作家の古谷経衡氏が、日刊ゲンダイの「猫と保守と憂国」のコーナーに掲載した記事「~高市外交が旧敵国条項を復活させた」を紹介します。
9月22日、高市首相は国連総会で「旧敵国条項」の早期削除を要望する演説(出席国は1割ほど)を行いました。
この条項は1995年に国連で「死文化」が確認されているものですが、高市氏としてはその実効性などは問題外で、国連の場で明確に発言したという体裁の方が大事だったのでしょう。しかし逆に〝ヤブ蛇″で「寝た子を起こす」ことにつながりりました。
同条項がそのままの形で現在も生きていると考える国などはないので、あらためて正式に削除するのには一定の抵抗があるとすれば、事実上の「死文化」で妥協するしかないものと思われます。
併せて日刊ゲンダイの記事「際立つ進次郎防衛相の外交オンチ…『高市総理に軍拡フリーハンド』で日中対話ますます遠のく」を紹介します。
高市首相が昨年11月7日国会で「台湾有事」は「日米対中国」戦争につながるという趣旨の発言をしたことで、以後 日本は中国からのレアアースの輸入が困難になりました。そのため日本の企業は多大な損害を被っていますが、高市氏には「発言を取り消す」という考えは皆無のようです。
小泉防衛相はそんな高市氏にひたすら同調しているようですが、国家の大計を持たないもので情けないことです。
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まさに「藪蛇」高市外交が旧敵国条項を復活させた 古谷経衡 猫と保守と憂国
日刊ゲンダイ 2026/09/30
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
9月22日、高市総理は国連総会で「旧敵国条項」の早期削除を要望する演説を行った。まさに「藪蛇」とはこのことである。無論この前段には同17日、露外相ラブロフが取材に対して「日本は旧敵国条項の条文をしっかりと読むべきだ」旨語ったとの報道を受け、中国が外交部談話で「中国は露の立場に同意する」と表明した事実がある。高市演説は、これを受けての脊髄反射的反応であるといえる。
だが、単に記者との応答でしかなかったラブロフ発言と中国の同調を受けて、高市は国連総会で公式に「旧敵国条項」の削除要望を言ってしまった。同条項は、1995年に「死文化」が確認されており、2005年には国連憲章から「敵国」の文言を削除する決意が同意されている。にもかかわらず、高市が国連総会でそう言ってしまったがために、中国・北朝鮮は答弁権を行使して反論した。こうして「死文化」が既定解釈である同条項を巡っての賛否が国連での討議の場に持ち込まれることになった。
無視・黙殺を貫けばよいものを、あえて触れてしまったことにより、あたかも同条項が有効であるとの立場もあり得るというハレーションを、他ならぬ日本自らが提起してしまったのである。高市外交は素人の域を出ておらず、国益を著しく害していると言わなければならない。
そも「旧敵国条項」とは、「第2次大戦で枢軸国等であった国が再侵略の動きを見せた場合、国連安保理の決議なしで武力行使が出来る」という趣旨である。この場合の枢軸とは、日独伊はもとより、ドイツの要請で参戦したルーマニア、ハンガリー、ブルガリア及び、正式には枢軸に加盟していないが、ドイツ側に立って独ソ戦に参戦したフィンランドの7カ国を指す。日泰攻守同盟条約(1941年)に基づき、米英等に宣戦したタイはここに含まれるか否かは議論が分かれる。これは、当時のタイ首相ピブンが、「(タイの)宣戦は、日本の脅迫によってなされたもの」と弁明をしたため敗戦国扱いを免れている経緯があるからである。いずれにせよ例えば、この条項を現代に適用しても、「ドイツではAfD(ドイツのための選択肢)が複数の州議会で躍進したのだから、これは再侵略の兆候であって、国連安保理の承認を得ずしてベルリンを空爆してもよい」というふうにはならないことは自明である。だからこそ同条項の「死文化」が明白なのである。
この「旧敵国条項」を削除する機運は、1990年代からゼロ年代初頭にかけて、右傾論壇の中で怪気炎があった。しかし前述のとおりもはや「死文化」が既定となると、右傾論壇ですら「旧敵国条項の削除」という主張は下火になり、ほとんど消えた。むしろこの界隈では、「日本が多額の国連分担金を拠出しているのに、常任理事国になれないのであれば国連など意味はない」という主張が大勢を占めている。高市外交は、既存の右傾論壇の潮流からも逸脱する素人的な心情によってなされていることがわかろう。
となるとこれはもう、ネット右翼の感覚ですらない。昨年11月のいわゆる「台湾有事発言」しかり、こんな素人が国のトップに立っていることは、「強く豊かな日本」にとって害でしかない。
古谷経衡 作家
1982年生まれ。立命館大学文学部史学科卒。令和政治社会問題研究所所長。「左翼も右翼もウソばかり」「日本を蝕む『極論』の正体」「毒親と絶縁する」「敗軍の名将」「シニア右翼」など著書多数。
際立つ進次郎防衛相の外交オンチ…「高市総理に軍拡フリーハンド」で日中対話ますます遠のく
日刊ゲンダイ 2026/10/01
巷では「覚醒した」ともてはやされている小泉進次郎防衛相だが、何のことはない。青天井の軍拡に目覚め、日本の立場を危うくする外交オンチぶりを発揮している。
進次郎氏は28日のBSフジ番組で、非核三原則の見直しや原子力潜水艦の保有に「タブーなく選択肢を排除せず、議論すべき」と改めて主張。年末に予定する安保3文書改定に関し、こう続けた。
「最終的には総理の政治判断が出てくるテーマもある。できる限り総理のフリーハンドをしっかり確保する。こういう環境整備も私の仕事のひとつですから、そこは肝に命じて責任を果たしたい」
今や日本の防衛費は関連経費を含めて約11兆円。防衛省の来年度予算の概算要求は過去最高の8・9兆円に達したうえ、具体的な金額を示さない「事項要求」が多く、年末の予算案ではさらに膨らむ見通しだ。防衛予算の拡大に向け、高市首相に「フリーハンド」を与える役目を自負するのが進次郎氏なのである。
進次郎氏は冷え込む日中関係を念頭に「対話は常にオープン」と番組でも訴えたが、やっていることは、中国からの「新型軍国主義」批判への燃料投下。高市首相の台湾有事発言の是正を求める中国を横目に、日中関係悪化の原因をつくった高市首相に軍拡のフリーハンドを与えようとしているのだから「対話」は遠のくだけだ。
「中国を脅威とみなす日本に対し、中国も日本を脅威とみている。この状況で核武装に踏み込めば、さらなる反発を招くだけでなく、米国が核開発を進めるイランを攻撃したように、排除の対象にもなりかねない。問題は、高市政権が核武装による抑止を強調するばかりで、何が起こり得るかを考えていないことです。そもそも核武装論で得をするのは、対中戦略の選択肢が増える米国だけ。対米追随しか頭にない高市氏に安保改定のフリーハンドを与えては、日中関係は冷え込む一方です」(元外務省国際情報局長・孫崎享氏)
折しも、岩屋前外相が日本国際貿易促進協会の会長として訪中し、王毅外相など中国要人と会談したタイミング。威勢のいい言葉を並べる高市政権に、パイプ役も苦労しきりに違いない。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。