ブログ「世に倦む日々」の掲題の記事を紹介します。
イスラエルに扇動されてトランプが行った対イラン攻撃は 取り敢えず2週間の停戦に入る方向で動きつつあります。
別掲の記事でも述べられたように、「さらなる大規模攻撃を行う」と宣言する一方で、停戦を求めたのはトランプの側であり、それは不用意に始めた戦争が全く意に反した方向に突き進み、今や使える弾薬やミサイルも底をつきかけているのに、戦況の見通しは暗く、このまま戦乱が拡大すれば11月の中間選挙が一層不利になることを自覚しているからです。米国とイランの主張の隔たりは大きく停戦の協議がまとまるか予断を許さないものの、停戦協議が実現した背景を考えれば「破局」に至る確率は高くないと考えられます。
世に倦む日々氏は米国のミサイル在庫量や兵站の実情、政権内部でのトランプの孤立を論じた上で、「米国の威信失墜と信頼低下は日を追う毎に明らかで、それに反比例してイランの正義と信実が人心に説得的に浸透する進行になっている」と述べます。
日本の言論界に関しては、「イラン戦争の解説と言論は、池内恵と篠田英朗がリードしていて、他の追随を許していない。その言論はイデオロギー暴露の契機と内容があり、まさに政治学者の言論が投擲されている。二人の議論がまともで正鵠を射ているので、テレビに登場する親米御用論者やキャスターのコメントがあまりに偏向しているのが好対照でよく分かる」と絶賛します。
そして「イランは明らかに米国よりも法的倫理的に優越した立場にあり、世界の多くの人々から支持と共感を受ける形勢にある。~ この思想状況は、60年前のベトナム戦争のときと様相が同じだ。正義はイランにある」と結びます。
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イランの正義と信実が日毎に明らかに - Xの言論は池内恵と篠田英朗がリード
世に倦む日日 2026年4月6日
イラン戦争は第6週目に入って進行している。4/2、トランプが国民向けに演説する機会があり、戦争の早期終結に向けて何か具体論を述べるのではないかと期待されたが、蓋を開ければ何のメッセージもなく、いつもの自画自賛と汚い脅し文句だけで終わった。拍子抜けだった。トランプ演説で注目された要点は、今後2-3週間の(地上作戦を含む)激しい作戦で、「イランを石器時代に逆戻りさせる」と 予告した結論部分だ。これは1965年のベトナム戦争での北爆開始の際、作戦を指揮したルメイが発した口上であり、その言葉がスピーチライターによって再び意図的に使われている。この演説の直後、テヘラン近郊の完成直前の大型の橋を攻撃して爆破、その映像を公開して「石器時代に戻す」意味をイランと世界に伝えた。この空爆では、救護隊が到着した後に2回目の攻撃が行われ、民間人8人が犠牲になっている。イスラエルがガザ攻撃で繰り返した常套手段であり、残忍で悪辣きわまる戦争犯罪だ。
トランプはイラン全土をガザと同じ廃墟にする気で、4/1 の演説の主眼はその宣告だったのだろう。4/1 時点で英フェアフォード空軍基地に B-52 戦略爆撃機が8機、飛来し配備されたといういう情報がある。拍子抜けだった 4/1 の演説には、実は他に隠された重要な目的があった。それは、直後に報道されたところの、ヘグセスによる陸軍参謀総長ランディ・ジョージと高官2名の粛清であり、トランプによる司法長官ボンディの排除であり、この二つで被るダメージを最小化するため、スピン手段として中身のない「国民向け演説」を設定したのだ。この煙幕政治で逃げなければ、政権の衝撃と蹉跌は深刻なものになっただろう。報道では、女性や黒人の軍高官昇進人事をめぐって対立があったとされていて、イラン地上戦を目前にしてのこの米軍内の揉め事は、派兵戦闘部隊の士気を大いに挫く材料となるはずだ。罷免されたジョージは地上戦に反対していたに違いなく、政権は馘首せざるを得なかったのだろう。
