2012年7月31日火曜日

東海第二原発の運転差し止め訴訟が起こされました


731日、茨城県東海村の東海第二原発運転差し止め訴訟が出されました。
「二度と子どもたちを被曝させてはならない。危険な原発を止めなくては」を合言葉に、常総生活協同組合が中心となって原告を募り、原告団266人に加えて、原告に加わらないものの協力する「賛同者」も450人に膨らみました。
訴状は原告団と、弁護士66人からなる弁護団が共同で作り、原告団の強い要望に沿って、「なぜ訴訟を起こすのか」という、提訴に至った理由を訴状の前半の柱に据えたということです。 

 なお今年になってから提訴された原発運転差し止め訴訟は以下の5件があり、東海第二原発は6件目となります。
131日 九州電力 玄海原発 14号機、
328日 四国電力 伊方原発 13号機、
423日 東京電力 柏崎・刈羽原発 17号機、
530日 九州電力 川内原発 12号機 
626日 北陸電力 志賀原発 12号機 
 


 以下にNHKのニュースWeb版及びしんぶん赤旗の記事を紹介します。

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東海第二原発 運転差し止めなど求め提訴
NHK NEWS Web 2012731 1847 

茨城県東海村にある東海第二原子力発電所は、半径30キロ圏内の人口がおよそ100万人と全国の原発で最も多く、事故の際に一斉に避難することは不可能だなどとして、茨城や東京の住民らが事業者の日本原子力発電と国に対して、原発の運転差し止めや原子炉の設置許可を無効とすることなどを求める訴えを水戸地方裁判所に起こしました。 

訴えを起こしたのは、茨城や東京、千葉などの住民や農家ら266人です。
訴えの中で原告は、東海第二原発から半径30キロ圏の市町村の人口は106万人と、東京電力福島第一原発のおよそ2倍に当たり、全国の原発で最も人口が過密で、事故の際に一斉に避難するのは不可能だと指摘しています。
そのうえで、東海第二原発が耐震性の前提として想定している地震は東日本大震災の規模を下回り、想定を超える巨大地震や津波が起これば甚大な被害が発生するおそれがあるとしています。
さらに、運転開始からまもなく34年と老朽化が進み、地震で重大事故に至る可能性があるとも指摘し、日本原子力発電に対して東海第二原発の運転差し止めを、国に対して設置許可を無効にすることなどを求めています。
これに対して日本原子力発電と国の原子力安全・保安院はいずれも、「現時点では訴状が届いていないため、コメントは差し控えさせていただきたい」としています。 

◆原告団“どんな方法でも廃炉に”
原告団は提訴に先立って水戸市内でデモ行進を行いました。
原告団の住民らおよそ200人は水戸地方裁判所までの国道をデモ行進して、「原発のない社会を作ろう」とか「東海第二原発の運転再開を認めない」などと訴えました。
提訴のあと、原告団は記者会見を開きました。

原告団の1人で東海村の村議会議員の相沢一正さんは「これまで東海第二原発の廃炉を求める署名運動も行ってきたが、政治的な働きかけだけでなく、司法の場での解決も目指し、どのような方法によっても廃炉にしたい」と話しました。
また、河合弘之弁護士は「福島第一原発の事故の被害は非常にショッキングなものであり、こうした訴訟に対する裁判官の考え方も変わってきているので、勝てる見込みはある」と話しました。

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東海第2原発 運転差し止め・廃炉に 水戸地裁 住民266人が提訴
     しんぶん赤旗 201281() 

 茨城県の日本原電東海第2原子力発電所(東海村)の再稼働許すなと31日、同県と東北、首都圏などの住民266人が運転差し止めや廃炉などを求め水戸地裁に提訴しました。訴訟団は原告団に加え弁護団71人、賛同会員492人の800人を超えました。 

 訴訟は北海道の泊原発や鹿児島県の川内原発など、全国で取り組まれている差し止め訴訟に連携したもの。原告住民らは訴訟に先駆け、東海第2原発の再稼働停止と廃炉を求める署名17万人分を県に提出しています。
 訴状では、住民の避難や放射能汚染など大きな被害をもたらした福島第1原発事故の実態をあげ、東海第2原発の原子炉設置を許可した国の安全審査が不合理で誤り・欠陥があること、東海第2原発の施設の老朽化や地震・津波で大きな事故の危険があることを指摘。(1)国による東海第2原発原子炉設置の許可(1972年)を無効だと確認する(2)国が東海第2原発の使用停止を命じる(3)日本原電は東海第2原発の運転をやめる―ことを求めています。 

 記者会見で弁護団共同代表の河合弘之弁護士は、東海第2原発が事故を起こせば、政治・経済の中心である首都圏に壊滅的な影響があることや、茨城沖で巨大地震が起きる可能性があると説明。「『原子力ムラ』が大飯原発再稼働など押し返すなかで起こした訴訟であり、歴史的な意義がある。あの事故は国民の安全神話への認識を変えた。必ず勝てるたたかいです」と訴えました。


2012年7月25日水曜日

集団的自衛権についての本格的評論が出ました


 弁護士の伊藤真氏が主宰する法学館憲法研究所のホームページに「集団的自衛権」と題された評論文が掲載されました。
それは大凡以下のような要旨で、政府の解釈改憲で集団的自衛権の行使に踏み切ることは、憲法の原理である立憲主義の根幹を揺るがすものであると論じています。 

1.集団的自衛権論議の経緯と背景
①日本の集団的自衛権の行使については、2001年の9.11事件を契機にアメリカから強く要求されるようになった。
②それに伴って安倍内閣や麻生内閣のときにも、「有識者懇談会」等から「集団的自衛権の行使を認めるべきである」とする提言が行われた。
③解釈改憲は政府が単独で出来ることなので、無節操な野田首相が「国家戦略会議」「フロンティア分科会」の提言を受ける形で、「国家安全保障基本法案」の中で集団的自衛権の行使を明記した自民党と呼応して、それに踏み切る惧れは十分にある。

