世に倦む日々氏の掲題の記事を紹介します。
CIA長官のラトクリフが突然モスクワを訪問し8時間の滞在で退去しました。
訪露の目的については一般には、第1にウクライナ戦争の延長でロシアがNATO攻撃のレッドラインを踏み越えないようにという警告、第2に英国がウクライナに技術供与する長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」をめぐる件、第3にロシアによるイランへの軍事的・経済的支援を停止するようにという牽制、と見られているということです。
しかし世に倦む日々氏は この時期にCIA長官がモスクワに飛んだのは、どうしても直接ロシア首脳部に伝えたい安全保障上の警告があったからで、レッドラインの確たる通告と同時にロシア側の反応を正確に把握・捕捉したかったからであると見ています。
そして東アジアでの日米と中国の関係と同様に、欧州ではNATOとロシアの間に対話がなく(フォンデアライエンやメルツにはロシアとの平和共存の意思がない)、本来理性知に生きるべき人々が、ゼレンスキーの扇動に従っていて、あるのは対露の牽制と不信と憎悪だけで、「開戦前夜の時間が刻々と過ぎている」としています。
一方トランプについては、おむつ着用の噂と言い 認知症の初期症状の疑いと言い 美女側近のナタリー・ハープとの奇妙な関係と言い、最晩年の毛沢東との類似に関心を向けざるを得ないとして、いわゆる「老害」の状況であると語ります。ラトクリフの行動については、ロシアから軍事的挑発と受け取られ 反発され エスカレートを一段階高める結果となったと見ています。
そして高橋杉雄が22年9月、報道1930で「自分がロシア軍の参謀なら2tの戦術核を2個使ってウクライナ軍の進撃を止めた」と解説したことから、「2t程度の小型核なら戦場で実戦使用するのに躊躇はないというのが 今の米軍・NATO・自衛隊の幹部の感性と常識なのだ」と受け止めたとして、米国が既に通常兵器の在庫が不十分であるという事情は、「米軍NATOの参謀部をして、小型核兵器に頼る作戦設定の方向に動機づけるだろう」と見ます。
そして先に欧州で大戦争が始まり 核攻撃が応酬される展開となり、そのまま東アジアを巻き込む第三次世界大戦になるという可能性が高くなったと結びます。恐ろしいことです。
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ラトクリフのモスクワ訪問 ー 新冷戦が終わって核攻撃の応酬の第三次世界大戦へ
世に倦む日日 2026年8月31日
欧州情勢の緊張が激化している。戦争回避の道が見えない危機的状況に陥っている。8/25、CIA長官のラトクリフが予定発表なしに突然モスクワを訪問、8時間の滞在でリガに戻った。この緊急訪問を受けてネットは騒めきたち、憶測が飛び交い、Xタイムラインの関心がこの一点に集中した。ホワイトハウスはこの件について公式発表しておらず、トランプが 8/26 に「半ば定例的なもの」と短くコメントするに止まっている。ロシア側は 8/27 にSVR長官のナルイシキンが会談の事実を認め「情報機関の所管する複数の問題」を協議したと語った。私は最初、トランプが中間選挙対策としてウクライナ戦争の和平案を用意し、特使としてラトクリフを派遣したのかと推測したが、どうやらそうではないようだ。今回のCIA長官の訪露の第一の目的は、ウクライナ戦争の延長でロシアがNATO攻撃のレッドラインを踏み越えないよう事前警告するものだったという解釈が支配的になっている。
