トランプは米国と中国を「G2」と呼び、西半球は自分のものという感覚でいるようです。
それで中国をラテンアメリカから締め出したいのですが、中国は単に貿易だけでなく、投資やインフラ整備でも各国と深く関わっているので、その結びつきを解消するのは困難ではないかと見られています。
たとえば中国はブラジル、チリ、ペルーにおいて、新エネルギー、製造業、港湾への投資を進めており、現地化の加速、現地雇用の創出、物流コストの削減に取り組んでおり、ラテンアメリカに機械、自動車、家電製品、5G機器を輸出しています。
これらはラテンアメリカに利益をもたらす実践的な協力なので、二国間関係のかけがえのない安定要因となっています。
従って米国がラテンアメリカから中国の利益を排除しようとすると、経済統合、金融力強化、ルールの再構築、外交的協調等で、防御的な反撃と戦略的エスカレーションの複合戦略を採用し、既存の利益を守りつつ新たな協力分野を拡大し、「かけがえのない」中国・ラテンアメリカの利益共同体を強化していくだろうと述べます。
具体的なことは分かりませんが、トランプの望む通りにはなりそうもありません。
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米国には中国をラテンアメリカから追い出す力はない
耕助のブログNo. 2800 2026年2月3日
The US is powerless to push China out of Latin America by Wang Wen
トランプのベネズエラに対する動きは、ラテンアメリカから中国を締め出そうとする広範な動きを示唆している。しかし中国との貿易、投資、インフラ整備の結びつきを解消するのは困難かもしれない。
ベネズエラに奇襲攻撃をした後、トランプ大統領はラテンアメリカから中国の利益を排除する意向を繰り返し公言した。この傲慢な「ドンロー主義」は、ラテンアメリカにおける中国の利益の範囲とパートナーシップの強さを明らかに過小評価している。そして中国にとっては、米国に対する新たな対抗措置のための緊急時対応計画を準備すべきことを改めて示すものとなった。
中国のラテンアメリカへの投資規模と協力の深さはトランプの想像をはるかに超えている。中国は既にラテンアメリカにおいて貿易を基盤とし、投資を支え、資金を力とし、インフラで連携し、戦略的に協調する包括的な枠組みを構築している。これは中国のグローバルサプライチェーンの安定、資源安全保障、そして多極戦略にとって決定的な支えであり、中国にとって重要かつ不可欠な存在なのだ。
2025年までに中国とラテンアメリカ間の貿易総額は5,000億ドルを超え、2001年の150億ドルの約35倍に達すると予想される。この5,000億ドルは米国とラテンアメリカ間の貿易額1.2兆ドルより大幅に低いが、米国とラテンアメリカ間の貿易総額の3分の2を米国とメキシコ間の貿易額が占めていることを忘れてはならない。
南米だけを考えれば、中国の重要性はすでに米国を上回っている。例えば、ブラジルの対中輸出は総輸出の28%を占めているのに対し、米国への輸出はわずか13%だ。また中国はチリ、ペルー、ウルグアイといった国々にとって米国をはるかに上回る最大の貿易相手国である。
中国のラテンアメリカへの累計投資額(約6,500億ドル)は米国(約1兆ドル)に迫っているが、中国の投資は主にエネルギー、鉱業、インフラ、新エネルギーに集中している。中国がラテンアメリカで請け負ったエンジニアリング事業は3,000億ドルを超え、米国をはるかに上回る。米国が中国の投資を阻止しようとすれば、ラテンアメリカの現地コミュニティが反対する可能性が高い。
米国はラテンアメリカを地政学的な「裏庭」とみなし、様々な貿易ルールを用いてメキシコと中米を自国の勢力圏に深く組み込んできた。しかし、南米においては中国の経済的影響力は既に多くの分野で米国を上回っている。
2024年、中国は大豆の65%、銅の40%、リチウムの30%をラテンアメリカから輸入した。中国はブラジル、チリ、ペルーにおいて、新エネルギー、製造業、港湾への投資を進めており、現地化の加速、現地雇用の創出、物流コストの削減に取り組んでいる。中国はラテンアメリカに機械、自動車、家電製品、5G機器を輸出している。これらはラテンアメリカに利益をもたらす実践的な協力であり、二国間関係のかけがえのない安定要因となっている。
私はブラジル、ペルー、チリ、アルゼンチン、エクアドルを何度も訪問し、現地の人々が中国の投資を歓迎し、中国市場を心から受け入れていることを深く感じた。
チリ産チェリーの約90%は中国に輸出されている。2024年に完成したペルーのチャンカイ港は、ペルーからアジアへの輸送時間を12日間短縮し、多くの商品の輸出額を倍増させ、初年度でペルーに2億ドル以上の追加税収をもたらした。中国が投資・建設した水力発電所、病院、学校は、真に地域の福祉向上に貢献している。
ラテンアメリカが中国市場を失った場合GDPは約1%減少し、150万人の雇用が失われると推定されている。もしチリ産チェリーが中国に輸出されなくなれば、果樹農家の倒産、外貨収入の急激な減少、さらには社会不安につながる可能性がある。
