2025年9月1日月曜日

ガザの状況は「ジェノサイド」 国連は明確に表現せよ 

 国連人権高等弁務官事務所の全職員の約4分の1に当たる500人以上が27日、同事務所を率いるターク高等弁務官に宛てて書簡を送り、イスラエルとイスラム組織ハマスによる戦闘が続くパレスチナ・ガザ地区の状況を国連が表現する際に、「ジェノサイド」(集団殺害)と明確に表現するよう要求しました。同事務所は「ジェノサイド行為を非難する法的かつ道徳的な責任を強く負っている」とし、ターク氏に「明確で公的な立場」を取るよう要求し、「現実に起きているジェノサイドを非難しないことは、国連や人権擁護システムそのものの信頼性を掘り崩す」と警鐘を鳴らしました。
 国連特別報告者のフランチェスカ・アルバネーゼ氏も「ジェノサイド」を使ったことがありますが、国連としてはガザの状況を「ジェノサイド」という言葉で表現することはしていません。

 日本ペンクラブ(桐野夏生会長)の言論表現委員会および平和委員会は29日、緊急声明「ガザにおける相次ぐジャーナリスト・医療従事者らの殺害に抗議する」を発表しました。
 日本の文化人や学者でつくる世界平和アピール七人委員会は29日、イスラエルによるパレスチナ・ガザの人々への殺害と飢餓を止めるためにアピールを発表しました。
 両声明の全文を併せて紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガザの状況は「ジェノサイド」 国連は明確に表現せよ 
     人権事務所職員500人以上が書簡
                        しんぶん赤旗 2025年8月30日
 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の職員500人以上が27日、同事務所を率いるターク高等弁務官に宛てて書簡を送り、イスラエルとイスラム組織ハマスによる戦闘が続くパレスチナ・ガザ地区の状況を国連が表現する際に、「ジェノサイド」(集団殺害)と明確に表現するよう要求しました。ロイター通信が書簡を入手しました。
 ロイター通信によると、OHCHR全職員の約4分の1が書簡に名を連ねました
 書簡は、現地で記録されている違反行為の規模、目的、性質に照らすと、ガザ地区でジェノサイドが行われていると認定する法的基準は満たされていると指摘しました。
「OHCHRはジェノサイド行為を非難する法的かつ道徳的な責任を強く負っている」とし、ターク氏に「明確で公的な立場」を取るよう要求。「現実に起きているジェノサイドを非難しないことは、国連や人権擁護システムそのものの信頼性を掘り崩す」と警鐘を鳴らしました。
 ガザ保健当局によると、イスラエルはハマスとの戦闘が始まった202310月以降の軍事侵攻で、これまでに女性や子どもを含む約6万3000人を殺害しました。イスラエルが人道支援物資の搬入を阻止していることで、ガザでは深刻な飢饉(ききん)が広がっています。
 ガザの状況について、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、イスラエルがジェノサイドを行っていると非難してきました。国連特別報告者のフランチェスカ・アルバネーゼ氏も同じ表現を使ったことがあります。しかし国連としてはガザの状況を「ジェノサイド」という言葉で表現することはしていません
 ロイター通信が確認したところによると、ターク氏は職員からの書簡への返答で、「われわれが目撃している恐怖への道徳的な憤り、またこの状況を終わらせることができていない国際社会に対するいら立ちをだれもが共有していることは認識している」と表明しました。

作戦拡大は壊滅的結果に 国連事務総長 イスラエル軍を批判
 グテレス国連事務総長は28日、記者団に対し、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区の中心都市ガザ市の制圧を目指すとしていることについて、「ガザ市での軍事作戦拡大は壊滅的な結果をもたらす」と語りました。ロイター通信が伝えました。
 グテレス氏は、国連主導の人道支援が拒否されてガザ住民が餓死しているのは「基本的な人間性に敵対する意図的な決定の結果だ」とイスラエルを批判。「民間人を飢えさせることは戦争の手段とされてはならない。民間人は保護されねばならない。これ以上の言い訳、妨害、うそはもういらない」と述べました
 ガザ市住民によると、イスラエル軍は同市郊外への砲撃を激化させています。イスラエル軍は28日にはガザ全土で少なくとも16人のパレスチナ人を殺害しました。


