは常に軍用機の爆音にさいなまされ、墜落や落下物の恐怖におびえながら学校生活を送らざるを得ない。いつまで理不尽な生活を強いられるのか」と訴えた。さらに米軍が「最大限飛行しない」としていることについて「場合によっては上空を飛行するということで、これまでと何ら変わらない」と批判した。保育園や学校施設上空の即時飛行禁止を強く求めた。宛先は首相や外務相、在沖米四軍調整官ら。


米軍機の保育園・学校施設上空の即時飛行禁止を日米両政府に求め、ガンバロー三唱する市民集会の参加者ら=29日、宜野湾市役所前(大城直也撮影)

31- 倉本聰氏が TVは「視聴者の想像力を消している」と

 テレビ朝日系で放送された帯ドラマ「やすらぎの郷」の生みの親である脚本家の倉本聰氏は、「いまのテレビは視聴者の空想力や想像力をことごとく消してしまっている。番組の作り手は分かりやすさを求めるがあまり、あらゆることが説明過多になっている」、と批判しました。
 そういうことを受け入れる社会であれば世論の誘導などはお茶の子さいさいで、それが常に政府側に立ったものであれば目も当てられません。社会の劣化と呼ぶべきものなのでしょう。
 世間の話題を取り上げる場合でも、いまやA~C社は甲サイドの応援団、対してD、E社は乙サイドの擁護者という立ち位置が最初から決まっていて、司会者が絶えずその方向に持っていくというのは見ていて見苦しいものです。

 倉本氏の、過熱する不倫報道への苦言も併せて紹介します。
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倉本聰氏 TVの現状を危惧「視聴者の想像力を消している」
倉本聰 日刊ゲンダイ 2017年12月30日
 春から半年間にわたってテレビ朝日系で放送された帯ドラマ「やすらぎの郷」。俳優や歌手、脚本家などテレビの世界で活躍した人だけが入居できる老人ホームという異色の舞台設定が話題を呼び、多くの視聴者を楽しませた一方、若者向けドラマばかりのテレビ界に一石を投じる作品となった。生みの親である脚本家の倉本聰氏(82)がいまのテレビ界が抱える問題点とともに2017年の世相を振り返り、総括する。
◇  ◇  ◇
 この1年はスキャンダルな報道が目立ちましたが、なかでも最も印象的だったのは、豊田真由子前衆院議員についてのテレビ報道ですね。暴行現場の映像は一切映されず、「やめてください、やめてください。……ボコッ」といった音声だけが延々と流れました。多くの視聴者は、あの声を聞くたびに、哀れなオジサン秘書の風貌や表情を想像したのではないでしょうか。

 あの報道は一種のラジオドラマであり、音声を聞いた人の想像力を膨らませ、「像」を結ばせた。多くの観客が情けを乞う声の主に感情移入し、言葉は悪いかもしれないけれど、楽しんでいたはず。図らずもドラマが持つ本来の面白さを表現していたんです。

 翻って、いまのテレビは視聴者の空想力や想像力をことごとく消してしまっています。お客さんはあれこれ想像したいのに、作り手は分かりやすさを求めるがあまり、あらゆることが説明過多になっている。耳から入る情報が頭の中で像を結ばせる楽しみを殺してしまっているような気がします。作り手の思考や思慮のなさが、どんどんテレビをつまらなくしている格好です。

 テレビ黎明期は、ながら族でも分かるようなドラマを作れと指示する一派がいて、向田(邦子)さんや(山田)太一さんや僕はそれに反発した。ながらの手を止めさせる作品を作ってやろうっていう反発心が、当時の僕らのテーマだったような気がします。ところが、ながら志向は年を追うごとに現場に浸透し、いつの間にか「観客はバカだ」という前提まで定着してしまった。

 その結果、どうなったか。テレビはコマーシャルの前後に、同じ内容を執拗に繰り返す手法を多用するようになっています。あれほど視聴者をバカにした話はありません。俺は認知症じゃないぞと言ってやりたくもなるわけです。

