2026年7月2日木曜日

皇室典範改正案 厳しく批判する6紙の社説の紹介

 高市政権は7月17日の会期末までに「皇室典範改正案」成立させようとしていますが、産経新聞一紙を除いた全国紙やそれ以外の主要紙は、その内容は「国民の総意」(乃至「国会内各党派の総意」)から逸脱したものであると一致して批判し、再検討すべきであるとします。
 日本国の「象徴天皇」の決定にかかわることに関して、これほどお粗末な法案をしかも超短期間で成立させようとするのは、
 日本国憲法 第1条「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」
 の条文に明らかに反するものです。
 東京新聞の社説は、「高市早苗政権が改正案の採決を強行すれば、国民の間に深刻な分断を招き、象徴天皇制に対する信頼が大きく揺らぐと危惧する」と指摘します。
 虚言・虚飾に塗れ自己正当化だけで生きてきた人間の勝手に任せて良いような問題ではありません。
 以下に、朝日新聞(2回分)、読売新聞、毎日新聞、日経新聞、東京新聞、北海道新聞の社説を紹介します。
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【社説】皇室典範改正、強行すれば禍根を残す 総意離れた暴走やめよ
                          朝日新聞 2026年7月1日
この社説のポイント
●皇室典範改正案は「国民の総意」はおろか、「立法府の総意」からも離れている
●将来の女性・女系天皇への道を封じ、男系男子での継承への固執は明らかだ
●内容の問題に加え、「静謐な環境」も失われた。成立を強行すれば禍根を残す
 政府が皇室典範改正案を閣議決定し、国会に提出した。衆参両院の正副議長が与野党の代表者を集めた会議を重ねて「立法府の総意」をまとめ、それを元に政府が作成したものだが、総意からの逸脱は明らかだ。
 今回の議論は、皇位継承のあり方には踏み込まず、「皇族数を確保する方策」だけを決めるはずだった。だが、法案には、総意では示されなかった男系男子に傾斜した項目が盛り込まれた。養子の子が男性なら皇位継承資格を有するとした規定などだ。将来の女性・女系天皇への道を事実上封じようとする内容だ。
 野党から「だまし討ちだ」との批判が出るのも当然である。もともと、全13党派中、参院野党第1党の立憲民主党を含む6党派が慎重・反対の立場を示すなど、総意と言えるか疑わしかったものが、一層総意からかけ離れた姿になってしまった。
 立法府の総意の名に値しないだけではない。「国民の総意」にもそぐわない世論はむしろ、女性・女系天皇を望む声こそ高まっている
 憲法で日本国と日本国民統合の象徴とされた天皇を巡る議論では、政争を避け、熟議を尽くす必要がある。上皇さまの天皇退位をめぐり、当時の大島理森衆院議長が「静謐(せいひつ)な環境のもと節度ある真摯(しんし)な議論」を与野党に求めたのは、そのためだ。
 森英介衆院議長は、養子に男の子が生まれれば皇位継承権を持つと、総意のとりまとめ案にはなかった見解を述べるなど、自ら「静謐な環境」を害している
 自民党の中曽根弘文・憲法改正実現本部長の講演での発言も看過できない。
 天皇、皇后両陛下の長女愛子さまによる皇位継承は「あり得ない」とし、「天皇になったら結婚する人もいない」とも述べた。女性天皇への道を開くことを、そこまで忌避するのか。男尊女卑、女性蔑視的な考えを公然と示す神経を疑う
 閣議決定直前、養子の対象年齢をめぐる規定に、日本維新の会が異論を唱えた。与党内の不協和音は、「総意」が虚構だった証左ともいえる。相次ぐドタバタ劇の中で、詰めるべき論点が次々と浮かび上がってきている。
 森議長は1日、与野党の幹部に対し、皇室典範改正案の今国会成立を最優先してほしいと伝えた。だが、このまま強行すれば、天皇制のあり方だけでなく、議会政治の歴史にも大きな禍根を残すことは間違いない。国民の総意とも立法府の総意ともかけ離れた暴走は許されない