2.集団的自衛権行使の意味
 ①集団的自衛権の行使は、「国には固有の自衛権があるので『自衛のために必要な最小限度の実力(自衛隊)』を持つことは憲法9条に違反しない」とする合憲論の根拠とは相いれないものなので、それによって逆に自衛隊が憲法違反の存在であることが明らかにされる。
 ②政府自らが前項を認めるということは、「権力担当者に対する国民からの命令」という意味をもつ憲法によって本来縛られるべき政府が、「憲法に縛られない」と宣言するに等しく、そうなれば最早憲法の意義自体が失われる。
 ③こうした根源的な問題の指摘が、マスコミでも「論壇」でも政治の舞台でも聞こえてこないのは、不思議なことである。 

 確かに日本のマスコミや学者・評論家たちは、アメリカの威令に接すると一斉に沈黙するか、逆に如何にそれが正当な要求であるかを論じ出します。それはあたかもアメリカへの迎合が彼らの「生活」の原理になっているかのようです。
これは一体どういうことなのでしょうか。
 以下にその論文を紹介します。 

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集団的自衛権
浦部法穂の憲法時評 2012719
(浦部法穂:法学館憲法研究所顧問) 

 政府の「国家戦略会議」の「フロンティア分科会」が、76日に、集団的自衛権に関する従来の政府解釈の見直しなどを盛り込んだ報告書を野田首相に提出した。これをうけて、野田首相は、79日の衆議院予算委員会で、集団的自衛権の問題について「提言をふまえ、政府内の議論を詰めたい」と述べ、「見直し」に前向きな姿勢をみせた。政府は、従来、集団的自衛権について、国際法上その権利は有するが憲法9条によってその行使は禁じられている、との解釈をとってきた。

 しかし、とくに2001年の「911テロ」以後、アメリカは日本の軍事的協力をこれまで以上に求めるようになり、集団的自衛権についての政府解釈の変更などの要求を強めてきた。2007年には、ゲーツ国防長官が日米防衛相会談の席で、アメリカを狙った北朝鮮などのミサイルを日本のミサイル防衛システムで迎撃できるようにすべきだとして、集団的自衛権行使の容認を迫った。また、アメリカ議会調査局が201010月に作成した日米関係に関する報告は、集団的自衛権の行使を禁ずる憲法9条がより緊密な日米防衛協力の障害となっている、と述べた。

 こうしたアメリカ側の要求の強まりをうけて、アメリカの言うことには何でも従うべきだと思っている日本の一部政治家、マスコミ、そして無見識な「有識者」たちは、「自衛隊が公海上で米艦の防護もできない、アメリカに向けて発射された弾道ミサイルの迎撃もできない、では、日米同盟にひびが入る」、「同盟国が目の前で攻撃を受けたら助けるのがあたりまえで、それさえできないというのでは申し開きが立たない」などとして、政府の憲法解釈を変えて集団的自衛権が行使できるようにすべきだ、という声を一斉にあげはじめたのであった。 

 だから、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈の見直しという議論は、今回初めて出てきたものではない。自民党政権時代にも、たとえば安倍内閣のときや麻生内閣のときに、同様の「有識者懇談会」の報告が出されているし、それをうけて時の首相が前向きな姿勢を見せたのも今回が初めてではない。

 そして、今回、前記「フロンティア分科会」報告と時を同じくして、自民党は「国家安全保障基本法案(概要)」なるものをまとめ(76日総務会了承)、そのなかで、「我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した」場合に国連憲章に定められた自衛権を行使するとして、集団的自衛権の行使を明記した。要するに、野田首相は、ここでも、自民党がやろうとしていることと同じことをやろうとしているのである。

 報道では、民主党内には慎重な意見もあるので実際に「見直し」されることになるかどうかはわからない、といわれているが、無節操な民主党政権なら、何事でもないようにやってしまうのではないか。武器禁輸原則の緩和や原発再稼働や消費税引き上げのように・・・。そして原子力基本法に「我が国の安全保障に資することを目的として」という文言を何でもないようにさりげなく入れたように・・・。

 自民党も、政権を奪還したら前記の「安全保障基本法」を成立させる、と言っているから、政権交代前の自民党とは違って、党内に慎重論があるから(あるいは「友党」の公明党がいい顔しないから)決定は先送りするという姿勢はとらないであろう。となれば、野田首相が「やる」と言って突っ走れば、消費増税の場合と同じように、「憲法解釈の見直し」がされてしまうことになろう。

 いや、消費増税の場合は法律を通す必要があったが、集団的自衛権については「政府が憲法の解釈を変えればいい」だけで法律を通す必要もないから、もっと簡単な話になる。だが、それがいったいどういう意味をもつのであろうか。 

 集団的自衛権の行使は憲法9条によって禁じられている、という解釈は、そもそもどこから出てきたのであろうか。それは、一言で言えば、本来違憲の自衛隊を合憲だと言いくるめるための最低限の条件だったのである。「一切の戦力を保持しない」とする憲法のもとで自衛隊という「立派な軍隊」をなぜ持つことができるのか。この問いに対する政府の答えは、こうである。

①憲法9条は一切の戦争を放棄し一切の「戦力」の保持を禁じている。
②したがって、日本が「戦力」を持つことは自衛のためといえども憲法上禁止されている。
③しかし、憲法9条は独立国家に固有の権利としての「自衛権」まで放棄したものではない。
④したがって、この「自衛権」の行使としての必要最小限度の行動は憲法の禁ずるところではなく、そのための手段として「自衛のために必要な最小限度の実力(自衛力)」を持つことは憲法9条に違反しない。
⑤自衛隊は「自衛のために必要な最小限度の実力」であり憲法9条が禁止する「戦力」にはあたらない。 

