2018年6月29日金曜日

安倍首相のままでは拉致問題は解決しない

 日朝会談に向けての日本側の動きについては何も伝えられていない一方で、北朝鮮からは日本の姿勢を批判する論評が次々と伝えられています。
 ごく最近のものについては、日刊ゲンダイが、労働新聞の21日、22日の連日の批判的評論を紹介し、五十嵐仁・法大名誉教授が、平壌放送の15日と26日の論評を紹介していますが、いずれも事実に基づいた批判なので、そこまで北朝鮮に不快な思いをさせている日本の姿勢は何なのかという思いにさせられます。
 一体、拉致被害問題を解決する気持ちがあるのかという思いです。
 
 とりわけ月刊誌「FACTA」最新号に、「北朝鮮を非難して国内の人気を高めるために拉致問題を中途半端な状態にしておくよう安倍首相が外務省に圧力をかけた」と書かれている(五十嵐仁氏)ことを知るに及んでは、「安倍首相ならさもありなん」と思う一方で、「そこまで自己本位・独善的なリーダではもはやどうにもならない」という絶望を禁じ得ません。
 
 日刊ゲンダイとブログ「五十嵐仁の転成仁語」の記事を紹介します。
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遠のく日朝会談…北は安倍首相を“蚊帳の外”“卑しい”と批判
 日刊ゲンダイ 2018年6月26日
 2004年以来となる日朝首脳会談の実現を模索する安倍首相の足元を見透かすように、北朝鮮がアベ批判を強めている。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が週末にかけて立て続けに論評を掲載。ボルテージは上がりっ放しだ。このままでは、会談実現は遠のくばかりだ。
 
 労働新聞が21日付で掲載したのが、〈蚊帳の外から抜け出そうという術策〉と題した論評だ。米朝首脳会談が行われた12日、来日したマレーシアのマハティール首相やラオスのトンルン首相に対し、安倍首相が対北圧力への協調を求めたと言及。〈蚊帳の外に置かれている者の卑しい物乞い行為だ〉〈不安感に襲われた安倍は、朝鮮半島情勢を悪化させようという不純な策動に東南アジア諸国を引き込もうと愚かに画策している〉と断じる一方、安倍政権が配備を急ぐ「イージス・アショア」もこうヤリ玉に挙げた。
〈日本の防衛相は、ミサイル迎撃システムを拡張すると発表しながら、良い方向に流れている朝鮮半島の雰囲気に冷や水を浴びせている〉
 
 昨年11月に初来日したトランプ米大統領から「バイ・アメリカン」と迫られ、北朝鮮の脅威を理由に購入を前倒しした陸上配備型のミサイル迎撃システムだ。1基1000億円弱で、搭載に向けて日米で共同開発中の新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」4発と関連装備品は計約150億円。2基で2000億円もする代物である。米朝対話が進む中、配備予定地の秋田と山口からもその必要性を疑問視する声が上がる。そして、安倍政権のやり方をこう総括していた。
〈安倍勢力の総的目標は、日本を戦争国家にすることである。今まで日本は周辺情勢、特に朝鮮半島情勢悪化を口実に、武力増強に拍車をかけ、軍事訓練を頻繁に行ってきた。侵略戦争に出られる準備をほとんど整えた日本に今残っているのは、現行憲法を書き換え、法的名分を作ることだけである。だから、朝鮮半島情勢緩和ではなく、激化を望んでいる〉
 
 指摘はごもっともで、子細に分析したものである。元韓国国防省北朝鮮情報分析官の高永テツ氏(拓大主任研究員)はこう言う。
「北朝鮮は米国との融和ムードに水を差し、足を引っ張ろうとする安倍政権にイラ立ちを募らせています。金正恩党委員長と本気で向き合う覚悟があるのなら、刺激するような態度は改めろ、というメッセージだと受け取るべきでしょう」
 
 22日付の〈日本は誠実に過去を清算せよ〉と題した論評も痛烈だった。従軍慰安婦に関する日韓合意を巡り、日本の反対にもかかわらず、少女像が米議会で巡回展示されたことに言及。〈「合意」なるものを前面に掲げて、凶悪非道な性奴隷犯罪が全部清算されたかのように宣伝している〉と非難し、〈過去の罪悪を率直に認めて徹底的に賠償することだけが、日本が生きる道である〉と主張した。
 拉致問題の解決を前面に押し出す安倍政権にまたもクギを刺してきたわけである。
「外交というものは血こそ流さないものの、頭脳を駆使する戦争です。国民感情を考えれば、日本が拉致問題を最重要課題とするのは理解できますが、国際社会が大きく動く局面では、世論の反発を恐れず、本音を隠す外交の知恵を絞った方がいい」(高永テツ氏=前出)
 事態を1ミリも進展させず、“拉致の安倍”で 高ようじ だったツケが一気に回ってきた。 
 
 
拉致問題などの諸懸案を解決するためにも
安倍首相を引きずり降ろさなければならない
五十嵐仁の転成仁語 2018年6月27日
 昨日のブログで、こう書きました。「トランプ大統領によれば、金正恩委員長は拉致問題について『解決済み』とは言及しなかったとされていますが、論評は北朝鮮が従来の立場を変えていないことを示唆するものでした。その後、この問題についての報道はないようですが、北朝鮮の出方が注目されます。」
 今日の『毎日新聞』には、「この問題についての報道」が新たに掲載されていました。その表題は「拉致問題『ない』 北朝鮮がけん制」となっており、記事は以下のようなものです。
 