中国とラテンアメリカ諸国間の経済的相互依存関係は強固な制約であり、両国は既に深く結びついている。多くの南米諸国にとって対中輸出は総輸出の3分の1を占めている。米国市場は中国に取って代わることはできず、これらの国々の戦略的自立の要求は、当然のことながら米国の権力介入に対する抵抗につながる。
ラテンアメリカ諸国の多くは米国の覇権主義に辟易しており、多角的な外交を求めている。2025年にラテンアメリカ・カリブ海地域に関する中国政策文書が発表された後、12カ国が協力を深める意向を表明し、「モンロー主義型」の政策に反対するコンセンサスを示した。
さらに重要なのは、エクアドルの水力発電所、コロンビアの電気タクシープロジェクト、ブラジルの農業技術協力、トリニダード・トバゴのフェニックス工業団地など、エネルギー、鉱業、インフラ、通信、農業などの主要分野への中国の投資は地域の自給自足性を高める傾向があることだ。
米国のラテンアメリカへの援助は限られており(2025年のラテンアメリカ向け援助予算はわずか120億ドル)、インフラやエネルギー分野における中国の投資規模を代替するのは難しい。ラテンアメリカ諸国の中には多額の債務を抱えている国もあり、例えばアルゼンチンはIMFに対して440億ドルの債務を抱えている。そのため、政治的条件を伴わない中国からの融資はより魅力的である。中国のラテンアメリカへの協力は17世紀および18世紀の植民地時代の資源略奪モデルとは根本的に異なり、19世紀のモンロー主義の戦略的意図とも全く異なる。
ラテンアメリカにおける中国の存在に関する米国の地政学的競争的思考は、明らかに理論的な空虚さと限定的な考え方に陥っている。
パワーリアリスト(⇒軍事力・経済力が国際関係の原点)思考という根深い習慣は、過去20年間の中国とラテンアメリカ諸国の協力の急速な発展の原動力を理解していない。中国はラテンアメリカに軍事基地を持たず、強制力も持たない。完全に市場主導型である。中国は新たなウィンウィン協力モデルを通じて、安定した資源供給、保証された投資収益、そして妨げられない戦略的経路を通じて、自国の利益と安全保障を確保している。
これらの本質的な原動力には、政治的な縛りも覇権的な強制力もない。「モンロー主義」によって、単なる行政命令やトランプのツイートだけで二国間の相互貿易が停止されるという考えは明らかに願望に過ぎない。
もちろん、トランプが一部のラテンアメリカ諸国の親米政権を支援することで政治的圧力をかけ、ルールに基づくメカニズムを用いて経済的強制力を高め、「債務の罠」という捏造された物語を通じて誤情報を拡散し、ニアショアリング(⇒近隣国への事業移転)や関税措置を通じてサプライチェーンを再構築するであろうことは認めざるを得ない。
メキシコや中米など米国に近い国では、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に基づき、中国からの投資はより厳しい制約を受けており、自動車や電子機器などの産業から撤退を余儀なくされる可能性がある。キューバなど、米国が「敵対的」とみなす国では、中国からの投資は制裁のリスクに直面している。
こうした戦術は目新しいものではなく、中国の地域研究者の予想の範囲内であり、2025年にトランプが中国に対して貿易戦争を起こすことを中国が予想していたのと同様である。
中国は米国の干渉に対する対抗手段をずっと以前から準備してきた。
もし米国が「サラミスライス」方式で中国の利益を排除しようとした場合、中国は必ずや、経済統合、金融力強化、ルールの再構築、外交的協調、リスク管理に重点を置き、防御的な反撃と戦略的エスカレーションの複合戦略を採用し、既存の利益を守りつつ新たな協力分野を拡大し、「かけがえのない」中国・ラテンアメリカの利益共同体を強化していくだろう。
中国が米国に対抗するための武器には、トランプが予想していなかった多くの新たな武器が含まれている。2018年にトランプ1.0が中国に対して初めて仕掛けた貿易戦争では米国1.0は勝利を収めることができなかった。たとえトランプ2.0が2025年に中国に対して第二弾の貿易戦争を仕掛けたとしても、米国は勝利を収めることはできないだろう。
現在の米中関税休戦自体が、米国の貿易力の弱さを露呈している。ラテンアメリカにおける権力闘争は、必然的に米国の表面的な強さと根底にある弱点をさらに露呈させるだろう。
もしトランプが本当に賢明なら、中国と協力し、ラテンアメリカに共同投資し、ラテンアメリカ諸国とビジネスを行うのが最善の策だろう。結局のところ、ラテンアメリカにおける米中関係はゼロサムゲームではないのだ。
https://johnmenadue.com/post/2026/01/the-us-is-powerless-to-push-china-out-of-latin-america/
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。