ウクライナ戦争の和平案の提示と交渉であれば、特使としてウィトコフが派遣されただろう。そうではなくラトクリフが飛んだのは、外交ではなく軍事の領域の極秘の意思疎通が目的だったからであり、軍事上のクリティカルなインテリジェンス・ディプロマシーの任務を帯びた工作活動だったからだ。CIAは、ロシアがNATO諸国の結束を試すため、バルト3国に対して限定的な軍事行動を起こすのではないかと予測し警戒していて、その観測情報(=情報戦)をWSJを使って以前から流していた。どこまで根拠のある話か不明だが、5年前のバーンズ訪露の先例を考えると、CIAがそれなりにロシア内部の戦略機密の兆候と所在を探知していて、ラトクリフがナルイシキンにエビデンスの断片を示し、直接に釘を刺したとも考えられる。私の見方では、それは、NATOがカリーニングラードを電撃包囲する、或いは先制侵攻する場合に備えて、ロシアが軍事的な予防策を検討し構想していた図案ではないかと思うけれど、いずれにせよ情勢の緊迫は甚だしい。
ナルイシキンは「複数の問題」と言っている。二つ目の問題は英国がウクライナに技術供与する長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」をめぐる紛争で、Xではこの問題が今回の主眼で焦点ではないかと喋々されていた。ウクライナがこれ(英仏軍仕様のオリジナル設計:射程距離550キロ)を入手すると、モスクワを攻撃する強力な飛び道具を生産・配備できる進行になる。ロシア側は猛然と反発し、8/27 に報道官のザハロワが「英国の軍事施設を報復攻撃する」とまで言っていた。8/25 の協議現場でこの問題がどう折衝され応酬があったのか不明だが、8/27 のザハロワの発言は緊張を一歩エスカレートさせるものであり、ロシア側の断固たる意思を示すものだ。もし、NATO側がそれを無視してストーム・シャドウ本国仕様版の生産許可に踏み切れば、ロシアは何らか対抗措置を取らざるを得なくなり、英国へのサイバー攻撃の初期段階が行われるとか、英国の海外基地への威嚇攻撃が行われる可能性を否定できない。当然、英国とNATOは報復に出るだろうから、本格的な軍事衝突へとエスカレーションしてしまう。
「複数の問題」の三つ目はイラン問題で、ロシアによるイランへの軍事的・経済的支援を停止するよう求めたと報道されている。この問題も、ラトクリフがウィトコフやバンスの代役や調整役を務めて、ロシアに何か外交上の根回しを図ったというわけではなく、単にCIAによる軍事諜報的な牽制が眼目だろうと推察される。例えば、ロシアが中東地域の米軍の衛星情報をイランに提供支援している証拠を掴んでいるぞ、トランプ大統領がお怒りだからやめとけよという脅しを発したのではないか。アメリカは湾岸諸国に供与する迎撃ミサイルを枯渇させ、またホルムズ海峡の桎梏によって油価高騰を招き、イラン戦争を打開に導けず立ち往生の状態になっている。とりわけ迎撃ミサイルの在庫不足は深刻で、ウクライナ戦争でロシアを強気にさせている大きな要因だ。できればロシアとイランの間に楔を打ち込みたい。で、ロシアがイラン支援を完全に断ち切ればストーム・シャドウで英仏に譲歩させてやるぞとか、そんな「取引」をロシア側に認知させるよう口上を謀ったのかもしれない。が、プーチンはラトクリフとは会わなかった。
表面上、今回の件は、アメリカによる対ロシアの軍事的エスカレーション管理の行動とされ、諜報機関のトップ同士が久しぶりに対話したのは悪くないという見方もされている。が、X上では第三次世界大戦と核戦争の危機が深刻に言われ、事態を厳しく憂慮する投稿が多かった。この時期にCIA長官がモスクワに飛んだことは、どうしても直接にロシア首脳部に伝えたい安全保障上の伝達事項(警告)があったからで、レッドラインの確たる通告と同時に、ロシア側の反応を正確に把握・捕捉したかったからである。そしてその首尾をNATOで共有するためだ。今、ウクライナ戦争は次の局面(最終段階)に移行しようとしている。もう、ロシアも、ウクライナも、これ以上戦争を継続できない限界に達していて、国家の最終的決断の一歩手前まで来ている。ロシアは、北朝鮮の援軍を含めて大規模な増派を計画していて、ドンバスの戦線膠着に一撃の決着をつけようと動くだろう。NATOも、それを阻止してロシア軍を壊滅させ、ロシアの継戦能力を完全に奪い、プーチン失脚と戦争勝利に繋げようとするだろう。ウクライナにも余裕がない。