 <北朝鮮の国営ラジオ、平壌放送は26日に伝えた論評で、「日本は今日まで過去の犯罪について謝罪し賠償するどころか、逆にありもしない拉致問題をわめきたてて自らを『拉致被害国』に化けさせようと破廉恥に策動している」と非難した。ラヂオプレス(RP)が伝えた。
 拉致問題の解決に向け日朝首脳会談の実現を目指す安倍政権を改めてけん制した。平壌放送は15日にも、拉致問題は『既に解決された』と主張する論評を伝えていた。>
 
 ここで言及されている15日の放送については昨日のブログでも紹介し、「米朝首脳会談で事態が大きく動くかのような期待は、またも裏切られるのではないでしょうか」と指摘しました。この記事は、このような指摘をさらに裏付けるものとなっています。
 政府もマスコミも、このような事実をなぜきちんと国民に伝えようとしないのでしょうか。安倍首相によって拉致問題の解決に向けて事態が動き始めているような幻想をまき散らすことはやめるべきです。
 お昼のTVニュースでも、国連軍縮会議で北朝鮮代表は非核化について「日本は首を突っ込むべきではない」と批判したと伝えていました。これらの報道が示しているのは、北朝鮮は米朝首脳会談前から示していた安倍首相に対する厳しい姿勢を、首脳会談後も取り続けているということです。
 
 これらの経緯を見れば、日朝首脳会談の実現はかなり難しいように思われますが、もし実現したとしても、そこで安倍首相は何を主張するのでしょうか。拉致問題は解決済みだという北朝鮮に対して、これまでと同様の主張を繰り返すだけであれば事態が打開される可能性はほとんどありません。
 打開の道は、日朝平壌宣言が示していた拉致、核・ミサイル、植民地支配など過去の清算という両国間の諸懸案を包括的に解決して国交正常化を目指すという方向しかありません。これらの諸懸案を総合的に議論する中で拉致問題についても解決の道が切り開かれるのではないでしょうか。
 しかし、月刊誌『FACTA』の最新号の記事によれば、北朝鮮を非難して国内の人気を高めるために拉致問題を中途半端な状態にしておくよう安倍首相が外務省に圧力をかけたそうです。そのような安倍首相に、日朝平壌宣言に沿った国交正常化交渉と北東アジアの緊張緩和に向けての包括的で総合的な対話が可能でしょうか。
 
 拉致問題をはじめとした日朝間の諸懸案を解決することも、北東アジアをめぐる平和体制の構築についても、安倍首相では不可能だと言わなければなりません。「必要なのは対話ではない。圧力だ」と言い続けてきたツケが、今、回ってきているということではないでしょうか。
 安倍政権を打倒することは、これらの問題の解決への展望を開くためにも必要になっています。安倍首相がその座を去ることが早ければ早いほど、外交面でも新たな希望と展望が早まるというのが現時点における北東アジア情勢の大きな特徴にほかなりません。

バイキング 日大・至学館大・加計学園大でいちばん酷いのは

 日大アメフト部の内田監督とレスリング協会の栄本部長によるパワハラ事件は、TVのワイドショウで連日取り上げられましたが、日大アメフト部指導体制の建直し問題はまだ尾を引いています。
 大阪北部大地震の翌日(19日)、大阪地区の記者たちは地震被害の報道でそれどころではないのを見越し、東京からでは会見に間に合わない時間に設定して、加計理事長が1年余りの沈黙を破って急遽記者会見を行いました。会見時間は僅か25分間という狡猾さで、会見の内容もお粗末を極めたものでした。
 まさに突っ込みどころ満載の会見でしたが、なぜかワイドショウはまともに取り上げていません。それは安倍首相の意向を忖度してのことですが、大阪北部大地震の報道に追われたというのも事実で、加計理事長の狡猾な目論見がまんまと成功したのでした。
 
 そんな中、22日のフジTVワイドショウ「バイキング」で、日大・至学館大・加計学園大(会見)のなかで一番酷いのはどこかという形でそれが取り上げられ、坂上忍MCのリードのもと、出演した各コメンターが夫々、実に的確で小気味のいい批判を展開し、その狡猾さ、卑劣さが明らかにされました。
 会見の酷さについては正に「これでキマリ!」なので、それ以上深めるも何もなく、その意味ではこれはそもそも余り引っ張ることができないテーマなのかもしれません。
 
 LITERAの記事を紹介します。
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『バイキング』が加計学園・日大・至学館を徹底比較!
いちばん酷いのはどこ? という問いに、坂上忍、土田、東国原は…
LITERA 2018年6月27日
 大阪北部地震の混乱に便乗した“火事場泥棒会見”を急遽開催するという前代未聞のゲスっぷりを晒した加計孝太郎理事長による記者会見から、きょうで1週間。しかし、ワイドショーは日本大学アメフト部や至学館大学パワハラ問題は引きつづき連日のように伝えているというのに、なぜか加計会見はまったく盛り上がっていない。
 
 しかし、そんななかで気を吐くように、加計問題を扱った番組があった。22日放送の『バイキング』(フジテレビ)だ。
 この日の『バイキング』では、日大の田中英壽理事長や至学館大学の谷岡郁子学長の対応を振り返り、最近立てつづけに起こった大学の不祥事を紹介。ここまではほかのワイドショーと変わらないもので、どうせ『バイキング』も日大と至学館大学を批判して終わるのだろう……と諦めていたそのとき、MCの坂上忍が「そんななかで、ついに、あの教育機関トップの方が、会見をどさくさにされたようですね」と前振りし、“ラスボス”として加計理事長の会見を紹介したのだった。
 
