衆院憲法審査会は31日、現行憲法を章ごとに論点整理する作業を行いました。この日は憲法第2章「戦争の放棄」(第9条)についてで、7党の代表者が意見を表明しました。
そのなかで自民党は、自衛隊を国防軍として集団自衛権の行使を認める改正を主張し、みんなの党も、自衛権のあり方を明確化するために、何らかの立法措置が必要と同調しましたが、公明・共産・社民の3党は9条の堅持を主張しました。
自民党は前回に引き続き、同党の改憲草案の対照表を用意していましたが、幹事会で「現行憲法の『検証』が会議の目的であって改憲案を出す場ではない」との批判が相次ぎ、審査会での配布は認められませんでした。
審査会設置の趣旨は、「衆議院憲法審査会規程(平成21年6月11日議決)」によれば、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、日本国憲法の改正案の原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査する(第1条)」ことなので、現状では改憲に対する歯止めが掛っていますが、幹事会の構成が変わるなどすれば憲法改正の舞台になる惧れは十分にあります。
因みに審査会の委員数は50人で、各会派の所属議員数の比率により割り振られ、委員の互選により数人の幹事が選ばれます。(第6条)
朝日新聞その他の報道によると、
各党の代表者から表明された意見は概略下記のとおりです。
民主党(逢坂誠二)
自衛権に関するご都合主義的な憲法解釈を認めず、国際法の枠組みに対応したより厳格な制約された自衛権を明確にすべきだ。平和主義の考え方に徹し、民主的統制の考え方を明確にすることが安全保障に関わる憲法上の原則で、自衛力の行使や国際協力について歯止めの枠をはめることが憲法の役割。
自民党(中谷元)
国家の自衛権は国連憲章で認められている。軍隊の保有は世界の常識で、自衛隊を「国防軍」と位置づけ、集団的自衛権の行使を認めるべきだ。武力行使を伴う国際平和活動に参加できるよう憲法に規定を置くことも必要。在日米軍基地は地元の負担軽減を着実に進めるべきだ。
公明党(赤松正雄)
9条は明文改憲も加憲も不要で、今のままでよい。日本には平和憲法の理念を世界に広める責任がある。9条は主権国家に固有の自衛権までも否定する趣旨ではなく、自衛のための必要最小限の実力保持は認められる。米軍基地や日米地位協定の存在は独立国家として歯がゆい現状だ。
共産党(笠井亮)
9条は前文とともに憲法の神髄だが、それが日米安保条約と在日米軍基地によって蹂躙されている。自衛隊は9条に反して創設され、米軍と一体となった海外派兵態勢がつくられている。9条を踏みにじる現状を徹底検証すべきである。平和憲法はアジア諸国の共通財産だ。
新党きづな(渡辺浩一郎)
国際社会の厳しい現実を直視し、変化に対応するためには憲法解釈をその時々で変更していくことが必要だ。個別的自衛権、集団的自衛権は明記せず、自衛や国際貢献のために軍を置くことだけを明記すればよい。
社民党(照屋寛徳)
9条の条文はいささかも変更してはいけない。明らかに違憲状態にある自衛隊は国境警備、災害救助、国際協力などの任務別組織に改編し、非武装の日本を目指す。米軍基地を撤去し、平和外交と非軍事を基本とする国際貢献で平和国家を目指すべきだ。現実を9条に近づける努力が国会議員の使命である。
みんなの党(柿沢未途)
自衛権のあり方を明確化するため、9条の改正か安全保障基本法の制定か、何らかの立法措置が必要だ。防衛に関する根幹的国家方針の法的正当性の有無が内閣法制局の憲法解釈に基づいているのは好ましいことではない。