 ここで集団的自衛権にかかわるのは、④であり、そしてそれこそが自衛隊を合憲だとする最大の論拠となっていることがわかるであろう。憲法上認められるのは、「『自衛権』の行使としての必要最小限度の行動」だけである。自国が攻撃を受けたわけでもないのに「行動」を起こすのは「『自衛権』の行使としての必要最小限度の行動」とはいえない。自衛隊は、「必要最小限度の行動」のための手段としての「必要最小限度の実力」なのだから、それを自国ではなく他国が攻撃を受けた場合に出動させることは、当然許されない。

 だから、集団的自衛権の行使は憲法上認められない、という結論になるのであり、これは、上記の政府の自衛隊合憲論の核心なのである。したがって、集団的自衛権の行使を認めるということは、自衛隊合憲論を捨てるということにほかならない。

 つまり、自衛隊は違憲だと宣言するに等しいのである。それでも自衛隊を存続させるというのは(存続させなければ集団的自衛権を行使する手段がない)、「政府は憲法に縛られない」と言うのと同じことになる。つまり、集団的自衛権の行使を認めるかどうかという問題は、立憲主義の根幹にもかかわる問題なのであり、政府が憲法解釈を変えれば済むような簡単な問題ではないのである。 

 もう一つ、じつはこれが最も根源的な問題なのであるが、そもそも憲法の規範内容は政府の解釈しだいで変えられてよいものなのか、という問題がある。集団的自衛権の問題になると、これまでも、そしていまも、「政府が憲法解釈を変えるべきだ」とか「いや、変えるべきではない」といった議論になるが、そもそも政府の解釈しだいで規範内容が変わるようなものが、はたして憲法と呼べるのであろうか。

 憲法とは、権力行使に枠をはめるものであって、「権力担当者に対する国民からの命令」という意味をもつものである。その憲法の規範内容が権力担当者である政府の「解釈」しだいでどうとでもこうとでもなる、という考え方は、憲法というものの存在自体を否定する考え方だといわなければならない。

 政府が憲法解釈を変えれば集団的自衛権の行使が可能になる、というのは、憲法というものの意味を前提にするかぎり、論理破綻以外の何ものでもない。
 そういう根源的な問題の指摘が、マスコミでも「論壇」でも、そして政治の舞台でも、まったくといっていいほど聞こえてこないのは、摩訶不思議である。

2012年7月23日月曜日

福島放射能災害による死者予測数は1300人・・・しかし共同通信は


19日、「がん死者130人と試算 福島原発事故で米研究者」と題する記事が共同通信のニュース面に載り、東京新聞、北海道新聞その他の地方新聞に一斉に転載されました。これは政府が主催した先の"原発依存度に関する意見公聴会"で、電力会社の幹部が行った「放射能で亡くなった人はこれまで一人もいないし、今後も発生しない」という発言の欺瞞性を明らかにするものでした。
ところが何と元の記事では、死者の予測数は130人ではなくその10倍の1300人であり、「福島原発から放出された放射能で最終的に1300人が亡くなり、死にいたらないまでもガンになる人々は2500人に上る」と記載されていたことが分かりました。
1300」の数字は元の記事のタイトルにもリード部分にも算用数字で書かれているので、誤訳などは考えられないことです。これまで通信社の記事は、新聞社の記事などとは違って客観性のあるものとして評価されてきました。もしも今回の記事が意識的に過少に誤訳したということであれば、 それこそ政府の隠蔽体質と軌を一にするもので、あってはならないことです。
以下に元の記事の正しい全訳と共同通信の誤訳?記事を紹介します。 

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日本の核災害による死者数は全世界で1300人に及ぶと研究者が試算
Health Day  web  2012718


1,300人の死亡者のうちのほとんどが放射能によるもので、それは
日本で起こるだろうと、スタンフォード大の科学者チームが予測 

去年の福島第一原発事故が、世界の人々の健康にどれほどの影響を与えるかアメリカの研究者チームが試算したところ、放射能によって、最終的に1,300人の人々が死に至り、死に至らないまでも、ガンになる人々の数は2,500人に上るということである。
放射能に起因する死亡者、ガンに罹る人のほとんどは日本でのことだろう、とスタンフォード大のチームは述べた。

彼らの試算は、かなり大雑把である。しかし、この見方は、損傷した原発から放出された放射能が、健康への重大な結果をもたらすことはないだろう、という、それより以前に出ていた主張に挑むものになる。
研究者チームのこの試算には、311日の地震、津波、そしてメルトダウンが起こった後、原発周辺地域から避難したことによって亡くなった、約600人の人々は加えられていない。

雑誌「エネルギーと環境科学」(the journal Energy and Environmental Science)の717日号の中で公表された研究結果は、この災害が世界中に、どのようにして健康的影響を与えるのかを、詳細に分析した初めての研究である。
この研究に当たっては、原発から放出された放射性物質がどのようにして遠くに運ばれるかを予測する地球規模の大気圏モデルが使われ、放射能の健康への影響を試算する、もうひとつのモデルが使われた。

「健康への影響は、圧倒的に日本で現われ、アジア本土や北アメリカでの影響は微小である。たとえば、アメリカ合衆国では、福島第一原発からの放射能に由来する死者数は0人から12人の間、ガンになる人の数は、0人から30人までの間である」と予測されていた。
「分かったことは、この災害が世界規模で広がるので、他の国々で起こる不安を、しっかり管理すべきである」と、この研究報告を書いたジョン・テン・ホェーベ氏(最近、博士課程を卒業した)は、スタンフォード大学新聞の中で述べた。

WHO(世界保健機構)は、福島災害と深い関係のある健康問題についてより多くの情報を持っている。
 Robert Preidt
スタンフォード大学新聞 2012717日号

(「カレイドスコープ」ブログの訳による)

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がん死者130人と試算 福島原発事故で米研究者
共同通信 2012719 21:55