(社説)皇室典範改正 男系男子への歪な傾斜
                        朝日新聞 2026年6月27日
 政府が皇室典範改正案の要綱をまとめた。女性皇族は結婚により皇族の身分を離れない▽皇族の養子を禁じる規定の例外として、旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎えることができる――の2点が柱だ。さらに26日に判明した法案は、養子の子が男子なら皇位継承資格を持つことを前提にした内容になっている。
 今回の議論は「皇族数確保のためにどうするか」にとどまるたてつけだったはずだ。ところが、衆参正副議長のとりまとめ、政府の骨子、要綱、法案と段階を踏むごとに、男系男子への歪(いびつ)な傾斜が鮮明になり、将来の皇位継承のあり方を先取りする真意があらわになってきた。とても公正とはいえない進め方だ。
 養子解禁は女性・女系天皇への道を妨げるのみならず、(1)事実上世襲の貴族をつくることにつながる(2)今の天皇家と共通の男系の祖先は室町時代にさかのぼり、国民に受け入れられるか懸念される(3)養子選びに時の政権の恣意(しい)が入る恐れがある(4)皇位継承を巡る紛争の元になりうる(5)国民に信頼される有為な人材が実際にいるのか不明――など問題は多岐にわたり、さらに新たな論点も浮かびあがる。
 現在の典範では、皇位継承資格があっても、継承順位が天皇の子や孫(親王)より低い男性皇族(王)は、その意思に基づき皇族の身分を離れることができる。
 要綱では、養子本人は皇位を継承しないが、養子を「王」と明示的に位置づけ、さらに「意思に基づき皇族の身分を離れることができない」とした。これは一般の王とは違い親王と同様の扱いといえる。そして養子は「配偶者と子どもがいない15歳以上の男子」だ。事情を十分理解できないまま皇室に入れられ、その後は一生離脱が認められないとすれば、人権上の問題が大きいといえないだろうか。
 結婚した女性皇族に住民基本台帳法を適用するのも疑問だ。天皇と皇族は皇統譜(皇室の戸籍の面も持つ、血統の正統性を示す公文書)に登録されるが、それとは別の、一般国民と同じ扱いを適用することになる。結論を先送りしたはずの「結婚した女性皇族の配偶者や子を皇族とするかどうか」という論点について、「皇族にせず一般国民のままにする」という意志を埋め込んでいるように見える。
 野党から、立法府の総意と認識していないと反発が強まるのも当然だ。このまま改正案成立を強行すれば大きな禍根を残す。皇位継承のあり方をどうするのかについては今後、正面から議論することが必要だ。再考を求めたい


社説 皇室典範改正案 「旧宮家」へ皇統が移る恐れも
                           読売新聞 2026/07/01
 象徴天皇制の根本を変えかねない法改正だというのに、今国会中に拙速に成立させようとするとは、政府・与党の見識を疑わざるを得ない
 政府は、皇室典範改正案を閣議決定し、国会に提出した。自民党と日本維新の会の与党と、一部野党が賛成すれば衆参両院で可決、成立する見通しだ。
 改正案は、戦後に皇籍を離れた旧11宮家の男系子孫である一般男性を、皇族の養子に迎えて皇族とする仕組みと、女性皇族が結婚後も皇室に残る制度が柱だ。いずれも、多くの問題を抱えている。

立法府の「総意」どこに
 養子本人には皇位継承資格を認めない一方で、法案では新たに、養子が皇族となった後に生まれた子が男子なら継承資格を持つ、という規定を設けた。
 事前の与野党協議では、養子の子の身分については意見がまとまらず、「立法府の総意」では触れられなかった。
 この協議では、皇位継承のあり方の議論を棚上げし、公務を分担して天皇を支える皇族数の確保策の検討に論点が絞られた。「総意」も、そうした内容だったはずだ。
 ところが、政府は与党の主張に沿って、皇族確保策を皇位継承の安定化の話にすり替えるかのように、旧宮家の男系男子による皇位継承に道を開いた。唐突な決定であり、由々しき事態を招く
 養子の子に皇位継承資格を与えるかどうかは、天皇制の核心にかかわる。結論を出せないまま「総意」を高市首相に提示した国会もふがいないが、政府は「総意」を利用して、腹案の実現を目指した、と言われても仕方あるまい。
 仮に養子制度が実現した場合、どんな事態が生じるか。
 政府内では、旧宮家の男性がいずれかの皇族の養子となった後、一般の女性と結婚するといった流れが想定されている。
 だが、一般人として生まれ育った旧宮家の男性が、一般女性と結婚し、生まれた男子が皇位継承資格を持つと言われても、多くの国民は納得できるだろうか
 秋篠宮さまの長男の悠仁さまに男子が生まれない場合には、今の天皇家の皇統は途絶える。

