2026年4月2日木曜日

02- イランの大胆な戦略的動き―「占領地に対するミサイル優位」宣言と「核抑止力」警告

「マスコミに載らない海外記事」に掲題の記事が載りました。
 米とイスラエルによるイラン不法攻撃が始まってから4週間が経過しました。早々に大戦果を挙げ(親米政府を樹立す)ることがトランプの望みで、何より中間選挙を有利になるからという思惑があったようですが そんな展開にはなっていません。
 この際にイランに大打撃を与えたいというイスラエルの思惑はかなり達成されたかも知れませんが、「『その戦争、誰のためだ?』トランプがネタニヤフ案を一蹴…米イスラエル“同盟崩壊”の兆しが露呈」(MSN 31日)というような記事も出ているように、ここにきてトランプとネタニヤフの意向の食い違いが明らかになってきました。
 突如 砲爆撃を受けたイランは大きな被害を受けていますが、「湾岸諸国におけるアメリカとイスラエルの権益に対する反撃能力」をイランは益々強めており、ミサイルとドローンによる頻繁な攻撃を継続する中で、当初の予定通りミサイル攻撃の高度化を段階的に進めています。
 敵に実態を掴ませないモザイク作戦を採って「負けない闘い」を敢行するという予定通りの作戦を遂行しています。
 対して米国は何よりもミサイルや弾薬の備蓄が枯渇に近づいていて、整備の遅れと兵站支援能力の欠如により既に爆撃機の出撃能力が崩壊しているということです。トランプは何らかの口実の下に早くこの戦闘を終焉させたがっているのですが、もっともらしい「勝利」を予測できる出口戦略が見つかる見通しはありません。
 イスラエルに対しても、イランが最も厳重に警備された戦略的施設の一つを攻撃した際、イスラエルが防空迎撃ミサイルを発射できなかった事実から、「ミサイル優位」を実現したと重要かつ明確な声明を発表しています。
 新最高指導者モジタバ・ハメネイ師はある演説の途中で、戦争の終結について、それぞれ明確な期限を定めた三つの具体的要求を示しました。中東からの米軍の迅速な撤退と、60日以内の制裁の全面的撤回と、経済的損害に対する長期的な財政的補償の3つです。
 その数時間内に、北京とモスクワはともに声明を発表し、言葉を慎重に選んだものの新最高指導者発言内容と紛れもなく一致しており、両者の連携を示唆していたということです。
 トランプは放言の垂れ流しはもうやめて真剣に戦争の終結に努めるべきです。
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イランの大胆な戦略的動き―「占領地に対するミサイル優位」宣言と「核抑止力」警告
               マスコミに載らない海外記事 2026年3月30日
                  アラステア・クルック 2026年3月27日
                      Strategic Culture Foundation
 イランがホルムズ海峡の支配権を維持できればアジアの地政学は新たな戦略的現実に再構築される。戦争が始まって四週目に入ったが、今後一体どうなるのか?
 第一に、イランは激しい爆撃を受けているものの、その軍事的有効性は明白とは言えない。湾岸諸国におけるアメリカとイスラエルの権益に対する反撃能力をイランは益々強めており、意図的に選んだ不透明な体制(モザイク作戦と呼ばれる)で指導部は効果的に活動している。またイランはミサイルとドローンによる頻繁な攻撃を継続し、ミサイル攻撃の高度化を段階的に進めている。イラン国家に対する国民の支持は強固なものになっている。
 アメリカとイスラエルの爆撃は甚大な被害をイランに与えているが、これら攻撃が、イラン全土に分散し、地中深く埋められたミサイル「都市」を発見、あるいは破壊した証拠はほとんどない。むしろ、イランの隠された軍事インフラ破壊に失敗したアメリカとイスラエルは、レバノンやパレスチナで展開されているように、国民の士気を低下させるのを狙った民間目標に攻撃の矛先を変えたことを示唆する証拠がある。
 だが議論の余地がないのは、綿密に練られた戦略をイランが段階的に展開していることだ。一方、トランプには計画がなく、内容は日々変化している。イスラエルには計画があり、アメリカが提供したAIが検知できる限り多くのイラン指導部暗殺だ。更に、イスラエルの狙いは、イランを分断し、民族的・宗派的小国家に分割し、(シリアのような)弱体な無政府状態に陥らせることにある。
 今のところ、アメリカが表明している狙いは、経済インフラ(サウス・パルス・ガス施設)攻撃から、イラン核施設(ナタンズとイラン・ロシア共同運営のブシェール原子力発電所)のごく近隣への二度の重要な攻撃に至るまで、エスカレーションの脅威を断続的に示すものになっている。これら近距離ミサイル攻撃は、アメリカかイスラエルが核レベルにエスカレーションする可能性を示唆する「メッセージ」として意図されていると思われる。(だが、これに対し、イスラエルのディモナ核施設に近接するディモナ町へのミサイル攻撃でイランは応酬した。)
 ディモナ攻撃で甚大な被害が出た後、「ミサイル優位」を実現したと重要かつ明確な声明をイランは発表した。この主張は、イスラエルの最も厳重に警備された戦略的施設の一つをイランが攻撃した際、イスラエルが防空迎撃ミサイルを発射できなかった事実に基づいていた。