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質により、今後50年以内に世界で130人ががんで死亡する可能性があるとする試算を米スタンフォード大のチームがまとめ、19日までに発表した。被害のほとんどが日本人という。
 チームは、大気の動きのシミュレーションと地表の汚染データなどからセシウムやヨウ素による被ばく線量を算出。米環境保護局(EPA)の計算式を基に、発がんの危険性を求めた。「事故の放射性物質による健康への悪影響はないとする意見もあるが、そうではないことが分かった。ただしチェルノブイリ事故より少ないだろう」としている。





2012年7月22日日曜日

仏 ル・モンド紙がNHKを批判


ル・モンド紙(仏)が1415日付の記事でNHKの報道姿勢を批判しました。
外務省HPの「報道・広報」のコーナーに、毎週1回海外各紙記事の要約版を載せる「海外主要メディアの日本関連報道 」欄がありますが、19日掲載の「同 713日~719日」版には、「原発とアジサイ」と題したフランスのル・モンド紙の記事が載りました。
そこでは、「毎週金曜日夕方,官邸前で行われる原発反対の抗議デモの参加者は回を重ねる毎に増えているが、日本の主要新聞の扱いは非常に小さく、NHKはこれを完全に無視している」と、NHK主要新聞よりもさらに退嬰的な姿勢であることが批判されていました。

NHKは、これまで海外については数百人規模のデモでも映像入りで報道する一方で、国内で行われている毎週金曜日の官邸前の原発再稼働反対・抗議行動については、一貫して無視してきました。それが外人記者にとっては奇異に映り、政府寄りの態度を不審に思ったのでしょう。公共の報道機関であるNHKが、政府にとって都合の悪いことは報じないなどの、政府寄りの姿勢を示すことは許されません。

そうした批判に加えて、今や官邸前の抗議行動は国民の注視するところとなりましたので、20日(金)夜のNHKNC9では、初めて数分を掛けてその抗議行動を報じていました。

以下にル・モンド紙の記事(要約版)を紹介します。

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原発とアジサイ
ル・モンド紙(仏)201271415日付 

 日本ではデモの習慣は失われていたが,1ヶ月前から毎週金曜日の夕方,総理官邸の前で原発反対の抗議デモが行われている。デモの参加者は回を重ねる毎に増えている。しかし,国内の主要新聞の扱いは非常に小さく,NHKはこれを完全に無視している。参加者数は,主催者側の発表では10万人から15万人だが,警視庁はこの十分の一の数としている。
今日日本で繰り広げられているデモは1960年の日米安保条約調印反対デモや,数十年前から続いている沖縄の米軍基地反対デモ以来最大規模だが,これは「アジサイ革命」につながるだろうか。

反原発運動の組織はばらばらで,参加者は運動家というより個人としてデモに参加している。60年代及び70年代,原発に反対していたのは農業従事者や漁民で,自分たちの生活様式を守るためであった。その後,チェルノブイリ原発事故で主婦が反原発を訴えるようになり,その後環境保護派が反原発の先鋒を担ぐようになった。生活の不安定な人々の数が最近急増した日本では,福島原発事故後,これらの人々が新たに抗議活動に加わるようになった。
生活の不安定な若者は,自分たちをマージナルな存在に追いやっている社会経済システムに対する欲求不満のはけ口として,時間的な余裕もあることから反原発運動に加わる。
(マージナル : 周辺の、境界の  ※事務局)

2012年7月20日金曜日

【憲法制定のころ 5】 憲法調査会におけるベアテ参考人の陳述

200052日参議院第147回国会憲法調査会 ―
  これは上記憲法調査会におけるベアテ・シロタ・ゴードンの陳述を抜粋・要約したもので、憲法草案作成当時の状況と日本国憲法に寄せる彼女の思いが語られています。
 一説によると同憲法調査会は憲法改正を意図して作られたのですが、ベアテの陳述以後は、会の中で改憲を口にしにくくなったと言われています。 

①マッカーサーは憲法草案を作ることを考えていなかった
GHQの民政局に入って一カ月くらい経った(1946)2月4日の朝、ホイットニー局長(准将)が私たちを集めて、「あなたたちは今日から憲法草案制定会議のメンバーになりました、新しい日本の憲法の草案をつくるのが任務で、これは極秘です」と言いました。
 それまでマッカーサー元帥は、自分のスタッフにこの仕事を与えるつもりは全くなく、日本政府の松本大臣に民主的な憲法の草案を頼みましたが、彼はいつも明治憲法と余り変わらない草案を書いて来たので、最後にマッカーサー元帥はその仕事をホイットニー准将に頼みました。 

②女性の権利を担当した
 人権に関する草案は男性二人と私とで書くことになり、私は、女性だから女性の権利を書いたらと言われました。直ぐにジープに乗っていろんな図書館へ行って、各国の憲法を集めました。事務所へ帰ってきたらみんながその本を見たがって、私は引っ張りだこになりました。 

③憲法に女性の人権を詳しく書きたかった
 私は、戦争の前に10年間日本に住んでいましたから、日本では女性が全く権利を持っていないことをよく知っていました。だから憲法の中に女性のいろんな権利を書き入れたかったのです。配偶者の選択から妊婦が国から補助される権利まで、全部、具体的に詳しく憲法に書きたかったのです。 

④運営委員会が条文の草案から社会福祉を受ける権利を外した
 人権の草案がまとまって民政局の運営委員会と打合せしたときに、運営委員たちは私が書いた草案の基本的な女性の権利には賛成しましたが、社会福祉の点についてものすごく反対しました。そういう詳しいものは憲法に合わないので、民法で定めなければならないと言いました。私は、こういう社会福祉の点を憲法に入れなければ、民法をつくる男性は絶対にそれを盛り込まないから、と言いました。

 ケーディス大佐は、「あなたが書いた草案はアメリカの憲法に書いてあるもの以上ですよ」と言いました。私は、「それは当たり前ですよ、アメリカの憲法には女性という言葉が一項も書いてありません。しかしヨーロッパの憲法には女性の基本的な権利と社会福祉を受ける権利が詳しく書いてあります」と答えました。
 私はすごくこの権利のために闘いました。涙も出ました。 

