中沢寅一「赤旗」政治部長による「政治考」(不定期掲載)を紹介します。
高市政権は発足してからあまり時間が経たない1月下旬に突如国会を解散し、2月上旬に投開票した総選挙で大勝し、それ以後驚くほどの高支持率を維持して来ました。
しかし高市政権がしたことは、インフレ・高物価の下で逼迫した生活を強いられている国民の救済ではなく、スパイ防止法案や国旗損壊処罰法案、維新のための『副首都』法案などの成立で「国民目線の政治」は皆無でした。
それでメッキが剥げて7月に入ると急速に支持率が下落しました(8月度の支持率調査はNHK以外は中旬以降に実施)。何よりも国民の80%以上が期待している愛子天皇の可能性を潰した、『男系男子』限定を謳った時代遅れの皇室典範改定が決定的でした。
その後、来年4月から2年間限定の食品消費税の1%への減税案を成立させましたが、大きく下落した支持率は全く回復しませんでした。
中沢氏は、「国民生活の立て直しをよそに、軍事産業を成長戦略の中心に位置づけ、軍事強国・戦争国家をめざす方針自体が、自民党・高市政治の末期的行き詰まりを示す」ものにほかならないと見ます。
高市政権は今後再び高支持率を回復することはあり得ないとされています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【政治考】「強い期待」は「期待外れ」に 足許揺らぐ高市政権
しんぶん赤旗 2026年8月14日
2月の総選挙から半年(8日)を過ぎました。高支持率を誇ってきた高市内閣に急変が襲っています。10日のNHK調査では7月から5ポイント減の53%でした。「読売」世論調査(7月24~26日)では6月の69%から12ポイント下落の57%に。「日経」(同前)では6月の68%から10ポイント下落の58%になり、無党派層の不支持が5割を超えています。その前週の「毎日」では51%から10ポイント下落の41%となり、不支持が上回りました。
自民党の閣僚経験者の1人は「予想されたが早い展開だ。円安インフレ(物価高)とこれを加速させるイラン戦争の中で、国民は爪に火をともすような逼迫した生活を強いられている。それに丁寧に寄り添うより、『男系男子』に固執する皇室典範改正や国旗損壊処罰法案、維新のための『副首都』法案に熱を上げた」と語ります。
国民の「マグマ」
「読売」調査では、物価高対策を「評価しない」が前回6月調査から15ポイント増えて71%に。帝国データバンクの調べでは8月の飲食料品の値上げは2311品目に。1~11月の判明分で1万8347品目に達しています。今年上半期の倒産件数は、5346件で東日本大震災後の2014年以来12年ぶりの水準です。
この閣僚経験者は総選挙結果のときは「国民の中に不満のマグマがたまっていた。高市首相は、消費税減税や『責任ある積極財政』のスローガンで、マグマを期待に変えた」と語っていました。それがいま、変わりつつあります。
自民党議員の1人は「強い『期待』は『期待はずれ』へと急速に変わりつつある。物価上昇が支持率を削っている。政府は『賃金の上昇』をいうが大手が中心だ。中小零細に実感は乏しい」と分析。高市内閣は最低賃金1500円の達成期限を、石破内閣の20年代から30年代前半に先送りし、労働法制の規制緩和推進を打ち出しています。
成果見えず悪化
30年にわたり経済成長が止まり、国民の実質賃金が上がらず、そこに異常円安による物価高が襲うなか国民には重税と社会保障削減、大企業には法人税減税という逆立ち税財政で、巨大企業の内部留保は650兆円超に拡大してきました。「不満のマグマ」とは、「失われた30年」といわれる貧困と格差の拡大、長期の経済停滞をもたらした失政への国民の深い失望です。それが24年の総選挙、25年の参院選挙で自民・公明両党を過半数割れに追い込みました。
「赤旗」の裏金連続スクープが怒りに火をつけたことも影響しました。
元閣僚は「2月の総選挙で高市首相は大勝したが、それで24~25年に自公が追い込まれた要因が消えたわけじゃない。政権発足からまもなく1年、選挙から半年、成果が見えないどころか状況は悪化している」と指摘します。
足元揺らぐ高市政権
軍事で「成長」行き詰まり鮮明
