しんぶん赤旗の掲題の記事を紹介します。
元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんは、記者の質問に応じて、概要 以下のように語りました。
官民ファンドは、リスクが高いプロジェクトでも、官がお金を出すなら安心だと民間からも金が集まるというストーリーですが、官には目利き能力が基本的にはないので、官が入ったから何かより優れた能力が発揮できるということはなく、今まで官民ファンドは一部の例外を除いてほとんど失敗しているということです。
民間にできないが官ができることは何かというと、損してもわが身には実害は及ばないという気楽さから、思いきりよく資金(税金)を使うことだと言います。実際に破たんした後で官が責任を追及されることはありません。
そもそも官には目利きの能力がないので、プロを連れてくるしかありませんが、集まってくるのは責任を取らずに思いきり金を使える魅力を感じて来る自称プロたちで、ほとんどの場合、税金を使った面白いプロジェクトで自分のネームバリューをあげ、(最後までいくと大体失敗するので、)数年したら辞めてしまい、より給料の高いところに移っていくというのが基本パターンだということです。
そうした実態の中で、高市政権は日本成長戦略で17分野で370兆円もの官民投資を推進するとしていますが、最後に「成功」するのは軍事関係のみで、それ以外はあまり成功しないと見られます。
軍事関係において、本来なら失敗のものを「成功」にしてしまえるのは下記の理由からです。ある製品がたとえ性能が悪く値段が高くても、日本製を政府が買うのが安全保障なのだと言って進められるからで、莫大な予算で軍事産業を拡大し成功したという話にされかねません。
それに近い例として、最先端半導体を開発する官民投資のラピダス(トヨタ自動車、ソニーグループ、NTTなどが出資)も基本的には失敗だと思いますが、政府はラピダスにどんどん税金をつぎ込みすでに2500億円を出資し、経産省の来年度概算要求が実れば累計で4000億円になります。
最後はどうするかというと軍事で引き取り成功のような顔をするシナリオで、例えば自衛隊が使うAI(人工知能)は日本製でないと危ないからということで、ラピダスの半導体を使うことも考えられます。こういう形で莫大な金をつぎ込んでいく新しいストーリーができる可能性もあるので、これまでよりさらに危なくなっている気がします。
官ばかりになれば壮大なる予算の無駄が明瞭になり財政赤字が拡大します。その分を削る対象は社会保障で、「改革」の名で制度を見直して社会保障サービスを下げていくことになります。しかしそれだけでは軍拡財源を確保できないから、インフレ政策が続くことになり、国民は物価高と実質賃金の低下でずっと苦しむことになります。
その悲劇は絶対に避けるべきです。
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【2026焦点・論点】官民ファンド「クールジャパン」の破綻
元経産官僚・政治経済評論家 古賀茂明さん
しんぶん赤旗 2026年9月7日
こが・しげあき
1955年、長崎県生まれ。元通商産業省づ(現・経済産業省)官僚。政治経済
評論家。著書に『官僚の責任』『官邸の暴走』『分断と凋落(ちょうらく)の
日本』など多数。
経済産業省は540億円の累積赤字を抱える官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)について来年度予算の概算要求を見送り、廃止の方向で検討しています。安倍晋三政権が成長戦略として、アニメ、漫画、食文化などの海外展開支援を目的に2013年に設立したものです。なぜ廃止なのか、高市早苗政権が日本成長戦略でのめり込む官民投資をどう見るか一元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんに聞きました。
(伊藤紀夫)
-政府が1400億円も出資したクールジャパンが失敗した原因は何ですか。
コンテンツにしてもすごく広いわけで、投資すると言っても、本当に当たるかどうかはなかなか分かりません。リスクが高いから民間がお金を出しにくいので、官がお金を出すと、安心して民間からお金がどんどん集まり、うまくいくというストーリーなんです。
しかし、クールジャパンも、フタを開けてみたら、出資のほとんどは官でした。官が出しても、民は出てこなかったわけです。
発想が根本的に間違っており、官には目利き能力が基本的にはないからです。今は経産省も財務省も最先端のことは民間に聞いて教えてもらっている状況なので、官が入ったから何かより優れた能力が発揮できるということはありません。
漫画やアニメなど日本のコンテンツが成長して世界で特別の地位を築いたのは、むしろ役所が何もやらなかったからです。