④日本政府代表との徹夜の審議の通訳を務めた
 3月4日に民政局の運営委員会と日本政府の代表者の極秘の詰めの会議が開かれました。そこでは最初の象徴天皇制から揉め、意味だけではなく、言葉の使い方、どういう字を使うかも全部議論になって大変でした。私は通訳として参加しましたが、通訳が速かったのでアメリカ側と日本側の両方の通訳をしました。それで日本側は私に対して良い印象を持ちました。
夜中の2時頃に、今度は男女平等の条項について日本側は、「こういう女性の権利は全然日本の国に合わず、日本の文化に合わない」と主張して、激しい議論になったとき、ケーディス大佐は日本側代表の私への好感をうまく使おうと考えて、「ベアテ・シロタさんは女性の権利を心から望んでいるので、それを可決しましょう」と言いました。
日本側は、私がその草案を書いたことを知らなかったので、随分びっくりして、「それではケーディス大佐が言うとおりにしましょう」と言いました。 

⑤押しつけの憲法と言うのは正しくない
1952年に占領軍がアメリカに帰ったときに、ある日本の学者と新聞記者が、新しい憲法は日本に押しつけられたものであるから、改正すべきだと主張しました。
しかし、普通、人が他の人に何か押しつけるときに、自分のものより良いものを押しつけはしません。日本の憲法はアメリカの憲法よりすばらしい憲法ですから、押しつけという言葉は使えないと思います。この憲法が日本の国民に押しつけられたというのは正しくありません。 

⑥草案作成の作業に関与したことはずっと秘密にしていた
 憲法草案に参加した私たちは、この仕事について長い間黙っていました。一つの理由はそれが極秘であったからです。もう一つの理由は、憲法を改正したい人たちが、私の若さを盾にとって改正を進めることを恐れていたからです。それで黙っていた方が良いと思い、私は日本の新聞記者のインタビューを受けませんでした。5年前まで親しいお友だちにも何も話しませんでした。1回か2回だけ、1970年ごろ、ある学者に少しこの話をしました。 

⑦日本で女性の地位が低いことを良く知っていた
 私は、小さいときから日本の軍国主義を自分の目で見てきました。私は、6歳のときから日本の社会に入って、日本のお友達と遊んで、虐げられた女性の状況を自分の目で見ました。奥さんがいつでも主人の後ろを歩くのを自分の目で見ました。
奥さんがお食事をつくって、旦那とその友達にサービスしても、会話には参加しないで食事も一緒にとらないで、全然権利がないことをよく知っていました。好きな人と結婚できない、離婚もできない、経済的権利もないことを知っていました。 

⑧良い憲法ならそれを守れば・・・
 ある人は、この憲法は外から来た憲法であるから改正しなければならないと言います。日本は、歴史的にずっと昔からいろんな国から良いものを日本へ輸入しました。漢字、仏教、陶器、雅楽などを他の国から輸入しそれを自分のものにしました。だから、たとえ他の国から憲法を受けたとしても、それが良い憲法であればそれでいいのではないでしょうか。
若い人が書いたか、年取った人が書いたか、誰がそれを書いたかということは意味がないでしょう。良い憲法だったらば、それを守るべきではないでしょうか。 

⑨40年以上も改正されなかった憲法は他にはない
 この憲法は50年以上持ちました。それは世界で初めてです。今まではどんな憲法でも40年の間には改正されました。私は、この憲法が本当に世界のモデルとなるような憲法であるからこそ、改正されなかったのだと思います。
 日本は、このすばらしい憲法を他の国々に教えなければならないと思います。他の国々がそれを真似すればよいと思います。 

⑩日本の女性を尊敬している
最後に、私は日本の女性をすごく尊敬しています。日本の女性は賢いです。日本の女性はよく働きます。日本の女性の心と精神は強いです。
私は子供と孫の将来について心配しています。平和がないと安心して生活ができないと思います。私の耳に入っているのは、日本の女性の大多数が、憲法は良い、日本に合う憲法だと思っているということです。
アジアの国々も日本について、安全な国だという思いを持っています。そして日本の女性はそれをよく分かっています。だから、その日本の女性の声を聞いてください。 

【憲法調査会での質問に答えて(質問委員名は省略)

A 非常時に公共の福祉と安全確保のために個人の権利を制約する必要性は?
 人権をカットするために憲法を改正するのは非常に危ないことだと思います。「法律」でそういうことを決めれば良いのではないでしょうか。憲法を改正しなくても、その主旨を他の法律に翻訳(インタープリテーション)して作ることができると思います。 

B 男女間の同一労働同一賃金制が日本で遅れていることについて
それは日本の女性の問題だけではなくて、アメリカでも随分時間がかかりました。こういうものはどうしても時間がかかります。多分日本の女性の権利はこれから非常に速く進歩すると思います。 

C 女子大等で「憲法」が選択制になったことについて
 アメリカもちょうど同じです。あなたたち議員の皆さんが外に出て講演して、もっと憲法を読んでもらうようにしなければならないと思います。 

D 女性の平和への役割について
なぜだかは知りませんが、女性は男性よりも平和的だと思います。だから、平和を守るのは女性の任務だと思います。平和のために毎日毎日闘って、頑張ってください。 

E 日本の憲法に最高水準の規定を盛り込んだ
 人権については、もちろん理想的な憲法を作りたいと思い、一番良いものを何でも入れたかった。他のアジアの国も随分苦労したので、軍国主義が全く日本からなくなれば、これからはアジアの国々も安全に生活することができるからと思いました。そして全世界のためにも、こういう平和的な憲法があればそれがモデルになって、他の国もそれを真似れば良いと思いました。 

F 運営委員会の考え方について
アメリカの憲法に女性の権利や社会福祉のことが書いていなかったので、運営委員会の三人の男性弁護士も、女性の社会福祉については民法には入れるべきであるが憲法には合わないという考え方だったのです。だから私がヨーロッパの憲法はそうじゃないと言ってもダメでした。 

