2026年4月9日木曜日

TACOでもいいから戦争をやめる/サナエ過ぎが国益を毀損する/高市対米隷属外交が招く危機

 植草一秀氏の掲題の3つの記事を紹介します。
1番目の記事)
 トランプはこのまま戦乱拡大に突き進むことが不利であることを自覚して停戦を求めたのであり、むしろ多数の米国民ガソリン価格が急騰した問題に強い関心を注いでいるのが実情です。もしも戦乱拡大すれば米軍兵士の命が奪われる可能性も高まり、11月の中間選挙での大敗を覚悟せざるを得なくなるので、トランプは何とか米国の威信を著しく傷つけない形での撤退を望んでいる筈です、
 植草氏は、国際社会は今回のような大国の暴走を未然に防ぐ体制を再構築する必要に迫られていると指摘します。
2番目の記事)
「サナエすぎ」の意味「非を認めない」、「絶対謝らない」というものです。
 高市氏は昨年11月7日の衆院予算委で、「台湾有事で、戦艦が使われ武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケース」であると、従来の日本政府の考えと異なる見解を示し、「台湾問題は中国の内政問題」としている中国を激怒させました。
 内閣官房長官は「政府としての統一的見解ではない」と認めていませんが、高市氏はいまだにその非を認めず謝りません。それによって現実にレアアース問題で不自由な状況が生れています。
 植草氏は「高市首相は自分の面子ではなく、日本の国益、日本国民の利益を優先して対応するべきだ」と指摘します
3番目の記事)
 これまで日本外交の基軸は「日米友好と日中友好の二本柱」で構築されてきましたが、先に公表された外交青書(案)によると、これまでは「日中関係は日本にとって最も重要な二国間関係のひとつ」としてきましが、「日中友好」の重要性に言及する文言がなくなりました。米国は11月の高市発言の時点で「日本外交の重大な転換だと認定しましが、それを裏付けるものとなりました
 中国は、日本が72年の共同声明、78年の平和友好条約を破棄するのかどうか、日本政府に対して確認作業を進めているということです
 植草氏は「背景にあるのは米国の策謀。米国の策謀に乗って東アジアでの緊張を創作することは、そのまま日本国民の危機を意味する。高市外交を日本の主権者がどう評価し、これをどのように取り扱うのかが問われている」と述べます。
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TACOでもいいから戦争をやめる
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月 8日
やはりTACOだった。
Trump Always Chickens Out. トランプはいつもしり込みして退く。初めからやらなければいい。だが、最後まで撤回しないことがない点は美点ではある。
高市首相は日中外交関係を崩壊させる失言をしたが、いまなお撤回していない。そのための余波が持続する。

米国とイランは交渉していた。2月26日までジュネーブで交渉していた。
協議終了後、仲介役を務めたオマーンのバドル外相は「大きな進展が得られた」との認識を示した。イランのアラグチ外相は、1週間以内にも次回協議が開催される見通しであると示していた。
その直後に米国がイランに軍事侵攻。大規模爆撃を行うとともにイラン最高指導者ハメネイ師と妻を殺害した。明白な国際法違反、国連憲章違反である。

トランプ大統領はイラン民衆が歓喜して蹶起。イランの体制が転換されるとしていた。
しかし、目論見は完全に外れた。イランは徹底抗戦の姿勢を貫き、ホルムズ海峡を封鎖した。
米国は高額な兵器を大量投入したが目的の戦果を挙げられない。
戦乱が長期化すれば米国世論がトランプ大統領に対して米軍撤退の圧力をかけることは明白。
行き詰まったのはトランプ大統領の側である。

米中貿易戦争=トランプ関税も同じ。中国に対して145%の追加関税適用を提示したところ、中国が返す刀で120%の追加関税を提示。さらにレアアース供給拒絶を示した。
白旗を上げたのはトランプ大統領。だから、TACOと言われる。

