植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
秋の衆院選では自公が過半数を大きく割り込むという、民主党政権を誕生させた12年の衆院選以来の地殻変動が起きましたが、非自公が一枚岩でないばかりか自民以上に混迷を深めていることから、自公政権を退場させる展開にはなりませんでした。
ウクライナ戦争で明らかになったのは1950年頃に締結されたNATO加盟諸国が米国に牛耳られている姿で、主要国の独仏でも経済的困窮から政情不安が高まり、ドイツの脱退が懸念される有様です。
しかし対米従属では日本の方がより顕著で、米国による占領時代の体制がいまもなお「日米地位協定」や「日米安保条約」によって維持されています(1952年体制)。
植草氏は「25年は敗戦から80年を迎えるが日本は米軍占領下に置かれ続けている。日本政治変革最大テーマは『日本の独立』。米国が支配する日本から脱却することができるのかが問われる」と述べます。
そして「(野田佳彦氏の)立民と(前原誠司氏の)維新の接近もささやかれる」が、「立民と維新が組むならいまの自公と大差がない。最大の共通点は対米隷属を続けること。どちらに転んでも対米隷属だけは変わらない政治体制が築かれてしまう。この最悪の方向に事態が進行しているように見える」と警告しています。
併せて植草氏の記事「理念が歪んでいる日本財政」を紹介します。
こちらは財務省(政府)が本予算とは別に編成した補正予算(20年~23年に合計154兆円を計上)のうちの19兆円が、「政策投資銀行や政策金融公庫などの財務省天下り政府系金融機関への資金贈与」(自分たちの天下り先への法外な金の流し込み)であったことを分かりやすく説明しています。これは解説してもらわないと普通は気がつきません。
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日本政治刷新実現の条件
植草一秀の「知られざる真実」 2024年12月10日
2025年に日本政治がいかなる変革を実現するか。
大山鳴動して鼠一匹にならぬようにするには何が必要か。
2024年に大きな地殻変動はあった。しかし、この地殻変動が新しい日本政治を誕生させるのか、単なる地殻の地響きだけで終わってしまうのか。予断を許さない。
自公が過半数を大きく割り込んだ。自民激減の主因は旧安倍派の激減。モリ・カケ・サクラの不祥事が続いた。アベノミクスは掛け声は大きかったが日本経済は浮上しなかった。
経済の停滞が持続するなかで大企業利益が拡大する一方で労働者実質所得が激減した。
「成長戦略」とは「大企業利益の成長戦略」、「労働者不利益の成長戦略」だった。
日本円暴落は日本が外国資本に乗っ取られるリスクを確実に高めている。
惨憺たる現状をもたらした主軸が自民党安倍派だった。その安倍派の特徴は統一協会との癒着と裏金にあった。
悪事が白日の下に晒され、自公が衆院過半数を大幅に下回った。これが2024年に生じた政治の地殻変動。
自公に対峙する勢力が一枚岩の結束を示したなら政治刷新は2024年に実現したはず。
しかし、非自公が自民以上に混迷を深めている。
非自公新政権樹立より自公利権政治に参画しようとする勢力が目立つ。
これでは政権の変革が生じても本質は変わらない。利権まみれの薄汚れた政治が持続する。
根本に流れる日本政治最大の課題は「日本の独立」。1952年に見かけ上の独立を果たしたが内実は異なる。日本は米国に懇願し、米軍の日本駐留を求め、沖縄を含む南西諸島を切り棄てた。米軍は超越的な特権を保持して現在に至る。
1952年体制構築を主導したのは昭和天皇だった。日本国憲法施行で天皇の政治権能は失われたはずだったが、実態として1952年体制構築を主導したのは昭和天皇だった。
結果として日本は米国の半植民地に移行。
25年は敗戦から80年を迎えるが日本は米軍占領下に置かれ続けている。
日本政治変革最大テーマは「日本の独立」。米国が支配する日本から脱却することができるのかが問われる。
本年10月総選挙で自公が過半数割れに転落。非自公が結束すれば新政権を樹立できた。
しかし、国民民主がいち早く自公にすり寄り、自公は少数与党政権を樹立。
国民民主は自公政権に加わりたいのだろう。立憲民主は政権樹立に向けての動きを示さなかった。維新は党内騒動で政権協議を行える情勢になかった。