家族の一体性保てるか
 そうなれば、戦後、象徴天皇として常に国民に寄り添い、国民から敬愛を受けてきた現在の天皇家の系統から、皇統は約600年前の室町時代に分かれた旧宮家の系統に移ることになる。日本の歴史にとって重大な転機といえる。
 また改正案は、女性皇族の夫と子については皇族とせず、一般人のままとしている。与野党協議では夫と子の身分について折り合えず、「総意」でも曖昧だった。
 夫と子が一般人であれば、家族内で、女性皇族には姓がないのに対し、夫と子には姓があるということになる。いびつな制度だと言わざるを得ない。
 与党は、家族の一体性が大事だとして夫婦別姓問題については、家族は同じ姓であるべきだと主張している。女性皇族の一家の一体性はどうでもよいというのか
 しかも、結婚した女性皇族は自治体に住民登録されて一般市民のようになる一方で、選挙権は与えられず、戸籍もないまま、単に公務を務めるためだけの皇族という位置づけとなる。
 女性皇族に結婚後も身分を維持し、公務を担ってもらうことには意義がある。より皇室制度を安定させるには、一代限りとせず、「女性宮家」として家族一体で皇族とすることが筋だろう。

とても静謐と言えない
 政府・与党は皇位継承のあり方に踏み込むのであれば、首相も認めているように「静謐な環境」で議論し、より幅広い与野党合意を目指さねばならない。
 皇室典範改正案に対し、立憲民主党の水岡代表が「だまし討ちのようだ」と批判するなど、野党には反発が広がっている。
 衆院定数削減法案などを巡る与党の強引な国会運営を受け野党は衆参両院で審議拒否に転じた。
 憲法は天皇の地位は「国民の総意に基づく」と定めている。天皇制に関する制度の変更は、国民を代表する立法府で大多数の合意に基づき、進めるべきだ
 とても「静謐」とはいえない中で、与党が反対を押し切って改正案を成立させるようなことは、あってはならない。
 政府はいったん立ち止まって今国会での改正案成立を見送るとともに、新たに有識者会議を設置して女性・女系天皇の可能性も排さずに皇位継承安定化の抜本策の議論を仕切り直す必要がある


社説 皇室典範の改正 やはり養子案はおかしい
                            毎日新聞 2026/6/26
 ただでさえ問題が多い制度である。恒久化すれば、将来に禍根を残す
 皇族数確保策を巡り、政府が与野党全体会議に皇室典範改正案を示した。旧宮家出身の男系男子を皇族の養子にする案も含まれる。80年前に一般国民となった旧11宮家の子孫が対象だ。
 現行典範は天皇・皇族が養子を取ることを禁じている。養子案を推す保守系学者らは、皇位継承資格者が減る中での緊急措置として、皇室の基本法である典範の改正ではなく、特例法の制定を提案していた。
 上皇さまの退位にあたっては、一代限りの特例法を成立させた。退位を禁じる典範の原則を変えるべきではないと主張する保守派に配慮した。
 そもそも養子を禁じる規定は、明治の旧皇室典範を引き継いだものだ。継承順位を巡る争いの要因を絶つ狙いがあった。
 衆参両院の正副議長が取りまとめた見解は、こうした歴史的経緯を「重く受け止める」と明記していた。女性皇族が結婚後も身分を保持する案は与野党がおおむね賛同していることから、典範改正を求めた。一方、賛否が割れる養子案は「慎重に制度設計を行う」として、扱いに差を付けた
 にもかかわらず、養子案まで典範改正で対応しようとする政府の姿勢に疑問を抱かざるを得ない
 旧宮家からの養子は例外扱いとするものの、常態化する恐れがある。見直し規定も設けるが、30年ごととしている。これでは恒久化に等しい。典範の再改正は、与野党が改めて合意する必要があり、ハードルが高い
 旧宮家の男子はこれから生まれる子も含め、皇族入りの対象となる。憲法14条が禁じる貴族制度や門地による差別にあたるとの疑念が強まる。
 養子案は男系継承を前提としており、今後も女性配偶者に男児出産の重圧がかかり続ける。
 天皇陛下は記者会見で「国民の理解が得られるものとなることを望む」と語られた。参院で野党第1党の立憲民主党などは養子案に賛同していない。幅広い合意形成が置き去りのままでは、「国民の総意」に基づく象徴天皇制を危うくする。