東アジアでの日米と中国の関係と同様に、欧州でNATOとロシアの間に対話がなく、牽制と不信と憎悪だけがあり、開戦前夜の時間が刻々と過ぎている。猛スピードの軍拡と戦争準備だけがある。平和を求める市民社会がない。東アジアと同じだが、緊張が破れたときは総力戦となり核戦争となるだろう。欧州はすっかり変わった。米中の対立関係を比喩していた「トゥキディデスの罠」の構図は、今まさに欧州とロシアに当て嵌って妥当する。相手の出方を見誤り、自らの主導権を絶対視した想定と戦略を一貫させ、自己過信し、疑心暗鬼と状況判断のミスで衝突に至るという、そういう陥穽の運動に陥っている。とりわけ、軍事的圧力に頼った愚かな暴走で戦争を招いているのはNATOの側だ。近代的理性発祥の地であり、リベラル(寛容)の伝統の地で、何もかも現代世界の教科書であったはずの西欧で、この退廃と野蛮は理解できない。二度の世界大戦をやった地だから、三度目もやって次に行こうとでも言うのだろうか。市民が主役だったのが国家主義になり軍国主義に変わっている。理性知に生きる人々が、ゼレンスキーの扇動に従っている。
理性知の象徴のような存在だったドイツ市民が、百年前、ヒトラーの扇動に陶酔して戦争に奔った図と同じに見える。ソ連が崩壊した時点で、ワルシャワ条約機構が解散した時点で、NATOの存在意義がなくなったことが、なぜ彼らには理解できないのだろうか。なぜNATOを維持継続させ、NATO東漸を促進させ、ロシアとの冷戦と衝突を肯定し、ロシアの排除と解体を正当化するのだろうか。旧ソ連圏東欧諸国の人々がそれを待望するのは納得できる。長く悲劇と忍耐を強いられたポーランド人の民族的心情は共感できる。だが、英仏独伊が、北欧がそれに乗るのは歴史的にも地政学的にも理解できない。今のロシアは共産主義国でもない。プーチンはコミュニストではない。したがって欧州の対立構図は東アジアとは異なる。イデオロギーの相違が問題にならず、それが不信や対立の根拠にはならない。価値観が違うとは言えない。エルベ川から西の国々、スカンジナビア半島の国々は、ロシアの侵略と支配の経験はなく、怨恨を抱く理由と要因はない。ウクライナは東スラブ民族の国だ。
一瞥して、フォンデアライエンやメルツにはロシアとの平和共存の意思がない。プーチンと妥協して、ミンスク協定の線に戻して外交的に収拾しようという発想と思考がない。あるのは、このまま戦争を続ければ、必ずロシアの継戦能力がなくなる、行き詰まって政変が起こる、プーチンが失脚するという見通しだ。楽観的予測だ。それを媒介する自己の正義の信念だ。正義の信念と言っても、その中身は、新冷戦を正当化するイデオロギーであるところの、”自由民主主義 vs 権威主義”という陳腐で皮相的なナラティブであり、間に合わせで加工制作した名目的な観念図式でしかない。何度も言ってきたが、ソ連封じ込め政策を提唱し、戦後の冷戦体制を作った立役者とも評価されるジョージ・ケナンですら、晩年、NATOの東漸に猛反対し、ロシアとの第三次世界大戦を招く愚行だからやめよと渾身で批判を発していた。ウクライナ問題にEUが介入し、ロシアと臨戦状態に入るなどあり得ないことだ。核戦争の被害者になるかもしれない西欧の市民が、フォンデアライエンやメルツを支持し続ける理由が分からない。