 テレビが生まれたとき、大宅壮一氏は一億総白痴化が始まると説きましたが、放送開始から64年がたった今こそ、改めてその意味を皆で問う必要があるのではないでしょうか。


過熱する不倫報道に倉本聰氏が苦言「品がない世界に…」
倉本聰 日刊ゲンダイ 2017年12月30日
 16年1月に発覚したベッキーと「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音の不倫騒動以降、17年も有名人の不倫報道が次から次へと報じられ、この年の瀬には女優・藤吉久美子が“餌食”となった。春から半年間にわたってテレビ朝日系で放送され、大ヒットとなった帯ドラマ「やすらぎの郷」の生みの親である脚本家の倉本聰氏(82)は過熱するマスコミの不倫報道についてこう疑問を呈する。
◇  ◇  ◇
 僕らの世代は、人のうわさはするもんじゃない、人の悪口は言うもんじゃないと幼い頃にたたき込まれて育ちました。それなのにいまでは週刊文春や週刊新潮をはじめ、各紙誌が堂々とやるわけでしょう? 男女がくっつくのは当たり前の話。お互いに健康なら、そうなるときにはなっちゃうんです。まして役者ならそういう生き物なんです。

 でも、それはあくまで当人同士の問題。周りは見て見ぬふりをすればいいだけ。なんらかの影響があるのは当事者の家族や配偶者だけです。それなのに部外者が偉そうに他人の不倫をなじるなんてのは恥ずべきことですね。ただののぞき見なのに、シレッとして正義を振りかざして商売にする、部数を伸ばすっていう世の中がとっても嫌ですね。そんな倫理に反する報道こそが“不倫”。下衆の極みだと思います。

 上品も下品も品のうちですが、いまは下品以下の品がない世界になっている気がします。不倫報道は善か悪かではない。スターを引きずり降ろし、天使をヌードにする時代ですが、暴く方の倫理は問われないのか。世の中全体がもう少し大人になって、粋になってほしいですね。そんな不倫報道の記事を面白がって読んでしまう自戒も込めてなのですが。

2017年12月30日土曜日

韓国の「慰安婦日韓合意」検証は事実(LITERA)

 一昨年(2015年)12月28日慰安婦問題に関する日韓合意で日本政府
「慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」、「安倍総理大臣は、・・・慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」
発表しました。
 それは安倍首相がそれまで主張していたことを否定をするものだったので多くの人々を驚愕させましたが、従来の姿勢から前進したとはいえ、韓国の国民や慰安婦問題に強い関心を持っていた世界の人たちが問題解決の筋道としてきた「事実の認定、謝罪、賠償、真相究明、歴史教育、追慕事業、責任者処罰」の原則からは遠いものであったので、韓国の政権が変われば問題が再燃する可能性を秘めていました。

 これについてLITERAは当時から、日韓合意日本の真摯な反省に基づくものではなく、アメリカ側からの強い圧力にしぶしぶ従ったものである」ことを明らかにしていました。
 日韓合意は、日本からは「安倍側近」の谷内正太郎氏と兼原信克内閣官房副長官補が、韓国からは朴大統領側近のイ・ビョンギ国家情報院長(いずれも当時)が、米国主導による国民不在の秘密交渉を行ってまとめたもので、上記のお詫びの表明も岸田外相(当時)が代行しました。

 その後、元慰安婦たちが首相からの「おわびの手紙」を求めた際も安倍首相は国会答弁で「毛頭考えていない」と全否定するなど一切謝罪はせずに、日韓合意のなかにも明文規定のない慰安婦像の撤去問題に関しても強硬な姿勢を貫き、歴史修正路線を邁進しています。