ガザへの攻撃 止めよう 各団体が声明
                        しんぶん赤旗 2025年8月30日
日本ペンクラブ」 報道関係者殺害に抗議
 日本ペンクラブ(桐野夏生会長)の言論表現委員会および平和委員会は29日、緊急声明「ガザにおける相次ぐジャーナリスト・医療従事者らの殺害に抗議する」を発表しました。
 10日のイスラエルによるガザ地区への攻撃でアルジャジーラ記者ら6人のジャーナリストが殺害されたことに対し、国際ペンクラブが「犯罪の真実を暴く者たちを沈黙させることを企図した」作戦の一部だとの認識のもと「報道を理由に殺害されたすべての作家とジャーナリストの事件について、迅速かつ独立した透明性のある調査」を国際社会に求めたことへの全面的な支持を表明25日の病院への連続攻撃でジャーナリスト5と医療従事者4人を含む少なくとも20が殺害されたことも踏まえ、「報道の自由、表現の自由を抹殺する」軍事攻撃を強く非難しています。

世界平和七人委員会」 日本政府に行動を要求
 日本の文化人や学者でつくる世界平和アピール七人委員会は29日、イスラエルによるパレスチナ・ガザの人々への殺害と飢餓を止めるためにアピールを発表しました。
 アピールは「この地球上で生きる人間同士として、私たちと同時代に起こっているこのジェノサイドを止めるために何かできるだろうか」と問いかけ、「ひとりひとりの声は小さくても、つながりあって声を強め、世論に訴え、自国の政府に働きかけていくこと」を呼びかけています。
 日本政府に対して、9月4日開催の「サイバーテック東京」がイスラエルの後押しになる批判。パレスチナを国家承認し、「イスラエルが停戦を受け入れるよう国際社会に働きかけること」を求めています
 同委員会は「人道主義と平和主義に立つ不偏不党の有志」の集まりで「国際間の紛争は絶対に武力で解決しないこと」を原則にアピールを発表してきました。
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【声明】
 「ガザにおける相次ぐジャーナリスト・医療従事者らの殺害に抗議する」
                             2025.08.29)
8月25日、パレスチナのガザ地区で、イスラエルによる病院への連続攻撃があり、少なくとも20人が殺害された。死者の中には、民間人多数、ロイター通信など外国報道機関のためにも活動していたジャーナリスト5人が含まれていた。この攻撃では、医療従事者4人も殺害された。最初の攻撃で標的となった人々を救出しようと駆けつけた救助隊員らも、2度目の攻撃で亡くなった。攻撃後、イスラエル軍の広報官は死亡したジャーナリストに対して「PRESSのベストを着たテロリスト」という言葉を発した。

同様の攻撃は10日にも行われ、アルジャジーラ記者ら6人のジャーナリストが殺害された。国際ペンは12日、「ガザ地区のパレスチナ人を抹殺し、その犯罪の真実を暴く者たちを沈黙させることを企図した、イスラエルのジェノサイド的作戦の不可欠な一部だ」との認識を示した上で、「ガザ地区およびパレスチナ占領地全域で、報道を理由に殺害されたすべての作家とジャーナリストの事件について、迅速かつ独立した透明性のある調査」を国際社会に求めていた。

パレスチナの地から距離的には離れていながら事態を注視し、かつ憂慮してきた日本ペンクラブに所属する私たちも、国際ペンのこの要請を全面的に支持するとともに、報道の自由、表現の自由を抹殺するイスラエルによる軍事攻撃を強く非難する。

                               2025年8月29日
                            一般社団 法人日本ペンクラブ
                              言論表現委員会
                              平和委員会


【声明】                             WP7 No.167J
         ガザの人びとの殺害と飢餓を止めるために
             2025 年 8 月29日
             世界平和アピール七人委員会
         大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子

イスラエルの攻撃を受けているガザの人々の状況は悲惨きわまりないものだ。ガザ保健省によると、2023年10月にガザでの戦闘が始まって以降のパレスチナ人の死者数は2025年7月末の段階で6万人を超え、うち子どもが1万8千人以上だという。25年1月にかろうじて戦闘停止に持ち込まれたが、3月には戦闘再開され、それ以降も犠牲者は増大し、1日の死者が100人を超える日も増えている。