 ご存じの通り、加計理事長は会見で、安倍首相が「獣医大学いいね」と太鼓判を押した2015年2月25日の面談について、「記録にも記憶にもない」という理由で否定し、「渡邉(良人)事務局長が勝手にやったという認識か?」という記者からの質問に「はい。そうです」と即答。そして、「虚偽の発言といえば虚偽の発言だと思うが、あくまでも前に進めるため」だと説明した。
 
 こうした加計理事長の発言をVTRで紹介すると、坂上は「この理屈が通ったら何でもアリだと思いますけどね」と呆れ顔。それはその通りだろう。なにせ、「前に進めるため」に嘘をつくのは仕方がない、と加計理事長は言っているようなものだからだ。
 なかでも怒りを露わにしたのは、曜日レギュラーの東国原英夫だ。加計理事長は会見を開かなかった理由を「我々は一貫した態度としては、非常に謙虚な態度でやりたいと思っていたので、そういうことでお許しをいただきたい」と述べたが、これに東国原は「全然意味がわからない」「謙虚だったら記者会見しろよという話でしょ」と一刀両断。さらに、「(獣医学部を)設置するために堂々と嘘を言っていいんだよという教育機関なんですよ、加計学園というところは」と語気を強めると、こうつづけた。
「嘘だったと認めるんであれば、(市や県から出ている)補助金とか助成金を辞退するとか返納するだとか、あるいは大学の許認可をもう一回、見直してくれというような申請をするべきだと僕は思いますよ」
 これも当然の指摘だ。愛媛県と今治市は合わせて約93億万円もの補助金を出す決定をおこなっているが、「虚偽の発言」をして獣医学部新設を「前に進め」たことを認めているのに、これだけの巨額の血税が加計学園に注がれるのは不当としか言いようがない。
 
 しかも、加計理事長の会見でもっとも卑劣だったのは、言うまでもなく開催のタイミングだ。大阪北部地震の翌日でサッカーW杯日本初戦の当日というタイミングの上、会見の開催を発表したのは会見開始までたったの2時間しかない当日の9時。その上、会見場は岡山市内にある加計学園本部で、地元の記者クラブの加盟社しか取材を認めないという暴挙に出た。
 このあからさまな加計学園の対応に、坂上はパネルを示しながら「岡山! これ東京から無理じゃん!」と怒り、「なんか情けなくなる、これ」と溜息。曜日レギュラーの土田晃之も「事前に会見が決まっていたとしても、大阪があれだけたいへんなことになっているんだから、会見を中止するならわかるけど、このタイミングで2時間前にやりますって、これ、きったねえやり方ですよね」と批判し、アンガールズの田中卓志は「ワールドカップで日本が勝ったとき、2倍くらいうれしかったでしょうね」と、加計理事長の“心境”を推察した。
 
加計・日大・至学館のなかでいちばん酷いのは?という問いに、坂上・土田・橋本マナミは…
 この田中の推測はきっと正しいだろう。事実、この夜、日本代表は世間の大方の予想に反して強豪・コロンビアに歴史的勝利。翌日のテレビはW杯の話題でもちきりとなり、加計理事長の会見を取り上げるワイドショーは皆無だった。
 また、政治ジャーナリストの鈴木哲夫は、11時という会見開始時間についても“計算の上”だっただろうと指摘。というのも11時台は、キー局のある関東では加計問題を扱うような生放送の情報番組は『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)と『ひるおび!』(TBS)のみ。しかも、その時間帯はローカル局では独自の生番組を放送していることが多く、午前中はネットしない地方局も数多い。こうした点を踏まえて、鈴木は「相当、政治的な打ち合せをやって望んでいるなという印象」と語った。
 
 だが、この『バイキング』の放送でもっとも興味深かったのは、このあとだ。番組では、日大と至学館大学、そして加計学園の対応を列挙したパネルを出し、トップが何回会見をおこなったのか、会見の告知はいつだったのかを比較したのだ。
 さらに、番組は「問題を起こした当事者の不明瞭なコメント」も比較。
日大の内田正人前監督「信じてもらえないかもしれないが指示していません」至学館の栄和人前監督「コミュニケーション不足」
 加計学園の渡邉事務局長「その場の雰囲気で思いついたことを話した」
このように三者の「言い訳」を並べたのだ。
 
 多くのワイドショーが日大や至学館批判に血道をあげる一方、総理大臣による行政の私物化という重大問題でふざけた対応を連発している加計学園のことはスルーしてきた。『バイキング』もどうせ、叩きやすい日大や至学館を批判して加計のことはお茶を濁すのだろう。そう思いきや、坂上は「渡邉事務局長という人のは、ほんとに僕、びっくらこきましたけどね」と憤慨し、「どのコメントがいちばん酷いか」をレギュラーメンバーに尋ねはじめた。しかも、レギュラー陣は一様にこう評したのだ。
「やっぱり『その場の雰囲気で思いついたことを話した』は、相当酷い!」(橋本マナミ)
「しかも半笑いで喋ってましたからね。考えられない」(土田)
 つまり、「史上最悪の対応」とまで言われている日大アメフト部問題よりも、加計学園の対応のほうが「酷い」という結論に達したのだ。
 