米国がさらなる大規模攻撃を行うと宣言したタイムリミット寸前で停戦での合意が成立した。
2週間の期限を切っての停戦が実現した。この2週間に協議が行われる。
米国とイランの主張の隔たりは大きい。協議がまとまるか予断を許さないとされる。
しかし、停戦が実現した背景を考察すればカタストロフィ⇒破局)に至る確率は高くないと考えられる。

停戦を求めたのはトランプ大統領の側である。このまま戦乱拡大に突き進むことがトランプ大統領にとって不利であることを自覚している。米国内でイラン軍事侵攻を支持する声は少数である。多数の米国民が米国のイラン軍事侵攻を支持していない。
戦争の影響でガソリン価格が急騰。この問題に米国民が強い関心を注いでいる。

大義のない、国際ルール無視のイラン軍事侵攻。このことにより米国民がガソリン価格高騰の被害を受けている。
戦乱拡大になれば米軍兵士の命が奪われる可能性も高まる。トランプ大統領は11月中間選挙での大敗を覚悟せざるを得なくなる。だから、トランプが撤退を望んでいる

問題は米国の威信を著しく傷つけないかたちでの撤退が可能かどうか。
トランプは「米国の勝利」をアピールするだろう。
実態が米国の敗北でもトランプは強気の言葉を発せられればよしとするだろう。
国際社会は今回のような大国の暴走を未然に防ぐ体制を再構築する必要に迫られている。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4387号
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                 (後 略)
 
 
サナエ過ぎが国益を毀損する
              植草一秀の「知られざる真実」2026年4月7日
昨年11月7日の衆院予算委員会での高市首相。「台湾有事で米軍が来援し、戦艦が使われ、武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケース」と発言した。
この発言がアウトである主因は「どう考えても」にある。「どう考えても」は「いかなるケースを想定しても」ということだから、基本的に「必ず」という意味になる。

台湾有事で米軍が来援したら必ず「存立危機事態」になる。「存立危機事態」は日本が集団的自衛権を行使する要件。この場合、米国とともに日本が自衛権を行使することになる。
米軍と共に中国と戦争をするということになる。だから、中国は強く反応した。当然と言える。

1972年の日中共同声明で日本は「一つの中国」と「台湾の中華人民共和国への返還」を認めた。これを踏まえて大平正芳外相は73年の衆院予算委員会で「台湾と中華人民共和国の対立の問題は基本的に中国の国内問題」と答弁した。

また、日中共同声明、日中平和友好条約で、中国と日本の間のすべての問題を平和的手段で解決し、武力および武力による威嚇に訴えないことを確認した
日本は台湾独立に関する問題に対して、中国の国内問題であるとして対応すること、日本と中国の間の問題を平和的手段で解決することを中国に約束している。

したがって、高市首相が、台湾有事があり、米軍が来援したら、日本は中国と戦争をするとの国会答弁に中国は驚愕した。この発言を米国は日本政府の対応の「重大な転換」と判定した。
高市内閣は11月7日の高市首相発言について、「従来の内閣の立場を踏襲するもの」
との見解と「11月7日の高市発言を政府の統一的見解にするつもりはない」との見解を同時に発した。

つの見解は矛盾する。矛盾は11月7日に高市首相が二つの異なる答弁を示したことに起因している。
国会質疑の前段で高市首相は、台湾有事等が発生したときに、「何が起こったかについての情報を総合的に判断する」と述べた。これは従来の内閣の立場を踏襲するもの。
しかし、後段では上述の「台湾有事で戦艦が使われ武力の行使を伴うなら、どう考えても存立危機事態になり得るケース」と述べた。
この発言は従来の政府の立場を踏襲するものでない。「政府としての統一的見解」に「できない」ものである。
「統一的見解にするつもりはない」のではなく「統一的見解にはできない」というのが実態。

