「マスコミに載らない海外記事」に掲題の記事が載りました。
韓国で行われたトランプと習近平のG2サミットの内容についての記事は珍しいので紹介します。
二者の対談は、1時間40分の議論の後笑顔の握手で締めくくられましたが、完全な「合意」には至らなかったことだけは明らかということです。
トランプは3項目の要求を出したのに対して、習近平は第一項と第二項に関しては小さな譲歩を示し、第三項のロシアからのエネルギー輸入を劇的に削減すべきことについては、中国が検討する可能性はまったくなかったということです。まあ極めて当然のことですが。
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トランプ大統領と習近平国家主席と韓国でのG2サミット
マスコミに載らない海外記事 2025年11月 4日
ペペ・エスコバル 2025年10月31日
Strategic Culture Foundation
中国は心配していない。技術面では、アメリカの支援は今後2~3年で必要なくなると予想されている。
こうして、大いに期待されていたG2サミット最新版が発表され、幕を閉じた。まるで、トランプ関税癇癪から一時休戦へと切り替わったかのような印象だ。
当然ながら「貿易摩擦」の緩和に焦点を当てる歪曲報道で溢れたが、現実的に本当に重要なのは、韓国での1時間40分の議論後、笑顔の握手で締めくくる完全「合意」に至らなかったことだ。
まあ、トランプが北京から何を引き出そうとしているのか、平均以上のIQを持つ人々全員最初から分かっていた。基本的に三項目だ。
希土類元素の輸出規制緩和。なぜなら、少なくとも5年以内にサプライチェーンを再構築する方法がないため、サプライチェーン崩壊でハイテク産業を内包する広大なアメリカ軍産複合体全体が「影響を受ける」ことは許されない。
大量のアメリカ農産物、特に大豆を中国は購入すべきこと。さもなければトランプ支持層が反発し、中間選挙どころか次期大統領選の勝利さえ危うくなる。「不良資産」とされるスティーブ・バノンは、既にトランプ出馬を公式発表している。
法外な価格のアメリカ石油を中国は大量購入し、同時にロシアからのエネルギー輸入を劇的に削減すべきこと。そうすれば、モスクワはウクライナ問題に関し「交渉の席」に戻ることを「余儀なく」されるはずだ。
ロシアと中国の包括的戦略的協力関係におけるエネルギーの役割を考慮する第三項について中国が検討する可能性はまったくなかった。
つまり我々が得たのは第一項と、第二項に関する小さな譲歩で、かなり漠然としたものだった。
一方、アメリカが、いわゆる「フェンタニル関税」10%を撤回し「一国二制度」の拠点、香港とマカオからの製品を含む全中国製品に課せられる24%の相互関税を更に一年停止すると中国商務省は公式発表した。
大豆の譲歩は予想されていた。ブラジルは大豆価格を1トンあたり530ドルから680ドルに引き上げるという、あまり賢明と言えない戦略をとった。中国はBRICS諸国からの輸入拡大をためらい始めた。しかも中国はブラジルにとって最大貿易相手国だ。米ドル安と農家が10%値引きに応じるほどのアメリカの豊作を組み合わせ、中国は最終的に有利な条件で取り引きを成立させた。しかもサーカス団長の国内支持者をなだめる、おまけまでついた。
「巨大船」の運行
このサーカス団長のトレードマーク、自分の頭の中にしか存在しないかもしれない合意に関する自慢より、G-2が中国にどのように解釈されたかに注目する方が遙かに重要だ。
強調されたのは協力と、トランプの不安定さへの宥和と、長期的視点に立った、さりげない歴史の教訓だった。例えば、習近平国家主席が用いた用語を見れば、中国の典型的比喩が浮かび上がる。
「風や波や課題に直面しても、我々は正しい進路を守り、複雑な状況をうまく切り抜け、中米関係という巨大な船が着実に前進していくようにしなければならない」
中国閣僚による他の文書は、習近平国家主席の「巨船」より更に先を行くものだった。それらは「お互いの成功と共通の繁栄」という概念を強調している。これは中国政府から出されたもので、目新しいものではない。だが、驚くべき明確な記述があった。
「中国の発展と復興と、トランプ大統領の『アメリカを再び偉大にする』という目標は互いに相反するものではない。」
言い換えれば、今や北京指導部は、中国の新たな力と「客観的状況」(地政学的・地経学的チェス盤の状況)に十分自信を持っているのだ。そのため米中は必ずしもゼロサムゲームの深淵に陥る必要はないと彼らは考えている。
それをトランプ自身が十分に理解しているかどうかは分からない。彼に助言する様々な反中主義者連中は、確実に理解していない。
また、私がここで述べたように、その直前、今週初めクアラルンプールで開かれたASEAN首脳会議に組み込まれた、いくつかの首脳会談で何が起きたのかという文脈で、韓国でのG2を位置づけるのも非常に重要だ。
ASEAN+3(中国、日本、韓国)とRCEP(アジア太平洋の大半を包含)間の新たな相互連携貿易推進は東アジアが協調して帝国主義的関税癇癪に対抗していることを示している。
そして極めて重要な漸進的な世界の人民元化に関し、今週、アラブ石油王国との石油元取り引きを公式に促進するとともに、BRICS諸国とパートナー諸国全てに中国の越境銀行間決済システム(CIPS)、つまりデジタル人民元を使用するよう北京が呼びかけた。
同時に、希土類輸出規制措置が中国のグリーン・テクノロジー製品の対外貿易にどのような影響を与えるかを商務副部長兼中国国際貿易代表部の李成剛が確認した。
こうした輸出規制は何よりも安全保障の向上に関係していると彼は述べた。「グリーン開発は開発哲学だ。(中略)安全保障と開発の関係について(中略)要するに、安全保障の確保はより良い開発に不可欠で、より良い開発は、より強固な安全保障を保証する。」
グローバルサウス諸国はそれを理解するだろう。国防総省が必ずしも理解するわけではない。
半導体や台湾には一言も触れず
G2直後、第32回APEC首脳会議の初会合で「アジア太平洋共同体」(概念上無効な「インド太平洋」ではない)の利益のために包括的経済グローバル化を推進するための5項目提案を習近平が行い、引き続き注目を集めた。
グローバルサウス諸国に習主席は直接呼びかけた。「多国間貿易体制の保護」や「開かれた地域経済環境」の構築、「産業チェーンとサプライチェーンの安定と円滑な流れ」の維持、貿易のデジタル化とグリーン化の推進、「普遍的に利益のある包括的な発展」の促進に向けた「共同の取り組み」を彼は主張した。
それはまさにトランプ2.0綱領とは違う。
さて、2026年に中国はAPECを、2026年にアメリカはG20を主催する。韓国で開催される今回のG2は、確かに象徴的な休止、あるいは一時休止と捉えられるかも知れない。だが、彼自身も含め、サーカス団長が次に一体何をするのかは誰にも分からない。
最後に重要な点が二つある。先端半導体の輸出規制に関するアメリカの譲歩の可能性について、米中双方とも一言も言及していない。つまり合意に至っていないのだ。中国は心配していない。今後2~3年でアメリカの支援を必要としなくなるとハイテク業界は見込んでいるのだ。
台湾には一言も触れられていない。全く予想がつかないが、周波が台湾問題について書いた最新の鋭いコラム内容を誰かがトランプの耳元で(トランプは読んでいない)ささやいた可能性もある。
つまり、挑発やエスカレーションは起こらない。少なくとも今のところは。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/31/trump-xi-and-that-g-2-in-south-korea/
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。