さらに国際的な援助団体を排除して、イスラエルが米国の支援を受けて2025年2月に創設し、5月末から活動を本格化させた非政府組織「ガザ人道財団(GHF)」が食糧の供給を行っているがその量がまったく足りるものではなく、国連の専門家らは8月5日に連名で深刻な懸念を表す声明を出している。

ガザ人道財団(GHF)」の活動は「人道」の名にも、支援団体の名にも値するものではない。GHFは、これまでパレスチナ難民支援を担うUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)をはじめとする国連の諸機関が行ってきた支援業務を引き継ぐというが、実際にはイスラエル軍および外国の軍事請負業者が、GHFの「配給拠点」で支援を求める人びとに無差別に発砲し続けてきた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の7月末の報告によると、5月末以降、少なくとも約1400人のパレスチナ人が食料を求めて殺害されたという。とりわけ、女性、子ども、障害者、高齢者など、最も脆弱な状況にある人びとにとっては、支援にアクセスすることが著しく困難になっている。

こうした状況のもとで子どもの飢餓は深刻化し、栄養失調は5人に1人になるという。国連事務総長は8月22日の段階で、すでに飢饉(famine)というべき事態だと国際社会に訴えている。国連安全保障理事会のアメリカを除くすべての理事国は27日、パレスチナのガザ地区での飢饉の発生について共同声明を発表し、「人為的な危機だ」と厳しくイスラエルを非難している。

私たちはガザの人びとのいのちに関わる事態をどこまで知っているだろうか。とりわけ子どもたちの肉体と精神に及ぼす環境の劣悪さを知り得ているだろうか。爆撃・銃弾という恐怖と、飢餓という悲哀で子らを追い詰めた劣悪な状況は深刻だ。そして、イスラエル政府とイスラエル国防軍(IDF)は子どもたちを飢餓に落とし込み、死には至らなくても無力な状態を強い、他地域へ追いやろうとしている。そうしてガザ地域全体をわがものにしようとしている。民族浄化作戦と言わざるをえない。

とくに私たちは、イスラエルの攻撃では、救援にあたる人たちや医療関係者のほか、事実を伝えようとしている数多くのジャーナリストが攻撃されていることに注意を促したい。彼らを狙い撃ちして殺し、世界の人々に事実を隠して、飢餓と殺戮が行われていることは、国際法と人道に照らして許しがたいことである。

この地球上で生きる人間同士として、私たちと同時代に起こっているこのジェノサイドを止めるために何ができるだろうか。ガザの子どもたち、そしてかろうじて生き延びようとしている人たちのために私たちは何ができるか。微力でも考えながら声を発することはできる。ひとりひとりの声は小さくても、つながりあって声を強め、世論に訴え、自国の政府に働きかけていくことはできる。

こうした事態をよくよく承知している日本政府や日本の企業家らが、イスラエルの軍事産業やセキュリティー技術を日本に持ち込むことに積極的な姿勢を示し続けていることは理解に苦しむ。9月4日に開かれる「サイバーテック東京2025」がイスラエルの後押しになることを認めなくてはならない。軍事や安全保障で積極的に協力関係をおし進め、経済的利益を提供しようとしている国に対し、ジェノサイドを止めるよう求めることができるだろうか。
パレスチナに平和が訪れることは、ひいてはイスラエルを含む中東全体の安定につながる。戦争による軍事強国の支配の拡大を許さない方向に世界を向けていくことにも寄与できる。国際社会でそのような方向性を支持する国々は多い。日本の政府もその方向に歩を進めることができるはずだ。それは現代世界の平和に向けた大きな方向づけにもつながるだろう。

ガザの子どもを、そして苦しむガザの人びとを護るための国際的な連携に、日本の政府が積極的に加わることを求めたい。日本政府はパレスチナ国家を承認し、イスラエルが停戦を受け入れるよう国際社会に働きかけることができるはずだ。そのようにして日本の国が世界の平和への歩みを押し進めることを求めよう。