加計ゲス会見をまともに批判したのは、『バイキング』『報ステ』『NEWS23』くらい
 いや、言い訳が酷いだけではない。だいたい、この渡邉事務局長の「言い訳」は誰がどう見ても嘘なのである。どうしてこんな嘘をついているのか、この点について東国原は「愛媛県の公文書は正しかったので、つまり総理と理事長の懇談等々があったので、これはヤバイぞと。公文書を訂正・否定することはできないが、さあどうしようかな。じゃあ現場が嘘ついたことにしようよ、みたいな発想ですよ、これは」と推察したが、これしか考えられないだろう。
 ……と、このように、加計理事長の会見について真っ当に取り上げた『バイキング』。まともなニュース番組・ワイドショーなら、当然のことだ。これだけの道理が通らない嘘をつき、震災を利用し、挙げ句、加計理事長は給与を1年間、月10%分を自主返納するという痛くも痒くもない処分で幕引きしようというのだから、普通ならばどのワイドショーも、日大のときのように一斉に加計理事長を批判したはずなのだ。
 
 加計理事長の会見が終わっても、日大や至学館問題で会見映像を繰り返し流したり細かい続報をしつこく報じているように、加計問題だっていくらでも取り上げようはある。現に、25日の国会で安倍首相は、加計会見について「コメントする立場にない」などと逃げた上、加計理事長の発言と安倍首相や柳瀬唯夫首相秘書官の説明との矛盾点について「記者会見は独特の雰囲気があり、不慣れな人にとっては一問一答で畳みかけられると、ときには質問の趣旨を取り違えて答えてしまったこともあり得るんだろうと思っている」などと述べ、加計理事長を“擁護”した。この発言の食い違いや、安倍首相がなぜ嘘の道具にされたというのに怒らないのかなど、話題は尽きないのだ。
 なのに、そうした観点で加計問題を取り上げているのは、『報道ステーション』(テレビ朝日)や『NEWS23』(TBS)くらい。ようするに、『バイキング』以外のワイドショーや『報ステ』『23』以外のニュース番組が異常すぎるのだ。
 
 加計理事長は会見で、国会招致について「お待ちしています」と余裕の表情で答えた。安倍首相が国会招致を絶対に認めないことを知っているからこそ、しれっとこんな物言いができるのだ。もはや世論が高まらなければ加計理事長の証人喚問は実現しない状況だが、ほとんどのテレビはこうして忖度することで、安倍首相と加計理事長をアシストしているのである。(編集部)

29- 室井佑月が元官僚の古賀茂明氏に聞く(後編)

 元官僚の古賀茂明氏との対談の後編です。
 後編は、
「安倍首相の怖さは、残虐性、非人間性、執拗性。これらをすべて持っていて、それが徹底している。『こいつは!』と思ったら、辞めたからそれで終わりじゃないんです。辞めたあとも徹底的にやってくる」
 そんな話から始まります。
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室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第10回ゲスト 古賀茂明(後編)
古賀茂明が室井佑月に語った「安倍首相は残虐」の意味、
そして加計疑惑の決定的な問題とは?
LITERA 2018.06.28
 室井佑月対談連載「アベを倒したい」。古賀茂明氏を招いての前編は、安倍首相をかばう官僚たちの習性について突っ込んだ議論が交わされたが、最後に、古賀氏が口にしたのが「安倍さんはものすごく怖い人なんです」「執念深くて残虐」という言葉だった。後編ではその発言をきっかけに、古賀氏自身が受けた“報道圧力”や、安倍首相の官僚・メディア支配、さらには加計疑惑の本質までが次々暴かれていく。そこから浮かび上がってきたのは、想像以上に異様で卑劣な安倍首相の政治手法だった。
  なぜ、モリカケのようなとんでもない疑惑が浮上しても安倍首相の支持率は落ちないのか。シビアな現実にも踏み込んだこの対談をぜひ、最後まで読んでほしい。 (編集部)
 