-官民投資はコンテンツだけでなく、数多くありますが、現状はどうですか。
今まで官民ファンドは、一部の例外を除いて、ほとんど失敗しています。経産省は、官民ファンドや補助金で支援してきた半導体、液晶、電池産業、太陽光・風力発電、航空機、ロケットなどの事業を全部ダメにしてきたんです。
民間にできないが官ができることは何かというと、損することに何の心配もなく、人の金だからと思いきり税金を使うことです。
それも後で責任追及される恐れがないのが実態です。民間だと失敗したら、クビになったり左遷されたりしますが、失敗を追及されて責任を取った官僚は1人もいません。大臣や政治家が責任追及されたこともありません。
官は目利き能力がないので、プロを連れてくると言いますが、集まってくるのは責任を取らずに思いきり金を使える魅力を感じてくる自称プロたちです。
ほとんどの場合、税金を使った面白いプロジェクトで自分のネームバリューをあげ、数年したら辞めてしまい、より給料の高いところに移っていくのが基本パターンです。最後までいくと大体失敗しますから、その前に逃げちやうんです。
失敗反省せず推進する高市政権 官民設資廃止し社会保障に回せ
-経産省は8月20日に発表した「エンタメ・クリ工イティブ産業戦略2026」で、33年までにコンテンツの海外売上高20兆円を目指す「ものがたり大国5か年計画」を掲げました。高市政権は日本成長戦略で、コンテンツ(33・7兆円)を含む戦略17分野で370兆円もの官民投資を推進しています。どう見ますか。
高市首相の成長戦略は、安倍元首相の最初の頃と同じやり方です。安倍政権では「3本の矢」の3番目が成長戦略ですが、その戦略を毎年出しました。日本を大きく変える戦略を毎年出すなんて、本来ありえません。今回も基本的にはそんなに大きく変わらないのに、新機軸のキャッチフレーズで、たくさん予算を獲得しようという狙いです。
ただ、注意しなければいけないと思うのは、高市内閣の成長戦略で結局、最後に「成功」するのは軍事関係で、それ以外はあまり成功しないという点です。本来なら失敗だ
けれども、「成功」にしてしまえるのは、軍事閣係なんです。
なぜかというと、軍事兵器はたとえ性能が悪く値段が高くても、日本製を政府が買うのが安全保障なんだと言って進められるからです。莫大な予算で軍事産業を拡大し成功したという話にされかねません。
最先端半導体を開発する官民投資のラピダス(トヨタ自動車、ソニーグループ、NTTなどが出資)も基本的には失敗だと思います。というのは、成功なら世界中の大企業、特にマイクロソフトやグーグルなどの巨大IT企業から投資が入るはずなのに、入ってこないからです。
ところが、政府はラピダスにどんどん税金をつぎ込んでいます。すでに2500億円も出資し、経産省の来年度概算要求が実れば累計で4000億円にのぼります。
最後はどうするか。これを軍事で引き取り、成功のような顔をするシナリオです。例えば、自衛隊が使うAI(人工知能)は日本製でないと危ないからということで、ラピダスの半導体を使うことも考えられます。
こういう形でめちゃめちゃ金をつぎ込んでいく新しいストーリーができる可能性もあるので、これまでよりさらに危なくなっている気がします。
高市政権の官民投資も、官が資金を出すと民がついてくるという発想ですが、そんなことはこれまで1回も起きたことはなく、必ず官ばかりになって、壮大なる予算の無駄になる可能性があります。それは財政赤字を拡大するので、その分を他で削らなくちゃいけなくなります。
削るのは社会保障で「改革」の名で制度を見直して社会保障サービスを下げていくことになります。それでも、軍拡財源を確保できないから、基本的には財政を拡大するしかないので、インフレが続くことになります。国民は物価高と実質賃金の低下でずっと苦しむことは明らかです。
-国民を犠牲にしないためには、何が必要ですか。
官民投資についても反省がないと、何か悪かったか分からないわけです。ところが、反省は高市首相が一番苦手なこと、嫌いなことです。これが高市政権の最大の特徴で、反省しない政権は何の教訓も得られないから、同じ失敗を繰り返すことになります。
これまでずっと失敗し続けてきたことを、もっと大規模にやらせてくれと高市首相は言っているわけです。これに対する答えはノーに決まっています。
私は以前から主張してきましたが、官民ファンドは全部早く廃止した方がいいと思います。クールジャパンをつぶして免罪符にするなんて、冗談じやありません。他の官民ファンドだって、みんな同じですからね。
無駄な事業はやめて、その分を庶民のための社会保障や暮らし向きの予算に回すべきです。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。