4/1 のトランプ演説以降、世界の景色は大きく変わった。英語が自動翻訳で表示されるようになったXタイムラインでは、「アメリカの敗北」とか「帝国の終焉」とか、そういうフレーズで状況認識を総括する外国人アカウントが散見される環境になった。私もそれに同感で、実際のところ、アメリカの政権と軍と外交は、無謀な戦争に嵌り込んだ失態によって音を立てて崩壊しているように見える。トランプ政権の支持率は2期目で最低の36%となっているが、今後さらに戦争を続けてイラン民間人と米兵の犠牲を多く出し、ガソリン価格を高騰させれば、中間選挙を戦えない地平まで支持率が低落するのは明白だ。ボンディ更迭に続いて、商務長官ラトニックと労働長官チャベスデレマーの交代も秒読みで、さらにFBI長官パテルや報道官レービットまで候補に上がり、閣僚辞任ドミノが続くのではないかと噂されている。そうなれば2期目トランプ政権は総崩れで、議会共和党もトランプを見離す動機に傾くだろう。
外交戦でのアメリカの敗北は、時間が経つほどに顕著になっていて、イラン戦争が終わったときNATOが元通りの体制で機能しているとは想像できない。いわゆる西側諸国は、アメリカに追従してイランを批判しながら海峡への軍艦派遣を忌避する英国・日本と、トランプを批判して自国のエネルギー調達を優先するスペイン・イタリア・フランス・ドイツの二派に分かれる構図となった。4/2、フランスのマクロンは「ホルムズ海峡の武力による開放は非現実的」と主張、「毎日矛盾したことを言うべきではない」とトランプを辛辣に批判した。第5週を通じて、マクロンとトランプとの間で口喧嘩の応酬が演じられ、フランスは明らかに中立の立場に転じた。その影響か、4/2 に戦争開始後初めて、フランスのコンテナ船がイラン側の「安全回廊」を経由してホルムズ海峡を通過した。イタリアのメローニの行動はさらに明確で、4/3 からサウジ・カタール・UAEを訪問し、各国首脳とエネルギー問題で協議している。
マスコミの前でメローニは、「我々の責務は何よりもまず国益を守ること」だと訴え、「今回、我々は意見が違う」と言い切り、中東に向かう米軍機がシチリア島の基地を使用することを拒否した。英国は、40か国を集めてオンライン外相会議を開き、海峡封鎖したイランを非難して制裁措置をちらつかせたが、この動きが実効的な情勢打開に繋がる展望は全くない。単なる外交パフォーマンスに過ぎず、トランプの顔を立て、海峡に艦隻を派遣できない言い訳を必死で演出しているだけだ。ホルムズ海峡をめぐる攻防は、この戦争の外交戦が集約されて演じられているキーのステージである。4/4、オマーン外務省はイランとホルムズ海峡について協議を始めている事実を表明した。今後、イランとオマーンが海峡を共同管理するスキームを作る布石であり、通行の安全を保障する代わりに両国で料金を徴収する案が模索されていると考えられる。イランの自信が示され、海峡へのイラン支配権の既成事実化が進んでいる証左だ。
第5週にかけて、米軍がホルムズ海峡開放の上陸作戦を仕掛ける可能性は、マスコミ報道の論議でも、ネットでの専門家の分析でも、日に日に小さくなっている。海兵隊を載せた強襲揚陸艦が海峡を突破するにはリスクがあり、数千人規模の兵力で島嶼を占領し維持しようとすれば、イラン側の反撃で相当数の死傷兵の犠牲を覚悟しなければならない。そうした困難な上陸作戦が、果たして、酒乱で軽薄な宗教狂者のヘグセスによって有能な陸軍参謀総長が解任され、混乱状態下の米地上軍組織で実施できるのだろうか。補給はどうするのか。何より、派遣部隊の兵員の士気が弱くなっているだろう。トランプとヘグセスが選択できる作戦案は、イランの地下に貯蔵保管された濃縮ウランを特殊部隊で奪取する電撃作戦か、イランの発電所や橋梁等民間インフラを破壊しまくって「石器時代」に戻す野蛮な殲滅作戦か、その二つに絞られつつあり、ホルムズ海峡開放の地上作戦は選択肢から除外されたというのが、この1週間ほどの見方である。
もう一点、注意を惹くべき問題点として、米軍の保有するミサイル在庫が急速に減少し、米軍全体のミサイル戦力に不安が生じ始めている事実がある。3/27 の報道では、イラン戦争の開始以降、米軍は850発のトマホークを使用し、これは保有全体数4000発の2割近くに当たるため、在庫不足を警戒する声が上がっているらしい。4/3 の報道では、2028年3月までに日本に400発納入する計画だったのが、この情勢を受けて納期が微妙になったとある。トマホーク搭載の駆逐艦と潜水艦は、新たにイラン攻撃の任務に就いて出撃した空母打撃群にも配置されているだろうから、今後の作戦展開によってこの850発はさらに増える見込みとなる。他方、戦闘機や爆撃機に搭載して発射する巡航ミサイル JASSM-ER も、1か月間で大量に消費したため、在庫が払底という 4/5 の記事がある。戦争前に2300発あった備蓄は、ほとんどを英フェアフォード基地や米中央軍の(GCCの)基地に移送してしまったため、残りは425発に減ってしまった。
