2025年11月6日木曜日

米国三重要選挙と日本政治/違和感満載高市政権高支持率(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を載せました。
 最初の記事では、4日に行われた米国の三つの重要選挙で民主党が全勝しました。ニューヨーク市長選では急進左派のゾーラン・マムダニ氏34)が当選し、バージニア、ニュージャージーの知事選でも民主党が勝ちました。
 イギリスでは直近の24年総選挙で労働党が大勝。オーストラリアでは同じく22年総選挙で労働党が勝利。韓国では6月の大統領選で革新の「共に民主党」李在明氏が大統領選で勝利しました。またフランスで24年7月、ドイツで25年2月に実施された総選挙でいずれも左派陣営が最大議席を獲得しました。
 植草氏はこのように世界の趨勢として「左」が台頭していることについて、過去30年、新自由主義の弱肉強食の政策が進められ一握りの強者・支配者に富と所得が集中し、圧倒的多数の市民が下流に押し流された結果であると見ています。
 その点は日本も同じなのですが、日本だけが経済成長がほぼゼロでありながら、大企業の利益だけが史上空前の高水準に達したのは、この間 労働者賃金所得が減少したことを反映するもので、国民がマスメディアの情報工作に絡め取られているために、海外のような政治面での展開を見せていないと述べます。
 そして極右・新自由主義の高市政権が発足したのに、大資本に支配されるマスメディアが下劣な高市絶賛報道を展開することで、国民による日本政治の変革が妨げられているとして、国民の「気づき」と政治刷新を誘導する政治勢力の「確立」が急務になっていると指摘します。

 併せて同氏の記事「違和感満載高市政権高支持率」を紹介します。
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米国三重要選挙と日本政治
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月 5日
米国で11月4日に実施された三つの重要選挙で民主党が三戦全勝した。
三つの重要選挙とはニューヨーク市長選、バージニア、ニュージャージーの知事選。
ニューヨーク市長には民主党候補で急進左派のニューヨーク州下院議員ゾーラン・マムダニ氏が当選。アンドルー・クオモ前州知事などを破った。
ゾーラン・マムダニ氏は34歳の民主社会主義者で、初のイスラム教徒の市長が誕生する。
米南部バージニアでは民主党のスパンバーガー前下院議員(46)、ニュージャージー州では同党のシェリル下院議員(53)が勝利した。

1年後に米国中間選挙が実施される。
今回3選挙は来年11月の中間選挙の「前哨戦」と位置付けられる。
トランプ大統領の支持率は低迷しており、中間選挙に向けて党勢の立て直しが急務になる。

注目が必要なのはニューヨーク市長に選出されたマムダニ氏が「民主社会主義」を掲げていること。「民主社会主義」は「新自由主義」の対極に置かれる政治思想。
右と左で区分するなら「新自由主義」は右、「民主社会主義」は左になる。
世界の趨勢として「左」が台頭していることを認識することが必要だ。

イギリスでは2024年総選挙で労働党が大勝して14年ぶりに政権交代が実現した。
オーストラリアでは2022年総選挙で労働党が勝利して9年ぶりの政権交代が実現した。
お隣の韓国では尹錫悦大統領が弾劾・罷免され、本年6月の大統領選で革新の「共に民主党」李在明氏が新大統領に選出された。
フランスで24年7月、ドイツで25年2月に総選挙が実施されたが、両国とも国内政治勢力は左派、中道、極右の三勢力に分立されており、総選挙では両国ともに左派陣営が最大議席を獲得した。

過去30年、新自由主義の経済運営=グローバリズム旋風が世界を席巻してきた。
新自由主義=グローバリズムの帰結は弱肉強食の推進である。一握りの支配者に富と所得が集中する。社会から中間層が消滅して、圧倒的多数の市民が下流に押し流される。

この現象は日本も同じ。
2012年12月に発足した第2次安倍政権は「成長戦略」を掲げたが日本経済は成長しなかった。ほぼゼロ成長という悲惨な経済状況が30年間持続している
このなかで株価だけが上昇したが、これは日本経済の成長を映すものではない。
大企業利益だけが史上空前の水準に拡大したことを反映するもの。

経済がゼロ成長なのに大企業利益だけが史上空前の水準に拡大したことが意味することは何か。
答えは明白だ。労働者賃金所得が減少したのだ。
日本の労働者実質賃金は1996年から2024年までに17%も減少した。
日本は世界最悪の賃金減少国である。

