2026年5月7日木曜日

米大統領による和平演出は中国での首脳会談を実施するためにすぎない

 櫻井ジャーナルに掲題の記事が載りましたので紹介します。
 昨年、トランプが中国に対して「対中高関税策」を課しましたが、逆に中国から「対米レアアース禁輸」という対抗策を打たれてそれを撤回したことから成立したのが今春の米中首脳会談でした。
 ところが2月28日に、イスラエルにたぶらかされたトランプが突如、大々的にイラン攻撃を仕掛けるなどしたことで、当初の予定日が大幅に遅れて5月14~15日に行われることになりました。
 当初の、中国が米国の農産品(や旅客機など?)を大々的に輸入するという話がどうなったのかについては、その時に明らかになる筈です。もしもそれらの約束が破談ということになれば、トランプの立場がなくなるので、必死にその実行を迫ろうとすることでしょうが、このところのトランプの在り方は大国のトップらしからぬデタラメさのオンパレードです。
 現に別掲の記事のように、トランプは、法医学精神医学の専門家が「ダークトライアド」と呼ぶ、自己愛、マキャベリズム、精神病質という3つの性格特性を併せ持っており、これは「憲法上の緊急事態」と言えるとして、5人の医師(大学教授クラス)から米国議会の指導者9名宛に書簡が出されています。

 併せて「イランと中国を結ぶ鉄道の破壊に熱心なアメリカとイスラエル」を紹介します。
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米大統領による和平演出は中国での首脳会談を実施するためにすぎない
                         櫻井ジャーナル 2026.05.07
 ドナルド・トランプ米大統領は5月14日から15日にかけて中国を訪問して習近平国家主席と会談する予定だが、その中国をイランのアッバス・アラグチ外相が5月6日に訪問、王毅外相と会談した。アラグチ外相はその前にロシアを訪れ、セルゲイ・ラブロフ外相だけでなくウラジミル・プーチン露大統領と会談している。
 アメリカ軍はペルシャ湾岸やイスラエルへ兵器や陸海軍の兵士をピストン輸送、5月7日にはイランを軍事攻撃すると言われていたが、5月6日にトランプ大統領は軍事作戦を中止すると発表した。その数日前から輸送機の飛行が減少している。
 トランプが「プロジェクト・フリーダム」の開始を発表したのは5月4日。その直後にアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港にある石油施設で火災が発生、UAE政府はイランから攻撃があり、弾道ミサイル12機、巡航ミサイル3機、無人機4機を撃墜したと発表したが、イラン側は攻撃したとする主張を否定している。アメリカ軍によるイランへの新たな攻撃を誘発しようとするイスラエルの偽旗作戦だった疑いもある。5月5日にアメリカ政府は対イラン軍事作戦の「エピック・フューリー」の終了を宣言した。

 イランに対する軍事的な圧力を強めた場合、トランプ大統領は習近平国家主席と会うことができなくなる可能性が高く、アメリカ政府は和平的な雰囲気を演出し、会談の中止を避けたかったのだと見られている。
 しかし、これでアメリカによるイランに対する軍事作戦が終わる可能性は小さい。トランプ大統領に対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からイランを攻撃、破壊するよう強く求められているからだ。この要求をトランプ大統領は拒否できないだろう。おそらく、上下院の議員も同じだ。
 トランプ大統領やその周辺はネタニヤフからの要求に逆らえないだけでなく、イスラエルから伝えられる話を信じている節もある。イラン経済は崩壊寸前にあり、イラン政府はアメリカ政府に対して必死に合意を求めているとトランプ政権は確信しているように見えるからだ。勿論、その確信は間違っている。彼らは現実を見ていないのだ。

 イラン政府はパキスタンを介してアメリカ政府に新たな和平案を提出している。その主要条項にはイスラエルとアメリカが今後攻撃イランを攻撃しないことの保証、制裁の解除、イラン周辺地域からのアメリカ軍撤退、そしてホルムズ海峡を統治する新たなメカニズムなどだ。この要求は一貫している。この要求についてイランは交渉するつもりはない。かといって、トランプ大統領はこの要求を受け入れることができないだろう。負けを認めることになるからであり、イスラエルが許さない
 そこで、トランプ大統領の中国訪問が終わった後、アメリカ軍はイランを攻撃、イランはアメリカ関連の施設、イスラエル、そしてUAEなどアメリカやイスラエルと手を組んでいる国々を報復攻撃することになると懸念されている。イスラエルが「サムソン・オプション」、つまり核攻撃をする可能性が出てくる。そうした展開を避けるため、ロシアや中国はイランに圧力を加えているようだが、それで問題が解決するとも思えない。シオニストが自分たちの目的を放棄するとは思えないからだ。