●安倍の攻撃は官僚を辞めてからも続く! 古賀茂明が語った報ステ降板の真相
 
室井 安倍首相が「安倍さんはものすごく怖い人なんです」「執念深くて残虐」っておっしゃいましたけど、具体的にはどういうことなんですか?
古賀 残虐性、非人間性、執拗性。これらをすべて持っていて、それが徹底している。「こいつは!」と思ったら、辞めたからそれで終わりじゃないんです。辞めたあとも徹底的にやってくる。たとえば、前川さん(喜平・前文科省事務次官)のように、人格攻撃もやるし、講演にも横槍を入れる。僕も講演は最初はいっぱいあったけど、なくなっちゃった。そういうことをされるのが見えているし、多くの官僚にとってそれは恐怖でしかない。
室井 安倍さんに目をつけられるとそんなに怖いんだ。でも安倍さんに目をつけられた古賀さんは、ある意味一目置かれているということでもあるかもね。
古賀 安倍政権を批判している人はたくさんいるけど、その中で「こいつは抑えておかないとやばいな」と思われたら、徹底的にやられる。そういう意味では室井さんも覚悟したほうがいいかも(笑)。
室井 やだよ! あたしは普通のおばさんなんだから。それに作家、コメンテーターとしては権力をチェックして批判するのって当然のことだし、特殊なことをしているつもりはないんです。安倍さんや自民党の批判もするけど、民主党政権の時は民主党も批判した。でも確かに安倍さんはこれまでの首相、権力者の中でも怖いっていうのは実感しているけど。でも安倍さんって、第一次政権のときは残虐性はそんなに感じなかったと思うんです。第二次政権になってからすごく怖くなったと。
古賀 第一次安倍政権では、自分のお腹が痛くなって辞めたわだけど、でも安倍さんはそうは思っていない。「マスコミにやられた」と思っているんです。だから下野時代に「今度政権についたら、まずマスコミを抑える」と執念深く考えていたのでしょう。だから本気で批判してくるメディアやジャーナリストは自分にとって一番危ない“敵”とさえ思っているんです。
室井 だからか。朝日新聞に対する恨みは尋常じゃない。
古賀 そしてマスコミを抑える方法として、ひとつは見せしめ的に目立っていてかつ強いやつをやる。もちろん直接的な圧力では絶対にやらないで、干すんです。『報ステ』の出演者など格好のターゲットでしょう。僕の前にも浜矩子さんが降板した一件があったのですがこれも典型だと思っています。あまり騒ぎにならなかったし、浜さん自身もそういう意識がないかもしれませんが、でも、僕が聞いている話では、テレビ朝日の上層部が官邸を忖度して「報ステなんとかしろ」「浜か古賀、どちらかをあきらめと」という圧力がかかったということです。そう言えば、古舘伊知郎さんはいつも「古賀さんと浜さん、どっちも変え難い人たちなんですよね……」と言ってましたね。
室井 古賀さんがまさかここまで歯向かうとは思っていなかっただろうしね。
古賀 僕自身もそんなに歯向かうつもりはなかった(苦笑)。そもそも僕の名が知られるようになったのは民主党政権時代です。現職官僚として参議院予算委員会に呼ばれて、総理(菅直人)や仙谷由人さん、全閣僚がいる前で、小野次郎というみんなの党の議員が、「古賀さん、最近の民主党の公務員改革、天下りの政策はどう思いますか?」と訊かれたので、僕は思いきり、「民主党になってから、天下り規制の緩和措置が堰を切ったように実施されている」と批判しちゃったんですよ。そうしたら仙谷さんら閣僚はみんな頭に来て。でもその当時はすでに、大臣官房付という個室に入れられて仕事を干されていた。その理由は財務省なんです。民主党政権が発足した際、仙谷さんから「補佐官になってくれ」と打診があった。それで「行政刷新」について改革メニューを渡すなど打ち合わせもしていた。しかしその話が全部チャラになってしまった。仙谷さんは何も言わなかったけど、その後当時の松井孝治官房副長官に訊いたら、その直前に財務省が仙谷さんのところにきて「古賀は絶対に使うな」と止めたと言うんです。
 
安倍首相の霞ヶ関恐怖支配は内閣法制局長官人事から始まった
 
室井 財務省が経産省の人事にまで介入するの!? 
古賀 財務省は閣僚より強い。仙谷さんは財務を敵に回したら民主党政権は潰れると思ったんでしょうね。政治主導とは言っても官僚、特に財務省は強い。その強い官僚を震え上がらせたのが安倍さんです。安倍政権以外では、そういう政権はなかったと思います。
室井 でも官僚が「本当にこいつはヤバい」と思って省庁の枠をとっぱらって連合を組んだら、安倍さんにだって絶対勝てるでしょう?
古賀 いや。総理は強いんです。さきほども安倍さんの特異性は執念深くて残虐なことにあると言いましたが、その最大のあらわれが人事です。内閣人事局ができて官僚人事を官邸が握った弊害が指摘されていますが、しかし実はまったく関係ない。そもそも1年生のペーペー官僚の人事権まで大臣がもっている。でも大臣が全職員の人事を見るなんてできないから、役所が決めた人事が大筋通るんですが、しかし安倍さんは違う。細かいところまで見ているんです。たとえば人事検討会議というのがあり、官房副長官のもと各省から幹部人事をチェックしますが、これまではよほどのことがない限り変更はなかった。しかし安倍さんになってからは違った。内閣人事局ができる前から、好き勝手をやり始めました。一番すごかったのが、内閣法制局長官人事です。歴代長官が、集団的自衛権は憲法違反であると、当然のことを主張していたのですが、安倍さんは、それなら、法制局のトップを代えてしまえと考えたんですね。そこで、解釈改憲で集団的自衛権行使を容認できると言っていた外務官僚の小松一郎氏を抜擢した。安倍さんと仲が良くて「違憲じゃありません」と言ってくれる人を持ってきたんです。慣例では内閣法制局次長の横畠裕介氏が昇格するはずだったんですが、これはかなり異例、というか、官僚たちから見れば、「とんでもない」ことであり、衝撃でした。
室井 集団的自衛権はほとんどの専門家が「違憲」と言ってたのに、それを覆すために、子飼いの官僚を登用したってことか。やっぱり安倍ちゃんは、加計幸太郎理事長だけでなく、自分の意のままになる子分と、お友だちばっかりを優遇しているんだな。
古賀 日本中の官僚も、ほぼ99.9%は集団的自衛権は違憲だと思っていますよ。とくに法律専門の人は東大法学部を出ているわけですけど、東大法学部の教授はみんな、「集団的自衛権は違憲です」と教えている。法制局長官も法律の専門家の中の専門家だから、頑なに「違憲です」と言ってきた。さらにその後、小松さんの体調が悪くなると、今度は横畠さんを登用したんですが、安倍さんの怖さを思い知らされていた横畠さんは、安保法制などで安倍政権の意向に沿った判断を下すようになった。
室井 安倍さんって異常。権力の私物化って言うけど、これまでの首相も私物化しようと思えばできたけど、それは国のためにならないとか、恥ずかしいことだと知っていたわけですよね。独裁は国を滅ぼすって。でも安倍さんにはそうした考えがない。しかも羞恥心もない。自分にとっての勝ち負け、敵味方だけを考えて、そのためにはなんでもやる。平気で嘘をついてね。安倍さんの体には、事実を認めたり、謝罪すると爆発する装置でも埋めこまれてるのかと思うくらい。
古賀 いや彼の発想は、勝つか負けるかなんて甘いものじゃない。自分が生きるか死ぬか。それは、相手を生かすか、殺すかという意味ですよね。自分に歯向かってくるやつは、「自分を殺そうとしている」という発想です。「こいつは放っておくと俺を殺す。それなら先に殺してしまえ」と。
室井 ゲームの「コールオブデューティ」みたい(笑)。戦国時代のお話にも聞こえる。
古賀 まさにそういう感覚だと思いますよ。だから、自分にとって危ない存在だと思ったら徹底的に潰す。
 