G ベアテの半生を描いた日本の演劇「真珠の首飾り」の感想は
芝居については私は専門家です。だから「真珠の首飾り」は本当に推薦できます。すごく良い芝居です。女優二人が、私の役割をやっているんです。一人は若いベアテ、一人は年とったベアテ、その二人が出ますからどうぞ見てください。

H 作業班内での調整は?
 私たちはみんな本当に別々で作業をやりました。私は女性の人権のことだけをやって、他の人権を担当した二人が何を書いたか、何を考えたか、その話しをする暇もなかったんです。七日間朝から晩まで自分のテーマに取り組んでいて、議論も余りしなかったので、他の人たちがどういうことを書いたのか本当に知りませんでした。 

I 9条の改正がアジアに与える影響について
アジアの他の国々は、まだ戦争のときの日本の軍国主義を忘れていないと思います。今は平和憲法があるから安心していると思いますが、もしそれを改正すれば、そこから何が出てくるのか心配すると思います。 

J 日本人の考えは取り入れられたのか
私たちは他の国の憲法も参考にしたので、憲法草案には私たちの考え方だけじゃなくて、世界中の人の考え方が入っています。日本の憲法研究会も随分良い草案をケーディスさんに渡したし、社会党もすごく良い草案を作りました。それは運営委員会がよく知っていましたので、日本の考え方が入っていないということはなく、ちゃんと入っています。 

K 1週間という作業時間は短かかったのでは
1週間、朝から晩までやりましたけれども、時間的には十分だと思っています。
その憲法が今まで改正されなかったのは、本当に日本の国に合うものだったからで、1週間で作った憲法は良い憲法だったと思います。 

(この記事をもって「憲法制定のころ」を終わります)

  ※この記事は下記のインターネット記事から抜粋・要約・編集しました。

20000502日 参議院第147回国会 憲法調査会議事録 第7

2012年7月18日水曜日

外国のメデイアも日本の反核運動に注目しています


毎週金曜日に官邸前で行われている原発再稼働反対の抗議集会は、回を追うごとに参加者が増えて、6月末以降は主催者発表で毎回15万人前後を維持しています。この抗議集会についてNHKをはじめとして日本のマスメディアがまだ殆ど取り上げなかった629日(金)に、ニューヨークタイムズがいち早く同日夜の抗議集会を写真入りの比較的長文の記事で報じ、 無視を続けている日本のメディアと好対照をなす姿勢が注目されました。
 また、16日に行われた「7.16さよなら原発 10万人集会」には、主催者発表で17万人もの人が集まり、デモの最後尾が会場の代々木公園を出発するのが夕方近くになったということです。  


 この集会についても、ニューヨークタイムズは16日付で、「これまでで最大の規模の原発抗議集会」と題して、会場の様子とデモ行進の様子を写した2枚の写真を添えて、かなり詳細に報じました。

 また18日付のしんぶん赤旗によれば、イギリスのフィナンシャル・タイムズやドイツの公共第1テレビや第2テレビでも、この集会を大々的に報じたということです。
  以下に629日付のニューヨークタイムズと18日付けのしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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東京で何万人もの人々が原発の再稼動に抗議
ニューヨークタイムズ 2012629 

反核スローガンを叫んだり、ドラムをたたいたりして数万人というデモ隊が金曜日、首相官邸前に集まった。原子力発電所を再稼動するという政府の決定に対し、これまでで最大の国民の怒りを示したことになる。

小さな子供連れの母親や仕事帰りのスーツ姿の男性を含む群衆は、「ノー・モア・フクシマ!」と唱え、それが警察によって封鎖された住居や国会議事堂近くの広い大通りを埋め尽くした。

参加者の推定人数は発表元によって大きく異なる。主催者によると15万人だが、警察は1万7千人と発表した。地元メディアは、2万人から4万5千人と推定し、1960年代以降、東京の中心部で行われた最大の抗議と報じた。

どんな規模の抗議行動も、長く政治的に無関心であった日本では稀である。しかし、内閣総理大臣野田佳彦が今月、西日本の大飯発電所の再開を命じたとき、多くの日本人の間で、安全性に関する国民の懸念を無視していると感じられ、不満が高まっている。

大飯原発は、関電の電力の三分の一を供給し、日本に50基ある原子炉のすべてを停止させることにつながった昨年の福島第一原発事故以来、再稼動予定の最初の原発だった。巨大地震と津波が重要な冷却システムを停止させた後、福島第一原発の3つの原子炉がメルトダウンした。

野田氏は、大飯原発の2基を再稼動させるように命じたのは、電力不足によって、うだるように暑い夏に停電が発生する可能性や企業が機能しなくなるのを回避するためだと述べた。しかし政治アナリストの多くは、世論調査で日本の三分の二が再稼動に反対したことが明らかになった後、政府はプラントが安全に再稼働することを説得できなかったとして、国民から反発が出ると警告した。

金曜日に抗議した者の多くは、野田が「密室で強力な官僚や業界幹部が決定を行う政治的な旧態依然状態に日本を戻そうとしている」ことに対して不満を述べた。再稼動の決定への怒りが、政治的覚醒の契機となって、初めて街頭に出て抗議することになったと説明する人もいた。

1歳の息子を抱いた29歳の主婦、梶山洋子さんは、「これまで、日本人は政府に反対することはなかったけれども、今、私たちは政府に反対しなければなりません。さもなければ、政府は私たちすべてを危険に晒すでしょう。」と語った。

「安全性を確保することなく、原発を再起動するのは狂っています。」と、もう1人の主婦でデモに参加するのは初めてと言う山崎なおみさんが述べた。「電力と仕事のために原発が必要なのはわかっていますが、政府が私たちを守ってくれるとは思えない。信用できない。」

