2026年6月8日月曜日

「戦争国家」の実相 虚構の「継戦能力」軍事の備えだけ/農業こそ安全保障

 しんぶん赤旗に掲題の2つの記事が載りました。
 1番目の記事では、「台湾有事」を念頭に中国との戦闘で日本の国土が長期間戦場になることを想定した安保3文書の改定に向けた自民党の提言案が、「少なくとも年単位の戦闘を前提に、十分な備蓄の積み増しを進める」として「継戦能力」の強化を強調しますが、備蓄の中身はひたすら自衛隊の戦闘能力に関わるものばかりで、国民の食料やエネルギーなどの確保についての具体策はありません。
 いざ戦争になれば、自衛隊は戦い続けることができても、国民は飢えてしまうという、国民の命に無責任な自民党政治の正体があらわになっています。
 2番目の記事は、鈴木宣弘東大大学院教授が 食糧自給率・資材・エネルギーの観点から、日本の「継戦能力」はごく僅かであることを明らかにしました。高市政権は自らのレベルの低さを自覚すべきです。そして国の経済を破綻させる「戦争志向」は即刻やめて、近隣諸国との友好を深めることで国を守るという憲法9条の精神に立ち返るべきです。
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「戦争国家」の実相 自民 虚構の「継戦能力」弾薬など軍事の備えだけ
 食料・エネルギー後回し
                        しんぶん赤旗 2026年6月5日
少なくとも年単位の戦闘を前提に、十分な備蓄の積み増しを進める―。「戦争国家づくり」の指針・安保3文書の改定に向けた自民党の提言案は、「台湾有事」を念頭に、中国との戦闘で日本の国土が長期間戦場になることを想定し、長期に戦い続けるための「継戦能力」の強化が重要だとしています。ところが、備えの中身は弾薬など自衛隊の戦闘能力に関わるものばかりで、国民の食料やエネルギーなどの確保についての具体策はありません。
 いざ戦争になれば、自衛隊は戦い続けることができても、国民は飢えてしまう―国民の命に無責任な自民党政治の正体があらわになっています。

 提言案は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略から4年が経過し、あらゆる種類の装備と弾薬が大量に消費されているとして「継戦能力」の重要性を強調。 ▽平素から弾薬・部品・燃料・食料などの十分な備蓄や保管体制の整備 ▽部隊や物資を運ぶ船舶など輸送力の強化 ▽負傷した隊員のための医薬品や病床の確保・備蓄―などを挙げています。
 一方、輸入物資を運ぶ船舶の多くは中国の勢力圏とされる第1列島線など台湾周辺の海域を航行しており、戦争で海域が封鎖されれば、輸入物資の多くが途絶える危険があることは誰の目にも明らかです。従って「年単位」の戦争を想定するなら、自給率が38%まで落ち込んでいる食料をどう確保するのかは当然問われなければなりません。
 ところが、提言案には食料自給率への言及は一切ありません。そればかりか、政府の有識者会議や防衛省内の会議でも食料自給率に関する検討は全く行われていないのです。
 そもそもウクライナは、自国民に食料を供給してもあまりある100%超の自給率を誇り、戦時下の24年でも、約100カ国の計4億人あまりを養うのに十分な小麦やトウモロコシなどの農産物を輸出(日本貿易振興機構=JETRO調査)しています。
 さらに日本は、エネルギーの原材料となる1次エネルギーの約80%を石油や石炭などの輸入に依存し、24年度のエネルギー自給率は約16・4%と経済協力開発機構(OECD)38カ国中37位で最低レベルです。24年度時点で原油の95%を中東に依存しており、戦闘開始で台湾周辺や南シナ海などが封鎖されれば、現在の輸入航行ルートの多くが輸送困難な状況に陥ってしまいます。
 そうなれば、大量の燃料を消費する戦闘機などの運用にも影響が出ることは確実です。政府・自民党が掲げる「継戦能力」は空虚です












「戦争国家」の実相 長期に「継戦」は的外れ 農業こそ安全保障
食糧自給率・資材・エネルギー・・具体策は欠落 
                        しんぶん赤旗 2026年6月5日
 安保3文書の改定に向けた政府・自民党の議論では、長期戦を前提とする「継戦能力」の強化のためとして、自衛隊の戦闘能力の維持ばかりを盛り込む一方い国民の食料やエネルギーの確保などへの具体策は欠落しています。この問題について、食料安全保障の専門家で東京大学大学院特任教授の鈴本官弘さんに聞きました。        (石橋さくら)

東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘さんに聞く
    すずき・のぷひろ 1958年生まれ。農林水産省勤務、九州人教授などを経て、
     東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授。『世界で最初に飢えるのは日本』
     『農業消滅』『令和の米騒動 食糧敗戦はなぜ起きたか?』など著書多数。