古賀茂明「加計学園問題はまだ、安倍首相の致命傷になる可能性がある」
 
室井 そんな危ない人なのに、どうして周りの人がそれに乗っているのか不思議。潰されるなら、その前に潰しておけばよかったのに。
古賀 まさか安倍さんにそんなに実力があると思わなかったんでしょう。最初は「バカなぼんぼんが」とみんな甘く見ていたから。それとお金はあるんでしょうね。自民党は今、数が多いでしょう。だから、政党助成金だけでもめちゃめちゃ増えた。使えるお金が多いんです。
室井 スポンサーもいっぱいいるっていいますよね、アパホテルとか。あと加計さんも。加計さんが酒席で「1年に1億かかるんだよ、安倍と付き合うと」と言っていたとか、安倍さんのほうも「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家」だと話してた、って「週刊文春」(2017年4月27日号)とかに書いてありました。
古賀 そこに大きな鍵がある。安倍さんがなぜあれだけ加計さんをかばうのか。2017年1月20日まで獣医学部新設構想を知らなかったという説明に途中から切り替えましたよね。「すみません。私いろいろ混乱して間違えたんです」とわざわざ前置きして、それまでの答弁を修正してまで「1月20日に初めて知った」と言い換えた。それはなぜかというと、収賄の問題が出て来るからなんです。安倍さんは総理大臣であり、すべてに職権、権力があるんですが、だからと言って、何でもかんでも安倍さんが具体的に決めている訳じゃない。収賄罪は、「職務に関し、賄賂を収受」したらアウトです。加計さんから年1億円ももらっていたとしたら、それが、“職務に関して”なら収賄罪になる可能性が出て来る。裁判では、「職務に関し」というのがいつも議論になりますが、国家戦略特区は、議長が総理だから、まさに安倍さんに“具体的な権限”があるということになり、これはどうやっても言い逃れできない。もちろん、加計さんが特区に申請しているのを知らなければ、賄賂だという認識がなかったことになりますが、知っていて、その間ゴルフに行ったり会食したり、いろいろな形で年1億円とか贈与されていたとなれば、普通に考えたらアウトでしょう。収賄はそれによって不正行為があったかどうかは関係ない。職務に関連してお金をもらってしまったらアウトなんです。お金を貰った結果、もし何もしなかったとしてもダメ。これは安倍さんにとって、致命傷になり得るし、かなり危ない。
室井 そうなんだ。だから必死であんな不自然な答弁を続けたのか。しかも愛媛県の担当者の記録では、それ以前に安倍さんと加計さんが会っていて「獣医大学の考え、いいね」と言っていたというのに、加計側は面会じたいが嘘だったと謝罪までしたしね。いろんな人の多くの嘘の影に収賄が隠れていたのか。大変な犯罪。これで倒せるじゃないですか!
古賀 でも忖度マスコミはそんなこと本気で追及しないんです。
室井 “腹心の友もとい”爆心の友”の加計さんは、籠池さんと違って今のところ裏切りそうにないしね。でももし寝返られたら安倍さん、犯罪者になっちゃうんだ。それじゃあ、必死になるな。
古賀 加計さんのほうも贈賄になる可能性がありますから、仮にやってても裏切ることはないでしょうね。
 
