2016年10月4日火曜日

安倍首相が「デマゴーグだ」と激高

 3日、衆院予算委で民進党の長妻氏は、自民党の改憲案が基本的人権を「永久の権利」と定めた憲法97条などを削除した理由を追及しましたが、安倍首相は「憲法審査会で議論を」との答弁に終始し説明を避けました
 
 長妻氏は、安倍首相が9月30日の予算委で、自民党の改憲案が、最高規範性を謳った97条を削除している理由を「条文の整理にすぎない」と答弁したことを問題視したのでした。
 また、自民改憲案の第11条が、現行憲法が「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」となっているのを、「・・・永久の権利である」に留めて、「現在及び将来の国民に与へられる」を削除した理由について、「なぜこういう改案を出したのか。なぜ基本的人権に関わる条文を変更したのか」と説明を求めまし
 
 それに対して首相は答えずに、「私が憲法草案を出したのではなく、谷垣総裁の時に出された」、基本的人権、平和主義、国民主権については変えないと再三申し上げている、あとは「憲法審査会において議論をして欲しい」と応じました
 しかし自民党の改憲案が、基本的人権を「政府や法律が許す範囲内に抑える」ように改悪するものであることは明らかなので、とても「変えないと再三申し上げている」などと言えるものではありません。
 
 憲法97条と11条は確かに文面で共通するところがありますが、97条は憲法の最高法規性を宣言するものなので、「一部がダブっているから削除して良い」というようなものではありません。
 
 1946年に新憲法を制定するに当たり、その前年に「憲法研究会」(鈴木安蔵ほか)がまとめた「憲法草案要綱」はGHQを十分に納得させるものでした。ただGHQのラウエル法規課長ら専門家から見ると、憲法の最高法規性、違憲立法審査権、最高裁裁判官の選任方法、刑事裁判における人権保障等の原則などが抜けていたので、それらをGHQの側で追加したものがGHQ憲法草案になりました。97条はこうした経緯のもとに憲法に盛り込まれたのでした。
 
 それをここで再び削除しようとするのは、安倍首相も自民党も頭の中が70年以上も前のままになっているからにほかなりません。長妻氏に「谷垣総裁の時に出したものだから、『ぼくちゃん知らない』というのか」と揶揄されて、安倍氏がそれは「デマゴーグ」(煽動政治家)だといきり立ったというのも驚きで白ける話です。
 長妻氏は第1次安倍内閣時代に「消えた年金」問題を追及して首相退陣につなげた経緯があるため、「『宿敵』との論戦で安倍氏がヒートアップしたのでは・・・と見られています。 (^○^)

(関連の条文)
 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる
(⇒ 自民改憲案では・・・永久の権利である。 以下抹消
  【最高法規】
 第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
(⇒ 自民改憲案では全文削除
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安倍首相「デマゴーグだ」 改憲草案を批判した長妻昭氏に猛反論
The Huffington Post  2016年10月3日  
民進党の長妻昭氏は10月3日、衆院予算委員会で安倍晋三首相に対し、自民党の憲法改憲草案に関する説明を求めた。長妻氏は、基本的人権を「永久の権利」と定めた憲法97条などを削除した理由を追及。これに対し安倍首相は「憲法審査会で議論を」との答弁に終始し、説明を避けた。
 
■安倍首相「私が改憲草案を出したのではない」
質問の冒頭に長妻氏は、安倍首相が9月30日の予算委員会で、97条の削除理由を「条文の整理にすぎない」と答弁したことを問題視。「(基本的人権が)永久の権利である由来が描かれている重要な条文」として批判した。
また長妻氏は、基本的人権を「現在及び将来の国民に与えられる」とする憲法11条の文言が、自民党の改憲草案では削除されている点も追求。「自民党の責任者として、なぜこういう改正草案を出したのか。基本的人権に関わる条文を変更したのか」と説明を求めた。
 
これに対し、安倍首相は「私が憲法草案を出した言うが、どこに出したのか。世に出したのは私ではない。谷垣総裁の時に出された。これは屁理屈ではない」と反論。憲法草案は、あくまで自民党が改憲の全体像をわかりやすくしたもので、憲法審査会に提出したものではないという姿勢を示した。その上で、「国民が心配しているというが、我々はこれを示した4回の選挙で、皆さんよりは圧倒的勝利を収めている」と挑発した。
 
また安倍首相は、「97条は新しい条文を加えるのではなく、削除。(反対であれば)削除すべきじゃないという議論をすればいい」と述べた上で、「予算委員会で議論するならば、何のために憲法審査会をつくったのか」と長妻氏を批判。「予算委員会は、逐条的に私が解説する場所ではない」とし、説明を避けた。
長妻氏は、数回にわたって基本的人権に関する条文削除の理由を質問。「参院選後、改憲案をベースに議論すると言っている」と追求し、説明できないのであれば改憲草案の取り下げるよう求めた。これに対し、安倍首相は「基本的人権、平和主義、国民主権については変えないと再三申し上げている」「憲法審査会において議論を」と答弁した。
 
■長妻氏「"ぼくちゃん知らない"と聞こえる」安倍首相「デマゴーグだ」 双方非難の応酬
3日の予算委員会では、長妻氏と安倍首相が挑発しあう場面も。安倍首相の答弁を受けて、長妻氏は「谷垣総裁の時に出したものだから、『ぼくちゃん知らない』というふうに聞こえた」とし、責任転嫁ではないかと追及。
これに対し安倍首相は「谷垣総裁の時に出したものだから、『ぼくちゃん知らない』とは一言も言っていない。言っていないことを言ったかのように言うのはデマゴーグだ」と長妻氏に反論した。
長妻氏と安倍首相の討論の最中、議場では与野党双方からヤジが飛び交った。野党のヤジに安倍首相が応戦する場面もあり、浜田靖一委員長が「不規則発言を止めて下さい。総理も不規則発言にお答えになるのを止めて下さい」と制止した。
 
7月11日に安倍首相は、参院選の結果、憲法改正に前向きとされる4党(自民・公明・おおさか維新・日本のこころ)などが総定数の3分の2に達したことを受け、自民党の改憲草案をベースに改憲論議を進めたい意向を示した。
その一方で安倍首相は9月29日、参院本会議で「合意形成の過程で特定の党の主張がそのまま通ることがないのは当然だ」と発言。衆参両院の憲法審査会で、自民党の改憲草案にこだわらない考えを示している。