 LITERAがこの問題を再度取り上げましたので紹介します。

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 冬季は駐車場(15台規模)その他の除雪を請け負っているため、降雪時には記事の更新(時刻)が不規則になります。ご了承ください。
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韓国の「慰安婦日韓合意」検証は事実だ!
安保法制でも暗躍した安倍側近・元外務官僚が米国の意を受け秘密交渉
LITERA 2017年12月29日
 文在寅大統領になって、見直しの動きが強まっていた慰安婦問題をめぐる2015年日韓合意だが、ここにきて大きな動きがあった。韓国の検証チームが、合意交渉は当時の朴槿恵大統領と安倍晋三首相の「側近による秘密交渉」で、元慰安婦の意見が十分反映されなかったと指摘したのだ。これに対し日本政府は猛反発。河野太郎外相は「(合意変更になれば)日韓関係がマネージ不能となり、断じて受け入れられない」とコメントし、安倍首相は「平昌五輪に行くのは難しい」などと信じられない恫喝方針を表明している。

 マスコミも同様だ。「国と国の約束を守らない韓国の態度はおかしい」「日本国民の韓国不信が高まる」などと一方的に韓国を批判している。
 しかし、この日本側の言い分は明らかにおかしい。「日韓合意は朴槿恵大統領と安倍晋三首相の側近による秘密交渉によるもの」という韓国政府の検証結果はまぎれもない事実であり、韓国から見直しの動きが出てくるのは極めて正当で、むしろ遅すぎるといってもいいほどだ。

 まず、簡単に振り返っておくと、15年の日韓合意は、日本政府は韓国政府が設立する元慰安婦を支援するための財団(和解・癒やし財団)に10億円を拠出し、一方の韓国政府はソウルの日本大使館前の少女像について関連団体と協議したうえで「適切に解決されるよう努力する」とし、日韓政府は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決」を確認するという内容だった。
 だが、本サイトはこの合意が締結された直後から、合意をした日韓両政府を厳しく批判してきた。それは、合意の内容が日本の真摯な反省にもとづくものではなく、アメリカ側からのプレッシャーにしぶしぶ従い、カネで慰安婦問題を封じ込めようとするものだったからだ。

 米政府は当時、日本政府に慰安婦問題で謝罪をすることを厳しく要求していた。2015年10月に、オバマ大統領が朴大統領との首脳会談後の会見で「歴史的問題の決着」を強く求めたことは有名だが、それ以前から、国務省のダニエル・ラッセル東アジア・太平洋担当国務次官補やダニエル・クリテンブリンク国家安全保障会議アジア上級部長、そのほか国務省幹部がしきりに日本政府に圧力をかけていた。
 そして、その米国国務省の圧力の窓口となっていたのが、今回、韓国政府の検証報告で「秘密交渉を行った」とされた「安倍側近」の谷内正太郎国家安全保障局長、そして兼原信克内閣官房副長官補という、元外務官僚コンビだった。

安保法制を主導した谷内正太郎国家安全保障局長が日韓合意でも米国の
 実は本サイトは、2年前の日韓合意締結直後からこの2人の元外務官僚が米国の意向を受けて動いていたことを掴み、こんな裏を報道していた。(リンク

〈谷内氏、兼原氏の元外務官僚コンビは、現在、安倍外交を事実上牛耳っているとされる存在。米国と太いパイプをもち、その意向を受けて、日米ガイドライン、安保法制を主導したことで知られる。今回の慰安婦問題日韓合意でも、この2人が中心になっていたという。
「今回の合意の原案をつくったのは、兼原副長官補、裏交渉をして準備を整えたのは谷内局長です。当然、米国と密に連絡を取りながら進めていたはずです。実際、米国政府も少し前から、日韓両国が28日に合意をして歓迎表明をするシナリオをほのめかしていましたからね」(官邸担当記者)〉
 これは韓国サイドも同様で、やはり米国から相当なプレッシャーを受け、朴大統領の側近でイ・ビョンギ国家情報院長(当時)が交渉にあたった。まさに、合意は国民不在の米主導による秘密交渉だったのである。