[社説]強引な皇室典範改正は禍根を残す
                        日経新聞 2026年6月27日
政府による皇室典範改正案の内容が明らかになった。与野党協議でまとめた「立法府の総意」の枠を越え、男系による皇位継承を固めたい意向が鮮明だ。幅広い合意形成が必要な皇室を巡る議論の進め方として、乱暴と言わざるを得ない。丁寧な対応を求めたい
先に公表された「立法府の総意」は、意見が割れる論点の多くで結論を出していない。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるかや、結婚する女性皇族の配偶者や子を皇族とするかどうかなどだ。
ところが政府が検討する具体的な皇室典範の改正案には、「総意」にはなかった内容がいくつも盛り込まれている。
養子に男子が生まれれば、皇位継承権を持つことが明確にされた生まれた時から一般人だった人の子が天皇になりうるということだ。現在の天皇家に取って代わるということでもある。これほど大きな方針転換を十分な議論もなく行うのは、民主主義の軽視にほかならない。国民の理解が得られるか極めて疑問だ。
養子は配偶者と子のいない15歳以上の男子で、いったん皇族になれば自らの意思でその身分を離れられないという。養子選びに政治的な思惑が入り込む余地もあり、人権上も問題があろう。
結婚した女性皇族には住民基本台帳法が適用される。皇族は通常「皇統譜」と呼ばれる皇室の特別な戸籍に記載されるが、それとは異なる扱いになる。女系継承の可能性を排除する方策ではないか。
全体を通して男系継承にこだわる意図が明確だ。報道機関の世論調査では女性・女系天皇への高い支持が目立つ養子案は賛否が割れるうえ「分からない」との声も多い。改正案は国民の意見を十分に反映しているとは言えまい。
皇室問題は国民統合の根幹に関わる特殊なテーマだ。だからこそ与党の「数の力」によらない議論が求められ、歴代政権も慎重に対処してきた。それを無視すべきではない。強引な改正は禍根を残す。