古賀「アベノミクスは中身が何もない」室井「大企業を儲けさせているだけ」
 
室井 安倍さんがいつも自慢してる経済については、古賀さんから見てどうなんでしょう。
古賀 安倍さんがやっているアベノミクスは中身が何もない。たとえば第1の矢は「異次元の金融緩和」で、円を大量にばらまいて金利を下げるという作戦です。これで建前上は金利が下がり、いま投資したほうがお得だと思わせて、みんなが借金して新しい工場を作ったりして、景気が良くなり雇用も増える、という建前です。だけど実際には、「日本に工場なんか作ってもダメだよな」とみんな思ってるから、それができない。でもいいことはひとつだけあって、円安になること。円の金利は低いから、みんなが「円を買うよりドルのほうがいいだろう」となり、ドルやユーロが高くなる。民主党の最後あたりは、1ドル80円の円高で大変だったのが、安倍政権で120円以上の円安になり、今は110円くらいでしょう。でも、これは、世界から見ると、日本人全体が貧乏になっているということなんですよね。だって、時給800円が、1ドル80円なら10ドルだけど、120円なら6.7ドルっていうことだから。
室井 わたしがもっている貯金が目減りする、ということですもんね。
古賀 加えて安倍政権はデフレ脱却のために物価を上げようとしている。物価が毎年上がるということにしておかないと、「来年は物価が下がる」となるとみんながいま物を買わなくなるから。「来年上がるんだぞ。早く買ったほうがいいぞ」と買うように仕向けるというね。変な発想です。結局それは、借金をしている人が得になる。お金の価値が毎年目減りするから。貯金をしている普通の庶民が、200万円貯金した場合、インフレになって毎年 2、3%目減りするということです。1億円借金している企業や、一千兆円借金しているような国は、その分借金の価値が小さくなる。知らないうちに、一般庶民が損をして企業や国が得する政策なんです。しかも円安で、輸出企業は何もしなくても利益が何倍にもなる。毎年トヨタみたいな輸出大企業が「史上最高益更新」とか言っているでしょう。それにはこうしたカラクリがある。
室井 だから大企業の社長たちの安倍政権支持率は70%以上なのか。
古賀 法人税下げてくれましたしね(笑)。
室井 でも怖くないですか。安倍政権って普通の人を窮地に陥れて、大企業や富裕層を大儲けさせているんだから。なのに、モリカケ問題もあったのに、支持率は思っていたほど下がらない。国民は本当に騙されてる。
古賀 絶対的右翼というか、タカ派路線をすごく支持している、何がなんでも安倍支持という人が支持者のなかで4分の1くらい。あとは、雰囲気で「安倍さんになって景気がよくなった」という支持層も多い。今年大学を卒業した人の98%が就職したというニュースとかを見て支持する人もいるでしょう。一方で、「アベ大嫌い」という人がいる。安保法制や原発でダメという人は、何があっても変わらないわけです。一方で、「安倍さんのタカ派なところが好きです」という人も変わらない。だから中間層が安倍政権をどのくらい支持するかどうかで、現在の政権の将来が決まると思います。
 
室井佑月が古賀茂明に「応援しますから、選挙に出て!」
 
室井 でも、その中間層がいまも支持してるわけでしょう。あんな嘘つきなのに。
古賀 嘘をついても景気が良くなったほうがいい、という人がたくさんいるんです。
室井 景気が良くなっても時給があがっても私は嫌い。っていうか、原稿料とか全然あがってないし。
古賀 僕はアベさん別に嫌いじゃないですよ(笑)。そもそも、僕は嫌いな人自体、あまりいないです。安倍さんはあまり好きじゃないけど、安倍さんが「古賀さん仲良くしましょう」と言ったら、「じゃあ土下座してくれ」とちゃんと言えるよ。土下座したらハグします(笑)。
室井 土下座するような男じゃないわけでしょう。殺されるよ!
古賀 まあ、それは冗談ですけど。確かに室井さんが先ほど言ったように、安倍さんは謝れないから困るんです。日本の外交はこれから本当に大変です。中国にも韓国にも北朝鮮にも謝れない。もし北朝鮮問題が解決して、中国と韓国、北朝鮮が一緒になって「安倍さん、太平洋戦争って間違いでしたよね」と責められたら、安倍さんは思考停止して固まってしまうと思うんです。それで官僚が一生懸命根回しして、「その話言わないでくれたら一兆円出します」とかやる。もし僕が総理だったらいちばん最初に韓国や北朝鮮や中国に、「本当にすみませんでした! あの安倍って人はちょっとおかしくて、あれ違います! 日本国民は戦争なんか大嫌いです。朝鮮を植民地にしたり、太平洋戦争で本当にひどいことをしたし、自分たちもひどい目にもあったから。だから憲法9条があるんです。信じてください! 土下座? いくらでもしますよ」とか言って仲良くしましょうとやりますけどね。
室井 そういう人のほうが本当に強いリーダーだと思います。古賀さん応援しますから、選挙に出て! 選挙のたびに名前が上がっているでしょ。都知事選のときも、今度の新潟知事選も。
古賀 いやいや(苦笑)。それは勘弁してください。僕のスローガンは、「改革はするけど戦争はしない」なんです。なぜそれを言う人がいないんですかね。「改革する」というと、みんな「嫌だ」となる。「改革したら僕たちは取り残されちゃう」と。実は、安倍さんさえ倒れればいいと思っている人がいるけど、その後にまた石破さんになっても意味がない。安倍さんよりタカ派ですからね。ですから安倍さんが代わってもらったあとの政策が大事ですよ。そのとき、戦争をしないことと並んで大事なのが改革です。なかでも僕がいちばん主張しているのが、とにかく既得権をぶち壊すこと。でも、たぶん日本は本当にこのまま終わりますから。どんどん世界から取り残されていきます。
室井 もう既存の野党の人じゃダメだと思うんです。もっと違う分野、古賀さんだけじゃなく芸能人なら渡辺謙、坂本龍一、吉永小百合さんとかを口説く。あっ、護憲で言えば天皇陛下ですよ。来年引退するから選挙に出てもらう!
古賀 いやいや、それは無理でしょう(苦笑)。 〈了〉 

2018年6月28日木曜日

「働かせ放題」法案は10数年来の財界の要求

 政府は「働き方改革」一括法案を28日にも参院厚労委で強行採決しようとしていますが、その柱である「残業代ゼロ制度」(高度プロ制度)は、労働者の要望ではなく、財界の要求であることが国会審議で明らかになりました。
 この労働者の残業代をただにすることは財界の悲願であり、それを受けて第一次安倍政権は2005年6月に「ホワイトカラー・エグゼンプション」構想を打ち上げました。当時は対象が年収400万円以上で、極めて広範囲の労働者の残業ただ働きを狙ったものでした。
 幸いなことに第一次安倍政権はその後崩壊したのでこの法案も沙汰止みになりました。
 