 しかも、その合意内容もひどいシロモノだった。たしかにこのとき、岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相との共同記者会見で発表された談話には、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」という記述があった。
 だが、そこには、河野談話にあった強制性を認める文言はまったくなく、安倍首相自身が実際に公の場で「元慰安婦たちへのおわびと反省」を語ったわけでもなかった。その後も安倍首相は一切謝罪の言葉を述べず、元慰安婦たちが首相による「おわびの手紙」を求めた際も、国会答弁で「毛頭考えていない」と全否定した。

 にもかかわらず、10億円の拠出で「最終的かつ不可逆的に解決される」と、“慰安婦をめぐる韓国からの要求を今後一切受け付けない”ことを示す文言までが盛り込まれたのだ。
 韓国の元慰安婦がいちばん求めているのは、日本政府が慰安婦問題で強制性があったことを認め、実際に安倍首相が“心からの反省”を示すことなのに、それをせずに、こんな合意をするというのは、それこそ日韓両政府が札束で慰安婦問題にフタをしようとしたと言われてもしようがないだろう。

少女像を合意に含め、カネで慰安婦問題を封印しようとした日韓両政府
 しかも、最悪なのは、この合意のなかに、在韓国日本大使館前の少女像をめぐる項目があり、韓国政府が「関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する」と表明していたことだ。
 安倍政権や日本のマスコミは少女像をさも“反日の象徴”“日本への嫌がらせ”のように扱っているが、これは彫刻家によるれっきとした美術作品=表現芸術で、その資金は市民による募金である。民主主義国家ならば当然尊重すべき、国民の「表現の自由」の範疇だ。

 少女像の制作者である彫刻家キム・ソギョン氏とキム・ウンソン氏夫妻は、日韓の慰安婦問題だけに取り組んでいるのではなく、ベトナム戦争時の韓国軍による民間人虐殺の加害意識も正面から受け止め、謝罪と反省の意味を込めた「ベトナムのピエタ像」の制作も行なっている。つまり、少女像は決して“反日の象徴”ではなく、正式名称の「平和の碑」の名のとおり、戦争を憎み、犠牲者を悼み、世界の平和を希求する思いが込められているのだ。

 たとえば、同じように平和の象徴である広島の「原爆の子の像」(禎子像)について、原爆を投下したアメリカが「10億円を出すから像を撤去しろ」などと言って日本政府が「解決」を約束したら、わたしたちはどう思うだろうか。「なんでそんなことを勝手に決められなければならないのだ」と激怒するはずだ。
 ところが、日韓両政府はこの表現の自由への侵害、平和を思う人々の内心を圧殺する条件を約束してしまったのだ。
 こんな内容の合意について、韓国国民が「合意見直し」の声をあげ、文在寅大統領がそれに応えようとするのは、民主主義国家の代表としては当然の姿勢ではないか。
 だが、安倍政権と日本のマスコミは、そうした問題の本質を一切無視して、韓国政府の見直しの動きを「約束違反」などとヒステリックに攻撃するばかりだ。

 それは、今回だけではない。日本政府やマスコミはこの間もずっと同じような攻撃を韓国に行なってきた。少女像が撤去されないことについて、「契約不履行」だと糾弾。昨年末、韓国の市民団体が釜山に新たな少女像を設置すると、駐韓大使の一時引き上げや日韓通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を断行。露骨に韓国政府に圧力をかけてきた。
 しかし、韓国側の慰安婦問題に対する強硬姿勢はむしろ、安倍首相の歴史修正主義が招いたものだ。

韓国側の強硬姿勢を招いたのは、安倍首相の歴史修正主義だ
 日本軍が韓国はじめアジア各地に慰安所を設置し、現地の女性をかき集めていたことは、中曽根康弘元首相も手記で得意げに語っていたように、歴史的な事実だ(過去記事参照)。
 しかし、安倍首相は、若手議員のときから「(慰安婦だという人の中には)明らかに嘘をついている人たちがかなり多くいる」「実態は韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことをたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね」(『歴史教科書への疑問─若手国会議員による歴史教科書問題の総括』より、勉強会での安倍の発言)と主張するなど、露骨なまでの慰安婦否定論者であり、首相になってからは「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定するなど、慰安婦問題を矮小化することに血道を上げてきた
 そして、安倍首相にくっついている自民党の極右政治家連中も同様に、慰安婦の軍関与を否定し、「慰安婦は金目当ての売春婦」というような誹謗中傷、デマをふりまき続けてきた。

