日刊ゲンダイに「天下の逆襲」のコーナー(2週間毎に更新)を持っている金子勝 慶大名誉教授が掲題の記事を載せました。
高市首相は昨秋の就任会見で「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を」と宣言したものの、先月22日の日米首脳会談と国連総会出席、24日の米中首脳会談を見る限り、「世界の真ん中で孤立する日本外交」になってしまったと断じます。
高市首相は9月22日に日米首脳会談を行い日米間の結束を確認し、その後国連総会で演説をしました。高市氏は日米首脳会談で日米同盟の結束を誇示することで、24日の米中会談に臨む中国を牽制したかったようなのですが、上手く行きませんでした。
国連演説では最後のところで「旧敵国条項」の削除に言及しました。しかし24日の米中会談では、まずトランプが中国を「第2次大戦中の同盟国」だったと持ち上げると、習主席は日本を念頭に「米中は肩を並べてファシストと戦って勝利した」とそれに同調したことで、高市首相は完全にハシゴを外された形になりました。
金子氏は、高市氏の言動が外交をまったく考えず、岩盤支持層の受けを狙った内向き発言だったことが米中の「虎の尾」を踏む結果になったものの、問題は高市自身がそうした言動の本質に気付いていないフシがあることだと指摘します。
また現在日中関係が冷え切っている理由は、高市氏が昨年11月、安易に「台湾有事」は「存立危機事態」だと発言して中国を激怒させたのですが、やはり岩盤支持層から「弱腰」批判されることを恐れて発言を撤回できずに今の窮状に至ったと批判します。
そして象徴的なのは経済政策で、インフレなのに積極財政に突っ込んでいき、円や国債が下落。円安防止のために為替介入をしたものの、なんと27兆円分もの米国債を事実上売ったのでした。それが米国の長期金利が急上昇(国債価格は下落)した原因の1つになり、トランプの「虎の尾」を踏んでいるのですが、そのこと気付いていないと指摘します。
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金子勝の「天下の逆襲」米中の「虎の尾」を踏んでいることに気付かない高市首相の愚
日刊ゲンダイ 2026/10/06
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
高市首相は昨秋の就任会見で「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を」と宣言した。だが、先月22日の日米首脳会談と国連総会出席、24日の米中首脳会談を見る限り、「世界の真ん中で孤立する日本外交」になってしまった。
高市は国連総会の演説で、第2次世界大戦の敗戦国を対象とした国連憲章の「旧敵国条項」の削除に言及した。ところが、2日後の米中首脳会談で、トランプ大統領は中国を「第2次大戦中の同盟国」だったと言い、習近平国家主席は日本を念頭に「米中はファシストと肩を並べて戦って勝利した」と同調した。高市首相は完全にハシゴを外された。
なぜこんな事態になったのか。それは、高市の言動が外交をまったく考えず、ネトウヨ化する自民党員たちの受けを狙った内向き発言だったからだ。それが米中の「虎の尾」を踏む結果になっている。問題は、そうした言動の本質に高市自身が気付いていないフシがあることだ。
なぜ中国が怒るかといえば、従来の日本の政府見解の枠を飛び越えた高市の「台湾有事」発言が原因だ。安倍元首相でさえ言わなかった「存立危機事態」に言及したのだから、中国は黙認できるはずもない。高市は「弱腰」批判を恐れて発言を撤回できず、今に至ったわけだ。
一方でトランプには抱きつき、米海軍空母の艦上でピョンピョンと跳びはね、「ノーベル平和賞に推薦する」とおべんちゃらを垂れた。「強固な日米同盟」を強調すれば、国内向けのアピールになると思っているのだろうが、完全に間違っている。
象徴的なのは経済政策だ。インフレなのに積極財政に突っ込んでいき、円や国債が下落。円安防止のために為替介入をしたが、外為特会の外貨建て資産を見ると、なんと27兆円分もの米国債を事実上、売ってしまっている。目下、米国の長期金利は急上昇(国債価格は下落)。その原因の1つをつくったわけだ。
米国はイラン戦争で財政が危機的な状況。金利上昇で「AIバブル」がはじけかねないため、国債価格の下落を嫌がっている。ベッセント財務長官も怒り、高市政権に積極財政をやめるよう公然と批判した。なのに、高市は内向けにインフレ増税頼みの積極財政を続けている。
要するに、トランプの虎の尾を踏んでいることに気付いていない。経済政策に暗いから、内向きのアピールを優先し、自らの間違いを認められないのだ。もはや喜劇である。問題に気付いている官僚もいるはずだが「物言えば唇寒し」でダンマリだろう。こういう国は滅びるしかないが、国民の6割が内閣を支持しているというのだから、みな“自殺願望”に陥っているのだろうか。
金子勝 慶大名誉教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。