〈社説〉皇室典範改正案 立法府への背信行為だ
                         東京新聞 2026年7月1日
 皇族数の確保に関する皇室典範改正案が閣議決定された。国会の全会派による「立法府の総意」案を超え、皇位を男系男子に限る意図が明白だ。政府が皇位継承の方向性を一方的に示すのは不適切であり、改正案を撤回して議論を一からやり直すよう求める
 改正案は(1)女性皇族が結婚後も皇族身分を保持する(2)1947年に皇籍離脱した旧11宮家の男系男子を皇室の養子に迎える-が柱。国会が衆参両院の正副議長の下、全会派が参加してまとめた「立法府の総意」案を基にしている。
 総意案は減少する皇族数の確保に限ってまとめられたものだ。皇位継承については男系男子による継承を主張する会派と、女性・女系天皇の可能性を排除しないよう求める会派との溝が深く、成案を得ることが難しい事情がある。
 にもかかわらず、改正案は男系男子による継承の方向性を打ち出した。妥協しつつ総意案をまとめた国会への重大な背信行為だ。
 改正案では、養子自身は皇位継承資格を持たないものの、養子の子孫が男性の場合、皇位継承資格を持つことが明示された。一般国民だった人物の息子が天皇になることを容認したもので、総意案で議論した範囲を逸脱している。
 そもそも養子案には多くの懸念がある。旧宮家は現皇室との血縁関係が非常に遠く、戦後約80年間も皇族から離れて暮らしてきた。国民の敬愛を受けられるか疑問である上に、養子になる過程で政権などからの影響を受ける恐れがある。門地による差別を禁じる憲法に抵触する疑いも拭えない。
 改正案は女性皇族が結婚後に身分を保持するに当たり、一般国民と同じ住民基本台帳に登録する制度設計となっている。
 総意案では意見対立から女性皇族の夫と子の身分のあり方について結論を先送りしていたが、改正案は夫と子に皇族の身分を付与せず、女性・女系天皇の可能性を封じる狙いは明らかだ。
 男系男子による皇位継承は皇室の現状に合わず、世論調査でも女性・女系天皇を容認する意見が多い。男系男子による継承を今後も維持するなら、合理的な説明と徹底的な議論、国民の幅広い合意が不可欠だ。
 高市早苗政権が改正案の採決を強行すれば、国民の間に深刻な分断を招き、象徴天皇制に対する信頼が大きく揺らぐと危惧する。


<社説>皇室典範改正案 唐突な男系維持は横暴だ
                        北海道新聞 2026年7月1日
 政府は皇室典範改正案を閣議決定した。旧11宮家の15歳以上の男系男子を養子に迎える案と、女性皇族が婚姻後も身分を保持する案の実現を目指す。
 今回の与野党協議は皇族数確保を目的とし、皇位継承策は先送りしていたところが政府は突然、旧宮家からの養子の男系男子の子孫が皇位継承資格を持つことを改正案に盛り込んだ
 男系男子による継承への固執と、女性・女系天皇論を封じる狙いがあるのは明白だ。与野党が協議していない方向性を盛り込むのは立法府への裏切り行為である。横暴にほかならない
 そもそも養子案は身分や門地による差別を禁じた憲法に抵触する恐れがぬぐえず、理解も深まっていない。養子の子孫が皇位に就けば、天皇の地位が「国民の総意に基づく」とする憲法の大原則さえ崩れかねない
 案を撤回し、女性・女系天皇を含む議論をやり直すべきだ。
 与野党協議で皇位継承策を棚上げした背景には女性・女系天皇容認を抑えたい政府・与党の思惑があった。政府はこの協議で合意した皇族数確保のための「立法府の総意」に基づき、改正案を決めたとしている。
 ただこの「総意」は、養子案に5党派が賛同しないなど、そもそも名ばかりだった。
 にもかかわらず合意した途端に森英介衆院議長が「養子に男の子が生まれれば皇位継承権を持つ」と述べ、木原稔官房長官も同様の見解を示した。
 旧宮家は80年近く一般人として暮らしており、養子案は世論調査でも賛否が拮抗(きっこう)する。子孫の皇位継承に理解が広がるかは養子入り以上に疑わしい。時の権力者が自らに近い養子を選ぶ懸念もぬぐえない。
 皇室政策は静かな環境の下で与野党の丁寧な合意を目指すのが基本だ。巨大与党が数で押しきるのは許されない
 一方、改正案は結婚後の女性皇族の夫と子の身分に言及せず女性皇族には住民基本台帳法を適用するという。「皇統譜」に登録されてきた女性皇族を一般市民と同様の扱いにし、女系天皇の道を絶つ意図が透ける
 養子の子孫による皇位継承が唐突に盛り込まれた背景には、男系男子継続を訴える高市早苗首相の意向もあるとみられる。
 自民党で首相に近いベテランの中曽根弘文憲法改正実現本部長は、天皇陛下の長女愛子さまが皇位を継ぐことは「あり得ない」とし「天皇になったら結婚する人もいない」と述べた。
 主張を押しつけるだけでは象徴天皇が「国民の総意」から離れることを自覚すべきだ。