 こうした姿勢は第二次政権で「当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」「安倍内閣総理大臣が心からおわびと反省の気持ちを表明する」とした2015年日韓合意の後もまったく変わっていない。
 前述した軍関与の否定や誹謗中傷はもちろん、朝日新聞の誤報をあげつらうことで、あたかも慰安婦問題そのものがでっちあげであるかのような印象操作まで行なってきた。

 少女像の設置運動の高まりは、こうした安倍政権への反発という部分が非常に大きい。日韓合意への反発も同様だ。実際は、安倍首相に反省のかけらもなく、米国のご機嫌取りのために10億円支払ってやったというくらいの認識しかないことを韓国国民に見透かされているのだ。
 日本のマスコミは他国の「約束不履行」をなじる前に、まず、自国のトップのグロテスクな歴史修正主義を批判すべきではないのか。(編集部)

無人米軍住宅にこれまで60億円 民有地借り上げ 日本が負担

 政府は、生活保護費を5年前に6・5%削減したのに引き続き、2018年度からは更に最大5%を削減することを決めました。すでに生活レベルが下限を超えているのに、デタラメの理由をでっち上げて更に引き下げるのは160億円を削減するためです。
 その一方で防衛省は、横浜市の米軍住宅に、2015年以降は無人になったにもかかわらず年間約20億円(2017年現在で合計約60億円)を負担していることが分かりました。
 地元関係者らからは、税金の無駄遣いだとして早期返還を求める声が上がっています。
 東京新聞がスクープしました。

 天木直人氏は。うした無駄遣いが行われているのは、米軍への施設提供義務を定めた日米地位協定運用の細目が、日米合同委員会という米国の占領時代にできた秘密会議で決められ、国民の目から隠されているからだと指摘し、これを解決するには日米安保体制を見直すしかないと述べています

追記)政府は、生活保護費を削減する一方で、防衛費の方は毎年増額に続く増額をしていて、2018年度の予算額は5兆2千億円に達しています。
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無人米軍住宅に年20億円 民有地借り上げ 日本負担
東京新聞 2017年12月29日
 二〇〇四年に日本側への返還が合意されながら手続きが進んでいない横浜市の在日米軍住宅施設を巡り、ほぼ無人となった一五年以降も、日本側が施設区域の民有地の借り上げ費用など年間約二十億円を負担し続けていることが、防衛省への取材で分かった。地元関係者らからは、税金の無駄遣いだとして早期返還を求める声が上がる。 (原昌志)

 施設は米軍人とその家族向けの「根岸住宅地区」で、横浜市の中、南、磯子の三区にまたがり、面積は東京ドーム九個分にあたる約四十三ヘクタール。周辺は閑静な住宅地で地元は長年、返還を求めてきた
 〇四年十月の日米合同委員会で、米軍施設「池子住宅地区」(横浜市金沢区、逗子市)に新たな住宅を建設するのと引き換えに、日本側への返還が決定。その後、建物の老朽化もあり一五年十二月には、居住していた米軍人らは施設外の民間住宅に移るなどして全世帯が退去。現在も警備要員らを除きほぼ無人となっている。

 ただ、移設先の池子地区の周辺住民は開発による緑地環境の悪化などを懸念し、建設に難色を示している。このため根岸地区の返還手続きは停滞している。防衛省は毎年、池子地区の新住宅建設の前提となる環境影響評価(アセスメント)費用を予算計上し、一八年度予算案にも一億三千四百万円を盛り込んだが、着手のめどは立っていない。