イランと中国を結ぶ鉄道の破壊に熱心なアメリカとイスラエル
                         櫻井ジャーナル 2026.05.06
 アメリカ海軍の駆逐艦2隻、USSトラクストンとUSSメイソンがホルムズ海峡の通過を図り、イラン海軍が警告射撃を実施したと伝えられている。イラン政府は警告射撃を実施している様子とされる映像を公開、同国の通信社はアメリカ側が警告を無視したことからミサイルを発射、命中したと伝えた。その数時間後にアメリカ中央軍はその報道を否定、被害は記録されていないとしている。アメリカの軍艦がホルムズ海峡へ入ろうとしてもいないとしている。同じ頃、イランの対岸にあるアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラで石油施設が炎上。これはイランの攻撃によるともされているのだが、イラン側は否定していた。

 ホルムズ海峡の封鎖で最もダメージを受けるのは東アジアだが、中国はホルムズ海峡やマラッカ海峡を回避するルートの開発を進めてきた。そのひとつが中国とイランを結ぶ鉄道だ。アメリカとイスラエルは今回の対イラン攻撃でこの鉄道を爆撃していると言われている。












 この鉄道は昨年5月に開通、上海からテヘランまで列車は15日で移動できる。イランから中国まで海上ルートを利用すると必要な日数は30日。鉄道を使うと日数は半分になる。

 しかも、中国はホルムズ海峡やマラッカ海峡を通過する必要がなくなる。この鉄道は中国が進めているBRI(一帯一路)の一部で、イランから中国へ石油を輸送できるだけでなく中国製品をイランやヨーロッパへ運ぶことが可能だ。

 バラク・オバマ政権は2013年11月にバラク・オバマ政権はキエフにあるユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でクーデターをはじめ、2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追放することに成功した。

 オバマ政権のネオコンはこのクーデターでウクライナを乗っ取り、ロシアとヨーロッパを結びつけていた天然ガスを断ち切ることで両者を弱体化できると計算していたようだが、ロシアとの関係が深いウクライナの東部や南部の住民はクーデター体制を拒否、ロシアと一体化したり武装闘争を始めた。2014年にはアメリカとイギリスの情報機関、CIAとMI-6が香港で反中国政府の佔領行動(雨傘運動)が仕掛けている。それを見てロシアは東へ目を向けて中国と同盟関係を結んだ。

 オバマ政権は2011年春からシリアやリビアでムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を主力とする傭兵部隊を利用して侵略戦争を開始するが、イランの最高指導者を務めていたアリー・ハメネイ師は2018年、イランは西ではなく東に目を向けるべきだと述べた。

 それ以降、中国はイランから石油化学製品、石油製品、ガス、あるいは銅精鉱、鉄精鉱などを購入、その一方でイランへはコンピュータや携帯電話といった電子機器を含む製品を供給するようになった。2019年にイランはBRI構想に参加する。鉄道の輸送能力が高まれば、両国はアメリカの妨害を受けることなく交易することが可能になる。

 それに対してアメリカはインドを起点としてUAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルの占領地、そしてヨーロッパをつなぐIMEC(インド-中東-欧州経済回廊)プロジェクトを打ち出している。イスラエルがガザを破壊し、その住民を皆殺しにしようとしている理由の一因はここにあると言えるだろう。それに対し、イランはハイファを破壊した。

 ペルシャ湾岸の産油国であるサウジアラビア、UAE、カタール、バーレーン、クウェート、オマーンはイスラエルと同じように、イギリスによって作り上げられた。そうした国々の「王族」とはアメリカやイギリスを拠点とする帝国主義者の代理人にすぎない。ジェフリー・エプスタインのネットワークと関係があっても不思議ではない。そうした国々と長い歴史のあるイラン(ペルシャ)とは大きな違いがある。その歴史の重さをトランプ政権は理解していないようだ。