国税庁が公表する「民間給与実態調査」によれば、1年を通じて勤務した給与所得者5000万人の51%が年収400万円以下20%が年収200万円以下である。
正規労働から非正規労働へのシフトが加速され、日本から中間所得者層が消滅しつつある。
一握りの支配階級と大多数の下流階級に分類されている

この経済状況のなかで民主主義が健全に機能するなら左派勢力が拡大するのは当然の帰結
世界政治の趨勢がこのことを示している。
ところが、日本では人々がマスメディアの情報工作に絡め取られている
極右・新自由主義の高市政権が発足して、その非が指摘されなければならないことろ、大資本に支配されるマスメディアが下劣な高市絶賛報道を展開する。
これに絡め取られる国民によって日本政治の変革が妨げられている。
日本国民の「気づき」と政治刷新を誘導する政治勢力の「確立」が急務になっている。
UIチャンネル第600回記念放送「混迷する日本政治と活路https://x.gd/DafTc
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違和感満載高市政権高支持率
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月 3日
高市新政権を主要メディアが信用度の低い世論調査結果などを用いて大絶賛している。
理由は高市政権が日本の宗主国米国に都合の良い政権であるから。
メディアは大資本支配下にある。大資本の意向によって高市政権支援の報道が展開されている

しかし、心ある市民は現実を冷静に見つめる必要がある。
マスメディアは不自然に高市政権を持ち上げるが手法は時代遅れのもの。
おもしろくもないお笑いをガヤ芸人が声を挙げて手を叩き絶賛する手法が用いられている。
情報番組で歯の浮くようなお世辞を並べるコメンテーターの発言を備忘録に残す必要がある。

高市新政権をプラスに評価できる側面がない。三つの重要点を指摘しておこう。
第一政治とカネ
高市政権誕生のそもそもの出発点は「政治とカネ」。
自民党は「政治とカネ」で少数政党に転落した。「政治とカネ」問題の震源地は自民党旧安倍派。巨大な裏金不正事件が勃発。だが、いまだに真相解明は行われていない

自民党は昨年10月総選挙と本年7月参院選で惨敗。その責任を問われるかたちで石破茂氏が首相を辞任。自民党は新しい党首を選出して新政権が樹立された。
自民と26年間連携した公明党は高市自民が「政治とカネ」問題に真摯に向き合わないことを理由に連携を解消
間隙を縫って政権与党入りを果たしたのが維新。維新は「政治とカネ」問題を封印して自民と結託した

「政治とカネ」問題の抜本対応はいまなお示されていない。
公明は企業献金の受け入れ窓口を制限する規制強化案を提示したが自民はこれを拒絶。
維新は企業団体献金廃止の看板を掲げてきたが、これを放棄して「金権腐敗連立政権」に加わった。
維新共同体表の藤田文武共同代表は公費である政治資金を自分の関係する企業に不正に還流させた疑いを持たれている

また、維新、国民、自民は多額の政治資金を議員個人に寄附して散財してきた。
使途は一切明らかにされず、その資金の多くが飲食などの遊興費に使われてきたと見られる。
新政権発足には「政治とカネ」問題のハードルを越える必要があったが高市新政権の対応はいまなおゼロだ。裏金議員多数を党要職および政府要職に起用した事実は重大だ。
国会で集中砲火を浴びることになる。

第二日米関係
トランプと会ってはしゃぐ姿はかたはらいたし。
これが日本の首相かと思うと暗澹たる気持ちになる国民が多数だろう。
日米関税交渉決着は売国のもの。
米国政府が決定する米国での投資の資金を日本が5500億ドル拠出する根拠が存在しない。
イラク戦争の際に小泉内閣は米国国債購入のかたちで40兆円を米国に上納した。
今回は米国に「対米投資」の名目で70兆円以上も上納する話だ。
トランプが急遽来日したのは70兆円上納を変更させないためだったと思われる。
高市氏は言うべきことを一言も言っていない。

第三軍事費激増方針。
日本の軍事費増加は米国の利益である。米国にとって丸儲け。
軍事費を増大させて日本の平和と安定が守られるのか。答えは真逆だ。
高市新政権は一言で表現すれば百害あって一利のない政権。
日本の心ある市民はメディア情報に流されずに本質を見抜くことが必要だ。
                  (後 略)