 日本政府はこの間、米軍への施設提供を日本側の義務とした日米安全保障条約と日米地位協定に基づき、根岸地区内の36%を占める民有地の借り上げ費や崖地保全費用を負担し続けてきた。
 周辺の地価などを参考に、一六年度実績で約二十一億円かかっており、米軍が退去した一五年度からの三年間では約六十億円を支出。今後も同程度の金額が必要となる見込みだ。池子地区への移設に今すぐ着手したとしても、完成までには最低二年以上を要するため、支出は百億円を超えることになる。

 根岸地区の地元自治体の関係者は「多額の費用がかかっており、無駄遣いだ。池子地区と切り離して先行返還を考えるべきではないか」と訴える。跡地利用を検討している横浜市基地対策課の担当者も「米軍施設は必要がなくなれば返還するのが原則。国は実態を踏まえ、米側と協議するなどしかるべき対応をとってほしい」と話す。
 防衛省地方調整課は「日米の政府間合意は重い。早期の池子地区の住宅完成を目指したい」としている。

 <米軍根岸住宅地区> 1947年に米軍が接収し、米海軍軍人ら約400世帯が入居していた。国有地が64%、民有地が36%。日米安全保障条約と日米地位協定に基づき、米軍への施設提供は日本側の義務とされ、返還は米側の合意が必要。


またひとつ在日米軍への血税が見つかった
天木直人のブログ 2017年12月29日
 きょう12月29日の東京新聞が一面トップで大スクープを報じた。
 またひとつ国民の血税が在日米軍に無駄遣いされていたことが明らかになったというのだ。
 すなわち、住まなくなって久しい無人の在日米軍住宅地の借り上げ費用として、毎年20億円もの予算を日本政府が負担していたというのだ。
 在日米軍の軍人とその家族向けのために、東京ドーム9個分に当たる「根岸住宅地区」というのがあるらしい。
 その住宅地区は、2004年10月の日米合同委員会で、おなじく横浜市にある「池子住宅地区」にあらたな住宅を日本政府が建設するのと引き換えに、日本側へ返還することが決定されていた。

 ところが池子地区周辺の住民の反対で建設が停滞し、その間に根岸住宅が老朽化したという理由で、米軍人らは2015年12月には全員が民間住宅に移って(その借り上げ費は当然ながら日本負担である)完全に無人化したという。
 それにもかかわらず日本政府は無人化した施設の借り上げ費として推計で60億円もの予算を使って来たというのだ。
 来年度の予算案でも1億3千4百万円を計上しているという。

 なぜこのような無駄遣いが行われるのか。
 それは米軍への施設提供は日本側の義務であるとした日米地位協定があるからだ。
 そして、その運用のあらゆる決定は日米合同委員会という米国の占領時代にできた秘密会議で行われ、国民の目から隠されてきたからだ。

 しかし、もはやこの東京新聞のスクープですべてが白日の下にさらされた。
 他の大手紙が後追い記事を書いて国民すべてに知らせなければいけない。
 与野党を含めた政治家は、このような国民の血税の無駄遣いを一刻も早く是正しなければいけない。
 これを根本解決するにはもちろん日米安保体制を見直すしかない。

 しかし、たとえ日米安保体制を最優先する安倍自公政権であっても、この血税の無駄遣いだけは直ちに改めなければいけない。
 それが出来ないようでは安倍自公政権は日本国民より米軍を優先する単なる対米隷従政権であるということだ。
 私はこの東京新聞の大スクープ記事に対して政治やメディアがどう動くか注目している(了)