主催者はそのような不信が3月下旬以来、毎週開催されている抗議者の規模の急速な拡大につながっていると述べた。抗議は数百の参加者で始まったが、野田氏の再起動決定後、数千人に増加したと主催者の1人、東京在住のイラストレーターであるレッドウォルフ・ミサオさんは述べた。

環境エネルギー政策研究所で東京に本拠を置くエネルギー政策グループのディレクターを務める飯田哲也さんは、抗議は福島第一原発事故後、公衆衛生を保護することに失敗し、再稼動を急いだ政府に対する幅広い不満を反映していると述べた。

「政府への怒りと信頼の喪失がある。」「これは不可逆的な変化であり、私はこのタイプの運動が継続することを期待しています。」と飯田氏は語った。

首相は、抗議に全く動じていない様子だ。野田氏が首相官邸を出て公邸に移動する途中、「大きい音だね。」と記者団に述べた。

騒々しいながら、金曜日の抗議者たちは、よく整理され、潔癖なほどに礼儀正しい日本人の傾向を示した。多くの場所で、彼らは歩行者のための明確な通路を維持し、歩道に沿ってきちんとしたラインに立った。抗議が午後8時に終了したとき、主催者は迅速にメガホンを使って参加者を分散させた。その後に残されたゴミはほとんどなかった。   (「カナダde日本語」ブログの訳による)


英独のメディア 日本の運動に注目 “原発反対 世界に影響”
しんぶん赤旗   2012718 

 【ロンドン=小玉純一】英紙フィナンシャル・タイムズ電子版は16日、最近、日本で広がる原発反対の運動について「本気の力を出し始めた」として、「世界第3の経済大国のエネルギー政策、したがって原発部門の世界的動向に対して、非常に大きな影響を与えうる」と論評しました。

 同紙は最近の一連のデモを「数十年間で日本最大の抗議行動が相次ぎ、それぞれ数万人が参加している」「首都で最大の反原発イベントとNHKが述べた」と報じました。

 同紙は「最近のデモが1960年代以来、政治問題を街頭に持ち込むことが少ない国での根本的変化を示していると、主催者や参加者がみなしている」と紹介。官邸前デモについては、「ソーシャルメディアによって組織された新しい活動家集団」や「左翼の労働組合組織・全労連」を含む「連携によって導かれている」と報じました。
 16日の原発反対デモをドイツ公共第1テレビ(ARD)と第2テレビ(ZDF)は20万人以上のさまざまな人たちが東京で原発再稼働に反対したと大きく伝えました。
 うちARDは「子どもや孫たちに汚染されていない日本を残したい」という参加者の声を紹介しました。


2012年7月16日月曜日

以前の記事は次のようにすればご覧になれます (再掲)


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【憲法制定のころ 4】  ベアテ ・ シロタ ・ ゴードン

 下記の条文は、1946年にGHQの民生局に所属していた22歳の女性 ベアテ・シロタ・ゴードンが作成した日本憲法の草案です。
草案第18条は現憲法の第24条の中に活かされていますが、第19条は残念ながら活かされませんでした。もしもこれが制定されて関連の法令も整備されていたなら、その後の多くの母子家庭や婚外子(「私生児」)の悲劇はなくなっていたことでしょう。
これらの案文を辿ると、日本の女性と児童に世界で最高度の権利と福祉を確立しようと奮闘した、一人のうら若き女性の意気込みが伝わって来ます。
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18条 家庭は、人類社会の基礎であり、その伝統はよきにつけ悪しきにつけ、国全体に浸透する。それ故、婚姻と家庭とは法の保護を受ける。婚姻と家庭とは、両性が法律的にも社会的にも平等であることは当然である。このような考えに基礎をおき、親の強制ではなく相互の合意にもとづき、かつ男性の支配ではなく両性の協力にもとづくべきことをここに定める。
これらの原理に反する法律は廃止され、それにかわって配偶者の選択、財産権、相続、住居の選択、離婚並びに婚姻及び家庭に関するその他の事項を、個人の尊厳と両性の本質的平等の見地に立って定める法律が制定されるべきである。
                          (⇒ 現24条)
  注. カッコ内は日本国憲法に反映された条項を示します。以下同。
19条 妊婦と幼児を持つ母親は国から保護される。必要な場合は、既婚未婚を問わず、国から援助を受けられる。
非嫡出子は法的に差別を受けず、法的に認められた嫡出子同様に身体的、知的、社会的に成長することにおいて権利を持つ。
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 彼女はさらに次のような草案も書きました。それは今から約70年も前のことで、アメリカの憲法には女性の権利などはうたわれていない時代のことです。(アメリカ憲法ではいまもうたわれていないということです)

彼女が如何に女性と児童の人権を守ろうとしているかが汲み取れるもので、才媛であったとはいえ普通の大卒者に過ぎない彼女が、突如与えられた専門外の仕事で、しかも僅か1週間で仕上げた条文が、世界の最先端を行くものであったことには驚きを禁じ得ません。
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20条 養子にする場合には、その夫と妻の合意なしで家族にすることはできない。養子になった子どもによって、家族の他の者たちが不利な立場になるような特別扱いをしてはならない。長子の権利は廃止する。 

21条 すべての子供は、生まれた環境にかかわらず均等に機会が与えられる。そのために、無料で万人共通の義務教育を、八年制の公立小学校を通じて与えられる。中級、それ以上の教育は、資格に合格した生徒は無料で受けることができる。学用品は無料である。国は才能ある生徒に対して援助することができる。
(⇒ 現26条)
24条 公立・私立を問わず、児童には、医療・歯科・眼科の治療を無料で受けられる。成長のために休暇と娯楽および適当な運動の機会が与えられる。 