結局、地殻が変動しただけで元の自公政治が続いている。
自公は与党での過半数確保に向けて水面下の動きを強める。野党議員が一本釣りされる。
かつて野中広務が「釣り堀屋のおやじ」と呼ばれたことがある。
立民、維新、国民から自民に移籍する意向のありそうな人物に個別接触が行われているだろう。
他方、立民と維新の接近もささやかれる。立民党首は野田佳彦。維新共同代表に前原誠司が就いた。
自民不人気の継続を見込むなら自民に接近するよりも非自公での結託が次の選挙に有利に働く。
こんな読みが働いているかも知れない。
しかし、立民と維新が組むならいまの自公と大差がない。最大の共通点は対米隷属を続けること。どちらに転んでも対米隷属だけは変わらない政治体制が築かれてしまう。
この最悪の方向に事態が進行しているように見える。
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理念が歪んでいる日本財政
植草一秀の「知られざる真実」 2024年12月 9日
日本財政の本当の問題は財政資金の配分にある。血税の使い方がおかしいのだ。
「財政規律」という言葉が使われるが、使い方が間違っている。
政府や与党が「財政規律」を口にするとき、主張の帰結は「増税」か「歳出削減」だ。
「歳出削減」で真っ先に来るのが社会保障支出。社会保障支出を削るか社会保険料負担引き上げが提案される。
財政運営を徹底的に切り詰めて実行しているなら理解もできる。しかし、現実は違う。
一番わかりやすい例を示そう。
国の財政支出を包括的に知ることができるのは「一般会計・特別会計歳出純計」国の歳出全体像を知ることができる。
2024年度の数値を示す。全体は259兆円。
大きいのは社会保障支出102兆円と国債費89兆円。国と地方を合わせた社会保障給付は138兆円で80兆円は保険料収入で賄う。公費負担は55兆円で国が38兆円、地方が17兆円。
国の社会保障支出102兆円のうち公費で賄っているのが38兆円、保険料が65兆円だ。
国債費が大きいのは満期が到来した国債の償還費が計上されているため。
償還財源の大半は借り換え国債発行で賄っている。
これ以外の支出では地方交付税交付金が22兆円、財政投融資が11兆円。
国の政策支出から社会保障支出を除いたのが「その他」で34兆円。
このうち、防衛費が7.9兆円、予備費が1.6兆円。
両者を除くと24.5兆円になる。ここにすべての政策支出が含まれる。
この金額は22、23年度が23兆円で24年度が24.5兆円でほとんど変わらない。
一般会計・特別会計歳出純計は259兆円と大きいが、社会保障、防衛以外の政策支出は1年間合計で24兆円程度である。すべての政策支出を24兆円でやりくりしている。
このなかにも存在意義の乏しい無駄な政府支出は含まれているが、予算査定で厳しい折衝は行われている。
問題なのはこれらの本予算とは別に編成される補正予算。
2020年度から23年度までの4年間に合計154兆円の追加支出が補正予算に計上された。
1年平均39兆円。1年間の政府支出を24兆円に収めているなかで1年平均39兆円もの追加支出が計上された。コロナで一気にたがが外れたと言える。
2020年度に補正予算で計上された歳出追加は73兆円。空前絶後だ。
1人10万円の給付が実施されたが、これだけが透明公正な政府支出だった。
この金額が13兆円だが、これ以外の支出は不透明極まりないものだった。
最大の支出は「資金繰り対策」の名目で計上された19兆円。内実は財務省天下り先への「資金贈与」だった。
「出資金」の名目だが、実態は政策投資銀行や政策金融公庫などの財務省天下り政府系金融機関への資金贈与。どさくさに紛れて、自分たちの天下り先に法外な金を流し込んだ。
ワクチン関連に4,7兆円。ワクチン代金は2.4兆円だったが、なんと回数にして8.8億回分だった。ワクチン接種対象人口は1億人強だろう。8.8億回分の算出根拠が不明だ。
接種代金が2.3兆円。病床確保等に6兆円。どさくさに紛れて血税の大争奪戦が展開された。
154兆円の補正予算全体が利権の塊。
この一方で社会保障支出を切り刻み、社会保険料負担の引き上げが熱烈推進されている。
このような歪んだ財政運営のことを「財政規律の欠落」と表現するのが正しい。
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(後 略)