30- 米武器輸出 トランプ政権で拡大 前年比4割増

 アメリカの武器商人ともいわれるトランプ大統領はとり分け武器の売り付けに熱心ですが、2017年1~11月の武器輸出総額は約810億ドル(約9兆円)で、オバマ前政権下の前年同期比で約40増加したいうことです
 監視能力はあっても原理的にミサイルを迎撃できるとはとても思われない超々高額な「イージス・アショア」に、前後の見境いもなく飛びつく安倍首相が彼らの格好の標的になっているのはいうまでもありません。
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米武器輸出、トランプ政権で拡大 前年比4割増、基準緩和に懸念
時事通信 2017年12月29日
【ワシントン時事】国内産業の再生と雇用拡大を「最重要課題」とするトランプ米政権が武器輸出を加速させている。監視団体によれば、2017年1~11月の武器輸出総額は約810億ドル(約9兆円)。オバマ前政権下の前年同期比で約39%増加した。近く輸出基準も緩和する方針で、「世界各地で紛争をあおることになる」と懸念する声が上がっている。
「日本は大量の防衛装備品を買う」。トランプ氏は11月、安倍晋三首相との会談後の記者会見で、米国から兵器を購入すれば「米国は多くの雇用を、日本は安全を確保できる」と強調した。
 米国の監視団体「安全保障支援モニター」などの統計では、米政府が窓口となって他国に武器を売却する有償軍事援助(FMS)は17年1~11月に総額約630億ドル。企業が国務省から直接輸出の許可を得たのは約180億ドルに上った。

2017年12月29日金曜日

伊藤詩織さん「社会変わると…声あげ続ける」

 自身のレイプ被害に対する官憲の対応に官邸が関与したのではないかという強い疑惑を持っている伊藤詩織さんの訴えを、これまでメディアは事実上無視してきました。
 それは官邸から取り上げないようにという要請があったからだといわれています。

 この事案は、レイプの被疑者が、安倍首相を絶賛した本『総理』を書いた山口敬之氏であり、所轄の署員が彼を逮捕すべく配置された現場に、緊急の指示を入れて逮捕を中止させた警視庁の中村格刑事部長(当時)もまた官邸と昵懇な人物でした。
 逮捕状が発付されたものを刑事部長の一存で中止させるなどは、本来はあり得ないことなので、官邸が関与したものであろうことは容易に想像できます。
 官邸が各メディアに対し「あれは筋の悪いネタだから触れないほうが良い」と報道自粛を勧めた理由は明白で、官邸が関与したという疑惑が持ち上がるのを避けたいからでした。

 たださえ官邸の意向を忖度する日本のメディアが、それを受けて一も二もなく沈黙したのは当然でした。
 彼女には、検察の不起訴処分に対する審査を検察審査会に訴えたときの記者会見以外には、会見の場も与えられませんでした(外国記者クラブもなぜか二度目には会見の場を提供しませんでした)。
 発言の場を失った詩織さんは、最後の手段として告発の手記「Black Box」を発表しました。
 幸いなことに詩織さんは英語が堪能だったので、彼女の訴えに注目した海外メディアにインタビュー記事が載るようになって、日本のメディアもようやく動き出しました。
 それにしても官邸の意向に従って沈黙を続けていた日本のメディアには、詩織さんの人権への思いはなかったのでしょうか。
 
 27日の毎日新聞が伊藤詩織さんのインタビュー記事を掲載しました。
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MeToo
伊藤詩織さん「社会変わると…声あげ続ける」
毎日新聞 2017年12月27日
 自身のレイプ被害をもとに、日本の性犯罪を取り巻く事情を取材した手記「Black Box(ブラックボックス)」を出版した伊藤詩織さん。毎日新聞のインタビューに対して、作家でブロガーのはあちゅうさんの告発で広がったセクハラ告発キャンペーンMeTooへの思いを初めて語った。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

性暴力について話せる社会にしたい
――日本でもMeTooの動きが広がっています。詩織さんの告発に背中を押された人も多いようです。

 「ブラックボックス」を出版した同時期にMeTooのムーブメントが起こりました。公で自らの体験を語ってから同じ苦しみを抱えている人がこんなにもいることを知り、またMeTooで世界中からのさまざまな人の声を聞き、何かが変わらなくてはいけない時がきたのだと感じました。
 問題を解決していくには、声を上げ、話し合わなければいけません。性暴力について話せる社会にしたい、というのが私の本来の願いだったので、MeTooはその思いが世界中の人々と一つになったムーブメントだと思います。
 日本で当初、私が感じたのは性暴力の話をすると声を上げた人が責められる、または男女の問題として片付けられてしまうということです。しかし、これは暴力の問題です。個人の問題ではなく、多くの人に共通する社会問題として捉えていくべきです。
 スウェーデンではこの運動が男女平等担当大臣に届き、システムが変わるきっかけになろうとしています。日本でもMeTooが社会を変えるきっかけになると信じて、これからも声をあげ続けていこうと思います。

――5月に司法記者クラブ、10月に日本海外特派員協会で記者会見を行いました。周囲の反応や気持ちの変化は?