現在の生産水準では補充に数年を要すると悲観されている。JASSM-ER は1発2億4000万円。おそらく工場設備を拡充し量産して、大急ぎで原状水準の回復を図るのだろう。トランプが来年度予算案で国防費を4割増額させ、国防費だけで1.5兆ドル(約239兆円)を要求したのも、無理からぬ事情と言うべきかもしれない。さらに、それに加えて、防空システムすなわち地対空迎撃弾であるパトリオット(PAC3)の方も、この戦争で一気に在庫減少となり、国防総省が頭を抱える危機となっている。3/11 の情報だが、イランのドローンとミサイルを防ぐため、米軍とGCCはPAC3迎撃弾を1000発超消費した可能性が高いとあり、それは年間生産量の2倍で、4年間でウクライナに供与した数量を上回るという。3/11 時点でこの説明だから、現在はどうなっていることか。イランの安価で大量のシャヘド攻撃に対して、高価なPAC3の応戦ではコストが合わず、忽ち在庫が枯渇する。迎撃弾の減少のゆえか、イランのミサイルの命中率が向上する結果となった。
国防兵站局の担当者と責任者は顔面蒼白に違いない。観察するところ、1か月間の戦闘の後半では、イランはドローン攻撃を手控えていて、独自開発の新型弾道ミサイルをイスラエル領内と湾岸諸国の攻撃に集中させている。ウクライナ支援の反撃ドローンの装備や戦術の影響と警戒もあるかもしれないが、おそらく、米軍との地上戦・ホルムズ海峡攻防戦に備えて、至近距離の戦闘で使うドローンを温存し節約しているのだろう。いずれにせよ、攻撃と防御の両方において、アメリカのミサイル戦力は疲弊消耗の度を深め、継戦能力に疑問符が付く内情に至っていると窺えよう。そこから俯瞰した観点に立てば、数年後に控えた台湾有事(日米同盟による対中国戦争)の計画に重大な不具合が生じ、工程表を練り直す必要に迫られたと言えるはずだ。台湾有事の戦争を始める上で、日本側の準備は着々進行で遺漏なく十分だが、アメリカ側の兵站想定に予期せぬ狂いが生じてしまった。当初に予定していた2027年開戦は不可能で、数年後への先送りが余儀なくされる事態となった。
アメリカの威信失墜と信頼低下は日を追う毎に明らかで、それと逆比例する関係性で、イランの正義と信実が日々明らかとなり、人の心に説得的に浸透する進行になっている。信実とは、まじめで偽りがないこと。以前、太宰治の『走れメロス』を批評した際、この言葉に焦点を当てた。現在の日常空間で失われ、日本人の辞書から消えている言葉だけれど、古典たるこの小説作品の主題を一語で言い表せば、この熟語を解答欄に書くのが正解で妥当だろう。タイムラインでは、池内恵と篠田英朗が活躍している。チタロの知見と発信にも刮目させられる。イラン戦争の解説と言論は、池内恵と篠田英朗がリードしていて、他の追随を許していない。その言論はイデオロギー暴露の契機と内容があり、まさに政治学者の言論が投擲されている。二人の議論がまともで正鵠を射ているので、テレビに登場する親米御用論者やキャスターのコメントがあまりに偏向しているのが好対照でよく分かる。マスコミ報道がいかに無価値で、単にCIAの工作情報のデリバリー(⇒吐出)でしかない実態が分かる。日本のマスコミは、メローニやマクロンの発言をクローズアップしない。
最後に、戦争には倫理的側面がある。法的正当性の問題に加えて倫理上の正邪と勝敗の問題がある。今、イランは明らかにアメリカよりも法的倫理的に優越した立場にあり、世界の多くの人々から支持と共感を受ける形勢にある。Xを受発信媒体として、判官贔屓の感情がイラン応援の世論を下から醸成し、人々を確信づけていて、マスコミが上から撒いてアメリカを擁護するプロパガンダの効力を阻却し、親米マスコミの報道論調を異端化せしめている。CIAの「認知戦」を任務する御用論者の言説を陳腐化させている。この思想状況は、60年前のベトナム戦争のときと様相が同じだ。正義はイランにある。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。