25条 学齢の児童、並びに子供は、賃金のためにフルタイムの雇用をすることはできない。児童の搾取は、いかなる形であれ、これを禁止する。国際連合ならびに国際労働機関の基準によって、日本は最低賃金を満たさなければならない。
(⇒ 現27条)
26条 すべての日本の成人は、生活のために仕事につく権利がある。その人にあった仕事がなければ、その人の生活に必要な最低の生活保護が与えられる。
女性はどのような職業にもつく権利を持つ。その権利には、政治的な地位につくことも含まれる。
同じ仕事に対して、男性と同じ賃金を受ける権利がある。
(⇒ 現25条、27条)
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 また、現憲法第14条:「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」も、彼女が執筆しました。 

 彼女は全米トップレベルの4女子大ミルズ・カレッジを首席で卒業したのち、日本に住む両親に会うためにGHQの民生局に就職しました。日本での彼女の任務は女性団体やミニ政党、女性運動家などを調査する仕事でした。そして19462月に急遽GHQで憲法草案をまとめることになったとき、彼女は人権の部分を担当しました。
彼女は、少女時代を日本で過ごしたので、日本が男性中心の社会であることを知っていました。また日本語には曖昧さがあるので、憲法で明確に規定しておかない限り、役人の作る法規(民法)に女性や児童の権利がうたわれないことも分かっていました。
それで女性と児童の権利を可能な限り具体的に憲法に盛り込んでおきたかったのでしたが、草案作成チームの責任者であったケーディス大佐(弁護士)によって、「民法の領域だから」という理由で草案の多くの部分が削除されました。彼女は泣いて抗議したそうですが、実際に今日に至ってもそれらの条項が民法に含まれていない現実を見ると、彼女が慧眼であったことが分かります。 

ベアテは、ウクライナ系ユダヤ人の両親がオーストリアに避難中の192310月にウィーンで生まれました。1929年の春に、リストの再来と言われた世界的なピアニストである父が、芸大の前身・東京音楽学校の教授に就任したのに伴い、五歳半で来日しました。
1939年の秋に、15歳でアメリカのミルズ・カレッジに留学しましたが、米人と接してみると「自分が半分以上日本人」となっていることに気づきました。

 日米戦争の勃発(194112月)により、留学の途中で日本からの学資の送金が途絶えると、日本の短波放送の内容を英語に翻訳するアルバイトをし、その仕事の中で日本語の文語体と敬語を学びました。またそのときに米国で入手した露日辞典を用いて、英語をロシア語に訳してそれから日本語に翻訳する手法で、日本の軍事用語なども習得しました。その結果、当時日系2世でも聞きとれないような特殊な日本語も正確に聞きとれたので、上司から信頼されました。
彼女は渡米前の少女時代に、英語やフランス語の家庭教師につくなどして、既に日本語・英語・フランス語・ロシア語・ドイツ語が出来ましたが、大学では更に仏語会話サークルに所属し、スペイン語を履修したので、6ヶ国語に堪能になりました。 

1943年大学卒業後、タイム誌などを経たのち、GHQの民政局に就職しました。6ヶ国語の言語能力とタイム誌での調査能力が高く評価されて採用されると、19451224日に空路日本に赴任しました。
憲法草案の作成では3名で構成された人権小委員会に属して、社会保障と女性の権利についての条項を担当しました。そして「女性の権利」について、当時の世界の憲法において最先端といえる人権保護規定を作りました。
草案の作成に当たり、ベアテ・シロタが都内の図書館から借り出して参考にした憲法は、下記の通りです。
1. ワイマール憲法(ドイツ語)
・第109条(法律の前の平等)、第119条(婚姻、家庭、母性の保護)、第122条(児童の保護)
  2. アメリカ合衆国憲法(英語)
・第1修正(信教、言論、出版、集会の自由、請願権)、第19修正(婦人参政権)
 3. フィンランド憲法(養子縁組法)(フィンランド語)
  4. ソビエト社会主義共和国連邦憲法(ロシア語)
10章・第122条(男女平等、女性と母性の保護)

194634日、GHQの憲法草案に基づいて作成された日本政府案が、日本文のままでGHQに届けられました。それを手分けしてまず夕方までに英文に直すと、かなり保守的な内容であることが分かったので、引き続き徹夜で民政局の運営委員会と日本政府代表とで逐条の審議をしたのですが、その通訳をベアテが務めました。日本語の文語体や敬語が理解できないと、そうした緻密な作業は務まらなかったからでした。
 審議では、日本側が象徴天皇は日本の歴史や文化に合わないので受け入れられないと主張して第1章から大いにもめましたが、彼女は日本の実情をよく理解して正確な通訳に徹したので、日本側は彼女を信頼しました。

24(注1でも、やはりそれは日本の風土に合わないからと日本側は大反対をしましたが、ケーディス代表が「それはミス・ベアテが確固たる信念で書いたものなので、このまま通しませんか」と言ったところ、日本側は彼女が起草者とは知らなかったので大変ビックリし、急遽受け入れることになったということです。日本側が彼女に寄せた信頼を逆手にとったケーディスの作戦勝ちでした。
(注1) 要旨 : 婚姻は、両性の合意のみに基く。夫婦は同等の権利を有する。配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻等に関する法律は、個人の尊厳と両性の平等に立脚して制定されなければならない。 

1993年頃に彼女のそうした活躍が明らかにされてからは、何回にもわたって日本に招待され全国で講演活動を行いました。行った講演は全国200ヶ所以上で、聴衆の数はのべ8万人に及んだということです。

  この記事は主として下記を参考にしました。
ベアテ ・ シロタ ・ ゴードン (ウィキペディア)

参議院第147回国会 憲法調査会議事録 第7 20000502

コメント記入の時に日本語変換(ローマ字変換等)ができなくなる!?!


会員の方から、「記事についてのコメントを書こうとしたが、日本語変換(ローマ字変換等)が出来なくて書けなかった」、という苦情が寄せられました。
この現象はGoogleの検索のときにも起きることがあり、当ホームページもGoogleのブログ・ソフトを利用している関係上、多分同じ原因で起きているものと思われます。後日識者に聞いてみて対処方法が分かりましたらお知らせします。 

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