2026年5月6日水曜日

06- 田中淳哉弁護士「急浮上の改憲論どう考える」(朝日新聞インタビュー)のご紹介

 憲法カフェでおなじみの田中淳哉弁護士(上越中央法律事務所)が3日付で掲題のブログを出されましたのでご紹介します。なお朝日新聞にインタビュー記事が掲載されるのは、2016年6月(緊急事態条項)、2017年5月(共謀罪)に次いで、3度目ということです。
 ブログの記事には「朝日新聞同記事の写真版」も掲載されていますがそちらは省略しました。
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「急浮上の改憲論どう考える」(朝日新聞インタビュー記事)
                        田中淳哉弁護士 2026年5月3日
                          上越中央法律事務所
朝日新聞5月3日付朝刊の新潟版に、憲法改正を巡る状況に関するインタビュー記事が載りました。朝日新聞にインタビュー記事が掲載されるのは、2016年6月(緊急事態条項)、2017年5月(共謀罪)に次いで、3度目です。

前2回のときは、朝日新聞上越支局が当事務所と同じビルに入っていたので、取材に来ていただくのも気が楽でした。しかしその後上越支局がなくなってしまったため、今回は、2度にわたって、新潟市から片道2時間以上の道のりを遠路はるばる取材にお越し下さり、記事にまとめてくださいました。転載について許諾を得ましたので、記事をそのまま貼り付けます。
また文字数の関係から、一部省略された部分があったので、フルバージョンを貼り付けます。

記者:自民党案は自衛隊を明記するとの内容であるのに対し、日本維新の会は「国防軍保持」を主張しています。

自民党は、「今ある自衛隊を書き込むだけなので何も変わらない」と主張しています。しかし、9条2項を削除して国防軍を創設するという維新案はもちろん、9条2項を残して自衛隊を明記する自民党案であっても、それが実現すれば国の在り方は大きく変わります。
これまで自衛隊に対しては、憲法9条があることにより、「戦力」にあたってはならないという制限(ブレーキ)がかけられてきました。しかし、自民党案が通ればこうした制限は大幅に緩められます。また、自衛隊は憲法に権威付けられた存在となります。つまり、憲法が、自衛隊のブレーキから、アクセルに切り替わることとなる訳です。「軍事」が公益の代表格として様々な場面で幅を利かせるようになるでしょう。

記者:防衛装備移転三原則の運用指針が改定されました。

武器の輸出を禁ずる武器輸出三原則は、長らく「国是」とされてきました。それが小泉内閣以降、段階的に緩められ、今回の決定は実質的に武器輸出を全面解禁したものと言えます。
このほかにも、「1%枠」を超えて防衛費が増額されたり、非核三原則の見直しが取り沙汰されたりするなど、憲法に基づく制度や原則を無視するかのような動きが広がっています。
憲法のブレーキが利きにくくなってきていると言えるでしょう。

記者:国会の憲法審査会では、緊急事態条項の創設についても議論されています。

緊急事態条項として主に議論されているのは、「緊急政令」と「国会議員の任期延長」の2つです。どちらも、そもそも本当に必要なのかという点が慎重に吟味されるべきですが、それに加えて弊害がないかという点も確認しておく必要があります。
前者は、緊急時に、内閣が国会の関与なく、法律と同等の効力を有する政令を発することができるようにするというものです。いかにも独裁的な内容で、濫用の危険が比較的わかりやすいと言えます。
後者は、選挙の実施が困難な事態が続いた際、国会議員の任期が切れてしまわないように、任期を延長できるようにするというもので、一見すると危険性がわかりにくいかも知れません。しかし、選挙を先延ばしすることで民意を無視しうるという意味で、やはり民主主義に反する面があると言えるでしょう。

記者:私たち国民に求められる視点はどのようなものでしょうか。

「どうして憲法が作られたのか」、「憲法は何のためにあるのか」というそもそも論に立ち返って考えることが重要だと思います。 人類の歴史を振り返ると、深刻な人権侵害は、国家権力の濫用によって引き起こされてきました。そこで、人権や自由を守るために、国家権力に縛りをかけるというのが憲法の基本的な役割です。
ですから、人権や自由が脅かされないようにするためには、「憲法の縛りがしっかり利いているか」という視点で政治に関わる問題をチェックすべきということになりますし、憲法改正案の内容についても「縛り方を変えても権力が濫用されるおそれがないか」という視点で検討すべきということになります。
法律は、国家権力が国民に義務を課し、権利を制限するものです。矢印は、国家権力から国民に向いています。これに対し憲法は、国民が国家権力に制限をかけるもので、矢印は逆向きです。つまり憲法は、私たち国民が国家権力に『守らせる』ものなのです。