 戦争は「新たな局面」に入ったとイラン議会議長で軍指導者のモハマド・ガリバフは警告した。
 「イスラエルの空は無防備だ…我々が事前に計画していた次段階を実行する時が来たようだ…」
 軍事評論家ウィル・シュライバーによれば、米軍の弾薬庫(米軍の貯蔵施設)備蓄が枯渇に近づいており整備の遅れと兵站支援能力の欠如により出撃能力が崩壊しているのはほぼ確実だという。米軍有人機は依然イラン領空深くには侵入していない。だが、自国の弾薬庫の備蓄は十分だとイランは主張している。
 ここ数日「48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければイランの民生用発電所を段階的に破壊する。まず最大規模の発電所からだ」という最後通牒をトランプ大統領はイランに突きつけ、事態を更にエスカレートさせた。(イラン最大の発電所は、イランとロシアが共同運営するブーシェフル原子力発電所だ。)イランの早い降伏をトランプ大統領は依然期待しているようだ。だがイランは既にこの最後通牒を拒否し、独自の最後通牒で応じている。  
アヤトラ・モジタバ・ハメネイ師によるトランプへの最後通牒
 綿密に構成された12分間の演説で、アヤトラ・イマーム・サイード・モジタバ・ハメネイ師は、おなじみの主張から、遙かに重大な事柄へ話を進めた。演説前半は予想通りの展開だったが、レバノンの評論家マルワ・オスマンの報告によると、

 「演説の途中で、論調は過去を振り返るものから戦略的なものへ変化した。ハメネイ師は、それぞれ明確な期限を定めた三つの具体的要求を示した。中東からの米軍の迅速な撤退と、60日以内の制裁の全面的撤回と、経済的損害に対する長期的な財政的補償だ。」
 「そして最後通牒が突きつけられた。従わなければ、イランは経済、軍事、可能性として核兵器面でエスカレートする。仮説ではなく作戦上で。ホルムズ海峡封鎖、ロシアおよび中国との防衛関係の正式化と、曖昧な態度から明確な核抑止力表明へ移行する。」

 外部の反応のタイミングも同様に意味深長だった。数時間内に、北京とモスクワは、ともに声明を発表し、言葉を慎重に選んだものの、新最高指導者発言内容と紛れもなく一致しており両者の連携を示唆していた。
 戦争は新局面を迎えている。11月の中間選挙を控えた国内情勢で、この戦争がどのような影響を与えるかトランプ大統領は注視している。アメリカ国民は、投票するかどうか、あるいはどう投票するかを、9月か10月までに考えを固める傾向がある。彼の陣営は、夏までに、トランプにとって、もっともらしい「勝利」を予測できるような戦争からの出口戦略を必死に模索しているが、そもそも勝利などあり得るのか
 「イランのエネルギー網に対してトランプが行う可能性がある攻撃は、不安定化と注意をそらすためのもので、米海兵隊と第82空挺師団がカーグ島、あるいは他のイランの島々を占領するためのものだ」とSimpliciusは示唆している。地上部隊による作戦は依然非常に可能性が高いと「高官筋」は主張し続けている
 エスカレーション段階でトランプに対抗する準備が明らかにイランはできている。イランの指導スタイルは新最高指導者就任により明らかに変化した。彼はもはや漸進的「駆け引き」に関心を示していない。西アジアの地政学的状況を変えるような決定的結果をイラン指導部は目指している。
 そしてホルムズ海峡がこれを実現する交渉材料になるとイランは考えている。
 承認され、革命防衛隊(IRGC)の審査を受けた船舶のみがホルムズ海峡を航行可能な厳選された安全な航路をイランは設けている。ただし、貨物代金は人民元で支払われ、手数料が課される。このようなスエズ運河型の規制制度により、イランは年間8000億ドルの手数料収入を得られる可能性があると推定される。
 理論上、これによりエネルギー市場への供給が可能になるが、トランプ大統領が最後通牒を実行に移した場合、イランは海峡を完全封鎖するという条件付きだ。
 イランの新たな要求は「欧米諸国には考えられないほど広範囲に及ぶ」とマイケル・ハドソン教授は指摘している。「アラブOPEC諸国は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルが運営するアメリカのデータ・センターを皮切りに、アメリカとの緊密な経済関係を断ち切らなければならない。そして、1974年の石油ドル協定以来、アメリカの国際収支を支えてきた既存のオイルダラー資産を売却しなければならない」というものだ。
 「オイルダラー還流は、アメリカによる世界石油貿易の金融化と、兵器化と、アメリカ支配に基づく秩序(本物のルールでなく、単にアメリカの場当たり的要求)順守に抵抗する国々を孤立させる帝国主義戦略の基盤になっている」とハドソン教授は述べている。
 イランがホルムズ海峡を掌握し、更にフーシ派が紅海を支配すれば、エネルギーと、その価格決定権はアメリカから奪われる可能性があり、ウォール街へのオイルダラー流入がなくなれば、アメリカによる金融主導の世界支配は終焉を迎える
 ここで問題になっているのは、米軍を中東から追い出そうとするイランの野望だけでなく、GCC諸国や(日本や韓国など)アジア諸国がホルムズ海峡の航行権を得るため、やむなくイランの「属国」にならざるを得ない地政学的変容でもある。そして、安全な航行を保証できるのはイランだけだ。
 事実上、イランがホルムズ海峡の支配権を維持できれば、アジアの地政学は新たな戦略的現実に再構築されるはずだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/03/27/iran-audacious-strategic-moves-declared-missile-dominance-over-occupied-territories-warning-of-nuclear-deterrence/