少し脱線して、最近のトランプの行状と態様に目を向けると、おむつ着用の噂と言い、認知症の初期症状の疑いと言い、ナタリー・ハープとの奇妙な関係と言い、最晩年の毛沢東との類似に関心を向けざるを得ない。神格化された独裁者であった毛沢東は、最晩年、長年の不摂生と老化によって複数の重症の疾患を持ち、神経障害のために人の話を聞き取れなくなっていたと言われている。それでも始皇帝のように若い女性の同衾と愛撫を求め続け、男性の性的満足の追求に飽くなき執念を燃やし続けていた。江青や四人組に情報をコントロールされ、彼らに都合のいい情報だけで政策の判断と決定が進められ、党も国家もボロボロの状態に追いやっていた。中国古代史の皇帝たちのカリカチュアと同じか、それ以上に醜怪で唾棄すべき愚劣な指導者だった。今、トランプの老害とそれによるアメリカ政治の弊害と退廃は、実に惨憺たるもので、まさに古代中世の滑稽な歴史物語の様相を呈している。「権威主義国家」とは、老醜トランプが独裁するアメリカ帝国を言い表す言葉としてこそ妥当し、説得的に響く政治表象ではないのか。
アメリカがロシア・中国・イラン・北朝鮮に対して繰り出す一つ一つの軍事諜報の手法を、西側マスコミは「エスカレーションの管理」とか「効果的な警告」の言葉で合理化し、美化し、有意味に意味づけして西側の人々に情報散布している。あくまでアメリカとNATOが主導権を握り、アメリカとNATOの世界支配と世界管理が永続化することを前提し、それが正義だと価値づけした安全保障の論理と表現で認識を固めている。だが、私から見て、客観的に、それはとてもエスカレーションを制止する(第三次世界大戦を抑止する)機能や役割を果たしていない。身勝手で自己満足的な言い分であり、ロシア・中国・イラン・北朝鮮の存在意義を否定した視線からの言説であり、西側の人々を好戦的態度へと開き直らせる誤った効果に導くものだ。ザハロワの発言を再確認すれば明らかなように、ラトクリフの行動は軍事的挑発としてロシアに受け取られ、反発され、エスカレートを一段階高める結果となった。こう啖呵を切った以上、ロシアは、ストーム・シャドウ長距離版の攻撃を受けた後、英国に対して何も報復しないわけにはいかない。
エスカレーション管理は利いておらず、次の段階に危機を引き上げて緊張を増しているだけだ。アメリカとNATOと西側マスコミは、どこまでも戦争を自分に都合よく考え、自己の正義を絶対化した立場で現状を定義しており、自陣を相対化する視座を持てない。そこから来る認識と展望は、いずれロシアが継戦不可能な限界が訪れるとか、ロシア民衆が蹶起するという甘い期待と観測であり、それを基本に据えた対ロ対決・対ロ打倒の安保政策だ。核戦争は近づいている。われわれ一般市民と軍事組織の中の参謀の感覚とは違う。4年前の9月、ハリコフでの戦闘でロシア軍が潰走したとき、報道1930で解説した高橋杉雄は、自分がロシア軍の参謀なら2tの戦術核を2個使ってウクライナ軍の進撃を止めたと言った。ロシア軍が実際に核使用に踏み切ると確信したらしい。2t程度の小型核なら戦場で実戦使用するのに躊躇はないのであり、それが今の米軍・NATO・自衛隊の幹部の感性と常識判断なのだ。加えて、米軍NATOは作戦の主力で使う諸ミサイルを、攻撃用も迎撃用も半ば払底させていて、つまり通常兵器が足りなくなっている。
通常兵器の余力が十分でないという与件と事情は、米軍NATOの参謀部をして、小型核兵器にヨリ頼る作戦設定の方向に動機づけるだろう。東アジアより先に欧州で大戦争が始まり、新冷戦が終わって「終末時計」が午前0時になり、核攻撃が応酬される展開となり、そのまま東アジアを巻き込む第三次世界大戦になる。その可能性が高くなった。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。