 5月の会見の後は、批判や脅迫のメッセージが続き10日ほど食べ物が喉を通らず、起き上がることができませんでした。でも日本海外特派員協会での会見後は、海外のメディアに取り上げてもらい、日本国内外から応援メッセージをいただいた。出版後は伝えたかったことについて理解していただき、たくさんの応援コメントも受け取っています。

――「ブラックボックス」では、会見前からメディア取材を受けてきたのに一切報道されなかったことを明かしています。海外特派員協会での会見は、背景に日本のメディアへの失望もあった?

 そうですね、それはとても大きかった……。10月の会見は(メディアに対して)何度も同じ話を繰り返しているのにまた同じ話をすべきか悩みました。「会見がないと報道しづらい、報道のきっかけがほしい」という日本メディアの声も聞いていて、それに応えることにも葛藤があった。
 ただ今年1世紀ぶりに刑法が改正された背景には、国連から何度も意見表明があったこともあり、日本は外から問題を相対的に可視化されると動くんだな、と感じていた。海外メディアに自分の声で伝えるということは必要だと思っていたので、実現できてよかったです。

「少しずつ、すべてを変える必要がある」
――執筆に当たり、スウェーデン・ストックホルムをはじめ、海外の性被害サポート体制についても取材しています。

 一番訴えたかったのは、今の日本の社会システムを見直し、変える必要があるということ。当時、相談窓口、病院、警察、報道、一つ一つに落胆し、社会のシステムに疑問がわきました。いろんな壁がありました。その壁がなければ、事実関係をもっと明らかにできただろうし、ここまで深く傷つくこともなかった。少しずつ、でもすべてを変えなければいけない。
 例えば私が被害に遭ったとき、まず最初に何をしなければいけないのかすら分かりませんでした。自分の無知に驚きました。情報が欲しくて電話した相談窓口には「面接に来てくれ」と言われたけれど、本来なら検査ができる病院を紹介してくれるべきですよね。決して近くはない場所に面接に行かなければ情報が得られないのでは、ホットラインの意味がありません。例えばストックホルムなら、カウンセリング、検査、治療がワンストップでできる施設が24時間365日稼働している。男性専用の施設もある。「被害に遭ったらここに行けばいい」とみんなに周知もされています。
 性暴力被害は誰にでも、どこでも、どんな時でも起こり得ます。でもその後、社会がどう動くか、どうサポートできるか。その点で日本は欠けているところがたくさんある。一つ一つの壁を可視化する必要があります。そのために、海外ではどんな取り組みがあって、何が効果的なのかを知りたかったし提案したかったのです。

――本書で「勝手に決められた『被害者』のイメージの中で生きたくない」と書かれています。そう感じるMeToo 発信者は多いようです。

 被害者だったら「泣いているはず」「白いシャツで、ボタンは一番上まで留めているはず」というようなステレオタイプにはめられ、被害者とキャラクターづけられて生きることは絶対に嫌だったんです。
 そこから外れた行動を取ると「本当に被害者なのか」と証言の信頼性と関連付けて批判される。そのイメージを壊したくて、会見にはリクルートスーツを来てくるようにとアドバイスされましたが、受け入れることができませんでした。
 被害を受けてもその後の人生は続きます。 笑っていることを批判されたこともありますが、私は今でもよく笑います。ステレオタイプ(固定観念)に当てはまらなければ信じてもらえないのは、おかしいと思います。