したがって、高市首相は後段の発言を撤回して謝罪する必要がある。日中関係を改善するには、これが必要不可欠。
「サナエすぎ」の意味に「非を認めない」、「絶対謝らない」があるが、非を認めず謝らないことが日本の国益を著しく損なうことになる。
高市首相は自分の面子ではなく、日本の国益、日本国民の利益を優先して対応するべきだ。
 
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4386号
「存立危機事態のパラドクス」 でご高読下さい。
                 (後 略)


高市対米隷属外交が招く危機
               植草一秀の「知られざる真実」2026年4月 6日
4月5日の午後、東京湯島の全国家電会館でISF=独立言論フォーラム主催シンポジウムが開催された。
テーマは「高市政権の超軍拡・大増税路線を問う-改憲と戦争への道を許すな」
      https://isfweb.org/post-71494/
東京新聞・望月衣塑子氏青山学院大学名誉教授・羽場久美子氏前衆議院議員・川内博史氏に加えて私が講演し、その後パネルディスカッションが行われた。
進行はISF編集長の鹿児島大学名誉教授・木村朗氏。

日本はいま重大な岐路に立っている。これまで通り、対米従属・対米隷属を続けるのか。
それとも、日米関係を根幹から見直し、新たな日本の道を確立するのか。
メディアは高市内閣に対する国民支持率が高いと伝えている。しかし、メディアが真実を伝えているとは限らない。

3月末の高市首相訪米に対してもSNS上では極めて強い批判が吹き荒れている。
しかし、テレビメディアは批判の論調が広がることを阻止するように、高市絶賛の発言者を並べ立てて、日米首脳会談をプラスに評価する言説を流布している。
政治権力とメディアが一体化して言論を誘導する姿は戦前の再現であるように見える。
大政翼賛体制が構築されている。

日本外交の基軸は日米同盟であるとされる。
しかし、いま、日本が米国に隷従、追従するなかで、日本の平和と繁栄を維持できるのか。
現在の日本の路線の延長線上に見えてくるものは、米国が創作する戦争に日本が自動的に巻き込まれる姿である。
日本の平和と繁栄は米国によって守られるとされてきたが、それは本当なのか。
日米安全保障条約が米軍による日本防衛を定めているとされるが本当か。

日米安全保障条約第五条の条文は次のもの。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。(後略)
第五条が定めるのは「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」ことであり、米国が日本を防衛するとは定められていない。
米国議会にはバンデンバーグ決議がある。「相互主義」を定めている。
日本の責務以上の米国の責務を果たすことを米国議会が認めない可能性が高い。

日本外交の基軸は日米友好と日中友好の二本柱で構築されてきた。
日米関係は重要だが、同時に日中関係を重視してきた。日中関係は日本にとって「最も重要な二国間関係のひとつ」としてきた。
ところが、昨年11月7日に高市首相は、これまでの日中友好関係を否定する発言を示した。米国は高市首相の国会答弁について日本外交の重大な転換だと認定した。
発言内容は72年の日中共同声明、78年の日中平和友好条約で合意した内容を覆すものだった。この発言により日中関係は過去最大の悪化を示している。

共同声明、平和友好条約において、日本政府は「一つの中国」を承認し、台湾の中華人民共和国への返還を認めた。その結果、台湾と中華人民共和国の対立の問題は中国の内政問題であるとの認定を行った。
ところが、高市首相は台湾有事が発生して米軍が来援する場合、日本は集団的自衛権を行使する方針を述べた。台湾有事があれば日本は中国との戦争状態に入ることを述べたことになる。
中国は、日本が72年の共同声明、78年の平和友好条約を破棄するのかどうか、日本政府に対して確認作業を進めている。
背景にあるのは米国の策謀。米国の策謀に乗って東アジアでの緊張を創作することは、そのまま日本国民の危機を意味する。
高市外交を日本の主権者がどう評価し、これをどのように取り扱うのかが問われている。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4385号
「日本の平和と繁栄を維持する方策」 でご高読下さい。

                 (後 略)