 それから10数年を経て登場したのが名前だけを変えた「裁量労働制」と「高プロ制」でした。しかしもともと労働者にはそんなニーズはないので、根拠となるデーターは捏造するしかありませんでした。「高プロ」の前身と言える「裁量労働制」はそんな経過があって結局取り下げざるを得なくなりましたが、同じことを、高年収労働者を対象にした「高プロ」は止めようとしません。
 それは先ず高年収を条件にした形で成立させてしまえば、あとは省令で「年収1075万円以上」という制約はいくらでも変えられるので、「残業代タダ」の制度が広い範囲で実現出来るからです。安倍内閣がこれまで強行成立させてきた他の諸々の悪法同様に、これもまた労働基準法を根本的に破壊する稀代の悪法に他なりません。
 
 しんぶん赤旗が「『働かせ放題』は財界要求 ~ 」とする記事を出しました。
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「働かせ放題」は財界要求 安倍首相 国民の命と生活犠牲に
 しんぶん赤旗 2018年6月27日
 参院厚生労働委員会で採決強行がねらわれている「働き方改革」一括法案。その柱である「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)は、労働者の要望ではなく、財界・大企業の要求であることが国会審議で明らかになりました。労働者の命と健康を犠牲にする「働かせ放題」の制度をもくろむ財界いいなりの安倍政権の本質が浮き彫りとなっています。
 
「残業代ゼロ」10年来の野望
 「高プロは、産業競争力会議で経済人などから意見があり、取りまとめられた。経団連会長から高プロを導入すべきと、ご意見いただいた」
 6月25日の参院予算委員会で安倍首相は、高プロに労働者のニーズがあるのかと問われ、財界要求に応えたものだと語りました。
 「残業代ゼロ制度」は、財界・大企業による10年余の野望です。
 経団連が「残業代ゼロ制度」の導入を最初に求めたのは2005年6月。「ホワイトカラー・エグゼンプション」(エグゼンプションは除外の意味)という名前で、年収は400万円以上。高プロより幅広い一般労働者が対象でした。競争力強化の名で労働時間に関係なく働かせる制度を求めたのです。
 同年9月に第1次安倍政権が発足すると検討を開始。しかし、「残業代ゼロ制度」と大きな批判をあびて国会提出を断念し、政権ごと崩壊しました。
 
 12年に第2次安倍政権が成立すると、労働者代表を除外した産業競争力会議で「残業代ゼロ制度」の導入を14年に決定。15年4月に「残業代ゼロ」法案を提出しました。
 名前を「高度プロフェッショナル制度」と称して実態を隠そうとしたものの、国民・労働者の反対にあい、審議入りもできないまま17年9月に衆院解散で廃案となりました。
 
 18年になり、「過労死ライン」容認の残業上限とセットで出し直したのが、「働き方改革」一括法案です。
 衆院厚労委で安倍首相が出席して質疑を行った5月23日。安倍首相は、官邸前で座り込んだ過労死遺族の面会要請を一顧だにせず、東京・銀座の日本料理店「東京吉兆」で経団連歴代会長と会食に向かいました。
 
 中西宏明経団連会長(日立会長)は6月25日、「高度プロフェッショナル制度は必要な制度だ。日本企業の生産性を向上させるという挑戦だ」と述べ、生産性向上のために高プロ導入を強く求めました。
 
ねつ造とウソで固めた法案
「働き方」法案は、財界の要求を実現するために、法案作成の前提となるデータや調査をねつ造とウソで塗り固めたものです。
 「法案の出発点」とされた労働時間データは、ねつ造や異常値が発覚し、2割を削除。再集計しても加藤勝信厚労相が「数値に変動がある」と認めざるをえず、信用性は完全に失われています。
 加藤氏は「法案の位置づけは変わらない」(19日)と強弁するしかできません。
 法案提案理由の「労働者ニーズ」の唯一の調査とされるわずか12人のヒアリングは、すべて法案作成後に行われた「後付け」で、立法事実をでっち上げたものでした。
 ウソで塗り固めても本音は隠せません。
 
 産業競争力会議で高プロ導入を主張した派遣大手パソナの竹中平蔵会長は、「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのはおかしい」(「東京」21日付)と語り、狙いが「残業代ゼロ」であることを明かしました。対象者についても「拡大していくことを期待している」と明言しています。
 
論拠破たん 廃案しかない
 ウソで固めた法案は破綻し、ボロボロとなっています。
 高プロで「自律的に働ける」としていた安倍首相は26日、「労働時間を画一的な枠にはめる発想を乗り越える」と答弁。長時間労働の歯止めを外すことが目的だと明らかになりました。
 
 高プロ対象者は「裁量」があることが要件だと強調するあまり、加藤厚労相は「このミーティングに出なさいとなれば該当しない」(5日)と答弁。会議のない業務などありえないのに支離滅裂な答弁に陥っています。
 高プロで報酬増や労働時間短縮ができるかのようにアピールしていましたが、安倍首相は「報酬は個々の企業の労使によって決められるもの」「時短を目的とするものではない」と無関係なことを認めました。
 残業の「上限規制」も、単月100時間、平均80時間の「過労死ライン」まで容認。労働時間の削減効果についても、山越敬一労働基準局長が「効果を定量的に示すことは困難だ」と答えられませんでした(19日)。三井住友海上で残業協定を従来の年350時間から540時間へ延長するなど残業増を誘発しています。
 「同一労働同一賃金」についても、安倍首相は「どの程度是正されるか答えるのは困難だ」と答弁不能になっています。(4日)

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