 自民党の提言案には肝心の食料確保のための予算の計上など具体策を一切明記していません。そもそも人間は食べ物がなければ生きていけません。弾薬などの準備ばかりの継戦能力の議論自体が的外れです。政府は3月、武力攻撃を受けた際に各市町村の全人口が避難できる施設(シェルタ2030年までにつくることを掲げましたが、食べ物がなければそのまま飢え死にし、シェルターは墓場になるだけです。

輸入依存大きく
 高市早苗政権はミサイルを大量購入し、全国各地に配備を進めるなどして、中国を挑発しています。しかし、米国などによる攻撃の報復としてイランがホルムズ海峡を封鎖したように、戦争になれば中国は台湾海峡にとどまらず、他の周辺海峡なども封鎖し、日本向けの輸送ルートを断とうとしてくるはずです。そうなれば深刻な食料不足に陥り、軍事攻撃を受けなくても、日本は果たして何カ月持ちこたえられるかという状況になります。輸入に極端に依存している時点で長期に戦い続けることなど不可能で、「継戦能力」の議論自体が、戦争にならないための平和外交など本来行うべき議論から逸脱したものだと思います。
 食料そのものだけでなく、日本は食料生産のための資材も輸入頼みで、農産物の収極量を増やすために必要な化学肥料の自給率は、ほぼ0%です。実際に肥料のリンなどは中国からの輸入に大きく依存しているのが実態です。
 世界に流通する窒素系肥料の尿素の約4割が中東産ですが、現在の中東情勢を受けて尿素が不足しています。日本政府は輸入する尿素の大半をマレーシア産とすることで問題はないかのように説明しています。しかし、中東産尿素の代替としてマレーシア産への需要が高まっており、すでに価格も上昇しています。実際に先月、全国農業協同組合連合会(JA全)は6~10月に販売する輸入尿素を昨年11%値上げすると発表しました。今後さらなる値上がりが予想され、農家などに大打撃となることは必至です。
 肥料がなければ収穫量は半減するため、輸入が途絶えれば実質自給率は38%から22%に下がります。また野菜だけで見ると自給率は80%ですが、野菜の種の自給率は10%ほどしかなく、種がなければ野菜自給率は8%にしかなりません。野菜と同様に米などの種の自給率も低下していくと仮定すると、実質的な食料自給率は38%からわずか92%にまで低下してしまいます。
 さらに、原油などのエネルギー自給率は15%ほどで、これも加えて換算すると92%からさらに低下し、自給率数%が現実妹を帯びてきています。実際に、イラン情勢による原油高で農機具やビニールハウスの暖房が稼働できず、土を覆うための原油由来のマルチフィルムが入手できないなどの声が農業現場から上がっています。原油高がこのまま深刻化すれば、もう作物を「作ることさえできない」という最悪の状況が目の前に迫っていると言えます。

備蓄米1.5カ月分
 有事の備えとして政府が保管する米の備蓄の水準100トンとしていますが、全国民が1・5ヵ月分食べられるにしかならず全く足りません。しかも、需要の減少を前提にした政府による「減反」政策を背景に米不足に陥った24年の「米騒動」を受け、25年に政府が備蓄米を放出したこともあり、現在の政府備蓄米はわずか約32万トンと実質15日間の供給分しかありません。これは戦争や大災害などで物資の輸入が止まれば、国民が何日餓死せず生き延びられるのかという恐るべき状況です。一方、中国は有事に備え、人口約14億人1・5年分の穀物を備蓄しているとされています。
 政府の財政制度審議会は、政府が保管するのではなく「民間備蓄」を活用した場合、年間403億円の経費を16億円程度に節減できるなどと試算し、政府に民間備蓄の導入を求めてきました。これに応じて政府が今国会に提出した食糧法改定案では、米の備蓄制度を見直し、部を民間に備蓄させる制度の創設を盛り込んでいます。しかしこれは単に政府の備蓄経費の節約を優先したもので、「国民の命を守る」ための理論に立ったものではありません。また、民間業者が一定量の備蓄米を常時確保できるとは限らず、政府が本来、国民への責任として行うべき米の備蓄を民間に押しつけるものです。

食料守る「国防」
 今政府がやるべきことは、いかなる事態においても食料不足の危機に陥らないために農業予算を大幅に増やすことです。米の増産政策に踏みだし、政府備蓄米の量を国民に1年分供給できる700トンの水準まで増やすべきです。増産による米価値下がりに対しては所得補償によって農家を守り、消費者側も安いお米を購入できます。これは安全保障のコストです。
 政府はばく大な軍事予算で武器を大量購入していますが、武器が命を奪う一方で、命を守るのが食料です。政府が「国防」を掲げるなら、食料を生み出す農業を守ることこそ真の「国防」です。政府はこの安全保障の意味を理解する必要があると思います。