高市早苗首相は、「初の女性首相」という人気に加え、目民党初の消費税減税公約に踏み込み、積極財政論で「期待」をつかんだ - しかし、もともと減税財源は不明確な上、論議を「社会保障国民会議」に丸投げし国会論戦を回避。当初6月のとりまとめをめざしましたが、結局8月にずれ込みました。減税は「給付つき税額控除」の実現までの「つなぎ」とされ、実施は来年の4月。2年後には大増税が待ち受けます。
〝骨太ショック″
メディア関係者は「物価高が進めば減税効果は相殺、帳消しだ。国民は来年4月まで待てるのか。財源が不明確で、財政への信頼を低下させ円安を加速し、金利の上昇を招いている。スピード感はなく、政策のちぐはぐさが目立ち失望感を増幅させた。政治は潮目に来た」と語ります。
このなかで高市政権は「成長戦略」として、さらなる異次元のバラマキに踏み出します。7月21日に閣議決定した「骨太方針」では2040年までの15年間で官民合わせて370兆円超の大企業支援投資を行うとしました。半分を政府が支出するとしても毎年10兆円の支出増加です。破綻したトリクルダウンの異次元の規模での継続です。
これに大軍拡計画が加わる-米国が要求する国内総生産(GDP)比3・5%への軍事費増を実行しようとすれば、5年後には年24兆円を超えます。
これらの財源を増税で賄うといえば国民の反発は必至。そこで当面、国債増発で乗り切るとしています。国債増発の方向を示した「骨太方針」原案が示されると、途端に金利は3%に迫る30年ぶりの水準に上昇する一方、円は売られ1ドル=162円という40年ぶりの円安に。まさに「骨太ショック」です。自民党関係者からも「円安インフレは人災だ。高市さんは金のなる木でも持っているのか」との声が漏れます。「責任ある積極財政」の看板は色あせ「無責任な放漫財政」の本質が鮮明に。物価高対策が問われるもとで、円安を強める逆噴射です。
その一方、円安による貿易収支の赤字拡大を嫌う米国には無条件追随し、為替市場ヘの協調介入を実施。支離滅裂の経済対策に、メディア関係者は「ひどい迷走だ。円安推進と円高を同時にやっている」と冷ややかです。
危険な右派連携
経済運営の行き詰まりのなか、高市政権は年末に予定する安保3文書改定や秋の臨時国会での改憲論議の加速を狙います。新たに設置した国家情報会議の「権限」を定める「スパイ防止法」の制定も狙っています。衆院での自民党の圧倒的多数に加え、連立する日本維新の会だけでなく国民民主党や参政党などとの右翼的連携が強まっており、危険な状況は続きます。維新との連携で比例定数削減も引き続き狙っています。
高市首相は6日の広島市内での会見で、「政府としては非核三原則を政策上の方針として堅持している」と述べるにとどめ、「将来も堅持する」との明言を避けました。国会の決議であり「国是」である非核三原則を、政府の判断で変更可能な「政策」におとしめる重大な発言を被爆の日に、しかも被爆地で行ったのです。
重大なことは、高市政権が「骨太方針」の17分野の成長戦略の中で、軍事(防衛)産業をその柱に位置づけ「防衛と経済の好循環」を打ち出していることです。4月に強行した武器輸出の全面解禁と一体に、経済の軍事化にかじを切り、武器の輸出で稼ぐ国になる「成長戦略」です。世界に戦争と軍事的緊張が存在することで稼ぐ「戦争待望国家」というべき堕落の道です。
自民党議員の一人は「(武器輸出は)ごく限られた領域の利益にしかならない。経済成長が行き詰まった挙げ句、防衛に活路を求めるのはどうなのか。財界には、朝鮮特需、ベトナム特需という戦争で稼いだ記憶がある」と述べます。
正面対決を貫く
国民生活の立て直しをよそに、軍事産業を成長戦略の中心に位置づけ、軍事強国・戦争国家をめざす方針自体が、自民党・高市政治の末期的行き詰まりを示すものにほかなりません。求められているのは賃上げ、減税、社会保険充実で国民の購買力を回復することです。
反核・平和・反戦・反改憲のペンライト集会は全国に広がり、9条改憲反対の署名も各地で創意をもって取り組まれています。日本共産党はその行動にともに取り組みながら、党を強く大きくする取り組みの飛躍にも全力をあげいます。10日のNHK調査は支持率で野党第1党となり、高市政権に正面対決を貫く姿勢に注目が集まっています。
(中祖寅一)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。