海外記事を紹介する耕助のブログに掲題の記事が載りました。
ペルシャ湾の封鎖は米国の石油・ガス産業にとって追い風となり、米国の化石燃料の輸出量は過去最高を記録しています。米国はその部分で限定的に勝利したとも言えますが、その米国でもエネルギーを自給自足できてはいません。
世界各国の政府にとってこの危機に対する長期的な解決策はできるだけ早く化石燃料からの脱却を図ることで、いまや世界中の政府は、どの国からであっても化石燃料輸入への依存は国家および経済の安全保障にとって重大なリスクであると結論づけるに至りました。
国の長期的な解決策は、クリーンテクノロジー、再生可能エネルギーを通じて経済を電化させて、化石燃料からの脱却を図ることです。しかし太陽光や風力発電の技術、材料、専門知識においては中国が独占的な地位を占めているので、今度はそれへの依存関係に移ることを意味します。
重要な技術を迅速かつ大規模に構築・輸出できるのは中国だけで、それに対する代替案はほとんどないため、米国と緊密な同盟関係にある国々でさえ今や中国に依存するしかありません。現実にNATO加盟国のドイツ、スペイン、英国、フィンランド、アイルランドでさえ北京へ行きました。いまや中国の「過剰生産能力」こそが彼らを救う唯一の手段だと思っているということです。
注.文中の太字強調個所は原文に拠っています。スペースの関係で文中の5つのグラフは省略しました。ご覧になりたい方は、下記のタイトルをクリックすると原文にジャンプします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イラン戦争は新たなエネルギー供給競争の幕を開ける
耕助のブログNo. 2895 2026年5月9日
Iran War kicks off new energy supply race
石油超大型タンカーを満載する米国 対 クリーンテックを輸出する中国
Inside China Business
ペルシャ湾の封鎖は米国の石油・ガス産業にとって追い風となり、米国の化石燃料の輸出量は過去最高を記録している。世界中の政府は、それがどの国からであっても化石燃料輸入への依存は国家および経済の安全保障にとって重大なリスクであると結論づけている。国の長期的な解決策は、クリーンテクノロジー、再生可能エネルギー、原子力を通じて経済を電化させ、化石燃料からの脱却を図ることだ。しかしそれはある依存関係が別の依存関係に移ることを意味する。なぜなら、太陽光や風力発電の技術、材料、専門知識においては、中国が独占的な地位を占めているからだ。代替案がほとんどないため、米国と緊密な同盟関係にある国々でさえ今や中国に目を向けている。重要な技術を迅速かつ大規模に構築・輸出できるのは中国だけなのだ。
電化と化石燃料との間で新たなエネルギー競争が進行中である。中国は再生可能エネルギーによる発電技術およびハードウェアの世界的な主要生産国・輸出国であり、一方でペルシャ湾岸諸国と北米は原油やその他の化石燃料の主要な供給国・輸出国となっている。
イランとの戦争が始まる前、中国からのクリーンエネルギー技術の輸出は徐々に市場を席巻しつつあった。昨年8月、その輸出額は200億ドル(⇒約3兆1000億円)に達し、過去最高を記録した。2025年のデータは7月までのものだが、年初から7ヶ月間で、中国のクリーンエネルギー技術の輸出額は1,200億ドル(⇒約18兆6000億円)に達し、さらに8月分として200億ドルが加わった。一方米国は7月までの時点で800億ドル(⇒約12兆4000億円)相当の石油・ガスを輸出した。さらに、中国からの輸出は急増していた一方で、太陽光発電の単価は低下していた。太陽光発電設備やパネルの価格は下落しているのである。
わずか10ヶ月後の今日、状況は一変した。ホルムズ海峡の封鎖により原油価格は急騰した。そのため、通常ならペルシャ湾で給油するはずの石油タンカーが、米国から供給を受けるために地球の反対側まで航行している。今月、70隻以上の超大型タンカーがルイジアナ州やテキサス州の港へ向かっている。このため米国の原油輸出量は過去最高を更新する見込みだ。トランプは、ホルムズ海峡を封鎖するイランに対し、米海軍が封鎖を敷いている状況は米国の石油・ガス産業にとって絶好の機会であると述べている。さらに、米国の一般家庭も燃料費の負担が大幅に増えているため、その重要性は一層高まっている。
タンカーの迂回によって理論上イランから中国への日量200万バレルの輸出が遮断されることになり、それだけでも世界的な価格上昇を招くだろう。さらに、世界の石油・LNGの日量需要の20%がイランの封鎖によって足止めされているため、これらすべての需要を他の場所から賄わなければならない。
昨年、平均して月27隻の超大型タンカーが米国の港から原油を購入していた。現在、70隻の超大型原油タンカーが航行中である。これは4月の輸出量が1日あたり500万バレルに達し、5月にも過去最高を更新することを意味する。昨年の米国の輸出量は1日あたり400万バレルだったので数量ベースで25%の増加だ。また、これらの輸出は現在、1バレルあたりの価格がはるかに高くなっている。精製製品の輸出も、ガソリン、ジェット燃料、ディーゼル燃料合わせて300万バレルから増加する見込みだ。
世界でエネルギー自給自足できている国はごくわずかで、米国はその中には含まれていないことを改めて認識しておくべきだろう。昨年、米国は1日あたり620万バレルの原油を輸入した。主にメキシコとカナダからの輸入である。これは北米の製油業界の甘質原油や重質原油を処理する仕組みによる。
ここでの2つの重要な点は、輸出が急増して1日あたり500万バレルという記録を更新しているにもかかわらず、その量は依然として米国の原油輸入量を下回っており、価格も上昇しているということだ。ジェット燃料やディーゼル燃料の市場も、米国国内でさえ供給不足に陥っており、トラック運送会社は、走行速度を落として配送時間を延ばすか、あるいは車両を完全に停車させることで対応している。航空会社は運賃を引き上げ、運航を停止しており、トランプ政権はすでにジェット燃料の不足を理由にスピリット航空への救済措置を約束している。
米国の原油生産量は1日あたり約1,300万バレルだが、その大半はすでに契約済みである。また、油田での増産分も、すでにフル稼働状態でこれ以上積み込みも加速もできない港湾でボトルネックに直面している。そのため、米国やその他の産油国を含め、あらゆる場所で価格が上昇している。これは世界市場であり、世界全体として供給が不足しているのだ。
世界各国の政府にとってこの危機に対する長期的な解決策は、できるだけ早く化石燃料からの脱却を図ることである。しかし、そこにある明白な問題は、単に一つの依存関係を別の依存関係に置き換えているに過ぎないという点だ。欧州連合(EU)では、政策立案者たちがエネルギーの供給網をロシアからペルシャ湾岸諸国へとシフトさせたが、今では全く入手できなくなった。
彼らは今、自国の産業経済や現代的な生活様式が、他国からの化石燃料に依存しているため、完全に他者の手に委ねられていることに気がついた。アジア諸国も同様の問題に直面している。ウクライナ戦争には全く関与していなかったが、エネルギーショックは実質的に世界的なものであり、インフレ率を押し上げた:
イラン戦争の余波はさらに深刻である。しかし、ウクライナ戦争後の高騰した価格に対し、パキスタンとバングラデシュの2カ国がどのように対応したかを振り返ってみよう。パキスタンは「ソーラー革命」を起こした一方、バングラデシュはカタールから液化天然ガス(LNG)を輸入する契約を結んだ。しかし現在、カタールからの輸送は滞っている。カタールは戦争を理由に契約を無効と宣言し、バングラデシュはスポット市場でLNGを購入せざるを得なくなり、価格は2ヶ月前の2倍になった。彼らは「エネルギー情勢を安定させる」ために労働時間と公共支出を削減している。バングラデシュのサプライチェーンは米国とイスラエルによるイランへの戦争によって崩壊してしまったからだ。
パキスタンのほうはこれとくらべて良好である。同国での「ソーラー革命」は開始から3年にも満たないが、パキスタンは輸入化石燃料への依存度を3分の1から4分の1に削減した。パキスタンはスポット市場で天然ガスを購入する必要がなく、燃料価格の変動や供給途絶から経済をいかにして守るかという点において模範的な事例となっている。これはわずか4年間での変化である。輸入・国内の化石燃料が大幅に減少する一方で、再生可能エネルギーはエネルギー構成の約17%に増え、水力・原子力と合わせるとパキスタンのエネルギー需要の半分以上を賄っている:
これらはすべて、パキスタンと中国の緊密なパートナーシップによって可能となった。2024年、パキスタンは中国から16ギガワット(GW)の太陽光パネルを購入した。これは2023年の5GW未満から大幅に増加した数値である。昨年半ばまでに、太陽光パネルの累計輸入量は36GWに達し、これはパキスタンの総発電量の4分の3に相当する。その大部分は屋根設置型および小規模太陽光発電によるものである。石炭もエネルギーミックスに加わり、中国製リチウム電池の大量輸入により蓄電が可能となった。パキスタンの多くの家庭にとって、これは途切れることのない電力を享受できるようになった初めての経験である。国家レベルでは、大規模な風力・太陽光発電プロジェクトが建設された。
これらすべては、ロシアからエネルギーを購入できず、イランや米国の海軍を突破して物資を輸送できず、ヒューストンから超大型タンカーが戻ってくるのを待っている他の政府にとって、非常に魅力的な事例となっている。クリーンで自国産のエネルギー源は、長期的には明らかな解決策だ。しかし、中国への依存という問題は避けられない。技術と資材を大規模かつ迅速に供給できるのは、中国だけだからだ。
太陽光発電設備における中国の世界シェアは、世界の他の国々をすべて合わせたものよりもはるかに大きい。青い棒グラフは2024年、緑の棒グラフは国際エネルギー機関(IEA)による2030年の予測である。モジュール、太陽電池、ウェハー、ポリシリコン――現在も将来も、これら全体の4分の3以上を中国が供給することになる。総生産量では90%を超える:
風力発電や、タービンに使用されるレアアース磁石に関しても中国から逃れる術はない。このグラフは2024年時点の磁石生産量を示しており、オレンジ色が中国、青色が中国以外の国々である:
パキスタンと中国はクリーンエネルギー分野で提携しており、その結果、アジアにおいて新たな海外供給元を慌てて探し回らずに済んでいる数少ない国々の2つとなっている。中国はスペインにも多額の投資を行っており、スペインはEU内の他国と比較して、エネルギー危機の影響を受けにくい状況にある。スペインの太陽光発電産業は欧州で2番目の規模を誇るが、3月単月だけで、中国の太陽光発電設備の輸出量はスペインの太陽光発電の総設置容量に匹敵した。
EU全体では、わずか6週間でエネルギー輸入コストが220億ユーロ(⇒約4兆500億円)も急増した。イラン情勢は、誰もが制御不能なリスクにさらされていることを改めて思い知らしめた。だからNATO加盟国でさえ北京へ行ったのだ。ドイツ、スペイン、英国、フィンランド、アイルランドだ:
これも大きな変化だ。つい最近まで、EUの当局者が中国を訪れ、中国は生産能力が過剰だと言っていたではないか。今や彼らは自国に戻り、中国の「過剰生産能力」こそが彼らを救う唯一の手段だと思っている。
参考資料とリンク:(大変な分量なので省略します)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。